投稿者: retailjam (1ページ目 (13ページ中))

最低賃金引き上げ

最低賃金の引き上げで、全国加重平均の時給は1054円になるとの報道がある。いよいよ小売業は大企業しか生き残れないかもしれない。

小売業は「立ち仕事」「土日休みづらい」などの理由で人材不足は続いている。過去の経験から、欠員が出るたびに募集をするが、なかなか応募はこない。年々厳しくなっている。今回の引き上げで今まで時給850円が最低賃金だったエリアも時給900円近くにアップする。ただ時給900円で募集しても間違いなく来ない。おそらく募集相場は時給1000円近くになる。受け入れ側の問題も当然あるが、時給を最低賃料に近づければ近づけるほど定着率は低くなる。そのたびに募集経費は発生する。さらに募集時給を上げることで当然既存のスタッフの給与も上げなければならない。さらに賃上げ分は当然賞与にも加算される。

会社は、給与に加えて社会保険の負担分の50%を支払っている。健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料あわせて約30%の個人負担分の半分15%相当(都道府県により変化する)を負担している。さらに今年の10月から51人以上の会社も週20時間以上の従業員にも社会保険を適用することが義務化されることになっている。

会社にとっては、経費負担がどんどん大きくなっている。

新聞の社説などを読むと、中小企業も賃金引き上げに伴ってシステムの導入を進めたり、省力化の努力をするべきとの意見がある。労働集約型の小売業で、さらに接客ウエイトが高い専門店はどう対応すればいいのだろう。後方の人材を減らしていくしか頭に浮かばない。おそらく後方部隊の経費は最低限まで落としている。どうやればいいのか具体的事例の提案が欲しい。こういう他人事のような意見は必要ない。

人件費を吸収するには売上を上げるか、利益率を上げるかになる。コロナ以降、売上が伸び悩んでいる現状を考えると、売上確保より利益率を上げていく流れにはなる。利益率を上げるにはどうするか?オリジナル商品を増やして商品の原価を下げる。つまり企業商品を作ったり、取引先との別注商品を作ったりして、原価率を下げ、それを販売する。その商品を拡販することによって利益率を改善していく。しかし、それを中小企業がやっていけるか?取引先との別注商品を作るにも、商品コストを下げるのだからある程度の数量が必要になる。そして当然全品引き取りになる。店舗数が少ないと当然1店舗あたりの在庫が増える。売れなければ逆に利益ダウンの要因になる。経験上オリジナル商品を作るには最低40店舗くらいの店舗数は必要だと思う。中小企業でオリジナル商品を作るにはリスクは大きい。

「買い」の商売を続けるにも、現状ほとんど海外生産商品で、為替の問題もあり、取引先の利益も考えると商品原価は上がり、従来の値段を維持しづらい。値段を上げると売れなくなるし、値段を維持すると利益が上がらない。

おそらく、賃貸物件で償却もしなければならない店が5店舗以内の小売業は相当厳しくなってくる。いよいよ小売業は大企業しか生き残れない。

■今日のBGM

月度指数の変化

35度以上の暑さはいつからだろうか?季節が完全に変わってきた感がある。

商売をやっていくと、予算は必ず作成する。土日の増減はあるものの月度指数を想定して売上予算は作成していた。20年~30年以上前は売上構成比が高い月は12月、1月、7月、3月、4月の順だったように思う。逆に厳しかった月は2月、8月、10月、6月だった。バーゲンが早まったことにより6月が上がってきて、夏休みの8月も5~6位の構成比の高い月に変わってきている。逆に秋の立ち上がり期の9月、冬の立ち上がり期11月の落ち込みが大きい。

やはり、季節の変化が一番大きな要因ではないだろうか?昔は四季がはっきりしており、春夏秋冬毎に商品が変わり、その時期に合わせた演出もしていた。春色、秋色があり色の変化で季節も感じた。ジャケットも背抜き、総裏で季節感が変わった。その流れが季節変化で、春、秋が短くなり、若干の色の変化はあるが2シーズンになった感が強い。ファッションに細かな変化を気にしなくなってきた。

