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6月の悪い数字が意味すること

6月の売上実績が各社発表されている。曜日の問題、気候的な問題や夏のバーゲンの日程変化もありファッション業界各社の数字は非常に厳しい数字になっている。好調とされている企業でも大きく落ち込んでいる。

ユニクロは前年比85.9%であり、1年間を見ると前年割れは3回目だが80%台は過去2年間を見てもない。無印良品は91.9%でシステムエラーにより売上を大きく落とした11月以来のワースト2の数字になる。常に好調を維持していたABCマートやワークマン、ユナイテッドアローズも店舗売上は前年を割り込んでいる。

ずっと商売をしてきて6月や10、11月は難しい月だった。過去、2、8月も端境期でもあり厳しい月と言われてきたが、近年は夏や冬が長くなった感があり売上としては厳しい月ではなくなっている。特に8月は夏が長くなり、夏物の消化が進み「売れる月」に変わっている。かつては、6月の認識はバーゲン前で「利益を稼ぐ月」であり、春夏の利益着地を占う意味で難しい月だった。つまり、バーゲン期のセール商材の確保し、できるだけ定価で販売し、利益をどれだけ貯められるかが求められた月だった。

バーゲンは値段を下げて販売する。普通に考えれば大きく値段を下げれば下げるほど利益を削る。その対応として6月は利益をためる月だった。今でもそうだが、取引先も在庫は残したくないので、5月末くらいから取引先の在庫を減らすべく手持ち在庫の原価を下げて商売する。例えば原価50%だった商品の原価を35%にして商談する。それを仕入れてセールまでに売れれば、利益がプルできるということになる。その後バーゲン時に50%オフで売っても利益率は30%確保できる。そのプルした利益で、手持ちの商品をバーゲンで売っての利益ダウンを防ぐ。そういうストーリーだった。近年はどうなっているかわからないが、当然自主MD商品は利益計画を持って値段を下げているはずだ。

そんな状況下で、利益を稼ぐべき月に売れてない。販路が国内だけではないが、ユニクロでも6月の前年80%台は、当然利益計画にも影響を及ぼす。そして、2桁以上のダウンはそれだけの商品が予定より残るということにもつながる。その商品を売り切るのに、さらに値段を下げざるを得ず、それが利益低下要因にもなる。ただ、ユニクロは当初から商品の動向をチェックし、細かく商品の値段を下げ、他のセール名(感謝祭など)で売れない商品はなくしていっている。

国内中心の販路しかない企業はさらに厳しくなってくる。夏のシーズンが8月9月と広がってきても、もう一般客はセール価格でないと買わない。そして、晩期になってくると割引率も上がってくる。つまり、夏商材の販売期間は伸びても、利益を稼ぐ期間は伸びてこないという現実がある。さらに秋物が飛んでしまう。ここ数年秋物商品(春物も・・・)がなくなってきた感がある。その対策上「春色夏物」や「秋色夏物」が出てくるが、あまり売れているという話は聞かない。

各社、春商戦の四半期決算は悪い数字ではないが、次の四半期決算でどういう数字が出てくるか興味深い。6月の商売の結果が「在庫を増やして利益率に走る」企業や「消化率が悪く利益ダウン」企業を生みそうだ。

企業力が試される。

■今日のBGM

本当に中小小売業は成長できない

もう新しいテナントは、中小企業から現れない。このブログでは、ずっと書いているが、さすがにデベロッパーも気が付いている。あれだけ急ピッチで開発してきたイオンモールも国内新規SCは八王子と福島県の伊達しか発表されていない。八王子は専門店数が21ということで新業態としての位置づけのようだ。ららぽーとも2029年に府中を計画しているのみとなっている。テナント構成はおそらく他のSCと変化なく大企業のテナント中心になり、そこに地元店が数店舗入店するおなじみのラインナップになると思う。もう個性を出したテナントは入店せず、わざわざ行ってみたいRSCは出てこないと思う。そうなった原因は、イオンモールを中心とした大型モールの乱立にも一因がある。

