マルイのフィンティックセグメントとイオンの戦略

フィンティックセグメント・・・カード決済、家賃保証で稼ぐ金融事業

簡単に言うと上記の意味になる。今後小売業を立ち上げ、頑張って、収益企業にできるのだろうか。そう考えていて、「人」以外で弊害になりそうなことはデベロッパー企業の「金融事業化」ではないかと思った。近頃、イオンのカード戦略の拡大を感じていて、決算を見ていても「金融事業」を基幹にしようと動いていることがよくわかる。その先例であるマルイの事例を少し調べてみた。

我々世代のマルイは、「ヤングファッションをカードで買う店」だった。DCブランド全盛期のマルイ渋谷ファッション館(特に2階)は男1人では歩けないほど、華やかだった。それが今のマルイの店を見ていると、まずまず維持できているのは有楽町くらいではないだろうか。先日もぶらっと覗いたが、一時は基幹店だった上野店もコンセプトの見えないデベロッパービルになっていたし、新宿3館も同じだ。大阪のなんばマルイも駅前再開発で絶好の立地にもかかわらず、雑居ビル化している。渋谷も今は改装中でショールーム型の施設になるということだ。つまり、館のターゲットやフロアコンセプトを明確にした商業ビルではなくなってしまっている。

DC全盛時代マルイの決算を見ると、1991年売上高5628億、経常利益621億、そのうちフィンテック事業の営業利益は20~30%で「赤いカード」としてハウスカードの利益中心だった。最近の決算数字では2026年売上高2787億、営業利益502億と最高益であり、フィンテック事業は営業利益470億と大半を占めている。カード会員は2011年450万人が830万人になり、マルイ以外での利用が95%まで広がっている。売上高の減少は、小売業からデベロッパーへの変革で売上高が賃料収入に変わったことが大きい。つまり百貨店などの消化売上、委託売上などの物販売上から、場所貸しの賃料収入の売上に変わったということになる。 

ここで、テナント側からの視点で見てみる。かつてモディ店舗に出店していたが、当初は商環境を考えたリーシングをしており、利益額は大きくはないが収益店舗だった。途中で完全にデベロッパー業へ方向が変わり、賃料優先の場所貸しに変わった。空き店舗に他のテナントにそぐわない異業種の導入が始まった。それと同時に売上は低迷し退店した。つまり、上記した現状のマルイ店舗のように変わっていった。おそらくかつてのマルイの物件は「駅前のマルイ」としての好立地であり、今の物件も不動産価値が高ければ個別に出店もあるが、商業としてのコンセプトがないため高層階に行くにつれてその価値はなくなっている。

マルイは今後もフィンティックセグメントを推し進めていくという。ただ、現状のヤング層の今後はそこまで明るくない。大幅な人口減と老齢化に向かっていく中、他のカード会社の生活感を持った戦略に太刀打ちできるのかは疑問が残る。その意味で、イオンのカード戦略は今後増え続ける高年齢層へのアプローチと考えていいかもしれない。

マルイが金融業で企業体制を変えたように、イオンもその方向に向かっている。大きなポイントは、年代別人口の変化により、エポスカードを使う場所よりイオンカードを使う場所の方が多くなってきているということだ。そしてその差は、今後ますます大きくなる。イオンが、あえて赤字のGMSを残しているのはそういう戦略があるからかもしれない。

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2強「ユニクロ」「無印良品」に続くショップは?

前回も書いたが、今後は「中心客層の高齢化」へ加速度的に変化していく。すでに2025年度には50代以上人口構成比が51.7%となっている。逆に、トレンドリーダーだったティーンズヤング層は、大幅に減少している。その流れを理解してMDを構築しているのが「ユニクロ」「無印良品」だと思う。今後、この変化に対応して、続いていく企業はどこだろうか?企業力から考えれば「アダストリア」と「パルG」になるが・・・

「アダストリア」では筆頭に挙げられるのは“グローバルワーク”だが、過去何度か方向性を指摘したが、もう完全に既存イメージが強く、大きな変革はおそらく難しいと思う。企業としてはフラッグシップブランドにしたいのだろうが、ターゲットの客数ダウンが響いて、今後の売上大幅アップは厳しいのではないだろうか。

