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GMSが勝てない理由を今頃気づいた

イオンの第3四半期の決算が発表された。連結決算では第3四半期までの累計で最終損益が156億の赤字で、前年同期の183億の黒字から大きく下回っている。営業利益に関しては主力事業ではGMS事業のみ192億の赤字であり、さらに前年よりも-177億と厳しい数字になっている。

やはり課題はGMS事業だが、一般的な目で見ている記者のコメントで「GMSの食品以外はユニクロやニトリなどの専門店で十分まかなえる」とあった。常にそれを指摘して、「GMSはなくなる」と言っているのだが、今更だけど専門店に勝てない理由がやっとわかった。社員のモチベーションと社内環境の違いだ。

GMSに入社してサラリーマンとしての目標は何だろうか?私自身もそうだったがある程度経験を積めば、まず店長職をめざす。当然売場責任者で数字を上げていくことが最初の仕事だが、そのまま商品のプロに進んでいく人は非常に少ない。食品は特に生鮮においては技術も必要で、その分野でプロになっていくこともあるが、衣料品や生活関連品の担当はずっとその仕事を続けることは非常に少ない。衣料品であれば売場責任者で数店舗勤務し、次のステップでバイヤーとして商品部に配属されるか、店での複数売場をマネジメントするポジションになる。バイヤーになっても商品部長を次のステップにはできない。商品部長へのステップとしても、やはり店長職の経験が必要で、店長を経験しなければ部長職にはなれなかったと記憶する。私の経験上、GMSでは店長を経験して営業関連、商品関連、人事管理関連へ異動していったと思う。つまり商品が好きで、商品一筋の人はほぼ皆無だと言える。

私自身も売場を5店舗6年経験し、その後商品部に5年在籍した。商品は楽しかったし、いろんな経験もした。ある専門店のオーナーに、小さな店だったが「違うことするから、店をあげる。」と言われたこともあった。(その後そこで売っていたブランドが大人気になって数億の売上の店になった。)だが、その後営業企画のポジションに異動になり商品とは離れていった。

つまり、商品を売りたくて、そして商品を作りたいという気持ちで入社してくる専門店の社員とは、まず立ち位置が違っている。会社のジョブローテーションも違ってくる。専門店の社員はどの商品が売れるか、どうやって売るか、レイアウトはどうするか等、売るために何が必要かを考えて仕事をし続ける。ステップとして仕事をするGMSの社員では絶対勝てない。

イオンなどGMSも商品供給の別会社を作ってはいるが、あくまでも形式的なものが多く、単なるモチベーションを変えるだけのものが多い。そしてその会社の従業員も形式的に組織に組み込まれるケースが多く、商品に対して前向きなモチベーションを持って仕事に従事してはいないと思う。さらに、取引先はまだまだ従来のGMSへの卸取引先が多く(衣料関係は名古屋、岐阜)その流れでMDを組み立てており、SPA型の専門店の商品量とコスト、販売力に完全に負けている。つまりモチベーションと取り組み方に大きな差が出ている。

今まで量販店が、なぜ本気で「ユニクロ」や「無印」(もともとはGMSの西友が開発したが・・・)を作れなかったのかと思っていたが、従業員のモチベーションと企業風土が違うからだった。今頃気づいたのかと言われそうだが、この立ち位置の差は大きい。

やっぱり、GMSは専門店に絶対に勝てない。

■今日のBGM

2025年に小売業で起こりそうなこと

この2年間、小売業を外から見てきて痛感することは、「消費者の完全2極化」ということになる。そして、おそらく中間層は完全に値頃感に流れていると感じる。そして、中間層はアッパーには向いていない。SMは値段の切り口で売上が上下しており、値頃感が一番の切り口になっている。衣料雑貨に関しても「ユニクロ」や「ニトリ」の値段が標準にされている。一方、百貨店は今年1月~7月で、インバウンド売上は前年比150.4%と大幅増にもかかわらず、トータルでは98.7%と前年数字を割り込んでいる。百貨店の国内需要は大きく落ち込んできており、アッパー層自体も大幅に減少していると感じる。

