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無印良品についてちょっと考えてみた

前々回に、好調専門店の動きについて書いた。特に出店立地について「無印」と「ユニクロ」は必ずしも大型モールに優先的に出店せず、会社の方向性を考えて動いているのではないかと書いた。その時少し気になったことがある。

2024年度の「無印」の決算は売上前年比113.8%、営業総利益率50.8%(前年差+4.7%)と営業数値を大きく改善させ増収増益となっている。ただ商品回転率は2.27回転と低く、前年回転率を―0.09回転下回っている。「無印」は、こんなに回転率は低かったのかと少し驚いた。

常々、小売業は「在庫」が商売の一番のポイントだと言っている。営業面では「売上」「利益」「在庫」が抑えるべき3本柱になる。原価率を下げれば(単純に売価を上げることもできる)必然的に「利益」率は上げることはできるし、売れている商品の値段を下げて量販すれば「売上」は上がる。「在庫」が多ければ、売場が変わらないし、動けない。そのバランスが商売のポイントで、一般的な会社は在庫が多いと、商品を仕入れる金がショートしてしまう。つまり売れる商品を仕入れられない。

「無印」の商品回転率2.27という数字について少し説明する。年間に商品が入れ替わる回数が2回強ということで、平均として商品は半年たてば売れてなくなるということになる。衣料関係でいえば夏物は4月に入荷してなくなるのは10月になり、冬物は10月に入荷すれば4月になくなるということになる。これでは、いつまでも季節外れの商品が残っている。季節商材は四季があるので、簡単にいえば年4回転は必要になる。2回転では売場に鮮度が出ない。さらに「無印」は自社商品が多いので必ずしも当てはまらないが、一般的に外部取引先への支払いは、遅くても入荷して3か月後にはなる。つまり6か月後に売れる状態なら、売れる前に支払いが発生する。キャッシュフローに影響が大きい。回転率2.27という数字は、中小小売業では危機的な数字になる。

少し「無印」の決算をさかのぼってみた。コロナ前の2018年決算では売上は2024年比で57.2%しかないが在庫は51.2%で、回転率は2.56と2024年+0.29となっている。ちなみに利益率は50.4%で-0.4%となっている。2010年までさかのぼると売上は2024年比24.7%しかないが回転率は5.88回転と2024年と比べると+3.61回転と非常に高い。在庫高でいうと10.6%しかない。利益率は2024年比―5.3%となっている。つまり全く違う決算内容になっていることがわかる。15年前の「無印」とは全くMDが変わったということだろう。ここまで利益率が改善できて在庫回転率が悪化した理由は何だろうか?

いろいろ考えてみたが、利益率が高くて、在庫を寝かしておいても値崩れしない商品を増やしたのだろうとしか思いつかない。インテリアやハウジング関連は増えているがその影響を考えると、「ニトリ」の2024年度の商品回転率は4.1回転でそこまで悪化要因にはならない数字だ。その他広がった商材を見ると、レトルト商材やグロッサリー商材、さらにスキンケアなどの化粧関連などがある。レトルト商材は賞味期限を考えると在庫回転率は低くても問題ないし、好評で売れている。化粧関連だが、専業で上場企業の「ハウスオブローゼ」の2024年決算での商品回転率は2.2回転と低い。ただこのゾーンの利益率は高く同社の売上総利益率は71.0%となっている。

「無印」の売場の変化を見ても分かるが、レトルト中心のオリジナルの食品とスキンケアなどの化粧関連の拡大で売上を拡大させ、利益率を改善させている。ただ両品種は回転率が低いため全体の在庫増になっていると予測できる。

「無印」は独自に出店を続けており、600坪型の路面店や、SM隣接型など生活に密着した立地への出店を続けている。3月橿原イオンモールの別棟に8200㎡(約2500坪)の大規模出店も発表された。規模が大きくなればなるほど、商品を増やさなければならず、効率がアップするとは思えない。つまり厳しい商品も出てくる。昔の規模が小さいときには回転率が高かったように、大きくなると当然効率も悪化する。規模を拡大するのなら、一度に大きくするにはリスクがある。これ以上商品アイテムを増やすと回転率はさらに悪化し、商品の鮮度感がなくなっていく。自社リスクでやるのではなく、相乗効果ある業態を持つ会社と組んでいったほうが望ましいとは思う。

