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セルフレジの功罪

近隣のSMはどんどんセルフレジに変わっている。よく使っているヤオコーとイオンに限定して推測でのレジ台数だが、曜日によって変化はあるが、平日だとヤオコーは有人レジ5台前後、セルフレジ20台前後の体制、イオンモール内のイオンは有人レジが10台前後、セルフレジ、レジゴー各20台前後の体制のようだ。近隣その他のSMもセルフレジへの移行を進めている。SMはレジ対応にかかる人件費は非常に大きく、セルフレジへの移行は急ピッチになっている。個人的にはイオンではレジゴーで対応しており、スムーズにレジ対応が終わるのと、買い物金額がわかるので便利に使っている。ネットでレジゴーの記事を読んだが、ある程度万引き防止のシステムはあり、さらに子供たちが楽しんでやっているらしく客単価も下がっていないらしい。ちなみにその他の業種でもユニクロ、GU、ダイソーなどがセルフレジをスタートさせている。

ここからはあくまでも私感で書く。SMでは短時間労働者への待遇改善(時給、社保など)による負担が大きくなり、人件費問題は非常に大きいと思う。気になるのは、セルフレジ化により人員を削減しただけでなく、その人員分をどう売場に反映させているのかということだ。SMへの買い物は午前中行くことが多いが、店によって品揃えの充実度が全く違う。特に生鮮品やデイリー食品などの必要な商品の品揃えに差が大きい。つまり、人を減らして経費調整がわかる店と、レジ要員を減らして売場対応を強化している店の差が非常に大きいように感じられる。当然後者のほうが好感度は高いが・・・

結局、経費削減だけでは、効果は短期間になってしまい、逆に従来の営業面にはあまり効果がでてこない。結果として、次年度はさらに何だかの経費削減していかねばならない状況が続く。その経費削減効果を次のステップのプラスに持っていけるかどうかが課題になるのではないかと思う。上記した午前中の品揃えができていないSMが、そのプラス要因で、生鮮売場やデイリー食品が充実したらお客様の信頼感は増す。次につながる。個店でいうと、厳しい店が賃料を下げてもらっても、その削減分は改善するが、削減分をプラスに転じさせなければ、結局は続かないのと同様のことになる。そのプラス要因で他のマイナスポイントを改善していくこと、さらにプラスになる何かを見つけることが大事だと思う。

本当によく言われることだけど、経費を削減して利益が出るのは一過性のことで、そのメリットを生かしながら、営業面でプラスになる戦略を考えていくことが重要なことだ。経費はマイナスすれば0以下にはならない。営業のプラスはずっと青天井かもしれない。

余談だが、先日食品を買いに行く途中にホームセンターに立ち寄った。欲しい商品の形状がわからず困っていて、担当の従業員を呼んでもらった。サイズが明確でなかったので買えなかったが、その女性従業員の素晴らしい笑顔と対応で、あまり利用していないホームセンターだったが「また行こう。」という気になった。

無人化もいいけど「人の力」もまだまだ大きい。

■今日のBGM

店長は、まず売上予算を達成させる

巷で話題の兵庫県知事のニュースを見るたびに、公務員の仕事は結果が見えにくいのだなと感じる。小売業に限らず、民間の企業は「数字」が結果になる。公務員の仕事はなかなか数字化できない。やはり、「えらそう」「贈賄強要」「各種叱責」にはわかりやすい数字評価ではなく、ほとんどが「気持ち」でのやり取りになっている。

ここで「パワハラ」論争をするつもりではないが、小売業を考えると会社が求める「数値」への取り組み次第で上下関係の軋轢は変化するのではないかと思う。

小売業で店長に求められる数値責任は、まず「売上」。仕入れ権限があれば、次に「在庫」。あとは「売上」と「在庫」に関係するが、「利益」。それぞれ与えられた予算に対しての「予算比」、前年数字に対しての「前年比」。つまりすべて相関関係にはある「売上」「在庫」「利益」が数値責任になる。この与えられた予算数値と実績で評価は決まる。ただすべて数値は「売上」が起因となる。利益率は高くても売上総利益高は「売上×利益率」だ。「売上」が伸びれば、必然的に「在庫」は減る。つまり「売上」「在庫」「利益」は相関関係にある。それを考えれば、間違いなく店長の一番の職務は「売上」予算を達成させることだ。