通貨の価値を見ても、円安傾向は続いており、将来的にも流れの変化は見えない。現状の流れはしばらく変わらないと見るのが普通の見方だと思う。つまり中間層のボリューム志向の流れは続いていく。

その流れもあり、2024年度はイトーヨーカドーのGMSの解体につながったが、25年度はGMS業態の存続がジャッジされる年になる。量販店業界でイトーヨーカドーと双璧であるイオンの2024年度中間決算を見ると、営業利益トータル986億のうち、金融Gで274億、デベロッパーGで273億、ヘルス事業で184億、専門店事業で141億となっており、その4Gで営業利益の88.4%を占めている。主要事業に中ではGMS事業が-82億で唯一の赤字でさらに前年より-117億という状況になっている。

創業者一族がまだトップにおり、さらに「物言う株主」も多くなさそうな状況では、なかなか祖業であるGMSをなくすことは難しいかもしれないが、外部から見ていてもGMS事業の厳しさはわかる。GMSでの食品事業を好調なSM事業グループと合流すれば、多く改善効果が出ると思う。おそらく赤字の衣料G,住居Gを解体し、GMS事業を見直すことでグループの収益は大きく改善する。そして今後苦戦が予想される国内デベロッパー事業(郊外モール事業)でも、GMSをなくすことでプラス要素での改善ができる。冷静に見れば、もう大型モールにGMSの存在価値はない。

それに絡んで、ヨーカドーの跡地の活用についても話題になっているが、GMSの跡地問題が活性化する。現状話題が多いSMの流れに合わせて、「SM+大規模専門店」中心のCSC(コミュニティSC)、NSC(ネイバーフッドSC)の開発が進んでいくと予測する。イオンモールが先行する大型モール(RSC)が標準化されており、テナントMDも新鮮さがなくなってきている状況下、価格競争が活発で話題の多いSMを主人公とした環境づくりが注目される。GMS跡地を活用しての「SM+マグネット要素の強い専門店」などのSCの開発が進んでいくと思われる。もうすでに「ユニクロ」や「無印」はRSC以外にも目を向けており、「アダストリア」もヨーカドーとブランド開発をしている。特にGMS撤退跡地の活用にはコスト的にもハードルは高くなく、現状のRSCの「いいとこどり」をすれば高効率なSCに変わることも可能だと思う。

百貨店については、その存続はもう大都市だけになり、地方都市にあった百貨店は百貨店でなくなっている。百貨店の定義自体がもう見えなくなっており、地方百貨店の「高級GMS化」が進んでいる。百貨店が高級ブランドのある店と定義するのであれば、どのブランドがあれば百貨店なのだろう?まだ「ヴィトン」のある店は多いが「エルメス」などは調べてみれば11都道府県にしかない。おそらく地方都市の中心市街地の百貨店への求心力は弱まり、地方は郊外モールが地域一番店になっている。

消費者の2極化はどんどん進み、ボリュームゾーンへ志向はどんどん増える。それに合わせて業態の勢力図は大きく変わる。

■今日のBGM

大型モール(RSC)にGMSは必要ない

昔は「洋服好き」だったけど、現役を離れると、おじさんが着てはいけない「無印」で買ったパーカーに、昔の「Lee」や「リーバイス」のデニム、寒いときは何年も前の「バブアー」のキルティングや、いつの時代かわからない「モンクレール」のダウンを着て買い物に行っている。毎週のように出張していた時に着ていた服はタンスの中に眠っている。そうなってくるとSCに行っても立ち寄る店は決まってくる。あるデータ会社によればSCの客層は50代以上がほぼ半数を占め、30代以上がほぼメインの客層になっている。仕事真っ盛り世代から外れてくると同じようなワードローブになるし、見に行く店も決まってくる。ましてやGMSの洋服は全く見ない。

イトーヨーカドーの売却の話題もあり、このブログでもGMS不要と言ってきている。ただSCがなくなればよいとは言っていない。RSC(大型モールイオンモール、ららぽーとなど)、CSC(旧GMS型SC)、NSC(SMを中心とした小型版)は形を変えながら残っていくとは思う。

