ららぽーととイオンモール ➁

前回、セレクト系のショップのRSC(大型モール)への出店傾向についてコメントした。そしてその出店先は「ららぽーとに限られているように見える」と書いた。RSCのアッパー層をターゲットにするセレクト系ショップのリーシングが、イオンモールとららぽーとの立ち位置の違いに現れてくると思うので、再度まとめてみる。

まず、ユナイテッドアローズの出店について調べてみる。主な出店ブランドは「UAグリーンレーベル」であるが、このブランドのターゲットはRSCや地方ターミナル客層を想定している。そのため、当然出店店舗が各地のRSCには多くなる。ららぽーとへの出店は11店舗(ラゾーナ含む)、イオンモールへの出店は3店(レイクタウンとモゾ、京都)となっている。その他の店舗もテラスモールやマークイズ横浜など大型物件中心になる。イオン系ではモゾや京都はもともとの開発運営母体からイオンモールが引き継いでおり、実際は規模感の大きいレイクタウンのみへの出店とみてもいいような気がする。「ビューティー&ユース」もららぽーと2店、イオンモールはなし、「シテン」もららぽーと9店、イオンモールは前述したモゾのみ。やはりユナイテッドアローズのRSC出店はららぽーと中心であり、他は各地の大型モールへの出店(テラスモールなど)という流れになっている。

ビームスの出店については、ビーミングでららぽーと9店、ビームスで1店。イオンモールは前述したモゾのみ。その他西宮ガーデンズ、コクーンなど。シップスについてはららぽーと2店、その他テラスモールや西宮ガーデンズ。ベイクルーズはレリュームを中心にららぽーとに20店舗弱。ららぽーと福岡にはベイクルーズストアがあり、エキスポシティにはスピック&スパンも出店している。イオンモールはレイクタウン1店のみで、その他テラスモールや西宮ガーデンズには出店している。

上記データを見ると、やはりセレクト系の出店は大手SCではららぽーと中心であり、その他テラスモールや、西宮ガーデンズのような大型化され立地にも恵まれた都市型物件への出店がほとんどとなっている。そして、イオンモールへの出店はほぼレイクタウンだけという結果となった。

セレクトショップへの客層は、都市型の客層が多い。都市部の路面店やターミナルの駅ビルで買い物するお客様が中心となっている。その流れで見ると、ららぽーとのほうが、比較的都市部に近い場所に立地し、イメージも大型モールではあるが駅ビルに近いかもしれない。

イオンモールは、もともと「狸が出るところに店を出せ」からスタートしており、地方郊外の大型モールの位置づけになっている。さらにキーテナントがGMSのイオンというSCでは、ターゲット客層が量販店寄りになりつつある。SC売場面積の四分の一くらいを占めるイオンで中心客層が絞られてしまっている。ららぽーとにはその見え方はなく、SCに「小売企業の色」が強くない。現状一番減少している業態であるGMSの客層がメインターゲットでは、SC内でもアッパーゾーンを取り込みたいセレクト企業には魅力は小さい。レイクタウンへの出店は、他のイオンモールと違いモールにバラエティ感があり、GMSとしてのイオンの匂いが薄いからだと思う。

ずっと書いてきているが、イオンモールから量販店イオン(ジャスコ?)の匂いが小さくならないと、何年後かには、イオンモールも今のGMSと同じような状況になってしまいかねない。

■今日のBGM

若干アッパーゾーンの客層

近頃は、このブログで「ユニクロ」や「無印良品」の商品戦略や売場を持ち上げてばかりいる。5年位前までは「ユニクロ」を真剣に見たことがなかったし、「無印良品」も近年やっと無印創業時以来の頻度で通っている。10年くらい前は、店舗巡回の折にセレクトショップのアウトレットを見て回り、掘り出し物を見つけては喜んでいた。生活環境の変化で「衣食住」の買い方は変わる。そして、コロナ以降、小売業界も2極化が進んでいる。

百貨店やセレクトショップ等でプロパー価格での買物をする層は、どれくらい減っているのだろうか?ネットで調べると、百貨店売上は1991年9兆7130億がピークでそこから大きく落ち込み、近年はインバウンド効果で昨年は5兆7722億まで持ち直しているようだ。この現象はいろんなデータが発表されているので周知のことだと思う。ただ地方は現状、百貨店は淘汰され、購買層も大きく減少している。