「いい売場」とはどんな売場なのだろうか?答えはたくさんありそうだが、やはり「売れている売場」だと思う。お客様が買ってくれる売場だから、売れている。数ある店で立ち寄って買い物するということは引き付ける「何か」がなくてはならない。

売れていない店をどう立て直すか?私自身は常に値段に訴えた。売れない商品は値段を下げてなくす。いろんな見方はあるが、不稼働商品のセール(値段を下げる)をやることで、お客様の目は売場に向けられる。興味を持たれると、次のステップにつながる事が多い。再来店があったり、他の商品も手に取ってもらえるようになる。ただその時必要なことは、必ず内容を吟味して数値計画を立案し、売上予算は絶対クリアさせることだ。同時に気にすることは、セールで売上を取りながら、在庫はできるだけ減らしていく。さらにセール以外の売場を徹底的に整理する。売れてくるとスタッフも動きが軽くなる。セール以外でも売れ筋が見えてくる。

数値計画で利益率を考えてみる。平月売上3000千、利益率45%、在庫10000千の店で、不稼働商品1000千を半額で販売したとする。完売して売上は3500千と想定する。その月度末在庫を10000千で設定すれば、仕入れ額は4000千、原価50%で仕入すれば利益率は44.4%と-0.6%しかダウンしない。つまり、内容を吟味して数値計画を整合できれば大きな傷は負わない。

在庫を減らしてさえいれば、売上数値が安定してくれば仕入れが活性化するので利益は戻ってくる。売上が改善してくれば、売場スタッフとの交流も円滑になる。売場に笑顔が出てくる。実際、売り上げが好調な店は、売場の雰囲気は明るい。さらに上司からも、性格的に合わなくても、強く言われなくなる。

小売業では、売上数値さえ安定させれば、パワハラも軽減される。

・・・何度も経験してきた。

■今日のBGM

商品回転率が低い企業はリスクが隠れている

商品回転率を上げることが商売の基本だと、常々言っているし、当然だと思っている。何度も書いてきたが、「商品を仕入れて、それを売って、その金で支払う」が商売の基本だからだ。企業が大きくなってくると、その基本が見えなくなる。商品回転率が低い企業はリスクが隠れていると思っている。

ライトオンの上期の決算短信を見ていて、やはり何かが隠れていたと思った。くれぐれも今回はライトオンの業績に意見する物でなく、こういうことがあったのではないかという個人的な推測を記す物であり、個人の感想と思ってほしい。売価還元法で原価を算出している旨あったので簡単な計算方法で数字を出してみた。

前期末、原価在庫10479(百万)で、今上期末は原価在庫8326となっており、原価在庫の前年比は79.5%、売価在庫は原価率から逆算すると前年差は-5243と大幅の削減をしている。ちなみに上期の売上は21298(百万)で売上前年比は86.6%となっている。回転率は在庫が減ったことで前年が半期で1.12回転、今年が1.26回転と改善している。これでも回転率は年間3回転しない。年3回転することは4カ月で商品が売れてなくなるということなのだが、そこまで回っていない。付け加えるとおそらく支払いは4か月以内だと思う。

今期首の売価在庫は(単純に原価率で計算する)20191(百万)となり、同様に上期末の売価在庫は14948となる。売上は21298なので、値段を下げなければ、計算式でいうと期首在庫(20191)-売上(21298)+仕入売価=14948となり仕入売価は16055となる。これを所謂5掛けで入れたとすると仕入原価は8027となり、そのまま計算すると利益率は48.9%になる。ただ実際には上期利益率は44.3%になっている。概算してみたが仕入れを原価50%でして(所謂5掛け)、さらに約3400(百万)の商品がなくなることで、公表されている利益率44.3%になる。簡単にいうと6800(百万)の商品評価を半額処分すれば公表数字が導き出される。