昨年からイトーヨーカドーの衣料服飾の売場とコラボしているアダストリアの「ファウンドグッド」をたまに見ている。おそらく各店舗の立地と客層の差が大きくて戸惑っているのではないかと思う。立地を選んで出店してきた企業(アダストリア)だけに、アリオ型店舗とGMS型店舗のギャップに対応できていないようだ。アダストリアのブランドなら出店しない立地にも展開せざるを得ない。ユニクロのニーズが強そうな客層の店と、しまむらに近い客層の店のギャップに苦しんでいそうだ。どちらかというとミセスシフトになってきているように見える。GMSが苦労している衣料品の難しさに直面しているようだ。現状の取引条件がわからないが、商品リスクが今後の課題になりそうな気がする。

近隣のイオンの2階衣料の改装は、モールの弱いところをイオン直営で補おうという改装に見えた。本来はGMSの売場は確立されていて、GMSで満足できないところをテナントで補い、客層の幅を広げ、広域からの集客を図るのがモールの考え方だと思う。おそらくそのイオンの売場が本来狙うべきターゲットは「ユニクロ」や「無印」に奪われてしまっており、テナントで補えていない「子供」や「高年齢層」に売場をシフトしてしまっている。GMSの標準的な売場でなく、イレギュラーな売場に変化している。雑貨関連も同様でGMSの売場は「ニトリ」や「無印」、「ABCマート」「100均,300均」で代替えできそうな気がする。

食品は、売場の大きさから品ぞろえの幅が広く、定期的な「全品%オフ」の販促で一定の評価はあるが、近年のSMのパワーは強く、逆に大きすぎることが買いにくさにつながっているようにも見える。

イオンのGMSは、過去のGMSの出店計画とモール(RSC)の出店計画にギャップが出てきており、標準化されたつもりのGMSが標準化されていない現実がある。つまり従来ならGMSで出店しなかった場所に出店していくのでMDにずれが生まれている。さらに得意とするボリュームゾーンも大型化されたテナントに顧客を取られてしまっているのが現実だ。一方、成功したGMSの定義を踏襲していたヨーカドーは、モールの出現でコアターゲットのお客様を奪われ、モールに行きにくい客層(高齢者など)が多くなり、今までのGMS成功の定義が通用しなくなりGMS業態から退いていった。

ららぽーとのようにGMSをキーテナントにせず、個性あるテナントミックスをしたRSCのほうが買いやすいのかもしれない。ただ、イオンモール先行の中、現状では成功する場所は限られているとも思う。

■今日のBGM

イトーヨーカドーを売却する?

セブン&アイホールディングスがヨーカドーを売却するというニュースが出ている。これはコンビニ事業にとって、いい事なのだろうか?詳しく読むと、コンビニ事業以外を分離したヨークホールディングスの株式売却のようで、このヨークホールディングスにはヨーカドーやロフト、赤ちゃん本舗など31社が含まれている。各社切り売りするのか、すべてなのかの詳細は見えていない。いずれにしても外資の買収案に対抗するため、低収益の他事業を切り離して株価を上げていくというのが今回の対応になっているということだ。

もうコンビニ事業単体で、数字を伸ばせる体制になったのだろうか?もともとはPOS管理が進んでいたGMS事業やSM事業との情報共有で、大きくなっていったのだと思う。今でも数字が伸び悩んでいるとはいえ、日販売り上げを調べてみると、セブンが67万、ファミマが56万、ローソンが55万となっていて、圧倒的な販売力を持っている。

日本人的な発想で言えば、なかなか育ててくれた親会社は切りにくい。セブン&アイの井坂社長はセブンイレブンの出身で、ヨーカドーの出身ではない。それでもここまで大きくなった経緯は十分に理解している。ヨーカドーの衣料品をなくしGMSから撤退させていった「親を否定する」ジャッジは大きな判断だったが、果たしてヨーカドーを売却できるだろうか?イオンGがまだ赤字のGMS事業を続けているのは、創業家への無駄な配慮だと思っている。コンビニ事業単体で十分成果は出せると考えれば、ジャッジできると思う。