まず、一般的に中小小売店が事業拡大するには、エリアで地道に商売し、認知され店舗を増やしていくしかなかった。土地コストの安い地方から始まったモール戦略が、地方のそういう店舗を導入してモールの認知力を高めていった。そして急激なモール数の拡大に合わせて、出店を重ねていった地方発祥の店舗が完全に息切れしていった。大企業がモール用のブランドを開発していくにつれ、フロア変更や条件変更もあり、フェードアウトしていった。企業力が、急激なモール事業の拡大についていけなくなってしまった。逆にモールも大企業のどこにでもあるテナントが多くなり、個性化が図れなくなっている。そして、近年のRSCは大企業のテナントが多くなり、さらにテナントの大型化もあり、条件面のしわ寄せが中小型店舗に来ている。その結果、完全に中小小売店は成長できない状況に追い込まれている。

ただ、今でも頑張っている地方の名店はある。特にセレクト店舗が多い。そういう店は、販売スタッフを大事にする。待遇よりも商品が好きで働いているスタッフが多いからだ。大事な顔見知りのお客様とファッションの話をしたいスタッフだから、わざわざその店まで買いに来てくれるお客様を大事にする。オーナーはそういうスタッフやお客様を大事にする商売をしている。SCの環境は個店のお客様を大事にしにくい。かつて、SCに出店していた個性的なショップはそれが理由で退店していった。

ただ、そういう名店も長くは続かないように思う。主には「人対人」で成り立っているからだ。まず取引先との問題。ほとんどがカリスマ的なオーナーとの商売から始まっており、そのオーナーとの意志がどこまでつながっていくかだ。人が変わると突然ビジネスライクになることもよくあることだ。商売条件の変更もあり得る。さらに、「次の顧客」を開拓できるかだ。「人対人」はお互い年をとる。つまり「顧客の若返り」も課題になってくる。地方にその課題解決はできない。

もうよほどの名店でも、地方で路面店だけでは生きていけない。だから、地元の名店がRSCの1階に出店したりする。ただ、近年はデベロッパーが好調テナント(ユニクロや無印等)の大型化を断れなくなっており(近隣他SCへの移転を防ぐ)、そういう地方名店がそのあおりを受けて消えていっている。さらに大型区画にして出店している名店もあるが、売場からはその強烈な個性は消えている。

モールのリーシング担当者も、複数ショップを展開する取引先と出店交渉する方が話は早いし、まとまりやすい。さらには大きな区画も提案できる。そうなればさらに中小小売業の出店の余地はない。以前の会社でも、あるSCでは隣接大型テナントの拡大で収益店舗を退店したこともあるし、出店交渉で前向きに動いていたが、大企業からの横やりで話がなくなったりしたことがある。

人手不足も重なり、もう中小小売業は事業拡大に前向きにはなれない。逆に整理する時期になっている。

■今日のBGM

この流れでは小売企業は利益率を求めてくる・・・

友人と話していると、小売業に販売員が全く集まらない状況らしい。当然の流れで、これからもずっと続くことは予測される。全国の企業で給料アップが続いており、大卒初任給の平均は24.8万円となっている。大都市近辺はそれ以上になるらしい。これを時給換算すると22日8時間勤務で1410円になる。アルバイトの地域最低時給も全国加重平均値は1121円になっており、東京、神奈川では1200円超で、低い県でもすでに1000円は超えている。そんな中、小売業では最低時給ではスタッフが集まらないようだ。立ち仕事で土日勤務になれば当然かもしれない。さらに調べてみると、ユニクロの正社員の初任給は37万円、転勤なしでも28万円となっている。無印良品は学歴関係なく27.4万円のようだ。

厳しい労働環境で、給与が低ければますます販売員は集まらない。当然どんな企業でも給与を上げる。上げなければ高賃金のところに流れる。最低賃金だけではなく、既存社員の給与を上げなければ給与ピラミッドが崩れてしまう。既存アルバイトも当然時給はアップさせる。さらに「106万の壁」がなくなり、企業の社会保険料の負担も増える。つまり企業の人件費はどんどん上がっていく。人件費が上がっていくと労働分配率も上昇する。そして労働分配率を抑えるためには、企業として利益率を上げようとする。営業数値上、当然の政策に見える。

