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ビジネスモデルらしき事を考えたことがあった ①

いろいろ考えるところがあり、立ち上げた店のMDの考え方を書いてみたい。

まず、どういう業態をやろうというヒントは昔在籍していたニチイ(マイカル)にあった。

何度か書いているが、小売業のニチイ(マイカル)に入社して、退職時はビブレの営業の責任者だった。そういう意味でビブレの状況はよく理解していた。ビブレは食品以外でも20以上の直営売場(ショップ)を持っており、ブランドショップと並列で商売をしていた。20以上のSCを持つビブレで展開しているのでそれなりの規模にはなる。そこがデベロッパー型小売業とは違うところでもあった。マイカル倒産後、イオンの管財人から各直営売場の分析を指示された。小さなショップを除くと黒字売場は2つの直営売場しかなかった。そしてその時、「PLだけか?BSはないのか?」と言われた。この言葉はずっと忘れられない。BSを見れば当然2つの売場とも黒字倒産状況だった。

その2店が「メンズジーンズ」「メンズ服飾」だった。「メンズジーンズ」は在庫を抱えてボリュームを出していく昔の商売で、その過剰在庫が評価損を先送りさせていることで見かけの利益を維持させていた。トレンドに走ってブランドを展開すればますます在庫の深みにはまっていく。「メンズ服飾」も同様で両ショップとも季節感がほとんどなくブランド商品の年間定番を売っているように見える店だった。そもそも当時のメンズヤング層は買う場所が限られていた。完全にトレンドに走る少ない客層とブランド志向の客層はいるが、その他のノンポリ客層の買う場所は非常に少なかった。中でも日常使いのジーンズやバッグは、ブランド層も含めてビブレ店内では上記2店舗に集中していた感が強かった。

ジーンズに関しては、DCブランド全盛期でも各地方には人気のあるジーンズショップはあった。ただ企業を拡大するにはその在庫額が重荷になってくる。現在のアパレル大手でも、アダストリアは北関東のジーンズショップ「ポイント」からスタートだし、ユニクロも父親がやっていた店をジーンズカジュアル店に変えてスタートした。パルもユニクロ同様父親の会社からジーンズショップを独立してのスタートだった。そしてそれぞれが、その業態を修正しての現在の姿がある。結果論にはなるが、方向修正ができなかった「ライトオン」や「マックハウス」「ジーンズメイト」などは上場企業としての立ち位置が変わっていった。

鞄業界は現状でもレディスが主力で、地方のかばん専門店も7割くらいはレディス中心でメンズの取扱いは小さかった。つまり競合する企業が少なかった。ただ吉田カバンの人気でメンズへの注目も上がってきており、特にビブレの「メンズ服飾」はアウトドア系も含め財布、アクセサリー(シルバー含む)や帽子などのグッズも揃え品揃えミックスで集客が大きかった。しかし、ジーンズ同様季節感のなさと単価アップで在庫は膨らんでいった。

ブランドビジネス以外で商売するには上記2業態しかないが、「ジーンズショップ」は各地域に地元色の強い有名ショップが根付いているし、どう考えても在庫がネックになると思っていた。さらにブランド仕入れの壁もあるだろうことは想定できた。つまり個人としての立ち上げは難しい。その点、メンズ服飾はまだあまり独立店舗での競合は少なく余地はあると感じた。そして最初から「吉田カバン」との取引は無理だと思っていて、制約あるブランドが少なく自由にMDがしやすいのかなとは思っていた。

そういう意味で「メンズ服飾」にターゲットを絞った。そしてその分析をしていった。

■今日のBGM(最初の店のイメージアルバム)

小資本ではもう店は続けられない

約20年前に、店を立ち上げた。

もともとはビブレ(マイカル)にいた。ビブレはファッションビルのようで食品以外でも30以上の自主MDショップを展開していた。つまりブランドで集客し直営ショップで儲けるという仕組みだった。館として20以上のSCを持っていたのでの各直営ショップもある程度の規模の売上はあった。マイカル破綻後、イオンの管財人から直営ショップの損益を出すように指示があり、結果2ショップだけが黒字だった。「PLだけでなくBSも見ろ」との指示もあり、確認すると2ショップとも完全に在庫過多で債務超過の状況だった。立ち上げた店はその内の1つに近いMDで、徹底的に回転率を意識した。MD経験者もおり、何とかピークは30店舗近くまで店を広げた。

