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もうナショナルチェーンはできないのではないか?

小売業界、ファッション業界に新しい風は今後吹くのだろうか?ローカルチェーンはナショナルチェーンになれるのだろうか。ユニクロは山口県宇部市、アダストリアは茨城県水戸市、ハニーズは福島県いわき市からスタートしている。

地方で成功している店はある。その店が全国にはなかなか波及できない。ブランドを販売してそれを軸にMDを組んでいる店が多く、エリア間のバッティングがあり、エリアを超えると思ったようなMDができないことが要因になる。ジーンズ老舗専門店発祥のセレクト店にこの傾向は強い。DCブランドブームの時も、大都市以外はFC店が主流でエリアごとにFCのオーナーがいた。アダストリアはジーンズ専門店がスタートだったし、ユニクロはVANショップをやっていたと聞く。

ナショナルチェーンへの転換の最大の要因はブランドMDから自主MDに方向転換することだと言える。

次のステップはナショナルチェーンとしてのビジネスモデルを確立できるかだと思う。ローカルチェーンはブランドMDが多いため接客重視で、プロパー販売をすることが基本になる。必然的に顧客管理をして、顧客の顔を見据えた仕入れが必要になる。ナショナルチェーンは当然客層の幅を広げ、組織を作り、管理面、商品面とも本部機能を充実する必要がある。商品は当然自主MDでセントラルバイングのウエイトが上がるし、それに伴い管理機能も万全を期す必要が出てくる。そして何よりもそれを推進する資金調達が必要になってくる。

商品原価を下げるためには、商品を作りこむ必要があり、利益率を上げるにはそのMD商品を売り込むことが必須になってくる。原価を下げるためには取引先との別注が必要で、その最低ロットは最低1型200~300は必要になってくる。さらに自社で作りこむにはそれ以上の数量で作りこまねばならない。ということはそれを売るべき場所、さらにはきちんと消化できる店が最低30店ちかくは必要になる。円安の影響で海外生産でも商品原価を下げにくい状況にもある。

さらに、SCも成熟期から衰退期の過渡期で、コロナ以降は特に賃料収入は維持していきたい方向にあり、将来を見越しての賃料優遇も考えにくい。スタッフの人件費も高騰が続いている。

株式上場を目指した岡山から出たストライプインターナショナルも赤字決算が続いているし、タカキューやライトオンなど上場企業でさえ厳しい数字になっている。ナショナルチェーンを目指すより、安定したローカルチェーンのほうが居心地いいかもしれない。

■今日のBGM

ティーンズの市場は難しいが・・・

ハニーズが最高益と日経記事にあった。ハニーズの売場にはあまり興味がなかったが、2~3年前、店を巡回しているとき、少し驚いたことがある。季節の変わり目(2/末か8/末?)だったと思うが、各ショップが商品残の処理に苦しんで売り場が乱れていたのだが、ハニーズだけがきちんと商品が入れ替わっていて新しい季節の売場になっていた。ティーンズのボリュームゾーンの店は売場内通路が明確でなく、売場に手が入りにくいのだが整然としていたので印象に残った。社内会議でも言った記憶がある。

ティーンズヤングのボリュームゾーンの品揃えは大変難しい。そのターゲットの専門店は、鈴屋、三愛、鈴丹(現パレモ)、リオチェーンなどが大手でティーンズ系は名古屋の鈴丹、リオチェーンが引っ張っていたと思う。ナショナルチェーンティーンズ系大手は、その他にハニーズやエルメなどがあった。一時は一番元気な市場だったと思う。鈴丹は一時年商1000億を超えたこともあった。

店で婦人衣料を管轄していた時、ティーンズ平場は非常に難しかった。流れがすぐ変化し、売れ筋の見極めと確保が難しい。なお、ブランド志向やテイスト志向、値段志向と求めるターゲットもばらばらで、当たれば大きいが、切り上げるタイミングが難しかった。

