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FCでの小売業

セブンイレブンやローソンなどコンビニのことを書いていて、自分がそのFCのオーナー(フランチャイジー)になれるかどうか、そしてそのFCオーナーはどういう目的でFCをやっていくのかを考えてしまう。衣料関連ではワークマンもほとんどFCでの運営と聞く。

昔、DCブランド全盛時は、大都市には直営店、地方都市はFC店という図式があった。FC条件は各社力関係でバラバラだった。ほとんど、売場はFC先(フランチャイジー)が作り、商品の取引条件を個別に設定していた。売場内装が高い時代で、ブランド力があるほど、坪単価は上がった。余談だが、各ブランドにつく内装業者は高い内装費でものすごく儲けていた。取引条件はメーカーとFC先の力関係で差が出て、標準化されてなかった。商品を委託条件でできるところもあり、高い掛け率での買い取り条件のところもあった。ファッション業界のFCは現在もあるが、大幅に減ってきている。

FCはオーナーの思い入れで成功するかどうか変わると思う。商品を売っていくので商品への愛着がなければ成り立たないのではないかと思う。コンビニやワークマンのFCのオーナーはその商品への愛着やこだわりはあるのだろうか?

ネットで見ると、商品の思い入れとは別に、1つのビジネス、職業として選択しているように見える。脱サラをする、夫婦で始めるというスタートが多いようだ。商品やその店へのあこがれよりもビジネスとしての見方が強い。条件を調べていても、なんとなく仕組みはわかるが、そこで果たしてどれだけ収入が得られるか見えにくい。

諸条件を見ていて、一番わかりにくいのは商品在庫の負担についてだ。FC先(フランチャイザー)に商品在庫分の借り入れをしたことにして金利分を払っていくような仕組みのようだが、コンビニは在庫日数が10~12日とあるのでそこまで大きなリスクにならないが、ワークマンは在庫資産2400万と記されているので、回転率を考えるとなかなか返済に時間はかかりそうだ。前年度の在庫日数は85日前後となっているので年間3回転前後のようだ。そしてその商品リスクは完全に取引先が取ってくれるのだろうか?

さらに懸念事項になるのが、人的課題だ。社会政策的な時給の高騰や社会保険料の負担増など、利益を圧迫する大きな問題がある。コンビニも24時間営業なら当然スタッフ数は多く必要になってくる。ワークマンも家族経営で回せるだけの面積ではない。コンビニは今後、レジの無人化や万引き防止策など対策は進んでいくだろうが、それでも最低要員は必要になる。スタッフのリクルートはどんどん厳しくなる。

先述したが、小売業のFCはオーナーが「収入を得るための仕事」だけでなく「小売」が好きなことや「取引先の商品」が好きでなければ続かない。うまく流れれば問題は浮上しないが、数字が想定より下回ると、「不満」「不安」が大きくなりそうだ。

もう完全になくてはならなくなったコンビニは、商品ラインナップや改善ポイントは見えてきていて、省人化などのシステムも進んでいくだろう。ただ多発するFC企業(フランチャイザー)対FCオーナーの課題も改善していかねば拡大方向に進んでいかない。各社の競合は烈火するが、コンビニ事業はインフラとして今後も必ず残っていく業態だと思う。逆に衣料品中心のFCは商品回転率も悪く、品揃えも標準化しにくいのではないか?ワークマンのような業態はFC店舗と併せて直営展開を考えていかねば成長は厳しいのではないだろうか?特に「実用」から「ファッション」に変化すると間違いなく無理だ。

くどいが、FCのオーナーは本当にその商売や商品が好きでなければ続かないと思う。

■今日のBGM

メーカー機能はどうなっていくのか

ネットで上場アパレル12社の上期決算がまとめられていた。(ユニクロと無印は決算期の兼ね合いで本決算だった。)ユニクロ、しまむら、無印、アダストリア、ワールド、オンワード、TSI、UA、ワークマン、三陽商会、バロック、Tベースの12社だ。数字についてはいろいろあるが、それよりこのくくりで一緒にできるんだというのが感想だった。感覚的にはワールド、オンワード、三陽商会、TSIはメーカーのイメージが強い。ただ直営展開も増えていて、小売りのイメージも大きくなってきてはいる。

