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FCでの小売業

セブンイレブンやローソンなどコンビニのことを書いていて、自分がそのFCのオーナー(フランチャイジー)になれるかどうか、そしてそのFCオーナーはどういう目的でFCをやっていくのかを考えてしまう。衣料関連ではワークマンもほとんどFCでの運営と聞く。

昔、DCブランド全盛時は、大都市には直営店、地方都市はFC店という図式があった。FC条件は各社力関係でバラバラだった。ほとんど、売場はFC先(フランチャイジー)が作り、商品の取引条件を個別に設定していた。売場内装が高い時代で、ブランド力があるほど、坪単価は上がった。余談だが、各ブランドにつく内装業者は高い内装費でものすごく儲けていた。取引条件はメーカーとFC先の力関係で差が出て、標準化されてなかった。商品を委託条件でできるところもあり、高い掛け率での買い取り条件のところもあった。ファッション業界のFCは現在もあるが、大幅に減ってきている。

FCはオーナーの思い入れで成功するかどうか変わると思う。商品を売っていくので商品への愛着がなければ成り立たないのではないかと思う。コンビニやワークマンのFCのオーナーはその商品への愛着やこだわりはあるのだろうか?

ネットで見ると、商品の思い入れとは別に、1つのビジネス、職業として選択しているように見える。脱サラをする、夫婦で始めるというスタートが多いようだ。商品やその店へのあこがれよりもビジネスとしての見方が強い。条件を調べていても、なんとなく仕組みはわかるが、そこで果たしてどれだけ収入が得られるか見えにくい。

諸条件を見ていて、一番わかりにくいのは商品在庫の負担についてだ。FC先(フランチャイザー)に商品在庫分の借り入れをしたことにして金利分を払っていくような仕組みのようだが、コンビニは在庫日数が10~12日とあるのでそこまで大きなリスクにならないが、ワークマンは在庫資産2400万と記されているので、回転率を考えるとなかなか返済に時間はかかりそうだ。前年度の在庫日数は85日前後となっているので年間3回転前後のようだ。そしてその商品リスクは完全に取引先が取ってくれるのだろうか?

さらに懸念事項になるのが、人的課題だ。社会政策的な時給の高騰や社会保険料の負担増など、利益を圧迫する大きな問題がある。コンビニも24時間営業なら当然スタッフ数は多く必要になってくる。ワークマンも家族経営で回せるだけの面積ではない。コンビニは今後、レジの無人化や万引き防止策など対策は進んでいくだろうが、それでも最低要員は必要になる。スタッフのリクルートはどんどん厳しくなる。

先述したが、小売業のFCはオーナーが「収入を得るための仕事」だけでなく「小売」が好きなことや「取引先の商品」が好きでなければ続かない。うまく流れれば問題は浮上しないが、数字が想定より下回ると、「不満」「不安」が大きくなりそうだ。

もう完全になくてはならなくなったコンビニは、商品ラインナップや改善ポイントは見えてきていて、省人化などのシステムも進んでいくだろう。ただ多発するFC企業(フランチャイザー)対FCオーナーの課題も改善していかねば拡大方向に進んでいかない。各社の競合は烈火するが、コンビニ事業はインフラとして今後も必ず残っていく業態だと思う。逆に衣料品中心のFCは商品回転率も悪く、品揃えも標準化しにくいのではないか?ワークマンのような業態はFC店舗と併せて直営展開を考えていかねば成長は厳しいのではないだろうか?特に「実用」から「ファッション」に変化すると間違いなく無理だ。

くどいが、FCのオーナーは本当にその商売や商品が好きでなければ続かないと思う。

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小売目線と政治

自民党総裁選とやらで、報道は大谷選手の話題以外は、ほぼそれ一色になっている。いろいろ見るけどどうもぴんと来ない。結果的には国のトップになる人間を選ぶのに、それでいいのかどうか。自民党の党首を選ぶ選挙に一般国民は口をはさむ余地はない。でもあまりにも国民の生活レベルの話とはかけ離れている。国益を守る事、外交政策など大きな視点は大事なことだとは思う。

