投稿者: retailjam (11ページ目 (15ページ中))

SCの次のステップ

上場小売業の9月の数字が発表されていて、例によって既存店ベースの前年比を2020年から4年分掛け合わせると、2019年比で9月はユニクロが94.2、アダストリアが91.2となる。この2社の数字をファッションのベーシックの数字ととらえると、ファッションはコロナ前にはまだまだ戻っていない。

9月は昔のファッションのシーズンの立ち上がり期ではなく、完全に秋の季節感はとんでしまっており、完全に9月,10月は売れない月になりつつある。10月も去年はコロナの影響が少なかった月なので今月も前年数字とは厳しい戦いになるかもしれない。

それにしても数字は戻っていない。リーダー的企業の数字がこの状況では他の中小の専門店の苦難は続いていると思う。

中小の専門店はこのコロナ禍でどれだけ傷んだのだろう。おそらく退店の数のほうが出店の数より圧倒的に多いだろうし、規模縮小に至った会社ばかりだろうと思う。以前書いたが退店費用は大きな経費も必要とする。会社は痛む。以前経営していた会社も26店あった店が、コロナ期間で8店退店、3店出店で5店減ったし、コロナで大きな借金をしたので、時価は70%近く減った。当然出店には、慎重になるし、なかなか腰が上がらない。

SCもそんな状況下ではテナントを誘致できない。新しくオープンしたRSCのショップの顔ぶれも代り映えしないし、逆に店舗数も減っている。ららぽーと門真はアウトレットがあり店舗数に変化はないが、今までのららぽーとだとテナントが集まったかどうか?ゆめタウン飯塚は面積も大きくないがテナント数は100と少ない。さらにデベロッパー側も賃料減額や退店で収益がダウンしている。収益を維持するには、テナント新規誘致するにも賃料を下げることはできない。

「早急に空床を埋めたいSC」と「出店に慎重になる専門店」、「賃料を下げられないSC」と「下げなければ出店できない専門店」の構図ができている。おそらく専門店のほうが切実なのでSC側がどうジャッジをするかになってくる。

単純に考えられる策は、ユニクロやアダストリアや無印などの既存店舗の大型化とファッション以外の分野の拡大(携帯通信、食物販など)になってくる。事実そうなっている。

「花(華)」がなくなって「実」をとるSC(特にRSC)に先はないように思うが、次のステップはあるのだろうか?

■今日のBGM

Workwear for the handsome women

日経新聞を宅配していると折り込まれている、「Ai」というファッション情報誌を知っているだろうか?

発行当初のニュースリリースをネットで見ると平成26年11月から第4日曜日に折り込みとなっている。B4 変形タブロイド 4C 中綴じ32~48ページ 部数60万で講談社が制作し日経新聞が発行するラグジュアリーなファッションマガジンというようになっている。ターゲットは日経新聞を購読する100万人の女性の中核を形成する35~49才のようだ。

これだけのクオリティの高い小冊子を作るだけで大きなコストだし(紙質もいい)、折込料だけでも非常にコストがかかる。もう9年続いているということはニーズもあるしその効果もあるということだろう。ちなみにメルカリでは1部300円~で掲出されている。

9月号は28ページで(わずかにコストカット?)広告7ページ(シャネル2ページ、ブレゲ2ページ、ブシュロン、エスト(花王)、Gアルマーニ)。他はテーマ構成で服飾(ボッテガ、ブルネロクチネリなど)、美容(ポーラ、コスメデコルテなど)。ファッションはブランド打ち出しではシャネル、フェンディ、ボッテガ、Gアルマーニが各1ページ。テーマでホワイトバック(フェラガモ、グッチ、ヴィトンなど)、ラグジュアリージャケット(ラルフ、ブルネロクチネリ、ジルサンダーなど)、デイリーウェア(トリーバーチ、ポールスチュアートなど)、ブラックシューズ(ボッテガ、ディオール、エルメスなど)が各1ページ。その他協賛でヤヌークジーンズ1ページ。小物、バック、眼鏡で1ページ。その他美容で協賛もあり7ページ(当然ブランドページもある。)ちょっとしたトピックページが2ページ(上方女性落語家 桂二葉を取り上げたのはgood choice!⇒唯一読めたところ)という構成になっている。

