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金の事を考えないスタッフには大事な仕事は任せない

前回のブログを読み返していて、少し大きな世界の事を書きすぎたと反省した。個人としてサラリーマンも会社経営も経験して、大切なことは「金の事を考えて仕事をする」ということだ。

企業を経営すると一番気になるのは資金繰りだ。上場企業になると営業と管理に別れそれぞれの与えられた範囲での仕事になる。中小企業はそうもいかない。特に中小小売業は毎月のキャッシュ残高を気にしていかねばならない。大企業で働いていた時はいかに気楽に仕事をしていたのかと痛切に感じた。

「お前の好きなように仕入れてやってみたらいい」。小売業ではよく聞く言葉だ。例えば好きなように仕入れた金額が300千だったとして、もし自分で商売をやっていればどういうことか考えるべきだ。その300千は自分の貯金残高で足りるのか?いつ払うのか?ちゃんと売れてキャッシュインするのか?どういう金の流れになっているのか?つまり「人の金」だから簡単に行動できる。そして、複数店舗に仕入れるとしたらさらに金額は大きくなる。また、そういう指示を簡単にする上司も多い。そうなると責任の所在が分からなくなる。

在庫管理にしてもそうだ。商品の「先入れ先出し」は食品でよく使われるが、衣料服飾品でも在庫を新鮮に見せる努力は必要だ。常に売場の鮮度を高めるためにどうすべきか考えて仕事をする。やはり単品データを細かく見て他店比較し、売り方、見せ方を定期的に変えるようにしているかは大事なことだ。売る努力が必要で、売れない商品は手を加えなければもっと厳しい商品になってしまう。つまり値段を下げることも必要になってくる。

本部で仕入れにかかわるスタッフは、金に関しては一番責任が重い。このブログでもよく書いているが、昔のイトーヨーカドーのDB(ディストリビューター)のような立場のスタッフは、絶対に必要だ。仕入れ枠の管理を徹底する人間が必要で、商品内容でなく絶対的数字でジャッジする必要がある。今ならAIを使う会社がありそうだ。

つまり商品は「金」の意識を持たないと、商売は潤滑に回らない。すべて自分の金で仕入れた意識を持ち、その「金」が回っているかどうかを確認することが一番大事なことだ。数字で言うと支払いサイト(支払い日数)と在庫日数をチェックすればいい。過去小売業を経営していた時、キャッシュフローを細かくチェックしていたが、毎年黒字計上にもかかわらず、月末にキャッシュ不足になることが年1.2回はあった。銀行の当座貸越などでしのいだが、やはり12月支払い期の2月末のキャッシュ残で1年の商売が終わる感覚を持ったことを思い出す。

その他、開発のスタッフも大きな金が動くという意味では、責任は大きい。以前も書いたが、売場内装への投資金額は大きい。その責任の所在も不明確な事も多い。出店計画書を細かく話し合い、その結果への責任も明確にする必要があると思う。

小売業は「金」のジャッジが難しい。そして、それは結果でジャッジされる。一番必要なのは、「金」の流れを冷静に見極め、迅速に途中で軌道修正できる体制だと思う。

■今日のBGM

店長に考えてもらいたいこと ➁

前回、店長もキャッシュフローを考えて売場をマネジメントするべきだと書いた。毎日売上ばかりを念頭に置いて仕事するのだろうが、本当に自分で金を持っての商売ができているのか自問自答して欲しい。昔と比べると、店長の平均年齢も上がっているように見える。もう一度商売の理屈や目標を見つめなおしてほしい。

単純に30坪の店を出店するのにいくらかかるのか?出店費用だが、敷金として坪100~200千は必要だ。ここでは坪150千として考えると4500千となる。敷金は返ってくると思っているかもしれないが、撤去時に撤去費用でその金額位は必要になる。つまり返っては来ないと考えるべき経費となる。内装工事に関して、共用部の負担金、内装管理費、現場協力金などで最低でも2000千は必要になる。さらにオープン販促費なども必要で、デベロッパーに支払う金額は概算合計7000千くらいになる。さらに内装費だが、ABC工事含めると安くても10000千は必要になる。おそらく今なら、物価高騰もありその金額では済まない。つまり、30坪の店を出店するにはその他諸経費を含めると20000千は必要になる。そこに、オープンするための商品の金額が必要になる。商品在庫を上代で坪500千とすれば、原価50%として7500千の金額が必要になる。つまり、少し多く見積もるが30000千くらいの金を投入することになる。