ここでいつも問題になることがある。無理に利益率を上げようとすることだ。トップがその政策を出せば会社はその方向に向かう。施策としては、高値入率商品を数多く投入する。値下げは極力控える。単純に売れる高値入商品を入れて、順調に消化し、さらに追加フォローも順調に流れれば問題なく利益率は上がる。利益率が上がれば、人件費分をプラスされた利益額でカバーされ、労分率は上がらない。ただ、商売はそんなに簡単ではない。順調に売れて、仕入も継続できる商品などほぼない。つまり、結果的には利益は改善できても売上が改善されなければ、仕入れた分当然在庫は膨らむ。そして不稼働在庫が増える。不稼働在庫の値段を下げて処分しなければ回転率も悪化する。

どんな企業でも不稼働在庫は処分していかねばならない。ファッションライターの小島健輔氏はユニクロのシーズン通しての平均値下げ率は10%~15%と試算している。回転率が高そうなユニクロでさえ年間これだけの値段を下げている。為替の変動やボーディングコストの上昇もあるが、ユニクロの利益率が54%台というのは適正価格を追求している結果だとも言える。ユニクロのように完全にSPA型MDで回転率も考えている企業でも、利益率は「商売の結果」として納得できる数字になっている。

つまり、利益率は「商売の結果」だ。利益率を無理に上げようとすると、どこかにひずみが生まれる。一般的には、売上が伸びず在庫が膨らみ回転率が悪化する。

数字だけで経営をしてはいけない こういう時こそ、現場主義になり、現場発の提案に耳を傾けるべきだ。商売はやはり「売れてナンボ」の世界だ。

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2強「ユニクロ」「無印良品」に続くショップは?

前回も書いたが、今後は「中心客層の高齢化」へ加速度的に変化していく。すでに2025年度には50代以上人口構成比が51.7%となっている。逆に、トレンドリーダーだったティーンズヤング層は、大幅に減少している。その流れを理解してMDを構築しているのが「ユニクロ」「無印良品」だと思う。今後、この変化に対応して、続いていく企業はどこだろうか?企業力から考えれば「アダストリア」と「パルG」になるが・・・

「アダストリア」では筆頭に挙げられるのは“グローバルワーク”だが、過去何度か方向性を指摘したが、もう完全に既存イメージが強く、大きな変革はおそらく難しいと思う。企業としてはフラッグシップブランドにしたいのだろうが、ターゲットの客数ダウンが響いて、今後の売上大幅アップは厳しいのではないだろうか。

面白いと思うのが“スタディオクリップ”。女房がイオンモールに行くと必ずチェックするのが“ユニクロ”“無印良品”“スリーコインズ”と“スタディオクリップ”の4ショップ。“スタディオクリップ”はナチュラルテイストで素材感も感じるし、雑貨の比率も高く自然体のイメージがある。「アダストリア」合併前は店のテイストをヨーロッパっぽくしていたように記憶する。そして、できれば今のショップにメンズも加えてほしい。最低限のワードローブから始めていけばいいと思う。「アダストリア」ならできそうにも思うが・・・少しずつ大型化していけば、ちょっと違う匂いの「気の利いた」フル客層型の大型店になりそうだ。余談だが、昔高崎サティ(ビブレ)で働いている時、創業者とも会ったことがある。(前橋の会社で、アダストリアに売却前。尚メガネのJINSの田中会長も昔在職していた。)

「パルG」は“チャオパニック“がその位置に近いが、やはり少し若すぎる。“コロニー”でそこを狙おうとしたのか、少し若すぎたのか失敗しているようだ。もし可能性が少しでもあるのだとすれば“スリーコインズ”の延長線上にあるファッションを開発できないかと思う。安い服を提案するのではなく、”ダイソー“で買わず“スリーコインズ”で買う客層を見極めてのMDを考えられるかだとは思う。少しハードルは高いか・・・それに少し無印良品よりになるかもしれない。

ロープライスゾーンでは「しまむら」や「西松屋」は残りそうで、全く逆の百貨店特選客も必ず残る。あとは「ワークマン」などの目的型ウェアも残る。さらに、ネットのウエイトも上がるし、必然的に販売員も減っていく。当然、店舗数はどんどん減っていく。そうなれば、企業数も減っていくし、SCの数も減っていく。

書いているうちに、暗い結論になってしまった。

■今日のBGM

こういう店は成り立たないだろうか?