40年以上前小売業に入社した時は、オンワード、三陽商会はメーカーで主な販路は百貨店だった。ワールドは専門店卸のイメージが強くそこから大きくなっていった。それがDCブームから自主の店を持つようになって、小売業の規模が増えていき、SCの拡大に併せてさらに形を変えてきている。ワールドの決算説明書を見ると、卸事業はプラットホーム事業に含まれているように見える。その事業の売上構成比は25%で、おそらく直営事業を指すブランド事業の構成比65%を大きく下回る。

小売業が利益率を上げていくには、当然仕入原価を下げる必要がある。その流れで当然上場企業は、商品を自らの手で作り始める。海外工場を作ったり、提携したりしてコスト(商品原価)を削減していく。そこまでいかなくても、ある一定の規模になればメーカーと組んでロットを大きくして原価を下げていく。所謂OEMと呼ばれる手法で商品を作り始める。メーカーの展示会で商品を発注するのは、多く発注できない個店や小規模企業になる。発注が小ロットになれば当然仕入原価は高い。世間の流れと同様に、小売業の購買客の流れは2極化しており、一般的には値頃感を求める客層が増えてきている。そのゾーンの競合は厳しくお客様の値段に対する要求もどんどん厳しくなっている。仕入原価が高いと当然売価も下げにくい。

中小規模小売店の商品の調達は、問屋やメーカーになる。小ロットでの発注では、メーカーリスクになるケースが多くなる。ある程度の量を作ることで当然コストは下がるが、発注量が少ない状況で商品を作ると、リスクはメーカーが持つことになる。もし受注が付かなければ、商品を作っても原価をさらにダウンさせて販売することにもなる。そしてある程度の売上の読みを持って、受注なしで先行して作成していく商品も多い。

小売業の現状を考えると、メーカーの商品リスクはどんどん上がっているように感じる。さらに中小小売業の経営状況も悪化している。大企業は自前で商品を作る。この状況でメーカーは商品を作り続けていけるのだろうか?この記事にあった上場アパレル12社のメーカーからの仕入は減っているだろうし、メーカーだった企業も直営事業に重きを置いているように見える。卸中心の大手名古屋のクロスプラスの決算説明書を見ても直営小売分野の売上が全体の20%まで上がってきている。

社会環境を見ると、どんどん値段合戦になっているように見える。そうなると、商品調達先のメーカーへの要求がどんどん厳しくなってくる。中小小売店が厳しくなっていく環境下で、メーカーの今後の商品戦略が難しくなってくるのは間違いない。

■今日のBGM

小売業を冷静に分析できなくなっている

私用で大阪に行って来た。毎回行くたびに思うのだが、どんどん観光客の数が増えているように感じる。東京近郊にも観光客は多いのだが、大阪は京都が近く、観光スポットが限られているせいか、なぜか多く感じる。特に東南アジア系が多い気がする。通天閣近辺は日本人のほうが間違いなく少ない。どぎつく、はでなサインが喜ばれているのだろうか?

インバウンドの数字を調べると、平成23年度は売上が5.3兆円で1人当たり21.3万円の消費となっている。そのうち買い物は1.4兆となっており、消費の比率は34.7%から26.4%に落ちてきている。さらに24年は1~9月ですでに5.8兆円超ですでに前年を上回っている。ただここでも買物ウエイトは下がってきているようだ。観光客の「モノ消費」から「コト消費」へ移行が顕著になってきている。

「モノ消費」の中心の百貨店の売上はコロナ前くらいまで盛り返してきているようだ。明確な数字は未発表だが、新宿伊勢丹の免税売上は1000億超とのことだ。西の雄、梅田阪急は今年1~7月で559億と発表されている。大阪ミナミに集まる外国客のニーズをうまく引き受けているのが心斎橋大丸で、今期の全館売上予測を1000億超としており、インバウンド売上は45%にも達するようだ。(本当に心斎橋筋は日本人のほうが少ないのでは?)

