カテゴリー: 経営管理 (1ページ目 (16ページ中))

小売業で売上総利益率だけ上げることは簡単なこと

友人から、ある売場写真が送られてきた。その売場は数年見てないが、ある程度想像はできた。ずっと思っていたことを書く。

標題の利益率を上げるには。

● 原価率の低い商品をどんどん仕入れる

利益率40%で在庫が売価で10,000(千)ある店の利益率を50%にするには、原価率40%の商品を売価10,000(千)仕入れればよい。

→簡単な話である。但し、4,000(千)の支払いが発生する。資金力があれば別に問題ない。

● 売れなくても値段は下げない

値段を下げると利益率は落ちるので、値段を下げず定価販売を心がける。

→上記設定で、当初在庫を売れないので全品20%オフにすると利益率は44.4%まで落ち込む。そんなことはしない。

● 無理しても売場には陳列し、もしそれが不可能なら古い商品は倉庫へ送る

売場が商品であふれかえり、当然通路幅も狭くなるが売場に置ければ問題ない。ボリューム感が出ていい。

→以前、ライトオンやジーフットについて書いたように期末に在庫評価損として利益率を調整し計上する。

● 売場イメージと会わない商品でも利益率優先で仕入れる

売場コンセプトの整合ができないが買上げ率が上がる商品を導入する。売れて利益率がアップすればいい。

→接客をせずに売れればベスト。人件費も多くかからない。

残念ながら、私自身は商売を長くやってきて、ずっと反対の事がいいと思っていた。

● 売れる(売っていきたい)商品を仕入れる。原価率は低い方がいいが、売れることを最優先する。

→キャッシュフローは店別の管理をする。さらに在庫金額は予算上でも設定する。

● 納入からの消化率を見て、不稼働商品は値段を下げる指示をする。

→まず不稼働商品の処理を優先する。金に換える。企業戦略商品のデータ管理で、回転率を優先し他店移動や価格修正の指示を出す。

●「商売の基本は在庫」の意識を持って、常に回転率の指標に向かって数値管理をする。

→倉庫は持たない。通路幅も最低90センチ以上を徹底する。

● 売場のメイン客層ターゲットに向けた品揃えを徹底する。

→客層の幅はできるだけ広げない。広げると在庫が増え、ターゲット客層の商品密度が薄くなる。誰に向かって商売しているのかわからなくなる。

小売業として「売上」「在庫」「利益」は大きな3つの指標となる。3つの指標がうまくバランスが取れればいいが、「在庫」と「利益」が相反関係にあることが多い。「売上」を確保するのに「利益率」を優先するか、「在庫」を優先するかで考え方が全く違ってくる。個人的には間違いなく「在庫」を優先してきた。当然「利益率」は高い目標を目指すが、あくまでも商売の結果だと思っていた。

最後に、写真を送ってきた友人からのコメント。「在庫量は増加、品揃えの質が悪化」。

■今日のBGM

金の事を考えないスタッフには大事な仕事は任せない

前回のブログを読み返していて、少し大きな世界の事を書きすぎたと反省した。個人としてサラリーマンも会社経営も経験して、大切なことは「金の事を考えて仕事をする」ということだ。

企業を経営すると一番気になるのは資金繰りだ。上場企業になると営業と管理に別れそれぞれの与えられた範囲での仕事になる。中小企業はそうもいかない。特に中小小売業は毎月のキャッシュ残高を気にしていかねばならない。大企業で働いていた時はいかに気楽に仕事をしていたのかと痛切に感じた。

「お前の好きなように仕入れてやってみたらいい」。小売業ではよく聞く言葉だ。例えば好きなように仕入れた金額が300千だったとして、もし自分で商売をやっていればどういうことか考えるべきだ。その300千は自分の貯金残高で足りるのか?いつ払うのか?ちゃんと売れてキャッシュインするのか?どういう金の流れになっているのか?つまり「人の金」だから簡単に行動できる。そして、複数店舗に仕入れるとしたらさらに金額は大きくなる。また、そういう指示を簡単にする上司も多い。そうなると責任の所在が分からなくなる。

