イトーヨーカドー(以下IY)の撤退についての感想を書いたばかりでいたら、「IYが撤退した衣料品平場をアダストリアが改革。6月までに64店舗に導入。」との記事が報道された。

IY専用のアパレルブランド「ファウンドグッド」(100坪~300坪)をアダストリアが商品提供し売場演出、販促、販売員教育もサポートするという。イズミとは「シュカ」というブランドをプロデュースしているが規模は今回のほうがかなり大きい。

こうなったいきさつを想定してみる。(あくまでも想定。)IYが衣料からの撤退を決め、テナント導入を進めるという政策は去年の春くらいからは動いていたと思う。そして、おそらくテナント導入はうまくいかなかったのではないか。ここでも何度か書いたが今のGMSのIYにRSCモールになれたテナントは興味を示さないし、デベロッパーが収益を優先する条件ではなかなかリーシングできない。そんな中で友好関係にあるイズミと協業を始めたアダストリアとの話し合いでのスタートの気がする。「スタディオクリップ」のFCもスタートさせ、話し合いを続けた結果、今回の協業に至ったのではないか。

果たしてうまくいくか?

マイカル在籍時、同じようなことをした記憶がある。取引先とブランドを立ち上げビブレ(ファッションビル)だけでなくサティ(GMS)までの導入を図り、GMSの売場の活性化を図ろうとした。取引先は「サンエーインターナショナル(現TSI)」、「ピンクハウス」「ワールド」「イトキン」だったと思う。「ZARA」とも取り組んだと記憶する。結果は失敗だった。お互いの会社の取り組み方にずれが出てきて整合が難しかったと思う。お互いの社風も違う。育ってきた風土も違う。組織体系をきちんとしなければうまくできない。さらにお互いのリスクの大きさも違ってくる。

今回の詳しい取り組み内容はわからないが、内装などハード投資や商品リスク、運営問題などの整理がきちんとできるかがポイントになる。成功させるには別会社を作るくらいの労力はいる。今回はファッション小売業で最も優れている「アダストリア」と流通業での優等生のIYとの協業なので、昔私たちが経験した失敗は少ないとは思う。IYで「スタディオクリップ」のFCが成功したことも要因の一つとあるが、そのブランドは認知度が高く、関係は「取引先対小売業」で一般的なものだ。今回の取り組みはIYの活性化がメインなのだろうが、事業としては西友がスタートさせた「無印良品」のようにIYだけでなく、どこにでも出店するブランドを作る意気込みでないと失敗する気がする。当然アダストリアとしても現状の低価格帯の専門店の好調さは織り込み済みで、販路拡大を探っていたはずだ。

将来的にはチェーン展開できるショップを目指すべく、資本を持ち合い、人の交流もし、同じ目標に向かっていくことが成功のポイントになると思う。いち早く運営会社を立ち上げるべきだと思う。

今後の動向に注目したい。

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