前回、「オンワードクローゼット」について簡単にコメントしたが、昔の大手アパレルはこういう残り方をしても、あと十数年で需要がなくなるのではないかとも感じている。ここでいう大手アパレルとは百貨店型アパレルで「ワールド」「オンワード」「イトキン」「三陽商会」を指す。もともとはここに「レナウン」も属していた。「ワールド」「イトキン」は専門店中心からスタートし、「オンワード」「サンヨー」は百貨店主軸というイメージを持っていた。
大型モール(RSC)スタート期から百貨店以外の販路として大型区画を立ち上げてきた。当初は鮮度があり、SCの顔として出店も多かったが、現在は当時のショップのほとんどは見かけなくなった。おそらく過去の顧客ターゲットとの差が大きく、売れる商品や値段も違ってきて、今までの落ち着いた商売ができなかったのではないかと思う。展示会中心のサイクルから短サイクルに変わると商売も当然変わっていく。販売体制の違いも影響していたように感じた。
60代以上の客層には、百貨店メーカーというイメージは強くインプットされている。そういう意味でSCでも「オンワード」「ワールド」などのメーカー名を打ち出して、もう一度ブランドを整理して提案すれば、その世代の客層には響く。ただその客層もどんどん減っていく。
大手アパレル4社の売上だが、ワールドが2010年3141億から2024年は2023億、オンワードが同じく2486億から1896億、三陽商会が1121億から614億、イトキンは非上場で調べた数字では2001年1424億から2024年は321億となっており、すべて大幅ダウンしている。中心販路だった百貨店がどんどん減っていけばこういう数字になってしまう。
逆にRSCの流れから小売専門店大手の数字は大きく伸長している。売上推移でユニクロは2010年8148億が2024年に3兆1038億、無印良品は1643億から6616億、アダストリアは977億から2756億、パルGは699億から1925億になっている。
今後の百貨店の流れを想定しても、都心部くらいしか生き残れそうにない。当然「脱:百貨店」を考えるしかない。その流れで、色の違う企業の買収も進めている。ワールドは子供服の「ナルミヤ」や雑貨の「212キッチン」などを買収し、最近では「ライトオン」も傘下に入れた。古着の「ラグタグ」にも出資している。オンワードも「ウィゴー」や「クリエイティブヨーコ」を買収している。両者とも買収により、企業の色を広げようとしているようにも見える
ただ、新しい風を会社に迎えても、会社の風は変わらないと思う。今まで「小」(被買収企業)が「大」(買収企業)の流れに乗らずに、その個性が変わらなかった例は非常に少ない。今回の買収例で成功しているのは、比較的土俵が近い「ナルミヤ」だけではないだろうか。大手アパレルの社風は絶対に変わらないし、その流れが買収先にも影響する。流れが変わっていたなら、RSCの流れになった時点で変わっている。RSCの流れに乗れなかった現状では、百貨店主導の色は変えられない。おそらく「ライトオン」も「ウィゴー」も、絶対に上向かない。両ブランドの今までのSC戦略での「強み」は消える。今後はRSCからCSC,NSCの時代に変わっていくと思うが、当然その波にも乗れない。
ユニクロに慣れ親しんだ層が、再度百貨店に向かうとは考えられない。大手アパレルに、もうプラス要素はほとんど見えない。百貨店の流れと同じ運命を歩む。
■今日のBGM
