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最低賃金引き上げ

最低賃金の引き上げで、全国加重平均の時給は1054円になるとの報道がある。いよいよ小売業は大企業しか生き残れないかもしれない。

小売業は「立ち仕事」「土日休みづらい」などの理由で人材不足は続いている。過去の経験から、欠員が出るたびに募集をするが、なかなか応募はこない。年々厳しくなっている。今回の引き上げで今まで時給850円が最低賃金だったエリアも時給900円近くにアップする。ただ時給900円で募集しても間違いなく来ない。おそらく募集相場は時給1000円近くになる。受け入れ側の問題も当然あるが、時給を最低賃料に近づければ近づけるほど定着率は低くなる。そのたびに募集経費は発生する。さらに募集時給を上げることで当然既存のスタッフの給与も上げなければならない。さらに賃上げ分は当然賞与にも加算される。

会社は、給与に加えて社会保険の負担分の50%を支払っている。健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料あわせて約30%の個人負担分の半分15%相当(都道府県により変化する)を負担している。さらに今年の10月から51人以上の会社も週20時間以上の従業員にも社会保険を適用することが義務化されることになっている。

会社にとっては、経費負担がどんどん大きくなっている。

新聞の社説などを読むと、中小企業も賃金引き上げに伴ってシステムの導入を進めたり、省力化の努力をするべきとの意見がある。労働集約型の小売業で、さらに接客ウエイトが高い専門店はどう対応すればいいのだろう。後方の人材を減らしていくしか頭に浮かばない。おそらく後方部隊の経費は最低限まで落としている。どうやればいいのか具体的事例の提案が欲しい。こういう他人事のような意見は必要ない。

人件費を吸収するには売上を上げるか、利益率を上げるかになる。コロナ以降、売上が伸び悩んでいる現状を考えると、売上確保より利益率を上げていく流れにはなる。利益率を上げるにはどうするか?オリジナル商品を増やして商品の原価を下げる。つまり企業商品を作ったり、取引先との別注商品を作ったりして、原価率を下げ、それを販売する。その商品を拡販することによって利益率を改善していく。しかし、それを中小企業がやっていけるか?取引先との別注商品を作るにも、商品コストを下げるのだからある程度の数量が必要になる。そして当然全品引き取りになる。店舗数が少ないと当然1店舗あたりの在庫が増える。売れなければ逆に利益ダウンの要因になる。経験上オリジナル商品を作るには最低40店舗くらいの店舗数は必要だと思う。中小企業でオリジナル商品を作るにはリスクは大きい。

「買い」の商売を続けるにも、現状ほとんど海外生産商品で、為替の問題もあり、取引先の利益も考えると商品原価は上がり、従来の値段を維持しづらい。値段を上げると売れなくなるし、値段を維持すると利益が上がらない。

おそらく、賃貸物件で償却もしなければならない店が5店舗以内の小売業は相当厳しくなってくる。いよいよ小売業は大企業しか生き残れない。

■今日のBGM

月度指数の変化

35度以上の暑さはいつからだろうか?季節が完全に変わってきた感がある。

商売をやっていくと、予算は必ず作成する。土日の増減はあるものの月度指数を想定して売上予算は作成していた。20年~30年以上前は売上構成比が高い月は12月、1月、7月、3月、4月の順だったように思う。逆に厳しかった月は2月、8月、10月、6月だった。バーゲンが早まったことにより6月が上がってきて、夏休みの8月も5~6位の構成比の高い月に変わってきている。逆に秋の立ち上がり期の9月、冬の立ち上がり期11月の落ち込みが大きい。

やはり、季節の変化が一番大きな要因ではないだろうか?昔は四季がはっきりしており、春夏秋冬毎に商品が変わり、その時期に合わせた演出もしていた。春色、秋色があり色の変化で季節も感じた。ジャケットも背抜き、総裏で季節感が変わった。その流れが季節変化で、春、秋が短くなり、若干の色の変化はあるが2シーズンになった感が強い。ファッションに細かな変化を気にしなくなってきた。