今、そのMDで再度店を始められるだろうか?「絶対無理」だと思う。環境が悪化しすぎている。

まず、もう出店余地はない。戦う土俵の主軸となるRSCのパワーがなくなっている。20年前ならまだ成長期で前向きなテナントにも出店の余地があったし、新しいテナントをデベロッパーも探していた。それが今は衰退期に入っており、安定感のあるテナントが求められている。リスクを持ったテナントリーシングはやらなくなっている。

次に、何でもかんでもコストが上がりすぎている。商品の原価は当たり前として、そうなると当然売価を抑えにくくなっている。30店舗前後ではまだ商品リスクは完全にはとりにくい。50店舗でも厳しいかもしれない。売価を抑えるには店舗数が必要になってくる。

ということで、商品コストを抑えるために出店は不可欠だが、その出店コストも上がっている。最初に揚げた大型の安定感あるテナントを優先され、魅力的な立地に望ましい条件での出店は厳しい。大型店の条件の皺寄せが中小型店に来る。

そして何よりも人件費が上がっている。スタッフ数も減少しているし、おのずとスタッフのレベルも上がってこない。要員不足でスタッフの教育に手が回っていない。マネジメント層が売場要員になってしまっている。それは企業の問題かもしれないが、土日仕事で立ち仕事は、腰を落ち着けてする仕事ではなくなっている。

ターゲット顧客数も減少し続けている。何度か書いているが、20才から59才までの人口は10年後には現状の88%になり20年後には81%まで減ってしまう。つまり普通にやっていては増収はないということになる。そして、さらに高齢化は進んでいく。データによると10年後には衣料系の国内売上は現状のー2800億、20年後にはー4000億位になるという指標がある。ターゲット数減少下で、中小企業が勝ち抜くにはハードルは高い。 

当初考えた20年前のビジネスモデルは、頑張ればまだ通用すると思う。ただ、そのビジネスモデルを徹底するには、「人」「物」「金」が必要になってくる。そこまでの道は険しすぎる。

■今日のBGM

ワールドとTSIの経営統合 ➁

元気で明るいムードのあったサンエーインターナショナル(以下サンエー)が、私自身が違う業種に身を置いている間に大きな変遷を繰り返したようだ。

まずDCブランドブームの終焉とリーマンショックなどと共に、サンエーも減益を続けていた。ピークは65億弱あった営業利益が2009年にはほぼ0になっており、リストラを実施し、東京スタイル(以下東スタ)と合併前には約19億弱の実績になっていた。そこで販路は百貨店平場になっていた東スタと統合し、TSIホールディング(以下TSI)となった。

東スタも長年のキャッシュ残はあるが商売としてはもうすでにじり貧だった。個人的にはブランドも「アリスバーリー」くらいしか思い出せない。東スタの統合前の決算数字を見てみると経常損失が約−14億、資産除去債務の計上などで純損失−103億強の数字となっている。流れとしては若く新しいブランド中心のサンエーが引っ張っていくかと思ったが、実質的には自己資本の多い東スタが決定権を持っていたようだ。1200億超の自己資本を持っていることで、どちらかというとサンエーより上目線になっていたのではないか。議決権比率も東スタ76;サンエー24の比率であり、そこで社内融和が図れず、新しい時代を作ろうとするサンエーより古い体質の東スタが決定権を持ってしまった。そういう中で、「数字やロジック」の得意な「現場感のない」社長を外部から招いた。ここが「1つ目の間違い」だった。

