投稿者: retailjam (8ページ目 (15ページ中))

ティーンズの市場は難しいが・・・

ハニーズが最高益と日経記事にあった。ハニーズの売場にはあまり興味がなかったが、2~3年前、店を巡回しているとき、少し驚いたことがある。季節の変わり目(2/末か8/末?)だったと思うが、各ショップが商品残の処理に苦しんで売り場が乱れていたのだが、ハニーズだけがきちんと商品が入れ替わっていて新しい季節の売場になっていた。ティーンズのボリュームゾーンの店は売場内通路が明確でなく、売場に手が入りにくいのだが整然としていたので印象に残った。社内会議でも言った記憶がある。

ティーンズヤングのボリュームゾーンの品揃えは大変難しい。そのターゲットの専門店は、鈴屋、三愛、鈴丹(現パレモ)、リオチェーンなどが大手でティーンズ系は名古屋の鈴丹、リオチェーンが引っ張っていたと思う。ナショナルチェーンティーンズ系大手は、その他にハニーズやエルメなどがあった。一時は一番元気な市場だったと思う。鈴丹は一時年商1000億を超えたこともあった。

店で婦人衣料を管轄していた時、ティーンズ平場は非常に難しかった。流れがすぐ変化し、売れ筋の見極めと確保が難しい。なお、ブランド志向やテイスト志向、値段志向と求めるターゲットもばらばらで、当たれば大きいが、切り上げるタイミングが難しかった。

ハニーズの記事によるとミャンマーの自社工場がうまく稼働して、オリジナル商品がうまく回っているようだ。利益率も61,4%と非常に高い。在庫回転率も第2四半期末で計算すると月度0.47回転とまずまずの数字だ。(ただし前年より-0.06回転)

市場環境も後押ししているように感じる。一時のティーンズ専門店は規模を縮小してきており競合が減ってきている。新しい競合になりうるのはユニクロやGUだが、両ブランドともノンエイジでベーシックの流れで個性は強くない。

ただ一番感じるのは価格戦略だと思う。好調な流れの「しまむら」や「西松屋」の好調さと同様の動きとも感じる。「しまむら」や「西松屋」とも客層はかぶるところもあり、お客様の買い分けもあるのではないか。値段志向のお客様をつかんでいるように感じる。出店しているのはフル感性のお客様が多いSCだと思うし、必ずしもティーンズヤングだけの買い上げ客ではないと思う。

高い利益率を続けるか、客層の幅を広げてフル感性ターゲットの店に変えるかが今後の企業戦略になっていく。現状の売場ではイオンモールやららぽーとではいい場所での出店の機会は厳しいと思う。新業態を考えて大型化していくか、RSCよりNSCへの出店を加速させるかが出店戦略の課題にもなる。さらに商品量と価格戦略も大きな成功のポイントだと思うが、今後この利益率が継続できるかどうか、MDのかじ取り(価格と利益のバランス)も非常に重要になってくる。

今後の動き方に注目したい。

■今日のBGM

アウトレットは完全に飽和状態

千歳アウトレットモール「レラ」が終了する方針とのニュースがあった。昨年末には福岡の「マリノアシティ」も建て替えの検討に入ったとのニュースがあり、昨年6月には「八ヶ岳リゾートアウトレット」が閉鎖された。三菱地所の「プレミアムアウトレット」、三井不動産の「アウトレットパーク」に続いて大手イオンが「ジアウトレット」として参入した北広島、北九州も空床が目立ち、厳しい状況が伝えられている。

以前も書いたと思うが、PM会社にいた時、当時のチェルシージャパン(現三菱地所・サイモン株式会社)に開発の話をしたとき(千歳レラだったような気もする)「日本にはアウトレットが成功する場所はそれほど多くない。」と言われた。現在アウトレットは「プレミアムアウトレット」が10か所、「アウトレットパーク」が13か所「ジアウトレット」3か所と大手だけでも26か所もある。