人気の小泉ジュニアが「解雇規制緩和」の話題が出した。もともとは非正規雇用者を解雇する事に対する考え方で、非正規雇用者を解雇するときは正規雇用者も解雇が必要などの法整備の問題だった。それが正規雇用者の解雇要件を緩和するという方向に流れていて、おかしくなっているが、もともとそれが労働の活性化につながるのだろうかとも思う。おそらく大企業を想定しての発言のようだが、大企業を解雇された雇用者が果たして中小企業に流れるのだろうか?さらに流通業、小売業に流れてくるのだろうか?今、人的課題が大きいのは、建設業、運送業、飲食、小売業などと言われているがうまく循環できるのだろうか?結果は明白だと思う。比較的世間に近い話題だったからこそ盛り上がったのかもしれない。でもそんな話題のほうが考えやすい。

今、買い物に行くとほとんどの食品が値上げしている。そんな状況への経済政策の話もほとんど聞こえてこない。実質賃金をどう上げていくかも聞こえてこない。麻生副総裁がカップラーメンは400円くらいと答えて笑えなかったが、今はもうその値段に近づいてきている。現実として小売業界でも数多くの課題が出てきている。前述した賃上げの問題で、優位性の低い小売業には人が集まらなくなっているし、賃上げによって生じる利益圧迫がある。最低賃金を上げるだけでは賃上げは解決しない。当然既存スタッフの賃上げも必要になる。利益を上げるためにロットを増やして原価を下げたいが、それをするにはある程度の規模(資金力)が必要になる。中小企業は対抗できない。コストも資材高騰や人手不足や人件費高騰でどんどん上がっていく。さらに大手企業の寡占化が進み、新規参入へのハードルも上がっている。新しい風が吹かなければ、業界は硬直化する。

経済の最前線が小売流通業で、その流れで世の中の景気がわかると言われているが、経済政策は見えない。身近な政策が出てこない。今後も海外頼りは続き、現場を知らない役人や大会社の経営者で経済政策は決まっていくのだろう。何も変わらないのではないかと思う。

「木を見て森を見ず」かもしれないが、「森を見て木を見ず」も政治の本道なのだろうか?

■今日のBGM

店長は、まず売上予算を達成させる

巷で話題の兵庫県知事のニュースを見るたびに、公務員の仕事は結果が見えにくいのだなと感じる。小売業に限らず、民間の企業は「数字」が結果になる。公務員の仕事はなかなか数字化できない。やはり、「えらそう」「贈賄強要」「各種叱責」にはわかりやすい数字評価ではなく、ほとんどが「気持ち」でのやり取りになっている。

ここで「パワハラ」論争をするつもりではないが、小売業を考えると会社が求める「数値」への取り組み次第で上下関係の軋轢は変化するのではないかと思う。

小売業で店長に求められる数値責任は、まず「売上」。仕入れ権限があれば、次に「在庫」。あとは「売上」と「在庫」に関係するが、「利益」。それぞれ与えられた予算に対しての「予算比」、前年数字に対しての「前年比」。つまりすべて相関関係にはある「売上」「在庫」「利益」が数値責任になる。この与えられた予算数値と実績で評価は決まる。ただすべて数値は「売上」が起因となる。利益率は高くても売上総利益高は「売上×利益率」だ。「売上」が伸びれば、必然的に「在庫」は減る。つまり「売上」「在庫」「利益」は相関関係にある。それを考えれば、間違いなく店長の一番の職務は「売上」予算を達成させることだ。

「いい売場」とはどんな売場なのだろうか?答えはたくさんありそうだが、やはり「売れている売場」だと思う。お客様が買ってくれる売場だから、売れている。数ある店で立ち寄って買い物するということは引き付ける「何か」がなくてはならない。