3年後くらいに、どういう数字になっているか興味を持ってみていきたい。

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好調続ける専門店とその変化

昨年12月の各社数値が発表されている。全体的にはまずまずの数字で量販期を乗り切っている。引き続き各社好不調ははっきりしているが、カテゴリーは違うが「ユニクロ」「無印良品」(以下無印)、「ABCマート」(以下ABC)「ユナイテッドアローズ」(以下UA)が常に安定して大きく伸ばしてきている。その中でも「ユニクロ」と「無印」は少しずつ立ち位置が変わってきているように感じる。

セレクト業態の「UA」を除くと、ここ20年の流れに乗って郊外大型モール(RSC)に出店を重ね、その成長と共に大きく数字を伸ばしてきた。「UA」もRSCへの業態も作り、環境が合いそうなSCへは参入している。ただ近年「ユニクロ」と「無印」は出店についての動きが変わってきているように見える。

最も変化が見られるのは「無印」で、出店場所は全くRSCにはこだわらなくなってきている。昨年11月の出店は14店舗で大型RSCと思える出店は0、10月の出店は5店舗で同じく0、9月の出店は9店舗で同じく0と、CSCやNSCには出店はあるがRSCには出店していない。逆に路面店への出店も多い。展開アイテムも多く日用雑貨の観点で600坪前後の路面店も含めて出店を進めているようだ。

「ユニクロ」の出退店の国内データを見ると、2023年8月度決算では出店34、退店43、2024年8月度決算では出店37、退店40、今年度は4か月で出店15、退店10となっている。国内ユニクロ事業は全体の売上の30%に過ぎず、現状の800店舗近い店を飽和状況とみているのかもしれない。店舗の増床含めた場所移動は多く見られる。

「ユニクロ」「無印」ともに、モールでのテナントゾーニングによる出店環境や、他テナントとの相乗効果をあまり意識しないようになっている。つまり他店舗からのプラス効果より自社独自での立ち位置を優先しているように見える。当然大きな集客要素を持つRSCに関しては前向きに取り組んではいる。ただ、モールとの契約では高くなりがちな賃料(それでも低歩率)、基準面積より小さな区画提案、短い契約年数などがあり、それ以上の好条件の場所へ出店するメリットを十分意識し始めているようだ。現実にRSCの大型物件から退店して、近隣に出店する「ユニクロ」は多数ある。そういう意味で、出店条件のハードルが低いCSCやNSCへの出店や、契約年数をあまり意識せず「根を張る」商売をしていける路面大型店への取り組みが増えていっている。

モール側のテナントリーシングとしては、メインフロアにできるだけプレステージの高いテナントを出店させたい。そして上層フロアの核に集客要素の高い大型店を誘致したいと考える。つまり低層階にモデレートな大きい売場をリーシングすると上層階へのリーシングに苦しむ。さらにSCのグレード感を出しづらい。そして現状、それを許容していることがRSCの不振の原因にもなっている。さらにRSCの出店過多もあり、テナント側もよりいい立地への出店を望むようになっている。そういう環境下での好調2社の動きがある。

「ユニクロ」「無印」の決算数字を見ると、海外事業の数字が大きく、さらに数字の計上方法の変化もありそうで一概には判断できないが、大型化によって在庫回転率は低くなっている。特に「無印」は業種が混在しているせいか、年間2.1回転位の数字で、「利益率に走っている」感はある。ただ会社の、「根を張る商売」への方向性は明確になっている。

上記した好調4社はSCの集客を担う上で、重要なテナントになる。「ABC」も売り場拡大を続けており、以前経営していた会社のショップも「ABC」拡大のあおりで店舗移動の依頼を受け、好調店だったが退店した経緯もある(おそらくデベロッパーは賃料ダウンになったと思うが・・・)。「UA」も主戦場は違うが、RSCでの売り上げも小さくはない。「UA」でのミッドトレンドマーケット(グリーンレーベルなど)の2024年の売上構成比は、単体売上高の28%と大きな数字になっている。