そもそもアウトレットは各小売業、各ブランドの在庫過多商品を売り切る場所で、掘り出し物的商品や売り切ってしまいたい商品の値段を下げてなくしていく場所だった。

小売業は当然利益を追求する。商品をだぶつかせて、その商品の値段を下げれば利益率が下がっていく。利益を追求するには、売れる商品を売れる量作るのが基本になってくる。つまりアウトレットに回す売れない商品が多ければ、会社の利益は下がっていくし、当然プロパー店(一般店?)の売上も下がっているということになる。だが、売れ残り商品が多くないとアウトレットの商売は成り立たない。売り上げが悪いと言われている会社もある。ただアウトレットに商品を移して売ることによって、利益率が下がるリスクも出てくる。近年は利益率を優先する会社が増えてきている。

一般的には好調企業は、アウトレットに流れる商品は少なく、不振企業はアウトレットに移して値段を大きく下げるには、利益が下がるリスクを伴う。

その一方でアウトレットモールは増えてくる。そうなれば当然商品の魅力度が下がってくる。大手セレクトではアウトレット用のブランドを作って売り上げを上げ、さらに利益率の低下も防いでいる。ただ、もうすでにそれをお客様は見抜いている。さらにプレミアムブランドは出店しないか立地を選ぶ。つまり魅力的なショップが減ってきている。アウトレットモールの乱立は魅力をどんどん下げている。

今後は、間違いなく淘汰が始まる。もしくは門真のららぽーとで応急的に始めたRSCへのフロア単位での出店が出てくるのではないか。(門真は鶴見アウトレットの受け皿としてのリーシングがもたらした。)さらに最低限SMは併設しなければSCとして成り立たなくなるかもしれない。

ますますアウトレットモールのショップMDやアウトレット商品に魅力はなくなっていくと思う。

■今日のBGM

「これでいい」より「これがいい」

「潮目が変わった。」とパルグループ井上会長の第3四半期について語ったようだ。その中で標記の言葉を述べている。この言葉は無印良品の概念である「これがいいよりこれでいい」を念頭にした言葉のようでもある。

このブログではあまりパルグループのことは書いてこなかったが、多種にわたったファッションを個性を尊重しつつまとめている企業で、非常に好感を持っている。もともとはジーンズショップからのスタートで、アダストリアと生い立ちは似ているようだが、個性的な店が多い。残念ながら接点はなかったが、よく店は見ていた。セレクトショップブームの時も、それ以前から「ギャラルダギャランテ」や「ルイス」をしっかりやっていたし、「チャオパニック」も大きく成長した。「アレグロビバーチェ」もパルだったと思う。現状では「スリーコインズ」がただの均一ショップでない商品構成で引っ張ってきている。おそらく「チャオパニック」と「スリーコインズ」で会社を引っ張っていると思うが個々のブランドの状況は見えてこないのが実情だ。去年の決算数字を見ても「スリーコインズ」中心の雑貨事業が大きく伸びていて、商品回転率も前期末数字では年5.9回転と雑貨事業に引っ張られて高回転になっている。

無印良品を指していったと思われる標記の言葉は「スリーコインズ」についての言葉ではないかと思う。均一ショップの中では、ただ安いだけでなく個性が際立っているように思える。多発する均一ショップの中では「これがいい」店だとは思う。

ネットでパルグループのショップブランドを見ると中心になっているのは「スリーコインズ」とSC向けの「チャオパニックTYPY」「ナイスクラップ」くらいのような気がする。

ファッション分野ではまだ流れはつかめてそうにない。ショップブランド別の数字がないので詳しく把握はできないが・・・あまりとんがっていないアダストリアと比べると角がある感じのラインナップだ。この会社の個性だとは思うが・・・

そこがいいところでもあり、ウィークポイントにもなる。

「スリーコインズ」に関して言えば競合と比べると「これでいい」より「ここがいい」だが大きな意味で現状の客層はまだまだ「ここがいい」より「これでいい」だと思う。

次の日の新聞に「無印良品も過去最高収益」の記事があった・・・

■今日のBGM(名曲が多い)

コロナ明けの12月商戦は?