さらに、バーゲンの在り方も大きく変化している。過去年2回のバーゲンでは春物、秋物は50%オフスタート、夏物、冬物は30%オフスタートだった。ブランド全盛期には人気ブランドはバーゲン初日の午前中に商品はなくなっていた。その他のブランドも2週間くらいで、売場の季節は変わっていた。当然7月、1月のバーゲンパワーは大きかった。あれだけバーゲンのスタート日を小売各社横並びでチェックしていたのに、7月、1月以降のスタート日を、いつの間にか6月、12月に前倒ししてしまった。伊勢丹でさえ今年の夏は6月スタートになっている。これだけ温暖化が進んでいるのだから、夏のバーゲンの前倒しは不思議な現象だ。賞与も7月なのだから、6月バーゲンの根拠が見えない。売上競争になっているとしか思えない。もうバーゲンに根拠はない。

ファッションからデイリー性のある実用着に変わってきた。それに呼応してユニクロのように「いつでもお買い得」なショップが増えていったように思う。さらに「いつも割引」しているショップも多くなってきた。逆にプレミアムブランドはセールのウエイトを下げてきている。アウトレットの増加でイメージが下がってきているブランドが多いとの指摘もあった。事実、そのせいで厳しくなってきているブランドもあるとのニュースもある。2極化はどんどん進んでいる。

「ファッションが好きで買いに行く」お客様への商売は減ってきており、ファッションの流れでの商売は、形骸化している。バーゲンも本来の意図から外れてきており、単純に販促の1つになっている。さらにアウトレットの増加や、インバウンド需要の拡大もあり、季節指数もどんどん変化していく。数字の先を読むのも難しくなってくる。

それにしても、この暑さでは、買い物に行く気力もなくなると思うが・・・

■今日のBGM

量販店衣料ブランドはどうなるのか

アダストリアがイトーヨーカドーで展開している「ファウンドグッド」がどうなっているのかをたまに見に行くが、現状は大きな進展はないような気がする。売場は基本レイアウトに沿ってきれいに整理されており、立ち上げ時に比べてすっきりしていて買いやすくなってはいる。ただ運営体制がまだまだ厳しく、おそらくイトーヨーカドースタッフが少なく、うまく連動されていないのだろうなと感じる。アダストリアが単独で出店したら考えるだろうスタッフ数や業務内容とは開きが大きいと思う。さらにアダストリアなら出店をしないだろう店も多いと思う。ターゲット客層とギャップのある店も多いのではないだろうか?以前から述べていたように、合同で別会社化しないと厳しいような気がする。

イトーヨーカドーは「ファウンドグッド」が売場を固めたことにより、従来衣料売場で展開していた取引先展開型のコーナー売場が逆に引き締まり、さらに従来のGMSのお客様を集めているような気がする。イオンスタイルで売場を変えたイオンでも同様に感じた。イトーヨーカドーは従来隣接していた衣料服飾品がなくなり、取引先展開型の売場を集約しており、ボリューム感が出たように感じられ、肌着等の売場に隣接して客数も増えているのではないだろうか?イオンは、衣料服飾品の効率改善するために商品区分ごとにコーナー化し、セグメントすることで在庫を抑えている。そのため直営の売場が小さくなったことで取引先展開型のブランドを同様にコーナー化している。

ここでいう量販店ブランドとはコーナーショップ化しているものを指している。イトーヨーカドーはオリジナルで「KENT」などをやっているし、イオンでは「ジュンコシマダパート2」「インスパイア」(ヤングDCブランドがいつのまにかミドル世代のブランドに・・・)、フォーマルの「イギン」「ソアール」などをコーナー化している。他にも昔からある「アーノルドパーマー」や「ニクラウス」「クロコダイル」などのスポーツ系のブランドなどもある。

イトーヨーカドーは衣料品をなくしていくとのことだが、売場を見ていて直営売り場がなくなることにより、過渡期の売場ではまだ量販店ブランドのニーズはありそうに感じる。イオンもGMSの衣料品を続けるなら、直営の効率アップのために、間違いなくこういうブランドのニーズは大きい。特に販売員を派遣しているブランドの売上は固いのではないだろうか。

GMSの量販店ブランドは今後なくなっていくのだろうか?ユニクロやGUに流れていくのだろうか?体型が変わり、さらに消費動向も変わらないアダルトシニア層のニーズをどこが受け持つのだろうか?