テレビでは年金受給者が、生活苦で安いスーパーを選んで買い物している様子を放送していたり、エアコンなどの節約場面が多く放送されるが、はたしてそれが本当の姿なのだろうか?周りを見ていても、そこまで厳しさを話す友人はいない。

現状の年金受給者の平均年齢は厚生年金が73才、国民年金が75才となっており、平均受給額夫婦2名(夫が会社員、妻が専業主婦)で月額22~23万となっている(アクサ生命資料)。その平均的な世帯の金融資産は平均値が60代1862万円、70代1758万円(三菱UFJ信託銀行資料)であり、さらに所有土地建物が1200万~1500万(税金上の評価額)で持家比率も91.7%(七十七銀行資料)と高い。これをどう見るかだ。

年金受給者で、年齢を重ねて常々思っていることだが、着る服がなくなってきている。ずっとカジュアルで過ごしてきたので、オフィシャルな装いがない。ジャケットやパンツ、靴はとりあえずそろえたが、必要ないかもしれないのでバリエーションはない。カジュアルも少し若作りの着るものが多くて(例えば夏はほとんどショートパンツ、ジーンズ)、実年代とのギャップが出てきている。逆にスーツ族だった人たちはカジュアルのバリエーションが少ないのではないだろうか。

そこで何か買いに行くのだが、「ユニクロ」や「無印良品」でいいのかと思ってしまう。散歩にはいいが、ちょっとした外出や旅行にはそれでいいの?となってしまう。でもそこまで高い商品も買えない。となるとなかなか買う場所はない。アウトレットにもよく行くが、やはりデザインが若くなっており、なかなかしっくりこない。

昔「無印良品」が頑張っていた100双のシャツやシェットランドセーター、本格デニムなどをあの当時の値段で探せないかと考えてしまう。現状の「無印良品」はどんどん売場が大きくなっていっているがファッションはボリュームゾーンの単品量販型になっており、ことメンズで言うと商品も「ユニクロ」と被る。売場を別展開にして昔の無印良品が貫いていた商品へこだわりを集めたコーナーを作れないものだろうか?その売場だけ内装面にも少しコストはかければ十分差別化はできるし、値段志向に走るより感度は上がる。もともとのコンセプト回帰にもなる。

百貨店で金をかけるほどでもなく、「ユニクロ」や今の「無印良品」の商品では満足していない層はかなり多いように思う。かつてセレクトショップでスーツを買っていた客層は、まだセレクトショップで買っているのだろうか?当然大幅に減っているだろう。そこを狙う企業は出てこないのだろうか?

再度データを拾ってみる。今のヤング層10~20代の人口構成比は17.5%で10年後には15.8%までダウンする。10~30代にしても27.8%から24.6%と3.2%のダウンとなっている。これが60才以上の構成比は35.5%から37.1%と上がり、50代を加えると51.7%から55.8%と4.1%も上昇する。ちなみに2025年度中に50代以上の構成比は51.7%と50%を超える。まちがいなくヤングターゲットより狙うべきターゲット客層になる。

ただ、いろんな店を見てもそのターゲットを狙っている店は少ない。そういう狙いの店もあるが、あくまでも若返り志向を大きなテーマに捉えている。単純に、在庫負担を減らすことも想定しての脇ゴムのパンツにはどうも抵抗があるし、デザインも若返り志向が強い。前述したが、大型化している「無印良品」や大型化と客層の拡大を狙っている「グローバルワーク」にそんなコーナーは作れないだろうか?

自分でも金とパワーがあればやってみたいが… うまくはまると案外成功するかもしれない。

■今日のBGM

なぜ「在庫評価損」を毎年計上しているのか?