衣料関連の専門店の動向をチェックする。コロナ前の売上と近年の売上を比較してみる。前述したユニクロはコロナで落ち込む前の売上比で135.5%(2020年比)、無印良品は150.8%(2019年比)。その他企業でもアダストリア123.9%、パルG145.7%、ABCマート126.4%、ニトリ147.3%、西松屋134.6%とコロナの不振をばねに大きく伸長している。逆にタカキュー43.1%、ライトオン52.5%、マックハウス55.0%とコロナを乗り越えられず、会社の方向性が変わった企業もある。そういう中で比較的アッパーゾーンがターゲットだった企業も、まだ元の数字に戻っていない。ワールド81.0%、オンワード76.4%、ユナイテッドアローズ84.5%、TSI91.4%とまだまだ顧客を取り戻していない。つまり悪い流れだった企業は淘汰され、さらに値頃価格志向の企業が上向いているように見える。

百貨店が中心の販路だった企業は当然のように厳しい。そしてユナイテッドアローズのようなセレクト業態も、前年数値をクリアしては来ているもののコロナ以前の数字にはまだ届いていない。課題は、百貨店等値段が通る販路のマイナスをどこでカバーするかになっているようだ。当然EC戦略が大きい流れではある。EC売上高はオンワード431億、TSI430億、ワールド356億と非常に大きい。しかしまだまだ過去の全体数字をカバーできてはいない。そしてここにきて大型モールへの取り組みも増えてきている。

近年、大型モールにセレクト系の店舗が急増している。ユナイテッドアローズは「グリーンレーベル」というそのゾーンのターゲットのブランドを作り広げてはいるが、ビームスやベイクルーズも「ビーミング」や「レリューム」などのブランドで広がってきている。「グリーンレーベル」の店舗は現在91店舗もある。ただし、他のセレクトショップは出店場所を見極めているようで、現状は大型モールの中でも出店は「ららぽーと」に限られているように見える。(ここに量販系イオンモールとららぽーとのモールの格差が出ている気がする。)旧百貨店対応メーカーもメーカー名を打ち出して出店が増えている。さらにオンワードが「ウィゴー」をグループ化しワールドも「ナルミヤ」や「ライトオン」を傘下に入れており、従来の販路とは違う企業を積極的に取り込んでいるようにも見える。

アッパーゾーンを取り組むより、ボリュームに流れるミドルゾーンを、どうやって引き留めるかが今後の小売業の大きな戦略になってきそうだ。

※日曜日、駅前のヤオコーに朝10時前に買い物に行った。入口近辺に備蓄米が2160円で山積みされていたが、販売員だけでお客様はいなかった。その後売れないので米コーナーや、特売品のエンドで販売していた。加熱した報道にあった混乱は、もう終了したのだろうか?

■今日のBGM(ネットで映画を再度見直したので・・・)

企業の賃上げが最重点課題?

歳を重ねると、主だったことの比重が小さくなり、なぜか社会のことに目が向き始める。政治に対しても独り言が増える。今回は、「小売り」「ファッション」とは少し離れる内容で書くことをご容赦願いたい。

選挙が近づき、各党が政策を述べている。石破首相は「企業の賃上げが最重点課題」と言い続けている。賃上げへのコメントは多いが、政治が企業の賃上げをバックアップできるのか、具体的には全くわからない。組合組織の連合も全労連も高水準での「賃上げ」を要求している。

国税庁発表の赤字法人率は、2022年が最新で64.8%だったようだ。ちなみに小売業は31.6万社の企業のうち22.6万の企業が赤字で赤字法人率は71.4%となっている。赤字企業はほとんどが中小企業で、その中小企業は国内企業数で99.7%を占めており、国内従業員の70%が働いている。そして、国内企業数の1%に満たない大企業の利益剰余金は2021年末で484.3兆円という数字もある。

こういう数字を見ていると、大企業の内部留保分を人件費に振り替えて賃上げをさせることが、首相の言う「賃上げ」ということだと見て取れる。そして政治家は「経団連」や「経済同友会」の大企業のみが「企業」という認識しかない。国民の70%が働く中小企業は眼中にないとしか思えない。