さらに、バーゲンの在り方も大きく変化している。過去年2回のバーゲンでは春物、秋物は50%オフスタート、夏物、冬物は30%オフスタートだった。ブランド全盛期には人気ブランドはバーゲン初日の午前中に商品はなくなっていた。その他のブランドも2週間くらいで、売場の季節は変わっていた。当然7月、1月のバーゲンパワーは大きかった。あれだけバーゲンのスタート日を小売各社横並びでチェックしていたのに、7月、1月以降のスタート日を、いつの間にか6月、12月に前倒ししてしまった。伊勢丹でさえ今年の夏は6月スタートになっている。これだけ温暖化が進んでいるのだから、夏のバーゲンの前倒しは不思議な現象だ。賞与も7月なのだから、6月バーゲンの根拠が見えない。売上競争になっているとしか思えない。もうバーゲンに根拠はない。

ファッションからデイリー性のある実用着に変わってきた。それに呼応してユニクロのように「いつでもお買い得」なショップが増えていったように思う。さらに「いつも割引」しているショップも多くなってきた。逆にプレミアムブランドはセールのウエイトを下げてきている。アウトレットの増加でイメージが下がってきているブランドが多いとの指摘もあった。事実、そのせいで厳しくなってきているブランドもあるとのニュースもある。2極化はどんどん進んでいる。

「ファッションが好きで買いに行く」お客様への商売は減ってきており、ファッションの流れでの商売は、形骸化している。バーゲンも本来の意図から外れてきており、単純に販促の1つになっている。さらにアウトレットの増加や、インバウンド需要の拡大もあり、季節指数もどんどん変化していく。数字の先を読むのも難しくなってくる。

それにしても、この暑さでは、買い物に行く気力もなくなると思うが・・・

■今日のBGM

量販店衣料ブランドはどうなるのか

アダストリアがイトーヨーカドーで展開している「ファウンドグッド」がどうなっているのかをたまに見に行くが、現状は大きな進展はないような気がする。売場は基本レイアウトに沿ってきれいに整理されており、立ち上げ時に比べてすっきりしていて買いやすくなってはいる。ただ運営体制がまだまだ厳しく、おそらくイトーヨーカドースタッフが少なく、うまく連動されていないのだろうなと感じる。アダストリアが単独で出店したら考えるだろうスタッフ数や業務内容とは開きが大きいと思う。さらにアダストリアなら出店をしないだろう店も多いと思う。ターゲット客層とギャップのある店も多いのではないだろうか?以前から述べていたように、合同で別会社化しないと厳しいような気がする。

イトーヨーカドーは「ファウンドグッド」が売場を固めたことにより、従来衣料売場で展開していた取引先展開型のコーナー売場が逆に引き締まり、さらに従来のGMSのお客様を集めているような気がする。イオンスタイルで売場を変えたイオンでも同様に感じた。イトーヨーカドーは従来隣接していた衣料服飾品がなくなり、取引先展開型の売場を集約しており、ボリューム感が出たように感じられ、肌着等の売場に隣接して客数も増えているのではないだろうか?イオンは、衣料服飾品の効率改善するために商品区分ごとにコーナー化し、セグメントすることで在庫を抑えている。そのため直営の売場が小さくなったことで取引先展開型のブランドを同様にコーナー化している。

ここでいう量販店ブランドとはコーナーショップ化しているものを指している。イトーヨーカドーはオリジナルで「KENT」などをやっているし、イオンでは「ジュンコシマダパート2」「インスパイア」(ヤングDCブランドがいつのまにかミドル世代のブランドに・・・)、フォーマルの「イギン」「ソアール」などをコーナー化している。他にも昔からある「アーノルドパーマー」や「ニクラウス」「クロコダイル」などのスポーツ系のブランドなどもある。

イトーヨーカドーは衣料品をなくしていくとのことだが、売場を見ていて直営売り場がなくなることにより、過渡期の売場ではまだ量販店ブランドのニーズはありそうに感じる。イオンもGMSの衣料品を続けるなら、直営の効率アップのために、間違いなくこういうブランドのニーズは大きい。特に販売員を派遣しているブランドの売上は固いのではないだろうか。

GMSの量販店ブランドは今後なくなっていくのだろうか?ユニクロやGUに流れていくのだろうか?体型が変わり、さらに消費動向も変わらないアダルトシニア層のニーズをどこが受け持つのだろうか?