この好調小売各社の出店動向は、今後の大型モール(RSC)の流れに大きな影響を及ぼすと思う。

■今日のBGM

今年は、冷静に立ち位置を分析する

今の流れを見ていると、間違いなく、体力のない専門店は淘汰される。路面店の飲食店がどんどんなくなっていくように、資金力がなくなってきた小型店は厳しい流れになる。最低賃金の上昇と社会保険「壁」の撤廃など逆風が強すぎる。金利も上昇しそうな流れだし、当然銀行の融資の壁も高くなる。商品の原価も円安の流れが続けば当然上昇するし、売価を抑えれば利益率は確保できない。逆に売価を上げれば、価格志向が強い現状では売れない。要員不足も待遇改善される大手へ流れるので、マイナス要素しかない。大手企業のアダストリアの年末に発表された第3四半期決算でも売上前年比は108.3%にもかかわらず、営業利益前年比は90.6%となっている。その要因として、円安による原価上昇や待遇改善による人件費増をあげている。つまり「人」「物」「金」すべてがアゲインストになってくる。

その流れで、間違いなくM&Aの活性化が起こる。去年の「タカキュー」、「ライトオン」や「マックハウス」を見るまでもなく、厳しい業態は3年先くらいを想定しても成り立っていかない。上場企業でもスーツ業態専業の会社や、ティーンズ系中心のアパレルは厳しい流れは続くと思う。非上場企業でも50~100店舗を運営する厳しいファッション店舗は数多くある。そういう店は近年出店数より退店数が増える傾向にあり、さらに不振店舗を減らして体制を整えていかねばならない状況にある。M&Aについては、当然負債の問題も大きいが、償却済みの店舗や、人員を引き継げれば、承継会社にはプラスの要素もある。最悪の事態をリスクヘッジする意味でもM&Aは間違いなく増えていく。

厳しい流れが予測される環境下だからこそ、「各小売専門店がすべきことは何か?」を冷静に分析する必要がある。その結果を持って、早急に修正をしていかねばならない。いろんな分析手法は、本やコンサル会社を通じて教示してもらえる。悪化傾向の会社はどうしても過去の成功例のインパクトに引っ張られて、現状を見失っていることが多い。自社の立ち位置を理解し、すべきことをジャッジする必要がある。

そして、今後の方向性の中で、専業を続けるか、複数の切り口を持つかを考えていくことが、今後企業継続での大きなポイントになるような気がする。専業とは、広義にはなるが「ユニクロ」や「ニトリ」などほぼ単一業態で経営していることを指す。逆に「アダストリア」や「パル」は複数の切り口をもちグループを形成している企業ととらえてもらいたい。

専業ならば市場の大きさとトレンドを理解し、現状のポジショニングを明確にする必要がある。現状のターゲット客層の動向や、その市場の大きさ、その中のシェアを考えれば、拡大するか縮小するかなど、企業としての方向性は明確になる。

市場規模や企業規模を考えれば、現状の市場で拡大するだけでなく、他の切り口を考えることも必要になる。現状の市場が頭打ちなら、当然企業を維持成長させる方法として、他業種への取り組みも必要になる。中小企業では難しいかもしれないが、中小企業でなければ気が付かない市場もある。大手が手を付けにくい市場もきっとある。以前立ち上げた会社はそういう市場に向けて立ち上げた。どうしても厳しくなると、現状の事業をマイナス志向で分析してしまう。今のターゲットを細分化すればプラスに転じる市場はたくさんありそうな気がする。

こういう時期だからこそ、企業としての立ち位置を冷静に分析し、向かうべき方向を明確にすることが必要だと思う。そしてそれを社内で徹底させるべきだ。

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セールが多くなり、セール期間が長くなった

いつの間にか冬のバーゲンは12月からになってしまった。まだ百貨店や駅ビルは1月スタートが多いが、郊外モールは12月スタートが普通になってきた。ただ昔のように一斉バーゲンのイメージはなく、「並んでまで行く」イメージはない。特にモールなどは日ごろからセールのオンパレードで「売場全品いつでもセール」の店もある。

数年前までバーゲンは7月、1月だった。それがいつの間にか前倒しされている。近年は11月に「ブラックフライデー」と称する大きなセールが現れ、ほとんど11月からセール状態になっている。