売れていない店をどう立て直すか?私自身は常に値段に訴えた。売れない商品は値段を下げてなくす。いろんな見方はあるが、不稼働商品のセール(値段を下げる)をやることで、お客様の目は売場に向けられる。興味を持たれると、次のステップにつながる事が多い。再来店があったり、他の商品も手に取ってもらえるようになる。ただその時必要なことは、必ず内容を吟味して数値計画を立案し、売上予算は絶対クリアさせることだ。同時に気にすることは、セールで売上を取りながら、在庫はできるだけ減らしていく。さらにセール以外の売場を徹底的に整理する。売れてくるとスタッフも動きが軽くなる。セール以外でも売れ筋が見えてくる。

数値計画で利益率を考えてみる。平月売上3000千、利益率45%、在庫10000千の店で、不稼働商品1000千を半額で販売したとする。完売して売上は3500千と想定する。その月度末在庫を10000千で設定すれば、仕入れ額は4000千、原価50%で仕入すれば利益率は44.4%と-0.6%しかダウンしない。つまり、内容を吟味して数値計画を整合できれば大きな傷は負わない。

在庫を減らしてさえいれば、売上数値が安定してくれば仕入れが活性化するので利益は戻ってくる。売上が改善してくれば、売場スタッフとの交流も円滑になる。売場に笑顔が出てくる。実際、売り上げが好調な店は、売場の雰囲気は明るい。さらに上司からも、性格的に合わなくても、強く言われなくなる。

小売業では、売上数値さえ安定させれば、パワハラも軽減される。

・・・何度も経験してきた。

■今日のBGM

今の商業環境で、商売を始められるか?

昔、叔母と叔父が西宮で、それぞれ豆腐屋をやっていた。忙しくて年末には毎年両親も手伝いに行っていた。大豆から豆腐を作ってそれを売る。焼き豆腐はバーナー?で火を入れる。所謂製造直売で儲かっていたように記憶する。自転車で売りにも行っていた。土日も大変だと思ったが、商売は金になるものだと思っていた。

自宅で商売をする。つまり家賃はかからない。原価も安いので儲かる。うまいので売れる。さらに家族経営なので人件費もかからない。(厳密にはかかっているが・・・)商売の成り立ちだと思う。

今豆腐屋をやっていると、どうなっているか?SCで商売しなければ人は集まって来ないので、入店すると家賃は高い。そうなると家族経営は難しくなり、人を雇う。SMなどとの競合が厳しく値段競争に負けてしまう。この流れで個人経営はどんどん減っていく。さらにずっと味を求めてやっていても、商店街がなくなってきたのと同じタイミングで寂れていく。

現実はどうか?SCの数も過剰になり、乱立し、より集客力のあるSCに入店するには、敷居がどんどん上がってくる。入店するのに敷金や内装管理費やその他多くの経費が掛かる。当然チープな内装では入れない。出店経費は非常に高くなる。SCも集客を上げるために、「売れる店舗」をリーシングする。当然「売れる店舗」の条件は優遇される。そうなれば他の店舗に当然しわ寄せがあり、どんどん出店のハードルが上がる。つまり利益も上げていけるMDが必要になる。

衣料服飾品においても、現状のお客様の流れはボリュームプライス志向が強まっている。ハイエンドは少なく、その購買場所も限られてきている。価格志向に走れば当然商品を企画して大量に作っていかねばならない。国内ではコストが合わず、諸経費が抑えられる海外で生産する。そんな中でも円安が続き、コストも上昇する。売れる商品を作るには大量の購買データも必要になる。つまり大企業シフトはますます強まる。近頃は商品を作って卸していた企業が、自ら出店するケースが増えている。つまり「買い」での商売は厳しくなっている。

単店で戦えるとすれば、そのエリアでは「そこでしかない物」を売るしかない。ただ「そこにしかない物」は仕入なら原価は高い。利益対策も考えなければならない。卸企業の戦略としても1つの店舗(会社)に集中して卸すことはしない。ローカルチェーンでブランド戦略をしている店がこのセグメントに入る。実際そういう店は大型モールにはいくつか入っている。