在庫管理にしてもそうだ。商品の「先入れ先出し」は食品でよく使われるが、衣料服飾品でも在庫を新鮮に見せる努力は必要だ。常に売場の鮮度を高めるためにどうすべきか考えて仕事をする。やはり単品データを細かく見て他店比較し、売り方、見せ方を定期的に変えるようにしているかは大事なことだ。売る努力が必要で、売れない商品は手を加えなければもっと厳しい商品になってしまう。つまり値段を下げることも必要になってくる。

本部で仕入れにかかわるスタッフは、金に関しては一番責任が重い。このブログでもよく書いているが、昔のイトーヨーカドーのDB(ディストリビューター)のような立場のスタッフは、絶対に必要だ。仕入れ枠の管理を徹底する人間が必要で、商品内容でなく絶対的数字でジャッジする必要がある。今ならAIを使う会社がありそうだ。

つまり商品は「金」の意識を持たないと、商売は潤滑に回らない。すべて自分の金で仕入れた意識を持ち、その「金」が回っているかどうかを確認することが一番大事なことだ。数字で言うと支払いサイト(支払い日数)と在庫日数をチェックすればいい。過去小売業を経営していた時、キャッシュフローを細かくチェックしていたが、毎年黒字計上にもかかわらず、月末にキャッシュ不足になることが年1.2回はあった。銀行の当座貸越などでしのいだが、やはり12月支払い期の2月末のキャッシュ残で1年の商売が終わる感覚を持ったことを思い出す。

その他、開発のスタッフも大きな金が動くという意味では、責任は大きい。以前も書いたが、売場内装への投資金額は大きい。その責任の所在も不明確な事も多い。出店計画書を細かく話し合い、その結果への責任も明確にする必要があると思う。

小売業は「金」のジャッジが難しい。そして、それは結果でジャッジされる。一番必要なのは、「金」の流れを冷静に見極め、迅速に途中で軌道修正できる体制だと思う。

■今日のBGM

数字と感性(思い)

以下の状況を簡単に分析してみる。

①20店舗の店を持つ会社のバイヤーが発注をする。原価3000円、売価6000円で各店1型10点の発注。支払い(2カ月後)20店舗×10×3000=600(千)。その商品を3型発注するとして支払い1800(千)。

→1型2カ月で100点消化 4カ月で40点消化、残り60点は半額で処理 完売

➁取引先が店に来て商談する。個性あるこだわり商品を店長は発注する。5型2色原価7500円売価15000円各1での発注。支払10×7500=75000。

 →2ヵ月で3点消化 4カ月で2点消化 残りは継続販売

では、この商品にどれだけ責任を持てるか?自分の金でも発注できるか?(商品代金は2カ月後現金支払い)

①2ヶ月消化率50%→支払いは締め日に売上で相殺できる。導入数の3割半額処分のため利益率は41.1%にダウン。

➁2ヶ月消化率30%→単品の売上では支払いはできない。利益率は変化ないも在庫負担になり今後の仕入金額が減る。今後売れ行きが改善しなければ利益ダウン要因になる。

理解すべきことは、①では ・値段を下げると利益は当然下がる ・利益は下がるが在庫処理が進む ・新商品を導入しやすい(売場に鮮度が出る) ➁では ・利益は下がらない ・支払いができない(借入する) ・仕入れが厳しくなり売場に変化が出ない  などの事が考えられる。

さて、こういう簡単な数字分析を、事業部内や商品部内で行っていて、その問題点や対策を話し合っているのかということだ。そしてそこに問題があれば、早急な改善を実行しているかどうかだ。

ここに小売業の課題がある。小売業では、まだまだ数字で話ができにくい風土がある。あくまでも商品主体での話になりがちにある。商品を語る言葉は熱いが、その後の数字に表れる情報に対する対応は遅い。さらに業態開発や、ショップ開発などでも、数字よりも「思い」が強くなり、数字データでの分析内容が信憑性に欠け、説得材料になりにくい。