少し前に、ソフトバンクの無担保社債の募集があった。利率は4.75%であり税引き後3.785%となっていた。ソフトバンクの存続のリスクがあるが、ソフトバンクが7年続けば毎年利払いが続く。そしてその後原資は返却される。海外ではリスクが大きいと言われていたようだが、完売している。この社債に30000千を投資すれば、毎年税前で1425千の利払いがある。つまり、金を動かすだけの方が安全で堅い商売として映る。商売をやっていくということは、それ以上の収益がなければ、社会的な価値はないと考えることもできる。

企業には理念がある。昔立ち上げた会社は、そんなことは考えてなかったが、「やっていく業態は、他の企業が手を付けてないターゲットに向けた商売」だと思っていた。所謂「小さなブルーオーシャン」と感じたからスタートした。大きな理念はなかったが、ターゲットさえ間違わなければ成功すると思って始めた。そして、その考えが浸透していれば、企業は続いていくと思っていた。

では、今の物販小売業の店長はどういう気持ちで働いているのか?毎日ルーティン業務をして生活基盤としての収入をもらっているのか?大きな投資を受け止めて、その投資を回収していこうと前向きに動いているのか?おそらく前者のほうが多い。

このブログで再三書いているが、今後の顧客層は高年齢化し、その数は激減する。つまり、普通にやっていれば、中小の小売業は淘汰される。上場企業でさえ、どんどんなくなっている現実もある。もう一度、企業目的を徹底して話し合い、店長として何をするべきか、何を基盤に仕事をしていくのかを明確にしてほしい。

でも、走っている途中にはなかなか考えられないか・・・

少し説教じみたブログになってしまった。

■今日のBGM

店長も店のキャッシュを管理する

このブログでは何度も書いていることだが、仕入れ担当者はキャッシュフローを再確認する必要がある。企業は、黒字であり続けても、現金がなくなり調達できなければ倒産する。そんな事例は山ほどある。店長も仕入れに参加しているなら、当然店舗のキャッシュフローを再点検すべきだ。そしてその意識を持って仕事に携わってほしい。

まず、当月のキャッシュインだが、テナント入店の場合はいろんな入金方法があるが、ここは簡易的にわかりやすく当月の売上が当月キャッシュインされると設定する。

次にキャッシュアウト。ここも支払いにいろんな時差はあるが、簡易的に当月のキャッシュアウトと設定する。まず賃料等。当然出店条件をわかっているとは思うので、賃料、共益費、販促費、事務手数料(クレジットが多くなると想像以上に大きい)、駐車場負担金は算出できる。次に人件費。店舗勤務者の給与を総支給で合算する。社会保険料は会社が支払い給与の約15%は負担しないといけないので、その分も人件費に上乗せする。さらに、電気代、電話代、店で発生するショッパーズなどの消耗品費、出張すれば交通費も発生する。

具体的に想定数字を考えてみる。

まず、キャッシュインでは売上を5,000千と想定。

キャッシュアウトで賃料、共益費、駐車場負担金、販促費で900千(イオンモールで30坪弱の店想定)。人件費は1,200千+200=1,400千(社保会社負担込み)。支払手数料100千、電気代、電話代、消耗品で100千 概算で2,500千。

つまりキャッシュはこの段階でキャッシュイン5,000千-キャッシュアウト2,500千=2,500千となっている。

ここで考えなければならないのが、商品の支払い分になる。キャッシュイン5,000千―キャッシュアウト2,500千=2,500千で商品の支払いをしないと足らなくなる。2,000千の仕入ならキャッシュは残るが、3,000千の仕入ならキャッシュは足らない。あくまでこの仕入数字は原価だということを再度理解する必要がある。

PL(損益計算書)で計算すると売上総利益率が仮に50%なら総利益が2,500千になり、経費分2,500千を引くと0になる。つまり儲けも損もない。つまり、概算ではあるが経費が大きく変動されなければ、損益分岐点売上は5,000千ということになる。ただここで仕入れが上記したように3,000千あればキャッシュは500千足らない。損益は赤字ではないが、支払い代金が払えない状況ということになる。例えば売上が5,200千で経費が変わらないとすれば200千の黒字になるが、仕入がこのままでキャッシュが足らず、さらに資金の手当てができなければ黒字倒産になる。(当然、数字上の事で交渉余地はある)