面白いと思うのが“スタディオクリップ”。女房がイオンモールに行くと必ずチェックするのが“ユニクロ”“無印良品”“スリーコインズ”と“スタディオクリップ”の4ショップ。“スタディオクリップ”はナチュラルテイストで素材感も感じるし、雑貨の比率も高く自然体のイメージがある。「アダストリア」合併前は店のテイストをヨーロッパっぽくしていたように記憶する。そして、できれば今のショップにメンズも加えてほしい。最低限のワードローブから始めていけばいいと思う。「アダストリア」ならできそうにも思うが・・・少しずつ大型化していけば、ちょっと違う匂いの「気の利いた」フル客層型の大型店になりそうだ。余談だが、昔高崎サティ(ビブレ)で働いている時、創業者とも会ったことがある。(前橋の会社で、アダストリアに売却前。尚メガネのJINSの田中会長も昔在職していた。)

「パルG」は“チャオパニック“がその位置に近いが、やはり少し若すぎる。“コロニー”でそこを狙おうとしたのか、少し若すぎたのか失敗しているようだ。もし可能性が少しでもあるのだとすれば“スリーコインズ”の延長線上にあるファッションを開発できないかと思う。安い服を提案するのではなく、”ダイソー“で買わず“スリーコインズ”で買う客層を見極めてのMDを考えられるかだとは思う。少しハードルは高いか・・・それに少し無印良品よりになるかもしれない。

ロープライスゾーンでは「しまむら」や「西松屋」は残りそうで、全く逆の百貨店特選客も必ず残る。あとは「ワークマン」などの目的型ウェアも残る。さらに、ネットのウエイトも上がるし、必然的に販売員も減っていく。当然、店舗数はどんどん減っていく。そうなれば、企業数も減っていくし、SCの数も減っていく。

書いているうちに、暗い結論になってしまった。

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こういう店は成り立たないだろうか?

テレビでは年金受給者が、生活苦で安いスーパーを選んで買い物している様子を放送していたり、エアコンなどの節約場面が多く放送されるが、はたしてそれが本当の姿なのだろうか?周りを見ていても、そこまで厳しさを話す友人はいない。

現状の年金受給者の平均年齢は厚生年金が73才、国民年金が75才となっており、平均受給額夫婦2名(夫が会社員、妻が専業主婦)で月額22~23万となっている(アクサ生命資料)。その平均的な世帯の金融資産は平均値が60代1862万円、70代1758万円(三菱UFJ信託銀行資料)であり、さらに所有土地建物が1200万~1500万(税金上の評価額)で持家比率も91.7%(七十七銀行資料)と高い。これをどう見るかだ。

年金受給者で、年齢を重ねて常々思っていることだが、着る服がなくなってきている。ずっとカジュアルで過ごしてきたので、オフィシャルな装いがない。ジャケットやパンツ、靴はとりあえずそろえたが、必要ないかもしれないのでバリエーションはない。カジュアルも少し若作りの着るものが多くて(例えば夏はほとんどショートパンツ、ジーンズ)、実年代とのギャップが出てきている。逆にスーツ族だった人たちはカジュアルのバリエーションが少ないのではないだろうか。

そこで何か買いに行くのだが、「ユニクロ」や「無印良品」でいいのかと思ってしまう。散歩にはいいが、ちょっとした外出や旅行にはそれでいいの?となってしまう。でもそこまで高い商品も買えない。となるとなかなか買う場所はない。アウトレットにもよく行くが、やはりデザインが若くなっており、なかなかしっくりこない。

昔「無印良品」が頑張っていた100双のシャツやシェットランドセーター、本格デニムなどをあの当時の値段で探せないかと考えてしまう。現状の「無印良品」はどんどん売場が大きくなっていっているがファッションはボリュームゾーンの単品量販型になっており、ことメンズで言うと商品も「ユニクロ」と被る。売場を別展開にして昔の無印良品が貫いていた商品へこだわりを集めたコーナーを作れないものだろうか?その売場だけ内装面にも少しコストはかければ十分差別化はできるし、値段志向に走るより感度は上がる。もともとのコンセプト回帰にもなる。

百貨店で金をかけるほどでもなく、「ユニクロ」や今の「無印良品」の商品では満足していない層はかなり多いように思う。かつてセレクトショップでスーツを買っていた客層は、まだセレクトショップで買っているのだろうか?当然大幅に減っているだろう。そこを狙う企業は出てこないのだろうか?