実は、金融業や不動産業などとのPM業務がスムーズに進まないのは、そこに問題があると思っている。感覚や感性中心の小売業と、利益や効率を重視する金融業とでは話がつながりにくい。特にフィーで契約していれば小売側の立場も弱い。ただ金融、不動産側も、簡単に小売業の事を考えすぎではある。数字でのつじつま合わせの感もある。例えば、今進行中の池袋西武の改装も「ヨドバシ」+「西武」で今までの数字には届くとは思えない。

今までの経験上では、小売業にはまだまだ、「思い」や「感覚」が優先されているように感じる。「数字」だけでなかなか図りにくい面も多い。ただ、もう少し「数字」が討論の土台になる土壌を作るべきだと思う。

■今日のBGM

資産流動化が大型モール衰退の大きな要因

前回、「大型モール(RSC)の売場が画一化されていて面白くない」と書いた。これはおそらくRSCの資産を流動化させているのが原因だと思う。

個人的なことだが、マイカルを退社後、所謂PM会社(プロパティマネジメント)の役員をしていた。PMとは、簡単に言うとオーナーに変わって商業施設を運営管理することが主な仕事になる。そのオーナーは不動産業や金融業が多い。そしてそのオーナーは商業施設を金融商品として扱う。つまり商業施設の価値が上がれば、利益に結び付く。SCを 株として考えると、SCの価値が上がる(収益が上がる)と株の値段が上がる。売れば売却益が出る。つまり次につなげるため、できるだけ投資など大きなリスクは冒さないという構造がある。

イオンモールもイオンリートで保有している物件やSPC(特定目的会社)のスキームなどで流動化させている物件が大部分ではないかと思われる。つまり、小売業ではなくオーナーから受託しているPM業としての企業になってしまっている。そうなると、基本的にはフィービジネスになるので要員は増やせない。さらに金融業への細かなレポーティングが必要になる。小売とは違う言葉も多い。人数が少なく、レポーティングが増えれば、当然現場感は減っていく。話はそれるが、先日の熊本地震の被害も、PM業であるイオンモールの少人数でのSC管理に無理があったのではないかとこのブログには書いた。

イオンモールの物件の所有者がイオンであれば、小売業としての考え方が中心になり小売業として位置付けるが、所有者が金融系や不動産系であればなかなか小売業の理屈は通じない。ましてや大きな投資をするとすれば、細かな現実的な数字の組み立てと説明が必要になる。小売業は得意でも、違う土俵の尺度とは大きく違ってくる。つまり、リスクに関してのジャッジの比重が大きくなるということだ。

ここに現状のRSCの問題がある。履歴があるテナントの羅列になり、標準化が進む要因になっている。感覚よりも数字が優先され、数字(賃料等条件)でのテナント配置の力が強くなる。当然新しいテナント導入には高い壁ができる。賃料や出店場所の優遇はできない。興味ある店を探してきても、ハードルが高ければ、リーシングの努力もしなくなる。かつて、独立系のデベロッパーのリーシングを請け負ったとき、地元の有名なセレクト店の出店を進めたことがある。安い賃料だったがそのテナントの存在価値を理解してオーナーが承諾してくれた。結果、そのテナント導入がいろんな意味でプラス効果となった。これは希少な例で、小売業以外からのPM請負であれば、おそらくこういう思い切った決定は難しい。

諸経費もその予算に沿った運営になる。前回書いた画一的なバーゲンの状況も標準化がもたらしたものだと思う。当然イレギュラーを嫌う。さらに上述したレポーティング業務に時間をとられ本来のテナントとのリレーションが弱くなる。小売業を経営している時、いろんな商業施設で不思議に思っていた「モールスタッフが店内に見当たらない」理由はここにある。

商業施設が、金融業や不動産業の監督下になると、リスクをできるだけ抑えるようになり、小売業の面白さがなくなってくる。RSCも、もともと「タヌキが出るような場所」の開発から始まった。普通に考えればリスクは大きい。「ユニクロ」に大きな面積を任せて安い歩率で契約することも当初はリスクを持った決断だったと思う。