そもそも値段を下げる理由は何だろうか?季節感に基づく商品の入れ替えが大きな理由ではある。大きくは夏物と冬物の処理で、その処理によりキャッシュを貯めて、その金で、次のサイクルの商材を仕入れる。そのキャッシュを大きくするために大きな販促(バーゲン)を使う。

従来の商売は、夏であれば5月中旬から、冬であれば11月中旬くらいから季節商材や、動きの悪い商品の原価を下げてメーカーが出荷するようになる。その商品を買って7月、1月のバーゲン期まできちんと販売して、そこで利益を貯める。その後バーゲンで利益を考えながら値段を下げる商売に入る。特に12月はボーナスとクリスマスのギフト期が重なり、売上と利益を稼げる月だった。春夏商材は7月、8月に、秋冬商材は1月、2月になくして、その金で次節の秋冬物、春夏物を仕入れて利益を回復させていく。そんな商売サイクルだった。その商売サイクルも変わってしまったと言えるかもしれない。春夏秋冬の4シーズンではなくなり、春と秋が極端に短くなってきている。当然それにより、季節商材の売れ方も変わるし、社会催事にも変化が出る。

そして、その図式はテナントにも変化が出てきている。先述した「売場全品いつでもセール」の店は、単品メーカーの直営店が多く、それによって当然小売店に卸すより安く販売できる。それを直接売るときに割引訴求している。公取が定めた2重価格表示をうまく抜ける方法はいくらでもある。ユニクロなど大手もメーカーなどを通さず、自社で商品を作っている。そういう企業は、あくまでも小売店であり、メーカーではない。細かなMDのもと短サイクルで商品を作り、きちんとした値段を打ち出し、その演出計画もあり、陳列台帳もある。しかし短サイクルで商品を作っており、商品計画との差異が出た時は自社セールをして、バーゲン期に関係なく値段を下げてなくしていく。

デベロッパーは売上を上げたい。当然それにより賃料収入を増やしたい。さらに近年の郊外モールのテナントは、前述したように商品サイクルが早くなり、従来の四季による切り口だけではなくなっている。そうなるとどうしてもセール期が長くなる。そしてその流れに対応できる店が増えてきている現実がある。流れに対応できない商品のサイクルが長そうな業態(スーツ、ジーンズなど)は姿を消していっている。デベロッパーもその流れには逆らえず、個別セールを黙認している。モール型のSCの多くはそういう現状にある。逆に百貨店やファッション系のSCではまだセールを野放しにはしていない。ここに客層の差別化が出て2極化がさらに進んでいる。

昔よく言っていた「中間層」は、いなくなったのだろうか?

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ちょっと気になること

11月の小売上場各社の数字が発表されている。11月は気温が低下してやっと冬物が動き出し、各社とも前年を大きく上回る数字だったようだ。ユニクロは既存昨対112.2%、アダストリア108.9、無印119.2、UA116.2とほぼ全社大きく前年をクリアしてきている。

ここでちょっと気になったのはワールド傘下になったライトオンが既存昨対83.7%と大きく前年を割っていることだ。チェックした上場各社の中では当然ワーストの数字だ。同様にファンドにTOBされた同業態のマックハウスは100.9%となんとかクリアしている。ずっとライトオンについてはこのブログでも触れてきたし、ワールド傘下になったのだからもういいとは思っていたが、どうも解せないことがある。

このブログの6月25日に上期決算数字を概算して34億円分の商品価格を下げているのではないかと書いている。10月に発表した今期決算書で再度確認してみる。くれぐれも勝手に推測しての計算ということは最初に再度断りを入れておく。

若干狂いは出るが、売価還元法で計算する。前年の利益率は48.1%なので原価率を51.9%とすると、期首原価在庫が10479(百万)であれば売価在庫は20190となる。今期末の利益率は39.9%なので期末の原価在庫5111から逆算すると期末売価在庫は8504となる。今期の商品仕入高は17693でありこれを原価50%(甘い!)で仕入れたとすれば仕入売価は35386となる。単純に期首売価在庫+仕入売価-今期売上=期末売価在庫になり、ここに今期売上(売価)38808を挿入すると20190+35386―38808=16768となる。値段を動かさなければこの売価在庫になる。期末原価在庫から計算した売価在庫は8504なので、16768-8504=8286(百万)の金額分商品が減っている。商品を破棄してないなら、単純に考えると80億以上の在庫評価を下げていることになる。つまり売価を下げているということだ。決算期に商品評価損として特別損失1564(百万)の計上を発表しているが、それでは数字が合わないような気がする。