ハニーズの記事によるとミャンマーの自社工場がうまく稼働して、オリジナル商品がうまく回っているようだ。利益率も61,4%と非常に高い。在庫回転率も第2四半期末で計算すると月度0.47回転とまずまずの数字だ。(ただし前年より-0.06回転)

市場環境も後押ししているように感じる。一時のティーンズ専門店は規模を縮小してきており競合が減ってきている。新しい競合になりうるのはユニクロやGUだが、両ブランドともノンエイジでベーシックの流れで個性は強くない。

ただ一番感じるのは価格戦略だと思う。好調な流れの「しまむら」や「西松屋」の好調さと同様の動きとも感じる。「しまむら」や「西松屋」とも客層はかぶるところもあり、お客様の買い分けもあるのではないか。値段志向のお客様をつかんでいるように感じる。出店しているのはフル感性のお客様が多いSCだと思うし、必ずしもティーンズヤングだけの買い上げ客ではないと思う。

高い利益率を続けるか、客層の幅を広げてフル感性ターゲットの店に変えるかが今後の企業戦略になっていく。現状の売場ではイオンモールやららぽーとではいい場所での出店の機会は厳しいと思う。新業態を考えて大型化していくか、RSCよりNSCへの出店を加速させるかが出店戦略の課題にもなる。さらに商品量と価格戦略も大きな成功のポイントだと思うが、今後この利益率が継続できるかどうか、MDのかじ取り(価格と利益のバランス)も非常に重要になってくる。

今後の動き方に注目したい。

■今日のBGM

セレクトショップはどうなるのか?

ヤフーでセレクトショップの意味を調べると、「独自のコンセプトに沿って複数のブランドの商品を仕入れ、販売する業種。」とある。ここに「個性ある複数のブランド」と入れるのが正しいのかもしれない。ここについて話すといろんな意見があり、特に癖のある意見が多いのであくまでも私見で書く。

セレクトショップと大手アパレルの大きな違いは、仕入れて直接お客様に売るか卸業を中心にするかの違いにある。昔から付き合いがあるところはビームスやユナイテッドアローズも地方ではFCをしている会社もあるが、非常に少ない。ほぼ直営店の展開である。名の知れたセレクトショップもあれば、地方で独自にブランドを仕入れているセレクトショップもある。

個人的なことでは、大学生のころ上野アメ横の店「ミウラアンドサン」でスタジャンを買った思い出がある。その後もインポート商品のバイヤーをしていたころはシード館、インターナショナルギャラリー、伊勢丹スライスオブライフは定点観測していた。トゥモローランドに「ボルジー、マカフィー」の出店交渉もしたし、完全にあしらわれたが「ビームス」の出店交渉もした。まだ千駄ヶ谷の小さい事務所だった今のベイクルーズと布帛(シャツ)の商談をしたこともあった。

その当時とは規模もMDも大きく変わっている。トレンドを追いかけてセレクト中心から完全に自主MD商品中心の店に変わっている。上場しているユナイテッドアローズの前期の売上は130135(百万)売上総利益率51.6%と完全に大手小売業としての位置づけだ。買取仕入れだけではここまで利益は出ない。「ソブリン」や「ディストリクト」などで出店していた高感度の店はほぼなくなっている。

大手セレクト店舗はアウトレットのウエイトが上がってきたのではないかと思う。アウトレットも完全に作りこんで利益を稼ぐMD商品が中心になっている。ここ数年はこのアウトレット業態で売上と利益を稼いできたように見える。このターゲット客層は少しずつアウトレット用の商品とわかってきたようで、ここからはそこまで伸ばせないように感じる。できるだけ早くフェイドアウトするべきだと思う。