年末年始は商売では大きな売上を確保する時期になる。流れの変化は当然あるがコロナ明けの12月、1月の数字は気になる。

小売上場企業の開示された12月売上速報を見たが、既存売上数値でいうとABCマートが昨対110.3%、アオキが105%と+5%越えは2社。ユニクロは84.6%と大きくダウンしている。ユニクロは少し値段が高めに感じたのだが、ワールドワイドで考えている会社なので問題は大きくないかもしれない。ただ90%割れは厳しい数字。他ではアダストリア101%、しまむら102.4%、ニトリ98.4%と前年並みくらいが流れのようだ。厳しい流れは上記ユニクロ以外ではライトオン83.7%マックハウス81.4%と、くしくも指摘してきた商品回転率の悪い会社。

根拠はないけどコロナ前からの既存店売上前年比を掛け合わして、2018年を100として12月はどうだったかを計算してみた。(当然、その間のイレギュラーがあって信頼できる数字ではないが、傾向はわかる。)コロナ前から105%以上の企業はABCマート131.1%、アオキ112.9%、ハニーズ110.0%、しまむら109.5%、西松屋109,2%の5社。調べた中のワースト5はライトオン57.9%、マックハウス71.9%、タカキュー76.6%、ビレッジバンガード77.6%、チヨダ84.2%。

靴業界はそこまで詳しくはないが、ABCマートはビジネス離れやスニーカー好調の流れでスポーツの強みを生かして、ブランド戦略とプライス戦略で好調を推移していると思う。そもそもサイズが細かく在庫過多になりがちな業界で、このプライス戦略をとれて利益を確保し続けているのは大変なことだと思う。大きなロットの商品MD戦略が当たっていると思う。アオキはカジュアル路線が好調のようだ。しまむら、西松屋、ハニーズはこのブログでも分析しているようにチェーンストア理論に基づいたMDがインフレの流れの中、ニーズとマッチしていることが要因だと思う。

逆に指摘してきた、ライトオン、マックハウスは非常に厳しい数字になっている。特にライトオンは相当厳しいのではないか?ニュースリリースを見てもシンジケートローンの対応や内部統制システムの改定など少しあわただしい。マックハウスは親会社のチヨダも厳しいので大きな変革が考えられる。タカキューは大胆に店舗を閉めたのでここからどう動くのかが注目だが、イオンGでもありフォローもあるかもしれない。ビレバンは全く想定になかったが、ドン・キホーテとかぶってきており、個性化と顧客の低年齢化が課題かもしれない。

年明けは、元旦が幸運日で日が良かったが、能登地震も重なり、不安な正月を迎えた。

今年も変動の年になりそうな気がする。

■今日のBGM

商売は数字

常々、バイヤーよりディストリビュータが大事だと言っている。管理職は数字で話をしろとも言って来た。小売業は感性のウエイトが高いが、やはり商売は数字に行きつく。

●利益率 利益高/売上高×100

売上高―売上原価=利益高 

売上原価=期首原価在庫+仕入原価―原価在庫

原価在庫=売価在庫×原価率 

原価率=(期首原価在庫+仕入原価)/(期首売価在庫+仕入売価―売価変更額)

・・・利益率の簡単な計算式になる。この計算式で会社から与えられた予算利益率との比較で数字をコントロールする。さらにこの計算式で仕入れ管理(仕入額、仕入原価も逆算できる)もできる。

●限界利益率 限界利益率=限界利益高/売上高×100

限界利益高=売上高-変動費(売上原価+変動経費)=利益高―変動経費

●損益分岐点 固定費/ 限界利益=固定費/(粗利益-変動経費)