どうしたかはわからない。ただ34億円の金額分だけ商品の評価を落としたとは考えられる。その他の原因もあるかもしれない。評価を落として販売したとしても売上前年比は86.6という数字だ。評価ダウンした商品が売れたとしても、既存の商品は売れてない。逆に評価を落とした商品が売れてないのかもしれない。

再度言うが、今回はライトオンの業績について言及する物ではない。あくまでも私自身の主観での数字で、現実とは違っているかもしれない。ただこの数字から、商品回転率の悪い企業は何だかの負の要素があるのではないかと考えられるということだ。悪く考えれば、在庫高で決算数字を変えることができる。昔は決算セールという名の下で売上を稼ぎ、在庫も減らしてきた。決算が終わって在庫を減らすということは正確な決算だったのかとも考えられる。管理体制も疑われる。回転率の悪化は、営業面だけでのキャッシュフローは悪化すると思われるし、利益率を優先した在庫評価と言われても仕方ない。

商品の価値はお客様が評価し、売る側が決める商品評価(売価)ではない。お客様、つまり市場が決めるものだ。そして商品回転率が悪いということは、商品がお客様に評価されていないと認識するべきだと思う。

■今日のBGM(まだトノバンがあった。)

ライトオンは立て直せるか? 2

前回、ライトオンの状況を書いたのだが、あまりに傍観者的な内容だったかなと感じていた。「どうするべきか?」「立て直すには?」が欠けているとは思っていた。ただ現状では非常に難しい問題になっているのではと思う。

もう、所謂全国チェーンのジーンズ専門店(?)はライトオンとマックハウスぐらいだが年々ダウントレンドで、現状のMDも昔のジーンズ専門店ではない。アダストリアもアーバンリサーチも、もともとはジーンズ専門店からのスタートだが、方向転換して今があるのは、「先を見る力」があったと言わざるを得ない。ジーンズメイトも一時株主変更時、攻勢をかけたが失敗した。いろいろ考えても、いろんなハードルが高すぎて難しいという結論になる。

まだまだ地方では頑張っているジーンズ専門店もあるが、どうしてもブランドのエリア分断があり、ナショナルチェーンにはなれない。高知の「ジーンズファクトリー」や岡山、徳島の「ビックアメリカンショップ」、旧三信衣料系のジーンズショップなどエリアに根付いて頑張ってはいる。多くはデニムラインと「ダントン」「オーシバル」などBshop系の品揃え、SCなどのインショップでは「ノースフェイス」や「チャムス」などわかりやすいブランドのミックスで確実に運営されている。ブランドを卸している会社が、エリアを考えて専門店を選んでおり、なかなか全国チェーンには品揃えの壁がある。

厳しくなった会社が抜け出すには、管理主導で動くしかない。おそらく過去営業主導で動いて内容が悪化してきたと思う。そういう意味では、各数値の適正化を急ぐ必要がある。ライトオンの前年度実績では1店舗あたり年間売上は1.26億、月度売上約10.5百万、売価在庫は平均54百万となっている。今の売上を維持して回転率を年間3回転まで上げるとして売価在庫は42百万となる。その在庫で運営するとすれば、坪在庫を最大500千として80~100坪を適正坪数にするべきだと思う。現状の坪数は決算書でもわからないのだが、明らかに大型化が進んでいる。大型化により売り上げ効率が悪化し、さらに販売員の守備範囲が広くなっている。ジーニングカジュアルを続けるなら、接客の要素を上げるためにも販売員の密度は高いほうがいい。坪数の削減はデベロッパーとの交渉が難しいし、再度売場投資も発生するのでハードルは高いが、間違いなく最優先で整理すべき事項だと思う。