先日何人かの40代前後の知り合いと話したが、あまりファッションには興味はないが「洋服はアローズやビームスで買う」と言っていた。その人たちは比較的高収入の部類だとは思う。ユナイテッドアローズの上期の前年比は107.5%で11月は118.2%まで伸びている。インポートは高い、ユニクロは皆着ている、選択肢の中では安心感があるので選んでいるようだ。そういわれると昔よりこのゾーンの敵は増えていない。ノンポリでそこそこ収入がある客層はまだ購買客のようだ。アウトレットで安易にショップ名のバリューで引き寄せて売ることは減らしていき、給与労働者30%が属する大企業社員をターゲットに品質や接客を最重点で取り組めば大きくマイナスはしないかもしれない。競合は限られてきており、きちんと囲い込めば今後も安定的なマーケットとも感じる。

関係ないが、昔出店の話も真剣に考えてもらい(断られたが・・・)、誠実なアウトレットを運営し、伊勢丹にもインポートブランドに併設してコーナーをもって、着実に商売しているように見える「トゥモローランド」をメジャーでは一番応援する。

■今日のBGM

RSC(大型SC)への提言 ➁

絶対にRSCは食い合いになって淘汰されていく。GMSが出店にしのぎを削り、生存競争に残った最後のGMSだったイトーヨーカドーも解体されていく。以前に書いたのだが自分のまわり15km圏に8つのRSCがある。小さめのアリオなど含めればもっとある。将来的に最低2つは成り立たなくなる。その他もNSC(近隣型SC)としては残るが不要なテナント部分が稼働しないRSCは想定できる。

GMSが厳しくなって、イオンやイズミはRSCで生き残った。そこにららぽーとや独立系も参入してきており、その形態も現状はリートやファンドに組み入れられている物件も多い。ここからは淘汰が始まる。

厳しくなってくると会社はどう動くか?当然改装計画を立案し、審議し、改装を実施する。イオンモールなどでは「活性化計画」と言われている。改装計画を審議し当然のように投資をかけることによって増益になる計画を承認する。今までの経験から考えると、流れが悪くなってきた物件を改装等の計画でその流れを止めることができた物件は、増床以外でほぼ見たことがない。店名を変えたりしたがその成功は長くは持たない。特に厳しくなったモールに新しいテナントを現条件で入店させるのは至難の業だし、その条件で入るのは同質化したテナントやサービス系テナントだけになる。増床計画があったRSCの改装でも、成功した物件はそんなに多くない。テナント側も増床部分は厳しいとすでに理解している。つまり改装効果を追い求めるあまり、将来的にさらに厳しくなる予測が現実的である。(短期的にはリニュアルセールでにぎわっても結局はもとに戻る。)

現実的には現状の流れを食い止めて、顧客の流出を防ぐ改装を考えることを優先すべきではないかと考える。つまり、投資した分を必ず回収する改装より、「投資経費をかけて発生するだろうマイナスを止める」改装を実施するべきではないだろうか。消耗品費や修繕費のように儲けるためではなく、維持する必要経費と考えるべきだと思う。営業数値の減少を止めるべき投資と考えるべきだと思う。

経費だけ使って数字の上振れがなければ、当然減益になる。ただ将来の大きな減益を止めることはできる。何年か経たないとその結果は出ないかもしれないが、投資基準は別として、間違いなくそういう改装も必要になってくる。非常に難しい問題だけれど、何年か後に優位性を持つことも大きな戦略だと思う。

■今日のBGM

12月の商売

12月の商売は昔と大きく変わった。11月末にブラックフライデーが始まって、ボーナスサンデーの流れが弱まり、ギフトニーズも減ってきた。さらに元旦営業が普通になり、年末の必需品の駆け込みもなくなった。ブランド時代はギフトとプレセール等でにぎわったが、年を開けてのバーゲンもなくなり20日過ぎからバーゲンが立ち上がる。

商売の妙があるのが12月の商売だった。12月最量販期、1月バーゲンでそのための商品を仕入れなければならない。取引先もここで在庫をなくさないとデッドストックになってしまう。商談で原価交渉をして「半値7掛け、半値6掛け」(原価35%,30%)での仕入れをしてバーゲンでダウンする利益の補填をする月だった。

そういう商売を今もしているのだろうか?秋冬売れなかった商品をなくすための利益計画を策定してプライスダウンする準備をしているのだろうか?12月バーゲンに向けて売れなかった商品の処理計画をしているのだろうか?