今の商環境で、個人もしくは小資本で、商売を立ち上げても絶対成功しない。もし成功するビジネスモデルがあるのなら、「人」「物」「金」の回しやすい企業と共同で立ち上げていくしかないように思う。小売業はもう「とりあえずスタートする」スタートアップ事業ではなくなったと思う。

今日のBGM

トマム(星野リゾート)の事例と小売業

トマム(星野リゾート)を持っていた中国企業が不動産投資会社に売却するというニュースが今月初に流れた。どういうことかわからないのか、先日ニュースで説明をしていた。

星野リゾートはコンセプトを明確にしてリゾートでのおもてなしを大事にしたホテルを複数運営している。非常に評判が良く、心地よく過ごせる施設が多い。近年急成長しているイメージが強い。以前、資金はどこから出ているのかと調べたら、「星野リゾート・リート」という投資法人があり、そこから受託を受けて「星野リゾート」が運営をしているという仕組みが分かった。つまり「星野リゾート」は運営会社ということになる。トマムも今回売却した中国企業に以前183億で売却しており、その企業が今回408億で売却したということだ。売却差益が225億ということになる。

去年の7月に商業施設のPM(プロパティマネジメント)について書いたことがあるが、商業施設で起こっていることがホテル業界にも当然のようにある。企業に投資をすることと同様に、ホテルや商業施設に投資をする。そして投資先の収益率を高めてそこから利益を享受するか、再度投資物件を売却して売却益を得る。その投資物件の維持管理や物件価値を高めるための星野リゾートなどの運営会社や商業施設のPM運営会社が必要になる。

商業施設でも「イオンモール」と名前はついていても物件の所有者は別(イオンではない)の施設もある。そこを企画フィー、PMフィーをもらって「イオンモール」がテナントを集め、運営をしているということになる。詳細はわからないが、前回書いた「マリノアシティ福岡」も一部は「福岡リート」が所有しており、三井不動産がアウトレットの企画、運営管理を受託するという図式の可能性もある。

株と同じで不動産として、商業施設やホテルを所有することは近年増えてきている。ただこの状況は必ずしもいいことではないと思っている。小売業はずっと小売業を続けるために努力するし、観光業はお客様を呼び込むために快適な環境やホテルを運営する。その結果、つまりお客様の満足料が利益になってくる。それが小売業や観光業だった。証券化してしまうと「利益を出して売りぬけること」を優先する。商業要因以外(施設の維持管理面など)のわかりやすい投資はするが、よほどの根拠がない限りなかなか大きな投資をしない。そうするとどうなるか?長期的なビジョンはなくなる。証券化された物件はとりあえず物件価値を上げて、高く売り抜けることを目的としかしなくなる。

「そごう西武」の池袋西武も同じ流れのように思う。ヨドバシが土地代を出し、おそらく百貨店以上の収益は稼げると思う。そこで収益を確定して「そごう西武」を売り抜ければそれでいい。将来おこるだろう環境変化や池袋以外の残りの百貨店のことはあまり関知しない。「文化」を担ってきた西武百貨店は完全になくなる。

金融資産としての考え方と商業や観光業の考え方とには大きなギャップがある。商業施設や観光ホテルはお客様を見て商売し、「お客様第一」と考える。持ち主がファンドなど「金融業」になると、決定権は「小売業」や「観光業」になくなり、当然「金融業」になってくる。将来的ビジョンのジャッジも「金融業」になってくる。現状ではなかなか長期的な計画は決済されにくい。

商業施設のPMをしていて感じることが多かった「どこを向いて仕事をしているのか(お客様不在感)」が、観光ホテル業でも表れてくるのではないかと思う。同じ気持ちで同じ方向を向いて仕事をするのが難しくなるのではないかと思う。