昔、イオン内の研修で「コンビニ業態について」という課題で、グループで研究し半年近く打ち合わせをしたことがあった。その時、「イートイン」や「おでんと酒」の提供などそのあとコンビニで実行された企画もあり、面白い経験だった。ちなみにイオングループの「ミニストップ」はスイーツなどが人気で企画力は素晴らしいが、いまだに日販42万となっていて後塵を拝している。その時、今後コンビニはインフラとして絶対必要になってくるとは感じていた。人口減少が進み、過疎化が進む今、買い物をする場所や集まる場がなくなってきている。そのエリアの中心にいろんな機能を持ったコンビニがあれば本当に便利なものになると思う。そういう意味でセブンイレブンの店舗網は将来も魅力的なものだと思う。課題はFC制が続くかということ、さらに過疎地の生活拠点としてのコンビニに「公」が介入できるかということだと考える。

もうヨーカドーやヨークマートからの情報やシステムから学ぶことがないなら、打算的に動いたほうがいいように感じる。人情や過去の成功体験に引っ張られている「西」の企業体質と違う動き方のほうが、「東」のイトーヨーカドーグループらしく見える。

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CSC(コミュニティショッピングセンター)にはGMSは必要?

ずいぶん前のブログに「自宅近く15km圏には8つの大型モール(RSC)がある」と書いている。RSCとは、定義から規模が4万㎡以上の規模のSCを指している。ただ本来の意味のRSCはおそらくもう2~3SCしかない。他のSCはイオンでいうと「(ジャスコ・・・)と(80?)の専門店」という昔のGMSの大型版にしかなっていない。分類で分けると中規模SC(敷地面積2000坪~5000坪)をCSC(コミュニティショッピングセンター)と分類されており、その定義ぐらいの価値しかないように感じる。

15km圏でNo1のRSCは「ららぽーと富士見」であり、それに続くのは「コクーンさいたま新都心」だと思う。ちなみに富士見は8万㎡、約290店舗で売上は486億、コクーンは7.8万㎡、約270店、売上は430億となっている。2つのモールに共通しているのは、GMSは入居していないということだ。(コクーンのヨーカドーはSM)テナント数も多くテナントのバラエティも豊富だ。ファッション系テナントでは富士見にはセレクト系でUAは「ビューティ&ユース」「グリーンレーベル」、ジャーナルで「レニューム」、ライセンスでは「ヒューゴボス」「ラルフローレン」、コクーンにはビームスの「ビーミング」、「グリーンレーベル」「アルマーニエクスチェンジ」「ラルフローレン」などがある。両モールともテナント数も多く、幅広いラインナップになっている。

前述した8つの大型モールのうち5つはイオンモールだ。いずれもテナント数は多いが、類似しているテナントが多く、テナントにあまりわざわざ感はない。となると必然的にGMSのニーズも出てくる。さらに3つはイオンモールの物件でなくイオンリテールのモールになる。そうなればどうしてもGMS強化に動き、テナントリーシング力は弱くなってくる。

そのうちの1つである、イオンモール北戸田でGMSの2階部分を全面改装していた。この改装で遠隔地からお客様を呼ぼうとしているのかというと、大きな疑問符が付く。売場半分はキッズリパブリックとして子供関連を終結。その他の衣料の改装は、おそらくテナント揃えで弱いところを広い面積をとって引きこもうとしている。つまり、スーツやフォーマル、ミセス、アダルトの打ち出し強化が主で、量販店ブランド(ジュンコシマダパート2、ポロ、ケントなど)も固めて、在庫リスクもヘッジしている。トップバリュコレクションはショップとしての見え方は弱く、完全にユニクロには太刀打ちできず、アダルトカジュアルの店になっている。飯の種のアンダーウェアを奥に持っていき、利益構造がどうなるかわからない。商圏的には子供は増えている珍しい地域だけれど、足元商圏の強化が主目的で、おそらく大きな効率改善はできないと思う。そもそも、高所得者層などの新しい客層(ブランドニーズ等)を呼べているとは思えない子供ゾーンの拡大で、成功している事例はあるのだろうか?

