先日のモーニングショーで「106万の壁」のことが話題に上がっていた。このブログでも以前に書いているが、この問題の有識者の考え方は、現場感がないのではないかと痛感した。特に会社側から見たとらえ方については全く触れてなかった。

簡単に「106万の壁」を説明する。現状は従業員51人以上の会社では週20時間以上月額賃金8.8万以上年106万以上の従業員には社会保険に加入義務がある。その規模案件を撤廃するというもので、全企業、年収106万を超えると会社の規模に関係なく社会保険に加入義務が生じるということになるということだ。社会保険の負担割合は労使折半となっている。

ちなみに東京都で月額8.8万円の収入の35歳の人なら個人負担、会社負担が折半なのでそれぞれ月額12452円の負担になるという。中小企業にとってもその労働者にとっても大きな金額で、労働者は当然のように労働時間を増やす方向に考えると思う。さらに最低賃金も上昇させていくことも当然のようになっており、双方社会保険料の負担はどんどん大きくなっていく。現状次の壁の130万までは、個人負担をできるだけ少なくして(ゼロにはしないと言っている)会社の負担を大きくする方向のようである。つまり会社が個人分の肩代わりをするということになる。国は金銭負担をする気がなさそうなので話は進んでいきそうだが、本来の折半以上に従業員の分まで負担を強いられる中小企業の話はほとんど出てこない。

さて、現実の話なのだが、「社会保険料は会社と個人が折半していること」をどれくらいの人が理解しているのだろうか。データでは現れてないようだが、肌感覚でいうと上場企業にいても半分くらい、規模が小さくなると30%以下の理解度のような気がする。金融関係の友人と話をしていても同意見で、入社教育に給料明細の説明が必要だと言っていた。そういう意味でそのモーニングショーのパネリストの1人が、「給料明細の社会保険料のところに会社負担分を明記するべき」という意見には納得できた。中小企業の負担は本当に厳しいラインに来ていると思う。当然企業を救済する制度もある。だが、以前も書いたが経営者として毎月1度はハローワークに行っていたが、「キャリアアップ助成金」のことは全く知らなかったように、企業への応援制度をもっとわかりやすくするべきだとは思う。

次に、もう1人のパネリストが、「払えない企業で働くなら、もっと待遇がいい企業で働ける環境ができる」旨の発言をしていた。いろんな会社を見てきたが、当然向き不向きも出てくる。個人としてやりたい仕事も違う。そしてまだまだいろんな意味で企業レベルが違う。そのレベル感を労働者がすぐには埋められないことをわかっていない。学校に偏差値があるように会社にもレベル差はある。ここでもまた2極化する。

最後に、決定的に厳しくなることは中小企業の体力だと思う。日本の会社で従業員50人以下の会社は97.3%でそこで働いている労働者数は61.8%を占めるそうだ。社会保険料の負担増で本当に厳しい会社が増えることは間違いない。国はそれでいいのかもしれないが、間違いなく社会構造が崩れていく。

この話題でのブログは3回目だけど、つくづく国は中小企業を切り捨てようと思っているのだろうなと感じる。そして何より、さらに今回でさらに厳しくなるだろう総企業数の60%を超える従業員50人以下の中小企業への救済対策もわかりやすく説明する必要がある。

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