前回「在庫評価損」について書いていて、腑に落ちなかったので、少し調べてみた。前回イオングループの「ジーフット」について書いたので、同じくイオングループのカジュアルファッションで上場企業の「コックス」も調べてみた。ちなみに前期(2026年)の評価損金額は未発表で計上済とは記入されている。簡単な数字は以下のようになる。

2026年度 総利益率62.2% 回転率2.9 

2025年度 総利益率62.5% 回転率3.2 評価損6.2億

2024年度 総利益率62.7% 回転率3.6 評価損5.3億

2023年度 総利益率57.8% 回転率3.7 評価損5.5億

2025年は期末在庫金額が19.5億なので評価損の金額がいかに多いかよくわかる。

もともとカジュアルファッションの企業なので期中に自由に値段は変更できる。セールで売り切ればいい。普通の企業ならキャッシュが欲しいのですぐ商品を金に換える。次年度迄商品を繰り越すとすれば、ブランド品で割引の規制がある場合や、競合店とのバッティングで取引先との整合がある場合くらいだ。この数字は、キャッシュに心配のない企業で数字コントロールしてればいい大企業サラリーマン経営に見える。さらに付け加えると、期中に値段を下げて利益率を落とすと株価にも影響が出るので避けているとも見える。

一方、「どれだけ売れない商品を仕入れているのか?」ということになる。利益率ありきで、利益率を稼ぐために仕入れているという見え方もある。推測で書くと、「売上が大きく上がらないので利益率志向になる」→「原価率を下げた商品を大量に作る」→「売れずに残る」→「次年度に向けて評価を下げる」→「次年度セールでたたき売る」(利益も回復する)の構図を続けている。商売ではなく「数字合わせ」になっている。

利益率62%という数字だが、ファッション小売業での前期の総利益率はパルG57.5%、アダストリア54.7%、ユニクロ54.1%であり、海外生産が多い大手小売企業でも60%を超えてこない。おそらく利益率を念頭に置いて、原価率を抑えた物づくりを進めていたのではないかと思う。商売は「売れてナンボ」がわかってない。さらに商品回転率の数字もパルG5.84回転、アダストリア4.64回転、ユニクロ3.19回転に劣る。つまり商品が動いていない。

ここまで書いて、いやな気分になってきた。「売れる商品を売れる値段で売る」という簡単なストーリーが崩れてしまう。海外で安く商品を作って相場より3割くらい高く値段をつけて販売し、利益率を稼ぎ、売れ残ったら決算で評価替えをして次年度売り切る。これをずっと繰り返している。何の仕事をしているのだろうと思わないのだろうか?そして、もっと嫌な気持ちを持っていると思うのは現場(売場)だ。おそらく売場が商品の動向を一番わかるし、売れない商品を押し付けられていることも分かる。それだけで士気が下がる。こうなると数字は改善していかない。

こういう流れを見ていると、「コックス」はファッションを売る小売業ではなく、イオングループの商業施設に出店するだけの手段としての小売業にしか見えない。それはそれでイオングループには必要な会社なのかもしれない。

経営理念は何だろう?お客様を見て商売しているとは思えない。こういう商売を今後も続けていていくのだろうか?

■今日のBGM

セレクトショップ、どこへ行く

日経新聞日曜版の特集記事のタイトルだ。以下の文面から始まる。

“1970年代後半から次々に誕生した「セレクトショップ」。バブル崩壊で混迷した90年代、ユニクロやファストファッションが勢いを増した2000年代もかいくぐり、約50年も過ぎた。欧米のファッションを紹介することから始まった店は今、寺の境内にオープンしたり、ソーラーシェアリングを手掛けたり。セレクトショップはどこへ向かうのか?”

写真付きで紹介されているのは「ロンハーマンのソーラーシェアリング施設」「善光寺境内にあるビームス」「工芸品、骨董品、生活雑貨のタバヤユナイテッドアローズの2階」「ユナイテッドトーキョーの日本製」「デイトナインターナショナルの映画グッズ」。その他、地方での地元との取り組みで「桐生市のst companyのイベント」「古河市のフリークスストアのワーキングスペース」「匝瑳市のロンハーマンの有機農法」「富士川町でのビームス社員のキャンプ用品」。

セレクトショップとしての「数字よりもマインド」を紹介した記事で、表題の内容とはかけ離れているような気もする。どの紹介事業も大きな数字に結び付くわけでなく、企業の生き方を表現したかったのだろう。記事のサブタイトルは「What’s next?」であり、「⁇一番かっこよくて美しいもの⁇」「⁇人が楽しそうにいてくれる場所⁇」とある。

このブログでも、セレクトショップを運営する企業の将来性についてはまとめたことがある。現実的には、高齢化が進みトレンドリーダーであるヤング層が大幅に減少する。上場企業である「ユナイテッドアローズ」「TOKYO BASE」はターゲット客層を広げないと、上場の維持が厳しくなる。大手と言われるセレクト運営企業も存在価値を明確にし、その方向性を示す必要が出てくる。片方で、世間に媚びずに生きていく戦略もある。企業としての「思い」を共感できるお客様を増やして、存在価値を示していく。これがこの記事の主旨だろうと受け取れる。ただし、これによって大きな企業力の拡大はあるのだろうか?

