先日、ビジネス誌オンラインの「プレジデントオンライン」に「総合スーパーでイオンだけ生き残ったワケ」という記事があった。銀行出身の流通アナリストが執筆していた。モータリゼーションの変化で大型モール(RSC)へ購買客が流れたことでイオンだけ残ったという内容だった。その流れは当然あり、大きな要素ではあるが、そのことは改めて書くほどのことではない。それより「総合スーパーでイオンだけ生き残った」ということを流通アナリストが書いていること自体に驚いた。当然イオンの総合スーパー(GMS)の状況はわかっているとは思うが、決算内容を見てもイオンとしてはGMSが一番の課題になっているはずだ。

2025年2月期の決算資料を見ると、GMS事業の売上は35594(億)あるが営業利益は163億しかない。全体の売上が101348億でGMS事業の売上構成比は35.1%あるが営業利益は6.8%しかない。ちなみに営業利益は金融611億、デベロッパー530億、ヘルス事業360億、SM(スーパーマーケット)329億の順で、小売以外の金融、デベロッパーで全体営業利益の約半分を稼いでいる。ただ、その2事業も当然小売業があってこその数字にはなる。

総合スーパー(GMS)事業は、地域会社も含んでの数字であり、SM事業との区分がつきにくいが、イオンリテール(本体のGMS事業)としては79億円の営業利益で前年を割り込んでいる。ちなみにイオンリテールの詳細は出ていないが、第3四半期決算では売上は13785億、営業損失162、7億と発表されている。

総合スーパー(GMS)事業は食品や衣料品、服飾品、住居関連品などで構成されており、それを総称している。所謂、昔のスーパーの「ジャスコ」業態と考えればわかりやすい。「総合スーパーでイオンだけ生き残った」とあるが、はたして、生き残っているのだろうか?

おそらく、食品やヘルス関連以外は間違いなく赤字だと思う。セグメントを変えて、食品をSM事業にヘルス関連をヘルス事業に分けたほうが効率も利益も改善するのではないかと思う。つまり衣料品や服飾品、住居関連品をなくして、そのスペースを専門店に変えれば全体の数字は改善するのではないかと普通に考える。

イオンモールにGMSとして入店しているので、収益面では厳しくてもグループ全体にはメリットがあるというのだろうか?お客様はGMSがあるから安心してイオンモールに行っているというのだろうか?当然立地は違うが、「ららぽーと」のほうが客数も多いし、SCの売上も大きい。テナント数も「ららぽーと」のほうが多い。「ららぽーと」の多くにはGMSのテナント入店はない。イオンリテールの衣料品のところに「ユニクロ」「GU」や「西松屋」などを入店させ、住居品のところに「ニトリ」や家電など、さらには大型化している「無印良品」を導入させれば、現状のニーズは解消されるし、既にそのテナントがあっても他テナントの導入でバリエーションも増えてくる。SCの資本費以上で賃貸させれば赤字にはならないし、少なくとも月坪100千の売上もない現状のGMS衣料品等の売上効率を簡単に上回る。さらに新しいテナントを入れることでSCの活性化にもつながる。現状のイオンモールには個性がなく、似たようなテナントのラインアップで、完全に「ららぽーと」に負けている。

イオン自体も当然そこは理解していると思う。今期デベロッパー事業のイオンモールと、サービスその他事業のイオンディライトを上場廃止にし、イオンの完全子会社にしている。一義的には、㈱イオンリテールが所有しているSCのイオンモールを㈱イオンモールに移管することかもしれない。しかし、深読みかもしれないが、イオンモール内のGMSの解体も視野にあるのかもしれない。そうなればGMSの売上は減り、会計上ではテナントの賃料だけの売上計上になり、売上は大きくマイナスする。しかし、収益は大きく改善する。

創業者一族の岡田会長の最後にやる仕事は「総合スーパー(GMS)の解体」ではないだろうか。それはなかなか創業家以外のサラリーマンではできない。

そういう状況下で、「総合スーパーでイオンだけ生き残った」と言えるだろうか?

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