あくまでもテナントの弱いところを、GMSで補うという改装のように見えた。つまり、足元のお客様のための改装であって、広域からの新しいお客様を引き込むものではない。狭商圏でのSCになってしまっている。狭商圏で4.4万㎡の売場面積は大きすぎる。テナントの欠落から見れば、大型家電の導入や、ニトリや100均の大型化、GUの導入などのほうが喜ばれたのではないだろうか?当然賃料との兼ね合いもあるが、今回の投資対効果には疑問符が付く。

以前に書いたが、サラリーマンの発想する改装はいらない。こういう改装で満足し続けるのなら大きな面積のモールは必要ないのではないかと思う。

■今日のBGM

メーカー機能はどうなっていくのか

ネットで上場アパレル12社の上期決算がまとめられていた。(ユニクロと無印は決算期の兼ね合いで本決算だった。)ユニクロ、しまむら、無印、アダストリア、ワールド、オンワード、TSI、UA、ワークマン、三陽商会、バロック、Tベースの12社だ。数字についてはいろいろあるが、それよりこのくくりで一緒にできるんだというのが感想だった。感覚的にはワールド、オンワード、三陽商会、TSIはメーカーのイメージが強い。ただ直営展開も増えていて、小売りのイメージも大きくなってきてはいる。

40年以上前小売業に入社した時は、オンワード、三陽商会はメーカーで主な販路は百貨店だった。ワールドは専門店卸のイメージが強くそこから大きくなっていった。それがDCブームから自主の店を持つようになって、小売業の規模が増えていき、SCの拡大に併せてさらに形を変えてきている。ワールドの決算説明書を見ると、卸事業はプラットホーム事業に含まれているように見える。その事業の売上構成比は25%で、おそらく直営事業を指すブランド事業の構成比65%を大きく下回る。

小売業が利益率を上げていくには、当然仕入原価を下げる必要がある。その流れで当然上場企業は、商品を自らの手で作り始める。海外工場を作ったり、提携したりしてコスト(商品原価)を削減していく。そこまでいかなくても、ある一定の規模になればメーカーと組んでロットを大きくして原価を下げていく。所謂OEMと呼ばれる手法で商品を作り始める。メーカーの展示会で商品を発注するのは、多く発注できない個店や小規模企業になる。発注が小ロットになれば当然仕入原価は高い。世間の流れと同様に、小売業の購買客の流れは2極化しており、一般的には値頃感を求める客層が増えてきている。そのゾーンの競合は厳しくお客様の値段に対する要求もどんどん厳しくなっている。仕入原価が高いと当然売価も下げにくい。

中小規模小売店の商品の調達は、問屋やメーカーになる。小ロットでの発注では、メーカーリスクになるケースが多くなる。ある程度の量を作ることで当然コストは下がるが、発注量が少ない状況で商品を作ると、リスクはメーカーが持つことになる。もし受注が付かなければ、商品を作っても原価をさらにダウンさせて販売することにもなる。そしてある程度の売上の読みを持って、受注なしで先行して作成していく商品も多い。

小売業の現状を考えると、メーカーの商品リスクはどんどん上がっているように感じる。さらに中小小売業の経営状況も悪化している。大企業は自前で商品を作る。この状況でメーカーは商品を作り続けていけるのだろうか?この記事にあった上場アパレル12社のメーカーからの仕入は減っているだろうし、メーカーだった企業も直営事業に重きを置いているように見える。卸中心の大手名古屋のクロスプラスの決算説明書を見ても直営小売分野の売上が全体の20%まで上がってきている。

社会環境を見ると、どんどん値段合戦になっているように見える。そうなると、商品調達先のメーカーへの要求がどんどん厳しくなってくる。中小小売店が厳しくなっていく環境下で、メーカーの今後の商品戦略が難しくなってくるのは間違いない。

■今日のBGM

サラリーマンが提案する改装

近くのイオンでGMSの衣料品中心の改装をしている。まだ出来上がってはいないが、浦和美園で見た、「トップバリュコレクション」の改装のようだ。

以前「トップバリュコレクション」の改装については書いたが、この投資対効果は十分な数字なのだろうか?おそらく各カテゴリーを明確にして区分し、縮小コーナー化していき、各カテゴリーの在庫を減らす。その空いたところに、量販店メーカーブランドを加える。売上アップより効率アップの改装だと思う。ただコーナー化することによって担当者を張り付ける必要も出てくる。そう考えると、間違いなく大きな効果はないだろうと思う。