この記事にある、桐生のst companyの社長には30年以上公私共にお世話になった。路面店でDCブランドを数多く展開していた時からよく存じ上げている。商品調達面で、20年以上海外出張も続けている。この路面店を作る時も工事中にもお邪魔したし、その後もいろんな話を伺った。セレクト中心になり、路面店中心に商売を移して勝手ながら心配していたが、ネットの販売力もあり、取引先との信頼関係も厚く、そして何よりも強い熱意が固定客を増やしているようだ。

st companyの成功例を見ていると、逆に、今後のセレクトショップ運営企業は、商品感度を維持できるのなら、環境に恵まれた地方都市に個性的な店を持つことも、1つの戦略かもしれない。ターゲット客は大都市集中になることが予測されるが、逆に地方でも中心都市でなく、売場環境を整えられる場所で商売する方が広域から集客できるのではないかと思う。上述した桐生市のように地方の中心都市でなくても、店のイメージや商品やブランドに希少価値があるなら近県のお客様は東京よりも行きやすい。st companyのように常に新鮮な商売をしていると、どんどん商圏も広がっていくような気がする。そうなれば、人口減も商圏拡大で補える。

世間で言われる大都市が少なくなっていく将来を考えると、地方でも売場や商品で個性を打ち出し、商圏を広げていければ、十分に立ち向かえるかもしれない。ただ、常に進化し続ける計り知れない努力は必要になる。

■日経日曜版の「st company」のイベント写真

久しぶりの神戸

私用のついでに、久しぶりに三宮に行ってきた。10年ぶりくらいかも知れない。印象に残ったのは、神戸大丸と居留地のテナントが従来のお客様を依然集めていることと、南京町の観光客の多さだ。その反面、気になることもあった。

神戸大丸の居留地の開発は1987年のスタートとなっている。その当時見に行った時、「アニエスベー」が大丸南側の一角(38番街)にあり、売場に大きな円形金庫がむき出しで、その売り場造りに大きなインパクトを受けた。もともと外資系銀行の跡だったようだ。その後ラグジュアリー系のブランドなどを居留地跡に誘致し、現在では60店舗前後のブランドが店を構えている。その「アニエスベー」の跡も、改装中ではあるが「エルメス」に変わっている。その中心にあるのが神戸大丸で、このブランド開発がいまだに神戸のお客様に支持されている。売上は前期984億で、今期は1000億超えと発表されており、ピーク時に並ぶ数字になる。三宮駅前の旧そごう(現阪急百貨店)が今期売上520億でそごう時のピーク1500億から数字を大きく落としていることを考えると、立地面のマイナスを考えれば驚くべきことだ。ちなみに、当日も客数は平日にかかわらず非常に多かった。

すぐ近くにある中華街の南京町は、夕食の時間前だったが、非常に観光客が多かった。店舗改装で仮の場所で営業している「老祥記」は50人以上の列があった。昔たまに行った「民生」はオープン前で、献立を見ていたら、人気の「いかの天ぷら」「レタス包み」が3000円を超えていて、それでもオープン待ちのお客様がいた。海外客の方が多かったように見えた。

ただ、三宮はどうだったと聞かれれば、大丸近辺以外は普通の街になってしまったという印象かもしれない。今は、JR駅前が再開発をしていて工事中のインパクトが強く、街の雰囲気が見えないということもある。

「三宮といえば高架下」というイメージがあり、その昔の面影も年々なくなってきつつあったが、現状ではほとんどそのイメージはなくなってしまった。邪険にされながら靴を見ていた「森田屋」もなくなっている。すっきりした「タイガースブラザーズ」はあったが、ほぼ空きテナントだらけになっている。耐震工事以降、賃料の高騰や内装制限の厳しさが原因のようだ。