再度データを拾ってみる。今のヤング層10~20代の人口構成比は17.5%で10年後には15.8%までダウンする。10~30代にしても27.8%から24.6%と3.2%のダウンとなっている。これが60才以上の構成比は35.5%から37.1%と上がり、50代を加えると51.7%から55.8%と4.1%も上昇する。ちなみに2025年度中に50代以上の構成比は51.7%と50%を超える。まちがいなくヤングターゲットより狙うべきターゲット客層になる。

ただ、いろんな店を見てもそのターゲットを狙っている店は少ない。そういう狙いの店もあるが、あくまでも若返り志向を大きなテーマに捉えている。単純に、在庫負担を減らすことも想定しての脇ゴムのパンツにはどうも抵抗があるし、デザインも若返り志向が強い。前述したが、大型化している「無印良品」や大型化と客層の拡大を狙っている「グローバルワーク」にそんなコーナーは作れないだろうか?

自分でも金とパワーがあればやってみたいが… うまくはまると案外成功するかもしれない。

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なぜ「在庫評価損」を毎年計上しているのか?

前回「在庫評価損」について書いていて、腑に落ちなかったので、少し調べてみた。前回イオングループの「ジーフット」について書いたので、同じくイオングループのカジュアルファッションで上場企業の「コックス」も調べてみた。ちなみに前期(2026年)の評価損金額は未発表で計上済とは記入されている。簡単な数字は以下のようになる。

2026年度 総利益率62.2% 回転率2.9 

2025年度 総利益率62.5% 回転率3.2 評価損6.2億

2024年度 総利益率62.7% 回転率3.6 評価損5.3億

2023年度 総利益率57.8% 回転率3.7 評価損5.5億

2025年は期末在庫金額が19.5億なので評価損の金額がいかに多いかよくわかる。

もともとカジュアルファッションの企業なので期中に自由に値段は変更できる。セールで売り切ればいい。普通の企業ならキャッシュが欲しいのですぐ商品を金に換える。次年度迄商品を繰り越すとすれば、ブランド品で割引の規制がある場合や、競合店とのバッティングで取引先との整合がある場合くらいだ。この数字は、キャッシュに心配のない企業で数字コントロールしてればいい大企業サラリーマン経営に見える。さらに付け加えると、期中に値段を下げて利益率を落とすと株価にも影響が出るので避けているとも見える。

一方、「どれだけ売れない商品を仕入れているのか?」ということになる。利益率ありきで、利益率を稼ぐために仕入れているという見え方もある。推測で書くと、「売上が大きく上がらないので利益率志向になる」→「原価率を下げた商品を大量に作る」→「売れずに残る」→「次年度に向けて評価を下げる」→「次年度セールでたたき売る」(利益も回復する)の構図を続けている。商売ではなく「数字合わせ」になっている。

利益率62%という数字だが、ファッション小売業での前期の総利益率はパルG57.5%、アダストリア54.7%、ユニクロ54.1%であり、海外生産が多い大手小売企業でも60%を超えてこない。おそらく利益率を念頭に置いて、原価率を抑えた物づくりを進めていたのではないかと思う。商売は「売れてナンボ」がわかってない。さらに商品回転率の数字もパルG5.84回転、アダストリア4.64回転、ユニクロ3.19回転に劣る。つまり商品が動いていない。

ここまで書いて、いやな気分になってきた。「売れる商品を売れる値段で売る」という簡単なストーリーが崩れてしまう。海外で安く商品を作って相場より3割くらい高く値段をつけて販売し、利益率を稼ぎ、売れ残ったら決算で評価替えをして次年度売り切る。これをずっと繰り返している。何の仕事をしているのだろうと思わないのだろうか?そして、もっと嫌な気持ちを持っていると思うのは現場(売場)だ。おそらく売場が商品の動向を一番わかるし、売れない商品を押し付けられていることも分かる。それだけで士気が下がる。こうなると数字は改善していかない。

こういう流れを見ていると、「コックス」はファッションを売る小売業ではなく、イオングループの商業施設に出店するだけの手段としての小売業にしか見えない。それはそれでイオングループには必要な会社なのかもしれない。

経営理念は何だろう?お客様を見て商売しているとは思えない。こういう商売を今後も続けていていくのだろうか?