新しい企画を立ち上げるときには、当然リスクはついてくる。それがなくなってくれば新鮮なものは生まれない。そこに現状の「面白くなくなったRSC」の問題があるのではないだろうか。

■今日のBGM

店長も店のキャッシュを管理する

このブログでは何度も書いていることだが、仕入れ担当者はキャッシュフローを再確認する必要がある。企業は、黒字であり続けても、現金がなくなり調達できなければ倒産する。そんな事例は山ほどある。店長も仕入れに参加しているなら、当然店舗のキャッシュフローを再点検すべきだ。そしてその意識を持って仕事に携わってほしい。

まず、当月のキャッシュインだが、テナント入店の場合はいろんな入金方法があるが、ここは簡易的にわかりやすく当月の売上が当月キャッシュインされると設定する。

次にキャッシュアウト。ここも支払いにいろんな時差はあるが、簡易的に当月のキャッシュアウトと設定する。まず賃料等。当然出店条件をわかっているとは思うので、賃料、共益費、販促費、事務手数料(クレジットが多くなると想像以上に大きい)、駐車場負担金は算出できる。次に人件費。店舗勤務者の給与を総支給で合算する。社会保険料は会社が支払い給与の約15%は負担しないといけないので、その分も人件費に上乗せする。さらに、電気代、電話代、店で発生するショッパーズなどの消耗品費、出張すれば交通費も発生する。

具体的に想定数字を考えてみる。

まず、キャッシュインでは売上を5,000千と想定。

キャッシュアウトで賃料、共益費、駐車場負担金、販促費で900千(イオンモールで30坪弱の店想定)。人件費は1,200千+200=1,400千(社保会社負担込み)。支払手数料100千、電気代、電話代、消耗品で100千 概算で2,500千。

つまりキャッシュはこの段階でキャッシュイン5,000千-キャッシュアウト2,500千=2,500千となっている。

ここで考えなければならないのが、商品の支払い分になる。キャッシュイン5,000千―キャッシュアウト2,500千=2,500千で商品の支払いをしないと足らなくなる。2,000千の仕入ならキャッシュは残るが、3,000千の仕入ならキャッシュは足らない。あくまでこの仕入数字は原価だということを再度理解する必要がある。

PL(損益計算書)で計算すると売上総利益率が仮に50%なら総利益が2,500千になり、経費分2,500千を引くと0になる。つまり儲けも損もない。つまり、概算ではあるが経費が大きく変動されなければ、損益分岐点売上は5,000千ということになる。ただここで仕入れが上記したように3,000千あればキャッシュは500千足らない。損益は赤字ではないが、支払い代金が払えない状況ということになる。例えば売上が5,200千で経費が変わらないとすれば200千の黒字になるが、仕入がこのままでキャッシュが足らず、さらに資金の手当てができなければ黒字倒産になる。(当然、数字上の事で交渉余地はある)

つまり、PL(損益計算書)上では黒字でも、仕入れ過多で支払いができなくなっていれば会社は倒産する。言い続けているが、仕入れ過多は在庫過多になり、支払いができなくなる。昨今の「ライトオン」「マックハウス」「ヴィレッジヴァンガード」はすべてこの状況から数字が悪化していった。

企業が大きくなると、細かく管理ができなくなるが、小売業をしているのなら、各店舗のキャッシュフローはチェックする必要がある。特に、現場で店長が仕入れに参画しているなら、店長もバイヤーとして最低限キャッシュフローはチェックするべきだと思う。

■今日のBGM

ユニクロの出店戦略変更で商業地図は変わる

日経新聞の1面のメインに「ユニクロ旗艦店を倍増」という記事があった。柳井社長の言葉を細かく記事中に入れている。「日本の主要都市すべてに旗艦店が必要だ。10年以内にやりたい」「出店は全て旗艦店戦略に変える」「商品を売るだけの通常店は増やしても意味がない」。トップダウンが強い企業なので、間違いなく出店戦略は変わっていく。このブログでも何度も書いているが、「人口減少による出店エリアの縮小」「ネット通販の普及」がこの言葉を後押ししている。