景気のいい話を書いたが、百貨店の売上のうち国内需要のシェアは87.4%まで落ち込んでいるとも発表している。そしてインバウンド需要は大都市に限られている。百貨店以外の大手小売業ではセブンアイホールディングスが上期中間決算で純利益34.9%減と発表されているし、イオンも中間決算で純利益76.5%減でGMSは82億の赤字と発表している。堅調なイズミも上期は経常損益21.9%減となっている。

他の小売業の状況を見るとユニクロは2024年8月期決算で国内売上前年比104.7%営業利益132.2%、アダストリアは2025年上期既存売上前年比103.4%、営業利益前年比100.9%、無印も2024年8月期決算で既存店売上前年比112,8%、営業利益前年比169.4%と伸長している。ニトリ、しまむら、西松屋も2025年上期は既存店で売上、経常利益とも前年をクリアしており比較的好調な数字を発表している。

数字を見ていると、都市部の百貨店を除く大型商業施設の流れはあまり良くなく、比較的値段志向の専門店の流れは悪くない。インバウンドで潤っているのは大都市の百貨店で、国内での需要は値段志向になっているように見える。インバウンドの需要が「モノ」から「コト」へ変わってくると、小売業界は大変な時期になっていくようにも見える。円安の追い風でインバウンド客が増えているのであれば、また円が強くなったらそのプラス分が消えてしまうが、逆に日本自体の景気が上向いていくのだろうか?その要素はないようにも思えるが・・・外国人のための街のような大阪ミナミを見て、今後どうなっていくのかますます読めなくなってきた。

しかし、契約残年数が少ないからだとは思うが、一等地になった「なんばマルイ」はやる気は見えず、もったいない。

■今日のBGM

中小小売業の人件費

連日報道される「103万の壁」のニュースで、中小小売業は耐えられるのかと感じてしまう。その少し前には「時給1500円」のニュースも多く報道されていた。

中小小売業で収益を改善することはまず絶対条件として「売上を上げること」になる。自店でヒット商品が生まれたり、取扱ブランドが脚光を浴びたりして売上が上がる。ただその売上を維持するのは非常に難しい。特にファッションは長くは続かない。「利益を上げる」にはある程度の商品量が必要で規模が拡大しないと、なかなか仕入原価が下がらない。さらに規模を拡大するには当然店舗数も必要になり、投資を続けていかねばならない。そして最終的には「販売スタッフ」の質と人数のアップが不可欠になる。

立ち上げた会社でのラフな損益計算書を見ると、最も黒字が出た年度には人件費率が18%だったのが、コロナ期には34%になり大きく赤字を計上している。黒字期においても地代(家賃、駐車場費、共益費)の負担率よりも人件費が高くなっている。当然小売業は労働集約型で人件費の占める割合が非常に高い。

今回の「103万の壁」だが会社に損益上ダメージが大きいのは「106万の壁」がなくなる事だと思う。2024年10月から従業員50名以上の会社が対象になっている。以前の会社は約100名の従業員数だったので該当する。例えば時給1000円で月18日、日6時間働くとそのボーダーラインになる。今までは「130万の壁」が大きかったのだが今後は「106万の壁」になる。国は2020年代に時給1500円にすると言っている。と、するとボーダーラインだった人はどう働くか?時間を短くするか、壁を超えるか?今後配偶者特別控除の「150万の壁」をどうするかも考えなければならない。