現状、GMSの売場は「ユニクロ化」を目指しているために活性化しないのではないだろうか?現状の顧客は、ちょっとしたお出かけ用の服をどこで買うのだろうか?ショップチャンネルやネットに流れているのかもしれない。そういう中で、逆に取引先展開型の売場をもっと打ち出すのも一つの方法かもしれない。販売は取引先スタッフのケースが多いと思うが、客層と同年齢くらいのスタッフを配置すれば、売れていくことは間違いない。このターゲットのスタッフは時間的に余裕があり、集めやすいと思う。そして何より一番販売力はある。

将来的にどうなるか断定はできないが、量販店ブランドはGMS衣料品の過渡期には必要な売場かもしれない。

■今日の日経見開き広告(ヴィトン フェデラーとナダル)

きれいに見える商売

日経の記事に「ユナイテッドアローズが年初来高値・・・」の記事が出ていた。6月の速報値が既存店前年比19%増で成長を期待されての買いのようだ。

ユナイテッドアローズ(以下UA)はどうしても見え方がきれいな商売に見える。きれいな店やきれいに見える店は、なかなか信用できなくなってきていて、決算の数字も素直に呑み込めない。きれいに見せるのはすごく努力が必要だとは思う。もうすでにセレクトショップという分類ではなくなってはいるが、旧セレクトショップの位置づけを続けるのは大変だと思う。当然商売だからきれいなことばかりは言っていられないとは思う。

ファッション業界は中間層が減り、2極化傾向は続いている。UAは旧セレクトショップで上場した最も大きな企業だが、おそらく立ち位置は厳しくなっていると思う。おそらく洋服好きは減ってきていて、素材感やデザインが本当に受け入れてくれる客数は減っていると思う。昔、原宿界隈にあったUAが運営してきたセレクトショップもだんだんなくなってきている。周辺の知り合いと話していても、「ちょっと金はあるノンポリの30~50代」の受け皿になっているような気がする。

どこで数字を押し上げているかというと、アウトレット業態だと思う。「みんなユニクロだし、このショップのアウトレットなら大丈夫だろう」感覚で集客し、何とか数字を維持していると思っている。決算資料を見てみるとアウトレットは売上構成比17.2%を占めている。ちなみに店舗数の構成比は12.1%となっている。1店舗当たりの年間売上を計算するとUAなどの分類で6.79億、グリーンレーベルなどの分類で4.13億、アウトレットで8.36億となっている。売り場面積の問題はあるが店舗当たりの売上は最も大きい。さらに会社計の売上総利益率は前年差+0.1となっているが、アウトレットの利益率前年差は+3.5%(前年決算では+2.5%)となっている。アウトレットの利益改善で全体の利益率は改善したという数字だ。

さてアウトレットの利益改善はどうやってするのだろう?まず考えられるのは各プロパー店舗で売れ残った商品の値段を大きく下げないようにして売る事。例えば50%オフで売らずに30%オフで売るということになる。それには細かな管理が必要になる。だがおそらく、ほぼお客様は気づいていると思うが、UAのアウトレットはアウトレット用に商品を作っている。そのウエイトを上げて利益改善したと考えるのが普通だと思う。当然値段を下げるより、作ったほうが利益は出る。「ビームス」「シップス」「ベイクルーズ」などのアウトレットもアウトレット用の商品を作っている。セレクト系で作ってなさそうなのは「トゥモローランド」くらいではないか?