現状、GMSの売場は「ユニクロ化」を目指しているために活性化しないのではないだろうか?現状の顧客は、ちょっとしたお出かけ用の服をどこで買うのだろうか?ショップチャンネルやネットに流れているのかもしれない。そういう中で、逆に取引先展開型の売場をもっと打ち出すのも一つの方法かもしれない。販売は取引先スタッフのケースが多いと思うが、客層と同年齢くらいのスタッフを配置すれば、売れていくことは間違いない。このターゲットのスタッフは時間的に余裕があり、集めやすいと思う。そして何より一番販売力はある。

将来的にどうなるか断定はできないが、量販店ブランドはGMS衣料品の過渡期には必要な売場かもしれない。

■今日の日経見開き広告(ヴィトン フェデラーとナダル)

マリノアシティ福岡

マリノアシティ福岡が8月18日で閉館だという。後継施設は三井不動産の「三井アウトレットパーク」との報道がある。

マリノアシティとはなぜか縁があった。ちょうどオープンした時、あまり意図はなかったが訪れている。当時は天神ビブレの店長をしていて福岡で勤務していた。その時はいい場所にあると思ったのと(観光として)、キーテナントの「ミスターマックス」とは違和感があるなと感じたぐらいだった。その後退職し、友人がマリノアで仕事を立ち上げて会いに行ったとき、アウトレットとして増床されており変化に驚いた。その時閉店していた店舗があり、いい場所だったので興味を持ち交渉し、その場所に出店した。調べてみると17年前だ。好調に推移し、その後会社の譲渡はあったが、今回の閉館まで営業している。月に1度は店巡回をしていたので200回以上は訪れている。

「三井アウトレットパーク」で成功するのだろうか?アウトレットでは難しいのではないかと思う。スタート当初はマリノアシティくらいしかアウトレットはなく、都心に近い(天神から30分くらい)メリットが大きかった。その後鳥栖にプレミアムアウトレットができ佐賀、長崎を止められ、北九州と広島にイオンのジアウトレットができ、北九州、山口、大分からのお客様を止められている。MDレベルは一般的に見ると三菱地所のプレミアムアウトレットが優っていると思われ、さらに天神に近すぎるアゲインストもあり、ブランドを集めにくくなってくる。加えて福岡のお客様はファッションにこだわりが強く、今回どれだけメニューを揃えられるかが課題となってくると思う。

SCとしては「三井ららぽーと」のほうがイオンモールよりショップMDが福岡にあっており、可能性は高いが、5km圏にある三菱地所の「マークイズ」やイオンの「マリナタウン」が成功しているとは思えず、よほどの吸引力のあるものがないと厳しいと思う。

ただ、環境的にはいい場所だし、マリノアシティ自体も成功した物件だった。もし、投資対効果を考えずにプランを提案するとすれば、現アウトレット棟は三井不動産の「ららぽーと門真」タイプ(アウトレットと共存)のららぽーとにしアウトレットを活かし、ハーバーサイドは少しグレード感を上げてみたらと思う。ハーバーサイドはヨットハーバーに隣接していてイメージはいい。神戸三宮の居留地のように百貨店(岩田屋?)の力でテナントミキシングはできないだろうか?もし食品SMを加えるなら「紀ノ国屋」「イカリスーパー」などの高級志向のSM誘致はどうか?話は逸れるが、絶対試みてほしいことがある。ハーバーサイドの駐車場は、1台の駐車スペースを広くして大型車を止めやすくしてほしい。駐車台数は減るが駐車代金を上げればいい。車の停めやすさは特に平日女性客には大きなメリットになる。小さなことだが差別化になる

マリノアシティ福岡は、観光スポットとしてもいい場所だし、自らやっていた店も順調だった。全く悪いイメージはなく、訪れるには本当にいいところだった。思い入れも大きい。ただ商売環境として、アウトレットの吸引力が弱くなってきたのは間違いない。商圏の半分は海なので、さらにもっと大きな吸引力が必要になってくる。

またいつか訪れた時、いい印象が続いてくれていることを期待したい。

どうもありがとうございました。

■恒例の日経新聞広告(見開き表裏)

中小企業は無策?

