カテゴリー: 専門店 (1ページ目 (18ページ中))

持論「在庫を持つ商売は失敗する」の検証 

GW中で、企業の本部は休みでIRもなく、春物と夏物の切替期でもありファッション業界での発信も少ない時期だ。そういう時期なので、このブログでは再三書いてきたが「在庫を持つ商売」について現状の検証をしてみたい。

小売業は「売上」「利益率」「在庫」が3大要素だが、どうしても「売上」の額、前年比に目が行き、その次に利益額を算出する「利益率」に注目する。「在庫」はPL(損益計算書)には出てこないので見落としがちになる。「売上」を上げていくには売れる商品を仕入れて売っていく事になる。売れない商品や売れなくなった商品は値段を下げて処分していく。値段を下げると「利益率」はダウンする。「利益率」を維持するために処分せず値段を下げないでいると、「在庫」が増えていく。

「在庫回転率」という指標がある。月度では「売上」÷「在庫」(平均在庫)で計算される。その数字に12(12ヶ月)をかけると「年間回転率」が出る。単純に四季で商品が入れ替わるとすると年間4回転になる。つまり入荷した商品が3か月後になくなったことを意味する。一般的な商売の基本は、業者(メーカーなど)に対して支払いは仕入れ月の翌月末であることが多い。その商品の利益の幅(原価率)にもよるが、2ヶ月でなくさなければ代金は支払えないことになる(その他いろんな取引条件はある)。そして、売価(販売価格)と売上原価の差が利益額になり、それで経費を支払うのが小売業の金の回り方だ。つまり回転率が悪化すればキャッシュインが遅れ支払いに間に合わなくなる。原価率によって利益額は違うので一概には言えないが、当然回転率が悪くなるとキャッシュフローは厳しくなる。

このブログでも、回転率の悪い上場企業を指摘してきた。ジーニングを打ち出した「ライトオン」「マックハウス」、ビジネスイメージが強い「タカキュー」、靴の「ジーフット」。各社とも、すべて中心商品のサイズが細かい。つまり、中心商品を広げると在庫過多になりやすい。さらに、別カテゴリーだが、商品の幅が広すぎる「ヴィレッジヴァンガード」。近年、そのすべての企業体に変化があった。そして5社とも過去の決算時に在庫評価損を計上している。極論になるが、これは在庫金額を正しく評価せず、決算を重ねてきたということに等しい。正しい評価をすると利益率が大きく下方修正され、それにより決算数字が悪化するため、在庫評価の先延ばしをしてきたということだ。詳細は別途まとめることにする。

上記各社の商品回転率を調べてみる。評価損計上年度があるのでその影響がなさそうな年度で、「ライトオン」2023年1.43回転、「マックハウス」2024年2.17回転、「タカキュー」2022年度1.83回転、「ジーフット」2024年度1.44回転、「ヴィレヴァン」2024年度0,99回転という結果になる。この数字を見ると、年間2回も商品が変わらないということになり、平均すると入荷して6カ月たっても商品が売れてないということになる。ヴィレヴァンに至っては、1年たっても商品は売れてないことになる。商品が売れないと金は回らない。

一般的には商品回転率は3~4.5回転くらいが標準範囲になっている。前期の決算時の回転率ではユニクロ3.1回転、アダストリア4.75回転、パルグループ5.84回転、しまむら7.75回転、ニトリ4.17回転などとなっている。売上好調の無印良品は2.36回転と低い。しかし、無印良品は回転率の低さを意識しており、「在庫コントロール部」を作り、商品部以上の権限を持たせようとしている。

小売業で一番大事なことは、「売上」を増やすことではなく、商品をうまく回転させて入れ替えていく事だと思っている。自らも商品回転率を一番大事なチェックポイントだと思って仕事をしてきた。近年、企業譲渡や株主変更があった小売企業は、すべて商品在庫の処理を怠った結果だと確信できる。

■今日のBGM

セレクトショップ、どこへ行く

日経新聞日曜版の特集記事のタイトルだ。以下の文面から始まる。

“1970年代後半から次々に誕生した「セレクトショップ」。バブル崩壊で混迷した90年代、ユニクロやファストファッションが勢いを増した2000年代もかいくぐり、約50年も過ぎた。欧米のファッションを紹介することから始まった店は今、寺の境内にオープンしたり、ソーラーシェアリングを手掛けたり。セレクトショップはどこへ向かうのか?”