つまり、PL(損益計算書)上では黒字でも、仕入れ過多で支払いができなくなっていれば会社は倒産する。言い続けているが、仕入れ過多は在庫過多になり、支払いができなくなる。昨今の「ライトオン」「マックハウス」「ヴィレッジヴァンガード」はすべてこの状況から数字が悪化していった。

企業が大きくなると、細かく管理ができなくなるが、小売業をしているのなら、各店舗のキャッシュフローはチェックする必要がある。特に、現場で店長が仕入れに参画しているなら、店長もバイヤーとして最低限キャッシュフローはチェックするべきだと思う。

■今日のBGM

大手小売業と同じ土俵では戦えない

前回、ユニクロの店の業務を書いていて、社員はこの仕事だけで小売業を理解できるのか、売上を求めるだけで小売業を続けられるのかと感じていた。小売業の面白さや厳しさがどれだけわかるのかとも思った。小売業は商品をセレクトすること、作ること、利益をどれだけ上げていけるかということや、企画、演出など商品以外のことなど、現場で売上を上げること以外の面白さもある。そしてそれを阻む要因も多く、それを乗り越えることも大きなキャリアになる。そして、そのすべてが小売業の面白さだと思っている。

調べてみると、ユニクロの新入社員の離職率は3年で50%近く、10年では80%超のようだ。ちなみに大卒初任給は全国転勤可能社員が月度37万円、地域限定社員が28万円となっている。

小売業の面白さの半分も感じない仕事では、長続きしないのは当然だと思う。しかし、よく考えるとユニクロの仕事とその対価設定、個人判断による離職率の高さは、ユニクロとしては当然想定済みのことなのではないかと思った。世界制覇を求める企業として、方向性を同じくする社員が必要で、異を唱える人材は必要がないのかもしれない。さらに小売業の本部機能は小さくて精鋭を揃え、本部決定事項を迅速に現場に伝えることを最優先させるという考え方だ。極論かもしれないが、企業の戦略を理解してステップアップしていく人材を選び、それが無理なスタッフや意見を言うスタッフには離職してもらっていいという考えが根底にある。そしてそれが成功要因の1つなのかもしれない。

そう考えれば、ユニクロの世界的な企業への躍進は充分納得できる。「ZARA」や「H&M」も同様でほぼ単一業態と言える。単一業態であることが企業戦略や役割分担を明確にする。そして、それを迅速に現場に浸透させている。

過去、小売業を立ち上げた時、スタッフには商売の面白さや商売への興味を持ってもらおうと思った。それが中小小売業の成功要因だとも思った。そして、店の個性を出すために店長に仕入れ権限を持たせた。おそらく個人的には、「ユニクロ」や大手アパレル企業よりも面白い仕事をさせていたと思う。仕入れ経験の長い人間は、バランスよく仕入をしてきたが、やはり仕入れ歴が浅い店長は利益計画、在庫計画まで頭が回らない。結局、面白い仕事をさせていたと思っているのは企業の思い込みだったかもしれない。それが店長の働き甲斐になっていたのかもわからない。店長はこんな仕事までしたくないという思いがあったのかもしれない。そしてそれ以前に、現状では中小企業の待遇ではスタッフも集まらない状況になっている。

高齢化の波もあり、商圏人口や、ターゲット客層は大幅に減少する。そうなると商業施設の淘汰も始まる。そうなれば、中小小売業が大企業と戦える環境もなくなる。もう同じ土俵では戦えない。

■今日のBGM

こういう店は成り立たないだろうか?