計算が違っていれば指摘していただきたいが、これだけの商品の価値を下げて、商品をどうしたのだろうか?160億円分の商品を半額処分にするのと同じことで、それでも売れないだろうか?その半額にした商品が半分売れたとして、売上40億くらいは底上げできる。前期の売上が380億だがその数字が入っての売上だろうか?ちなみに今年は2月に既存店売上前年比をクリアしているのみで、トータルの前年比は82.7%となっている。その在庫評価を落とした商品は売れていないのか?売れてこの数字なのか?それとも破棄したのか?経験上不良品以外の商品を破棄することはないのだが、80億円超の商品はどこに消えたのだろうか?それを現金にしていたなら資金繰りも変わってくる。一般的にはセールをしてキャッシュに変えて商品をなくしていくのだが、売場にその気配は全然なかった。

ワールドに譲渡されたのでどこかで大きなセールをするのかわからないが、これだけの金額を処理しても売上数字に変化がでてこないのを不思議に思う。年末年始でなくしていくのだろうか?

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FCでの小売業

セブンイレブンやローソンなどコンビニのことを書いていて、自分がそのFCのオーナー(フランチャイジー)になれるかどうか、そしてそのFCオーナーはどういう目的でFCをやっていくのかを考えてしまう。衣料関連ではワークマンもほとんどFCでの運営と聞く。

昔、DCブランド全盛時は、大都市には直営店、地方都市はFC店という図式があった。FC条件は各社力関係でバラバラだった。ほとんど、売場はFC先(フランチャイジー)が作り、商品の取引条件を個別に設定していた。売場内装が高い時代で、ブランド力があるほど、坪単価は上がった。余談だが、各ブランドにつく内装業者は高い内装費でものすごく儲けていた。取引条件はメーカーとFC先の力関係で差が出て、標準化されてなかった。商品を委託条件でできるところもあり、高い掛け率での買い取り条件のところもあった。ファッション業界のFCは現在もあるが、大幅に減ってきている。

FCはオーナーの思い入れで成功するかどうか変わると思う。商品を売っていくので商品への愛着がなければ成り立たないのではないかと思う。コンビニやワークマンのFCのオーナーはその商品への愛着やこだわりはあるのだろうか?

ネットで見ると、商品の思い入れとは別に、1つのビジネス、職業として選択しているように見える。脱サラをする、夫婦で始めるというスタートが多いようだ。商品やその店へのあこがれよりもビジネスとしての見方が強い。条件を調べていても、なんとなく仕組みはわかるが、そこで果たしてどれだけ収入が得られるか見えにくい。

諸条件を見ていて、一番わかりにくいのは商品在庫の負担についてだ。FC先(フランチャイザー)に商品在庫分の借り入れをしたことにして金利分を払っていくような仕組みのようだが、コンビニは在庫日数が10~12日とあるのでそこまで大きなリスクにならないが、ワークマンは在庫資産2400万と記されているので、回転率を考えるとなかなか返済に時間はかかりそうだ。前年度の在庫日数は85日前後となっているので年間3回転前後のようだ。そしてその商品リスクは完全に取引先が取ってくれるのだろうか?

さらに懸念事項になるのが、人的課題だ。社会政策的な時給の高騰や社会保険料の負担増など、利益を圧迫する大きな問題がある。コンビニも24時間営業なら当然スタッフ数は多く必要になってくる。ワークマンも家族経営で回せるだけの面積ではない。コンビニは今後、レジの無人化や万引き防止策など対策は進んでいくだろうが、それでも最低要員は必要になる。スタッフのリクルートはどんどん厳しくなる。

先述したが、小売業のFCはオーナーが「収入を得るための仕事」だけでなく「小売」が好きなことや「取引先の商品」が好きでなければ続かない。うまく流れれば問題は浮上しないが、数字が想定より下回ると、「不満」「不安」が大きくなりそうだ。