写真付きで紹介されているのは「ロンハーマンのソーラーシェアリング施設」「善光寺境内にあるビームス」「工芸品、骨董品、生活雑貨のタバヤユナイテッドアローズの2階」「ユナイテッドトーキョーの日本製」「デイトナインターナショナルの映画グッズ」。その他、地方での地元との取り組みで「桐生市のst companyのイベント」「古河市のフリークスストアのワーキングスペース」「匝瑳市のロンハーマンの有機農法」「富士川町でのビームス社員のキャンプ用品」。

セレクトショップとしての「数字よりもマインド」を紹介した記事で、表題の内容とはかけ離れているような気もする。どの紹介事業も大きな数字に結び付くわけでなく、企業の生き方を表現したかったのだろう。記事のサブタイトルは「What’s next?」であり、「⁇一番かっこよくて美しいもの⁇」「⁇人が楽しそうにいてくれる場所⁇」とある。

このブログでも、セレクトショップを運営する企業の将来性についてはまとめたことがある。現実的には、高齢化が進みトレンドリーダーであるヤング層が大幅に減少する。上場企業である「ユナイテッドアローズ」「TOKYO BASE」はターゲット客層を広げないと、上場の維持が厳しくなる。大手と言われるセレクト運営企業も存在価値を明確にし、その方向性を示す必要が出てくる。片方で、世間に媚びずに生きていく戦略もある。企業としての「思い」を共感できるお客様を増やして、存在価値を示していく。これがこの記事の主旨だろうと受け取れる。ただし、これによって大きな企業力の拡大はあるのだろうか?

この記事にある、桐生のst companyの社長には30年以上公私共にお世話になった。路面店でDCブランドを数多く展開していた時からよく存じ上げている。商品調達面で、20年以上海外出張も続けている。この路面店を作る時も工事中にもお邪魔したし、その後もいろんな話を伺った。セレクト中心になり、路面店中心に商売を移して勝手ながら心配していたが、ネットの販売力もあり、取引先との信頼関係も厚く、そして何よりも強い熱意が固定客を増やしているようだ。

st companyの成功例を見ていると、逆に、今後のセレクトショップ運営企業は、商品感度を維持できるのなら、環境に恵まれた地方都市に個性的な店を持つことも、1つの戦略かもしれない。ターゲット客は大都市集中になることが予測されるが、逆に地方でも中心都市でなく、売場環境を整えられる場所で商売する方が広域から集客できるのではないかと思う。上述した桐生市のように地方の中心都市でなくても、店のイメージや商品やブランドに希少価値があるなら近県のお客様は東京よりも行きやすい。st companyのように常に新鮮な商売をしていると、どんどん商圏も広がっていくような気がする。そうなれば、人口減も商圏拡大で補える。

世間で言われる大都市が少なくなっていく将来を考えると、地方でも売場や商品で個性を打ち出し、商圏を広げていければ、十分に立ち向かえるかもしれない。ただ、常に進化し続ける計り知れない努力は必要になる。

■日経日曜版の「st company」のイベント写真

客層の幅を広げると商売は難しくなる

前回、ジーフットのことを書いていて、「アスビー」と「グリーンボックス」の2業態を持つことが経営悪化につながったのではないかと書いた。「アスビー」はスポーツシューズが中心でキッズも加えたカジュアル業態で、「グリーンボックス」は所謂、GMSの靴売場で、スポーツシューズのラインは増えたが、どちらかというと高年齢層の靴売場だった。最近はGMSの衣料品売場の改装時に、専門店側にレイアウトを移し、従来の「アスビー」内装で若干ビジネス要素を広げた店になっている。

靴は商売が難しく、まずサイズ、色が多くSKU数が異常に多い。商品劣化が早く、さらに取引先特性もあり、衣料品などのようになかなか簡単に取引先返品交渉ができない。つまり、在庫を抱えての取引先商売では簡単に利益は出にくい。さらに近年の消費動向はブランド志向も強くなっている。ジーフットは特に商売が難しい高齢者向けの「グリーンボックス」の数字が非常に厳しかったと思う。つまり2つの客層の商売が、お互い相容れなかったことが経営悪化の一番の要因だった。

上場廃止になったライトオンも同様の流れがあった。もとはメンズのジーンズ専門店がスタートで、レディスを加え、売場を拡大してキッズも含めファミリー層への店舗になっていった。普通に考えて、メンズ、レディス、キッズで3通りの品揃えをすれば、商品特性も違うので3倍の人数が必要になるが、人的コスト削減を目指すと数字は伸ばせない。逆にニーズの多様化で商品以外のサービス内容も増えてくる。そして、商品のライフサイクルも違うし、客層もファミリー層へ変化する。「ジーンズを買える店」から「ファミリー層の店」になったことで、ユニクロなど強力なテナントと対峙し価格や資本力で負けていった。結果、ライトオンの実績数字を見ると在庫は足し算で増えていったが、売上はその流れに合わず大きく伸びなかった。