この改装の発議者は誰なのだろう。店長は発議者ではなさそうだ。本部主導の改装だと思う。間仕切りの壁と、それに伴う什器などで大きな改装ではないが売場面積が大きいので相応の投資金額にはなる。サラリーマンがいかにも仕事をしている流れでやっている改装で、GMSの衣料の大幅な数値改善という根本的な問題は解決しない。

店舗改装は気持ちが入らないと成功しない。現場に近い人間が発案して、プランをまとめていくほうが説得力はある。細かい数字根拠もそのほうが現実味を増す。その提案した改装概要を、図面に落として、概算の投資予算をはじき出す。改装によって導かれる数字の改善と総投資金額と投資内容での経費処理から、改善効果を計算し、改装決定者に諮る。会計処理上10万円未満の什器は経費処理して、それ以上は資産計上となる。資産は毎年償却され経費計上されるのが一般的だ。

ビブレに在籍時は改装の発議はいろんな立場でしてきた。そういう意味では面白い会社で、現場責任者である店長が改装の発議をすることもできた。ヤングターゲットの商業施設だったこともあり、ファッションの動向が目まぐるしく変わり、それに呼応するべく多くの改装をしてきた。数億単位の改装もあり、40前後の若造に投資を託してくれた。ただ会社の流れが悪くなり、活性化できる改装が後手後手になってきた。

気持ちを持った社員が、そのスタッフに気持ちを持たせて計画し、思いを持ったスタッフが運営していくのが理想の改装だと思う。

イオンの改装を見ていると、少し出血を止めるべく改装で、本来の原因をとらえてどうしていくべきかの改装ではないと思う。おそらく商品部も店のラインもそれにより大きな変化が出るとは感じていない。根本的な問題は「GMSにファッションは必要か」ということであり、その結果は出ているにもかかわらず、先延ばししているだけとしか思えない。

サラリーマンがオーナー社長(会長?)には、なかなか意見できない。オーナーがその結果をジャッジし結論を出すまで、無駄な投資は続いてく。オーナー企業はどこでもありがちなことだ。

私事であるが、以前このブログにも書いたが、イオンの岡田社長が「イオンはELP(エブリデイロープライス)でそれを徹底する」と訓話し、それを聞いてある意味感動し、納得はしたが、それが退社にもつながった。あれから20年以上たち、あの時の訓話は、それ以降ぶれすぎているようにも感じる。ELPを目指しているとは思えない。もうそろそろGMSの衣料品は縮小から廃止へのジャッジが必要だと思う。イトーヨーカドーはオーナーの力がなくなったので衣料品はなくなっていっている。

誰かが首に鈴をつけないと・・・

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数字を読む

実家に用事があり、また例によって大阪、福岡で飲んできた。新幹線は報道にある通り、外国人観光客が7割くらいで、日本の観光立国政策は順調に進んでいる。

8月の百貨店売上が4034億で、既存前年比103.9%と発表されている。インバウンド(免税売上)は463億で前年比145.7%とのことである。逆算すると前年の百貨店売上は3883億でインバウンド売上は317億となる。インバウンドを除く売上で計算すると前年比100.2%になる。これをどう読むか?インバウンドは新宿伊勢丹、日本橋、銀座三越、梅田阪急、高島屋大阪店などの人気の百貨店に集中している。逆に数字を読めばインバウンド抜きでは、楽観できる内容ではないようにも見える。さらにインバウンド売上前年比の推移を見ると今年度は5月が前年比331.2%でピークとなっており、今年8月の前年比145.7%は過去2年で最低の数字になる。さらに過去2年で200%を割ったのも初めてのことだ。インバウンドの流れも落ち着いてきたと読める。これで百貨店は順調と言っていいのか?さらに地方百貨店はおそらく今後も厳しい流れが続いていく。