もう完全になくてはならなくなったコンビニは、商品ラインナップや改善ポイントは見えてきていて、省人化などのシステムも進んでいくだろう。ただ多発するFC企業(フランチャイザー)対FCオーナーの課題も改善していかねば拡大方向に進んでいかない。各社の競合は烈火するが、コンビニ事業はインフラとして今後も必ず残っていく業態だと思う。逆に衣料品中心のFCは商品回転率も悪く、品揃えも標準化しにくいのではないか?ワークマンのような業態はFC店舗と併せて直営展開を考えていかねば成長は厳しいのではないだろうか?特に「実用」から「ファッション」に変化すると間違いなく無理だ。

くどいが、FCのオーナーは本当にその商売や商品が好きでなければ続かないと思う。

■今日のBGM

メーカー機能はどうなっていくのか

ネットで上場アパレル12社の上期決算がまとめられていた。(ユニクロと無印は決算期の兼ね合いで本決算だった。)ユニクロ、しまむら、無印、アダストリア、ワールド、オンワード、TSI、UA、ワークマン、三陽商会、バロック、Tベースの12社だ。数字についてはいろいろあるが、それよりこのくくりで一緒にできるんだというのが感想だった。感覚的にはワールド、オンワード、三陽商会、TSIはメーカーのイメージが強い。ただ直営展開も増えていて、小売りのイメージも大きくなってきてはいる。

40年以上前小売業に入社した時は、オンワード、三陽商会はメーカーで主な販路は百貨店だった。ワールドは専門店卸のイメージが強くそこから大きくなっていった。それがDCブームから自主の店を持つようになって、小売業の規模が増えていき、SCの拡大に併せてさらに形を変えてきている。ワールドの決算説明書を見ると、卸事業はプラットホーム事業に含まれているように見える。その事業の売上構成比は25%で、おそらく直営事業を指すブランド事業の構成比65%を大きく下回る。

小売業が利益率を上げていくには、当然仕入原価を下げる必要がある。その流れで当然上場企業は、商品を自らの手で作り始める。海外工場を作ったり、提携したりしてコスト(商品原価)を削減していく。そこまでいかなくても、ある一定の規模になればメーカーと組んでロットを大きくして原価を下げていく。所謂OEMと呼ばれる手法で商品を作り始める。メーカーの展示会で商品を発注するのは、多く発注できない個店や小規模企業になる。発注が小ロットになれば当然仕入原価は高い。世間の流れと同様に、小売業の購買客の流れは2極化しており、一般的には値頃感を求める客層が増えてきている。そのゾーンの競合は厳しくお客様の値段に対する要求もどんどん厳しくなっている。仕入原価が高いと当然売価も下げにくい。

中小規模小売店の商品の調達は、問屋やメーカーになる。小ロットでの発注では、メーカーリスクになるケースが多くなる。ある程度の量を作ることで当然コストは下がるが、発注量が少ない状況で商品を作ると、リスクはメーカーが持つことになる。もし受注が付かなければ、商品を作っても原価をさらにダウンさせて販売することにもなる。そしてある程度の売上の読みを持って、受注なしで先行して作成していく商品も多い。

小売業の現状を考えると、メーカーの商品リスクはどんどん上がっているように感じる。さらに中小小売業の経営状況も悪化している。大企業は自前で商品を作る。この状況でメーカーは商品を作り続けていけるのだろうか?この記事にあった上場アパレル12社のメーカーからの仕入は減っているだろうし、メーカーだった企業も直営事業に重きを置いているように見える。卸中心の大手名古屋のクロスプラスの決算説明書を見ても直営小売分野の売上が全体の20%まで上がってきている。

社会環境を見ると、どんどん値段合戦になっているように見える。そうなると、商品調達先のメーカーへの要求がどんどん厳しくなってくる。中小小売店が厳しくなっていく環境下で、メーカーの今後の商品戦略が難しくなってくるのは間違いない。

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小売業を冷静に分析できなくなっている

私用で大阪に行って来た。毎回行くたびに思うのだが、どんどん観光客の数が増えているように感じる。東京近郊にも観光客は多いのだが、大阪は京都が近く、観光スポットが限られているせいか、なぜか多く感じる。特に東南アジア系が多い気がする。通天閣近辺は日本人のほうが間違いなく少ない。どぎつく、はでなサインが喜ばれているのだろうか?