今まで、客層の幅を広げて成功した店は思いつかない。商品の幅を広げて成功した店もあまりないが、しいて言えば無印良品くらいではないかと思う。ただここにもリスク要素は隠れている。近年はスキンケアなどで客数を増やしているが、もともとスキンケアは利益率が高い反面、回転率は低い。つまり商品の流れが変わったり、強い競合商品が出てきたときのリスクが大きい。大手アパレルでやっている衣料品プラス雑貨の店に関しては、あくまでも衣料品を売るための環境的要素が強く、商品の幅を広げる意味合いではないと感じる。

客層の幅や、商品の幅を広げるのは大きなリスクを伴う。もし広げるなら、まずメインの取扱商品に付随するだろう商品を広げていく事が望ましい。そうすれば在庫リスクを抑えつつ客層を広げられる可能性はある。

いずれにしても、客層や商品の幅を広げるときには、実験を繰り返し「小さな根拠」を積み重ねることが必要になる。

■今日のBGM

ヴィレッジヴァンガード ファンドからの資金調達

ヴィレッジヴァンガード(以下ヴィレヴァン)がIRで投資ファンドから約25億円の資金調達を行ったと発表している。近年、厳しくなった企業の資金調達でよくみられるスキームだ。単純に考えて、「大金を貸す」背景にはいろんな思惑がある。単純にメインバンクからは借りることはできなかったのか?銀行は返済能力を考えての資金援助になる。債務超過寸前までの数字になった前期決算数字で、もうほぼお手上げの状況だったのかもしれない。今回の引受先の「グロースパートナーズ」はPOSシステムの導入や在庫、コスト構造の分析と改善の支援をしていくと表明している。

先に結論を予測すると、おそらく再生は非常に難しいと思う。

営業数字の改善の根拠の1つとして、今期の利益率の回復を上げている。4月10日付けのIRでは、今期の営業利益は大きく改善するとの数字予測を発表している。これは当然のことで、前期に特別損失として在庫評価損を2472(百万)計上している。わかりやすく言うと2472(百万)評価を下げて「安くした」商品を今期適正価格で売っただけでの利益改善ということになる。もっと簡単に言うと、売れなかった商品の原価を0まで落として捨てないで売れば、当然利益は大きく回復するということ。そこまで下げなくても売れる商品を大きく評価を落とすと当然利益率は上がる。これは実際ヴィレヴァンが過去にも使った手法でもある。2013年決算で在庫評価損4692(百万) を計上しており、次年度は売上総利益率が3.8%改善している。ただ、結局同じことになっている。つまり、一時的なもので今後の対策次第では従前の結果と同様の傾向になる可能性は高い。

ヴィレヴァンは、かつて経営していた店と同じ商品群も扱っていたので、売場は定期的に見ていた。その商品群はそこまで利益を稼げなかったと思うが、バラエティ感を持って品揃えし、比較的在庫は多かった。ただ当然、半期ごとには商品は変わっていくので処理が必要なのだが、なくすべく処理は全く見られなかった。売り切ろうとすると利益率が下がるし、お客様も古い商品と認識しないからそのままの値段でといいと思ったのかもしれない。それにより、その商品群はどんどん在庫が膨らんでいくのはわかった。さらに、在庫が膨らむにつれ、新商品も見えにくくなっており、厳しい状況になっているのもわかった。10数年前から、数字コントロールができてないなと感じていた。そして、客層が低年齢化しており、単価の高い利益に貢献できる商材が売れていないように見えた。

ヴィレヴァンはマニアックな感性を持った人材が多かったのだろうと思う。その感性で商品を仕入れていき、マニアの客層を呼び、成功していった。ただ、上場という足かせで、感性を持った品揃えだけでは企業を維持できなくなり、売れる商品も入れざるを得なくなったが、そこで品揃計画と数値計画に乖離が出てきたのだと思う。さらに求められる感性も変化していき、現状の数値は、従業員が楽しかった商売が楽しくなくなってきた結果だと思う。

面白い感性を持った人間を、過去何人も見てきた。おそらく、そういうスタッフがヴィレヴァンを支えてきた。ただ、売場造りや品揃えは面白いが、商売の根拠が乏しい。それだけでは商売は成り立たないし、ましてや上場企業としては継続できない。当然今後は、楽しい商売はさらにできなくなる。ファンドが参入することで、管理面がより強固なものになっていく。特にファンドは短期的に数字を改善して早々に出口を見つけたいと思っている。長い目で会社を見ない。