続いてチェーンストアの売上も確認してみる。8月の売上は10869億、前年比103.8%、客数100.4%、客単価103.0%で、点数は前年割れとなっている。併せて物価上昇率も発表されており、総合では前年比103.0%と客単価と同じ数字になっている。ちなみに食品の物価上昇率は前年比103.6%、そのうち生鮮食品が107.8%と報告がある。総務省の発行した数字なので少し実感からは離れている。単純に数字を見ると値上げ分の売上増とみることができる。点数が前年割れしているところに節約志向が見える。まだ給料アップのプラス要素は見いだせない。

百貨店もチェーンストアも同じくらいの伸長であるが、数字に隠れた厳しい要素が山積している。

インバウンドの数字とは離れるが、イオンモールの数字について触れる。イオンモール(国内)はおそらく今後厳しくなると、このブログで書いている。先日イオンモールが好調という記事を見て、想定と違うのでイオンモールが発表した第一四半期決算を確認した。営業収益1094億(前年比111.4%) 営業利益155億(前年比107.8)と伸びている。内容を見ると、国内収益847億(100.7%) 営業利益118億(114.2%)、海外収益248億(116.0%)営業利益38億(103.5%)となっていた。国内好調要因はレイクタウンとイオンモール太田の増床効果とある。イオンモールの営業収益の大部分はテナント賃料であり、テナント売上ではない。国内専門店の売上前年比は103.1%と発表している。(賃料収入が100.7%ということになる。)増床効果で何とか賃料は前年確保という数字になっている。必ずしも営業収益に関しては、国内事業は好調とは言えない数字だと思う。

当然、団体発表やIRはマイナス志向のことは多くは発表しない。数字をさかのぼって分析したり、見えない要素を探してみたりすると、浮かび上がってくるものもある。

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セルフレジの功罪

近隣のSMはどんどんセルフレジに変わっている。よく使っているヤオコーとイオンに限定して推測でのレジ台数だが、曜日によって変化はあるが、平日だとヤオコーは有人レジ5台前後、セルフレジ20台前後の体制、イオンモール内のイオンは有人レジが10台前後、セルフレジ、レジゴー各20台前後の体制のようだ。近隣その他のSMもセルフレジへの移行を進めている。SMはレジ対応にかかる人件費は非常に大きく、セルフレジへの移行は急ピッチになっている。個人的にはイオンではレジゴーで対応しており、スムーズにレジ対応が終わるのと、買い物金額がわかるので便利に使っている。ネットでレジゴーの記事を読んだが、ある程度万引き防止のシステムはあり、さらに子供たちが楽しんでやっているらしく客単価も下がっていないらしい。ちなみにその他の業種でもユニクロ、GU、ダイソーなどがセルフレジをスタートさせている。

ここからはあくまでも私感で書く。SMでは短時間労働者への待遇改善(時給、社保など)による負担が大きくなり、人件費問題は非常に大きいと思う。気になるのは、セルフレジ化により人員を削減しただけでなく、その人員分をどう売場に反映させているのかということだ。SMへの買い物は午前中行くことが多いが、店によって品揃えの充実度が全く違う。特に生鮮品やデイリー食品などの必要な商品の品揃えに差が大きい。つまり、人を減らして経費調整がわかる店と、レジ要員を減らして売場対応を強化している店の差が非常に大きいように感じられる。当然後者のほうが好感度は高いが・・・

結局、経費削減だけでは、効果は短期間になってしまい、逆に従来の営業面にはあまり効果がでてこない。結果として、次年度はさらに何だかの経費削減していかねばならない状況が続く。その経費削減効果を次のステップのプラスに持っていけるかどうかが課題になるのではないかと思う。上記した午前中の品揃えができていないSMが、そのプラス要因で、生鮮売場やデイリー食品が充実したらお客様の信頼感は増す。次につながる。個店でいうと、厳しい店が賃料を下げてもらっても、その削減分は改善するが、削減分をプラスに転じさせなければ、結局は続かないのと同様のことになる。そのプラス要因で他のマイナスポイントを改善していくこと、さらにプラスになる何かを見つけることが大事だと思う。