買い物に行って売り場を見ると、そういう気配はあまり感じず、例えば「全品10%オフ」とか「20%オフ」とか計画的に処理をしているようには見えない店が多い。細かい商品アイテムごとの処理計画はないのだろうか?例月と12月商戦はそんなに変わっていない。売り場を見る限り12月の特別さを感じない。

この頃、しまむらが気になっているので、しまむらのチラシを見る。「総力祭」という打ち出しで均一訴求となっている。300円、500円、700円、900円、1500円、2000円、3000円でのくくりでカットソーは1000円以下均一、コート1500円、掛布団2000円、ダウン3000円が目玉商品。問屋や名古屋、岐阜の取引先から安く仕入れて、自店の不稼働商材も併せてマークダウンしてプライスのくくりで売っているのだろうと思う。昔からの商売をやっている。お客様も12月を感じる。

しまむらの利益率は過去3年33.9%,34.1%,34.1%と大きく変化はない。当然企業としては利益率の改善は取り組んではいるだろうが、回転率を重視している経営なので大きな改善は難しいのかもしれない。ただ買取商材はきちんと販売期間内でなくすという姿勢は正しい商売だと思う。売っていた商品は違うが、商売の考え方はしまむらのほうが好きだ。

ブラックフライデーの時も大きくプライスダウンコーナーを取っていたのはユニクロだけだった。セールスチャンスに不稼働商材をマークダウンするのはごく普通だと思う。利益率重視はいいが、商品の鮮度はお客様にはすぐばれる。自発的に不稼働商品をプライスダウンし売り込んでなくしていくというより、セールに協賛しているだけのような取り組みの店が多すぎる。

12月の商売も例年盛り上がらないようになってきている。

■今日のBGM

ワークマンのフランチャイズチェーン

「ワークマン」の売上の伸びが止まったという記事を見て、何気なくそうだろうなと思ったのだが、あまり詳細を知らずにいた。以前やっていた店と同じSCに入店していて、すごい集客があったので少し驚いて観察したことがあった。その時は「ブームだし、この商品をみんなが着る?」と懐疑的でさらにFCだと聞いて驚いた記憶がある。

DCブランド全盛時代、大都市は直営店、地方都市はFC店という構図があった。FC契約の構図はFC先が内装を作って、商品を仕入れそのブランドの服を売るというもので、ブランド側はその商圏内にはそのブランドを卸さないことが前提で、取引形態は委託販売(年2回セール値引きあり、残商品は返品)が多かったように思う。

「ワークマン」のFC条件を調べてみた。少しわかりにくく、きちんと確認が必要だとは思うが2タイプある。わかりやすいのはBタイプで従来の俗にいう販売代行と言われていた契約内容だ。昔、サンエーインターナショナル(現TSI)と代行契約をして10数店舗やっていたので内容は理解できる。月度売上3500千までは500千の収入。それを超えれば超えた分の3%分が上乗せされる契約内容で、月度売上月10000千であれば500+(10000-3500)×0.03=695千の収入になる。一般的な販売代行手数料率は13~15%(※その前後はある)で、この契約なら10000千売上で手数料率が約7%になり契約自体は全く魅力がない。おそらくこの契約を選ぶことは少ないのではないか?