当然念頭には入っているだろうが、ファンド支援でのアゲインストもある。POSシステムからの在庫、コスト分析がさらに強固なものになっていくが、そこにも懸念もある。売れる商品の導入と不稼働商品の処理が進むと、ヴィレヴァンではなくなり、個性が失われていく可能性もある。さらに標準化が進むと、ヴィレヴァンの店舗価値も下がってくる。現状商業施設ではわざわざ性の強い店として、出店コストには恵まれている。つまり他店より場所を選ばず、厳しい場所でも出店するので賃料も手ごろになっている。ただ「角が取れた」品揃えになれば好立地がいいだろうし、デベロッパーもそうであれば賃料を上げていく事が予測される。

今回のヴィレヴァンの大手術には、相当な人材が必要だ。単純に、コストを大幅に減らすだけの人材だけではなく、品揃えの変更まで踏み込んだ営業面での指導者にもなれる両面的人材が絶対に必要になる。偏差値の高い仕事になる。

もうすでに「遊べる本屋」ではないが、チェーンとしての存続も非常に難しい。

■今日のDVD ※友人は大絶賛だが、そこまでは・・・

ジーフット上場廃止とイオングループの将来

先日、イオンがジーフットの完全子会社化を発表した。これにより、ジーフットは上場廃止になる。7年連続赤字で、近年は債務超過状況が続いていた。今年1月にこのブログで上場廃止を予測しており、その通りになった。

ジーフットは靴専門店「アスビー」とイオン内の靴売場「グリーンボックス」が中心で、近年は「グリーンボックス」を「アスビー」に転換してきていた。「グリーンボックス」はイオンのGMS(イオンリテール)内でのGMS自主の靴売場だった。これをジーフットに組み入れて運営してきた。靴業種についてもこのブログで書いてきたので多くは語らないが、在庫過多に苦しむ業種ではある。昨今、企業譲渡された「ライトオン」「マックハウス」のジーンズ業界と同じでサイズが多く不良在庫が発生しやすい。今年度決算の在庫回転率も1月時ブログの予想通り年間1.42回転と低い。単純に入荷してから売れるまで9カ月近くかかっていることになる。これではキャッシュが回らない。そして「ABCマート」のようにカジュアルに重きを置き、ブランドとの別注商品を早いサイクル売っていくビジネスとは違う。ターゲット年齢は広く(特にGMS内は高齢者が多い)客層を絞り切れない商売になっている。

おそらく収益悪化の大きな要因は、GMS内の靴売場としての運営によるところが大きいと思う。ただ、会社発表では今後もGMSの売場の活性化策として投資をし、さらに雑貨などとの複合化店舗を開発していくとしている。このブログでずっと書いているが、GMSの衣料服飾品はもうすでに収益事業でなくなっている。あの効率を重視した量販店No1のイトーヨーカドーが衣料服飾品から撤退しているように、もうGMSの衣料服飾品は絶対に成功しない。

その一番大きな要因は、GMSは企業として靴やファッションなど衣料服飾品だけで儲けようとしている会社ではないからだ。「ユニクロ」は「ユニクロ」の商品や、売り方を会社全体で考えている。「無印良品」や他の専門店もそうだ。GMSはGMS全体の収益を考える。例えば、人的な課題について考えると、スタッフはその仕事がジョブローテーションの1つになってしまう。商品部や店で婦人服の担当をしていても、次のステップは営業部や店の幹部など他のポジションになることが多い。当然ずっと衣料品を考えている会社に勝てるわけがない。近年は人口減や高齢化などがあり商品傾向の変化が著しい。商圏や顧客動向の変化も大きい現状、専門性を持った仕事ができるスタッフが必要だが、育成できる環境にはない。そうなれば、当然専門各社に勝てるわけがない。システムなどの面でも、もう優位性はない。

そして、さらにGMSにおいての、衣料品や服飾品の位置づけは低くなってしまっているように感じる。カテゴリー別の損益は発表されてないが、おそらくインナーを除くファッション業種は赤字だと思う。食品を除く業種は、ほぼ儲かっていないと思う。近年の衣料品、服飾品の改装を見ていても傷を減らす改装に見える。センターレジ化を進め、要員を減らす方向で進んでいる。おそらく靴売場のジーフットへの移管もその戦略によるものだ。さらに、商品構成もあまり攻めの品揃えは見えない。大きな売場は、取引先主体のリスクヘッジしやすい売場になってきている。