この商売をこの屋号(ブランド名)でやっていいのかどうかわからないが、長い目で見れば、お客様も気づいて厳しくなってくるだろうし、アウトレットに比重をかけるのは、会社の構造が変化して会社自体のマイナスになっていくような気がする。

きれいに見える数字も、会社が考えている本来の商売の結果なのだろうかと思う。

■今日のBGM

値段のインパクト

2023年で65才以上の人口は3600万人を超え、人口構成比も29.1%と30%に迫る。所謂、年金生活者の構成比は高まっている。私自身もその分類に入る。完全に「私」の時間が増えてくる。「買い物」という行動が完全に変わってくる。特に衣食住のうち「衣」にかける支出は激減する。行動範囲が狭くなるのでわざわざ買うことはなく、あるもので十分対応できる。支出のほとんどが「食」に変化する。

家人が車の運転をしなくなったので、買い物にはよく行く。小売業をずっとやっていたし、店を見るのが好きだし、食品売場も好きなので、喜んでついて行っている。

まず、優待日は必須になる。現役世代には「ルミネ10%オフ」や「マルオとマルコ」が効果的で特典日の集客は大きいと聞く。プロパー期にやるのでインパクトは強い。近隣のイオンにはカード特典のある「10、15、20、30日」はできるだけ行くようにしている。カード特典日とそれ以外の日では集客が違っている。食品が含まれるので5%割引にも敏感になる。

ただそういう中でも、食品に関して言うと、お客様は完全に店の使い分けをしている。何度か行っていると、店の特徴がすぐわかってくる。あえて書くとイオンは完全にカード割引頼りで、実売場は少し手が入っていない。近隣の徒歩圏にヤオコーができて、その近くにマルエツがあるのだが、明らかに食品のMDは食品SMが上回っている。その時期の旬の食材は間違いなく安いし、売場体制も充実している。近頃のイオンのカード特典日は、車で運べるペットボトルや酒、買いだめできる冷食中心、さらにあまり割引しない大手メーカー品や、ドラッグなどを買っている。生鮮商品は季節打ち出しがどこも似ていて、その値段は必然的に覚える。どう贔屓目に見てもイオンが一番高い。100円の差でも大きなインパクトはある。毎日買うものだから、ボディブローのように効いてくるのではないだろうか?

バーゲン時期に入っているが、バーゲンそのもののパワーが年々薄れている。昔はスタートのタイミングも取引先や競合各社を見ながら決めていたが、今は「大きなセール」くらいの位置づけでしかない。常に割引をしている店舗が増え、バーゲンそのものの価値も下がっている。ファッションのマスの流れが「ユニクロ」「GU」などにあり、値段の基準が下がってきている。ひと昔までは「30%オフ」「半額」に踊らされていたが、ある程度ボリュームプライスが品揃えのマスになっており、商品と値段のラインがお客様に認知されているように感じる。「1000円,2000円引き」などのほうが魅力を感じていそうだ。微妙な値段の差が売り上げを左右しそうだ。

客層は違うが伊勢丹などで展開するプレミアムブランドのセールも、実施しないブランドも増えてきているし、バーゲンのスタート日も6月中となっており昔の流れとは大きく変わってきている。

やはり客層の2極化は進んでおり、ハイエンド志向がない客層は、きめ細かく値段をチェックしていそうな気がする。店サイドは安易に割引金額を設定せず、商品の実際の価値をより見極めなければならなくなっている。

■今日のBGM

商品回転率が低い企業はリスクが隠れている

商品回転率を上げることが商売の基本だと、常々言っているし、当然だと思っている。何度も書いてきたが、「商品を仕入れて、それを売って、その金で支払う」が商売の基本だからだ。企業が大きくなってくると、その基本が見えなくなる。商品回転率が低い企業はリスクが隠れていると思っている。

ライトオンの上期の決算短信を見ていて、やはり何かが隠れていたと思った。くれぐれも今回はライトオンの業績に意見する物でなく、こういうことがあったのではないかという個人的な推測を記す物であり、個人の感想と思ってほしい。売価還元法で原価を算出している旨あったので簡単な計算方法で数字を出してみた。