テレビでは年金受給者が、生活苦で安いスーパーを選んで買い物している様子を放送していたり、エアコンなどの節約場面が多く放送されるが、はたしてそれが本当の姿なのだろうか?周りを見ていても、そこまで厳しさを話す友人はいない。

現状の年金受給者の平均年齢は厚生年金が73才、国民年金が75才となっており、平均受給額夫婦2名(夫が会社員、妻が専業主婦)で月額22~23万となっている(アクサ生命資料)。その平均的な世帯の金融資産は平均値が60代1862万円、70代1758万円(三菱UFJ信託銀行資料)であり、さらに所有土地建物が1200万~1500万(税金上の評価額)で持家比率も91.7%(七十七銀行資料)と高い。これをどう見るかだ。

年金受給者で、年齢を重ねて常々思っていることだが、着る服がなくなってきている。ずっとカジュアルで過ごしてきたので、オフィシャルな装いがない。ジャケットやパンツ、靴はとりあえずそろえたが、必要ないかもしれないのでバリエーションはない。カジュアルも少し若作りの着るものが多くて(例えば夏はほとんどショートパンツ、ジーンズ)、実年代とのギャップが出てきている。逆にスーツ族だった人たちはカジュアルのバリエーションが少ないのではないだろうか。

そこで何か買いに行くのだが、「ユニクロ」や「無印良品」でいいのかと思ってしまう。散歩にはいいが、ちょっとした外出や旅行にはそれでいいの?となってしまう。でもそこまで高い商品も買えない。となるとなかなか買う場所はない。アウトレットにもよく行くが、やはりデザインが若くなっており、なかなかしっくりこない。

昔「無印良品」が頑張っていた100双のシャツやシェットランドセーター、本格デニムなどをあの当時の値段で探せないかと考えてしまう。現状の「無印良品」はどんどん売場が大きくなっていっているがファッションはボリュームゾーンの単品量販型になっており、ことメンズで言うと商品も「ユニクロ」と被る。売場を別展開にして昔の無印良品が貫いていた商品へこだわりを集めたコーナーを作れないものだろうか?その売場だけ内装面にも少しコストはかければ十分差別化はできるし、値段志向に走るより感度は上がる。もともとのコンセプト回帰にもなる。

百貨店で金をかけるほどでもなく、「ユニクロ」や今の「無印良品」の商品では満足していない層はかなり多いように思う。かつてセレクトショップでスーツを買っていた客層は、まだセレクトショップで買っているのだろうか?当然大幅に減っているだろう。そこを狙う企業は出てこないのだろうか?

再度データを拾ってみる。今のヤング層10~20代の人口構成比は17.5%で10年後には15.8%までダウンする。10~30代にしても27.8%から24.6%と3.2%のダウンとなっている。これが60才以上の構成比は35.5%から37.1%と上がり、50代を加えると51.7%から55.8%と4.1%も上昇する。ちなみに2025年度中に50代以上の構成比は51.7%と50%を超える。まちがいなくヤングターゲットより狙うべきターゲット客層になる。

ただ、いろんな店を見てもそのターゲットを狙っている店は少ない。そういう狙いの店もあるが、あくまでも若返り志向を大きなテーマに捉えている。単純に、在庫負担を減らすことも想定しての脇ゴムのパンツにはどうも抵抗があるし、デザインも若返り志向が強い。前述したが、大型化している「無印良品」や大型化と客層の拡大を狙っている「グローバルワーク」にそんなコーナーは作れないだろうか?

自分でも金とパワーがあればやってみたいが… うまくはまると案外成功するかもしれない。

■今日のBGM

なぜ「在庫評価損」を毎年計上しているのか?

前回「在庫評価損」について書いていて、腑に落ちなかったので、少し調べてみた。前回イオングループの「ジーフット」について書いたので、同じくイオングループのカジュアルファッションで上場企業の「コックス」も調べてみた。ちなみに前期(2026年)の評価損金額は未発表で計上済とは記入されている。簡単な数字は以下のようになる。

2026年度 総利益率62.2% 回転率2.9 

2025年度 総利益率62.5% 回転率3.2 評価損6.2億

2024年度 総利益率62.7% 回転率3.6 評価損5.3億

2023年度 総利益率57.8% 回転率3.7 評価損5.5億

2025年は期末在庫金額が19.5億なので評価損の金額がいかに多いかよくわかる。

もともとカジュアルファッションの企業なので期中に自由に値段は変更できる。セールで売り切ればいい。普通の企業ならキャッシュが欲しいのですぐ商品を金に換える。次年度迄商品を繰り越すとすれば、ブランド品で割引の規制がある場合や、競合店とのバッティングで取引先との整合がある場合くらいだ。この数字は、キャッシュに心配のない企業で数字コントロールしてればいい大企業サラリーマン経営に見える。さらに付け加えると、期中に値段を下げて利益率を落とすと株価にも影響が出るので避けているとも見える。