それと同時に大きな負担が増えるのは企業にも当てはまってくる。個人の負担額を折半して会社が支払う義務が生じてくる。106万の人がそのまま働いたとして、健康保険+厚生年金+(介護保険)で折半分年間160千弱の会社負担が生じる。当然国の政策により時給は上がる。さらに年間130万働くと200千の負担額になる。以前の会社でも10名くらいはこのラインのアルバイトがいたので年間2000千以上の経費負担増になる。当然他のスタッフの月給や時給も上がるので人件費負担額はどんどん膨れる。時給アップと社会保険負担増で以前の会社だと、単純に2店舗分以上の人件費増になる。

中小小売業が、この人件費増とどう戦っていくのか?円安は続き海外生産のコストは上がり、出店条件も厳しくなる。小売業で販売力を落とすことはできない。力のある企業に飲まれるしかないのだろうか?

■今日のBGM

商売の寿命

小売業界でいろんな会社を見てきたし、在籍してきた。さらに立ち上げた。そしていろんな会社の浮沈を見てきた。

商売の成功をどう計るかはわからない。儲けは少なくても長く続く商売は成功とするのかもしれない。ただ商売は、商品の変化や、顧客の変化、商売している場所の変化でも情勢が変わってくる。

まず、客層の幅を狭めた商売は長く続いていない。在籍していた商業施設のビブレやマルイはヤングターゲットで商売をしていた。ヤング層のブランドもそうだが、流れが短サイクルで変化する。DC(デザイナー&キャラクター)ブランドで集客して、その後109ブランドに移っていったヤング層のトレンドの変化に、売場は追いつけなかった。さらにそのターゲットの会社も浮き沈みが目まぐるしかった。それでもマルイはクレジット商売が実を結び、現在は小売より金融系の会社になっている。その当時のブランドを生み出していた会社も浮かんでは消えていった。つまり、流れが速いヤングターゲットの商売は続きにくく、寿命は短い。例外としては、当時の固定客の年代層と共に年を取って存在するブランドは続いている。販売の場所も百貨店、路面店に移っている。堅く商売はしているが規模はずいぶん小さくなっている。ただすでにヤングターゲットではない。

小売業で堅調に生き残っているのは、ヤングミセスからミセスゾーンが得意な大手アパレルなのかもしれない。ヤングが賑わったときはそれなりにそのターゲットのブランドを開発し、SCが全盛になってからもショップを立ち上げた。各社に共通するところは各年代のたくさんのブランドを持っていることだと思う。それと同様の流れになってきている企業は、ティーンズヤングからヤングミセスゾーンまで幅広くショップを持っているアダストリアやパルグループがあげられる。各ターゲットのそれぞれのシーンに対応するショップも開発している。

広い客層をもってシェアを確保していっている企業も成功パターンかもしれない。昔からよく言われる「高感度値頃」を追求している企業で、衣料系ではユニクロ、住関連ではニトリ、複合的には無印良品などがあげられる。現状はフルターゲットに適合しており、特に低価格ゾーンをボリュームとしているが、今後の社会情勢で若干の変動要素もある。

商品のカテゴリーの専門店は以前にブログで記したように、そのカテゴリーの大きさとカテゴリーの動向を慎重に図る必要がある。そしてそのシェア率を常に意識するべきだ。今回のジーンズカジュアル業界の崩壊のような例もある。カテゴリーの大きさとシェアで寿命が見えてくる。

地元に根付いた専門店は、常に商品のトレンド変化や、商圏変化、客層変化を気にする必要がある。こういった専門店は突出した人物がマネジメントしているケースが多い。その意志がどれだけ引き継がれるか、熱意がどれだけ続くかがポイントになる。

企業の存続は、どうやって前に進みながら進化させていけるかということだと思うが、近年は、感性よりも組織力、データ処理などのシステム力とその分析力のほうが商売の寿命に大きな影響を与えるのではないかと思ってしまう。

