小売商売は「売上」「利益」「在庫」が大きなチェックポイントだと何度も書いてきた。小売業を経験してきた経営者なら当然理解している。すべて適正に回っていればいいが、常にこの3項目では「売上」「利益」が優先される。損益計算書が中心になっているように見える。
以前に書いたが、今回企業譲渡された「ライトオン」「マックハウス」、厳しい状況の「ヴィレッジヴァンガード」などが在庫評価損を計上している。その金額が「ライトオン」1564(百万)、「マックハウス」726(百万)、ヴィレヴァンでは前期末2472(百万)と非常に大きな金額になっている。ではなぜここまで金額が大きくなってきたのだろうか?1期だけで計上される金額ではない。毎期の積み重ねの金額に違いない。毎年売れない商品があるにもかかわらず、適正な在庫評価をしていなかったとしか思えない。計上すれば利益が減り、株価に影響するし、それによって資金繰りも厳しくなる。おそらく作為的なもので、企業体制も追求すべきではないだろうか?
適正在庫についても何度も書いてきたので割愛するが、小売業は、決算時に「商品回転率」へのコメントが必要だと思う。商品の「在庫回転日数」(平均的に入荷後何日後に売れて現金に変わっているか)と支払いサイト(入荷何日後に支払いが発生するか)でキャッシュの回り方が、概ねわかる。ただ、おそらく資産が多い会社はあまり気にしていない。以前経営していた会社は20億以上の売上はあったが、出店も重ねていたので、毎月の商品支払い日の前日の残高には気を使っていた。もしものために当座貸越を利用する月もあった。それだけに、仕入れに関しては厳しくチェックしていた。キャッシュフローを考えても、「商品回転率」は小売業のチェックポイントとしなければいけない。
今日、ネットの記事で「ライトオン110店退店で25年8月期は赤字大幅縮小」とあった。当然記事は前向きなことを書いている。「従来は値引きで粗利を痛めていたが、値引き抑制で利益は前期比12,2%増」になったらしい。さらに今期は黒字化と結んでいる。在庫評価損を計上した商品はどうやってなくしているのだろうか?廃棄にはしないと思うので、売価設定次第では、当然大きな利益も計上されることになる。前期評価損を計上した「ヴィレヴァン」も今期は大幅に利益率が改善する指標が出ていた。つまり利益の改善は、前年の評価損による一時的なもののような気がする。「ライトオン」の売場には「ついている値段から・・・円引き」の前年秋冬キャリー商品らしきものが前面を占めていたが・・・
では、企業は適正在庫に対して、どう対応すればいいのか?経営陣の重要さの認識は前提条件だが、売上予算、利益予算、在庫予算は必ず個店別に作成させるべきだ。当然、店長含むマネジメント層に在庫管理の重要性を理解させ、売上の進行管理と共に利益、在庫の進行管理も行い、上長に報告義務を持たせる。そして対策を講じる。さらに在庫管理面も売上、利益と共に業績評価の対象とするべきだと考える。
現実的に一番大きなことは、個店の店長が、店の「キャッシュ」の意識を持つことだと思う。店長は、売れる商品があればあるだけ欲しい。欲しいだけでは売場の在庫が膨らんでくる。つまり好きな商品の「足し算」だけで、売れてなくなる「引き算」も計画しなければ、売場は商品があふれる。そして店長やバイヤーは商品を仕入れるだけで、現実的には支払いはしない。まず、店長が仕入と売上のバランスを考えてみる。そして、経費を含めた支払いも考える。単純なキャッシュフローを作成してチェックさせる。そうすることで必ずキャッシュがショートする月が出てくる。そうすれば、売上、利益とキャッシュの差にやっと気が付く。
「パルグループ」は在庫に関しての意識が高く、決算で発表されている回転率も衣料系の中では高い。「無印良品」は以前の中間決算で、売上は大きく伸長していたが、最終の決算数字予測では、売上の大幅増に反して利益率は在庫処理のため据え置いていた。
在庫に対する姿勢で今後の小売企業の業績や企業評価は大きく上下していく。
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