店と本部

先日、ネットで「ユニクロは給与が高く優秀な人材が入社するが、離職率が高い。」という動画を見た。「業務内容が幅広く、仕事量が増え、仕事とプライベートのバランスが悪い。」というハードワークに加え、「なかなか本社勤務になれず、キャリアが停滞する」というのが大きな理由のようだ。

小売業ではすべてが当たり前のことで、これが理由になること自体が不思議なことだと思う。現場では、「売上管理や、在庫管理、人事管理など業務が多岐にわたっており、仕事量が多すぎる」とのことだ。どんな小さな小売業でも店をマネジメントするのは普通のことだ。土日中心の商売なので学生時代とは生活パターンが変わり、友人関係とのプライベートな付き合いも厳しくなるのも当たり前のことだ。それを理解せずに、給与面の優遇のみ考えて入社したのだろうか?それが問題なら、それを理解せず入社した社員の責任ではないか?

ここで、取り上げたいのは、「なかなか本社勤務になれず、キャリアが停滞する」という理由についてになる。

何故、本社勤務になれなければキャリアは停滞するのだろうか?どうして、店より本社がポジションとして上位にあるのだろうか?「ユニクロは本社勤務の人数が少ないので、なかなか本社勤務になれない」ともコメントしていたが、小売業では本社勤務の人数が少ない企業のほうが賢明な企業だ。一番重要なのは店であり、店で稼ぐ売上になる。近年はネットの売上も大きくなっているが、あくまでも店の売上が営業数値の大部分を占める。

では、なぜ本部で仕事をしたいのだろうか?商品部に行ってバイヤーやマーチャンダイザーになりたいから?営業部に行って、営業政策や販促活動、演出活動をしたいから?すべて本社主導で動いていると勘違いしている。今は厳しい状況下にあるが、イトーヨーカドーの組織図は、一番上がお客様で、その下がお取引先、株主、地域社会となっている。社内組織で最も上位にあるのが営業店で、一番下に取締役会がある。店がお客様と対峙し、売上を計上することで商売は動いていくことを再認識させられる。

私事になるが、量販店に入社して7年で5店舗売場を経験し、その後商品部へ異動した。そのころ東京本部は青山一丁目にあり、表面上はキャリアとしていいステップだと見える。その後本部と店の間にはいろんな問題もあり、少し精神的に厳しい状況になった。とかく、店と本部はスムーズに事が進むことが少ない。結局6年近く在籍し、希望して再び店勤務になった。その後はすぐ体調も改善し、楽しく仕事を続けたし営業数字も順調に達成させることができた。個人のキャリアとしては30代で店長職になり、複数店店長を経て40代で営業部長も経験した。最後の本部在籍時も本部要員は減らし、店中心に考えて動いたつもりだ。すべて本部から店への異動が大きな転機になった。

「店」と「本部」という分け方も正解なのかわからないが、規模が大きくなればなるほど両者には大きな壁があるような気がする。おそらくどの小売業の会社も「本部」が「店」の上位にあるように見えている。当然経営者がいる「本部」が対外的には重要かもしれないが、「店」が企業の収益を計上している。個人的に小売業の組織は、経営職を除くと、ほぼ「店」所属の体制が一番望ましいと思っている。営業部長も商品部長も事業部長も「店」の店長を兼任すればいいと思う(その店には力量のあるNo2を配置すればいい)。管理系以外は大型店の所属で業務遂行できるのではないだろうか。そうすることによって、販売計画や戦略商品の成功事例や失敗要因をすぐに検証でき、各店にフィードバックもできる。つまり、政策が実績に結び付いているかが、いち早く確認できる。そして、店と本部の連動がスムーズになる。少し極論かもしれないが、「Plan- Do -See」が迅速に進むことは間違いない。

「店」の動き方や、現場の状況がわからない「本部」は、特に小売業においては全く必要ない。つまり「本部勤務になれば、キャリアが停滞する」企業のほうが望ましいと思う。

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新しい店が出てこない

今、中小規模の小売業へのアゲインストは強い。政局で使われた「給料を上げる」という何の根拠もない政策も厳しさを後押ししている。ベンダー企業は請負先である大手からの支払いを、政局の下での調整もあるかもしれない。さて小売業はどうしたらいいのか?SCに賃料を下げてもらうように依頼すればいいのか?卸先に仕入原価を下げるように言えばいいのか?その他細かい経費を徹底的に削減すればいいのか?