3年前まで従業員100名くらいの小売業を経営していた。頑張って定期昇給もしてきたし、 増益が続いたときは、年3回賞与も出していた。そして、会社立ち上げからコロナ期までは規模の拡大を考えながら、毎年黒字決算を続けてきた。それでもコロナ期の3年は重い時期だった。築いてきたものが崩れ落ちた。小売業で、店を開けないのでは何もできない。その時の国からの補助金は、雇用調整助成金があった。ただ、集客できないので営業成績は上がらず、マイナス利益の歩留まり的な要素しかなかった。その助成金もマニュアルが複雑で書類も多く、作成するのが1日仕事だったように思う。

雇用調整助成金もハローワークへの提出だったが、コロナ期以前もハローワークには最低月1回は行っていた。従業員の入退社手続きで、雇用保険加入手続き、退社手続き、離職票の提出など、さらにアルバイトの募集掲示手続きにも行っていた。ただそんなに行っていたにもかかわらず、「キャリアアップ助成金」は全く知らなかった。有期社員から無期社員にすれば当時は1名57万円の助成金があったようだ。少なくても15名以上はそうしてきたように思う。当然調べなかったミスだが、あれだけハローワークに通っていたので、もう少しアプローチがもらえてもよかったのではないだろうか?やはり助成金を拡充しても、従業員が多く、情報量も多い大企業が一番活用するのかもしれない。

政治は計算ではないと思う。3割が働く大企業も7割が働く中小企業によって支えられている。3割の労働者の賃上げだけが国の景気を変えるわけではない。中小企業で働く7割の労働者とその家族のためにどう動くかが本質ではないかと思う。そして情報取集能力の弱い中小企業にもっと歩みより、改善していくことが、一番大事なポイントのような気がする。

ただ、現実は国内企業数1%の大企業とのきずなが深く、政治家として接触もしやすい。1%と話をして調整すれば、表面上は賃上げに努力している絵も描ける。こんな感じで解決していくのだろうが、社会格差はどんどん広がっていく。

■今日のBGM

ポイント販促が異常に多い

これだけ暑くなると、歩いて買い物には行きたくない。バーゲンも始まっているSCもあるので車での買い物が増える。先日も駅前のSMへ行くには暑いのでどうするかと言っていたが、イオンがイオンペイでの買い物でポイント10%と告知されていたので、車でイオンへ買い物に行った。SMの安定感が駅周辺のSMより劣っているイオンへは、割引日や、ポイント戦略日にしか行かないようになってしまっている。

今月のイオンのポイント戦略日は10、13~15、26~28の7日間がイオンペイポイント10倍、20、29、30が5%オフ、その他15日がGG感謝デー(55才以上5%オフ)おおよそ10日が還元デーになっている。意味合いは微妙に違うが、ほぼ5%引きの日が非常に多い。

ポイント戦略はいつごろからこんなに増えたのだろうか?ビブレで店長をしていた最後の時期位にポイント10%のDM戦略を多用した思い出がある。バーゲン以外セールをしなかったブランドショップの売上が跳ね上がり、販促効果は大きかった。ただ会計処理上の変化があり、ポイント戦略は禁止になったように思う。さらに、ポイントによる不正も多かったのもその要因になった。

当初の会計処理はポイント使用時に経費計上していたが、その後ポイント付与時点に計上になったような気がした。少し調べてみると、現状は大会社以外に関してはポイント利用時に計上となっている。ただしイオンのような大会社はポイント付与した時点で仕訳が必要になっているようである。ポイント使用率を想定して契約負債とし、その分を減らした売上、売上負債と現金に仕訳けるようになっている。つまり売上計上は契約負債を引いた金額になっている。(これであっているのかはわからないが・・・)ポイント使用率を設定することで結果的には5%オフよりポイント10倍のほうが利益マイナス面に関しては影響が小さいということはわかる。

こういうポイント戦略が販促として効果が大きいのは食品売場だと思う。食品売り場を活性化することが多くの小売業の一番の課題になる。デイリー客が増えるし、商業施設の売上の核になる。そのために特売をしてチラシ販促をしたり、生鮮の専門店を入店させたりする。そういった販促手法から、ポイント戦略に変わってきている。