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持論「在庫を持つ商売は失敗する」の検証 ②

前回からの続きで、少し趣旨が違うかもしれないが、「在庫評価損」について書く。前回指摘した企業の決算期で近年の「在庫評価損」は以下の通りとなっている。

・「ライトオン」2024年15.6億、2022年23.3億、2020年25.4億

・「マックハウス」2023年12.7億、2022年12.4億、2021年13.2億

・「ジーフット」2024年20.5億、2023年21.2億、2022年33.3億

・「タカキュー」2021年12.3億 ・「ヴィレヴァン」2025年24.7億

この数字は決算期で評価を落とした金額である。この金額はあくまで原価なので、売価にするとこの倍の金額ぐらいにはなる。極端に言うと「ライトオン」は2024年の決算期に15.6億分の商品を捨てたことになる。実際は捨ててないが次年度売れる値段で販売していることになる。もし0評価にして次年度いくらかの値段で売ればその分利益率は回復する。今期「ヴィレヴァン」の利益率が改善されたように見えるのはそのためだ。

なぜ、毎年決算期に評価損を計上するのだろうか?商品消化率が悪く、季節商品をキャリーしたが、次年度消化できる値段ではなく、消化できる値段に決算期に落としたということかもしれない。売り切るにはさらに期中で利益を落とすしかないが、競合、取引先等の絡みもあり、期末での処理になったという理由かもしれない。ただ毎年のように繰り返し大きな金額の評価損を計上していて、例年在庫金額が減らず回転率が悪化しているのを見ると、経営状況を疑わざるを得ない。そして、上記企業は慢性在庫過多で仕入れコントロールが全くできていない。

前回書いたが、上記企業はすべて在庫回転率が悪い。つまり金がうまく回っていない。在庫回転率を上げるには、売上が伸びなければ在庫を減らしていくしかない。つまり、仕入れを減らすということで、仕入を減らすと原価率の改善がなければ、当然利益率の回復はない。そうなると、前年と同じ金額を仕入れないと利益率は維持できない。そのため、その繰り返しの状況になっていたことは、想像できる。

評価損の数字を探していて、気が付いたことがある。上記したすべての企業の最後(株主変更前)の決算短信には在庫評価損の記載はあるが、それ以前の数年間は決算短信には記載がなく、有価証券報告書には記載されている。つまり一般開示はされているが企業のHPでは見ることはできず、手続きが必要になる。数十億単位の商品が消えたことを調べなくてはわからないということになる。さすがに企業譲渡や上場廃止という大きな節目には発表せざるを得なかったということだと思う。それが、旧経営陣や監査体制が問題点を先延ばししてきた結果として表れている。詳細はわからないので、あくまでも憶測でしか書けないが、もしそうなら従業員や株主をないがしろにしている。問題を先送りしていたことになる。

結果的に、各社これだけの金額の商品を毎年捨てていたという事実がある。売れなかった商品が毎年これだけたまっていたことになる。それを毎年繰り返している。毎期大きな在庫評価損を出し続け、現場スタッフを放置した経営陣の責任は非常に大きい。毎年繰り返した先送りのツケを従業員の解雇や店舗閉鎖という形で払わされてきたということだ。

ここに至ったのは「在庫回転率の低さ」が主要因だ。年間2回転前後の小売業としての商売は、商売の仕組みが完全に壊れていた結果だし、何より在庫に対する認識の低さが導いた結果だ。上記5社の大きな経営課題はそこにある。

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持論「在庫を持つ商売は失敗する」の検証 

GW中で、企業の本部は休みでIRもなく、春物と夏物の切替期でもありファッション業界での発信も少ない時期だ。そういう時期なので、このブログでは再三書いてきたが「在庫を持つ商売」について現状の検証をしてみたい。

小売業は「売上」「利益率」「在庫」が3大要素だが、どうしても「売上」の額、前年比に目が行き、その次に利益額を算出する「利益率」に注目する。「在庫」はPL(損益計算書)には出てこないので見落としがちになる。「売上」を上げていくには売れる商品を仕入れて売っていく事になる。売れない商品や売れなくなった商品は値段を下げて処分していく。値段を下げると「利益率」はダウンする。「利益率」を維持するために処分せず値段を下げないでいると、「在庫」が増えていく。

「在庫回転率」という指標がある。月度では「売上」÷「在庫」(平均在庫)で計算される。その数字に12(12ヶ月)をかけると「年間回転率」が出る。単純に四季で商品が入れ替わるとすると年間4回転になる。つまり入荷した商品が3か月後になくなったことを意味する。一般的な商売の基本は、業者(メーカーなど)に対して支払いは仕入れ月の翌月末であることが多い。その商品の利益の幅(原価率)にもよるが、2ヶ月でなくさなければ代金は支払えないことになる(その他いろんな取引条件はある)。そして、売価(販売価格)と売上原価の差が利益額になり、それで経費を支払うのが小売業の金の回り方だ。つまり回転率が悪化すればキャッシュインが遅れ支払いに間に合わなくなる。原価率によって利益額は違うので一概には言えないが、当然回転率が悪くなるとキャッシュフローは厳しくなる。