日経の女性読者のグレード感はこの水準なのだろうか?やはり女性のほうが圧倒的にファッション志向が強い。9年間続いているということは、ニーズもあり、購買モチベーションにもなっているのだろう。今まで何気に見て捨てていたが、この小冊子を見て購買につながっているということは、新宿伊勢丹や梅田阪急を筆頭にする都心百貨店はまだまだ大丈夫だ。ラグジュアリー系は健在だということだろう。

かえすがえすも、池袋西武はもったいない。

■Ai(アイ)

「サムシング エルス」

小売業は「お客様の満足料」で成り立っている。そう教えられたし、実際そうだと思う。多数のお客様のニーズとプライスが一致している会社が当然大きくなっていく。そう仕向けるのが企業力だと思う。企業の考えとお客様のニーズが合致して大きくなっていっている企業が、あるべき姿だとは思う。

企業が大きくなってきて、従業員の「商品や店への思い」への比重はどれぐらいあるのだろうか?「労働の対価」が上がっていくことのほうが勝ってくるのだろうか?

最近ニュースで大手銀行が転勤手当や一時金を大幅に増額する旨報道されていた。働きやすい環境整備の一環のようである。最低賃金もどんどん上がってきている。当然のように上げていける会社もあるだろうが、最低賃金が上がることによって厳しくなっている会社もあるだろう。厳しくなってくる会社は淘汰されるのが普通なのだろうか?

ニトリの社長が言っている「小売業の企業としてのレベルアップ」は理解できる。ユニクロやアダストリアのように企業偏差値が高くなってきた小売業もある。私が大学生のころ優秀な成績だと金融、損保、商社へ流れ、小売業はあまり成績に関係なかった人材が流れた。おそらく今も変わらないと思う。ただ小売業には説明しにくい「サムシング エルス」(何か文化的なもの)があった。

結局、「利益」が企業価値になってしまうのだろうか?利益を出して拡大していく「ユニクロ」や「ニトリ」や「無印」が小売業のあるべき姿なのだろうか?「トレンド」や「売りたいものを売る」小売業は淘汰されるのだろうか?「文化的なもの」を追いかけた西武百貨店は「利益、定番」を追求したセブンに追い出され、なくなっていくステップに入った。

人員不足の現況を考えると、土日も仕事で不規則な小売業はさらに厳しさが増す。スタッフを集めることさえ至難の業となっている。「人」の小売業から「システム」の小売業に移行してきている。社会的環境もそうなってきている。

「サムシング エルス」を求める小売業はもうなくなっていくのだろうか?そういう気持ちを少しでも持った人材で成り立っている小売業のほうが実は企業偏差値は高いと思うのだが・・・

・・・関係ないけど、今年の阪神は偏差値が上がったような気がする。

■今日のスペシャルギフト

売場内装について

SCをみていると近頃はインパクトある売場がなくなっているように思う。ららぽーと門真でも感じたのだが、ここ何年かで出店を始めた店も個性があまりなく、どこにでもあるこなれた売り場になっている。特に売場内装のインパクトがなくなってきている。

RSC(郊外型ショッピングセンター)が注目されてきた頃、出店交渉していて、あるデベロッパーのリーシング担当者にこう言われた。「私は配ダク(配線ダクト)使ったテナントを入店させたことがない。」つまりデザインされた照明計画、器具をきちんと使って、安易な内装はさせないという意味での発言だった。「配ダクを使うな」ということが、いい発言かどうかわからないが、まだまだ凝った内装がいいとされる時代だった。今はモールでも配ダクを使っている店が半分以上ある。それが時流ではある。

ブランド時代を経験しているので、内装のレベル感は理解できるつもりではある。床がフローリングや石を使う時代(その中でもレベル差はある)を経験してきた。当然売っている商品のグレード感によっても内装レベルは大きく変わってくる。