Aタイプは細かい経費は別として、オープン時商品原価分2240万を負担するということ。その在庫はオーナーの資産になるということらしい。さらに利益は月間の荒利額の40%が収入のようだ。つまり月度売上が1000万で荒利率が36%だと利益額は(1000千×0.36)×0.4=1440千が月度収入になる。その他営業経費が300千くらい引かれる。つまり月間収入は1140千となる。報奨金制度もあり上乗せはあるらしいが、オープン時の商品原価分の負担は大きい。その返済は分割でもいいようで立ち上がりの資金は少なくても済むようだ。

想定面積が100坪ということだが、夫婦でやるとして、店をやっていた経験上要員数は最低5名(これでも厳しい)で、そのうちフル勤務(1日8時間×20日)3名(当然オーナー夫婦も込み)短期バイト(月80時間前後)2名は必要となる。夫婦以外に月度給与は交通費や社保を入れると400千は必要になる。そうすると、夫婦の収入は月740千になる。これをどう考えるかだが、おそらく夫婦そろっての休みは取れない。さらに給与計算や経費処理等の会社としての仕事もあり、ほぼ休みなしの状況は予測される。最近の採用難を考えると募集も難しい。販売員が確保できて何とかやっていけるとすれば上記した最低月売上1000万は必要だと思う。

さらに、品揃えは「ワークマン」側に任せるのだろうか?発注責任はどこにあるのだろうか?「ワークマン」側に優秀なSV(スーパーバイザー)が必要で、そうでなければ売場の維持管理ができない。原価在庫が22400千はあるので不稼働な在庫をどう処理していくかも指示がないとできない。

詳細は分からないところが多いが、「ワークマン」のFCになかなか魅力は感じない。オリジナル商品をどんどん作って荒利益を上げることでFCに収入が増えなければ続かないのではないだろうか?直営店もありそうなので、儲かりそうな店は直営で賄うのではないか?

今後の「ワークマン」の伸長がFCにかかっているのであれば、ブーム的なものはあるにしろ、大きく伸長していかないのではないだろうか。

■今日のショット(山中湖)

しまむら ➁

いろいろ考えてみた。

なぜ、この業態で好調を続けられるのか?同じようにチェーンストアの成功を目標にして、GMSに向かわずにVS(バラエティストア)に向かったのか?それをぶれずに60年以上もやり続けることができたのか?なぜ好調を維持できるのか?

GMSがなくなっていく理由がわかったような気がする。非食品は完全にお客様から「No!」のジャッジをもらっている。高度成長期に充実させようとした「中流意識層」への対応売場が現状は全く必要とされてない。大きな売り場を埋めるために、不要な商品を集めすぎている。シーン別の売り場などは完ぺきに自己満足だし、儲かる売場(必要とされる売場)だけでもういいのではないか?作ってきた売り場を進化させているつもりでいるだけで、実は進化させていなかった。無駄なことばかりやってきた。売れない商品でも仕入れたし、欠落アイテムも補完した。でもそれは必要なかった。

特に時代の変化は大きい。円安不況の中、中流層の崩壊が顕著で、購買動向も大きく変わってきた。特に20代~40代の変化は大きい。そこを百貨店やGMSは拾えていない。ユニクロやABCマートのような一種のカテゴリーキラーやしまむらや西松屋のようなVSに流れている。

そこまでは整理できるが、あの雑然とした売り場でいいのだろうか?GMS時代のストアメイキングマニュアルは不要なのだろうか?商品はペラハン(入荷時のペラペラのハンガー)のまま陳列していてもいいのだろうか?陳列量はあれでいいのだろうか?演出もレイアウトもあれでいいのだろうか?

おそらく要員数や経費と関係していると思う。新しいハンガーに変える手間と購入経費より、人件費や商品動向(POS)経費を優先した結果かもしれない。おそらくぎりぎりのオペレーションコストなのかもしれない。レジ要員と品出し要員を中心に回していると、細かなところまで手を回せないというのが現状かもしれない。

さらに、割引商品の比重も高い。在庫と利益のバランスはあるが、どういう指標で割引対象にしているか興味深い。今まで言って来たが「利益率」より「回転率」を重視する会社のほうが小売業では正解だと思っている。(利益率を優先する会社は将来的には成り立たない。)間違いなくしまむらは「回転率」重視で動いている。プライスダウンする決定プロセスを知りたい。今の回転率で今後どのように利益を改善していくかを知りたい。