商売の流れがさらに悪化し、ここで上野商会を150億かけて買収する。なぜ上野商会なのか?これが「2つ目の間違い」。ほぼレディス中心のファッションアパレルと、正統派のジーンズカジュアルにあまり共通点はない。商品を回転させて商売していくレディスカジュアルとの商売は全く違う。常に商品回転率を中心に小売業を分析するが、前回も記したがサンエー時代最後の商品回転率は年間6.1回転。統合前の東スタでも年間4.9回転。上野商会の決算書は非上場で未公開だが、開示された資料を見ると併合前の総資産150億で純資産104億。デニム商売、プロパー商売中心ビンテージ訴求のカジュアル商売であれば、商品資産は少なくても純資産の半分くらいの50億くらいではなかったか?勝手に想定すると売上191億粗利益率は50%とすれば売上原価は95億。在庫は50億(少な目)で考えれば年間1.9回転になる。一般のジーンズ客でなく(脇ゴムジーンズでもいい客層含む)、正統派ジーンズ愛好者ターゲットであれば十分考えられる回転率だ。商品回転率が約5回転と約2回転、つまり、全く違う業種ということが言える。そして上野商会社長がTSIの社長になる。この「2つ目の間違い」は致命的になる。

ここからは会社の方向性が変わる。昔のサンエー、東スタのイメージは全く消える。今のブランドリストを見ると昔のサンエーインターナショナルとは全く違うものになっており、単に個性的なブランドの集合体になっている。どちらかというと上野商会の色目がきつい。ここが「3つ目の間違い」。さらにマニア志向の見え方を消すために、在庫問題で苦しんでいたであろうデイトナインターナショナルの買収をする。そうこうしているうちに、サンエー時代末期の商品回転率6.1回転が2.8回転の企業に変わってしまった。現状のTSIのブランドはマニア志向の本質的なブランドが多く魅力的ではあるが、上場企業の使命である「株主の利益」を高め多様なステークホルダーに価値を提供する企業になっていないような気がする。

今回の統合は間違いなくワールド主導になる。ただ、ファッションで言えばワールドはやはり、まだ昔の「ルイシャンタン」「コルディア」の会社のように見える。DC時代の「タケオキクチ」「ジュンコシマダ」やその後RSCでの「オゾック」「TK」も長く人気が続かなかった。やはりMD型でサラリーマンが多い会社と言えるかもしれない。ただ、企業としての小売目線と商品目線の基準はきちんと社員に統一化されているように感じる。おそらく今回の統合は「リスク」の方が大きいと思う。マニア志向ブランドを別会社にするなどして、くれぐれも小売目線で各ブランドを復活させてほしいと思う。

おそらく1+1=2にならない。1.5くらいでワールドが成長できればいいと考えての統合だったような気がする。ブランド整理は大変だと思う。

■今日のNGM

ワールドとTSIの経営統合

小売業界に長くいたので両社ともよく知っている。おそらく、ワールドが経営の主導権を握るだろうが、背負い込んだものは非常に重いと思う。

TSIは旧サンエーインターナショナル(サンエー)で、2018年に上野商会と統合している。現社長は旧上野商会社長の下地氏となっている。大手アパレル会社で言えば、過去一番仲良くしてもらった会社だ。販売代行で10数店舗運営したこともある。感じていた企業風土はデザイナーズ系の企業の冷たさがなく、ワールド、オンワードなど大手より、サラリーマンがいない明るく元気な会社のイメージがあった。おそらくその風土が、ブランド寿命がなくなり厳しい時代には合わなかったのではないかとも思う。ただ「パーリーゲイツ」や「マーガレットハウエル」など固定客が定着しているブランドもあり、企業の方向性を明確にすれば厳しい状況にはならないと思っていた。

そういう意味で「上野商会」との組み合わせで少し流れが変わった。元サンエー社員が「ジーパン屋になった」と言っていたが、企業の流れは旧「上野商会」に変わっていったようだ。フリークスの「デイトナインターナショナル」や、コアなジーンズ寄りの「東洋エンタープライズ」との統合もあり、久々にHPを見たがブランドラインアップが全く変わっていた。全然違う会社になっていた。この企業風土の変化が、今回のワールドとの統合につながったのではないかと思う。