家を作るのと同じで、店舗を作る(内装工事)にはコストがかかる。おそらく今は坪300千では本当にチープな内装しかできないのではないだろうか。40坪の店を坪400千で作った場合内装費で1600万の金が必要になる。これがキャッシュアウトだけでなく改装費や減価償却費のコストになってくるので収益面にも大きく影響する。できるだけコストは押さえたい。

売場のイメージはお客様に大きなインパクトを与える。商品のインパクトも当然必要だが内装がお客様に訴えるものも大きい。「ああ、あの真っ白い店」「西海岸っぽい店」「古い電柱のあった店」などで印象付けることも多い。昔、個人オーナーの店はそういう店が多かった。廃材を使ったり、鉄骨や、ケーブルをむき出しにしたり商品の個性も強かったが、内装イメージの個性も強かった。ローコストでイメージを出した店も数多くあった。

商品が標準化されている現状、店のインパクトがなければお客様は足を運ばない。内装レベルも一定以上の「ユニクロ」や「アダストリア」には勝てない。それを理解する必要がある。

内装イメージをローコストでいかにインパクトを与えられるか、出店時考える必要がある。商品戦略や顧客対応力は全社ルーティンの仕事としてやっている。そこに「売場内装」の考え方も付け加えるべきだと考える。いろんなイメージテーマ戦略があると思う。

「色」「音楽」「映画」「絵画」「景色」・・・

■今日のBGM

回転率からみる在庫の信憑性 ➁

前回から引きずって、再度書く。

昔の話だが、マイカルが倒産危機にあった時、「特損セール」(社内的な呼び名かもしれない)を実施した。キャッシュインを増やすためで、特にストック在庫、倉庫在庫の一掃セールだったと記憶している。本部にいたので数店舗巡回した記憶がある。その時の商品は当然価値を下げての「自己見切り」中心での販売だった。よくこんな値段でストックしていたなと思う商品が多かった。つまりストック在庫の評価を下げてのセールだった。

売れる価格をジャッジするのは難しいが、利益を落とせないので、簡単に値段を下げられない。当然「売る努力」を求められるが、厳しい(動きが悪い)商品は2~3か月売場の動向をチェックしていたり、全店のデータを見ているとすぐにわかる。

ライトオンやマックハウスがそうだとは言わないが、厳しい状況になってくると利益重視になってくる。利益率を落とせば当然会社損益に大きな影響が出る。ただファッション業界で月0.2回転していない会社は考えにくい。資産効率が悪すぎる。まだデニムウエイトが高いのだろうか。

例えば、前期マックハウスの商品在庫は4348(百万)で利益が48.0%なら売価在庫は8362(百万)となる(単純計算)。年間売上18443(百万)とすると年間回転率2.2回転。月度回転率0.18回転。月度回転率を0.2回転にして年間2.4回転に上げるには、売価在庫を7684(百万)まで減らす必要がある。その差は678(百万)。月度0.02回転上げるだけでも(売上はそのまま)それだけ減らせねばならない。320店あるとすれば1店舗2.1(百万)、現状1店当たり在庫は26.1(百万)なので可能な数字ではある。ただ、それぐらい評価が難しい商品は現状あるのではないか。ちなみにその分の商品評価を下げれば単純計算で全体の利益率は43.4%になり4.6%ダウンする。上場企業は発表しにくい数字になる。

小売業は在庫が軽くなければ、動きが鈍くなる。商品が多すぎれば、そこから売れ筋を探すのに苦労するし、売れ筋を仕入れる枠も減る。悪循環になってしまう。動きの悪い商品を早く見つけて、できるだけ早くなくす必要がある。それをなくした金で新しい商品に変えていく。そうすることによって売場に鮮度感が出て、好循環になっていく。