この記事通りであれば、今後の出店は都心中心で郊外店舗への出店はなくなる。店舗開発担当者は企業の方針に沿って動く。ちなみに、ユニクロの国内店舗数はピーク期の2013年8月末の850店から785店と減少している。

大都市はさておき、地方都市や郊外モールはどうなっていくのか?ユニクロの事しか言ってないので、GUの出店が加速するのかもしれない。GUの位置づけを変えるのかもしれない。ただ現状の地方都市駅前物件や大型モール(RSC)は、間違いなくユニクロがモールの柱になっている。ユニクロが店舗数を緩やかに減らしていく事を考えれば、RSC(特にイオンモール)は求心力を失う。

ただ、もうすでにRSCも開発できる場所はないのかもしれない。イオンモールに至っては至近距離のイオンモール出店過多で、もうRSCではなくCSC化(コミュニティSC)している物件も多い。おそらく、すでに出店は鈍化しているが、イオンモールもSC数は増えていかないと思う。 

現状、国内専門店小売業はユニクロと無印良品が2強とみていたが、今後はRSCに至っては無印良品の出店が増えそうだ。ただ無印良品も大型化を進めており、路面店も含めて大きさや出店条件を吟味しての出店になっていく。そして、無印良品も含めて旗艦店戦略のユニクロに追随する企業は間違いなく増える。

以前まとめたことを再度書く。まず10年後、20年後の人口予測とその構成比だが、総人口は10年後−730万、20年後−1500万、65才以上の高齢者の比率は現状30.3%が10年後33.3%、20年後35.3%と増える。さらに15才までの年少人口は減り続ける。そして生産者年齢人口も減り続ける。次に、人口現状30万以下の地方都市の高齢者人口は20年後50%を超え、人口も2020年比で−30%~50%の状況になると想定されている。つまり、東京、地方の大都市に人口も集中する。ただし、東京、大都市も高齢化は進み人口も減少していく。

そのデータを見て、国内戦略を考えると、当然国内では大都市戦略になっていき、地方ではEC化が進む。その意味で、ユニクロの国内戦略は理にかなっている。海外戦略では近年のアメリカ、ヨーロッパ戦略も旗艦店、大型店中心で成功している。

おそらく今後のファッション小売企業は人口減もあって、国内だけでは企業の成長はない。内部充実も大事だが、売上分母が大きくならなければ成長はない。海外進出や商売分野の拡大などの長期的なビジョンが描かれなければ、存在できなくなる。

■今日のBGM

「売る」責任と「仕入れる」責任と「コントロールする」責任

晩期の売場を見ていると、企業の状況がよくわかる。特に商品コントロールのやり方で企業力は出る。姿を消していった企業はここでのミスが多い。「売る責任」も大きいが「仕入れる(作る)責任」も大きい。そしてそれをコントロールできて企業は成り立つ。

昔、「ビブレ」という業態に在籍した。他のファッション系SCとの大きな違いは、自主MDでの売場が多かったということだと思う。開発型ショップを入れると50くらいの売場が自主MDだった。壁面を背負ってのブランドオンリーショップは取引先出店が多かったが、品揃え型店舗や、大型区画は直営展開が多かった。そうすることによって賑わいも出て活性化が図れた。つまり、ブランドで集客し自主売場で稼いでいた。自主売場には本部のMD担当者がいたが、主用業務は全店共通の商材を手配し、その売場の数字を管轄することだった。ただ、店の大きさにもよるが、店担当者の仕入れ権限が大きかった。店舗数が増えていく中で、仕入技術の問題や、当然のように売上の大小で、店舗間格差はでてきた。晩期は自主MDでの弊害の方が大きかった。

自分で店を始めてからも、店仕入を中心にスタートした。当然集約して展開する商品は本部でまとめて発注したが、その比率は低かった。何より、店舗数が少ないうちはまとめて発注するメリットは小さい。ただ規模が大きくなるにつれ、店仕入中心では厳しくなってくる。