中小の小売業は、アゲインストへの具体的な対策は浮かんでこない。かつて20店舗以上の店を経営していたが、本部要員は自分を入れて4名だった。自慢じゃないが、給与計算をして個人の明細も作っていたし、雇用保険、社会保険の手続きもしていた。離職票も書いて提出していた。支払いの振込もしていた。さらに、在庫管理、キャッシュフローも個店別に作成してチェックしていた。本部要員は最低限でやっていた。小売業は店の要員を減らすわけにはいかない。そういう状況で、どうやったらコスト削減できるかわからない。できることは投資をして店舗数を増やして売上を上げ、商品ロットを増やして仕入原価を下げるくらいしかない。店舗を増やすには金が要る。今後、テナント賃料が上がったり、従業員の社保負担が増加などあれば、売上が大幅に改善しない限り収益は上向かない。ネットでは、給与が上がらない企業は淘汰されるべきだとのコメントも多い。

上場小売業の最近の決算での売上を、コロナ前の売上を比較してみた。好調な流れの会社は大きく改善している。無印良品150.8%ニトリ147.3%パルG145.7%ユニクロ135.5%と大幅に改善している。ただ、大手でも百貨店中心のワールド81.0%オンワード76.4%と厳しく、好調と言われているユナイテッドアローズも84.5%と回復していない。会社体制の変わったライトオン52.5%マックハウス55.0%タカキュー43.1%であり、厳しいと指摘されているビレバンも73.2%と、まだコロナ前の売上に達していない上場企業も数多くある。上場企業でもこの数字ということは、中小小売業が伸びているわけがない。実際、友人たちの会社も縮小傾向の企業が多い。そんな状況の中、出店戦略が立てられるのだろうか?

先日、10月オープン予定の長野県の「イオンモール須坂」の出店テナント一覧を見た。ファッション系のテナントで知らなかったテナントは2店舗のみで、両店とも地元のセレクト店舗だった。今年4月にオープンした「ららぽーと安城」のテナントも、ビンテージ古着を扱う店のみ知らない店だった。過去の大型モールとテナントMDに大きな変化はない。つまり、いつものパターンのテナント揃えになっている。ということは、「イオンモール」も「ららぽーと」も、もう近隣には同タイプのSCは作れないということになる。作っても同じようなラインアップになってしまう。新しいテナントが出てこないからだ。出店を加速してきた大型モールはすでに狭商圏化されている。狭商圏化された大型モールは、個性を打ち出さないと淘汰されていく。余談だが、以前もこのブログで書いたがセレクトショップが多い分「ららぽーと」のほうが客層の幅があるし、わざわざ感があり魅力的なモールには見える。

改装をした大型モールのリーシングも確認したが、今までのラインアップより魅力的になっているSCは少ない。改装しても新しく元気なテナントが入っていない。あっても大手小売業の新業態くらいだ。つまり改装しても不振店舗を入れ替えたくらいで、大きな変化は見られない。そのため、どんどん大型モールの狭商圏化が進んでいる。

今後、SCを開発、活性化するには、当然新鮮で元気なテナントの導入が不可欠になる。現状の経済環境や政治的圧迫の下では、大企業以外新しいテナントは絶対に生まれない。

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イトーヨーカドー、アダストリアからの調達終了

8月14日の日経新聞に「ヨーカ堂、今期秋冬商品を持ってアダストリアからの商品調達を打ち切る。」という記事があった。「ファウンドグッド」を続けないということになり、今後は経営資源を食品スーパー(SM)に集中するということのようだ。

「ファウンドグッド」に関してはこのブログでスタート期に3度(2024年2.3.4月)書いており、今年も6月に書いている。再度読み直したのだが、立ち上げ期から成功を危惧しており、最近も「数字は上向いてないように見える」という内容となっている。成功するには、お互いの資金を出し合って、会社を立ち上げるべきだったと思っていた。

新聞記事の内容から察すると、商品のリスク、内装負担、販売員はイトーヨーカドー(IY)にあったようだ。この条件は、IYからの強い協力要請の結果だと思う。「残った商品は26年以降も販売は続ける」と記事にあるように、商品リスクがIYにあることがわかる。

現状、IYのセブン&アイホールディングスでの立ち位置が厳しくなっており、IYの株式を売却する話も出てきている。その流れで、IYはスーパーマーケット(SM)事業に集中する方向に動いている。IYとしては、「ファウンドグッド」事業は、上記したようにほぼリスクを負担しており、短期的に黒字化のめどが立たない事業として結論付け、事業撤退を決定したということだと思う。数字が順調でなければIYとすれば続けるメリットはない。データ分析が得意な、現実的な会社であるIYらしい結論だ。