イオングループ内でのGMS(イオンリテール)の位置づけも変わってきている。もうすでに基幹事業ではなくなっている。今期グループ決算では売上構成比は34.5%と高いが、営業利益構成比は7.9%しかない。このブログでも以前書いたが、イオングループとして今後中心になるのは「金融業」に変わっている。現状は「デベロッパー事業」も大きいが、人口減や都心集中を考えると郊外RSCは厳しくなり、将来的な見通しは暗い。そのためにGMSは「金融業」の顧客拡大の意味での重要な位置づけになっている。「デベロッパー事業」の中心としてのGMSと「金融業」の集客装置としてのGMSが、今後の中心事業の大きな源になる。そういう位置づけとしてのGMS事業になる。その先行きは見えないが・・・

ずいぶん大きなことのようだが、そういう視点で見るとGMSを継続させる必要性は大きく、その観点でのジーフットの完全子会社化の意味合いが一番大きいかもしれない。

■今日のBGM

間違いなく、現場のリーシング力が必要になってくる

神戸のことを書いていて、昔ハーバーランド(ウミエ)から出店依頼を受け、神戸の街を見て回ったことを思い出した。リニュアルのタイミングでPMをしていたイオンモールからの出店の話だった。もともとビブレにいたので月に1度くらいは三宮に行っていた。そのため、どうしても神戸は「三宮」「元町」の印象が強く、港から海側を歩いて「モザイク」まで行くイメージしかなかった。あの阪急百貨店でも成功しなかった場所が成功するとは思えず、断った。その後アンパンマンミュージアムでファミリー層が一挙に増え成功したSCになった。その客層がメインになることは予想できなかった。ただ出店していたら売れていたかどうかはわからない。

その出店の話を持ってきてくれたイオンモールのスタッフは、当時経営していた店のMDをよく理解していたし、店の存在価値をわかってくれていた。数少ないデベロッパー側の理解者だった。そのため、提案もらった店への出店が成功する確率は高かった。当時の店はボリュームプライス中心の自主MD店だった。インパクトある店やはっきりしたブランドの店はわかりやすいが、なかなかボリュームの品揃店舗にはSCから優先的に声がかからない。当然店のビジネスモデルは確立させたつもりだし、そのポジショニングなど差別化要素を示した店舗資料も作っていた。ただ、多くのリーシング担当者はなかなか耳を傾けてはくれなかった。その位置づけを理解してくれているリーシングスタッフは、ほとんどいなかった。

大部分は大手SCのリーシングスタッフだったが、ほぼ経営していた店のMDについては関心がなかったように思う。環境と条件だけ言って出店の可否を聞くケースがほとんどだった。つまり大手SCでは、館のイメージを決めてしまうテナント以外は、ほぼ穴埋めの1つとしての出店交渉になっている。「この場所(SC、区画、条件)に出店しなければこのエリアにはもう出店できない」といった高圧的なリーシング担当者もいた。「イオンの平場でもできる品揃えではなく、品揃えのグレード感を上げてほしい」と言った担当者もいる。イオンの平場との違いを分かってないし、その説明を理解しようとしなかった。

大手SCのリーシングは本部が担っているケースが多い。やはり、仕事の一環としてのリーシングで、その物件への愛着があまり感じられない。与えられたスペースに機械的にテナントを入れる。リーシング担当として、SCでの各テナントの重要度やテナントの出店傾向は理解しているので、話も進めやすい。そして、大手企業へのリーシングは本部同士の話し合いでほとんど決まる。その後の現場での問題点も、本部で吸い上げ、解決への動きになる。逆に中小小売店への対応は、その後になり遅れるし、現場へふられるケースも多くなる。

今までの小売業でも経験上、本部中心になれば現場は作業的になっていく。現場提案が少なくなる。ただ、現場が中心にならなければ成功はない。現状は空床区画が目立つSCも多い。特にオープン以降のリーシングに関しては、動向を見ている現場主導であるべきだ。リーシングの方向性、数値計画を現場(各SC)が作り、リーシングも主体は現場がやる。気持ちが入ったリーシングは数字に直結する。

今後、郊外型大型モール(RSC)は、間違いなくダウントレンドになる。そして、本部主導でのリーシングには限界が来る。個店での対応が難しいとしても、小さな単位でのテナント対応が必ず必要になる。そして、大手小売業だけでなく、がんばって商売している中小小売業への理解とケアを進めていくべきだと思う。