■今日のBGM

マリノアシティ福岡

マリノアシティ福岡が8月18日で閉館だという。後継施設は三井不動産の「三井アウトレットパーク」との報道がある。

マリノアシティとはなぜか縁があった。ちょうどオープンした時、あまり意図はなかったが訪れている。当時は天神ビブレの店長をしていて福岡で勤務していた。その時はいい場所にあると思ったのと(観光として)、キーテナントの「ミスターマックス」とは違和感があるなと感じたぐらいだった。その後退職し、友人がマリノアで仕事を立ち上げて会いに行ったとき、アウトレットとして増床されており変化に驚いた。その時閉店していた店舗があり、いい場所だったので興味を持ち交渉し、その場所に出店した。調べてみると17年前だ。好調に推移し、その後会社の譲渡はあったが、今回の閉館まで営業している。月に1度は店巡回をしていたので200回以上は訪れている。

「三井アウトレットパーク」で成功するのだろうか?アウトレットでは難しいのではないかと思う。スタート当初はマリノアシティくらいしかアウトレットはなく、都心に近い(天神から30分くらい)メリットが大きかった。その後鳥栖にプレミアムアウトレットができ佐賀、長崎を止められ、北九州と広島にイオンのジアウトレットができ、北九州、山口、大分からのお客様を止められている。MDレベルは一般的に見ると三菱地所のプレミアムアウトレットが優っていると思われ、さらに天神に近すぎるアゲインストもあり、ブランドを集めにくくなってくる。加えて福岡のお客様はファッションにこだわりが強く、今回どれだけメニューを揃えられるかが課題となってくると思う。

SCとしては「三井ららぽーと」のほうがイオンモールよりショップMDが福岡にあっており、可能性は高いが、5km圏にある三菱地所の「マークイズ」やイオンの「マリナタウン」が成功しているとは思えず、よほどの吸引力のあるものがないと厳しいと思う。

ただ、環境的にはいい場所だし、マリノアシティ自体も成功した物件だった。もし、投資対効果を考えずにプランを提案するとすれば、現アウトレット棟は三井不動産の「ららぽーと門真」タイプ(アウトレットと共存)のららぽーとにしアウトレットを活かし、ハーバーサイドは少しグレード感を上げてみたらと思う。ハーバーサイドはヨットハーバーに隣接していてイメージはいい。神戸三宮の居留地のように百貨店(岩田屋?)の力でテナントミキシングはできないだろうか?もし食品SMを加えるなら「紀ノ国屋」「イカリスーパー」などの高級志向のSM誘致はどうか?話は逸れるが、絶対試みてほしいことがある。ハーバーサイドの駐車場は、1台の駐車スペースを広くして大型車を止めやすくしてほしい。駐車台数は減るが駐車代金を上げればいい。車の停めやすさは特に平日女性客には大きなメリットになる。小さなことだが差別化になる

マリノアシティ福岡は、観光スポットとしてもいい場所だし、自らやっていた店も順調だった。全く悪いイメージはなく、訪れるには本当にいいところだった。思い入れも大きい。ただ商売環境として、アウトレットの吸引力が弱くなってきたのは間違いない。商圏の半分は海なので、さらにもっと大きな吸引力が必要になってくる。

またいつか訪れた時、いい印象が続いてくれていることを期待したい。

どうもありがとうございました。

■恒例の日経新聞広告(見開き表裏)

きれいに見える商売

日経の記事に「ユナイテッドアローズが年初来高値・・・」の記事が出ていた。6月の速報値が既存店前年比19%増で成長を期待されての買いのようだ。

ユナイテッドアローズ(以下UA)はどうしても見え方がきれいな商売に見える。きれいな店やきれいに見える店は、なかなか信用できなくなってきていて、決算の数字も素直に呑み込めない。きれいに見せるのはすごく努力が必要だとは思う。もうすでにセレクトショップという分類ではなくなってはいるが、旧セレクトショップの位置づけを続けるのは大変だと思う。当然商売だからきれいなことばかりは言っていられないとは思う。