このブログでも、回転率の悪い上場企業を指摘してきた。ジーニングを打ち出した「ライトオン」「マックハウス」、ビジネスイメージが強い「タカキュー」、靴の「ジーフット」。各社とも、すべて中心商品のサイズが細かい。つまり、中心商品を広げると在庫過多になりやすい。さらに、別カテゴリーだが、商品の幅が広すぎる「ヴィレッジヴァンガード」。近年、そのすべての企業体に変化があった。そして5社とも過去の決算時に在庫評価損を計上している。極論になるが、これは在庫金額を正しく評価せず、決算を重ねてきたということに等しい。正しい評価をすると利益率が大きく下方修正され、それにより決算数字が悪化するため、在庫評価の先延ばしをしてきたということだ。詳細は別途まとめることにする。

上記各社の商品回転率を調べてみる。評価損計上年度があるのでその影響がなさそうな年度で、「ライトオン」2023年1.43回転、「マックハウス」2024年2.17回転、「タカキュー」2022年度1.83回転、「ジーフット」2024年度1.44回転、「ヴィレヴァン」2024年度0,99回転という結果になる。この数字を見ると、年間2回も商品が変わらないということになり、平均すると入荷して6カ月たっても商品が売れてないということになる。ヴィレヴァンに至っては、1年たっても商品は売れてないことになる。商品が売れないと金は回らない。

一般的には商品回転率は3~4.5回転くらいが標準範囲になっている。前期の決算時の回転率ではユニクロ3.1回転、アダストリア4.75回転、パルグループ5.84回転、しまむら7.75回転、ニトリ4.17回転などとなっている。売上好調の無印良品は2.36回転と低い。しかし、無印良品は回転率の低さを意識しており、「在庫コントロール部」を作り、商品部以上の権限を持たせようとしている。

小売業で一番大事なことは、「売上」を増やすことではなく、商品をうまく回転させて入れ替えていく事だと思っている。自らも商品回転率を一番大事なチェックポイントだと思って仕事をしてきた。近年、企業譲渡や株主変更があった小売企業は、すべて商品在庫の処理を怠った結果だと確信できる。

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セレクトショップ、どこへ行く

日経新聞日曜版の特集記事のタイトルだ。以下の文面から始まる。

“1970年代後半から次々に誕生した「セレクトショップ」。バブル崩壊で混迷した90年代、ユニクロやファストファッションが勢いを増した2000年代もかいくぐり、約50年も過ぎた。欧米のファッションを紹介することから始まった店は今、寺の境内にオープンしたり、ソーラーシェアリングを手掛けたり。セレクトショップはどこへ向かうのか?”

写真付きで紹介されているのは「ロンハーマンのソーラーシェアリング施設」「善光寺境内にあるビームス」「工芸品、骨董品、生活雑貨のタバヤユナイテッドアローズの2階」「ユナイテッドトーキョーの日本製」「デイトナインターナショナルの映画グッズ」。その他、地方での地元との取り組みで「桐生市のst companyのイベント」「古河市のフリークスストアのワーキングスペース」「匝瑳市のロンハーマンの有機農法」「富士川町でのビームス社員のキャンプ用品」。

セレクトショップとしての「数字よりもマインド」を紹介した記事で、表題の内容とはかけ離れているような気もする。どの紹介事業も大きな数字に結び付くわけでなく、企業の生き方を表現したかったのだろう。記事のサブタイトルは「What’s next?」であり、「⁇一番かっこよくて美しいもの⁇」「⁇人が楽しそうにいてくれる場所⁇」とある。

このブログでも、セレクトショップを運営する企業の将来性についてはまとめたことがある。現実的には、高齢化が進みトレンドリーダーであるヤング層が大幅に減少する。上場企業である「ユナイテッドアローズ」「TOKYO BASE」はターゲット客層を広げないと、上場の維持が厳しくなる。大手と言われるセレクト運営企業も存在価値を明確にし、その方向性を示す必要が出てくる。片方で、世間に媚びずに生きていく戦略もある。企業としての「思い」を共感できるお客様を増やして、存在価値を示していく。これがこの記事の主旨だろうと受け取れる。ただし、これによって大きな企業力の拡大はあるのだろうか?