近頃、新聞や報道で「課題は中小企業」的なことをやたら目にする。元小規模小売業経営者としてどうも納得できないし、不快になる。大手都銀が「中小企業を援助する」と言って営業支援、経営へのアドバイスを強化するという記事もあった。政府からも同様の発言がある。「給与が上がらないのは中小企業に問題がある」と他人事の発言をする大企業経営者も多く報道される。

日本の事業社数の99.7%が中小企業で、日本の労働者の70%は中小企業に就業している。中小企業で最も多い分類がサービス業(なんでもかんでも属している)で41%、小売業が18%でそれに続く。労働者数はサービス業35%、小売業14%の順のようである。

「経営への支援、助言」とは何だろうか?小売業への支援を具体的に聞きたい。会社を経営していた時、経営に対する助言はどこからも一切なかった。銀行も3行取引があったが銀行側からの援助支援はなかったと思う。当方からの要望の検討はしてくれたが・・・当然ビジネスなので支援ばかりはできないだろう。順調な時はどんどん融資を持ち掛けてきて、コロナ禍終盤体力が弱ってきたとき、当座貸越(一定枠内で融資を活用できる)をやめたいと言われたこともあった。国からの補助も企業が調べなければ利用できない状況ではないのだろうか?会社を譲渡してから「キャリアアップ助成金」の制度を初めて知った。有期社員を無期社員に30人以上は登用してきたし、その他コースでも当てはまるものもあった。この制度は2013年から始まっている。社保加入や離職票提出のため月に一度はハローワークに行っていたが、全く気が付かなかったし、話もなかった。

小売業への経営への助言は、おそらく官公庁や金融関係者はできないと思う。数字で解決する要素が少なく、ソフトの要素が高いからだ。もし助言をいただけるなら会計的な助言になるが、そこは税理士で十分カバーできる。取引先ルートや販売先ルートの紹介はおそらくできないと思う。ただ小売業経営者は、小売以外に関しての視野が狭い。他業種の成功例や、利用できる制度、さらに利用できる制度へのアプローチなどを教示してほしいとは思う。コロナ禍での雇用調整助成金の書類を揃えるのは大変な労力だった。当時は当然ハローワークも大変だったが、経営者も大変だった。書類提出ももっと簡潔にできるはずだ。

小売業の収益の源は「売り場」であり、管理、人事、経理の部署は利益を産まない。利益率も高くない業態なので後方部隊の人数も限られる。実際20店舗を超える会社の事務仕事は私を含めて3名で回していた。業務のアウトソーシングもしなかった。その現実の中、上目線でなく歩み寄ってきた公の部署はなかった。

小売業界は大きなターニングポイントにある。新しく頑張ってきている企業はほとんど見かけない。他人事のような掛け声だけでは前へ進めない。具体的な施策で向き合ってほしい。

「課題は中小企業」「中小企業を援助する」という言葉は、他人事のようで不快さを増す。

■今日のBGM

きれいに見える商売

日経の記事に「ユナイテッドアローズが年初来高値・・・」の記事が出ていた。6月の速報値が既存店前年比19%増で成長を期待されての買いのようだ。

ユナイテッドアローズ(以下UA)はどうしても見え方がきれいな商売に見える。きれいな店やきれいに見える店は、なかなか信用できなくなってきていて、決算の数字も素直に呑み込めない。きれいに見せるのはすごく努力が必要だとは思う。もうすでにセレクトショップという分類ではなくなってはいるが、旧セレクトショップの位置づけを続けるのは大変だと思う。当然商売だからきれいなことばかりは言っていられないとは思う。

ファッション業界は中間層が減り、2極化傾向は続いている。UAは旧セレクトショップで上場した最も大きな企業だが、おそらく立ち位置は厳しくなっていると思う。おそらく洋服好きは減ってきていて、素材感やデザインが本当に受け入れてくれる客数は減っていると思う。昔、原宿界隈にあったUAが運営してきたセレクトショップもだんだんなくなってきている。周辺の知り合いと話していても、「ちょっと金はあるノンポリの30~50代」の受け皿になっているような気がする。

どこで数字を押し上げているかというと、アウトレット業態だと思う。「みんなユニクロだし、このショップのアウトレットなら大丈夫だろう」感覚で集客し、何とか数字を維持していると思っている。決算資料を見てみるとアウトレットは売上構成比17.2%を占めている。ちなみに店舗数の構成比は12.1%となっている。1店舗当たりの年間売上を計算するとUAなどの分類で6.79億、グリーンレーベルなどの分類で4.13億、アウトレットで8.36億となっている。売り場面積の問題はあるが店舗当たりの売上は最も大きい。さらに会社計の売上総利益率は前年差+0.1となっているが、アウトレットの利益率前年差は+3.5%(前年決算では+2.5%)となっている。アウトレットの利益改善で全体の利益率は改善したという数字だ。

さてアウトレットの利益改善はどうやってするのだろう?まず考えられるのは各プロパー店舗で売れ残った商品の値段を大きく下げないようにして売る事。例えば50%オフで売らずに30%オフで売るということになる。それには細かな管理が必要になる。だがおそらく、ほぼお客様は気づいていると思うが、UAのアウトレットはアウトレット用に商品を作っている。そのウエイトを上げて利益改善したと考えるのが普通だと思う。当然値段を下げるより、作ったほうが利益は出る。「ビームス」「シップス」「ベイクルーズ」などのアウトレットもアウトレット用の商品を作っている。セレクト系で作ってなさそうなのは「トゥモローランド」くらいではないか?