■今日のBGM

価格の信頼感

先日、近くのイオンモールに買物に行った。「20日、30日は5%オフ」の日で割引企画の時にはイオンに行くことにしている。その日は無印良品も優待期間で、会員であれば全品10%オフでもあった。無印良品のレジは並んでおり、客数も多く、スタッフが優待に必要なバーコードの提示を迅速にするように呼び掛けていた。そして、イオンの食品売場は無印良品の優待日が重なり、いつもの5%オフより混んでいた。

やはり「レジ割引」企画は人気のようだ。無印良品は開催中の既存売上が20%近く伸びることもあるらしい。無印良品にとっては、商品動向を再確認できるし、ついで買いも増え在庫減らしの要素もある。イオン食品売場の全品5%オフは、食品業種の利益率を考えれば大きな利益ダウンをもたらす「禁じ手」でもある。ただ、イオンにとっては、顧客獲得で将来的には企業の中心になるだろう金融業への布石にもなっている。

ではなぜ、イオンの食品売場や無印良品の割引企画に多くの集客があるのだろうか。総合食品売場で食品や日用雑貨はすべて割引という機会は数少ないし、そのほとんどが必需品だ。さらに食品の利益率は低いのでお得感は大きい。無印良品も単品の評価が高く、数多くテレビで取り上げられているし、このタイミングでしか割引対象にならない商品も多い。つまり、商品の「価格の信頼観」が高い。

ただ、両店舗でのモールへの集客はあっても、他店舗への波及効果はなさそうに見える。イオンの衣料品への波及も弱そうだ。衣料品はクーポン企画を使えば10%オフにもできるようだが、それでもそこまでの集客は見えない。ましてやテナントへの恩恵は弱そうに見える。衣料や服飾系の各テナントも割引企画を個店では展開しているがお客様は流れていない。お客様も、SCに出店している多くのテナントのセールの常習化や、割引率の設定理由の不明確さに気付いている。そして、一般的な衣料服飾品の価格への信頼感が大きく下落している。二重価格表示についても景品表示法に定められてはいるが、不当表示は多い。すでに、単なる割引重視の商売方法ではお客様は動かない。

商品の動きはデータで見極めればいい。ユニクロは商品の売り上げ動向のデータ化で、季節感や個人の決定ではなく数字で判断している。適正なプライス管理、在庫管理を徹底している。それにより「価格の信頼感」も高い。売れない商品をデータの指摘で迅速になくしていく事で、「価格の信頼感」を高めている。もう多くの人は衣料品や服飾雑貨の価格を「ユニクロ基準」でみている。

そういう流れで考えると、大型モール(特にイオンモール)の中心客層の衣料品、服飾雑貨の基準は「ユニクロ」であり「無印良品」になっている。そのプライスゾーンから外れる場合は何だかのプラス要素が必要になる。それはブランドなのか素材なのか接客なのか、納得できる要素が必要になる。それを考えてMDし、訴求する必要がある。それができなければショップの価値はみえない。

小売業は、常に現時点での「価格の信頼感」を高めるためにどうするべきかを考え続けなければならない。

※このごろAIとやり取りをする。うまく持ち上げてくれるので心地よい。価格の基準になるショップを聞くと、一般的なゾーンでは、衣料服飾で「ユニクロ」、生活の基本として「無印良品」、生活雑貨として「山崎実業」「無印良品」「ニトリ」「IKEA」などを上げていた。

■今日のショット 「散歩中の散り始めた桜」

「ビームスハート」 ららぽーとへの出店の意味

ビームスが「ビームスハート」を、2月トーキョーベイ、3月柏の葉、横浜、エキスポシティに、ららぽーとへの出店をしていく。

「ビームスハート」は従来ビームスのアウトレットでのメインブランドだった。セレクトショップのアウトレットについてはこのブログでさんざん書いてきた。アウトレット商品よりアウトレットオリジナル商品が多く、おそらくこのブランドが半分以上占めているように見えていた。つまり本来の「売れ残った」商品ではなく、そのために作られた商品を売っていたということになる。それは本来のアウトレットの姿ではなく、逆に数字を稼ぐ場所になっているように感じていた。これは、ビームスだけのことではなくアウトレットの数字の伸び悩みにも通じている。(セレクト系ではトゥモローランドにはそういう商品はなかったように見えたが・・・)

このブランドで大型モール(RSC)に出店する意味はどこにあるのか?間違いなく販路の拡大だと思う。従来のブランドなら出店をしなかったRSCの客層へ、顧客幅を拡大したいということだと思う。ユナイテッドアローズが「グリーンレーベル」で、ベイクルーズが「レリューム」や「ジョイントワークス」でのRSCへの出店とほぼ同じ意味合いになる。