前期末、原価在庫10479(百万)で、今上期末は原価在庫8326となっており、原価在庫の前年比は79.5%、売価在庫は原価率から逆算すると前年差は-5243と大幅の削減をしている。ちなみに上期の売上は21298(百万)で売上前年比は86.6%となっている。回転率は在庫が減ったことで前年が半期で1.12回転、今年が1.26回転と改善している。これでも回転率は年間3回転しない。年3回転することは4カ月で商品が売れてなくなるということなのだが、そこまで回っていない。付け加えるとおそらく支払いは4か月以内だと思う。

今期首の売価在庫は(単純に原価率で計算する)20191(百万)となり、同様に上期末の売価在庫は14948となる。売上は21298なので、値段を下げなければ、計算式でいうと期首在庫(20191)-売上(21298)+仕入売価=14948となり仕入売価は16055となる。これを所謂5掛けで入れたとすると仕入原価は8027となり、そのまま計算すると利益率は48.9%になる。ただ実際には上期利益率は44.3%になっている。概算してみたが仕入れを原価50%でして(所謂5掛け)、さらに約3400(百万)の商品がなくなることで、公表されている利益率44.3%になる。簡単にいうと6800(百万)の商品評価を半額処分すれば公表数字が導き出される。

どうしたかはわからない。ただ34億円の金額分だけ商品の評価を落としたとは考えられる。その他の原因もあるかもしれない。評価を落として販売したとしても売上前年比は86.6という数字だ。評価ダウンした商品が売れたとしても、既存の商品は売れてない。逆に評価を落とした商品が売れてないのかもしれない。

再度言うが、今回はライトオンの業績について言及する物ではない。あくまでも私自身の主観での数字で、現実とは違っているかもしれない。ただこの数字から、商品回転率の悪い企業は何だかの負の要素があるのではないかと考えられるということだ。悪く考えれば、在庫高で決算数字を変えることができる。昔は決算セールという名の下で売上を稼ぎ、在庫も減らしてきた。決算が終わって在庫を減らすということは正確な決算だったのかとも考えられる。管理体制も疑われる。回転率の悪化は、営業面だけでのキャッシュフローは悪化すると思われるし、利益率を優先した在庫評価と言われても仕方ない。

商品の価値はお客様が評価し、売る側が決める商品評価(売価)ではない。お客様、つまり市場が決めるものだ。そして商品回転率が悪いということは、商品がお客様に評価されていないと認識するべきだと思う。

■今日のBGM(まだトノバンがあった。)

ライトオンは立て直せるか? 2

前回、ライトオンの状況を書いたのだが、あまりに傍観者的な内容だったかなと感じていた。「どうするべきか?」「立て直すには?」が欠けているとは思っていた。ただ現状では非常に難しい問題になっているのではと思う。

もう、所謂全国チェーンのジーンズ専門店(?)はライトオンとマックハウスぐらいだが年々ダウントレンドで、現状のMDも昔のジーンズ専門店ではない。アダストリアもアーバンリサーチも、もともとはジーンズ専門店からのスタートだが、方向転換して今があるのは、「先を見る力」があったと言わざるを得ない。ジーンズメイトも一時株主変更時、攻勢をかけたが失敗した。いろいろ考えても、いろんなハードルが高すぎて難しいという結論になる。

まだまだ地方では頑張っているジーンズ専門店もあるが、どうしてもブランドのエリア分断があり、ナショナルチェーンにはなれない。高知の「ジーンズファクトリー」や岡山、徳島の「ビックアメリカンショップ」、旧三信衣料系のジーンズショップなどエリアに根付いて頑張ってはいる。多くはデニムラインと「ダントン」「オーシバル」などBshop系の品揃え、SCなどのインショップでは「ノースフェイス」や「チャムス」などわかりやすいブランドのミックスで確実に運営されている。ブランドを卸している会社が、エリアを考えて専門店を選んでおり、なかなか全国チェーンには品揃えの壁がある。