センター街は、地元商店がなくなり、ナショナルブランド(アダストリアやパルグループなど)の店が増えている。地元資本から大手資本に変わってきている。地元商店は商売するより賃貸の方が楽だからかもしれない。さらに、少しボリュームカジュアル層が増えているようにも見えた。昔のビブレがドンキになっていたり、どこの町でも見える光景で、三宮らしさがなくなってきたように見えた。ただ人通りは多く、ここでも観光客が非常に多かった。

三宮駅前のそごう跡の阪急が、そごうピーク時より1000億近く売り上げが減少している。高架下の少しとがった面白い店が消えて、その客層もどこかへ行ってしまった。当然そういう売上は他の商業施設へ移っているだろうが、その痕跡が見えにくい。

神戸にあった一般企業の支店が、大阪支店に統合されるケースをよく聞くように、関西の大阪一極集中が進んでいる。特に神戸は開発が急ピッチの梅田に直結する。電車で20分の距離でもある。東京に対する横浜と比べて、面積が小さく、東西に細長い。つまり、大阪の衛星都市の1つになりつつあるのかもしれない。神戸らしい大丸界隈の売上は維持しているが、その他の客層の流出が大きそうだ。今工事中の再開発に期待するしかない。

ただ、福岡の再開発物件のように「高級ホテル」+「オフィス」+「ハイブランド」のようなビルは三宮には必要ない。

■今日のショット(寂しい高架下)

渋谷に百貨店がなくなる

渋谷西武が今年9月で閉店になるらしい。池袋西武が半分の大きさになった時に、こうなっていくだろうとは予測できた。間違いなく百貨店は高年齢富裕層と外国人のための商業施設になった。

ギャルファッションの時代まで渋谷は若者の街だった。1970年代からずっとそうだった。50年で街は変わる。50年で商業も変わる。西武百貨店、シード館、パルコ4館、ロフト、パルコ劇場に加えてマルイ2館、さらにジャンジャンや屋根裏などのライブハウス。渋谷駅からNHKまでの公園通りは西武が開発したと言っていい。文化を作っていった百貨店だったと思う。そして、道玄坂にあった東急百貨店もなくなり渋谷から百貨店が消えてしまう。

百貨店は呉服系と電鉄系に分類される。前者は三越、伊勢丹、高島屋、大丸、松坂屋など、後者は阪急、西武、近鉄、東武など。当然歴史ある呉服系百貨店の方が格式は高い。漢字が似合う百貨店は呉服系が多い。そして、残っていくだろう百貨店も限られてくる。1990年代の百貨店のピーク売上は9.7兆円とされており、その売上が20年前には7.8兆円までダウンし現状は約5.7兆円となっている。ピーク時売上の6掛け程度に落ち込んでいる。

立地を見ると、大都市と地方中心都市しか残っていないし、さらに中途半端な地方中心都市からはどんどんなくなってきている。少なくても人口100万都市以上でないと今後の存続は難しそうだ。さらに、地方中心都市ではかつての商業集積エリアから駅前立地にシフトしており、福岡での博多阪急や札幌の大丸札幌の伸びが大きい。今後はさらにその傾向が大きくなると予想される。つまり、百貨店を中心にした街から、ターミナル駅を中心にした街への変化が顕著だ。

そして、百貨店客層はどんどん高齢化が進んでいる。三越伊勢丹の戦略データでは最も多い年代層は50代以上で、来店客の40~50%は50代以上が占めている。さらに、近年はインバウンド需要の構成比が上がり、2024年度はインバウンド売上が6500億弱で、その構成比は10%を超えている。ただ都市部に集中し、新宿伊勢丹、銀座三越、梅田阪急は売上の20~30%のインバウンド構成比があると言われている。

話が総論になってしまったが、渋谷西武は街の生い立ちもあり、若い客層の百貨店だった。それが、もうすでに渋谷は西武が開発してきた若者文化の街ではなくなりつつある。1990年代のピーク時700億前後の売上が、客数、客層の変化で250億前後まで落ち込んでいたようだ。この売上では、地方百貨店で自社物件であれば何とか持ちこたえられるかもしれないが、都心の賃貸物件では大きな赤字を背負っていることは間違いない。