MDについては、頑張っている地方の専門店と同じMDは全国チェーンではできないだろうし、どうすればいいか言及できないが、テイストをジーニングカジュアルで進めるなら、もう一度デニムの品揃えや集積可能なトレンドとなるブランドを整理して、そのコーナーを確立させるべきだと思う。20~30坪で例えば重厚なウッディベースの内装でショップインショップ化を図ればどうだろう。その他の面積でキッズ含めた衣料品を買いやすい値段で品揃えする。坪数縮小でボリュームも出るし、イメージも固まる。売場内にインパクトある1角を作ることで売り場も締まってくる。

他人事で書いたが、言うだけならだれでもできる。金をかけて軌道修正するにはリスクも大きい。ただ現状の数字を見ていると、小売りとしての商売の基本と大きく乖離しているように思う。繰り返すようだが、営業面から対策を考えずに、管理面(数値面)からあるべき売場を考えたほうがいい。営業面から考えると失敗を重ねるだけのような気がする。売上計画より在庫計画、利益計画を重視して対策を立ててみてほしい。

今後も数字の流れは厳しいと思う。変革に注目している。

■今日のBGM

ライトオンは立て直せるか?

5月の小売業上場各社の既存店売上前年比を見ていたら、約半数の企業は100%超で堅調な数字だったが、メンズ色の強い企業が少し悪かったようだ。景気が悪い時に出る傾向で「お父さんのものは後回し」的な流れのようにも見える。中でも落ち込みが最も大きかったのはライトオンで既存前年比75.1%となっている。

ここ3カ月で見ると3月78.9%、4月82.7%、5月75.1%と低迷を続けている。ここ数年の業績悪化で、証券市場区分も去年の10月にプライムからスタンダードへ移行されている。

もともとはジーニングカジュアルを打ち出して大きくなってきた会社だ。ジーンズの追い風の中、売場も増え、売場面積も大きくなっていった。ジーンズ中心の売場は在庫金額が大きくなる。パンツのサイズもメンズでも27~34インチまで揃えなければならないし、中心サイズのストックを入れると1品番1色で10本以上の在庫が必要になる。近年はボトムのサイズ分類はアジャスターや脇ゴムでトップスと同じサイズで展開しているが、ナショナルブランドは依然インチ表示のままだ。一世を風靡したジーンズのボリューム感を持った店から、ファッションの流れの変化もあり、ライトオンも現状はジーニングテイストを持ったフル客層へのカジュアルショップに変わっていった。その環境下で商品量や値段で「ユニクロ」「GU」には太刀打ちできず低迷を続けている。

数字が厳しいので、買い物ついでで近隣のいくつかのSCで売場を見たのだが、迷走感が出ている。定番のジーンズもリーバイスも含めて割引商材が多く、特にメンズはセール品もアソートで取引先から借りているような商材が目立つ。ボトムに関して言えば基本デニムのリーバイス501が17000円の時代に売上を考えると品揃えもボリュームアップできない。レディス、キッズも在庫を抑えているのか、中途半端になっておりお客様は競合店に流れているように見える。

前期の決算書では売上前年比97.3%、売上総利益率48.1%(前年49.3%)経常利益-1046(百万)純損失-2545(百万)(前年-1166)、在庫回転率2.2回転(年)となっている。今年度上期は売上前年比86.6%、売上総利益率44.3%(前年50.1%)経常利益―1353(百万)(前年191)上期純損失―1617(百万)(前年―95)在庫回転率1.26(半期)前年1.12(半期)と発表されている。おそらく在庫過多を続けていたため、今期在庫縮小のための値下げを強行したが、在庫整理では売り上げアップに結び付かず、利益率を下げただけの状況だったようだ。この数字を見ると、現状の売場の状況は納得できる。

小売業の決算数字にはいろんなことが隠されている。ライトオンのように在庫整理をしたが売り上げに結び付いてないように、適正金額で商品在庫が計上されていないケースが多い。決算数字をよくするために在庫評価を市場評価と乖離させれば、悪い決算にならない。ライトオンも今上期に利益率を前年差-5.8%落として在庫処理を断行したが、売上前年比86.6%と大きく落としている。売上につながる評価にすればさらに利益率は落ち込んでいくと予想される。さらに不振店舗を削減するための除却損や、返却されるべき敷金と相殺される経費も大きく、数字が悪化すれば実数値は急激に落ち込む。まだ余力がありそうな決算数字だが、隠れているリスクも大きい。

再浮上させる策はあるのだろうか?