まだまだ、過去の慣例や感情で方向性を決めている企業が多そうだが・・・

■今日のBGM

モール(RSC)になくなってきた「わざわざ感」あるテナント

「客層が2極化し、中間層が減っている」と常々書いている。20年位前から郊外モール(RSC)がどんどん建設され、GMSにとって代わってSCの中心になっていった。RSCとは当然広域からの集客を狙って、車で行ける「手の届きやすい贅沢な場所」だったのが、近年の開発ラッシュで「わざわざ感」がなくなり、狭商圏化され、まさにGMSが大きくなっただけの商業施設になってしまっている。大都市郊外では完全にオーバーストア化しており、なくなってしまったGMSと同じ道をたどっているように見える。テナント揃えも「ユニクロ」「GU」「無印」「ABCマート」などの同じようなラインナップになってきた。

本来、RSCにはどんな客層が来てほしかったのだろうか。業態のフォーマットを見ると価格はアッパー、モデレートで、商品の特色はトレンドとホット商品と区分されている。

多少、各ブランドのニュアンスは違うが、RSCから減りつつあるテナントがいくつかある。

ユニクロがやっている「プラステ」というショップは、以前からずっと気にしていて、自分の店の出店時にはSCに「あればいいな」と思っていた。いろんなSCを見て回るときもあるかないかチェックしていた。客層も商品も売り方もきちんと徹底されており、晩期にもそこまでセールを打ち出さないし、引っ張らなかった。近年、RSC特にイオン系から消えてきている。店舗数は現在43店舗で2020年に102店舗から大幅に減っている。イオン系は6店舗、ららぽーとは2店舗となっている。このターゲット客層は広いので、おそらく一番難しくなってきたゾーンなのかもしれない。

「ナチュラルビューティベーシック」(以下NBB)もRSCスタート時はほぼ全店のラインナップにあったショップだ。RSCがスタート当初から旧サンエーインターナショナルでは「&バイPD」と並んでラインナップしたかったブランドで、ほぼ一等地にレイアウトされていた。販売代行をしていた時、このブランドを2店舗運営していた。現在もイオン系12店舗、ららぽーと5店舗あるが、駅ビル型にシフトしているように感じる。ターゲット客層も当時はヤングかヤングミセスか見えにくかったが、現状は20~30代に変化しており、若返っているように感じる。

この2店舗はRSCへの出店はストップしているようにも感じられる。さらにRSCのテナントの中ではトレンドにシフトしているセレクト系のショップも、間違いなく出店するSCを選んでいる。

トレンドリーダーやSCイメージを持ち上げるようなショップがどんどん消えていき、本来あるべきショップリーシングをしているRSCは本当に少なくなってきている。当然経費高騰で賃料も大きく下げられなくなってくると、多くのSCは似たようなゾーニングになってくる。さらにキーテナント(イオンモールでいうとGMSのイオン)もSM以外は集客の要にはなっておらず、どんどん魅力が薄れてきている。

本当に、そのSCのカギを握るテナントがなくなってきているように感じる。

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時給1500円にできない企業は退出する!払えない企業はダメ!

サントリーの新浪社長の言葉が、ずっとひっかかっている。10月18日経済同友会の記者発表で話した言葉だ。もう会社を経営していないので、全く関係ない立場だが、乱暴な発言だと思う。どういう意図があったのだろうか。奮起を促したのだろうか?中小企業は不要なのだろうか?このブログでも、この時給政策については書いてきた。

2020年代の時給1500円は理論的にも無理だと経済評論家も言っているし、単純に今後の毎年の必要賃上げ率を考えても難しい。さらに会社数の99%を占め、労働者数70%を占める中小企業の約半数が下請企業の現状を考えれば、この発言の突き放し方は厳しい。当然、仕組みをお互いに考え、それが可能な社会にしようという気持ちだろうが、きつい言葉に聞こえる。さらに、時給1500円払えない会社の従業員は、時給1500円以上の企業に移ればいいと言っているが、そのハードルは高くないだろうか。努力して勉強し、語学も堪能な新浪氏のような人間ばかりではない。