ただ、渋谷西武閉店のニュースでは、百貨店問題以外で感じることがある。カリスマ経営者がいかに偉大だったかということだ。その跡を引き継ぐのは並大抵のことではない。西武の「文化的街づくり」は堤清二氏に発想によるところが大きい。その考えが渋谷を作ってきた。その流れは「無印良品」まで及ぶ。流通王国を築いたダイエーも中内功氏の志を引き継げなかったし、伊藤雅俊氏のイトーヨーカドーも同じ流れだ。当然時代は変化するが、偉大な痕跡を残した創業者の志を引き継いでいくということは大変なことなのかとも思う。そういう意味では、歴史を引き継いできた老舗百貨店が生き残っていくのかなとも思ってしまう。

つくづく、企業を継続するには、経営者の思いが大きな要素を占めるのだと痛感する。

■今日のBGM

「ビームスハート」 ららぽーとへの出店の意味

ビームスが「ビームスハート」を、2月トーキョーベイ、3月柏の葉、横浜、エキスポシティに、ららぽーとへの出店をしていく。

「ビームスハート」は従来ビームスのアウトレットでのメインブランドだった。セレクトショップのアウトレットについてはこのブログでさんざん書いてきた。アウトレット商品よりアウトレットオリジナル商品が多く、おそらくこのブランドが半分以上占めているように見えていた。つまり本来の「売れ残った」商品ではなく、そのために作られた商品を売っていたということになる。それは本来のアウトレットの姿ではなく、逆に数字を稼ぐ場所になっているように感じていた。これは、ビームスだけのことではなくアウトレットの数字の伸び悩みにも通じている。(セレクト系ではトゥモローランドにはそういう商品はなかったように見えたが・・・)

このブランドで大型モール(RSC)に出店する意味はどこにあるのか?間違いなく販路の拡大だと思う。従来のブランドなら出店をしなかったRSCの客層へ、顧客幅を拡大したいということだと思う。ユナイテッドアローズが「グリーンレーベル」で、ベイクルーズが「レリューム」や「ジョイントワークス」でのRSCへの出店とほぼ同じ意味合いになる。

セレクト系と言っても幅は広いが、従来のセレクトショップやベイクルーズ、上場しているトーキョーベース等も加えると売上規模は5000億強と想定できる。上場企業はユナイテッドアローズに加えて上記したトーキョーベースがある。MD型大型アパレルのパルグループやアダストリアにも同形態の店もあるのでその規模はもう少し大きいかもしれない。ただ今後の人口減少や高齢化を考えると、従来の顧客は減っていく。国内アパレル市場の売上は2024年度約8.5兆と言われている。コロナ前の9.2兆から回復していない。さらに今後の人口減少、高齢化、若年層の大幅減少を考えると、20年後には5~6兆まで落ち込む可能性は高いと言われている。

別の角度で見てみる。セレクト系上場企業であるユナイテッドアローズとTOKYO BASE 2社の株価の動きを確認する。ユナイテッドアローズは1999年上場で初値は15000円だった。その後分割を3度しており、修正の初値で言うと3125円程度になる。そして現状の株価は2500円を下回って変動している。TOKYO BASEは2015年上場で初値は1230円、分割を繰り返しており修正すると初値は171円程度になっている。現状は400円を切る株価で推移している。当初株価を大きく上回るが、分母がなかなか大きくなっていない。近年の売上は両社とも小売業の中では安定して伸長しているが、株価に反映されていないように見える。考えられる要因は、在庫の重さもあるが、客数の大幅減が想定され、この業界(セレクト系)の成長が見通せないからだと思う。

客層の幅を広げるため、従来戦ってきたセレクト系からRSCを主戦場とするボリュームゾーンへの挑戦は、そんなに簡単なことではない。売り方やプライスラインに大きな違いが出てくる。感度、感性よりも値段への比重も上がってくる。何よりも競合各社にはそのゾーンで戦ってきたノウハウが蓄積されている。

出店した1~2年は、プラス効果はあると思うが、アウトレットの商売のようには甘くはないと思う。逆に、さらに従来のセレクト要素を追求して、安定した顧客を作ることに専念した方がいいのではないだろうか?特にビームスは上場企業ではないのだから、安易な方向に乗り出さなくてもいいのではと思ってしまう。

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