この商売をこの屋号(ブランド名)でやっていいのかどうかわからないが、長い目で見れば、お客様も気づいて厳しくなってくるだろうし、アウトレットに比重をかけるのは、会社の構造が変化して会社自体のマイナスになっていくような気がする。

きれいに見える数字も、会社が考えている本来の商売の結果なのだろうかと思う。

■今日のBGM

値段のインパクト

2023年で65才以上の人口は3600万人を超え、人口構成比も29.1%と30%に迫る。所謂、年金生活者の構成比は高まっている。私自身もその分類に入る。完全に「私」の時間が増えてくる。「買い物」という行動が完全に変わってくる。特に衣食住のうち「衣」にかける支出は激減する。行動範囲が狭くなるのでわざわざ買うことはなく、あるもので十分対応できる。支出のほとんどが「食」に変化する。

家人が車の運転をしなくなったので、買い物にはよく行く。小売業をずっとやっていたし、店を見るのが好きだし、食品売場も好きなので、喜んでついて行っている。

まず、優待日は必須になる。現役世代には「ルミネ10%オフ」や「マルオとマルコ」が効果的で特典日の集客は大きいと聞く。プロパー期にやるのでインパクトは強い。近隣のイオンにはカード特典のある「10、15、20、30日」はできるだけ行くようにしている。カード特典日とそれ以外の日では集客が違っている。食品が含まれるので5%割引にも敏感になる。

ただそういう中でも、食品に関して言うと、お客様は完全に店の使い分けをしている。何度か行っていると、店の特徴がすぐわかってくる。あえて書くとイオンは完全にカード割引頼りで、実売場は少し手が入っていない。近隣の徒歩圏にヤオコーができて、その近くにマルエツがあるのだが、明らかに食品のMDは食品SMが上回っている。その時期の旬の食材は間違いなく安いし、売場体制も充実している。近頃のイオンのカード特典日は、車で運べるペットボトルや酒、買いだめできる冷食中心、さらにあまり割引しない大手メーカー品や、ドラッグなどを買っている。生鮮商品は季節打ち出しがどこも似ていて、その値段は必然的に覚える。どう贔屓目に見てもイオンが一番高い。100円の差でも大きなインパクトはある。毎日買うものだから、ボディブローのように効いてくるのではないだろうか?

バーゲン時期に入っているが、バーゲンそのもののパワーが年々薄れている。昔はスタートのタイミングも取引先や競合各社を見ながら決めていたが、今は「大きなセール」くらいの位置づけでしかない。常に割引をしている店舗が増え、バーゲンそのものの価値も下がっている。ファッションのマスの流れが「ユニクロ」「GU」などにあり、値段の基準が下がってきている。ひと昔までは「30%オフ」「半額」に踊らされていたが、ある程度ボリュームプライスが品揃えのマスになっており、商品と値段のラインがお客様に認知されているように感じる。「1000円,2000円引き」などのほうが魅力を感じていそうだ。微妙な値段の差が売り上げを左右しそうだ。

客層は違うが伊勢丹などで展開するプレミアムブランドのセールも、実施しないブランドも増えてきているし、バーゲンのスタート日も6月中となっており昔の流れとは大きく変わってきている。

やはり客層の2極化は進んでおり、ハイエンド志向がない客層は、きめ細かく値段をチェックしていそうな気がする。店サイドは安易に割引金額を設定せず、商品の実際の価値をより見極めなければならなくなっている。

■今日のBGM

売れている店が一番正しい

「真実のある所に人は集まり、人が集まるところに真実がある。」

GMSにいた時代、店の売場責任者から商品部に異動になった。その時の部長がよく言っていた言葉だ。本当かどうかわからないがカナダのウエストエドモントンモールの考え方だそうだ。その部長にはいい思い出はないが、その言葉はずっと頭の中にはある。