先日、ワイドショーでどうやったら時給が上げられるかという質問があった。経済評論家はシステム投資をして省力化を図るべきだというようなことを言っていた。国が投資を手伝ってくれるのか?省力化で削減されたスタッフは他の企業に移れるのか?ただその評論家も2020年代時給1500円は不可能との見解を持っていた。

優秀な新浪氏はサントリーに移る前は、ローソンの社長だった。少しコンビニについて調べてみた。コンビニは周知のとおり、直営店は少なく、FCのオーナーが運営している。所謂中小企業の運営となっている。

ローソンのFCにはいくつかのパターンがあるが一般的な条件で計算してみた。年間フランチャイジー収入は最低1860万(月度155万)となっている。本部にチャージする金額が荒利300万以下は45%、300~450万は70%、450万超は60%となっている。具体的な数字にすると、ローソンの一般的売上日販は55万(ずいぶん上がった・・)で、月度は1650万となる。2023年売上総利益率は31.5%と決算で発表しているので、平均的な店の総利益額は約520万になる。上記の本部にチャージする額を計算すると282万になる。つまり粗利益520万―チャージ料282万=238万が収入と考えられる。経費は電気代のみ折半で他の事務経費はFC負担となっている。大きな経費の人件費だがまずコンビニの従業員数は平均で15名くらいのようだ。令和元年の経産省のコンビニアンケ―ト調査のデータを見て、簡単に分析すると平均で1人当たり勤務は週3.5日、1日5時間くらいとなる。そうすると月間約70時間の労働となる。時給1000円で13人が70時間働くと91万円となり、残り2人をオーナー夫妻と想定すれば147万のオーナー収入となる。ただし電気代の折半分やその他の経費を考えると夫婦で120万くらいの収入が見えてくる。(いろんな雑用などを考えてそれが納得できる金額かどうかはわからない。)あくまでも私自身の想定であって、現実はもっと高収入なのかもしれない。

さて、最低賃金が時給1500円になったとして、売上や利益が変わらなければ、スタッフの人件費は137万になり、オーナー夫婦の収入は80万前後になってくる。当然時給が上がれば、社保加入者も増えてくるし、ベテラン従業員は当然1500円以上の時給になるので、それ以上の人件費は必要になり、オーナーの収入はさらに減っていく。

インフレで商環境は当然変化するだろうが、苦しくなるのは間違いない。新浪氏の発言内容では、コンビニのFCの企業は退出することになる。ローソンは、天下の三菱商事の子会社なので、存続に問題はないのだろうか?

中小企業には、数字や、仕組み、システムだけではなかなかクリアできない問題が多い。一度、新浪氏もどこかのローソンのFCのオーナーをやってみてほしい。

■今日のBGM

ちょっと記憶に残る売り場

先月営業終了した、福岡のマリノアシティで撤去作業中の写真が送付されてきた。昔立ち上げた会社での2号店で、懐かしい写真が多かった。その写真の中にレジバックにディスプレイした、簡単に作ったアルバムジャケットを集めたものがあった。

店の内装を考える時、少しでもインパクトが必要だと思っている。やっていた店はどちらかというとボリュームプライス志向の店で、プレステージの高い店のように内装コストもかけられない状況でもあった。床はフローリングもできないし、照明も埋め込めない。比較的固定什器を多くしたが、基本稼働什器(すぐ動かせる)中心での内装になってしまう。でも売場をチープに見せたくないのでイメージを作ろうと思っていた。1号店からそう考えていて、店のイメージを音楽で表現していった。在任中はすべての店で音楽のテーマを見せていた。レジバックにはテーマに沿ったアルバムジャケットを集め、流せる余裕のある店はモニターでDVDを流していた。(当然JASRACに使用料は支払っていた。)