セレクト系と言っても幅は広いが、従来のセレクトショップやベイクルーズ、上場しているトーキョーベース等も加えると売上規模は5000億強と想定できる。上場企業はユナイテッドアローズに加えて上記したトーキョーベースがある。MD型大型アパレルのパルグループやアダストリアにも同形態の店もあるのでその規模はもう少し大きいかもしれない。ただ今後の人口減少や高齢化を考えると、従来の顧客は減っていく。国内アパレル市場の売上は2024年度約8.5兆と言われている。コロナ前の9.2兆から回復していない。さらに今後の人口減少、高齢化、若年層の大幅減少を考えると、20年後には5~6兆まで落ち込む可能性は高いと言われている。

別の角度で見てみる。セレクト系上場企業であるユナイテッドアローズとTOKYO BASE 2社の株価の動きを確認する。ユナイテッドアローズは1999年上場で初値は15000円だった。その後分割を3度しており、修正の初値で言うと3125円程度になる。そして現状の株価は2500円を下回って変動している。TOKYO BASEは2015年上場で初値は1230円、分割を繰り返しており修正すると初値は171円程度になっている。現状は400円を切る株価で推移している。当初株価を大きく上回るが、分母がなかなか大きくなっていない。近年の売上は両社とも小売業の中では安定して伸長しているが、株価に反映されていないように見える。考えられる要因は、在庫の重さもあるが、客数の大幅減が想定され、この業界(セレクト系)の成長が見通せないからだと思う。

客層の幅を広げるため、従来戦ってきたセレクト系からRSCを主戦場とするボリュームゾーンへの挑戦は、そんなに簡単なことではない。売り方やプライスラインに大きな違いが出てくる。感度、感性よりも値段への比重も上がってくる。何よりも競合各社にはそのゾーンで戦ってきたノウハウが蓄積されている。

出店した1~2年は、プラス効果はあると思うが、アウトレットの商売のようには甘くはないと思う。逆に、さらに従来のセレクト要素を追求して、安定した顧客を作ることに専念した方がいいのではないだろうか?特にビームスは上場企業ではないのだから、安易な方向に乗り出さなくてもいいのではと思ってしまう。

■今日のBGM

ディストリビューターをAIがやればいい

小売業でのディストリビューター(DB)の仕事は、「在庫管理」「仕入管理」に加えて「利益管理」も大きな仕事だと思っている。イトーヨーカドーがリーディングカンパニーだったのはこのポジションを重要視したからだと思う。小売業が成功するには「適正在庫」が基本事項なのは間違いない。その在庫管理の司令塔的ポジションがDBだと言える。

大昔は、値札の裏側に品番を書いて半券管理し、売れている商品のデータを作っていた。売れている商品は販売点数を考えて発注していた。それがPOSシステム導入でバーコード管理になり、追加発注以外は本部で管理しDBが商品の単品指示を出していた。それでも組織内の人間関係もあり、権限に違いが出てくる。商品組織の中でも営業と管理の違いがあり、バイヤーとDBは別組織にする方が望ましいし、商品の仕入れ枠の最終権限も所属長以下ではDBが持っているのが望ましいと思っている。ただ、多くの企業はバイヤーの権限が強いように見える。商品に愛着を持って仕入れる担当者が、商品の最終処分まで指示できるとは思えないが、経験してきた大企業でも、バイヤーの意見が強かった記憶がある。そして、組織には人間関係があり、ついついなれ合いになってしまうことが多い。

商品回転率は小売企業にとって経営の大きな指標になる。そのうえで、組織の関係や人情が入る商品のジャッジはAIに任せた方がいいと思う。AIが商品売上データを分析し、対策を立案させ、それをジャッジして決定すればいい。これぐらいのシステムは現状なら簡単に作れるだろうと思う。例えば商品の販売期間を設定し、単品別のデータを毎週店別にアップする。その販売期間内での消化状況を開示し、その対策を立案させる。好調店舗への商品移動や、不振店舗への販売助言、最終的にはプライスダウンの指示。さらに、不振商品ならそれをなくすために必要な値下げ額と、それによる全体の利益率への影響度の報告。さらに、今後の仕入商品の原価率や仕入金額で、期間での利益着地予想も算出させる。そして、その報告をもとに企業(責任者)が商品対策をどうするかをジャッジする。

