政治ネタを書く気もないのだが、岸田首相が「賃金を上げていく」と言うたびに力が抜けていく。それに同調する財界にもあきれてしまう。国は企業にどういう力を貸してくれるのだろうか?

中小機構によると日本の全企業数の99.7%が中小企業であり、労働者の68.8%が中小企業で働いているとのことだそうだ。私自身も大企業で働き、最終的には会社を興し、中小企業の社長で引退した。

小売業しか細かくはわからないので、小売業の中小企業がどうやって賃金を上げていくのか考えてみたい。当然のことだが利益を従前よりも稼ぎ出すことが必要になってくる。

利益を上げるにはまず売上を上げることが最低限必要なことになる。コロナで傷ついた売上を簡単に回復できるのか?何度も書いてきたが、小売大手を含めても売上を堅実に伸ばしている企業は少ない。10月の上場企業の既存前年比をみても、無印は112.9と伸長もユニクロ91.5と数字に大きな変化は見られない。コロナ前よりも伸長している企業は少ない。

次に利益率を改善することが必要となる。仕入れ原価を安くすることが一番の方法だが、海外の工場でロットを増やして生産しても、円安の影響で値段を抑えれば利益率は改善できず、さらに値段も上げにくい。ましてや中小企業はロットを確保することも難しくなってくる。その環境でなかなか利益率も上げにくい。

次に経費を抑えられるかということだが、デベロッパーも厳しい中、家賃を下げることは難しい。人件費だが、最低賃金も上がってきている。小売業は工場等と違って、仕事の範囲が見えにくい。時間を増やせば生産量が必ずしも増えない。その他のランニングコストは十分絞っているだろうし、水道光熱費などは逆に上がっている。

さらにコロナで融資を受けている。当然返済も始まっている。新店や改装などの店への投資にも、よほど企業財務体質がよくなければ、金融機関は融資には応じにくくなる。応じてもらえても金利は今までよりは確実に上がる。

そういう環境下で、どうやって中小小売業は賃金を上げていけるのか?

先日、新聞で有期社員から正社員に待遇変更したら助成金が出ることを初めて知った。会社を経営していた時20人近くは待遇変更した。調べると1人57万円の助成金とある。月に1度はハローワークにいっていたが、この話は聞いたことがなかった。ほかにも多くの助成金制度があるようだ。もう少し周知させる必要があるのではないか?

国は何を手助けしてくれるのだろう?99.7%の中小企業はそれを探す力が弱い。助成金だけでは給料を上げるだけの原資には遠く及ばない。

上場企業だけを見て、政策を立案したり、財界と話ができれば経済は動くと思っていては約70%の労働者の幸せには結び付かない。政治が国民の給料を変えることはなかなか難しいと思う。

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