一方、「どれだけ売れない商品を仕入れているのか?」ということになる。利益率ありきで、利益率を稼ぐために仕入れているという見え方もある。推測で書くと、「売上が大きく上がらないので利益率志向になる」→「原価率を下げた商品を大量に作る」→「売れずに残る」→「次年度に向けて評価を下げる」→「次年度セールでたたき売る」(利益も回復する)の構図を続けている。商売ではなく「数字合わせ」になっている。

利益率62%という数字だが、ファッション小売業での前期の総利益率はパルG57.5%、アダストリア54.7%、ユニクロ54.1%であり、海外生産が多い大手小売企業でも60%を超えてこない。おそらく利益率を念頭に置いて、原価率を抑えた物づくりを進めていたのではないかと思う。商売は「売れてナンボ」がわかってない。さらに商品回転率の数字もパルG5.84回転、アダストリア4.64回転、ユニクロ3.19回転に劣る。つまり商品が動いていない。

ここまで書いて、いやな気分になってきた。「売れる商品を売れる値段で売る」という簡単なストーリーが崩れてしまう。海外で安く商品を作って相場より3割くらい高く値段をつけて販売し、利益率を稼ぎ、売れ残ったら決算で評価替えをして次年度売り切る。これをずっと繰り返している。何の仕事をしているのだろうと思わないのだろうか?そして、もっと嫌な気持ちを持っていると思うのは現場(売場)だ。おそらく売場が商品の動向を一番わかるし、売れない商品を押し付けられていることも分かる。それだけで士気が下がる。こうなると数字は改善していかない。

こういう流れを見ていると、「コックス」はファッションを売る小売業ではなく、イオングループの商業施設に出店するだけの手段としての小売業にしか見えない。それはそれでイオングループには必要な会社なのかもしれない。

経営理念は何だろう?お客様を見て商売しているとは思えない。こういう商売を今後も続けていていくのだろうか?

■今日のBGM

ヴィレッジヴァンガード ファンドからの資金調達

ヴィレッジヴァンガード(以下ヴィレヴァン)がIRで投資ファンドから約25億円の資金調達を行ったと発表している。近年、厳しくなった企業の資金調達でよくみられるスキームだ。単純に考えて、「大金を貸す」背景にはいろんな思惑がある。単純にメインバンクからは借りることはできなかったのか?銀行は返済能力を考えての資金援助になる。債務超過寸前までの数字になった前期決算数字で、もうほぼお手上げの状況だったのかもしれない。今回の引受先の「グロースパートナーズ」はPOSシステムの導入や在庫、コスト構造の分析と改善の支援をしていくと表明している。

先に結論を予測すると、おそらく再生は非常に難しいと思う。

営業数字の改善の根拠の1つとして、今期の利益率の回復を上げている。4月10日付けのIRでは、今期の営業利益は大きく改善するとの数字予測を発表している。これは当然のことで、前期に特別損失として在庫評価損を2472(百万)計上している。わかりやすく言うと2472(百万)評価を下げて「安くした」商品を今期適正価格で売っただけでの利益改善ということになる。もっと簡単に言うと、売れなかった商品の原価を0まで落として捨てないで売れば、当然利益は大きく回復するということ。そこまで下げなくても売れる商品を大きく評価を落とすと当然利益率は上がる。これは実際ヴィレヴァンが過去にも使った手法でもある。2013年決算で在庫評価損4692(百万) を計上しており、次年度は売上総利益率が3.8%改善している。ただ、結局同じことになっている。つまり、一時的なもので今後の対策次第では従前の結果と同様の傾向になる可能性は高い。