「ファウンドグッド」は何店舗か見に行ったが、同じIYでも立地が大きく異なる。古いIYもあるしGMSとしての店もある。さらには大型SC(アリオ)内にあるIYもある。アダストリアにとっては、経験したことのないGMSの客層だったはずだ。MDを進めてきたアダストリアのスタッフには、簡単には対応はできなかったと思う。おそらく大型モール内のGMSをイメージしてのMDだったと思うが、それでは対応できない店が多すぎた。プライスラインもユニクロよりも若干高めに設定されており、競合にも勝てていない。さらに販売スタッフの数も教育も足らなかった。ユニクロは1店舗当たりのスタッフは最低40~50名と聞くが、アリオ内の大型物件でも5~10名程度ではなかっただろうか。ユニクロやGUを競合と考えていたのであれば、商品面、販売体制面でも完全に見劣りしていた。何度か見たアリオ川口内でのショップは、オープン期より縮小されており、厳しい状況がうかがえた。

アダストリアにとっては数字としては大きなマイナスはないが、従来の販売チャネル以外での失敗は社内外には大きい痛手でとなったのではないか。どちらかというと顧客や市場をよく研究してファッション業界では手堅く、偏差値の高い企業のイメージがあったのだが、少し取り組みが甘かったイメージが残る。企業として多角化を上げており、マルチカテゴリー戦略を打ち出している企業としては少し気にかかるマイナスになった。

IYの今後の非食品の売場は、今取り組んでいる商品リスクが小さい量販店ブランドのコーナー化を増やし、さらには大きなマイナスが出ないような条件(固定賃料は低く設定し、売上歩率での契約など)で、テナント出店にもシフトしていくと思われる。「しまむら」との組み合わせも面白いし、好立地なら「無印良品」にすべて任せるというリーシングもある。無印の近年の出店は生活感のある場所への出店が増えているように思う。

40年以上小売業に携わってきて、「イトーヨーカドー」と「アダストリア」は私にとって優秀な会社のイメージしかない。量販店時代は取引先各社からイトーヨーカドーの優れた商品戦略、在庫戦略を聞き、その後アリオ立ち上げ時のコンサルに加わった時も企業体質のすごさを感じた。ビブレ在籍時や小売業経営者の時にはアダストリアには大変お世話になった。その2社が取り組んでも結果が出なかった。

間違いなく、客層のバラツキがあるGMSの非食品売場は成り立たない。この結論はここでも実証されている。

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季節指数の変化とバーゲンパワーの低下

昔は、「ニッパチ」と言われた2月と8月は売れない月だった。共に、1月7月のバーゲンで春夏物や秋冬物を売り尽くしてセール商材がなくなり、売場前面も先取りと称して2月には春物をメインに8月には秋物の打ち出しを強化していたからだ。それがいつの間にか季節指数が変化し、2月の落ち込みは小さくなり、8月は6月や9~11月より売上分母が大きくなってきた。

要因はいくつかある。まず考えられるのは、郊外型大型モールが各地にできたことで、SCが買物目的と併せて、時間消費型に変わってきたことにある。夏は暑いので買い物を控えるという行動パターンから、快適な空間で時間を過ごせる場所として大型モールを利用し、そして買い物も楽しむという流れへの変化である。特に8月は学校の休日もあり、飛躍的に売上構成比は上がった。

さらに、温暖化が進み9月はまだ秋ではなく、夏が続いている状況にあるという季節感の変化がある。つまり7月で夏物をなくすより8月や9月まで夏商戦を引っ張るほうが商売上のメリットが出てきている。そして季節商品のサイクルの変化とそれに伴うセールのタイミングの変化も出てきている。

このブログでは何度も書いているが、購買客層の変化も大きい。完全に高年齢化が進んでおり、ファッションの流行を第一に考える層が完全に減ってきている。ファッションを引っ張ってきた客層は大きく減り65才以上の高齢者層が大幅に増えている。つまりトレンドを意識する層が減っているということだ。ちなみに30年前の65才以上構成比は14.6%だったのが今年には29.6%と倍増以上になっている。ファッションは、よりデイリーへ変化している。

バーゲン期に値段を下げて、「季節商品をなくす、商品を入れ替える」ことは商売として当たり前のことになる。夏商戦であれば、従来の8月は売れない月だったので7月に春夏商品を売り切って、8月から初秋物を見せて切り替えていくという商売が普通の流れだった。8月が集客できる月に変わったことで、その商売のサイクルが変わっていった。百貨店や専門店の一部では、まだ従来のバーゲンの流れはあるが、他の商業施設では、SC中心にメリハリのあるバーゲンではなくなり、だらだらとセールを続ける状況となっている。これは冬のバーゲンでも同じ傾向にある。