■今日のBGM

ファイブフォックス

ファイブフォックスの会長だった上田稔夫氏が亡くなられた。ファッション業界に一時代を築き上げた人物だ。ファイブフォックスはDCブランド全盛期の「コムサデモード」「ペイトンプレイス」などを展開していたファッション業界の大企業で、2000億超の売上で経常利益率もピークは13%あったとのことだ。

ファイブフォックスは黒を基調にしたモードファッション「コムサデモード」がメインブランドで、少し宗教染みた会社というイメージが強い。開店前に大きな声でスタッフ全員声を合わせて挨拶をしていたのを何度も見た記憶がある。商品の中に台紙を入れて同じ大きさに合わせて商品整理を徹底し、VP(演出)はモノトーン基調で固めており、さらに店内音楽はビートルズで統一していた。上田氏はファッションビジネスで大事なのは「商品」「店舗」「在庫コントロール」だと言っていたそうだ。全くその通りだと思う。

DCブームの後、 「野菜売り場の近くに大きな店を出せ。」との大号令で、「コムサイズム」を立ち上げ、脱ファッションビルで大型モール(GMS)に参入したのもファイブフォックスだった。「野菜売り場」はお客様が必ず通る。つまりデイリーのお客様の目につく一番の場所にファミリー市場の店を出した。この業態はファッション業界の常識を覆した。これが今のモールのファッション大型区画のスタートだったと思う。

昔の仕事柄、各ブランドの開発担当者と打ち合わせをしていたが、ファイブフォックスは冷たいイメージが強く、特に弱いデベロッパーには強気だったような気がする。売れているブランドはえてしてその傾向が強いが、大手だった「ビギ」や「ニコル」よりその印象は強い。それだけブランドの位置づけを大事にしていたのかもしれない。

コムサブランドはモードテイストの黒を基調としたMDブランドで、他の黒基調だった「ギャルソン」や「ワイズ」などデザイナーブランドよりクリエイティブさはなく、店舗イメージや演出、売り方を差別化させて、そこを武器にお客様を引き付けていたと思う。ただ、やはりモノトーンのMDブランドとして感じられてしまうと、ブームが去ると厳しい状態になっていった。現在年商が200億くらいということだが、それでもすごいと思ってしまう。売り上げの中心は「コムサフィユ」(子供服)ではないかなと思う。

商売哲学の「商品」「店舗」「在庫コントロール」については記事を読んで初めて知ったが、「商品」は小売業では共通だが、「店舗」「在庫」を意識していたことには共感する。あのレベルまで売場のイメージを固めてしまうと逆にマイナス要素になるかもしれないが、「おたたみ」のマニュアルや演出は驚かせた。コムサ憲法と言われるマニュアルがあると聞いたこともある。環境面を含めた店舗マニュアルは必要だと思う。「在庫」に関しては常々私自身も商売の基本だと思っているので、このブログでも一番ページを割いている。ファッションビジネスで大事なことと言っていたことには強く共感する。

改めて、デザイナーブランドでなくMDブランドで年商2000億まで育て上げた力量には時代背景もあったが、「すごみ」を感じる。

ただ、私はファイブフォックスの服を自分用には買ったことはない。

■今日のBGM

ファッション店舗は激減している

先月、知り合いの会社が株式譲渡された。ファッション小売店舗だが、一時は大型モール(RSC)中心に50店舗以上展開していた。譲渡時は10店舗を割っていたそうだ。大型モールは増えたがファッション関連の店舗は激減しているのではないか。個別にはMDや販売体制の問題もあるが、それ以前に店舗数が減っている。大型モールにファッションのニーズが少なくなっているのかもしれない。