GMS食品業種の利益率は25~26%と言われている。昔、ビブレで店長をしていた時は生鮮のテナントを売場に組み込んでいたので21%くらいだったと記憶する。利益構造も変化していると思うが、「売場全品5%オフ」のような販促は絶対企画できなかった。現在のチラシの内容は昔ほど値段を訴求していないし、利益の出る総菜の拡大で利益率は改善しているかもしれない。今後は「5%オフ」や「ポイント10%」企画はどんどん増えていくと思う。各社の取り組み姿勢にもよるが、安易な販促なので、これがさらに5%オフから7%オフになっていくことも考えられる。ちなみに売上年間25億、回転率月3回転、利益率25%の食品売場で3日の5%オフと7日のポイント10倍(使用率30%設定)を実施したと想定すると、手計算では月度利益は-0.1%強位の計算結果になった。仕入努力や生鮮品の値引き率の減少で十分改善できる数字にも見える。

カード会員の囲い込みや、ネット客の拡大、スマホ決済への取り組みなど、企業としてのプラス要素は大きい。ただ、一方で商品のライフサイクルを考えた販促や時系列による売場の変化など、取り組むべき業務がないがしろにされてしまうかもしれない。小売業としてこれだけポイント戦略が多いと、その流れが当たり前になってしまうことが一番怖い。

■今日のDVD(モンキーズ)

中心客層をよく知ること

近頃の「米騒動」で、2000円の備蓄米のことがTVをにぎわせている。米はSMから減っていたのは事実で、値段が上がっていたのも事実ではある。では2000円の米は近隣の店舗で手に入るのかというと、どこにも売っていない。若干の米の価格は下がってきたという効果はあるが、今後の方向性は見えない。ただTVでは長蛇の列での販売風景を何度も映し出す。そんなに必死になって探しているようには思えないのだが・・・

偶数月の15日の年金支給日の買い物の映像も、必ずと言っていいほど取り上げられる。インタビューでは、多くの高齢者が年金生活者で月の年金は5~6万しかないと答えている。だが、厚生労働省が発表している高齢者(65才以上)世帯の平均所得は316万で可処分所得は274万円、そのうち年金収入は平均197.4万円となっている。年金は税込みで1世帯当たり月16.4万の計算になる。それを考えると、恣意的ともいえるテレビ報道ではある。

世間の風潮が、「生活が厳しい」流れに乗っているような気がする。はたして実情は、そういう流れなのだろうか?当然「厳しい」感覚はあると思うが、少しあおりすぎのような気もする。この流れは、絶対に年齢別人口構成比の変化が大きく影響しているように感じる。再度書くが、日本の人口は30年前と比べると98.1%と微減だが、60才以上は181.5%と大幅に増加している。人口構成比は19.3%から35.4%となっており、その人口は男性19457千人、女性24346千人、合計43803千人になっており、高齢者の比率は高くなっている。この年齢層の分析をすることが、基本品揃えに一番重要だと思う。そして、現状は必ずしも「高齢者=生活苦」ではないと思う。

このブログで、近頃よく取り上げているが「無印良品」や「ユニクロ」は絶好調を続けている。「無印良品」の国内売上高既存前年比は最近3カ月120.5、109.8、112.2と大幅伸長しているし、「ユニクロ」も111.5、98.7、113.1と伸長している。おそらく収入中間層へ組み込まれる60才以上の購買動向を分析しての結果だろうと思う。そのターゲットをくすぐる素材感や、値頃感の打ち出しが非常にうまい。

トレンドを意識するヤング層(10代~20代)の人口構成比は大幅に減少している。ただ商品のトレンドはこのターゲットから始まる。そして販売するのも楽しい。ただそのゾーンを追いかけると底は浅い。そこに気が付かねば、商売は失敗する。現状では、人口構成を見ている限り、商売を成功させるには、60才以上の高齢者の動きをつかむことが最も重要なこととなっているように思う。

今の50代も含めて60代、70代は昔の実年齢の世代とは全然違う。ファッションや趣味も多様化しており、ある意味「楽しい事」を享受してきた世代だ。このブログでも何度も繰り返しているが、ファッションでは「VAN、JUN」を経験し「DCブランド」も身に着けてきた。その認識を持ってその世代の感覚と対峙する必要がある。話は逸れるが、GMSの衣料服飾売場はそれがまだ理解できてないので、売れてない。「高齢者=シニア(老人)」の感覚で品揃えしている。