もう何店舗か見ないと、いろんな仕組みややり方が想定できないが、どういうマネジメントをしているか聞いてみたい。

近いうちにまた違う店を見に行こうと思った。

■今日のBGM

しまむら①

しまむらに行って来た。非常に驚いた。

しまむらに行ったのは2度目で、前回は母親が入院するので必要なものを買いにロードサイド店に行っただけで、真剣に見たのは初めてだった。

1店舗しかゆっくり見ていなくて、評論するのはおこがましいし、好調企業に意見をするつもりもない。思ったことだけを書く。思ったことを並べる。

値段を打ち出し、余計なものはおかない。売れない商品は即なくす。ストアメイキングマニュアルなんかいらない。来ているお客様のニーズに合わせて売り場を作る。ロープライスで徹底する。その上を見ない。ローコストオペレーションに徹する。いらない商品部門はやらない。売り場は1980年に私がニチイ(マイカル)に入社した時以上に雑然としている。

しまむらの年度の実績を再度確認する。

売上高 616125百万  営業利益 53202百万  1418店 

売上総利益 209986百万(34.5%)  人件費 66420百万 人件費率10.8%

商品在庫 54266(百万)従業員数 11942人 

総面積 2233275㎡ 賃借料32678(百万)

単純に店舗数で割る

売上 434.50(百万) 在庫38.27(百万)売価在庫58.42(百万)

1店舗面積平均 1574.9㎡(476.4坪) 1店舗人件費46.840(百万)従業員8.4人

1店舗平均月度売上 36.2(百万) 1店舗月度平均人件費 3.903(百万)

1店舗平均家賃 23.045(百万) 1店舗月度平均家賃 1.920(百万)

1店舗の概況は以下の通り

売場面積 476.4坪 ※インショップ、ロードサイドすべて込みの平均

月度売上 36.2百万 (月坪売上7.6万)月度売上総利益 12.5百万

平均在庫 58.42百万 月度回転率0.62

家賃 月坪家賃4000円強※自社物件も混みなので実際はこれより高い。月坪6000円前後か?

店舗人件費 本部要員を考えると 3.5百万前後/月くらいか?

大雑把な数字なので正確には読めないが家賃比率7~8%、人件費率10%前後、労働分配率30%前後になる。十分に利益は出る。回転率は月度0.62と非常に高い。チェーンストア理論通りの数字になる。

坪売上はユニクロに大きく劣るが、人件費率、商品回転率で上回る。商品特性、調達方法の違い利益率の低い商品部門もあり、利益率は大きく下回るが、経費項目はほぼすべて優っている。利益を上げるにはどれだけ商品の値段をどこまで値段を下げずに引っ張るかだが、ここが企業特性の違いだと思う。当然値段を下げなければ利益率は上がる。ただ半面在庫が増える。利益率と在庫高は調整できるといえばできる。

色々考えさせられたことがあるので、次回再度まとめてみようと思う。

■今日のBGM

売場内装について

SCをみていると近頃はインパクトある売場がなくなっているように思う。ららぽーと門真でも感じたのだが、ここ何年かで出店を始めた店も個性があまりなく、どこにでもあるこなれた売り場になっている。特に売場内装のインパクトがなくなってきている。

RSC(郊外型ショッピングセンター)が注目されてきた頃、出店交渉していて、あるデベロッパーのリーシング担当者にこう言われた。「私は配ダク(配線ダクト)使ったテナントを入店させたことがない。」つまりデザインされた照明計画、器具をきちんと使って、安易な内装はさせないという意味での発言だった。「配ダクを使うな」ということが、いい発言かどうかわからないが、まだまだ凝った内装がいいとされる時代だった。今はモールでも配ダクを使っている店が半分以上ある。それが時流ではある。

ブランド時代を経験しているので、内装のレベル感は理解できるつもりではある。床がフローリングや石を使う時代(その中でもレベル差はある)を経験してきた。当然売っている商品のグレード感によっても内装レベルは大きく変わってくる。