もう知人もいないので、傍観者的見ると、上野商会との統合で一番気になるのは「在庫の考え方の相違」だと思う。メンズのウェートが上がり、コアな商品が増えると間違いなく在庫は増える。カジュアルな「フリークスストア」でも在庫の多さを感じていたので、レディス中心だった企業の尺度との違和感がワールドとの経営統合になったのではないかと思う。

常に商品回転率を指標に企業の状況を見てきたので、TSIホールディングスの決算もその観点で調べてみる。TSIでの2年目の決算(2013年)の商品回転率4.7回転が、2025年には2.8回転まで落ち込んでいる。さらにさかのぼればサンエーインター時代の2010年度は商品回転率が6.1回転だった。商品構成が変化しているので当然の結果ではあるが、現状では在庫が1回転するのに4カ月以上かかっていることになる。言い換えれば、売場の商品が4カ月以上変わっていない計算になる。多少、季節感の変化はあるが、商品と季節のずれは大きい。つまり商品が残る構造ということになる。そして、サンエーインターナショナル時代との比較では全く商品が回転しなくなっている。利益の出る構造ではない。利益が在庫の状態になっている。コアなターゲットや商品内容は違ってくるが「ライトオン」や「マックハウス」の破綻の原因に通ずるものがある。

そういう角度で見ると、ワールドがどういうふうにTSIを変えていくかが今後の課題になりそうではある。「マーガレットハウエル」や「パーリーゲイツ」などはブランド力を高めて拡大化を図ると思う。「ナチュラルビューティーベーシック」や「ヒューマンウーマン」などはワールド得意のゾーンなのでスームーズに拡大できる。ただ過半数以上になっている旧上野商会系のショップをどうしていくかが問題になりそうだ。中でも、大きな在庫を抱えるコアなショップをどうしていくのかが大きな課題だ。「ライトオン」以上に難しい。大きな出血を伴いそうだ。

久しぶりにTSI(個人的にはサンエーインターナショナル)を調べてみて、いろんなことがあったのだなと思った。もう少し整理して次回にでも書こうと思っている。

■今日のBGM(サンエーの勝手なイメージ)