小売業は回転率を考えて、売上予算と在庫予算を決定する。このブログでも再三書いている。商品を仕入れてその商品を売って、取引先に仕入れ代金を支払う。一般的には末締め翌末払いの条件が多い。ということは2ヶ月で完売すれば利益は残る(売価-原価)。掛け率50%なら2ヶ月で半分売れれば支払いはできるが、儲けは出ない。そして、その儲けで経費を払う。回転率が低い商品(高額商品等)や回転率の高い商品(セール商品、定番商品等)があって全体の回転率が計上される。売価在庫で図る時は、回転率は売上÷平均売価棚卸額(在庫)で計算できる。その数字が0.5なら2ヶ月で商品が入れ替わるということだし、0.33なら3ヶ月ということになる。いろんな仕入れ形態はあるが、立ち上げた会社では月度回転率0.5を目標にしていた。同じように上場企業ではパルグループが回転率を重視している。

ただ、仕入れ担当者にそこまでの数字感覚があるかどうかだ。自分の懐は痛まないし、「売りたいものを仕入れたい」と考えるのは自然なことだ。財布の中の金額を気にしないで買い物をすることは楽しい。そこに大きな問題がある。当然、売場提案を実施するが、そこに信頼関係がなければ、「売る側」は押し付けられたと感じることも多い。

そこで「仕入」と「販売」をコントロールするポジションが必要になる。小さい会社なら社長がやるべきだ。そして、ある程度の規模になれば必ず必要なポジションだ。商品はわからなくても数字でジャッジするスタッフが必要だ。どの商品群が回転率を落としているか、そして回転率を適正にするためにどうするかをジャッジする。当然回転率を上げるには、商品をなくしていく事になる。商品をなくすのは返品するか、値段を下げて売り切るしかない。つまり「在庫」をコントロールするポジションが必要になる。

そこで「売上」を優先させるか、「利益」を優先するか、「在庫」を優先するかを決めるのが経営だ。「売上」を優先させれば「利益」は落ちるし「在庫」は減る。「利益」を優先させれば「売上」は伸びないし「在庫」も減らない。そこをジャッジするのが、経営の一番大事なことだと思う。結局、昔在籍した「ビブレ」は経営危機になり、キャッシュを得るために「売上」を優先し、「在庫」を減らし「利益」を減らした。そして倒産した。

小売業は「売上」「利益」「在庫」をきちんとコントロールできる体制を持った企業しか存続できない。

■今日のBGM

「レイバン」の独占禁止法違反調査

サングラスメーカー「レイバン」が、「再販売価格の拘束」で独占禁止法違反の調査が入った。値引き販売の規制をしたということのようだ。そして今回、公正取引委員会にレイバン日本法人が改善計画を提出した。そういうことは過去数多くあったので、大した記事でもないとスルーしていたが、「レイバン」というブランドが微妙なイメージを持った。

値引き販売の規制は、昔から言わないだけで結構多かった。おそらく販売店が「店をやめる」覚悟で公正取引委員会に訴えたのではないかと思う。販売店がサングラス専門店なら「レイバン」や「オークリー」が店からなくなると商売にはならない。そのブランドで集客しているからだ。つまり、「レイバン」と喧嘩すれば商売ができなくなるのと同じ事になる。ただ、もっとネームバリューが大きくて、強いブランドは世間にはたくさんある。そして「再販売価格の拘束」をしている取引先(ブランド)も、もっとある。

ブランドビジネスで商売している小売業は、非常に弱い立場で、そのブランドがなくなると商売にならない。品揃え店でも当然メインのブランドはあり、そのブランドで集客している面もある。つまり、小売り側もブランドを利用していると言えるかもしれない。ただ、そのブランドのさじ加減で企業は変化する。出店しているSCに、中心ブランドが直営店を出店することもあるかもしれない。商道徳上はありえないことだが、取扱高によっては充分考えられる。企業の尺度が違えば、会社の方向性も違ってくる。実際、そういうことを経験したし、見てきた。