経営上、なかなか手を付けるのは難しく、手を付けると損益に大きな影響が出るので在庫内容の精査は順番が後になる。ただ体質を変えるには荒療治が必要ではないかと思う。

■今日のBGM

回転率からみる在庫の信憑性

上場専門店の売上数字を、前回簡易的に計算してみたが、債務超過のタカキューは別にすると、ライトオン、マックハウスというジーンズカジュアルから派生した専門店の数字が気になったので去年の決算数値を確認してみた。

ジーンズショップは、サイズが細かく品番も多くメーカーも多いため、特にデニムの在庫が多くなり、商品が回転せず、売れていても、経営は非常に厳しい。特に現在はルーズなサイズ分類が中心になり、ライトオンでもデニムの在庫ウエイトは下がっており、売り場のボリューム感を出すために、一時は売台 にデニムの類似品が陳列されており、在庫を減らそうという苦労がうかがえた。

去年の決算を見てみると以下の数字になる。

・ライトオン 売上48229百万 利益率49.3 ※2019年対比65.2% 394店

自己資本比率44.2% 流動比率62.5% 

1店舗平均 月度売上10200千 平均在庫57300千 回転率0.18 

・マックハウス 売上18443百万 利益率48.0※2019年対比65.8% 320店

      自己資本比率35.8% 流動比率71.3%

      1店舗平均 月度売上 4800千 平均在庫26100千 回転率0.18

      (マックハウスは他の業態もある。)

非常によく似た数字になっている。

在庫が減ると自己資本比率は下がる。流動比率は上がる。経営分析は在庫高にも左右される。

きしくも、両社とも月度回転率は0.18となっている。年間定番商品が多いと回転率は低い。デニム中心になるとそうなるかもしれない。

ファッションで言うと春夏秋冬の四季がある。年4回衣替えがあり商品が変わるとして4÷12で1カ月0.33回転になる。現在は在庫勘定方法が変わったらしいがユニクロは月0.5回転だったと聞いているし、アダストリアも悪化していても前期は月度0.37回転になる。

両社の決算数字に対して異議を唱えるわけではないが、本当にこの回転率で商売をやっていけているのかとは思う。SPAであれば在庫日数が大きくても原価率を考えると許容範囲はあるが、買いの商材は支払いが半年後であっても、この回転率ならキャッシュが回らない。

この在庫評価は適正なのだろうか?販売できる値段になっているのだろうか?この在庫回転率を見るとこの商売は長く続かなそうに見えるが・・・

■今日のBGM

ららぽーと門真

久しぶりに大阪に行き、新店で見たかった「ららぽーと門真」に行ってきた。

大阪は私にとってホームタウン的な場所であり、出店エリアは商業施設過密状態で厳しい場所だと思っていた。ネット等で概要は知っていたが、概況はほぼ想定通りの状況だった。

やはりテナントリーシングに苦しんでいる。2階をアウトレットにしているので、他のららぽーとより一般のテナント数は少ない。にもかかわらず、内容が薄く、大型テナントが多い。以前も書いたが、破産した「オーサムストア」を入店させていること自体、ららぽーとらしくない。その他、今までのららぽーとなら入店させるかどうかのボーダーラインのテナントが多い。尚、どこでも出店してきた「ライトオン」は出店していない。

アウトレットはもともと鶴見にあり、それを閉鎖して門真に移転させてきた。ある程度リーシングも容易だっただろうが、全くインパクトがない。このアウトレットの内容なら、アウトレット目的客はやはり神戸北や泉南のプレミアムアウトレットに行く。

ららぽーとの力を持っても、この内容かというテナント揃えだった。意識したのかどうか、スポーツ系やアウトドア系が多い気がした。ショッパーを持っているお客様が非常に少ない。(1回しか見てないので断言はできないが・・・)

飲食は非常ににぎわっていた。「黒門市場」もあり大阪グルメも打ち出し、フードコートもどこにでもある店が少なく、個性あるラインアップになっている。レストラン街も順番待ちも多く夏休み明けにしてはにぎわっていた。