ヴィレヴァンは、かつて経営していた店と同じ商品群も扱っていたので、売場は定期的に見ていた。その商品群はそこまで利益を稼げなかったと思うが、バラエティ感を持って品揃えし、比較的在庫は多かった。ただ当然、半期ごとには商品は変わっていくので処理が必要なのだが、なくすべく処理は全く見られなかった。売り切ろうとすると利益率が下がるし、お客様も古い商品と認識しないからそのままの値段でといいと思ったのかもしれない。それにより、その商品群はどんどん在庫が膨らんでいくのはわかった。さらに、在庫が膨らむにつれ、新商品も見えにくくなっており、厳しい状況になっているのもわかった。10数年前から、数字コントロールができてないなと感じていた。そして、客層が低年齢化しており、単価の高い利益に貢献できる商材が売れていないように見えた。

ヴィレヴァンはマニアックな感性を持った人材が多かったのだろうと思う。その感性で商品を仕入れていき、マニアの客層を呼び、成功していった。ただ、上場という足かせで、感性を持った品揃えだけでは企業を維持できなくなり、売れる商品も入れざるを得なくなったが、そこで品揃計画と数値計画に乖離が出てきたのだと思う。さらに求められる感性も変化していき、現状の数値は、従業員が楽しかった商売が楽しくなくなってきた結果だと思う。

面白い感性を持った人間を、過去何人も見てきた。おそらく、そういうスタッフがヴィレヴァンを支えてきた。ただ、売場造りや品揃えは面白いが、商売の根拠が乏しい。それだけでは商売は成り立たないし、ましてや上場企業としては継続できない。当然今後は、楽しい商売はさらにできなくなる。ファンドが参入することで、管理面がより強固なものになっていく。特にファンドは短期的に数字を改善して早々に出口を見つけたいと思っている。長い目で会社を見ない。

当然念頭には入っているだろうが、ファンド支援でのアゲインストもある。POSシステムからの在庫、コスト分析がさらに強固なものになっていくが、そこにも懸念もある。売れる商品の導入と不稼働商品の処理が進むと、ヴィレヴァンではなくなり、個性が失われていく可能性もある。さらに標準化が進むと、ヴィレヴァンの店舗価値も下がってくる。現状商業施設ではわざわざ性の強い店として、出店コストには恵まれている。つまり他店より場所を選ばず、厳しい場所でも出店するので賃料も手ごろになっている。ただ「角が取れた」品揃えになれば好立地がいいだろうし、デベロッパーもそうであれば賃料を上げていく事が予測される。

今回のヴィレヴァンの大手術には、相当な人材が必要だ。単純に、コストを大幅に減らすだけの人材だけではなく、品揃えの変更まで踏み込んだ営業面での指導者にもなれる両面的人材が絶対に必要になる。偏差値の高い仕事になる。

もうすでに「遊べる本屋」ではないが、チェーンとしての存続も非常に難しい。

■今日のDVD ※友人は大絶賛だが、そこまでは・・・

価格の信頼感

先日、近くのイオンモールに買物に行った。「20日、30日は5%オフ」の日で割引企画の時にはイオンに行くことにしている。その日は無印良品も優待期間で、会員であれば全品10%オフでもあった。無印良品のレジは並んでおり、客数も多く、スタッフが優待に必要なバーコードの提示を迅速にするように呼び掛けていた。そして、イオンの食品売場は無印良品の優待日が重なり、いつもの5%オフより混んでいた。

やはり「レジ割引」企画は人気のようだ。無印良品は開催中の既存売上が20%近く伸びることもあるらしい。無印良品にとっては、商品動向を再確認できるし、ついで買いも増え在庫減らしの要素もある。イオン食品売場の全品5%オフは、食品業種の利益率を考えれば大きな利益ダウンをもたらす「禁じ手」でもある。ただ、イオンにとっては、顧客獲得で将来的には企業の中心になるだろう金融業への布石にもなっている。

ではなぜ、イオンの食品売場や無印良品の割引企画に多くの集客があるのだろうか。総合食品売場で食品や日用雑貨はすべて割引という機会は数少ないし、そのほとんどが必需品だ。さらに食品の利益率は低いのでお得感は大きい。無印良品も単品の評価が高く、数多くテレビで取り上げられているし、このタイミングでしか割引対象にならない商品も多い。つまり、商品の「価格の信頼観」が高い。