商品のインパクトが強い店は、そのインパクトを店づくりでも表現する。それがグレード感だったり、商品のテーマだったりして、商品に合わせて店もデザインする。当然そういう居心地のいい空間にはコストもかかる。逆に商品もボリュームゾーンでいろんなターゲット、客層の店は、画一的なイメージで売場を変えやすくするために可動式の什器が多くなる。当然コストも抑えなければならない。さらにチェーン店にしないと商品原価も抑えられないので、当然多店舗化を目指す。そうなると同一内装でイメージも同一化させる。内装を同一化させることで什器も統一でき、什器も作りこみすることで内装コストも下げていける。内装コストは出店経費で一番大きい。

立ち上げた会社のビジネスモデルを考えた時、まずは軌道に乗せること、その後は60店舗くらいまで広げることを念頭に置いた。そこまでの規模なら、エリアに多店舗出ることはないので、内装はローコストで少しインパクトあるものにしたいと思っていた。結果的にそれが正しかったのかどうかはわからないが、各エリアで面白い内装で店舗イメージが作れたとは思っている。ただ店舗数が増えるにしたがって、その意図が店長レベルまで伝わっていかなったことは反省材料ではあった。

各店でアルバムのジャケットを見てくれたり、DVDやBGMを聞いて、感想を言ったり質問を投げかけられたりすることが多かったようだ。スタッフも好きなジャンルの音楽でなければ当然興味はない。ただ、お客様には少なからずインパクトは与えられたように思う。

面白いエピソードがある。岐阜県の店でDVDやアルバムジャケットを見ていたお客様が、店のスタッフに例によって質問した後、「名古屋の店はシカゴ(アメリカのロックバンド)だったね。」と言って帰っていったらしい。

ちょっと記憶に残る売場ではあったようだ。

■今日のBGM

ジーンズカジュアル業界

小売業の数字を毎月見ていて、気になるのは「ライトオン」や「マックハウス」というようなジーンズを核としたカジュアルショップの数字の低迷だ。もともとはジーンズカジュアルを中心に販売してきたが、近年はレディスやキッズに幅を広げており、呼称としてジーンズカジュアル業界が正しいのかどうかわからない。

上記上場2社の数字だが、ライトオンは8月決算期で売上は389億前後、前年比82.8%、既存前年比87.0%、マックハウスは8月上期で売上前年比80.6%、既存前年比91.8%、第一四半期の予測では通期売上135億、前年比は87.6%と発表している。ちなみに公表売上のピークがライトオンは2007年度1067億、マックハウス2009年567億となっている。ともにピーク期の40%に届いていない。当期の営業利益予測もライトオン-24億(第3四半期時点の会社予測)、マックハウス-8.9億(第一四半期での会社予測)となっており、現状の数字状況から見ると、さらに赤字幅は広がっていくと思われる。ライトオンは2019年から、マックハウスは2018年から、コロナの影響もあり営業赤字は続いている。

数字を見て気になっているので、SCに行くときは必ず売場は見ている。ライトオンはあまり動きがなく、積極的な商売をしてないような気がする。先週見た時も、売場は、ほぼ秋の体制になっていて、残暑厳しい中、なかなかお客様を呼び込めないような状況だった。前回ライトオンについてのブログコメントで、利益のダウンが大きかったので、大幅な在庫処理をしたと書いたのだが、その商品はどこで売っているのだろうか?8月、9月と完全に「売り」の体制は見えない。会社として何かあるのかもしれない。マックハウスはしばらく見てないが以前見た時は、メンズ、ジーンズの見え方を弱めて、提携したワールドのハッシュアッシュの打ち出しを強めていた。カジュアルショップへの移行を早めたいように感じた。

もうジーンズカジュアルは1つのカテゴリーではなく、カジュアルウェアに飲み込まれている。ユニクロやGUで、機能的で買いやすい値段のジーンズが、カジュアルアイテムの1つとして完全に浸透している。アメカジブームやインポートデニムブームなどを経て従来のコア客層は、よりマスから離れていっている。少しこだわりを持つ客層が「Bshop」系のセレクト店に流れているような状況だと思う。