・・・与えられた部門の損益が0になるときの売上高

●労働分配率  人件費/荒利益

・・・40%前後が妥当 50% 以上は赤字

●商品回転率  月度 月度売上/平均在庫

●在庫日数   月度 30日/月度商品回転率

●仕入れ債務回転期間 仕入れ債務/1カ月当たりの売上原価

・・・一般的には40日以下だが小売業は60日以下くらいまで

・・・在庫日数と債務回転期間で資金繰りの状況がわかる

簡単に小売業で必要な数字の計算式をいくつか記したが、管轄している店や部門の数字はどうなっているだろうか?期間単位で数字のチェックは必ずするべきで、そこで営業の方向性を決定させる必要がある。

さらに、経営数字と同様に、商品データの数字も一定の基準があるべきだと思う。それによって商品の売り方(レイアウト、演出)や、集約、処分(プライスダウン)のジャッジが必要で、そこには感性(感覚)を加味することは必要ない。

経営的観点での数字については各社の基準があるので、その基準を明確にして店長以上の管理職には徹底させる必要がある。仕入れるだけならだれでもできるし、商品を作るのもそんなに難しくない。何を基準にして作るか、どの数字に合わせて仕入れるか、それを理解していなければバイヤーはできない。

感性だけでは商売はできない。

■正月の酒(最高にうまい麦焼酎 是非!)

厳しさが増しそうな年

年明けから能登地震や空港事故もあり、あまり明るい年明けではないが、年末年始の商戦はどんな流れなのだろうか?年末にいくつかのSCに足を運んだが、バーゲンに入ったという印象はあまり感じなかった。年末に悲観的なことを書いたのでこの流れで小売業はどうすればいいか考えたい。もし会社を続けていたらどうしていただろうか?

一番大きなことは人事面をどう変えていくかだと思う。

小売業や飲食業は所謂労働集約型産業で、世の中の「働き方改革」の流れになかなか乗り切れずにいる。つまり働く人が集まらなければ成り立たない産業で、さらに立ち仕事で土日は休みづらい。ちょっと逸れるが、国が推奨することは、「働き方改革」だけでなく日本中に1%しかない大企業に向けたもののような気がする。それをすべての企業で取り組むことは無理がある。パブリシティ効果による「働き方」については世間の注目度は高く、ますます小売業に働く人が集まらないようになっている。小売業の中では「品出し」「検品」「レジ業務」など、まだ作業計画がわかりやすい仕事はそれでも給与を上げることによって集まるが、「接客」「演出」などなかなか具体的作業が見えにくい仕事には集まりにくい。

まず、どうやったら小売業に人(販売員)は集めることができるか?集まらない原因は何だろうか?大きな原因は土日の休みづらさにある。お盆や年末年始も同様のことがいえる。私たちが入社した時はそれを十分に理解していた。ただ今の労働環境からみると大きな障壁になっている。

まず、給与規定を変更して日曜は月2日休むことを恒常化し、さらに「日曜手当」として日祭日は出勤日数に応じて手当をつければどうだろう。日祭日に働くことがマイナスではなくプラスに感じる労働条件に変えてみる。それによって結果的に少しでも給与を上げていくことができる。

次に必要なのは、社員の視野を広げることだと思う。小売業の社員は「売ること」が使命で、「売ること」により会社がどう変わっていくかがあまり見えてない。「売ること」の楽しさ以外に会社としての仕組みや、商売のやり方についての理論が理解できていない。これが理解できないから先が見えてこない。

社員教育を重点項目にする。「会社が目指すもの」を意識させる。さらに商業理論を簡単に教える。そして問題解決への手順も全員で話し合う。会社が目指すものとは会社の理念のことだ。この会社はどういう目的で作られたかを理解させる。これは全員で意思統一すべきことだと思う。

さらに商売の仕組みを考えさせる。金の流れや、利益の仕組み、一般的に言われている商売のポイントを理解させる。「売り上げ」や「利益率」だけでない商売の仕組みをわからせる。私自身もイオンの「経営者研修?」で漠然としていたものがはっきりした。損益計算書だけでなく貸借対照表にも目が行くようになった。