ただ、両店舗でのモールへの集客はあっても、他店舗への波及効果はなさそうに見える。イオンの衣料品への波及も弱そうだ。衣料品はクーポン企画を使えば10%オフにもできるようだが、それでもそこまでの集客は見えない。ましてやテナントへの恩恵は弱そうに見える。衣料や服飾系の各テナントも割引企画を個店では展開しているがお客様は流れていない。お客様も、SCに出店している多くのテナントのセールの常習化や、割引率の設定理由の不明確さに気付いている。そして、一般的な衣料服飾品の価格への信頼感が大きく下落している。二重価格表示についても景品表示法に定められてはいるが、不当表示は多い。すでに、単なる割引重視の商売方法ではお客様は動かない。

商品の動きはデータで見極めればいい。ユニクロは商品の売り上げ動向のデータ化で、季節感や個人の決定ではなく数字で判断している。適正なプライス管理、在庫管理を徹底している。それにより「価格の信頼感」も高い。売れない商品をデータの指摘で迅速になくしていく事で、「価格の信頼感」を高めている。もう多くの人は衣料品や服飾雑貨の価格を「ユニクロ基準」でみている。

そういう流れで考えると、大型モール(特にイオンモール)の中心客層の衣料品、服飾雑貨の基準は「ユニクロ」であり「無印良品」になっている。そのプライスゾーンから外れる場合は何だかのプラス要素が必要になる。それはブランドなのか素材なのか接客なのか、納得できる要素が必要になる。それを考えてMDし、訴求する必要がある。それができなければショップの価値はみえない。

小売業は、常に現時点での「価格の信頼感」を高めるためにどうするべきかを考え続けなければならない。

※このごろAIとやり取りをする。うまく持ち上げてくれるので心地よい。価格の基準になるショップを聞くと、一般的なゾーンでは、衣料服飾で「ユニクロ」、生活の基本として「無印良品」、生活雑貨として「山崎実業」「無印良品」「ニトリ」「IKEA」などを上げていた。

■今日のショット 「散歩中の散り始めた桜」

来年は中小小売業がどんどん厳しくなる

年末年始であわただしくなり、小売業にとっては最量販期を迎えている。会社をやっている時は、元旦の売上が年間売上の1%と読んでいた時代もあった。近年は労働環境の変化もあり、元旦営業しない商業施設も増えている。スーパー大手のヤオコーは正月3が日が定休日になる。労働環境の改善もあるが、この流れに中小小売業はついていけるのだろうか?

ファッション関連の中小小売業は、厳しい流れが続いている。おそらくこの流れは変わらない。ここ数年、上場している大企業でも売上の低迷により、M&Aが増えてきている。さらにファンド系企業の支援を受けて再生を図っている企業も多い。ただ、「ANAP」や「メソッド(シーズメン)」など従来の継続事業であるべき小売業の数字が低迷を続けているケースが多い。友人の経営している会社も、譲渡や廃業となった例が増えてきた。特に多店舗展開している企業が苦しくなってきている。

まず、価格志向が強まる中、柔軟な価格対応ができる品揃えを簡単にはできない。30店舗くらいの規模の会社でも、会社主導で売れる商品を継続して作っていけない。企業商品を作るのに中途半端な店舗数かもしれない。その商品も取引先と「相乗り」的な商品が多く、売上利益ともに貢献度は低い。逆に売れないとリスク要因になってくる。さらに「買い」の商品だけでは差別化も図れず、利益率も上げていけない。

規模拡大は成長するための第一条件になるが、どんどん出店コストも増大していく。内装コストも素材高騰で大きく上昇しており、デベロッパーへの出店経費も上がっている。SCのテナントリーシングも変化がなく、大手テナント中心の同じようなラインアップになっており、それ以外のスペースは賃料優先になっている。そのため、前向きなテナント出店には大きなリスクが伴うようになってきている。その環境下で出店に対して消極的になり、多店舗化のスピードが上がってこない。多店舗化が遅れると、当然チェーンメリットはなくなり収益の改善も進まない。

そして、スタッフが集まらない。給与面はもとより、正月定休の事例のように大企業との労働環境の違いはどんどん大きくなる。これだけ「待遇」のことがマスコミで流れれば、「やりがい」や「仕事の面白さ」よりもそちらが優先される。もとより「土日勤務で立ち仕事」という小売業には、労働力は集まってこない。