小売業で売上総利益率だけ上げることは簡単なこと

友人から、ある売場写真が送られてきた。その売場は数年見てないが、ある程度想像はできた。ずっと思っていたことを書く。

標題の利益率を上げるには。

● 原価率の低い商品をどんどん仕入れる

利益率40%で在庫が売価で10,000(千)ある店の利益率を50%にするには、原価率40%の商品を売価10,000(千)仕入れればよい。

→簡単な話である。但し、4,000(千)の支払いが発生する。資金力があれば別に問題ない。

● 売れなくても値段は下げない

値段を下げると利益率は落ちるので、値段を下げず定価販売を心がける。

→上記設定で、当初在庫を売れないので全品20%オフにすると利益率は44.4%まで落ち込む。そんなことはしない。

● 無理しても売場には陳列し、もしそれが不可能なら古い商品は倉庫へ送る

売場が商品であふれかえり、当然通路幅も狭くなるが売場に置ければ問題ない。ボリューム感が出ていい。

→以前、ライトオンやジーフットについて書いたように期末に在庫評価損として利益率を調整し計上する。

● 売場イメージと会わない商品でも利益率優先で仕入れる

売場コンセプトの整合ができないが買上げ率が上がる商品を導入する。売れて利益率がアップすればいい。

→接客をせずに売れればベスト。人件費も多くかからない。

残念ながら、私自身は商売を長くやってきて、ずっと反対の事がいいと思っていた。

● 売れる(売っていきたい)商品を仕入れる。原価率は低い方がいいが、売れることを最優先する。

→キャッシュフローは店別の管理をする。さらに在庫金額は予算上でも設定する。

● 納入からの消化率を見て、不稼働商品は値段を下げる指示をする。

→まず不稼働商品の処理を優先する。金に換える。企業戦略商品のデータ管理で、回転率を優先し他店移動や価格修正の指示を出す。

●「商売の基本は在庫」の意識を持って、常に回転率の指標に向かって数値管理をする。

→倉庫は持たない。通路幅も最低90センチ以上を徹底する。

● 売場のメイン客層ターゲットに向けた品揃えを徹底する。

→客層の幅はできるだけ広げない。広げると在庫が増え、ターゲット客層の商品密度が薄くなる。誰に向かって商売しているのかわからなくなる。

小売業として「売上」「在庫」「利益」は大きな3つの指標となる。3つの指標がうまくバランスが取れればいいが、「在庫」と「利益」が相反関係にあることが多い。「売上」を確保するのに「利益率」を優先するか、「在庫」を優先するかで考え方が全く違ってくる。個人的には間違いなく「在庫」を優先してきた。当然「利益率」は高い目標を目指すが、あくまでも商売の結果だと思っていた。

最後に、写真を送ってきた友人からのコメント。「在庫量は増加、品揃えの質が悪化」。

■今日のBGM

金の事を考えないスタッフには大事な仕事は任せない

前回のブログを読み返していて、少し大きな世界の事を書きすぎたと反省した。個人としてサラリーマンも会社経営も経験して、大切なことは「金の事を考えて仕事をする」ということだ。

企業を経営すると一番気になるのは資金繰りだ。上場企業になると営業と管理に別れそれぞれの与えられた範囲での仕事になる。中小企業はそうもいかない。特に中小小売業は毎月のキャッシュ残高を気にしていかねばならない。大企業で働いていた時はいかに気楽に仕事をしていたのかと痛切に感じた。

「お前の好きなように仕入れてやってみたらいい」。小売業ではよく聞く言葉だ。例えば好きなように仕入れた金額が300千だったとして、もし自分で商売をやっていればどういうことか考えるべきだ。その300千は自分の貯金残高で足りるのか?いつ払うのか?ちゃんと売れてキャッシュインするのか?どういう金の流れになっているのか?つまり「人の金」だから簡単に行動できる。そして、複数店舗に仕入れるとしたらさらに金額は大きくなる。また、そういう指示を簡単にする上司も多い。そうなると責任の所在が分からなくなる。

在庫管理にしてもそうだ。商品の「先入れ先出し」は食品でよく使われるが、衣料服飾品でも在庫を新鮮に見せる努力は必要だ。常に売場の鮮度を高めるためにどうすべきか考えて仕事をする。やはり単品データを細かく見て他店比較し、売り方、見せ方を定期的に変えるようにしているかは大事なことだ。売る努力が必要で、売れない商品は手を加えなければもっと厳しい商品になってしまう。つまり値段を下げることも必要になってくる。

本部で仕入れにかかわるスタッフは、金に関しては一番責任が重い。このブログでもよく書いているが、昔のイトーヨーカドーのDB(ディストリビューター)のような立場のスタッフは、絶対に必要だ。仕入れ枠の管理を徹底する人間が必要で、商品内容でなく絶対的数字でジャッジする必要がある。今ならAIを使う会社がありそうだ。

つまり商品は「金」の意識を持たないと、商売は潤滑に回らない。すべて自分の金で仕入れた意識を持ち、その「金」が回っているかどうかを確認することが一番大事なことだ。数字で言うと支払いサイト(支払い日数)と在庫日数をチェックすればいい。過去小売業を経営していた時、キャッシュフローを細かくチェックしていたが、毎年黒字計上にもかかわらず、月末にキャッシュ不足になることが年1.2回はあった。銀行の当座貸越などでしのいだが、やはり12月支払い期の2月末のキャッシュ残で1年の商売が終わる感覚を持ったことを思い出す。

その他、開発のスタッフも大きな金が動くという意味では、責任は大きい。以前も書いたが、売場内装への投資金額は大きい。その責任の所在も不明確な事も多い。出店計画書を細かく話し合い、その結果への責任も明確にする必要があると思う。

小売業は「金」のジャッジが難しい。そして、それは結果でジャッジされる。一番必要なのは、「金」の流れを冷静に見極め、迅速に途中で軌道修正できる体制だと思う。

■今日のBGM

数字と感性(思い)

