いろんな売場を見てきたが、「売りたいものがわかる売り場」が一番いい売り場だと思っていたし、そのように言って来た。

「売りたいもの」はセールスプラン(販売計画)の中心になる。その商品群を何点売っていくか、それに類似した商品群をどれくらい品揃えしていくか、その商品群でどれくらいの売上を作るか。そしてその商品の特性やアピールポイントをスタッフ全員が共有することで、お客様へのアプローチも明確になる。さらにその商品特性がわかるように演出するし、接客も強化される。

売場を作らせてみると、売場の責任者によって、売場の色は変わる。特に店仕入の店は大きく違ってくる。同じような商品を品揃えしていても店長によって売場の作り方は変わってくる。当然セントラルバイイングで売場作りマニュアルを徹底している店は除いてのことだが、中小小売業は基本的な考えは指示されているが、売場作りは売場スタッフによることが多い。通路幅や、カラーを意識して、整然ときれいな売場を作る店長もいるが、雑でも「これが売りたいのだな」がわかる売り場のほうがなぜか数字はいい。思い入れが売場に現れる。

少し企業が大きくなると、ストアメイキングマニュアルやVMDなどのきれいな言葉が踊りだす。私自身も演出面でカラーコントロールマニュアルを考え色目の並びとか補色や明暗、反対色などを意識したこともある。そもそも見え方で売上が上がるのかは疑問が多い。VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)とは何なのか?VP(ビジュアルプレゼンテーション)とどう違うのか?そしてどれだけ売場に変化ができて、どれだけ売り上げが変わっていくのか?なかなか頭で考えるだけでは数字はとれてこない。

いつも言っているように、小売りの組織では一番現場が優先されるべきだ。本部で考えた演出手法は売場に相容れるのだろうか?さらによくある事例として、外部の会社に任せるケースも多い。そうなると完全に「現場不在」になってくる。本部や外部で提案された見せ方は「きれい」が評価の基準で、売れることに目的がない。

売場は最低限、本部が定めた通路幅や最大陳列量を守って、「売り場の意思」を見せればいい。その表現があっているかどうかは売上でわかる。売る気があれば、ストアメイキングマニュアルなどの知識は、最低限理解してさえいればそれでいい。

大きな会社も一緒だが、売れることが究極の目標になる。「商品を仕入れた人の気持ち」と「商品を売っていく人の気持ち」と「商品をよりよく見せる人の気持ち」が同じであることが一番大切なことだと思う。

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