最後に評価基準をわかりやすく全員に示すことだと思う。業績評価でいいと思うが、その評価基準の再設定と、個人計画の提出とそのフィードバックを明確にする。

厳しくなりそうな時期だから、一度徹底すべきこともある。モチベーションを上げることも必要だ。こういう時期だからこそ人事面の見直しが最も必要だと思う。

■今日のBGM(自分にとっての音楽の原点)

小売業の2極化

そこまで景気動向に精通してはいないが「円は戻ってまた高くなる。」ということはもうないのではないかと感じる。経済評論家でなくてもわかるような事態だと思う。

円安が続いている。国債を発行しすぎているので金利を上げると、国は金利負担が増す。さらに借入金の金利も上がり、一般市民にも影響が大きい。円安で輸出企業は儲けている。代表的な業種は「車」関連があげられる。ただ流れは電気自動車に変わってきている。今の状況では「車」業界も完全に弱くなる。さらに電気に変わることでガソリンでのサプライチェーンは大きな転機を迎える。それに代わる輸出産業が出てこなければますます流れは悪くなる。さらに日本は資源を持っている国ではない。資源を持っている国への依存度が高い。

物価の高騰に合わせて、「給料を上げていく」と国は大号令をかけるが、その原資はどこから来るのか?労働者の70%を占める中小企業従事者はどうやって給料が上がっていくのか?

そういう中で小売業はどうなっていくのだろう?限られた百貨店でインバウンドや高所得者の「貨幣より物」化で増収は起こっている。逆にしまむらや西松屋のように低価格を打ち出している専門店の伸びが大きい。SMもオーケーやロピアのように値段での打ち出しが強い店が好調だし、イオンも値下げを打ち出した商品が増えてきている。ファッション専門店も低価格帯のユニクロや、若干そのゾーンに引っ張られる流れのアダストリアが中心になっている。

上下に引っ張られて、真ん中が希薄になってきている。前回書いたきっかけになったサマンサタバサの記事の中にこう書かれていた。【「中途半端なブランド」を一体どの層が支持するのか。「どっちつかず」ということは「どの層も支持しない」ことでもある。】記事の内容はもうすでに周知されているようなことだったけど、このコメントは鋭いと思う。

中流を意識したSC特にRSCはさらに厳しくなると思うし、その収益のマイナス分をテナントに向けると、テナントは動かない。テナントは無理して出店できないので、出店する場所や機会が減ってくる。特にコロナの痛みが大きい中小企業はさらに厳しい。低価格志向のテナントが増えるし、好調テナントの大型化は進む。どんどん悪循環が続きそうだ。

厳しい時代になってきている。

■今日のBGM(年越しにyoutubeででも聞いてください。心が洗われます)

セレクトショップはどうなるのか?

ヤフーでセレクトショップの意味を調べると、「独自のコンセプトに沿って複数のブランドの商品を仕入れ、販売する業種。」とある。ここに「個性ある複数のブランド」と入れるのが正しいのかもしれない。ここについて話すといろんな意見があり、特に癖のある意見が多いのであくまでも私見で書く。

セレクトショップと大手アパレルの大きな違いは、仕入れて直接お客様に売るか卸業を中心にするかの違いにある。昔から付き合いがあるところはビームスやユナイテッドアローズも地方ではFCをしている会社もあるが、非常に少ない。ほぼ直営店の展開である。名の知れたセレクトショップもあれば、地方で独自にブランドを仕入れているセレクトショップもある。

個人的なことでは、大学生のころ上野アメ横の店「ミウラアンドサン」でスタジャンを買った思い出がある。その後もインポート商品のバイヤーをしていたころはシード館、インターナショナルギャラリー、伊勢丹スライスオブライフは定点観測していた。トゥモローランドに「ボルジー、マカフィー」の出店交渉もしたし、完全にあしらわれたが「ビームス」の出店交渉もした。まだ千駄ヶ谷の小さい事務所だった今のベイクルーズと布帛(シャツ)の商談をしたこともあった。