以下の状況を簡単に分析してみる。

①20店舗の店を持つ会社のバイヤーが発注をする。原価3000円、売価6000円で各店1型10点の発注。支払い(2カ月後)20店舗×10×3000=600(千)。その商品を3型発注するとして支払い1800(千)。

→1型2カ月で100点消化 4カ月で40点消化、残り60点は半額で処理 完売

➁取引先が店に来て商談する。個性あるこだわり商品を店長は発注する。5型2色原価7500円売価15000円各1での発注。支払10×7500=75000。

 →2ヵ月で3点消化 4カ月で2点消化 残りは継続販売

では、この商品にどれだけ責任を持てるか?自分の金でも発注できるか?(商品代金は2カ月後現金支払い)

①2ヶ月消化率50%→支払いは締め日に売上で相殺できる。導入数の3割半額処分のため利益率は41.1%にダウン。

➁2ヶ月消化率30%→単品の売上では支払いはできない。利益率は変化ないも在庫負担になり今後の仕入金額が減る。今後売れ行きが改善しなければ利益ダウン要因になる。

理解すべきことは、①では ・値段を下げると利益は当然下がる ・利益は下がるが在庫処理が進む ・新商品を導入しやすい(売場に鮮度が出る) ➁では ・利益は下がらない ・支払いができない(借入する) ・仕入れが厳しくなり売場に変化が出ない  などの事が考えられる。

さて、こういう簡単な数字分析を、事業部内や商品部内で行っていて、その問題点や対策を話し合っているのかということだ。そしてそこに問題があれば、早急な改善を実行しているかどうかだ。

ここに小売業の課題がある。小売業では、まだまだ数字で話ができにくい風土がある。あくまでも商品主体での話になりがちにある。商品を語る言葉は熱いが、その後の数字に表れる情報に対する対応は遅い。さらに業態開発や、ショップ開発などでも、数字よりも「思い」が強くなり、数字データでの分析内容が信憑性に欠け、説得材料になりにくい。

実は、金融業や不動産業などとのPM業務がスムーズに進まないのは、そこに問題があると思っている。感覚や感性中心の小売業と、利益や効率を重視する金融業とでは話がつながりにくい。特にフィーで契約していれば小売側の立場も弱い。ただ金融、不動産側も、簡単に小売業の事を考えすぎではある。数字でのつじつま合わせの感もある。例えば、今進行中の池袋西武の改装も「ヨドバシ」+「西武」で今までの数字には届くとは思えない。

今までの経験上では、小売業にはまだまだ、「思い」や「感覚」が優先されているように感じる。「数字」だけでなかなか図りにくい面も多い。ただ、もう少し「数字」が討論の土台になる土壌を作るべきだと思う。

■今日のBGM

夏物はないのか?必要ないのか?

近頃、モール(RSC)に行って売場を回っていると感じることは「夏物はいらないのか?ないのか?」ということだ。ほぼ全店秋物での売場になっている。ただ、ユニクロには前面ではないが、最終処分としての夏物商品のコーナーはまだある。それ以外では、靴売場にオールシーズンと言えるセールコーナーもある。去年の猛暑、残暑を想定しての今年の品揃えだと、6月の不振分の夏物商品もあり、まだまだ各企業には夏物は残っているようにも思う。

では、各企業はもう夏物は売り切ったのだろうか?アウトレットやネットでなくしていくのだろうか?では、アウトレットを持たない店舗はどう処理していくのだろうか?デベロッパーから「秋物に全面的に切り替え」指示があるのだろうが、企業として今後どうやってなくしていくのだろうか?特に中小小売業は、「商品の現金化」を急ぎたい。逆に、近年はデベロッパーからの指示を遵守しないと問題になりそうな気配が見える。昔の「話し合って、臨機応変に対応する」イメージがなくなりつつある。ユニクロは対象外だが・・・

