いつの間にか冬のバーゲンは12月からになってしまった。まだ百貨店や駅ビルは1月スタートが多いが、郊外モールは12月スタートが普通になってきた。ただ昔のように一斉バーゲンのイメージはなく、「並んでまで行く」イメージはない。特にモールなどは日ごろからセールのオンパレードで「売場全品いつでもセール」の店もある。

数年前までバーゲンは7月、1月だった。それがいつの間にか前倒しされている。近年は11月に「ブラックフライデー」と称する大きなセールが現れ、ほとんど11月からセール状態になっている。

そもそも値段を下げる理由は何だろうか?季節感に基づく商品の入れ替えが大きな理由ではある。大きくは夏物と冬物の処理で、その処理によりキャッシュを貯めて、その金で、次のサイクルの商材を仕入れる。そのキャッシュを大きくするために大きな販促(バーゲン)を使う。

従来の商売は、夏であれば5月中旬から、冬であれば11月中旬くらいから季節商材や、動きの悪い商品の原価を下げてメーカーが出荷するようになる。その商品を買って7月、1月のバーゲン期まできちんと販売して、そこで利益を貯める。その後バーゲンで利益を考えながら値段を下げる商売に入る。特に12月はボーナスとクリスマスのギフト期が重なり、売上と利益を稼げる月だった。春夏商材は7月、8月に、秋冬商材は1月、2月になくして、その金で次節の秋冬物、春夏物を仕入れて利益を回復させていく。そんな商売サイクルだった。その商売サイクルも変わってしまったと言えるかもしれない。春夏秋冬の4シーズンではなくなり、春と秋が極端に短くなってきている。当然それにより、季節商材の売れ方も変わるし、社会催事にも変化が出る。

そして、その図式はテナントにも変化が出てきている。先述した「売場全品いつでもセール」の店は、単品メーカーの直営店が多く、それによって当然小売店に卸すより安く販売できる。それを直接売るときに割引訴求している。公取が定めた2重価格表示をうまく抜ける方法はいくらでもある。ユニクロなど大手もメーカーなどを通さず、自社で商品を作っている。そういう企業は、あくまでも小売店であり、メーカーではない。細かなMDのもと短サイクルで商品を作り、きちんとした値段を打ち出し、その演出計画もあり、陳列台帳もある。しかし短サイクルで商品を作っており、商品計画との差異が出た時は自社セールをして、バーゲン期に関係なく値段を下げてなくしていく。

デベロッパーは売上を上げたい。当然それにより賃料収入を増やしたい。さらに近年の郊外モールのテナントは、前述したように商品サイクルが早くなり、従来の四季による切り口だけではなくなっている。そうなるとどうしてもセール期が長くなる。そしてその流れに対応できる店が増えてきている現実がある。流れに対応できない商品のサイクルが長そうな業態(スーツ、ジーンズなど)は姿を消していっている。デベロッパーもその流れには逆らえず、個別セールを黙認している。モール型のSCの多くはそういう現状にある。逆に百貨店やファッション系のSCではまだセールを野放しにはしていない。ここに客層の差別化が出て2極化がさらに進んでいる。

昔よく言っていた「中間層」は、いなくなったのだろうか?

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