そのような環境下、季節感と客層の変化にどう対応するかで企業力がわかる。ユニクロは自社のルールで商品の値段を下げ、なくしていっている。当然SCでのバーゲンのタイミングにも合わせている。つまり自社の消化率等のデータに基づいて商品を売り切っている。そしてそのサイクルは比較的早い。店を見ているとプロパー期でも商品のプライスダウンをしており、セール期もなくしたい商品の順序がよくわかる。無印良品も自社でタイミングを計ってセールをしている。そして、おそらく、季節商品でも売れている商品は値段を下げていない。両社とも、細かいデータ管理と商品をなくす必要性は十分理解している。そして、昔ながらの「動かない商品は迅速になくしていく」という考えが見えるのも両社になる。

逆に、近年は利益を優先している会社が増えているように感じる。そのため、セールを長引かせることで売場の新鮮さが見えなくなってきている。さらに、季節商品の比率を下げ、比較的ライフサイクルの長い商品を品揃えしようとしている企業も増えている。その結果として、サイクルが長いため消化率が低下している事には目をむけていない。そして、利益率の確保を優先するあまり、在庫過多に陥る。そういう流れもあって、何社かの会社が機能不全に陥り、事業譲渡されている。

環境変化でバーゲンの取り組みが変わったことで、商売に対しての各社の姿勢が改めて浮き彫りになっている。

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大型モール(RSC)の寿命 3

今年の1月に、この標題で2本ブログを書いている。その他のブログでも、大型モールに関しては悲観的な見方で書いている。ネットでAIに「ショッピングセンター(SC)の推移」と聞けば、「新規開業数は減少傾向であり、小型で生活密着型のSCが増加している」と答える。さらに、「テナント構成比は衣料品の割合が低下し、取り巻く環境は人口減少や建築費の高騰が要因で非常に厳しい」と答えている。

一番の要因は、テナントの新鮮さがなくなってきている事だと思う。これだけSCが増えると、どのSCも入店テナントが似てきて、テナントでの買い物をするためにわざわざSCに行くより、デイリー的な買い物で行く比率が完全に上回っているように思う。RSCのスタート期は大手アパレル(ワールド、オンワードなど)や旧DCブランド系(ファイブフォックス、サンエーなど)の百貨店以外へのチャネル開発もあり、テナントには新鮮さがあった。さらに路面店やファッションビルに出店していたヤングターゲットのテナントを積極的に誘致していった。つまりそれまでの「ダイエーと50の専門店」とか「イトーヨーカドーと70の専門店」といったチェーンストア目的のデイリー的なSCから専門店目的のSCへ大きく転換していった。ただそれから30年近くたち、テナントの新陳代謝は進んでいない。

では、テナントのラインアップが変わらない要因は何だろうか?現状上記したようなどこにでも出店しているテナントは大型区画が多い。「ユニクロ」「GU」「無印良品」「ABCマート」などは、区画がどんどん大きくなっている。大型カテゴリーとしての家電、書籍やニトリなどの住まい関連、ムラサキスポーツなどのスポーツ関連、さらに近年は100均、300均の店舗も大型化している。ファッション系ではアダストリアやパルの各ショップも大型化しており、アダストリアでは基幹のグローバルワークも標準面積を150坪となっている。他のほとんどのブランドも100坪前後の標準面積となっている。従来からの大手アパレル系テナントは100坪前後だし、付加価値のあるセレクトショップも100坪前後と大型区画としての出店が多い。

大型区画は一般的には、歩率契約が多く、最低賃料があったとしても単価は安くなる。以前の会社で約30坪の店が契約満了の際、再契約なしということがあった。売上は順調に推移しており、標準的な契約で賃料も安いわけではなかった。続ける意思はあったが、隣の大型区画を拡大するとのことで退店した。過去のリーシング経験からおそらく広がっただけで、固定賃料の増加はほぼなく、売上アップ分の歩率賃料増加のみがデベロッパーの賃料増になる契約だろうと思う。デベロッパーはその拡大区画だけを見ると、賃料ダウンにしかならない。当然そこには企業同士の思惑はあるが、どこかでその賃料ダウン分を埋め合わせしなければならなくなる。

大型店舗を導入すると、SC全体のバラエティ感がなくなってくる。当然複数店舗の固定賃料や共益費など合算のほうが、大型区画1店舗の賃料収入よりは大きい。ただ大型区画が、そのSCイメージを上げ、集客策としてはプラスになることもある。しかし、これだけ大型区画が増えてくると、50坪以下の標準区画への賃料にしわ寄せがくる。その結果として、出店へのハードルが上がる。標準区画への出店交渉が厳しくなった結果、出店コストがかからないショップや催事要素の強いショップが増えている。そして大型店舗が増えることでSCの個性がなくなり、狭商圏化が進む。