以前、あることで「公性取引委員会に話したい」旨を税理士に話したところ、「先方の大企業もダメージは受けるが、自社もそれによって環境が変わる」と指摘されたことがある。「大」のイメージはマイナスするが、「小」の受けるダメージも大きいということを暗に言われた。

現状の小売業は「取引先対小売業」「小売業での大手対中小」での問題が非常に多い。それが小売業の硬直化につながっている。そこに公正取引委員会が入って調整すべきなのだが、今回の「レイバン」の件のような微妙なブランドの微妙な決着しか表には出てこない。さらに小売業を語る時には「お客様目線」での見方が強く、片方の売買の当事者である取引先や小売業者(特に中小企業)の「当事者目線」にはあまり目を向けていない。つまり、小売業界の風通しは良くない。

本来、取引先と小売業はお互いリスペクとしなければ成長しないし、中小企業が活気づかなければ小売業も硬直する。 あまり具体的に深くは書けないので、この辺で・・・

■今日のBGM

大型商業施設の課題と対策

熊本地震でのイオンモール熊本の被害者になられた従業員の方々には追悼の意を表します。

原因はガス配管等の構造的なものもあるらしい。そして、イオンモールとしては点検を定期的に行っていたようだ。さらに、30分ですべてのお客様の避難誘導は終えたと発表している。イオンの吉田社長は、被害はお客様の避難誘導が終わってその後の事故で発生したと記者会見で述べている。では、どこに問題があったのか?

イオンモール熊本は全従業員2700人と発表されている。その所属先を想定すると、まずGMS(イオンリテール:ジャスコ)が150人程度。メンテナンス会社(旧イオンディライト)が多くて50人。施設運営会社(イオンモール)が多くて30人。その残り約2500人が、ほぼテナントの従業員ということになる。GMSは店長中心にリスクマネジメントは強固だ。つまり、SCのPM(プロパティマネジメント)をするイオンモールが約2500人のテナントスタッフのマネジメントしている状況になっている。当日は平日でもあり、1500人程度のテナントスタッフ数だったようだ。

SC、テナントのお客様は入館客だし、事故が発生すれば、まず優先するのは入館客の安全だ。30分で避難完了したのは、その考え方がデベロッパーとテナント双方同じだったからだ。避難完了後からテナントの命令系統に当然各テナント会社も入ってくる。テナントも、第一義のお客様の誘導が終わった後、当然、所属企業に連絡はする。当然、そこからの指示もある。さらに何も持たずに避難していれば、それを取りに売場に戻りたい。つまり、お客様の安全が第一義であったなら、従業員の安全はその次にはなる。おそらく、そこにテナントマネジメントのほころびが出た。記者会見では話してないが、多くのテナントの従業員は一度店に戻ったのではないだろうか?そういう事例は耳にしている。少なくとも数人ではないはずだ。お客様の誘導が完了すれば自店の状況を確認しようというのは、担当者として当然のことだ。

今回の事故で一番の問題は、SCの管理サイドの人数が少なすぎることと、その少ない人数でのテナント管理は非常に難しく、きちんと細かくマニュアル化されていなかったのではないかということだ。

過去、小売店を経営していて、自店には必ず月1度は臨店していたが、イオンモールではあまり、担当者と会ったことはなく、売場や館内では見かけることも少なかった。よく顔を見かけるスタッフはいたが、限られていた。イオンモールにも延べ15店出店していたので、おそらく感覚的には間違ってないと思う。不動産の流動化でファンド物件になったりすると、レポーティング業務が多くなる。そうなれば当然デスクワークが多くなる。つまり、本来の営業面支援が手薄になり、テナントとのコミュニケーションも少なくなっていたのではないかと思う。そのコミュニケーション不足が、一般客の避難終了後のテナントとの指示系統の緩みにつながったのではないだろうか。