厳しくなった会社が抜け出すには、管理主導で動くしかない。おそらく過去営業主導で動いて内容が悪化してきたと思う。そういう意味では、各数値の適正化を急ぐ必要がある。ライトオンの前年度実績では1店舗あたり年間売上は1.26億、月度売上約10.5百万、売価在庫は平均54百万となっている。今の売上を維持して回転率を年間3回転まで上げるとして売価在庫は42百万となる。その在庫で運営するとすれば、坪在庫を最大500千として80~100坪を適正坪数にするべきだと思う。現状の坪数は決算書でもわからないのだが、明らかに大型化が進んでいる。大型化により売り上げ効率が悪化し、さらに販売員の守備範囲が広くなっている。ジーニングカジュアルを続けるなら、接客の要素を上げるためにも販売員の密度は高いほうがいい。坪数の削減はデベロッパーとの交渉が難しいし、再度売場投資も発生するのでハードルは高いが、間違いなく最優先で整理すべき事項だと思う。

MDについては、頑張っている地方の専門店と同じMDは全国チェーンではできないだろうし、どうすればいいか言及できないが、テイストをジーニングカジュアルで進めるなら、もう一度デニムの品揃えや集積可能なトレンドとなるブランドを整理して、そのコーナーを確立させるべきだと思う。20~30坪で例えば重厚なウッディベースの内装でショップインショップ化を図ればどうだろう。その他の面積でキッズ含めた衣料品を買いやすい値段で品揃えする。坪数縮小でボリュームも出るし、イメージも固まる。売場内にインパクトある1角を作ることで売り場も締まってくる。

他人事で書いたが、言うだけならだれでもできる。金をかけて軌道修正するにはリスクも大きい。ただ現状の数字を見ていると、小売りとしての商売の基本と大きく乖離しているように思う。繰り返すようだが、営業面から対策を考えずに、管理面(数値面)からあるべき売場を考えたほうがいい。営業面から考えると失敗を重ねるだけのような気がする。売上計画より在庫計画、利益計画を重視して対策を立ててみてほしい。

今後も数字の流れは厳しいと思う。変革に注目している。

■今日のBGM

ライトオンは立て直せるか?

5月の小売業上場各社の既存店売上前年比を見ていたら、約半数の企業は100%超で堅調な数字だったが、メンズ色の強い企業が少し悪かったようだ。景気が悪い時に出る傾向で「お父さんのものは後回し」的な流れのようにも見える。中でも落ち込みが最も大きかったのはライトオンで既存前年比75.1%となっている。

ここ3カ月で見ると3月78.9%、4月82.7%、5月75.1%と低迷を続けている。ここ数年の業績悪化で、証券市場区分も去年の10月にプライムからスタンダードへ移行されている。

もともとはジーニングカジュアルを打ち出して大きくなってきた会社だ。ジーンズの追い風の中、売場も増え、売場面積も大きくなっていった。ジーンズ中心の売場は在庫金額が大きくなる。パンツのサイズもメンズでも27~34インチまで揃えなければならないし、中心サイズのストックを入れると1品番1色で10本以上の在庫が必要になる。近年はボトムのサイズ分類はアジャスターや脇ゴムでトップスと同じサイズで展開しているが、ナショナルブランドは依然インチ表示のままだ。一世を風靡したジーンズのボリューム感を持った店から、ファッションの流れの変化もあり、ライトオンも現状はジーニングテイストを持ったフル客層へのカジュアルショップに変わっていった。その環境下で商品量や値段で「ユニクロ」「GU」には太刀打ちできず低迷を続けている。

数字が厳しいので、買い物ついでで近隣のいくつかのSCで売場を見たのだが、迷走感が出ている。定番のジーンズもリーバイスも含めて割引商材が多く、特にメンズはセール品もアソートで取引先から借りているような商材が目立つ。ボトムに関して言えば基本デニムのリーバイス501が17000円の時代に売上を考えると品揃えもボリュームアップできない。レディス、キッズも在庫を抑えているのか、中途半端になっておりお客様は競合店に流れているように見える。