さらに賃料のしわ寄せによって、次世代のテナントが入店しにくくなっている。実際に、ここ数年大手企業以外で、興味を持つようなテナントは非常に少ない。内装経費上昇など出店するハードルもどんどん上がっている。各地域で成功して、全国展開していったテナントは本当に少なくなった。そういうテナント開発をしていくのもデベロッパーの使命だと思うが・・・

国内のGMSは約50年で淘汰が始まった。国内大型モールもおおよそ30年を過ぎようとしている。ラインアップが同じようなRSCが増えてくると狭商圏化し、淘汰が始まる。

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競合激化するSM(スーパーマーケット)業界

再三、このブログで取り上げているが、国内需要は高齢化によって必需品中心にならざるを得ない状況にある。現状国内の60才以上人口構成比は35.4%であり、30年前の倍の構成比になっており、その人口は43800(千)人になっている。まだ働ける年齢とはいえ、現役ではなくなりつつある世代になる。当然、ファッション関連やビジネス志向の商品は伸びるわけはなく、食品を中心に必需品の購買ウエイトが上がってくる。その流れ通り、SM業界の数字は堅実に伸びている。6月のスーパー全体の売上は前年比104.2%と4カ月連続伸長となっている。

近隣にまたヤオコーができるようだ。駅前に昨年5月オープンしたばかりだ。新物件のオープンは来年6月となっている。ちなみに駅前物件と新物件の距離は500mくらいしかない。調べてみると駅近辺1km圏には、ヤオコーを含めて、マルエツ2店、コープ、ベルク、オーケーなど10店程度のSMがある。マルエツは500mくらいの距離に2店出店している。武蔵浦和駅前から2kmで浦和駅の商業集積があり、3Kmのところにイオンモール北戸田もある。そしてSMの密度は濃い。

おそらく、近隣2店舗出店は競合激化によるところだろうと思う。オーケーは近隣にあるが、オーケーも含めてロピアなど新興ディスカウントSMの進出に抵抗した結果かもしれない。マルエツの近隣の2店舗戦略も「競合に出店されるなら・・」という同様の結果だと思う。ただ今回の出店で一番ダメージを受けるのは300mも離れていないマルエツの1店舗になる。

地元民として、新物件は決していい場所だとは思えない。南側には学校が2校あり、その先にはベルクスやイオンモールがある。東側にはロッテの工場や2軍球場があり、その先は線路で商圏が分断されている。駅に向かっての東北側はマンション群だが、駅中心に商業集積があり、西側はマンションや住宅地になるが、SMのコープが近隣にある。さらに新物件は駅に向かうメインの道路に面しておらず、立ち寄りやすい場所ではない。

間違いなくSMの魅力だけでは、自社も含めて各社との食い合いになる。SM以外で何か引き付けるものが絶対必要になってくる。説明会の資料には述床面積9140㎡で3層、1階はピロティ(駐車場)と飲食、2階がヤオコー、3階が専門店となっている。この立地で、ある程度わざわざ性を高めるには間違いなく魅力ある専門店が必要になってくる。

昨年の駅前出店の時にもヤオコーの「テナントの弱さ」を指摘したが、今回の出店場所は、ますます集客力のあるテナントが必要になってくる。現状、武蔵浦和駅周辺には、ある程度の商業集積には必要な「ユニクロ」「無印良品」がない。これだけ高層マンションがあり、交通の利便性がいい立地でこの2店舗がないというのは、街自体に欠落があるようにも思えてくる。フロア構成上2社は難しいかもしれないが、この商業物件としての成功は、この2社へのリーシングにかかっていると思う。

国内の大型モール(RSC)はもうすでに停滞期に入っており、今後は、少しずつ淘汰されていくように思う。商圏に合わない大型化しすぎたRSCが多く、空床部分も目立ってきている。さらに、先述したように高齢化が進んでおり、以前のGMSのようなCSC(コミュニティSC)や、SMが中心のNSC(ネイバーフッドSC)といった利便性あるSCの時代に戻っていくと思う。その時には自店でのSMのMD力だけでなく、フル感性で日常的なテナントとの共存が絶対に必要になってくる。

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イオンは優れた会社だが・・・

前回、再生に向けた3社について書き、その中で、今回はタカキューの再生について書こうと思った。イオンは優れた企業だと感じていたので、そのイオンが手放そうとしている企業の再生は難しいと思ったからだ。イオンがいろんな角度から分析、対策した結果からの結論だし、業界自体もアゲインストの中での再生になると思う。タカキューの決算短信やHPを見ると「感性?」を打ち出しているようで、過去のイオンでの再生の方向性とは違うようなので、それはそれでいいのだが・・・