大型モールの国内最初はどこか難しいが、現状のモール型は2000年のダイヤモンドシティキャラ(川口)がスタートのような気がする。その後、従来のGMSには入店しなかった「ワールド」「イトキン」「オンワード」など百貨店系メーカーや「サンエーインターナショナル」などヤングファッション系ブランドがディフュージョンブランドを大型区画で展開し、新しいモールのイメージを強めた。そこから20年経過しGMSを消滅させ、今は全国どこにでも点在している。つまり大型モールを引っ張ったのは都心から郊外へ広がったファッション店舗の力が大きい。

その当時立ち上げた「ワールド」のブランド「ショップTK」や「オペーク.クリップ」などは激減し「ハッシュアッシュ」はなくなった。イトキンの「avv」もほとんど見ないし、オンワードも「エニーファム(エニシィス)」もあまり見ない。サンエーインターナショナル(現TSIホールディングス)の「ナチュラルビューティベーシック」も大型モールへの出店スピードはダウンし、「&バイPD」はなくなった。いずれもメインフロアの大型区画にあり、大型モールの顔だった。

カジュアル系ではユニクロの国内店舗数は2019年817店が2023年に820店、同じくGUが421店から463店と大きな変動はない。アダストリアは国内2017年1220店から2023年1509店と増えている。大型ショップはほぼ横ばいだが、一世を風靡したストライプインターナショナルが2017年1400店から2023年には700店舗と半減している。ライトオンも2017年513店が2023年には373店に減少している。多くのカジュアル系の店舗は激減しており、それに代わって古着や値段志向の強いショップがやや増えてきている感はある。

逆に、1階のSMの近くには食物販のテナント、上層階には「100均、300均」や「携帯ショップ」など所謂「その他」業種の出店が増えている。さらに店舗の大型化が進んでおり、ユニクロや無印良品、ABCマートは増床出店が多い。どちらかというと必需品を大型化させているイメージは大きい。

ファッションが商業施設のイメージになる事は間違いない。新しいブランドを探し提案できなかった百貨店は、顧客年令が上がり衰退した。GMSも同様にお客様の年齢が上がって、デイリーウェアの品揃えの年齢も上がり、30代から50代の顧客を大型モールにとられた。中心客層が上がっていけば大型モールも同じ流れになる。すでにお客様は商業施設の使い分けはできている。新しいファッションの流れや新しいショップを探して導入していかねば間違いなく衰退する。常に新鮮であり続けなければ商業施設は淘汰されていく。

■今日のBGM

NSC(ネイバーフットショッピングセンター) 2

平成3年度統計で年金受給者数は4023万人いるとのことである。人口の30%を占め、その1家庭当たりの年金額は22万496円となっている。さらに「老後2000万問題」もあり貯金の取り崩しで生活している。ただ「食」に関しては最低限必要品でニーズは落ちることはない。

近隣にヤオコーが出店した。駅前の高級マンション「プラウド」の1~5階の1画に入店し、専門店は16店で、延床面積は2200坪(ヤオコー950坪、5層)となっておりヤオコーの初年度売り上げ目標は26億と公表している。商圏は1km圏5.4万人、2Km圏17.7万人、3km圏33.3万人という恵まれたエリアではある。ただ近隣(100メートル圏)にマルエツが2店もあり、駅ビルに食の専門店が多数入店している。

消費支出は伸びているが物価高騰に食われ、消費数量が減っている。2023年消費支出は1.1%の増加だが物価変動が3.8%あり実質は2.6%の減少と家計調査報告にある。おそらく状況は変わらない。給与が大企業中心にアップはしたが、物価に釣り合っているのだろうか?特に「食」に関しては毎日需要するもので支出を減らすべく、「オーケー」や「ロピア」などの格安スーパーに人気が集まっている。季節や輸入コストで値動きが大きく値段志向が強まっている。高年齢化もあり買い物は1部の富裕層を除くと「食品」中心の流れになってきている。