インバウンドの数字を調べると、平成23年度は売上が5.3兆円で1人当たり21.3万円の消費となっている。そのうち買い物は1.4兆となっており、消費の比率は34.7%から26.4%に落ちてきている。さらに24年は1~9月ですでに5.8兆円超ですでに前年を上回っている。ただここでも買物ウエイトは下がってきているようだ。観光客の「モノ消費」から「コト消費」へ移行が顕著になってきている。

「モノ消費」の中心の百貨店の売上はコロナ前くらいまで盛り返してきているようだ。明確な数字は未発表だが、新宿伊勢丹の免税売上は1000億超とのことだ。西の雄、梅田阪急は今年1~7月で559億と発表されている。大阪ミナミに集まる外国客のニーズをうまく引き受けているのが心斎橋大丸で、今期の全館売上予測を1000億超としており、インバウンド売上は45%にも達するようだ。(本当に心斎橋筋は日本人のほうが少ないのでは?)

景気のいい話を書いたが、百貨店の売上のうち国内需要のシェアは87.4%まで落ち込んでいるとも発表している。そしてインバウンド需要は大都市に限られている。百貨店以外の大手小売業ではセブンアイホールディングスが上期中間決算で純利益34.9%減と発表されているし、イオンも中間決算で純利益76.5%減でGMSは82億の赤字と発表している。堅調なイズミも上期は経常損益21.9%減となっている。

他の小売業の状況を見るとユニクロは2024年8月期決算で国内売上前年比104.7%営業利益132.2%、アダストリアは2025年上期既存売上前年比103.4%、営業利益前年比100.9%、無印も2024年8月期決算で既存店売上前年比112,8%、営業利益前年比169.4%と伸長している。ニトリ、しまむら、西松屋も2025年上期は既存店で売上、経常利益とも前年をクリアしており比較的好調な数字を発表している。

数字を見ていると、都市部の百貨店を除く大型商業施設の流れはあまり良くなく、比較的値段志向の専門店の流れは悪くない。インバウンドで潤っているのは大都市の百貨店で、国内での需要は値段志向になっているように見える。インバウンドの需要が「モノ」から「コト」へ変わってくると、小売業界は大変な時期になっていくようにも見える。円安の追い風でインバウンド客が増えているのであれば、また円が強くなったらそのプラス分が消えてしまうが、逆に日本自体の景気が上向いていくのだろうか?その要素はないようにも思えるが・・・外国人のための街のような大阪ミナミを見て、今後どうなっていくのかますます読めなくなってきた。

しかし、契約残年数が少ないからだとは思うが、一等地になった「なんばマルイ」はやる気は見えず、もったいない。

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中小小売業の人件費

連日報道される「103万の壁」のニュースで、中小小売業は耐えられるのかと感じてしまう。その少し前には「時給1500円」のニュースも多く報道されていた。

中小小売業で収益を改善することはまず絶対条件として「売上を上げること」になる。自店でヒット商品が生まれたり、取扱ブランドが脚光を浴びたりして売上が上がる。ただその売上を維持するのは非常に難しい。特にファッションは長くは続かない。「利益を上げる」にはある程度の商品量が必要で規模が拡大しないと、なかなか仕入原価が下がらない。さらに規模を拡大するには当然店舗数も必要になり、投資を続けていかねばならない。そして最終的には「販売スタッフ」の質と人数のアップが不可欠になる。

立ち上げた会社でのラフな損益計算書を見ると、最も黒字が出た年度には人件費率が18%だったのが、コロナ期には34%になり大きく赤字を計上している。黒字期においても地代(家賃、駐車場費、共益費)の負担率よりも人件費が高くなっている。当然小売業は労働集約型で人件費の占める割合が非常に高い。

今回の「103万の壁」だが会社に損益上ダメージが大きいのは「106万の壁」がなくなる事だと思う。2024年10月から従業員50名以上の会社が対象になっている。以前の会社は約100名の従業員数だったので該当する。例えば時給1000円で月18日、日6時間働くとそのボーダーラインになる。今までは「130万の壁」が大きかったのだが今後は「106万の壁」になる。国は2020年代に時給1500円にすると言っている。と、するとボーダーラインだった人はどう働くか?時間を短くするか、壁を超えるか?今後配偶者特別控除の「150万の壁」をどうするかも考えなければならない。