人が集まる。物が売れる。金が動く。つまり売れているところが一番正しい。百貨店でもSCでも売れている施設が一番正しい。売れている会社が一番正しい。売れている店が一番正しい。そしてそこに真実がある。ただ真実は時代の流れと共に変化する。

GMSがなくなっていく。中流層を意識したMDは間違っているということだ。地方百貨店もなくなっていく。本当の金持ち層は少なく、「憧れ」を持った中流層も大幅に減っているからだ。商圏人口が大きく、本当の金持ち層が少なからず存在する都心しか成り立たなくなっている。その金持ち層に加えて外国人が増えてきて現状は一部の百貨店には真実があるということだ。

専門店も分かりやすい。近年ずっと好調のユニクロやアダストリアなど。それに反してフェイドアウトしていった企業。タイムサービスを連呼していた企業の真実は何だったのか?どこに真実があったのか考えると消えていった企業の理由はよくわかる。

売れている店、売れなくなってきた店には原因がある。それを冷静に分析し続けることが間違いなく成功の秘訣だと思う。

売場は整然としてきれいだし、演出も完璧だけれど売れない。商品がニーズとあってないのかもしれない。逆にもっと値段を打ち出したり、ボリューム感を出したりしたほうがいい場合もある。逆に売場は雑然としていて、細かく手が入っていないけれども、安定して売れている店もある。品揃えよりも、接客体制や、売り場内のチームワークが売場のムードを変えていたりする。いいところと悪いところを両方から見る必要がある。判断基準は多方面にある。いろんな方向に真実はある。余談かもしれないが、今までの経験から、売上の良し悪しは「人」によるところが大きい。繊細に考えて売場を構築する商品志向の店長より、人的マネジメントに優れている店長のほうが数字を作るのはうまい。

「売り場はよくできているのだけど・・」売れてないのは真実がないから。「売り場は雑だけど」売れているのは真実があるから。「MDや売場作りは間違ってないのだが・・」腕を組んで考える前に、一度冷静に逆方向から原因を考えてみたほうがいい。

実は、ここで書きたかったことはそういうことではない。昔デベロッパーに言われた「このMDはどこでもできるMDなので、うちのSCには必要ない。」という言葉への反論だ。愚痴だ。月坪350千以上の売上を計上して、さらにその10%以上の支払いをしているテナントへの評価だった。売れているから少しでも真実はあるはずだ。メインフロアにもなく、近隣のテナントよりも当然効率は高かった。ちなみにGMSの平場は月坪100千も売れてない。

「真実」の尺度も難しい。

■今日のBGM

中小小売業の現状

近年大型モール(RSC)は「大箱化」が進んでいると書いてきた。それにより逆に大型モールの坪当たり賃料も減ってきているのではないかとの推論もある。近年の専門店の出店は「大型化」に対応できる大企業が中心で、大企業以外での新規参入はほとんど見られない。

現状、中小の小売業を取り巻く環境は非常に厳しい。もともと小売業は個人の能力で立ち上げることには限りがある。店を作るのに金がかかるし、出店するにも敷金など必要になってくる。さらには売りたい商品を仕入れるには、スタート時点で高い仕入れ代金(原価)を必要とする。

まず、中小企業の仕入環境がどんどん悪化している。もともとブランドセレクトの店は価格の決定権が取引先にあり、なかなか儲ける商売はできない。着実に店のイメージを固めることによって、儲ける商売にステップを上げることができる。海外で作ったり、ロットを増やしたりして商品の原価を下げていく。周知のことではあるが、円安が進むほど値段の設定が難しくなり、コストの整合できても当然ニーズは集中しており、納期が遅れてくる。会社の規模によって、調達が難しくなってきており、利益を出す商売がしにくくなっている。

次に、出店環境だが、ここまで何度か書いてきているように、コロナ以降SCの収益がダウン傾向にあると思う。その現実の下、当然賃料を融通できるSCはほとんどない。流れが悪く環境が悪化したSCも多いが、そこに大きな改装投資はできない。中小の小売業を育てるリーシングをできる環境ではない。逆にある程度の賃料で空床を埋めることを目的にした改装(通信系などの導入)や、テナントの大型化が進んでおり、スタートアップ企業や出店を検討している中小小売業は参入しづらい。大型モール創成期のように「店を育てる」余裕は全く感じない。