ヤオコーは35期連続増収増益で、SMの超優等生だ。私も食品売り場を持つビブレの店長時代、南古谷のウニクスを見に行って勉強させてもらった。提案型のSMの印象が強かった。おそらくSMとしてはどこにも負けないのではないかと思う。ただ食品以外をどうとらえていくか。NSCとしてのテナントのラインアップは何を優先しているのかと思う。今回の高級マンションと言われる「プラウド」への出店のテナント揃えはこれでいいのかとも思う。

ヤオコーが狙うべき客層の「衣料」、「服飾」、「雑貨」のニーズは何なのかを考えると、値段志向一点ではない。ある程度の感性を持ち合わせている。今回のテナント揃えは何を優先したのかと感じる。「賃料」で選んだようにも見える。飲食やクリニックモールを除くと「セリア(100均)」ドラッグ、買取大吉、パリミキ、ダンススタジオ、コンタクトアイシティなどで高層マンションに囲まれた駅前物件としてはコンセプトがない。3階1フロアを「無印良品」にするだけでSCが締まってくるように思う。ほかにもそういうショップは探せばある。「3コインズ(メガ版)」やダイソーの大型ショップもある。もう少し規模が必要だが「ユニクロ」もありだ。さらにアダストリアは絶対NSC、CSC向けのブランドを模索している。テナントが固定賃料の高さを嫌がるなら、「低い固定賃料+売上歩率」にしても売上額で賃料はカバーできると思う。

優等生の食品SMだけで戦うより、SC全体で戦えばさらに相乗効果が出ると思う。過剰な数の大型モール(RSC)がもう厳しい状況にあるので、NSCの成功タイプを早急に確立すべきのような気がする。

■今日のBGM

売場環境の維持…レイアウト・演出他

出店が決まると、売場図面の作成になる。店がオープンしてからもレイアウトや演出は売場の鮮度を見せる意味でも、大きなポイントになる。

レイアウトや演出も開発部中心に本部主導になっていることが多いが、間違いなく営業(特に店長)が中心になるべきだと思う。やはり「何を売りたいか」「どうやって売っていくか」は販売計画の基本で、それは現場により近いところで進めて行かなければ売場に「魂」が入らない。完全に店は作業だけで本部主導ですべて決定していけるのは、組織がきちんと機能している優良企業のみではないかと思う。ただ店に対するモチベーションアップの切り口は絶対に必要で、優良企業でも何か店が起因するプランもあると思う。

ストアメイキングマニュアルは各社にあると思うが、それは理想像に過ぎず、ほぼマニュアル通りにはならない。演出の仕方や陳列の仕方のマニュアルは当然あっていいが、最低限すべきことだけでいいと思う。例えば主通路の通路幅やサブ通路の通路幅、最高陳列量、最低陳列量など売り場を作るにあたっての基本を徹底し、あとは店に任せればいい。過去大手小売業で有名なコンサル会社を利用してVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)を推し進めていたが、成功したとは聞かなかった。(すぐ崩れたので失敗だったと思う。VMDではなくVP(ビジュアルプレゼンテーション)に過ぎなかった。)やはり売場作り、演出も現場に近いところで進めるべきだ。

最後に、売場環境で一番大きなポイントになる内装だが、内装には大きな経費が掛かり収益に直結する。素材の値段も上がっており、人的コストも上がっている。簡単にいうとローコストでインパクトある内装がベストだが、安い原価の商品をなかなか高く売れないのと同じで難しい。商品の値段が高ければ高いほど、売場のグレード感は必要だが、商品がボリュームゾーンであれば値ごろ感ある内装であっていいということはない。多店舗展開の店は当然売場区画の大きさや商品アイテムや商品ボリュームも大きく変化しないので同一イメージ、レイアウトが望ましいが、店舗数が少ない店やエリアに複数店持たない店は、できるだけ印象に残る内装が欲しい。友人の店で作業足場を組んだ店や、鉄骨むき出しの店など工夫した店は面白かった。什器以外でも映画や音楽のテーマで売り場のイメージを出すなど考えることはできる。お客様に商品だけでなく興味を持ってもらうべき店にしてほしい。

