前回、退店時のことを書いていて、ちょっと引っかかっていることがあり、そのことを書いてみる。ただ、この問題の正解はわからない。
退店時には契約上、工事区分でいうB.C工事の撤去が出店側の負担区分となっている。現実としては、その工事の負担金額はデベロッパーとの調整によって違っており、同じデベロッパーでも、個別のSCによっても違うことが多い。つまり、後継テナントとの話し合いで残存を希望する什器があればそれは撤去せず残すことができ、その分撤去工事の経費が減らせる。その調整をしてくれるSCのスタッフや内装監理室の担当によって撤去金額は変わる。ただしこれは交渉事であり、あくまで契約上はスケルトン渡しになっている。
いろんなことがあったが、何件かをここに書いてみる。
・後継テナントが決まっていたにもかかわらず、そことの調整はなしで契約書通りほぼスケルトン渡しとなった
→ 契約書草案で「デベロッパー指定の業者が撤去工事を実施」とあったのを苦労して「他の業者も併せて検討する・・」のような契約に緩和してもらった。ただし、そのためか後継テナントとの話し合いはなかった。オフィスビル中心の不動産系のSCで子会社が施設管理をしており、全く融通が利かなかった。ちなみに後継テナントは1年前にはほぼ出店は決まっていたと後日聞いた。ほぼ敷金は帰ってこず、退店13店舗中最も撤去工事費は高かった。現実的には間違いなく撤去工事の調整はできた。
・B工事撤去の見積もりが異常に高く、添付された詳細図面をみたら自社の区画でなく、売場面積が5倍くらいある他区画の図面での請求書が届いた
→ 日本で一番大きい企業。こちらから確認の電話をして、後日修正の請求書が届いたが、あるべきでない事。C工事の 撤去に関しては後継テナントと細かく調整してくれた。
・使える什器は使い、天井照明もそのままで、足らない什器や環境に手を入れて出店。契約時に引き継ぎ時の売場写真を細かくとり、その状況を現状として契約書の覚書を作り契約した。
→当然のようにスケルトン渡しでの請求があった。個別面談をして契約書の再確認をしてもらいデベロッパーに納得してもらった。面談するまではかたくなに拒否された。
撤去時にもめることは非常に多い。何よりもお互いに前向きな仕事ではない。デベロッパー側とテナント側とのはざまで、工事に関してはいろんな問題が出てくる。特に退店は営業数値が厳しい状況だった店がほとんどで、退店時に発生する経費が大きくなるとそのまま損益に響く。大企業は別だが中小企業ではできるだけ経費を抑えたい。細かく打ち合わせをすることが間違いなく必要で、後ろ向きの仕事にはなる。後継テナントの声も交えてプラス要素に導ければデベロッパー側にもメリットが出る。そう考えて交渉してもらえればスムーズに進む。ただデベロッパー(オーナー企業)とは違うPM業者が管理していると、さらにワンクッションはいるのでそれも難しくなる。
最後に、少し外れた感想を書く。大手デベロッパーほど中小企業へのケアは薄い。当然一概には言えず、担当者にもよるが、退店時の対応だけでなく営業面の問題も同様に感じた。出店が近隣エリアに固まったり、同じデベロッパーに集中したりすることは、会社の政策だけでなく、友好なリレイションシップがそうさせたことも大きな要因にはなった。
出退店に関しては、契約書を細かく読み込み、疑問点を理解するまで交渉する事、そして営業の担当者(本部、店)とは良好な関係を持っておくことが非常に大切なことだ。
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