本当によく言われることだけど、経費を削減して利益が出るのは一過性のことで、そのメリットを生かしながら、営業面でプラスになる戦略を考えていくことが重要なことだ。経費はマイナスすれば0以下にはならない。営業のプラスはずっと青天井かもしれない。

余談だが、先日食品を買いに行く途中にホームセンターに立ち寄った。欲しい商品の形状がわからず困っていて、担当の従業員を呼んでもらった。サイズが明確でなかったので買えなかったが、その女性従業員の素晴らしい笑顔と対応で、あまり利用していないホームセンターだったが「また行こう。」という気になった。

無人化もいいけど「人の力」もまだまだ大きい。

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GMSの終焉 ➁

前回イトーヨーカドーのことを書いたが、ここでは以前も記したが、イオンのGMSについても触れたい。企業の動き方や方向性の違いがあるが、イオンもGMSはもう終わりに近いと感じる。

イオングループの決算説明会の資料を見ると、2024年度はGMS事業で3.4兆円(関連会社込み)の売上で企業での構成比35.4%、で営業利益は283億円で構成比は11.2%となっている。グループの営業利益は金融、デベロッパー、ヘルスウェルスの順で、その3事業でグループの56.3%を占めている。近年は合併を重ねてSM(スーパーマーケット)事業が大きく伸長しており、営業利益ではGMS事業を大きく上回っている。尚、GMS事業のうちSM(食品)の構成比は2023年で63%であり、物販は食品に負うところが大きい。多少の計算方法の違いはあるかとは思うが、ヨーカドーの2021年度の食品構成比は67.1%となっている。以下に述べるテナント賃料の計上次第だがヨーカドーの状況とほぼ変わらない。

決算数値の詳細は、各社違ってくるので一概にジャッジはできない。イオンの大型モール(RSC)にはイオンモールが運営している物件と、GMSであるイオンリテールが運営している物件がある。この営業利益はどう分けているのかわからないが、おそらくそれぞれに計上されていると思われる。この営業収益は大きい。2013年にイオンリテール物件の管理運営をイオンモールが受託しているが、あくまでもイオンモールの収益はPMフィーということと発表されている。この時点でイオンリテールのモール型物件は54モールと記述されており、モール物件自体はイオンモールに移管されていない。とすればイオンリテールのテナント収益は大きく、衣料品売上構成比はヨーカドーより低いかもしれない。

おそらくGMS事業の非食品の構成比はどんどん下がっているだろうし、赤字状況だと思う。イオンリテールの衣料月坪売上は100千以下だと聞く。普通に考えれば商売になっていない。もともとGMSの衣料の儲けの大半は、インナーウェアだった。肌着からスタートしたGMS企業も多かった。利益も取れるし、商品の回転も早い。呉服からのスタートが多い百貨店との違いが現代の商売の違いにつながる。得意なインナーを「ヒートテック」や「エアリズム」のユニクロや他の専門店に奪われ、中心客層の高年齢層までが専門店に目を向け始めたことが、GMSの衣料品からの客離れの要因の1つだと思う。

衣料品は、もともとEDLP(エブリデイロープライス)と言い続けていたのが、どう間違ったのか「イオンスタイル」で付加価値を求め始め、失敗した。ヨーカドーが伊勢丹からカリスマバイヤー?を招聘して失敗したのと同じ道をたどった。

GMSはもう完全に終わっている。イオンはデベロッパー業態のイオンモールも安易なショップMDで頭打ちになってきている。イオンモールの成功のポイントは当初三菱商事と合同で開発運営しており(ダイヤモンドシティ)、流通業以外からのポジションで開発したSC(営利よりあるべき姿を求めた)でスタートしたことが非常に大きかった。近年はその魅力が薄れてきておりテナントMDはららぽーとに後れを取っている。小売業としてのイオングループの課題は、GMSを解体して思い切った収益の構造変革をすることが必要になっている。逆にそれがデベロッパー業であるイオンモール自体の活性化にもつながるかもしれない。さらにSM事業やヘルスウェルス事業の活性化にもつながる。

鈴木敏文氏がいなくなったヨーカドーは、株主である外資が決断を迫った。イオンは誰が創業者一族の首に鈴をつけに行くのだろう?

■今日のBGM

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