人的環境も厳しい。最低賃金は大幅に上昇しており、全国の加重平均時給は1004円で、東京、神奈川はすでに1100円を超えている。先日の日経新聞の記事では厚労省は、最低賃金「50円上げ議論」を進めていくという。さらに2024年10月からは51名以上の中小企業にも短時間労働者の社会保険加入が義務付けられていくことになっており、当然会社負担も増えていく。立ち仕事であり、さらに土日労働で、不人気業種になりつつある小売業に人材が流れてくるとは考えづらい。おそらく高年齢化が進んでいくと思う。

打開策はあるのか?なかなか現状中小小売業は打つ手がないと思う。もし、今会社を続けていればどうするだろうか?本当に戦える立地で確実に儲かる条件以外には出店しない。商品政策に関しては徹底的な在庫削減と細かな商品動向をチェックできる体制を作る。さらに、内部統制を図るため、現状の規定を見直し、修正する。攻める体制への再整備というところか?

業界としては、デベロッパーが小売店を育てる気概を持つことだと思う。MD面で必要な企業には出店条件を緩和させるとか、好立地に出店させるとかするべきではないかと思う。さらに「売れている」店を、批評をせず素直に評価してほしい。

いずれにしても、中小小売業は我慢の時で、内部に目を向ける時だと思う。

■今日のBGM

商品回転率が低い企業はリスクが隠れている

商品回転率を上げることが商売の基本だと、常々言っているし、当然だと思っている。何度も書いてきたが、「商品を仕入れて、それを売って、その金で支払う」が商売の基本だからだ。企業が大きくなってくると、その基本が見えなくなる。商品回転率が低い企業はリスクが隠れていると思っている。

ライトオンの上期の決算短信を見ていて、やはり何かが隠れていたと思った。くれぐれも今回はライトオンの業績に意見する物でなく、こういうことがあったのではないかという個人的な推測を記す物であり、個人の感想と思ってほしい。売価還元法で原価を算出している旨あったので簡単な計算方法で数字を出してみた。

前期末、原価在庫10479(百万)で、今上期末は原価在庫8326となっており、原価在庫の前年比は79.5%、売価在庫は原価率から逆算すると前年差は-5243と大幅の削減をしている。ちなみに上期の売上は21298(百万)で売上前年比は86.6%となっている。回転率は在庫が減ったことで前年が半期で1.12回転、今年が1.26回転と改善している。これでも回転率は年間3回転しない。年3回転することは4カ月で商品が売れてなくなるということなのだが、そこまで回っていない。付け加えるとおそらく支払いは4か月以内だと思う。

今期首の売価在庫は(単純に原価率で計算する)20191(百万)となり、同様に上期末の売価在庫は14948となる。売上は21298なので、値段を下げなければ、計算式でいうと期首在庫(20191)-売上(21298)+仕入売価=14948となり仕入売価は16055となる。これを所謂5掛けで入れたとすると仕入原価は8027となり、そのまま計算すると利益率は48.9%になる。ただ実際には上期利益率は44.3%になっている。概算してみたが仕入れを原価50%でして(所謂5掛け)、さらに約3400(百万)の商品がなくなることで、公表されている利益率44.3%になる。簡単にいうと6800(百万)の商品評価を半額処分すれば公表数字が導き出される。

どうしたかはわからない。ただ34億円の金額分だけ商品の評価を落としたとは考えられる。その他の原因もあるかもしれない。評価を落として販売したとしても売上前年比は86.6という数字だ。評価ダウンした商品が売れたとしても、既存の商品は売れてない。逆に評価を落とした商品が売れてないのかもしれない。

再度言うが、今回はライトオンの業績について言及する物ではない。あくまでも私自身の主観での数字で、現実とは違っているかもしれない。ただこの数字から、商品回転率の悪い企業は何だかの負の要素があるのではないかと考えられるということだ。悪く考えれば、在庫高で決算数字を変えることができる。昔は決算セールという名の下で売上を稼ぎ、在庫も減らしてきた。決算が終わって在庫を減らすということは正確な決算だったのかとも考えられる。管理体制も疑われる。回転率の悪化は、営業面だけでのキャッシュフローは悪化すると思われるし、利益率を優先した在庫評価と言われても仕方ない。

商品の価値はお客様が評価し、売る側が決める商品評価(売価)ではない。お客様、つまり市場が決めるものだ。そして商品回転率が悪いということは、商品がお客様に評価されていないと認識するべきだと思う。

■今日のBGM(まだトノバンがあった。)

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