近頃SCを見ていると、興味を持つ店が全くなくなってきた。どこに行っても同じ店があり、その傾向が強いので「わざわざ感」を持てない。デベロッパーのリーシングの面白さがなくなってきているのが最大の原因だが、実はテナント側からも興味を持つようなインパクトがなくなってきている。ファッションビルのデザイナーブランドの内装インパクトまでは必要ないが、MDも含めて興味を持てる店がなくなっている。逆にテナントゾーニングで「こんなところになぜ?」と思う店は多い。その多くはショップとゾーニングがあっていない。

出店する側も冷静に出店環境を精査し、お客様を引き付ける店づくりを考えていくべきだ。

■今日のBGM

売場環境の維持…売場開発

売場環境を整える第一の問題は、出店場所を間違わないことになる。どこに、いくらの賃料で、どういう売場にするかを適正にジャッジする必要がある。

まず、自店をよく知っていること。自店の成功例、失敗例を列挙していると自ずとどこに出店すればいいか、やめたほうがいい区画かが、わかってくる。さらにその店舗環境(近隣テナントとの相性、フロアやエリア、区画の形状、大きさなど)でおおよその売上は読めてくる。

以前の会社ではモールの3階はほぼ失敗したし、小型店での失敗例も多く、小型店で開発した新ショップの既存店はほぼすべて退店し、新ショップでの出店は取りやめた。

さらに自店を知る上では、現状の既存店毎の数値状況も当然理解していかねばならない。自店の売上、収益予測は状況を理解した上作成し、それは当然賃料交渉時に必要になる。つまり提示賃料が収益上どう影響するのか計算する必要がある。売上と利益は当然ながら人件費や家賃、その他経費を考えればどれくらいの営業利益が出るかを計算する。過去そのエリアの責任者には契約内容を加味した損益計算書を契約年数分時系列で作成させた。さらにそこに当然投資が入ってくる。簡易的に予測損益を計算していたが、投資に対しての経費率は10~20%で初年度経費計上し、資産計上分は概略で残投資額の35%を減価償却費として毎年の収益予測に計上した。その計算で契約期間の収益を計算していた。SCからの条件で当然収益基準に満たなければ条件交渉するし、合わなければいい物件でも出店はしない。おそらくこの数字が一番の出店根拠になる。

もう1点必要なことは、開発担当者はいろんなSCをどれくらい見ているか、そこに出店しているテナントのMDや状況をどれだけ知っているかは絶対必要だと思う。SCを多く見れば見るほどそのSCの状況がわかってくる。リーシングに対しての優位性はSCにあるかテナントにあるかもわかってくる。出店要請された場所の隣接するテナントやゾーニングされたエリアは、どういうメンバーなのかで当然売り上げは変わってくる。SCを多く見てくると相性のいいテナントや相性のいい場所がわかってくる。さらにはデベロッパーも知る必要がある。デベロッパーとの相性もある。以前書いたが、同じイオンのモールでもイオンモールとイオンリテールでは窓口の対応が全く違う。さらに近年多い証券化されたSCとの交渉は、商売の話ではなく完全に不動産契約の話になり、土俵が違うため会話が全くかみ合わないことが多い。私自身SC側にいてリーシングもした経験もあるので、SCとの相性の違いも理解できる。

出店はきちんとした数字を見たうえで検討すべきであり、独断的にやるものではない。当然結果的にそうなっても、反省としてきちんと履歴を残すべきだと思う。

・・・実家に寄ったついでに大阪と福岡に行った。非常に楽しかったが、結局飲みに行っただけだった。

■今日のBGM

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