家を作るのと同じで、店舗を作る(内装工事)にはコストがかかる。おそらく今は坪300千では本当にチープな内装しかできないのではないだろうか。40坪の店を坪400千で作った場合内装費で1600万の金が必要になる。これがキャッシュアウトだけでなく改装費や減価償却費のコストになってくるので収益面にも大きく影響する。できるだけコストは押さえたい。

売場のイメージはお客様に大きなインパクトを与える。商品のインパクトも当然必要だが内装がお客様に訴えるものも大きい。「ああ、あの真っ白い店」「西海岸っぽい店」「古い電柱のあった店」などで印象付けることも多い。昔、個人オーナーの店はそういう店が多かった。廃材を使ったり、鉄骨や、ケーブルをむき出しにしたり商品の個性も強かったが、内装イメージの個性も強かった。ローコストでイメージを出した店も数多くあった。

商品が標準化されている現状、店のインパクトがなければお客様は足を運ばない。内装レベルも一定以上の「ユニクロ」や「アダストリア」には勝てない。それを理解する必要がある。

内装イメージをローコストでいかにインパクトを与えられるか、出店時考える必要がある。商品戦略や顧客対応力は全社ルーティンの仕事としてやっている。そこに「売場内装」の考え方も付け加えるべきだと考える。いろんなイメージテーマ戦略があると思う。

「色」「音楽」「映画」「絵画」「景色」・・・

■今日のBGM

回転率からみる在庫の信憑性 ➁

前回から引きずって、再度書く。

昔の話だが、マイカルが倒産危機にあった時、「特損セール」(社内的な呼び名かもしれない)を実施した。キャッシュインを増やすためで、特にストック在庫、倉庫在庫の一掃セールだったと記憶している。本部にいたので数店舗巡回した記憶がある。その時の商品は当然価値を下げての「自己見切り」中心での販売だった。よくこんな値段でストックしていたなと思う商品が多かった。つまりストック在庫の評価を下げてのセールだった。

売れる価格をジャッジするのは難しいが、利益を落とせないので、簡単に値段を下げられない。当然「売る努力」を求められるが、厳しい(動きが悪い)商品は2~3か月売場の動向をチェックしていたり、全店のデータを見ているとすぐにわかる。

ライトオンやマックハウスがそうだとは言わないが、厳しい状況になってくると利益重視になってくる。利益率を落とせば当然会社損益に大きな影響が出る。ただファッション業界で月0.2回転していない会社は考えにくい。資産効率が悪すぎる。まだデニムウエイトが高いのだろうか。

例えば、前期マックハウスの商品在庫は4348(百万)で利益が48.0%なら売価在庫は8362(百万)となる(単純計算)。年間売上18443(百万)とすると年間回転率2.2回転。月度回転率0.18回転。月度回転率を0.2回転にして年間2.4回転に上げるには、売価在庫を7684(百万)まで減らす必要がある。その差は678(百万)。月度0.02回転上げるだけでも(売上はそのまま)それだけ減らせねばならない。320店あるとすれば1店舗2.1(百万)、現状1店当たり在庫は26.1(百万)なので可能な数字ではある。ただ、それぐらい評価が難しい商品は現状あるのではないか。ちなみにその分の商品評価を下げれば単純計算で全体の利益率は43.4%になり4.6%ダウンする。上場企業は発表しにくい数字になる。

小売業は在庫が軽くなければ、動きが鈍くなる。商品が多すぎれば、そこから売れ筋を探すのに苦労するし、売れ筋を仕入れる枠も減る。悪循環になってしまう。動きの悪い商品を早く見つけて、できるだけ早くなくす必要がある。それをなくした金で新しい商品に変えていく。そうすることによって売場に鮮度感が出て、好循環になっていく。

経営上、なかなか手を付けるのは難しく、手を付けると損益に大きな影響が出るので在庫内容の精査は順番が後になる。ただ体質を変えるには荒療治が必要ではないかと思う。

■今日のBGM

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