今の小売業は「50代~70代」を詳しく分析することが、間違いなく成功のポイントになる。

■今日のBGM

小売業からの地方創生は難しい

先輩夫婦と恒例の旅行をしてきた。今年は四国がメインで、暑かったが雨にも打たれず好天気に恵まれた。

私自身、四国は何度か訪れている。徳島県は母方の故郷で子供時代から何度も行っている。愛媛県は道後温泉としまなみ海道の観光で訪れたことがあり、香川県はマイカル時代ビブレの店舗があったので巡回していた。高知県はPM会社在籍時、高知市内のビルの商業化リニュアル計画のコンサルで数回訪れている。

店をやっている時、四国で出店依頼を受けたことがあるのは徳島のゆめタウンオープンの時だった。遠隔地に出店する時は当然ドミナントを考えて出店する。売れる商品も似通ってくるし、そのほうがマネジメントもしやすい。それに加えて、できれば核になる店が欲しい。以前の会社でドミナントしていたのは、関東圏、関西圏、九州南部だけだった。中部圏も作ろうとしたが、核になる店ができなかったので作り切れなかった。そういう意味で中四国は、出店を考えられるのは人口の多い広島市などの県庁所在地くらいで、点だけになり地域全体がまとまらない。そうなると、どうしても中小小売業は出店をためらってしまう。さらに、地元で強い企業があり、なかなか参入できないという状況もある。

旅行期間中、全労連が「直ちに最低賃金一律1500円以上に」と発表していた。四国の最低賃金を調べてみると、徳島県980円、香川県970円、愛媛県956円、高知県952円となっている。中小規模でコツコツ商売をやっている企業は、大手小売業の参入で人不足になることは明らかだ。全労働人口の70%を抱える中小企業は、そんなに簡単にクリアできる最低賃金ではない。

そうなると、閉鎖的な商圏に新規参入するとすれば大手企業中心になり、それにより地元企業も厳しくなってくる。そしてさらに県庁所在地など都市部に企業は集中し、ますます郊外には人がいなくなる。その都市部でも、四国で言えば、徳島にはもう百貨店はなくなっている。他の百貨店も高松三越が売上224億となんとか百貨店の規模感はあるが、高知大丸84.3億、松山三越49.8億と百貨店としては非常に厳しい数字で、閉店前の厳しいゾーニングになっている。20年位前に高知大丸をリサーチしていて、神戸大丸のように本館周辺にサテライト店がいくつかあったことを思い出した。それが今や存続の危機になっている。人口も減少傾向にあり、今後の四国での小売業は、間違いなく縮小方向になってくる。

7月偽予言の風評の影響からか、観光地にも外人客が少なく、日本人観光客も多くはなかった。ただ、観光産業には宝の山のような気がした。観光スポットをさらに広げていければ観光地としての側面からは大きな期待は持てる。ただ、だれが資本投下するのだろうか。そして、外国人観光客の流れは今後も続くのだろうか。

四国四県を車で走ってみて、小売業だけでなく「地方創生」は限りなく難しいと感じた。

■今日のショット(徳島 かずら橋)

ららテラス川口

見た第一印象は「大丈夫?」だった。

売場区画を作りにくい地形、食品売り場に「?」、テナントのターゲットに「?」。駅前の1等地物件が、空いたままだった理由がよくわかった。

川口市は人口約60万人。隣接駅は東京都赤羽駅。通勤に便利で、駅周辺には大型マンションが多い。クルド人問題で取り上げられ、外国人も多い。昔は駅前にそごうだけでなくマルイもあった。さらに郊外にも大型RSCのイオンモール川口前川、イオンモール川口もある。JR川口駅の1日乗降客は149千人で埼玉県では5番目の多さとなっている。

「ららテラス」の他施設を調べてみると、地域密着型で比較的買いやすいテナントが多く、わざわざ感より、利便性を重視しているように見える。ただ、旧川口そごうの物件であり、デッキで駅と直結しており、何よりも11階建てで3万㎡近い売場面積がある。そごうの売場面積は32621㎡となっていた。床はおそらくそごう時代のままで、「からくり時計」も復活している。所謂、百貨店のハコのままになっている。

沿線の大宮には、百貨店が2つあり、ルミネ、丸井がある。浦和には伊勢丹とパルコがある。百貨店は川口にはもういらないことは実証済み。駅ビルスタイルにするのか、従来の「ららテラス」ターゲットのするのか非常に難しかったのではないだろうか。結局は両方取り組んだという結果のように見える。近隣の浦和パルコがそのモデルになりそうだが、決定的に課題になるのは、各フロアの地形が悪く、各フロアの大きさが小さい事だと思う。