この記事にある、桐生のst companyの社長には30年以上公私共にお世話になった。路面店でDCブランドを数多く展開していた時からよく存じ上げている。商品調達面で、20年以上海外出張も続けている。この路面店を作る時も工事中にもお邪魔したし、その後もいろんな話を伺った。セレクト中心になり、路面店中心に商売を移して勝手ながら心配していたが、ネットの販売力もあり、取引先との信頼関係も厚く、そして何よりも強い熱意が固定客を増やしているようだ。

st companyの成功例を見ていると、逆に、今後のセレクトショップ運営企業は、商品感度を維持できるのなら、環境に恵まれた地方都市に個性的な店を持つことも、1つの戦略かもしれない。ターゲット客は大都市集中になることが予測されるが、逆に地方でも中心都市でなく、売場環境を整えられる場所で商売する方が広域から集客できるのではないかと思う。上述した桐生市のように地方の中心都市でなくても、店のイメージや商品やブランドに希少価値があるなら近県のお客様は東京よりも行きやすい。st companyのように常に新鮮な商売をしていると、どんどん商圏も広がっていくような気がする。そうなれば、人口減も商圏拡大で補える。

世間で言われる大都市が少なくなっていく将来を考えると、地方でも売場や商品で個性を打ち出し、商圏を広げていければ、十分に立ち向かえるかもしれない。ただ、常に進化し続ける計り知れない努力は必要になる。

■日経日曜版の「st company」のイベント写真

客層の幅を広げると商売は難しくなる

前回、ジーフットのことを書いていて、「アスビー」と「グリーンボックス」の2業態を持つことが経営悪化につながったのではないかと書いた。「アスビー」はスポーツシューズが中心でキッズも加えたカジュアル業態で、「グリーンボックス」は所謂、GMSの靴売場で、スポーツシューズのラインは増えたが、どちらかというと高年齢層の靴売場だった。最近はGMSの衣料品売場の改装時に、専門店側にレイアウトを移し、従来の「アスビー」内装で若干ビジネス要素を広げた店になっている。

靴は商売が難しく、まずサイズ、色が多くSKU数が異常に多い。商品劣化が早く、さらに取引先特性もあり、衣料品などのようになかなか簡単に取引先返品交渉ができない。つまり、在庫を抱えての取引先商売では簡単に利益は出にくい。さらに近年の消費動向はブランド志向も強くなっている。ジーフットは特に商売が難しい高齢者向けの「グリーンボックス」の数字が非常に厳しかったと思う。つまり2つの客層の商売が、お互い相容れなかったことが経営悪化の一番の要因だった。

上場廃止になったライトオンも同様の流れがあった。もとはメンズのジーンズ専門店がスタートで、レディスを加え、売場を拡大してキッズも含めファミリー層への店舗になっていった。普通に考えて、メンズ、レディス、キッズで3通りの品揃えをすれば、商品特性も違うので3倍の人数が必要になるが、人的コスト削減を目指すと数字は伸ばせない。逆にニーズの多様化で商品以外のサービス内容も増えてくる。そして、商品のライフサイクルも違うし、客層もファミリー層へ変化する。「ジーンズを買える店」から「ファミリー層の店」になったことで、ユニクロなど強力なテナントと対峙し価格や資本力で負けていった。結果、ライトオンの実績数字を見ると在庫は足し算で増えていったが、売上はその流れに合わず大きく伸びなかった。

今まで、客層の幅を広げて成功した店は思いつかない。商品の幅を広げて成功した店もあまりないが、しいて言えば無印良品くらいではないかと思う。ただここにもリスク要素は隠れている。近年はスキンケアなどで客数を増やしているが、もともとスキンケアは利益率が高い反面、回転率は低い。つまり商品の流れが変わったり、強い競合商品が出てきたときのリスクが大きい。大手アパレルでやっている衣料品プラス雑貨の店に関しては、あくまでも衣料品を売るための環境的要素が強く、商品の幅を広げる意味合いではないと感じる。

客層の幅や、商品の幅を広げるのは大きなリスクを伴う。もし広げるなら、まずメインの取扱商品に付随するだろう商品を広げていく事が望ましい。そうすれば在庫リスクを抑えつつ客層を広げられる可能性はある。

いずれにしても、客層や商品の幅を広げるときには、実験を繰り返し「小さな根拠」を積み重ねることが必要になる。

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上場企業とは何なのか?