前期の決算書では売上前年比97.3%、売上総利益率48.1%(前年49.3%)経常利益-1046(百万)純損失-2545(百万)(前年-1166)、在庫回転率2.2回転(年)となっている。今年度上期は売上前年比86.6%、売上総利益率44.3%(前年50.1%)経常利益―1353(百万)(前年191)上期純損失―1617(百万)(前年―95)在庫回転率1.26(半期)前年1.12(半期)と発表されている。おそらく在庫過多を続けていたため、今期在庫縮小のための値下げを強行したが、在庫整理では売り上げアップに結び付かず、利益率を下げただけの状況だったようだ。この数字を見ると、現状の売場の状況は納得できる。

小売業の決算数字にはいろんなことが隠されている。ライトオンのように在庫整理をしたが売り上げに結び付いてないように、適正金額で商品在庫が計上されていないケースが多い。決算数字をよくするために在庫評価を市場評価と乖離させれば、悪い決算にならない。ライトオンも今上期に利益率を前年差-5.8%落として在庫処理を断行したが、売上前年比86.6%と大きく落としている。売上につながる評価にすればさらに利益率は落ち込んでいくと予想される。さらに不振店舗を削減するための除却損や、返却されるべき敷金と相殺される経費も大きく、数字が悪化すれば実数値は急激に落ち込む。まだ余力がありそうな決算数字だが、隠れているリスクも大きい。

再浮上させる策はあるのだろうか?

■今日のBGM

イオンモール浦和美園

見たい映画があり近隣では浦和美園のイオンシネマしか上映してなかったので行って来た。車で30分かかるので映画のタイミングでしか行く物件ではないのだが、またまた表題の物件について書くことを、ご容赦願いたい。

本当に潜在能力を感じるモールで、前回記したように交通の便もよく、行くたびに都市化が進んでいるように感じる。微妙な問題だが旧浦和市民をうまく取り込めれば、レイクタウンやコクーン、大宮駅前とは一線を画すことができるのではないかと思う。

今春、大改装を実施したようだが、収益が合わなかったのか、投資金額が抑えられていたのか、中途半端な改装になっている。物件のポテンシャルを誰も認識してないのかなと思う。この物件は都市型のRSCとして意識すべきだと思う。

まず、モールのグランドフロアのテナントの棚卸ができてない。契約期間の問題もあり移設はできにくかったのかもしれないが、誰かが腹をくくればできるはずだ。2階以上で展開すべきショップがそのままになっている。逆にその移設ができてないから上層階にまだ空床があり、上層階の魅力が上がってこない。ここでは具体的に記さないが、都市型のららぽーとなら間違いなく1階にはないテナントが多数あり、そのテナントがそのままになっている。

さらにユニクロ、GUを外部棟にするなら、ユニクロではなく外部棟のグレード感を上げてみることもできたはずだ(セレクトショップなどの誘致)。極論でいうと、モール棟での出店がユニクロと合意できないなら、イオンGMSの2階を渡せばよかったのではないか。(駐車棟とつながっているので出店メリットは大きい。)

イオン(GMS)の2階、3階だが、果たして合格点なのだろうか?前回改装した時(?)、感じたのだが、坪売りや効率がイオン内基準で想定されており、専門店や他の競合との基準とかなりかけ離れている気がした。つまりイオンではクリアされていても一般の土俵では全く戦えないのではないかということだ。「トップバリュコレクション」として改装されていたが、平場感をなくし立体感を見せただけで、商品のセグメントは変わっていない。以前より取引先との協業スペース(量販店販売員付きブランド)を大きめにとって自主MDの売場を小さくして効率を上げようとしているが、おそらく大きな変化はないように思う。イオンの平場から、次の「ユニクロ」「GU」「無印良品」を作るべきステップとして改装するべきだと考えるのだが、そういう話し合いの結果がこの改装なのだろうかと思う。この売場ならやはりGMSの非食品(特に衣料服飾品)はいらない。