ファッション業界は中間層が減り、2極化傾向は続いている。UAは旧セレクトショップで上場した最も大きな企業だが、おそらく立ち位置は厳しくなっていると思う。おそらく洋服好きは減ってきていて、素材感やデザインが本当に受け入れてくれる客数は減っていると思う。昔、原宿界隈にあったUAが運営してきたセレクトショップもだんだんなくなってきている。周辺の知り合いと話していても、「ちょっと金はあるノンポリの30~50代」の受け皿になっているような気がする。

どこで数字を押し上げているかというと、アウトレット業態だと思う。「みんなユニクロだし、このショップのアウトレットなら大丈夫だろう」感覚で集客し、何とか数字を維持していると思っている。決算資料を見てみるとアウトレットは売上構成比17.2%を占めている。ちなみに店舗数の構成比は12.1%となっている。1店舗当たりの年間売上を計算するとUAなどの分類で6.79億、グリーンレーベルなどの分類で4.13億、アウトレットで8.36億となっている。売り場面積の問題はあるが店舗当たりの売上は最も大きい。さらに会社計の売上総利益率は前年差+0.1となっているが、アウトレットの利益率前年差は+3.5%(前年決算では+2.5%)となっている。アウトレットの利益改善で全体の利益率は改善したという数字だ。

さてアウトレットの利益改善はどうやってするのだろう?まず考えられるのは各プロパー店舗で売れ残った商品の値段を大きく下げないようにして売る事。例えば50%オフで売らずに30%オフで売るということになる。それには細かな管理が必要になる。だがおそらく、ほぼお客様は気づいていると思うが、UAのアウトレットはアウトレット用に商品を作っている。そのウエイトを上げて利益改善したと考えるのが普通だと思う。当然値段を下げるより、作ったほうが利益は出る。「ビームス」「シップス」「ベイクルーズ」などのアウトレットもアウトレット用の商品を作っている。セレクト系で作ってなさそうなのは「トゥモローランド」くらいではないか?

この商売をこの屋号(ブランド名)でやっていいのかどうかわからないが、長い目で見れば、お客様も気づいて厳しくなってくるだろうし、アウトレットに比重をかけるのは、会社の構造が変化して会社自体のマイナスになっていくような気がする。

きれいに見える数字も、会社が考えている本来の商売の結果なのだろうかと思う。

■今日のBGM

中小小売業の現状

近年大型モール(RSC)は「大箱化」が進んでいると書いてきた。それにより逆に大型モールの坪当たり賃料も減ってきているのではないかとの推論もある。近年の専門店の出店は「大型化」に対応できる大企業が中心で、大企業以外での新規参入はほとんど見られない。

現状、中小の小売業を取り巻く環境は非常に厳しい。もともと小売業は個人の能力で立ち上げることには限りがある。店を作るのに金がかかるし、出店するにも敷金など必要になってくる。さらには売りたい商品を仕入れるには、スタート時点で高い仕入れ代金(原価)を必要とする。

まず、中小企業の仕入環境がどんどん悪化している。もともとブランドセレクトの店は価格の決定権が取引先にあり、なかなか儲ける商売はできない。着実に店のイメージを固めることによって、儲ける商売にステップを上げることができる。海外で作ったり、ロットを増やしたりして商品の原価を下げていく。周知のことではあるが、円安が進むほど値段の設定が難しくなり、コストの整合できても当然ニーズは集中しており、納期が遅れてくる。会社の規模によって、調達が難しくなってきており、利益を出す商売がしにくくなっている。

次に、出店環境だが、ここまで何度か書いてきているように、コロナ以降SCの収益がダウン傾向にあると思う。その現実の下、当然賃料を融通できるSCはほとんどない。流れが悪く環境が悪化したSCも多いが、そこに大きな改装投資はできない。中小の小売業を育てるリーシングをできる環境ではない。逆にある程度の賃料で空床を埋めることを目的にした改装(通信系などの導入)や、テナントの大型化が進んでおり、スタートアップ企業や出店を検討している中小小売業は参入しづらい。大型モール創成期のように「店を育てる」余裕は全く感じない。