イオンのジーフットの上場廃止について書いていて複雑な気持ちになった。株主がいて上場していたのに、親会社(イオン)の都合での他事業体との合併が要因で上場廃止になるのは如何なものなのか?当然資本の論理はわかってはいる。以下思うことを書くが、あくまでも私見に過ぎず、おそらく本当の根拠ではないだろうことを事前に断っておく。

ジーフットは、古くは合併を重ねてきて主に「アスビー」をショップ展開していた専門店「つるや靴店」だった。その後イオン傘下になり、イオンの靴売場「グリーンボックス」を運営していた「ニューステップ」と合併して現在の会社になった。2026年2月決算で売上569億、当期純利益―325千万、店舗数は約700店舗を数える。近年は債務超過状態が続いていた。

過去の経験から、靴売場の損益は厳しい数字になることは理解していた。サイズが細かいことに加え、革、ケミカルの商売体質の違いがあり、利益確保が難しい。靴専門店もどんどんなくなっている。イオンGMS(イオンリテール)の中でも一番難しい売り場だと思う。ちなみに、GMSのファッションでは収益力が大きいのはインナー関連で、アウター衣料も難しいが、取引先依存の商売ができるので対策は立案できる。靴業界では昨今「ABCマート」が好調だが、要因はカジュアルブランドの限定品と別注及びSPA化によるものだ。GMSの靴売場は客層の幅が広く中心年代層も高く、好調専門店の客層とは全く違う。同じ靴屋でもなかなか相容れるのは難しい。つまり、「アスビー」とは別業態になりシナジー効果はあまり出ない状況だった。結果的にはGMSの靴売場の赤字を背負っただけの結果になった。今回の上場廃止で、今後収益をどうやって改善していくのかはわかりづらくなってきた。

イオンではイオンモールとイオンディライトも前年上場廃止にしている。両社とも黒字企業ではあった。このブログでも少し触れたが、この上場廃止も意味合いがわかりにくい。両社とも親子上場の解消のためとは言っている。イオンの商業施設には、イオンモール㈱の物件とイオンリテール㈱の物件がある。イオンモール㈱はイオンモール物件のデベロッパー業務が主業務であり、今回の上場廃止を受けイオンリテール物件の業務も含まれていく旨の内容も発表されている。イオンディライト㈱はイオングループ物件のファシリティ管理(施設管理)をする会社となっている。ここにはイオンモール物件やイオンリテール物件も含まれる。ちなみに、イオンモールの名称であってもイオンリテール物件は多い。大型モールでも浦和美園や各務原、浜松市野などはイオンリテール物件だし、小型モールや、GMSはすべてイオンリテール物件である。両社にとってイオンモール物件はテナントも多く集客も多いので収益安定物件であり、逆にイオンリテール物件はGMS主体店舗が多く厳しい物件が多くなっている。両社のデベロッパー収益面ではイオンモール主体の方が当然安定しており、イオンモール㈱に関しては収益面でも厳しいSCを引き受けたことになる。

何が言いたいかと言えば、イオンモール㈱がイオンリテール㈱の物件管理をすることでイオンリテール㈱のデベロッパーとしての低い営業収益を引き継ぐことになる。それは赤字かもしれない。イオンディライト㈱も上場廃止になれば、グループの指示によりイオンリテール物件の経費分を下げていっても外部には分からない。つまりこの2社の上場廃止でイオンリテール㈱のプラス効果は当然想定できる。

もうGMSはすでに成り立たなくなっている。これは何度も書いているが、イトーヨーカドーがGMSをあきらめた時点で結果は出ている。イオンのGMSは決算を見ればグループへの貢献度は非常に低いがまだ若干の黒字ではある。ただ、そこにはGMSを続けなければならないグループの理由があるからではないかと思う。普通に考えれば金融事業の足固めのためだとは思うが・・・今回のジーフットの件も、去年の2社の上場廃止も、GMSを助けるという思惑もあったからなのではないだろうか。邪推かもしれない。

いろんな思いを持って企業は成り立っている。個人としても、遠かったが上場を目指していた。ただ、企業力を高めていこうという思いだけではない上場企業もあるのが現実かもしれない。