ライトオンやマックハウスの失敗は何か?同一業態を拡大し続けたことにあるかもしれない。パルもアダストリアも、もとはジーンズカジュアルの店でスタートしている。その将来性をどう読むかだが、スタート段階で客層の幅を広げていくべきだった。客層の幅に応じてジーンズ以外の提案もすべきだった。さらにライトオンはイオンモールとともに拡大し、売場も大きくなり、売場の焦点がぼやけてきた。ジーンズの特性だけでは競争が激しいカジュアル路線では戦えなかった。今はその売り場の大きさが一番のネックになっている。マックハウスは、逆にイオンモールに乗らなかったことが拡大できなかった大きな要因だと思う。

今の流れを引き戻すのは非常に厳しい。マックハウスは親会社がチヨダであり、まだ延命方法は十分考えられる。(チヨダもイオンモールに乗らなかったのでABCマートと大きく差がついたが・・・)ライトオンの今期の10月の決算発表には注目したいが、自力以外での再生する方法も模索する必要がありそうな気がする。もうしているか・・・

■今日のBGM

セルフレジの功罪

近隣のSMはどんどんセルフレジに変わっている。よく使っているヤオコーとイオンに限定して推測でのレジ台数だが、曜日によって変化はあるが、平日だとヤオコーは有人レジ5台前後、セルフレジ20台前後の体制、イオンモール内のイオンは有人レジが10台前後、セルフレジ、レジゴー各20台前後の体制のようだ。近隣その他のSMもセルフレジへの移行を進めている。SMはレジ対応にかかる人件費は非常に大きく、セルフレジへの移行は急ピッチになっている。個人的にはイオンではレジゴーで対応しており、スムーズにレジ対応が終わるのと、買い物金額がわかるので便利に使っている。ネットでレジゴーの記事を読んだが、ある程度万引き防止のシステムはあり、さらに子供たちが楽しんでやっているらしく客単価も下がっていないらしい。ちなみにその他の業種でもユニクロ、GU、ダイソーなどがセルフレジをスタートさせている。

ここからはあくまでも私感で書く。SMでは短時間労働者への待遇改善(時給、社保など)による負担が大きくなり、人件費問題は非常に大きいと思う。気になるのは、セルフレジ化により人員を削減しただけでなく、その人員分をどう売場に反映させているのかということだ。SMへの買い物は午前中行くことが多いが、店によって品揃えの充実度が全く違う。特に生鮮品やデイリー食品などの必要な商品の品揃えに差が大きい。つまり、人を減らして経費調整がわかる店と、レジ要員を減らして売場対応を強化している店の差が非常に大きいように感じられる。当然後者のほうが好感度は高いが・・・

結局、経費削減だけでは、効果は短期間になってしまい、逆に従来の営業面にはあまり効果がでてこない。結果として、次年度はさらに何だかの経費削減していかねばならない状況が続く。その経費削減効果を次のステップのプラスに持っていけるかどうかが課題になるのではないかと思う。上記した午前中の品揃えができていないSMが、そのプラス要因で、生鮮売場やデイリー食品が充実したらお客様の信頼感は増す。次につながる。個店でいうと、厳しい店が賃料を下げてもらっても、その削減分は改善するが、削減分をプラスに転じさせなければ、結局は続かないのと同様のことになる。そのプラス要因で他のマイナスポイントを改善していくこと、さらにプラスになる何かを見つけることが大事だと思う。

本当によく言われることだけど、経費を削減して利益が出るのは一過性のことで、そのメリットを生かしながら、営業面でプラスになる戦略を考えていくことが重要なことだ。経費はマイナスすれば0以下にはならない。営業のプラスはずっと青天井かもしれない。

余談だが、先日食品を買いに行く途中にホームセンターに立ち寄った。欲しい商品の形状がわからず困っていて、担当の従業員を呼んでもらった。サイズが明確でなかったので買えなかったが、その女性従業員の素晴らしい笑顔と対応で、あまり利用していないホームセンターだったが「また行こう。」という気になった。

無人化もいいけど「人の力」もまだまだ大きい。

■今日のBGM

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