その当時とは規模もMDも大きく変わっている。トレンドを追いかけてセレクト中心から完全に自主MD商品中心の店に変わっている。上場しているユナイテッドアローズの前期の売上は130135(百万)売上総利益率51.6%と完全に大手小売業としての位置づけだ。買取仕入れだけではここまで利益は出ない。「ソブリン」や「ディストリクト」などで出店していた高感度の店はほぼなくなっている。

大手セレクト店舗はアウトレットのウエイトが上がってきたのではないかと思う。アウトレットも完全に作りこんで利益を稼ぐMD商品が中心になっている。ここ数年はこのアウトレット業態で売上と利益を稼いできたように見える。このターゲット客層は少しずつアウトレット用の商品とわかってきたようで、ここからはそこまで伸ばせないように感じる。できるだけ早くフェイドアウトするべきだと思う。

先日何人かの40代前後の知り合いと話したが、あまりファッションには興味はないが「洋服はアローズやビームスで買う」と言っていた。その人たちは比較的高収入の部類だとは思う。ユナイテッドアローズの上期の前年比は107.5%で11月は118.2%まで伸びている。インポートは高い、ユニクロは皆着ている、選択肢の中では安心感があるので選んでいるようだ。そういわれると昔よりこのゾーンの敵は増えていない。ノンポリでそこそこ収入がある客層はまだ購買客のようだ。アウトレットで安易にショップ名のバリューで引き寄せて売ることは減らしていき、給与労働者30%が属する大企業社員をターゲットに品質や接客を最重点で取り組めば大きくマイナスはしないかもしれない。競合は限られてきており、きちんと囲い込めば今後も安定的なマーケットとも感じる。

関係ないが、昔出店の話も真剣に考えてもらい(断られたが・・・)、誠実なアウトレットを運営し、伊勢丹にもインポートブランドに併設してコーナーをもって、着実に商売しているように見える「トゥモローランド」をメジャーでは一番応援する。

■今日のBGM

ブランドの持続力

ヤフーニュースで「サマンサタバサ」の記事が出ていた。状況は非常に悪いといろんなところで書かれているが、そもそもティーンズヤング対応のブランドは長持ちしない。何度も書いてきたが、お客様は年をとり、ファッションの流れも変わるからだ。

ファッション業界でブランドはどれくらい持続するのか?30~40年前のDCブランドで残っているブランドはほんとに少ない。ビギもニコルももう会社自体が別のものになっているし、あれだけ売れたコムサも今は見かけない。残っているのはクリエイター系でノンエイジ志向が強かったブランドくらいだと思う。ギャルソンやそこから続くデザイナーブランドや一度は倒産したがヨウジヤマモトやケンゾーなど。あとは年代層を広げたブランドが百貨店中心にシフトして続いている。

ティーンズ寄りのブランドの賞味期間はさらに短い。あっという間に落ち込んだストライプインターナショナルの各ブランドもそうだし(もうティーンズ系ではない?)サマンサタバサもその部類に入る。多感な時期で流れがすぐ変わる。それを前提に会社はどう動いていくことが必要だと思う。

もう一つ記事で指摘していた「中流層中心のMDの失敗」はまさにその通りだと思う。完全に2極化が進んでいると思うし、中流層ターゲットにすれば逆に2極化の流れでは「どの層も支持しない。」が正論だ。

ブランドビジネスは難しい。生き残っているブランドには何か「成功の鍵」(KFS)がある。クリエイター系だけでなく百貨店客層をターゲットにシフトしたブランドは続いている。さらに量販店でも販売員付きコーナーブランドは、周りのスタッフの少なさの中、接客面で優位に立ち数字を維持しているとも聞く。企業としては客層の幅を広げるべくブランド数やショップ名を増やして維持していっていくか、深く掘り下げていってコアの客層に向けていくしかない。