その内容を書きながら、優秀な企業であるイオンがなぜGMSをやめないのかをずっと考えていた。以前も同じようなことを書いたが、やはりやめない理由がわからない。

私事になるが、イオンがマイカルの経営再建に乗り出して約1年、イオングループで働いた。結局は辞める決断をしたが、その1年はその後小売業を続けるうえで非常に有意義だった。その期間にイオンの研修を受講した。退職したため中退したが、有意義でレベルの高い研修だった。退職時にそのテキストや資料は全部返却させられたので、あまり詳しくは書いてはいけないのかもしれない。研修期間は1年以上で毎月の集合研修とG別課題解決に向けての自主研修、さらにはネット講座もあった。その後その受講していた社員はイオン本体やグループ会社の経営職になっていったようだ。その時のノートは、その後自分で起業した時や経営課題を考える時に何度も見返した。そんな有意義な研修をいろんなポジションでやっている企業が成長しないわけがないと思う。

なぜGMSは続けているのか?2025年決算ではGMS事業として売上は全体売上の35.1%を占めているが、営業利益では6.8%しかない。グループでの営業利益は金融、デベロッパー、ヘルス&ウエルネスが上位3カテゴリーで、その構成比は合わせて54.7%と半分を占める。SM事業も営業利益はGMSの2倍であり構成比は13.8%になる。GMSの詳細は読み取りにくいが食品事業は伸長しており、衣料品は前年割れの状況のようだ。GMSではイオンより優等生だったイトーヨーカドーが衣料品から撤退しており、もうGMSとしての存続は厳しい状況になっている。イオンのGMSも食品頼りになっており、その食品もSM(スーパーマーケット)事業と併せれば改善がさらに進むのではないかと思う。そして、間違いなくGMSの解体を考えるべきだと思っている。

続ける理由は何か?大きな要因は収益の柱になっている金融事業の根底にGMSがあるということかもしれない。カード戦略を中心とした金融事業の根底にあるのはGMSの客数、客層にある。GMSのポイント戦略や販促面へのアプローチでカード顧客を広げていっている。ただこれはGMSからデベロッパー事業に置き換えることはできないのだろうか?当然テナント各社独自の戦略もあるが、ルミネカードやエムズカードなどの普及を考えれば可能だと思う。そしてまだまだ好調なSM業態を起点にしてもいい。

さらに、東日本大震災の時、セーフティゾーンになったように災害時の生活拠点化としての位置づけを想定しているということも考えられる。これは地域貢献の最たることではあるが、これも現状のSCの機能に委譲し、各テナントにその役割を明確に依頼すればいいと思う。その他、従業員の処遇など当然のように課題は数多くあるが、それはどこの企業でもよくあることだ。

きっと一番大きな原因は、創業者一族の、「礎だったGMSをなくせない」という強い意志のような気がする。そして、間違いなく、イオングループの次のステップは、祖業でもあるGMSをきれいに解体することから始まると思う。

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自主再建が厳しかった3社の現状

このブログを書き始めて、厳しい状況を分析してきたライトオン、マックハウス、タカキューの3社は自主再建ができなかった。売場や数字を見ているとその状況はよくわかったし、さらにそういう結末も予測していた。特に持論でもある「在庫過多」から導かれた結果だったように思う。そういう経緯もあり、現状の3社の決算状況は四半期ごとに興味深く見ている。

ライトオンもマックハウスもジーンズカジュアルを打ち出した専門店で、その業界では1位、2位の企業だった。その2社がそのビジネスモデルで自主再建できずにTOBされたということは、もうその分野では成功はできないということになる。当然、商売の失敗はあったが、環境変化も大きな要因だった。ライトオンの直近の決算を見てもまだ企業のマイナスを処理中の印象しかない。戦略としてもEC強化くらいしか前向きなものは見えない。親会社にあたるワールドにとってのメリット部分は活かしていくとは思う。別の交渉にはなるが、好立地物件へのグループブランドの出店などは想定できる。ただワールド傘下ということもあり、規模の縮小はあっても継続事業を確実に進めていく気配は見える。

マックハウスは親会社のチヨダからのTOBを経て再生ファンドの傘下に入っている。出資しているジーエフホールディングスという会社を調べたのだが、どうもよくわからない。傘下のアパレル企業としてはジャバG(神戸の老舗企業、ブランドはロートレアモン、子供服のべべなど)、シティヒルなどがある。このTOBの経緯も分かりにくい。間違いなく親会社チヨダは切り離したかったということはわかる。市場取引価格330円の株が32円でのTOBということに現れている。ただファンドの思惑と違い、その後の株価が低迷し、そのため資金調達スキームが崩れそうになったようだ。そこで金融事業と題してビットコイン投資を始めている。レディスカジュアルのアナップと同じ手法だ。ジーニングカジュアルとしての企業再生とはかけ離れているようだ。コアの事業として従来の事業が継続できるかどうかも不確実な状況のような気がする。