B1Fに食品SMの入店は難しかったのだろう。それでも、フードコートをやめてB1F全部を提案しても導入できなかったのかと感じる。駅近ならマルエツくらいしかないし、なんとか地元の「ヤオコー」か、流行りの「ロピア」など賃料を度外視しても優先的に入れたほうが良かったのではないだろうか?「対面テナント」と「成城石井」は客層とアンマッチのような気がする。メインフロアではない1階の半分を銘店や「西武そごうショップ」にして1Fを食物販にしてもよかった。全部を提案してもSMの導入は無理だったのだろうか。三井不動産の企業力をしても難しかったのだろう。

デッキとつながったメインフロアの3階は何とかして「館の顔」のフロアにしたかったことはよくわかる。ただおそらくあまり食指が動かない物件だったのか、3.4階のテナント揃えは「何とか」のイメージが強い。セレクトも「UAグリーンレーベル」「アーバンリサーチストア」をメインフロアに導入しているものの、都心近郊の駅ビルより厳しいテナント揃えに見える。5階以上はカテゴリー大型区画になり、実需と利便性を考えたフロアになっている。5階は「ユニクロ」「GU」の1フロア構成で、6階はボリューム路線の「パシオス」と「ムラサキスポーツ」「ウィゴー」「コカ」、7階は「ダイソー」「ノジマ」、8階は「西松屋」とアミューズ・カルチャーのフロアとなっている。

全体を見ると、引き継いだ百貨店のグレード感ある内装が、逆にマイナスになっているようにも見える。まだオープンしてから日が浅いからかもしれないが、来店客層は駅ビルの客層に見えた。対面の食品テナントと「成城石井」が「パシオス」「西松屋」と共存して正解なのか?各フロアの客層が違いすぎているようにも思うが、今後回遊性はあるのだろうか?賃料設定も厳しそうに見えるが、SCの採算は取れるのだろうか?

好立地なのに、なかなか借り手がつかなかった理由はわかる。簡単ではない物件だろう。ひょっとしたら賃貸条件も破格なのかもしれない。またしばらくしたら、見に行ってみる。

■今日のBGM

アリオ、イトーヨーカドーとファウンドグッド

飲み会に行く前に、川口そごう跡の「ららテラス川口」でも見ようと、川口駅に立ち寄った。そのついでに「アリオ川口」にも足を運んだ。久々に「アリオ川口」を見て、いろいろ考えさせられた。

まず、イトーヨーカドーの食品売場のレベルは、相変わらず高い。足元のマンション群に囲まれ、その客層への総菜中心のデイリー食品は充実している。値段もいつも買物しているイオンよりは安い。エリア特性があるのか生鮮3品の売場の大きさに変化があるが、相変わらず欠品は少なく、きちんと売場管理がなされている。売場が大きく、持て余している感じはあるが、足元商圏のシェア率は高そうだ。

撤退した衣料売り場だが、アダストリアとの協業の「ファウンドグッド」は、うまくいってないようだ。立ち上げの時に見たが、現状の売場はその時の売場より30%くらい縮小されている。やはり客層とのギャップが大きい。浦和イトーヨーカドーの「ファウンドグッド」をたまに見るが、イトーヨーカドー来店客とのギャップが大きすぎて、全く売れてないように感じていた。逆にモール内のイトーヨーカドーだと受け入れられているのかと思ったが、やはり客層のギャップはここでも大きかった。衣料売り場は「ファウンドグッド」を縮小し、量販店委託ブランドのコーナーを増やしている。所謂、メーカーコーナーで「クロコダイル」「ハッシュパピー」「ケント」「ギャロリア」「アンナルナ」「インスパイア」などのブランドがコーナー展開をしている。取引形態はいろいろあるが、最終商品リスクはヘッジできる取引だろうと思う。浦和店の衣料品売場も同じような展開であり、やはり従来のイトーヨーカドーのお客様中心であり、新しい客層は取り込めてなさそうだ。「ファウンドグッド」も、どのゾーンを狙っているか見えにくく、さらに「ユニクロ」「GU」よりは高い値段では量販店の顧客は取り込めない。アダストリアは今までの出店場所を選んでの出店とは違い、量販店の客層との相違に苦しんでいるようだ。人的課題もあり、どちらがリスクをかぶる契約かわからないが(おそらくイトーヨーカドー)、おそらく全店展開は難しいと思う。