おそらく、もう活用している企業はまちがいなくあると思う。商品を仕入れたバイヤーには当然思い入れもあるし、利益率と在庫のジャッジは非常に難しい。毎回書いているが、食品の賞味期限はわかるが非食品の賞味期限はわからない。企業の主観で勝手に決めている。この商品は季節感がないので年間定番だとか、まだ販売期間を延ばしてもいいなど、商品ジャッジのミスで企業生命がなくなっていく。近年はそうなった企業も多いし、その予備軍も多い。

こういうソフトを作るのにどれだけの投資がかかるかわからない。おそらく支援制度はあるだろうし、それによりDB的なポジションの経費は減らせる。そして何より、本部からのジャッジが明確になる。多店舗化して企業を拡大していくなら判断基準を明確にした方がいい。

ただ、売れる店には、当然それ以外の「anything eles」も必要ではあるが・・・

※AIに上記のようなAIシステムを使っている会社を聞いてみたら、「パルグループ」「ストライプインターナショナル」「ナノユニバース」などの社名と活用されている主なシステム名を答えてくれた。

■今日のDVD

ライトオン上場廃止

ライトオンが2月26日付で上場廃止になっている。このブログを始めたころからライトオンについては書いてきた。これはライトオンの数字悪化要因が、在庫過多にあったからだ。個人としての商売の信条は、「小売は在庫」であり、ライトオンの数字悪化についての意見も、在庫管理の難しさを書いていた流れからだった。

在庫を抱える商売は難しい。過去、いろんな業種の商売をマネジメントしてきて痛感していた。業種としてはジーンズ、靴に代表されるが、重なっていることはサイズが細かく、ほぼ定番化されているということになる。ジーンズカジュアル業界では上場していたライトオンに加えてマックハウスやジーンズメイトは譲渡されたし、靴業界も多くの小売店が姿を消した。さらにジーンズは、在庫ボリュームがあることが売場のイメージアップにつながったという要因もある。

何度か書いているが、小売業は商品を仕入れて(作って)売る。簡単な仕組みだ。ただ仕入れた商品を、支払うまでに金に換えてなければ(=売れてなければ)支払えない。現状の取引では、非食品小売業で長くて仕入れてから3カ月以内の支払いだと思う。ブランド商品や企業の支払い能力によってその支払いサイトは変わっていく。当然いろんな商品があり、すぐ現金に変わる商品もある。つまり、企業規模はあるが年4回転すればキャッシュは何とか回っていく。 

小売企業の状況を見るときは、在庫回転率で図っている。決算時の貸借対照表の資産項目の商品の金額で、前年の金額と今年の金額を2で割れば簡易的ではあるが平均在庫額が算出される。平均在庫を損益計算書の売上原価で除すれば簡易的な回転率が産出される。例えばランダムに見てみると、ライトオンの2022年度の売上原価は24356(百万)で平均在庫は10973(百万)となり、年間回転率は2.2回転となる。ちなみに年度の総利益率は49.3%となっている。つまり半年に1度商品が売れるということで、商売ではキャッシュが回っている状況ではない。売上が減少し続けており、当然手持ち資金は減っていっている。こうなると、普通に仕入れていれば在庫は膨らみ、回転率はどんどん悪化していく。ライトオンはその後商品の評価損を計上するが、遅きに失した。利益率を維持することより、継続的に期中で商品評価を落とし売上を上げ、キャッシュを増やすことを優先すべきだった。

現状の上場小売業ではイオングループのジーフットや、ライトオン同様の流れで評価損を計上したヴィレッジヴァンガードもそういう状況の中にいる。

では、ワールド傘下になったライトオンはどういう方向に向かっていくのだろうか?現状の売場を見る限り、ハードな売場ではなくあくまでもジーンズテイストを打ち出したカジュアル志向の店というように見える。イメージとしてはUAが譲渡したコーエンのようなMDかもしれない。ただ、その中途半端なゾーンは難しそうに見える。ジーンズテイストは、果たして必要なのかとも考える。先日もレイクタウンで四国のジーンズファクトリーの店を久々に見たが、昔のパワーは全く感じなかった。セレクトっぽい商品を少し品揃えしたナショナルブランド(NB)中心の店になってしまっていて、やはりジーンズファクトリーでも大型SCではこうなってしまうのかと感じた。さらにこういう品揃えになるとNBが幅を利かせ儲からなくなっていくのではないかとも感じた。

ワールドが手掛けるのだから、売場ロケーションを考えてワールドの品揃えショップをやった方が賢明で、あまりジーンズにはこだわらなくてもいいのではないかと思う。「リーバイス501がデニム」と考えているお客様は、もう少なくなっているし、そういうお客様は買う店を決めている。

■今日のBGM

«過去の 投稿