イオンモール熊本の保有者を調べてみると、現状は「みずほリース」の連結子会社が保有している。それまでは「イオンリート投資法人」だった。つまり「みずほリース」が大家で「イオンモール」が転借、運営管理している状況ということになる。イオンモールとの契約形態は細かくはわからないが、PMやFM(ファシリティマネジメント)へは大きくはコストをかけられない状況であることはわかる。そして上記したように、イオンモールの業務は小売業への取り組みより、大家さんへの報告業務が多くなっているのだと思う。さらにイオンモールの収益を上げるにはコスト(人員)は増やせない。そういう積み重ねでテナントとのコミュニケーションが希薄になっていったと思える。

今回の惨事は、当然施設の構造上の問題が一番大きいが、イオンモールの対テナントへのマネジメントの弱さも露呈している。防災組織図よりも細かいコミュニケーションが必要で、オフィスビルメンテナンスと違い商業施設としてどうあるべきかを再度見つめなおすことが大切だ。商業施設としてより活性化できることをテナントと話し合い、提案実施し、各テナントと親密なコミュニケーションをとっていく事を主要業務として運営していってほしい。そうすることで信頼関係は強固なものになっていく。

■今日のBGM

大手小売業と同じ土俵では戦えない

前回、ユニクロの店の業務を書いていて、社員はこの仕事だけで小売業を理解できるのか、売上を求めるだけで小売業を続けられるのかと感じていた。小売業の面白さや厳しさがどれだけわかるのかとも思った。小売業は商品をセレクトすること、作ること、利益をどれだけ上げていけるかということや、企画、演出など商品以外のことなど、現場で売上を上げること以外の面白さもある。そしてそれを阻む要因も多く、それを乗り越えることも大きなキャリアになる。そして、そのすべてが小売業の面白さだと思っている。

調べてみると、ユニクロの新入社員の離職率は3年で50%近く、10年では80%超のようだ。ちなみに大卒初任給は全国転勤可能社員が月度37万円、地域限定社員が28万円となっている。

小売業の面白さの半分も感じない仕事では、長続きしないのは当然だと思う。しかし、よく考えるとユニクロの仕事とその対価設定、個人判断による離職率の高さは、ユニクロとしては当然想定済みのことなのではないかと思った。世界制覇を求める企業として、方向性を同じくする社員が必要で、異を唱える人材は必要がないのかもしれない。さらに小売業の本部機能は小さくて精鋭を揃え、本部決定事項を迅速に現場に伝えることを最優先させるという考え方だ。極論かもしれないが、企業の戦略を理解してステップアップしていく人材を選び、それが無理なスタッフや意見を言うスタッフには離職してもらっていいという考えが根底にある。そしてそれが成功要因の1つなのかもしれない。

そう考えれば、ユニクロの世界的な企業への躍進は充分納得できる。「ZARA」や「H&M」も同様でほぼ単一業態と言える。単一業態であることが企業戦略や役割分担を明確にする。そして、それを迅速に現場に浸透させている。

過去、小売業を立ち上げた時、スタッフには商売の面白さや商売への興味を持ってもらおうと思った。それが中小小売業の成功要因だとも思った。そして、店の個性を出すために店長に仕入れ権限を持たせた。おそらく個人的には、「ユニクロ」や大手アパレル企業よりも面白い仕事をさせていたと思う。仕入れ経験の長い人間は、バランスよく仕入をしてきたが、やはり仕入れ歴が浅い店長は利益計画、在庫計画まで頭が回らない。結局、面白い仕事をさせていたと思っているのは企業の思い込みだったかもしれない。それが店長の働き甲斐になっていたのかもわからない。店長はこんな仕事までしたくないという思いがあったのかもしれない。そしてそれ以前に、現状では中小企業の待遇ではスタッフも集まらない状況になっている。

高齢化の波もあり、商圏人口や、ターゲット客層は大幅に減少する。そうなると商業施設の淘汰も始まる。そうなれば、中小小売業が大企業と戦える環境もなくなる。もう同じ土俵では戦えない。

■今日のBGM

«過去の 投稿