人的環境も厳しい。最低賃金は大幅に上昇しており、全国の加重平均時給は1004円で、東京、神奈川はすでに1100円を超えている。先日の日経新聞の記事では厚労省は、最低賃金「50円上げ議論」を進めていくという。さらに2024年10月からは51名以上の中小企業にも短時間労働者の社会保険加入が義務付けられていくことになっており、当然会社負担も増えていく。立ち仕事であり、さらに土日労働で、不人気業種になりつつある小売業に人材が流れてくるとは考えづらい。おそらく高年齢化が進んでいくと思う。

打開策はあるのか?なかなか現状中小小売業は打つ手がないと思う。もし、今会社を続けていればどうするだろうか?本当に戦える立地で確実に儲かる条件以外には出店しない。商品政策に関しては徹底的な在庫削減と細かな商品動向をチェックできる体制を作る。さらに、内部統制を図るため、現状の規定を見直し、修正する。攻める体制への再整備というところか?

業界としては、デベロッパーが小売店を育てる気概を持つことだと思う。MD面で必要な企業には出店条件を緩和させるとか、好立地に出店させるとかするべきではないかと思う。さらに「売れている」店を、批評をせず素直に評価してほしい。

いずれにしても、中小小売業は我慢の時で、内部に目を向ける時だと思う。

■今日のBGM

売場環境の維持…売場開発

売場環境を整える第一の問題は、出店場所を間違わないことになる。どこに、いくらの賃料で、どういう売場にするかを適正にジャッジする必要がある。

まず、自店をよく知っていること。自店の成功例、失敗例を列挙していると自ずとどこに出店すればいいか、やめたほうがいい区画かが、わかってくる。さらにその店舗環境(近隣テナントとの相性、フロアやエリア、区画の形状、大きさなど)でおおよその売上は読めてくる。

以前の会社ではモールの3階はほぼ失敗したし、小型店での失敗例も多く、小型店で開発した新ショップの既存店はほぼすべて退店し、新ショップでの出店は取りやめた。

さらに自店を知る上では、現状の既存店毎の数値状況も当然理解していかねばならない。自店の売上、収益予測は状況を理解した上作成し、それは当然賃料交渉時に必要になる。つまり提示賃料が収益上どう影響するのか計算する必要がある。売上と利益は当然ながら人件費や家賃、その他経費を考えればどれくらいの営業利益が出るかを計算する。過去そのエリアの責任者には契約内容を加味した損益計算書を契約年数分時系列で作成させた。さらにそこに当然投資が入ってくる。簡易的に予測損益を計算していたが、投資に対しての経費率は10~20%で初年度経費計上し、資産計上分は概略で残投資額の35%を減価償却費として毎年の収益予測に計上した。その計算で契約期間の収益を計算していた。SCからの条件で当然収益基準に満たなければ条件交渉するし、合わなければいい物件でも出店はしない。おそらくこの数字が一番の出店根拠になる。

もう1点必要なことは、開発担当者はいろんなSCをどれくらい見ているか、そこに出店しているテナントのMDや状況をどれだけ知っているかは絶対必要だと思う。SCを多く見れば見るほどそのSCの状況がわかってくる。リーシングに対しての優位性はSCにあるかテナントにあるかもわかってくる。出店要請された場所の隣接するテナントやゾーニングされたエリアは、どういうメンバーなのかで当然売り上げは変わってくる。SCを多く見てくると相性のいいテナントや相性のいい場所がわかってくる。さらにはデベロッパーも知る必要がある。デベロッパーとの相性もある。以前書いたが、同じイオンのモールでもイオンモールとイオンリテールでは窓口の対応が全く違う。さらに近年多い証券化されたSCとの交渉は、商売の話ではなく完全に不動産契約の話になり、土俵が違うため会話が全くかみ合わないことが多い。私自身SC側にいてリーシングもした経験もあるので、SCとの相性の違いも理解できる。