「アリオ川口」だがやはり「イトーヨーカドーと〇〇の専門店」という域を出ていない。売場面積も3万㎡強と大きくもなく、イトーヨーカドー食品とシネマやジョーシンなどの強みしかなく、引き付けるテナントも多くはない。アリオはイトーヨーカドーグループの商業施設の開発運営会社(セブンアンドアイ・クリエイトリンク)のPMだと思うが、独立してのデベロッパー会社ではなくあくまでもグループの不動産管理会社にしか過ぎない。ということは、あくまでも発言力が強いのは「セブン&アイ」であり、独立性はほぼないという位置づけだと思う。そのためイトーヨーカドーの売上をどう上げていくかが主の目的になり、テナントのフォローや、パワーアップさせたテナントの導入がおろそかになってしまっている。イオンの本体のイオンリテールが運営する「イオンモール」が、モールとして完成度が低いのと同様の状況下にある。そのため大きな投資はかけられず、テナントの劣化が進み、モールとしての魅力はどんどんなくなってくる。独立性が強いイオンモールが運営する「イオンモール」との差は大きい。

間違いなく、脱GMSとしてのイトーヨーカドーは方向性が見えていない。SMもあれほどの大型売り場は必要なのだろうか?そして、特に衣料品撤退後の売場が解決できてない。そんな状況下では、モール全体の改善はどんどん後回しになる。発言力もなさそうな子会社では、モールのテナントゾーンのケアもできない。今後も、広域からとるべき客数は恐らくどんどん減っていくと思う。イトーヨーカドーグループ(ヨークホールディングス?)は、完全に迷走していると感じた。

■今日のBGM

適正な利益率は?

前回、ユニクロのMDについて書いていて、いつも気になっていたことを思い出した。毎年の決算数字で、ユニクロの売上総利益率は適正なのだろうかということだ。

商売をやっていて、売上総利益率は非常に気になる数字ではある。過去の経験では量販店時代やビブレ時代も、記憶ではアンダーウェアが40%に近く、衣料品、服飾品では40%を超えることはなかった。売上効率が高かった売場で35%を超えていた印象しかない。その後自分で会社をやってみて、在庫を第一チェックポイントとして運営し40%は超えていった。店舗数が増えていき、取引先との別注商品をスタートし45%以上には上げていけた。それ以上上げていくには、商品ロットの問題があり、店舗数を増やすことと、当然のことだが、全店で高く消化できる商品を作ることが必要になってくる。

小売業の総利益率の原価は商品原価と考えていい。ただそこから商品の評価損が加えられる。つまり割引をしての評価が加えられる。商品原価(期間仕入れ分)÷(商品売価―値下額)が原価率となる。大きな数字ではないがそこに商品のロス分(万引き、不良品)が加味される。製造原価は商品にもよるが30%前後と言われている。

ユニクロの調達原価は35%前後と言われており、商社等の手数料を加えると38~40%が商品原価として計上されているようだ。ちなみに、前期決算での売上総利益率は53.9%となっている。この利益率をどう見るか?売上は3.1兆円の規模になる。ものすごい金額の商品を仕入していることになる。決算書を見ると前年より25206(百万)商品在庫(原価)が増えていて、売上が3.1兆なので3.8兆円以上(売価)の商品(売価)を仕入れていることになる。それでも原価は40%前後というのなら、相当まともな商売をしているように思える。

始めて取引する際に、最初の原価は、取引形態にもよるが55%~60%くらいだろうと思う。10年も商売を続ければ50%くらいにはなる。発注量にもよるが一部の商品を別注して40~45%の原価にはなる。これは20店舗強まとめた過去の経験上の数字で、ユニクロくらいの天文学数字でも40%くらいの仕入原価であれば、おそらく相当売価を抑えてきていると思う。さらに原価率から逆算すると、利益率は6%くらい下がってはいるので、期中でのプライスダウンも相当な額になっていそうな気がする。決算書を見て計算してみたが金額が大きすぎて、わからなくなってきた。(算出したが、あっているかどうか想像もつかない…)

