「これがいいより、これでいい」 無印良品のスタート期のスローガンと言われている。今の時代に当てはまる言葉のような気がする。
日経平均株価が最高値で、上場各社は大幅なベースアップを行い、初任給も大幅に上がっている。日経平均が高かったバブル期はもう少し生活に実感があったように感じる。
当時のファッションはブランドブームで俗にいう「ボディコン」ブランドが全盛だったし、20代中心にDCブランドが席巻していた。マルイには「ピンキー&ダイアン」や「J&R」が並び、まばゆいフロアがあった。ビームスやシップスもトラッドの流れから変化しセレクトショップのスタートにもなった。好景気到来と言われている現状と比べるとファッションへのあこがれが強かったように感じる。少し前にも「モンクレール」「デュベチカ」などからブームになったダウンジャケットの人気の中、「カナダグース」が世間にはあふれかえっていた。しかしファッション以外の理由もあるが、今はほとんど見なくなった、ファッションの話は一部でしか上がってこない。
ファッションは「憧れ」からスタートするように思う。そういう意味もあり昔は働きたいと思う人たちも増えていた。「好きな服を着たいから」「好きな服を売りたいから」ということから販売員になる人たちもたくさんいた。当然待遇面の問題もあるだろうが、まず「好きな服」から仕事を見つける人たちがいた。今の時代にそういう憧れを持って販売の仕事に向き合う人たちはいるのだろうか?
今、好調な小売業はユニクロやしまむら、西松屋など接客が重視されない会社になっている。本部がマネジメントできる体制が整っている会社だ。当然単価が低く品数も多いので必然的にそうなる。仕事も作業化されている。会社で売れる商品を作り出し、データで商品動向を把握し、そのデータに基づいて売場体制を構築する。
小売業はどんな業態でも、売りたい商品を売るのが仕事にはなる。ただ思い入れが強く、「人」の要素が強い企業が厳しいのが現状である。
人手不足は深刻と聞く。販売業は土日も勤務が普通だし、立ち仕事でもある。定職としては最も敬遠される職種となる。さらに、そこまで大きな収入にはならない。収入を得るのが目的で待遇面を重視する人には向かない。
なかなか「これでいいより、これがいい」時代には戻ってこない。
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