出店はきちんとした数字を見たうえで検討すべきであり、独断的にやるものではない。当然結果的にそうなっても、反省としてきちんと履歴を残すべきだと思う。

・・・実家に寄ったついでに大阪と福岡に行った。非常に楽しかったが、結局飲みに行っただけだった。

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久々の越谷レイクタウン

アウトレット棟増床になって初めて見に行った 。レイクタウンは3年くらいぶりかもしれない。

イオンモールの「kaze」とイオンリテールの「mori」、アウトレット棟の3棟あり、商業施設面積24.5万㎡、店舗数710、駐車台数10400台の店舗面積日本No1の商業施設となっている。

何でもあるけど、買いにくく、車、電車共に1時間以内の商圏内にもかかわらず、買い物にはほとんど行かない。所謂、名所的な物件というイメージになる。立ち上げた会社でオープン時から出店していたが、お客様が比較購買するには広すぎて、再来店時に必ずフロアマップをもっていて「場所が覚えられない」と言っていたのが印象的だった。大きすぎてなかなか比較購買しにくいSCだった。

モール(RSC)のことは今まで書いてきたが、これだけ多くのモールができると差別化もしづらくなっている。「シネマ」「家電」など目的で来る大規模なテナントがどれだけあるかだが、近年はそれも「わざわざ」でもない。「百貨店」や「セレクトショップ」で呼ぶにも、やはり買い物環境が違いすぎる。成り立つのは都市部に限られる。そんな中で門真のららぽーとを見て、大都市近郊での成功事例はアウトレット併設かなと感じてはいた。ただやはり大都市に近ければ近いだけプレミアムブランドはリーシングできないし、集められるショップのパワーがどれだけあるかが「わざわざ」のポイントになるかだと感じていた。

今回のアウトレット棟の増床で「わざわざ」は感じない。ただ郊外のアウトレットモールに行くなら十分のラインナップにはなっている。引き続き「ビームス」「ユナイテッドアローズ」「ベイクルーズ」はアウトレット専用ブランドでの展開で、新たに「ノーリーズ」も出店しているがここもアウトレット商品での展開になっている。セレクトショップもアウトレットブランドのショップで出店すれば売れないだろうなと、つくづく感じる。もうそろそろお客様も分かっている。他のテナント揃えでもメジャーの海外ブランドはあまりないが、ノンポリのお客様はつかめている。ただテナントを見ていると、リーシングは厳しかったようで、催事出店が多いようにも感じた。それでもレイクタウンのお客様としての選択肢は広がったと思う

それでも全体を久々に見て回ったが、moriに高知の「ジーンズファクトリー」やkazeに宇都宮の「アーク」などが出店していて、リーシングの努力も見えた。個人的な意見を言わせてもらえば、投資するならアウトレット棟の一部をなくしてでも、湖畔(?)に路面店を作って地方有名セレクトショップを集めたらどうかと思う。環境も営業時間もそこだけ変更して「わざわざ感」を作り出せればイメージもアップするし、その客層も広域から来店する。今のテナントロケーションなら単なるテナントの1つにしか見えてこない。残念に思う。

頑張ってはいるけれど、やはり大きすぎるし、そのランニングコストも大きい。それなりの賃料でリーシングしなければならないし、テナントはその賃料で出店しなければならない。小型店(~50坪)は出店場所がわかりにくければ、完全に埋もれてしまう。実際、催事や空床はあり日本一のSCでも維持するのは大変そうだ。さらにデイリー需要は少ないため、今後もイオンの看板SCとして投資を続けていかざるを得ない。例えば人工湖の周りの環境を整備して観光要素も増やすとか、小売以外の切り口もたくさん必要になってくる。

「色々大変だな」と思いながら1万歩以上歩いたけど、久しぶりに面白かった。

■今日のBGM

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