RSCのスタート期には、各店舗がある程度の規制内で、自由に商売をしていたように思う。値段の規制も強くなく、セール期間の規制も厳しくなかったように思う。さらにセール晩期には、ホワイトスペースでクリアランスの催事も定期的に行ってきた。それが、見え方や売り方の問題なのか徐々に減ってきた。

現状ではいろんな面で規制が厳しくなり、もう大企業以外ではRSCには簡単には出店すらできなくなってきている。さらにテナントリーシングも大型テナントや大手企業中心になってきており、希望のエリアやフロアには出店は難しい。そして、大型売場が増えてくる中、小型売場への柔軟な条件での出店も難しくなっている。リーシングしたい大型売場が優遇された条件での出店ならば、条件面でのしわ寄せは小型店舗に向かう。今後どんどんこの傾向は進んでいきそうだ。

そのしわ寄せに対応しているのが、ファッション以外の業種になる。近年RSCの3階に多く見られる、「携帯ショップ」「保険」「クリニック」「アミューズメント」などの出店が増えてきているのはそのためだ。当然インフラとしては必要だが、モールとしてのイメージ要素の強いファッション店舗の減少はモールの魅力減少につながっている。

少し話がずれたが、現状のモールは、標準化が進んでいるように見える。店や商品の個性もあるのだが、売り方も標準化の方向に向かっている。それが、面白さを消しているようにも見える。併設しているGMSの食品売場は商品の多様性や値段、さらに売り方の変化で集客しているのだが、他業種ではなぜ標準化に向かっているのか?食品にライフサイクルがあるのと同様に衣料服飾品にもライフサイクルはある。そしてお客様のニーズも多様化している。

「値段が下がった夏物」のニーズはまだある。RSCが向いている方向が少しずれてきているのではないか?「お客様」に目線が向いているのだろうか?

■今日のBGM

店長に考えてもらいたいこと ➁

前回、店長もキャッシュフローを考えて売場をマネジメントするべきだと書いた。毎日売上ばかりを念頭に置いて仕事するのだろうが、本当に自分で金を持っての商売ができているのか自問自答して欲しい。昔と比べると、店長の平均年齢も上がっているように見える。もう一度商売の理屈や目標を見つめなおしてほしい。

単純に30坪の店を出店するのにいくらかかるのか?出店費用だが、敷金として坪100~200千は必要だ。ここでは坪150千として考えると4500千となる。敷金は返ってくると思っているかもしれないが、撤去時に撤去費用でその金額位は必要になる。つまり返っては来ないと考えるべき経費となる。内装工事に関して、共用部の負担金、内装管理費、現場協力金などで最低でも2000千は必要になる。さらにオープン販促費なども必要で、デベロッパーに支払う金額は概算合計7000千くらいになる。さらに内装費だが、ABC工事含めると安くても10000千は必要になる。おそらく今なら、物価高騰もありその金額では済まない。つまり、30坪の店を出店するにはその他諸経費を含めると20000千は必要になる。そこに、オープンするための商品の金額が必要になる。商品在庫を上代で坪500千とすれば、原価50%として7500千の金額が必要になる。つまり、少し多く見積もるが30000千くらいの金を投入することになる。

少し前に、ソフトバンクの無担保社債の募集があった。利率は4.75%であり税引き後3.785%となっていた。ソフトバンクの存続のリスクがあるが、ソフトバンクが7年続けば毎年利払いが続く。そしてその後原資は返却される。海外ではリスクが大きいと言われていたようだが、完売している。この社債に30000千を投資すれば、毎年税前で1425千の利払いがある。つまり、金を動かすだけの方が安全で堅い商売として映る。商売をやっていくということは、それ以上の収益がなければ、社会的な価値はないと考えることもできる。

企業には理念がある。昔立ち上げた会社は、そんなことは考えてなかったが、「やっていく業態は、他の企業が手を付けてないターゲットに向けた商売」だと思っていた。所謂「小さなブルーオーシャン」と感じたからスタートした。大きな理念はなかったが、ターゲットさえ間違わなければ成功すると思って始めた。そして、その考えが浸透していれば、企業は続いていくと思っていた。