食品スーパー「ライフ」は集客がなかった。昼前でレジ3台稼働はどうなのだろうか?足元客はやはり分散傾向のままだと思う。

飲食が現時点では引っ張っているが、それだけの目的で広域から集客できるかなと感じる。足元商圏を競合と食い合っており、狭商圏では優位性のあるアウトレットでどれだけ競合店に差をつけられるかという感じがする。

予想通りRSC(郊外型大型ショッピングセンター)は苦戦している。

  ・・・それはともかく、2日で15 時間の酒はきつい。

■今日のBGM

道の駅

先日,所用で群馬に行ったとき、テレビで取り上げられており新しくできた「道の駅 まえばし赤城」に立ち寄った。先輩夫婦と車で東北旅行した時には道の駅に十件以上(十駅?)も立ち寄っていて少し興味もあった。

「道の駅」はどういう目的でできたのだろう。昔のドライブインを民間と共同で公共事業の一環として作っていっているのだろうか?地元でとれた農産物や水産物を直接販売しているところが多く、地元色を出したドライブインというところだろうか?

「まえばし赤城」については少し車のアクセス(導入アクセス)が悪く、一般のSCやNSCも好立地でも出店を躊躇するかなと感じた。ただ好立地で幹線道路沿いにあり集客は十分あるところではある。足元商圏も多く、申し分ない。内容を見ると、商業施設ととらえると中途半端であまり魅力を感じない。地元名産品館と鮮魚館、フードコート館、温浴施設、広いパブリックスペース(ドッグラン、子供が遊べる。)という概要になっている。ドライブイン機能に「ファミリーで楽しんでもらう」というコンセプトを加えた道の駅となっている。7ヘクタールとあるので東京ドームの1.5倍くらいの大きさになる。小さ目なRSC(郊外型SC)に匹敵する。

お客様の利便性を考えると、広域から遊びに来る客層を考えても、なんだかのデイリー的な買い物ができたほうがいいだろうと思う。単純にSMがあれば十分商売は成り立つ。地域特産のお土産としての食品にデイリーの食品を加えたほうが来街者は喜ぶに決まっている。いくらでも儲けることは考えられるが、おそらくいろんな規制があるのだろうと思う。

「公」だから儲けてはいけないのだろうか?民間なら収益を上げるようどうするか考える。「まえばし」の例ではないが、一般的な「道の駅」は欠品だらけだし(地元の限られた商品中心なので)スタッフ(おそらく3セク)も活気が見えない。東北の「道の駅」敷地内でビール醸造所を併設したレストランがあったがそこはにぎわっていた。もう少し手を加えるだけで活性化するのではないだろうか?儲けられるのではないだろうか?

「公」の仕事について少し考えさせられた。予算は全部使う。例えば、例年年度末になれば道路の補修が増える。それを受注する企業が毎年の売上なので必死でとりに行く。所謂企業の「・・・族」ができていく。毎年その繰り返しになってくる。道路修繕が緊急でなければ先送りして、その金をほかに回せないものなのだろうか?「道の駅」(公)も儲かれば、もっと他方面に有効的に金を使えるのではないだろうか?

無駄に金(税金)を使っているように見えた・・・

■今日のBGM

専門店はコロナ前まで回復したか?

毎月、月初に上場企業は前月度の月次数字を報告する。会社を経営し始めてから専門店の数字はチェックしてきた。ここ数カ月はインバウンド景気もあり、商業が活性化したと報じられていて、売り上げ前年比は大幅に改善しているようである。ただ現状の小売業界はそこまで活性化しているようには見えない。果たしてコロナ前まで回復したのだろうか?実際はどうなのだろうか?