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ヴィレッジヴァンガード ファンドからの資金調達

ヴィレッジヴァンガード(以下ヴィレヴァン)がIRで投資ファンドから約25億円の資金調達を行ったと発表している。近年、厳しくなった企業の資金調達でよくみられるスキームだ。単純に考えて、「大金を貸す」背景にはいろんな思惑がある。単純にメインバンクからは借りることはできなかったのか?銀行は返済能力を考えての資金援助になる。債務超過寸前までの数字になった前期決算数字で、もうほぼお手上げの状況だったのかもしれない。今回の引受先の「グロースパートナーズ」はPOSシステムの導入や在庫、コスト構造の分析と改善の支援をしていくと表明している。

先に結論を予測すると、おそらく再生は非常に難しいと思う。

営業数字の改善の根拠の1つとして、今期の利益率の回復を上げている。4月10日付けのIRでは、今期の営業利益は大きく改善するとの数字予測を発表している。これは当然のことで、前期に特別損失として在庫評価損を2472(百万)計上している。わかりやすく言うと2472(百万)評価を下げて「安くした」商品を今期適正価格で売っただけでの利益改善ということになる。もっと簡単に言うと、売れなかった商品の原価を0まで落として捨てないで売れば、当然利益は大きく回復するということ。そこまで下げなくても売れる商品を大きく評価を落とすと当然利益率は上がる。これは実際ヴィレヴァンが過去にも使った手法でもある。2013年決算で在庫評価損4692(百万) を計上しており、次年度は売上総利益率が3.8%改善している。ただ、結局同じことになっている。つまり、一時的なもので今後の対策次第では従前の結果と同様の傾向になる可能性は高い。

ヴィレヴァンは、かつて経営していた店と同じ商品群も扱っていたので、売場は定期的に見ていた。その商品群はそこまで利益を稼げなかったと思うが、バラエティ感を持って品揃えし、比較的在庫は多かった。ただ当然、半期ごとには商品は変わっていくので処理が必要なのだが、なくすべく処理は全く見られなかった。売り切ろうとすると利益率が下がるし、お客様も古い商品と認識しないからそのままの値段でといいと思ったのかもしれない。それにより、その商品群はどんどん在庫が膨らんでいくのはわかった。さらに、在庫が膨らむにつれ、新商品も見えにくくなっており、厳しい状況になっているのもわかった。10数年前から、数字コントロールができてないなと感じていた。そして、客層が低年齢化しており、単価の高い利益に貢献できる商材が売れていないように見えた。

ヴィレヴァンはマニアックな感性を持った人材が多かったのだろうと思う。その感性で商品を仕入れていき、マニアの客層を呼び、成功していった。ただ、上場という足かせで、感性を持った品揃えだけでは企業を維持できなくなり、売れる商品も入れざるを得なくなったが、そこで品揃計画と数値計画に乖離が出てきたのだと思う。さらに求められる感性も変化していき、現状の数値は、従業員が楽しかった商売が楽しくなくなってきた結果だと思う。

面白い感性を持った人間を、過去何人も見てきた。おそらく、そういうスタッフがヴィレヴァンを支えてきた。ただ、売場造りや品揃えは面白いが、商売の根拠が乏しい。それだけでは商売は成り立たないし、ましてや上場企業としては継続できない。当然今後は、楽しい商売はさらにできなくなる。ファンドが参入することで、管理面がより強固なものになっていく。特にファンドは短期的に数字を改善して早々に出口を見つけたいと思っている。長い目で会社を見ない。

当然念頭には入っているだろうが、ファンド支援でのアゲインストもある。POSシステムからの在庫、コスト分析がさらに強固なものになっていくが、そこにも懸念もある。売れる商品の導入と不稼働商品の処理が進むと、ヴィレヴァンではなくなり、個性が失われていく可能性もある。さらに標準化が進むと、ヴィレヴァンの店舗価値も下がってくる。現状商業施設ではわざわざ性の強い店として、出店コストには恵まれている。つまり他店より場所を選ばず、厳しい場所でも出店するので賃料も手ごろになっている。ただ「角が取れた」品揃えになれば好立地がいいだろうし、デベロッパーもそうであれば賃料を上げていく事が予測される。

今回のヴィレヴァンの大手術には、相当な人材が必要だ。単純に、コストを大幅に減らすだけの人材だけではなく、品揃えの変更まで踏み込んだ営業面での指導者にもなれる両面的人材が絶対に必要になる。偏差値の高い仕事になる。

もうすでに「遊べる本屋」ではないが、チェーンとしての存続も非常に難しい。

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