では、今の物販小売業の店長はどういう気持ちで働いているのか?毎日ルーティン業務をして生活基盤としての収入をもらっているのか?大きな投資を受け止めて、その投資を回収していこうと前向きに動いているのか?おそらく前者のほうが多い。

このブログで再三書いているが、今後の顧客層は高年齢化し、その数は激減する。つまり、普通にやっていれば、中小の小売業は淘汰される。上場企業でさえ、どんどんなくなっている現実もある。もう一度、企業目的を徹底して話し合い、店長として何をするべきか、何を基盤に仕事をしていくのかを明確にしてほしい。

でも、走っている途中にはなかなか考えられないか・・・

少し説教じみたブログになってしまった。

■今日のBGM

店長も店のキャッシュを管理する

このブログでは何度も書いていることだが、仕入れ担当者はキャッシュフローを再確認する必要がある。企業は、黒字であり続けても、現金がなくなり調達できなければ倒産する。そんな事例は山ほどある。店長も仕入れに参加しているなら、当然店舗のキャッシュフローを再点検すべきだ。そしてその意識を持って仕事に携わってほしい。

まず、当月のキャッシュインだが、テナント入店の場合はいろんな入金方法があるが、ここは簡易的にわかりやすく当月の売上が当月キャッシュインされると設定する。

次にキャッシュアウト。ここも支払いにいろんな時差はあるが、簡易的に当月のキャッシュアウトと設定する。まず賃料等。当然出店条件をわかっているとは思うので、賃料、共益費、販促費、事務手数料(クレジットが多くなると想像以上に大きい)、駐車場負担金は算出できる。次に人件費。店舗勤務者の給与を総支給で合算する。社会保険料は会社が支払い給与の約15%は負担しないといけないので、その分も人件費に上乗せする。さらに、電気代、電話代、店で発生するショッパーズなどの消耗品費、出張すれば交通費も発生する。

具体的に想定数字を考えてみる。

まず、キャッシュインでは売上を5,000千と想定。

キャッシュアウトで賃料、共益費、駐車場負担金、販促費で900千(イオンモールで30坪弱の店想定)。人件費は1,200千+200=1,400千(社保会社負担込み)。支払手数料100千、電気代、電話代、消耗品で100千 概算で2,500千。

つまりキャッシュはこの段階でキャッシュイン5,000千-キャッシュアウト2,500千=2,500千となっている。

ここで考えなければならないのが、商品の支払い分になる。キャッシュイン5,000千―キャッシュアウト2,500千=2,500千で商品の支払いをしないと足らなくなる。2,000千の仕入ならキャッシュは残るが、3,000千の仕入ならキャッシュは足らない。あくまでこの仕入数字は原価だということを再度理解する必要がある。

PL(損益計算書)で計算すると売上総利益率が仮に50%なら総利益が2,500千になり、経費分2,500千を引くと0になる。つまり儲けも損もない。つまり、概算ではあるが経費が大きく変動されなければ、損益分岐点売上は5,000千ということになる。ただここで仕入れが上記したように3,000千あればキャッシュは500千足らない。損益は赤字ではないが、支払い代金が払えない状況ということになる。例えば売上が5,200千で経費が変わらないとすれば200千の黒字になるが、仕入がこのままでキャッシュが足らず、さらに資金の手当てができなければ黒字倒産になる。(当然、数字上の事で交渉余地はある)

つまり、PL(損益計算書)上では黒字でも、仕入れ過多で支払いができなくなっていれば会社は倒産する。言い続けているが、仕入れ過多は在庫過多になり、支払いができなくなる。昨今の「ライトオン」「マックハウス」「ヴィレッジヴァンガード」はすべてこの状況から数字が悪化していった。

企業が大きくなると、細かく管理ができなくなるが、小売業をしているのなら、各店舗のキャッシュフローはチェックする必要がある。特に、現場で店長が仕入れに参画しているなら、店長もバイヤーとして最低限キャッシュフローはチェックするべきだと思う。

■今日のBGM

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