それと同時に大きな負担が増えるのは企業にも当てはまってくる。個人の負担額を折半して会社が支払う義務が生じてくる。106万の人がそのまま働いたとして、健康保険+厚生年金+(介護保険)で折半分年間160千弱の会社負担が生じる。当然国の政策により時給は上がる。さらに年間130万働くと200千の負担額になる。以前の会社でも10名くらいはこのラインのアルバイトがいたので年間2000千以上の経費負担増になる。当然他のスタッフの月給や時給も上がるので人件費負担額はどんどん膨れる。時給アップと社会保険負担増で以前の会社だと、単純に2店舗分以上の人件費増になる。

中小小売業が、この人件費増とどう戦っていくのか?円安は続き海外生産のコストは上がり、出店条件も厳しくなる。小売業で販売力を落とすことはできない。力のある企業に飲まれるしかないのだろうか?

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商売の寿命

小売業界でいろんな会社を見てきたし、在籍してきた。さらに立ち上げた。そしていろんな会社の浮沈を見てきた。

商売の成功をどう計るかはわからない。儲けは少なくても長く続く商売は成功とするのかもしれない。ただ商売は、商品の変化や、顧客の変化、商売している場所の変化でも情勢が変わってくる。

まず、客層の幅を狭めた商売は長く続いていない。在籍していた商業施設のビブレやマルイはヤングターゲットで商売をしていた。ヤング層のブランドもそうだが、流れが短サイクルで変化する。DC(デザイナー&キャラクター)ブランドで集客して、その後109ブランドに移っていったヤング層のトレンドの変化に、売場は追いつけなかった。さらにそのターゲットの会社も浮き沈みが目まぐるしかった。それでもマルイはクレジット商売が実を結び、現在は小売より金融系の会社になっている。その当時のブランドを生み出していた会社も浮かんでは消えていった。つまり、流れが速いヤングターゲットの商売は続きにくく、寿命は短い。例外としては、当時の固定客の年代層と共に年を取って存在するブランドは続いている。販売の場所も百貨店、路面店に移っている。堅く商売はしているが規模はずいぶん小さくなっている。ただすでにヤングターゲットではない。

小売業で堅調に生き残っているのは、ヤングミセスからミセスゾーンが得意な大手アパレルなのかもしれない。ヤングが賑わったときはそれなりにそのターゲットのブランドを開発し、SCが全盛になってからもショップを立ち上げた。各社に共通するところは各年代のたくさんのブランドを持っていることだと思う。それと同様の流れになってきている企業は、ティーンズヤングからヤングミセスゾーンまで幅広くショップを持っているアダストリアやパルグループがあげられる。各ターゲットのそれぞれのシーンに対応するショップも開発している。

広い客層をもってシェアを確保していっている企業も成功パターンかもしれない。昔からよく言われる「高感度値頃」を追求している企業で、衣料系ではユニクロ、住関連ではニトリ、複合的には無印良品などがあげられる。現状はフルターゲットに適合しており、特に低価格ゾーンをボリュームとしているが、今後の社会情勢で若干の変動要素もある。

商品のカテゴリーの専門店は以前にブログで記したように、そのカテゴリーの大きさとカテゴリーの動向を慎重に図る必要がある。そしてそのシェア率を常に意識するべきだ。今回のジーンズカジュアル業界の崩壊のような例もある。カテゴリーの大きさとシェアで寿命が見えてくる。

地元に根付いた専門店は、常に商品のトレンド変化や、商圏変化、客層変化を気にする必要がある。こういった専門店は突出した人物がマネジメントしているケースが多い。その意志がどれだけ引き継がれるか、熱意がどれだけ続くかがポイントになる。

企業の存続は、どうやって前に進みながら進化させていけるかということだと思うが、近年は、感性よりも組織力、データ処理などのシステム力とその分析力のほうが商売の寿命に大きな影響を与えるのではないかと思ってしまう。

まだまだ、過去の慣例や感情で方向性を決めている企業が多そうだが・・・

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