ふと思い立って、毎月月初に発表される各社の売上数値をもとに簡単に計算してみた。IR情報には過去の履歴も残っておりその数字を参考にして、コロナ後前年比数字(今回は8月数値)からコロナ前数値比を簡単に出してみた。計算方法は単純に2019年8月を起点に2020年8月から2023年8月までの既存店前年比を毎年乗じただけである。当然その期間に既存店の退店があったり、イレギュラー数字も出てくるが、とりあえず単純に毎年の既存前年比を乗じてみた。おそらくこれは各社の正しい数値ではなく、あくまでも参考数値として理解してほしい。(未発表の会社もあるし、発表日が10日以降の会社もあるので、留意した会社のみの数字ではある。)

2019年比(くどいようだがあくまでも推定数字)

100%以上 ABCマート112.6 アダストリア109.5 西松屋104.5      シマムラ 103.0

90%台  ユニクロ97.6 無印96.1 サックスバー93.8 ユナイテッドアローズ93.3 ハニーズ92.7 トーキョーベース92.2 ニトリ90.1

80%台  青山89.7 コックス80.7

80%以下 ライトオン74.1 タカキュー71.3 マックハウス63.7  

以上のようになっている。

100%を超えている会社が4社のみということは、まだまだ数字は回復途上というところだろうか?コロナ後は完全停滞期になっているという状況だ。比較的値段志向の会社が上位にあり、アダストリアが独自のポジションをとっているようにも見える。メンズ業界は非常に厳しい状況で、「家計が厳しくなるとメンズ業界への支出が減る」という構図となっているのかもしれない。大型店舗を展開する会社の数字が安定していることも共通項になる。

ファッションに関してはユニクロの流れがバロメーターになるのかもしれない。いろんな環境や各社の動向を見てもファッションの「新しい波」は当分現れそうにない。

■今日のBGM

専門店の商品部

小売業をやってきて規模が少しずつ大きくなってくると、当然本部組織も大きくなってくる。経理や人事などの後方部隊の仕事は明確なもので、存在目的ははっきりするが、商品部がどういう位置づけかが課題になる。

ユニクロなどのSPA企業は商品部の位置づけは明確だし、「商品を売る人」「商品を取引先から買う人(作る人)」の立ち位置が明確な場合は大きな問題にはならない。企業が発展途上にある場合、店に仕入れの裁量を持たせるケースが多い。中には店仕入れのウェイトが大きい会社もある。昔、在籍していた「ビブレ」も店仕入れのウェイトが高く、定番志向の強い「アンダーウェア」や「生活雑貨」以外はほぼ店仕入れだった。セグメントごとに商品部のバイヤー(MD)が2名くらいいた。その後立ち上げた会社も店仕入れの比率が高く商品部専任のスタッフは配置しなかった。(ライン職が兼任で組織してきた。)

店に仕入れの裁量を与えている会社には商品部は不要だと思っている。理想かもしれないが、全店で展開する商品を作ったり、セレクトしたりする仕事も主要な店長(ライン職)がすればいいと思う。その商品のジャッジするする人間は当然必要だが、経営幹部がそれをやればいい。

むしろ、商品登録をしたり商品データを管理するべきスタッフが必要だといえる。「ディストリビューター」と言われたりするが、どちらかというと「商品を販売サイクル上どうしていくか」をジャッジするスタッフが必要になる。データ分析して、「増やすべき商品、なくすべき商品」を的確に指示が出せるスタッフということになる。そのデータから利益計画、在庫計画につながっていく。それを商品部というなら、商品部は必要になる。そのポジションが最も必要なポジションだと思う。管理職がすべき仕事かもしれない。

商売はあくまでも現場だ。本部にスタッフが多いと経営職や管理職と顔合わせする機会も増える。いろんな質疑に答えねばならないので、質疑の回答への矛先は店スタッフに流れる。そうすると店スタッフの仕事が増える。本来の仕事ができなくなる。わかりやすく言うと質疑の回答を書類作成するために店からデータ招集をするケースが多く、店スタッフがその資料を作成する。「お客様向け」の労働時間を割いて「社内向け」の仕事が多くなってくるということだ。

「物を買う」「物を作る」ことは取引先情報もありそんなに難しいことではない。仕入れた商品、作った商品をどうやって売っていくか、商品をどうやって消化していくかのほうが大きい。それを考えるのが現場ラインの大きな仕事になる。その戦略を作成し指示するのが商品部の仕事ではないかと考える。

今日のBGM

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