先日、西松屋が業績予測を修正していた。売り上げダウンとともに営業利益の大幅ダウンを発表した。IRでは「販売費、一般管理費は計画内で推移の見込みも、衣料品の滞留在庫を前倒しで処分したことで値下げロスが増加する見込み」となっている。これにより売上総利益率は2%以上のダウンになる。この発表は会社経営のミスではあるが、企業の正常な体質を感じるし、企業の度量の大きさも感じる。在庫評価のミスは隠そうと思えば隠せる。特に小売業は隠しているだろう企業は多い。さらに業績が悪化している企業は、在庫評価で調整している決算を多く見る。中小小売業であればなおさらだ。

いよいよ、中小小売業は首が回らなくなってきている。来年は、倒産、廃業、M&Aがどんどん増えていく。今後、中小小売業は、地域に数店舗あるセレクトショップのような固定客をターゲットにする店以外は残らない。

■今日のBGM(大晦日に)

20年後の小売業の予測をしてみる 

今月シニアマーケットについて簡単にブログをまとめたが、20年後の小売業は大変な状況が予測される。データを見ていて改めて痛感した。

30年前(1995年)日本の平均年齢は39.5歳だった。現在は約49.5歳まで上がってきている。20年後には約54歳になるという。そして70歳以上の人口構成比は現状の23.5%から30%まで上昇する。さらに人口減も進み、現状1億2千万人強の人口も20年後には1億人前後まで減少すると言われている。そして地方の人口流出は進み、都市部に人口が集まり大都市圏と地方の格差が広がる。現状人口集中している東京圏の高齢者人口増加率も、全国平均を上回ると予測されている。特に20才から39才の女性人口の減少が著しくなっていくようだ。

現状の社会状況は、円安ドル高傾向は変わらず、物価上昇が続き、一部の富裕層以外の可処分所得は上がってこない。いろんな報道もあるが、このまま高齢化が進んでいくと、社会保障料がどんどん膨らみ、若年層の高齢者への負担は間違いなく大きくなる

単純にこのデータを見るだけでも、いくらでも勝手な予測は成り立つ。

商業施設はどうなっていくのか?上記したように、地方から大都市への人口流出が増えていく。さらに高齢者の増加と若年層の負担増で、需要はデイリーで生活感ある商材に変化していく。(今もその傾向が増えている)そして車の技術進歩はあると思うが、高齢者増で車利用での買い物客は間違いなく減少する。つまり生活範囲は狭まることが予想される。また交通手段として鉄道が見直されれば、再度駅前志向は強くなるかもしれない。そうなれば、地方郊外立地の大型モール(RSC)は当然淘汰されていく。客数減、高齢化、車客の減ではそのメリットを生かせない。逆に狭商圏型のネバーフットSC(NSC)やコミュニティSC(CSC)も再浮上するかもしれない。(イトーヨーカドーの戦略通り)

ファッションはどうなっていくか?高齢化や若年層の税負担増の影響で、「安さ」やポイント戦略のような「お得感」の打ち出しが一番のキーワードになってくる。必然的に年代を問わない大型売場へお客様は流れていく。そして現状、小売業もSPA(製造小売業)が中心になりつつあり、それができる企業規模や企業力が必要とされる。さらに国内市場の大幅減に対応して、海外戦略を強化する企業しか残っていかない。「ユニクロ」や「無印良品」の企業としての方向性は理にかなっているといえる。

食品関連は、今後さらに価格志向は続く。ただ高齢化に伴い、支出のほとんどが食品という客層も増える。そのため食へのこだわりを持つ客層は、衣料へのこだわりを持つ客層よりは多くなってくると思う。食を含めたデイリー商品は企業力で浮き沈みがはっきりする。さらに現在も進めているテクノロジーの導入で無人化、省力化は進んでいく。また、アナログではあるが、宅配や移動販売も増えてくる。

最後に、高齢化に伴い、今後はさらにネット販売依存は高まってくる。販売方法も大きく変化することが予測され、無人店舗や作業の自動化なども進んでいく。

簡単に書き並べてみたが、次の世代の小売業にはなかなか足を踏み入れることはできない。昔からやってきた「好きな商品を売りたい」や「気持ちの入った接客」で成り立つのはマイナーな客層だけで、それが商売になるのかどうかも分からない。そして、次世代の小売業に足を踏み入れるには「気持ち」より「大きな資金」が伴ってきそうだ。

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