サマンサタバサはある意味予測されていた事態で、前オーナーはうまく手放したし、コナカのM&Aの失敗ということになる。なぜ買収したのだろう?最近ではマッシュグループもM&Aされたが、複数のブランドがあり、持っている他のブランドの客層の幅も広いが牽引してきた「ジェラードピケ」はおそらく失速すると思う。今後の動向は要チェックかもしれない。

ティーンズはすぐにヤングに、ヤングはすぐにヤングミセスに、ヤングミセスはすぐにミセスになる。ターゲットを固定していれば当然新しい客を取り組まなければならない。ティーンズヤングは感性が時代ごとに変化しさらに細分化していく。当たれば大きいが、その分消えるのも早い。

ブランドは「誰に売るのか?」「その顧客の特性は?」「ブランドにとってメリットのある市場の定義は?(例えば機能性なのか、ファッション性なのか?デイリーなのかビジネスなのかなど)」「その市場規模は?」を十分に吟味することが必要で、さらに途中での顧客動向の変化を素早く見極めることが必要だ。

■今日のBGM

商品の値段はだれが決める?

商品の値段の下げるタイミングが変わってきたような気がする。季節感も変わってきているので春、夏、秋、冬での値下げもしにくくなってきた。この頃は「全品20%オフ」とか雑な値段の下げ方が多いような気がする。

量販店にいた時は、本部からの指示があり値段を下げていた。主に販促(周年祭、創業祭、感謝祭など)によるセールスチャンスのタイミングでの値下げだった。今はできなくなったが消し札によるセール商材も入荷していた。(取引先の不稼働をまとめて買ったもの。)その当時でもイトーヨーカドーはデータ管理をしていて、ディストリビューター(DB)が商品の売価変更の指示を出していたと聞く。

ブランドビジネスをやっていた時は、完全に年2回しかセールをしなかった。たとえ買取契約であってもその時期以外のセールはできなかった。数年はセールで完売してうまく商品が入れ替わった。その時はブランドへのこだわりが強く、ブームとしての成功だった。

専門店ブランド(ナショナルブランド)は取引先が値段を下げる時期を指定していたように思う。特にメインブランドが百貨店中心の販路の商品は特に、バーゲンのフライングには厳しい。取引先がジャッジするブランドは委託や消化契約が多いが、取引上の契約で買い取りの場合もある。(完全に力関係。)

年2回のバーゲンのインパクトが全くなくなってきているし、かといって細かく値段を下げているように見えない。一時はストライプインターナショナルの各ショップやアナップなどのタイムサービスが目立ち、その流れで現状も細かい販促時においても「全品~%オフ」が目立つ。専門店ではやはりユニクロが細かく管理しているように見えるし、アダストリアはどちらかというとバーゲン期間に比重を置いているように見える。

ほとんどの専門店がデータ管理をしている。当然商品動向がわかる。このデータで不稼働商材の管理をどれだけやっているか。どのタイミングで値段を下げるか?このジャッジが一番必要だと思う。キャッシュフローから考えると「買い」の商材は最長3か月、「メイキング」商材でも4か月くらいで売れないと成功とはいえない。月度0.3回転くらいが値段を下げるポイントのような気がする。

小売業全体に言えることだが、後ろ向きの発言(売れないなどのネガティブ発言)は嫌われるし、上司からよく思われない。ただ数字で話をすることが一番大事だと思う。どうしても会社は利益を追求するが、価格変更ジャッジが遅れることで利益を大きく失うことが多い。商品の値段は、社内発言力のある人間が数字で判断して決定すべき事項だと思う。

季節変動で夏のバーゲンのインパクトが弱まっているので、特に冬のバーゲンでの各社の取り組みで将来性が見えるような気がする。

■今日のBGM

« Older posts Newer posts »