債務超過だったタカキューは昨年の1月に官民ファンドによる再生支援を受け、金融機関、投資ファンドから第3者割当増資を受けている。そして同時にイオンとの提携を解消している。債務超過解消した前年数値は、落ち込んでいた売上も96.2%まで戻した。ただ今期第一四半期は90,8%と伸び悩み、前期に比べて利益率は+2.4%だが在庫は119.0%と増加している。ちょっときれいになったHPに違和感を覚えたが、イオングループとして再生に取り組んだ方法とは違った角度で取り組んでいる様子は伺えた。ただイオングループの力は相当大きかったと思うのだが・・・

この3社の取扱商材はもう大きな市場ではなくなりつつある。ジーンズ業界はコアの客層は、地元にあるセレクト店舗に流れ、そうでない客層はユニクロなどで充分間に合っている。スーツを中心にしたビジネス顧客に向けたファッションも、カジュアル化が進んでおり、市場全体が小さくなっている。さらにそのターゲットのカジュアル衣料を扱う店は山ほどある。小さくなったターゲットで商売できるようにダウンサイジングするか、他の業種を取り組むしか対策は考えられない。

現状の数字や再生支援している企業を見ると、存続に向けた大幅な縮小案と現状の立地の有効利用が可能なワールドがバックアップするライトオンしか、先が見通せないように感じる。それでも規模は大幅に縮小されると思う。さらに、ファンドを利用しての再生は短期間での収益改善を目指すケースが多く、永続的な企業運営には疑問符が付く。

今後の数字も確認していこうと思う。

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業界大手2社がTOBされたジーンズカジュアルは大幅規模縮小するしかない

難しい靴業界で成長続けるABCマート

ここ数回ずっと在庫のことを書いてきた。自分で商売するときは「在庫を持たない」商売をしようと思っていた。過去小売りの仕事をしてきて「ジーンズカジュアル」と「靴」は在庫を持って商売しているイメージしかなかった。両カテゴリーに言えることは、サイズが細かいということになる。細かなサイズに合わせて在庫を持てば当然在庫は増える。中心サイズがなくならないように多く持つと1品番当たりの在庫は増えていく。さらに定番的な商品が多く、値段を打ち出しにくい。

ビブレの店長時代、店長は自主直営売場の数値責任を持っていた。当然各売場には、仕入れ権限のある売場の責任者がいるが、MD計画、数値計画は店長が確認する。一番利益面でわかりにくかったのが靴業種だった。サイズが多岐にわたり在庫も多くなる状況はジーンズと同様だが、ジーンズの売場はトップス、アウターでの調整ができる。靴は皮革とケミカル、スポーツなどに分かれるが、調整できるアイテムは少ない。取引先との商売条件も多くあり(消化、委託など)買い取り商材は大きな値下げが発生することも多く、利益率が高い状況で安定することがなかった。難しい業種だった。

ジーンズのナショナルチェーンはどんどん厳しくなり、全国チェーン展開の専門店は近年のライトオン、マックハウスの事業譲渡もあり、ビジネスとしては成り立ちにくくなってきている。一方靴業界も同様でありアメリカ屋靴店やマルトミなどの倒産例もあり、特にカジュアル志向が強くなった現状では靴業界も淘汰されようとしているように見える。そういう状況下、靴業界のABCマート、チヨダ、ジーフットの大手3社の決算数字をチェックしてみた。

売上面ではABCマートの絶好調ぶりが群を抜く。2025年決算で3772億計上されておりコロナ期以前の数字から136.7%伸長している。チヨダはマックハウスを除外して調べてみた。売上数字は年々マイナス傾向で1000億企業だったのだが、2025年787億まで落ち込み、コロナ前からでは89.5%の売上となっている。ジーフットは2025年売上が600億でコロナ前からでは67.3%の状況となる。

利益率は2025年決算でABCマートは50.5%、チヨダは47.7%、ジーフットは44.1%。営業利益率はABCマート16.8%、チヨダ5.3%、ジーフット-1.3%となっている。チヨダはコロナ期以外黒字体質ではある。ちなみにジーフットは2023年に債務超過になっており、2025年親会社のイオンからの第3者割当で解消している。1店舗当たり売上はABCマート248(百万)、チヨダ87(百万)、ジーフット63(百万)と大きな差がある。

一番重視している回転率はABCマートが年2.04回転で数年はほぼ2回転前後。チヨダは年2.21回転と前期大幅改善しており、過去の1.8回転前後から良化している。ジーフットは年1.46回転で、過去の1.3回転前後からは改善しているがまだまだ低い。

