このごろ、この類の内容が多くなっていて恐縮するが、やはり大企業の社長や新聞各社が他人事のように言う「景気の回復は中小企業次第」というコメントには大変憤りを感じている。今回も同様の内容になっていることをご容赦願いたい。

先日、昔の取引先の社長と飲んでいるとき、その社長がお盆休みの案内を出したら、「長い夏休み、どこか行くのですか?」と取引先の店長に聞かれたという。店長は今年の盆休みは特に長いので何気に聞いたようだ。その社長は、「商品の発送ができないので休みにしただけで、お盆期間も毎日仕事する」と答えたそうだ。実態は間違いなくこういう状況だと思う。従業員は休ませても、社長は仕事を普通にやっている。

以前も書いたが、中小企業の社長にほとんど休みはない。後方各部署に責任者と担当がいて個別にマネジメントしている組織になっている企業は数少ないと思う。私自身、売上1兆円超企業の部長職も経験し、それはそれで忙しかったが、20億を超えたぐらいの中小小売業の社長のほうが間違いなく忙しかった。

小売業は人を雇うにもまず売場が中心になる。売場が売上げを作ってくるので、売場の人員の確保が優先される。現状の時給アップや、土日勤務の労働環境を考えると小売業に容易に人が集まるとは思えない。本部に人を配置するには店の体制が安定した後になる。

小売業の後方業務は、まず経理がある。立ち上げた会社では全店の伝票(仕入、返品、値下げ、移動)の本部控えを送付させていた。本部でも各店の数値管理表(売上、仕入れ、在庫、利益のデータ)を作成しその伝票類と毎日の売上を管理していた。月度が終わるとその仕入データを取引先別に計上して、支払いの基になる帳票を作成する。それをもとに翌々月の支払日に支払っていた。その支払いもパソコンで約70社ある取引会社に振り込む。1回の振込みも1億以上にはなる。その他本部や各店での経費や従業員の経費も集計し振り込む。

人事的な作業もある。給料を確定させなければならない。各店からのタイムカードや人事関係の各種書類をチェックして給与を作成する。出勤簿への記入や有休の確認、残業時間のチェックも当然する。毎月入退社数は5名以上入るので、毎月一度はハローワークに、雇用保険の加入や離職票の提出をしに行っていた。そして給与も明細を作って店に送付し、給料日に振り込んでいた。出勤簿や給与台帳は重要で、コロナ時ややこしい雇用調整助成金の申請にも必要だった。業績評価も当然のようにやっており給料改定も行う。当然人事台帳の更新もする。

仕入と人件費を確定させて各店の数値を確定させ、各店の営業月報や損益月報も作成し、店長にはフィードバックしていた。当然会計ソフトや、給与ソフトは使っていたが、元のデータ作りは労力が必要になる。その他営業系のデータ管理もある。細かい仕事はいくらでもある。最多27店舗の管理業務を本部スタッフ、社長を入れて3名でやっていた。これに加えて月1度は全店巡回していた。もっと楽なシステムを導入することはできるだろうが、全体の仕組みを変えるにはもう少し規模が必要だった。店舗数を増やすには投資が必要になる。損益が安定していなければいい融資を受けられない。ずっと右肩上がりではない。

自画自賛するようだが、よく働いていたと思う。上場企業の社長はこんな仕事はしないと思うが、おそらくできない。では私が上場企業の社長はできるか?企業基盤がしっかりしていれば、おそらくできる。

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