何が言いたかったかというと、ユニクロは、売れる値段を考えた仕入れをし、売れなかったらその商品を迅速になくしていっているということだ。つまり利益率を考えた商売をせずに、売れる値段設定をして、売れなければ迅速になくしていっているということになる。当然最低の利益率は念頭にはおいているが、売れることを最優先にしている。商品特性は違うが、アダストリアの売上総利益率は54.7%、パルGが55.9%であり、ユニクロの規模を考えると適正な値段と商品処理を優先的に行っていることがよくわかる。

厳しい会社は、商品価値を市場価値で見てないことがある。ライトオンはワールド傘下後の決算で売上総利益率は39.9%まで下がっている。3期前は50.7%の実績だった。その時の在庫は2.5倍位あった。店舗数が減ったこともあるが、利益率のマイナスも考えると、商品評価を大きく下げており、企業での商品価値と市場価値の差が大きかったことは間違いない。適正な数字かもしれないが、上場小売業梨で売上総利益率が60%を超える会社もある。

ただ、価値観はそれぞれなので商品価値は判断しづらい。ユニクロの利益率を商品展開と決算数字で確認して納得できたように、決算数字を見ていると色々見えてくるものもある。それぞれの会社の戦略や取り組み姿勢がよくわかってくる。

■今日のBGM

ユニクロは客層の幅が広いから・・

近頃、食品の買物ついでに、ユニクロと無印良品は定期的に見ている。本当に誰が中心になって、商品のMDを組み立てているのかと感心する。やはり両店とも、あまり外れる商品はなく、タイミングを見極めてプライスダウンもしており、商品のライフサイクルもうまくコントロールしている。あまりとがった商品もなく、必要な商品が提案できている。

先日も、朝の番組で、「高機能のアンダーウェア」を試して、いろんな角度から評価し、高評価の商品を紹介していたが、結局No1だったのはユニクロの高機能アンダーウェアだった。各下着メーカーなども比較されていたが惜敗していた。同じ番組で、食料品などではいつも「トップバリュ」などがランキングされるが、イオンの商品はランキングされていない。専門メーカーや小売最大手も寄せ付けない強みがある。

ユニクロで、半月くらい前から、「ポーター」に似たバックが、3~4種類くらいバックのフェイスにしては大きく提案されている。今年の1月に1型発売されたらしく、さらに2024年に韓国で先行発売され爆発的な人気があったようだ。「ユニクロ:C」の商品もあり、値段は2990~4990だったように思う。

おそらく、ユニクロ以外の会社で、この商品は作れないし、売れないなと感じる。値段が全く違うので、別物と言い切れそうだが、なかなかファッション系の他の会社では作りたくても作らないし、作ったとしても店頭では売りにくい。そして何よりこの値段では作れない。

以前、ユニクロのチラシ折込について、ユニクロの客層の幅の大きさが背景にあるという旨を書いたことがある。はたして、一般購買客で吉田カバンをどれくらい知っているのだろう。通勤電車で吉田カバンを持っている比率は間違いなく10%以下だと思う。さらに70才以上になれば知名度はもっと下がってくる。おおまかに勝手な予想だが、ユニクロのお客様で吉田カバンの知名度は20%以下だろうと思う。つまり、機能や値段を見て購買するお客様がターゲットであれば、「似ている」という意識は必要ない。単純にちょっと「洒落て」いて「機能的」で値段が「リーズナブル」であれば客層にぴったりはまるということになる。

もし、この商品が売れ続けるなら、ユニクロのMDの狙いはうまくはまる。近頃、本家の吉田カバンは、いろんなブランドとコラボをしている。プレミアム感をどんどん出している。ここでも完全に客層の2極化の様相を呈してきている。

ユニクロも無印良品も商品アイテムは少ないが、客層を狭めず、商品は的確に絞り込んできている。ユニクロはジルサンダーやクリストフ・ルメールを皮切りに有名デザイナー監修のブランドも低価格で打ち出し、安売りのイメージとも一線を画そうとしている。無印もヘルス&ビューティーなど拡大し商品の幅を広げ続けている。

幅広い客層に、アパレル中心に的確な商品を送り続けるユニクロや、1カテゴリーでは売れるアイテムを集中させ、カテゴリーの幅をどんどん広げていく無印良品の商品MDの仕事について、真剣に詳しく聞いてみたい。

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