完全にカジュアル化の波が大きく、スポーツブランドを打ち出すABCマートの出店戦略が成功しており、特に売場大型化がその要因にもなっている。近年主流になった大型モール(RSC)の全国拡大に併せて企業規模が拡大している。逆にチヨダは大型モールへの流れに乗れず、従来のGMSやSCでの商売を続けている。ジーフットは当然イオン系SC中心になるが、イオンGMS内(所謂ジャスコ)の靴売場も運営しているため、SC部分への出店が大きく出遅れた。さらに現状のGMS内の衣料服飾品の赤字体質が続けば、企業存続にも赤信号が灯る可能性もある。

在庫面に関して考えると、ABCマートは常にプライスダウンを打ち出し消化率を上げようとしている。売場内でも大きなセールコーナーを取っているし、いたるところで催事も見かける。アパレルを加えた売場が増えているのも在庫面の課題解消策かもしれない。それでもあと年0.5回転くらいのプラスは必要だと思う。チヨダも回転率の大幅上昇もあり、意識は高まっている。逆にジーフットは決算時に在庫課題はいつも上げているが、全く改善は見られない。

追随する企業のアゲインストの流れが大きく、対抗する企業がない状況下で、カジュアル志向が続けば「ABCマート」1強の流れは確定的になっている。

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商品の幅を広げると商売は難しくなる

ヴィレッジバンガードの経営状況の悪化は、商品の幅が広がりすぎた事が大きな引き金になっている。

少し商品の用語の説明をする。まず小さな商品単位を品目と呼ぶ。一般的にはアイテムと同義になる。品目が集まって品種になる。品種が集まって品群になる。例えば品群が婦人衣料、品種がスカート、品目がフレアスカートという分け方になる。

ヴィレッジバンガードの商品構成は、多くの品群が入れ混じっている。衣料品、服飾品、書籍、文具、玩具、食品など。さらにそこから細分化され、衣料服飾系でもメンズ、レディス、アクセ、鞄、時計、帽子など多岐にわたり、さらにそれぞれにキャラクターが打ち出されている。それぞれの商品サイクルは違っており、付随するキャラクターのピークタイムも見極めなければならなくなってくる。はたしてどれだけのスタッフでこの商品を管理していたのだろうか?そして、どの程度のデータをどれくらいの頻度で出力し、商品の改廃のジャッジをどういう基準でしていたのだろうか?

何年か商売をやってくると、売場の基本レイアウトや品揃えは想定できる。そして想定売上に対しての在庫量も逆算する。そこから適正な売場面積も導ける。さらに商品の切り上げ期も分かってくる。

例えば50坪程度メンズカジュアルの店を長年やっていたとする。当然商品の流れがあり、従来の品群での売上のアップダウンがあり、その中で在庫の持ち方や売り場のレイアウトを考えて商売をしている。例えば、そこに新しい品種としてカジュアルアクセを導入する。さらに加えてシルバーアクセもコーナー化する。そこの効率次第で、従来の売場を変更していく。服飾雑貨が売れることで時計も導入する。ディスプレイ程度に品揃えした、鞄や、帽子も拡大する。そうなると全く当初のMDとは変わっていく。売場のコンセプトも変化していく。

つまり、衣料品に加えて服飾品という品群が増え、服飾での品目が増える。売上がその導入により上昇しても、売場面積は変わらないので間違いなく各品種の効率は変化する。それをうまくつかんで、売場をアコーディオン化できればいいが、既存品種も従来通りの品揃えでは、在庫は膨らむ。当然処分しないと不良在庫が増え続ける。もし服飾品の売上の比重が上がれば、当初の店のイメージは大きく変わる。そして、不良在庫を処分すると利益が下がる。利益ダウンを後回しにすると、処分が遅れた不良在庫が増えていく。そうなると商品回転率はどんどん下がる。

おそらくヴィレッジバンガードはそういう状況が続いた結果のような気がする。ここ最近買収されたライトオンもマックハウスも同じような状況の結果になっている。好調を続けるユニクロは品群を増やしてないし、商品構成比率も大きくは変動していない。逆に品種品群を増やしている無印良品は、売場を大型化し細かなデータ管理をしている。

売場面積が変わらずに商品の幅が広がれば、当然歪みが出てくる。軌道修正は当然データありきになる。商品の売上分母だけでなく、回転率など消化状況を重視し、品群や品目さらには単品ごとの効率をデータ化し、素早く改廃対応する必要がある。

何度も書いているが、商売は利益率より適正な商品回転率を重視するべきだと思っている。

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