店舗数が多くなると、個店、個のSCの位置づけが見えにくくなる。特にイオンのように上場企業になればコンプライアンスの問題もあり、責任者は同じ部署(SC)に長く駐在できない。そのSCを一番わかっているのはSCの責任者であり、本部のスタッフではない。 SCに思い入れをどれだけ持てるかで、物件の価値は変化する。SCの数も多く、責任者も在籍時の数字しか考えないと 、思い切った店舗戦略をとれないのかなと思う。

どこでも一緒のイオンモールと「ららぽーと」の差はそこにあるのかもしれない。

■今日のBGM・・・「トノバン」見てきた。このアルバムは学生時代大きなインパクトがあった。

ファイブフォックス

ファイブフォックスの会長だった上田稔夫氏が亡くなられた。ファッション業界に一時代を築き上げた人物だ。ファイブフォックスはDCブランド全盛期の「コムサデモード」「ペイトンプレイス」などを展開していたファッション業界の大企業で、2000億超の売上で経常利益率もピークは13%あったとのことだ。

ファイブフォックスは黒を基調にしたモードファッション「コムサデモード」がメインブランドで、少し宗教染みた会社というイメージが強い。開店前に大きな声でスタッフ全員声を合わせて挨拶をしていたのを何度も見た記憶がある。商品の中に台紙を入れて同じ大きさに合わせて商品整理を徹底し、VP(演出)はモノトーン基調で固めており、さらに店内音楽はビートルズで統一していた。上田氏はファッションビジネスで大事なのは「商品」「店舗」「在庫コントロール」だと言っていたそうだ。全くその通りだと思う。

DCブームの後、 「野菜売り場の近くに大きな店を出せ。」との大号令で、「コムサイズム」を立ち上げ、脱ファッションビルで大型モール(GMS)に参入したのもファイブフォックスだった。「野菜売り場」はお客様が必ず通る。つまりデイリーのお客様の目につく一番の場所にファミリー市場の店を出した。この業態はファッション業界の常識を覆した。これが今のモールのファッション大型区画のスタートだったと思う。

昔の仕事柄、各ブランドの開発担当者と打ち合わせをしていたが、ファイブフォックスは冷たいイメージが強く、特に弱いデベロッパーには強気だったような気がする。売れているブランドはえてしてその傾向が強いが、大手だった「ビギ」や「ニコル」よりその印象は強い。それだけブランドの位置づけを大事にしていたのかもしれない。

コムサブランドはモードテイストの黒を基調としたMDブランドで、他の黒基調だった「ギャルソン」や「ワイズ」などデザイナーブランドよりクリエイティブさはなく、店舗イメージや演出、売り方を差別化させて、そこを武器にお客様を引き付けていたと思う。ただ、やはりモノトーンのMDブランドとして感じられてしまうと、ブームが去ると厳しい状態になっていった。現在年商が200億くらいということだが、それでもすごいと思ってしまう。売り上げの中心は「コムサフィユ」(子供服)ではないかなと思う。

商売哲学の「商品」「店舗」「在庫コントロール」については記事を読んで初めて知ったが、「商品」は小売業では共通だが、「店舗」「在庫」を意識していたことには共感する。あのレベルまで売場のイメージを固めてしまうと逆にマイナス要素になるかもしれないが、「おたたみ」のマニュアルや演出は驚かせた。コムサ憲法と言われるマニュアルがあると聞いたこともある。環境面を含めた店舗マニュアルは必要だと思う。「在庫」に関しては常々私自身も商売の基本だと思っているので、このブログでも一番ページを割いている。ファッションビジネスで大事なことと言っていたことには強く共感する。

改めて、デザイナーブランドでなくMDブランドで年商2000億まで育て上げた力量には時代背景もあったが、「すごみ」を感じる。

ただ、私はファイブフォックスの服を自分用には買ったことはない。

■今日のBGM

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