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個店仕入と本部仕入

チェーン店の商品部は渥美先生のチェーンストア理論では、商品開発担当者のマーチャンダイザー(MD)と提供方法の開発をするバイヤー、オペレーションラインを指導するスーパーバイザー(SV)と定義づけられている。理論上はそうかもしれないが、チェーン店は一括で商品を作ったり、仕入れたりする部署との意味合いになっている。

当然、量をまとめて作る事や仕入する事のメリットは大きく、利益率アップの大きな要因になっていく。さらに取引先との信頼関係も強くなる。販売ラインで販売力や商品のチェックができる力をつけることで、商品部スタッフはジョブローテーションとして次のステップになる事はある。半面、現場と本部の温度差が大きく、なかなか相いれないことも多い。

私自身も量販店時代はそういう環境だったが、その後ビブレ業態に移ってからは、個店仕入れに変わりそのメリット、デメリットを肌で感じてきた。店舗数が増えることで、当然全店で同じ商品を提供すべく商品部もあったが、うまく流れているようには感じなかった。のちに、会社を立ち上げ、店仕入でスタートし店舗数が増えて共通の商品を作り始めても同様の感覚はあった。個店仕入れと本部仕入との切り替えが企業の方向性を明確にするうえで大きな過渡期になるような気がする。

ビブレも立ち上げた会社もそうだったが、店仕入れは自分で商売をやっている感が強いので店長は面白く仕事ができていて、モチベーションも高かったと思う。「自分で仕入れた商品」が売れるのは面白いし楽しい。自分で品揃えに合わせて売り場も作っていく。販売計画も立案し数値計画とも整合させていく。ただし会社は成長していくにつれて、課題も増えていく。仕入金額や利益計画や在庫計画などの調整が難しくなってくる。特に店舗数が増えると全店好調というわけはないので、ひずみが出てくる。例えば売れてない店の商品を他店に移動させて販売したり、その商品を値下げしたりして、従来の自店の計画とのずれが出てくる。

企業が大きくなっていくには、商品を一括仕入れする商品部は必ず必要になってくる。さらに店別のデータを分析することによって、的確な商品の数量も分かってくるし、好調店、不振店間の商品の移動も容易になる。ただいろんなケースで店舗への強行的な指示も出てきて、店との乖離も大きくなる。「指示通り売れ」対「売れる商品を作れ(仕入れろ)」の構図は、当然発生するし、事実たくさん見てきた。

私自身の持論は、商品部バイヤー(仕入れ担当者)は店の店長を兼任させるべきだと思っている。その店には店長格のNo2を配置すれば、ある程度仕入れ活動として動ける。同様に商品部の責任者はどこかの事業部長を兼任すればよい。現場での商品の流れを肌で感じたほうがいい。商品担当と営業担当が別々に数字を管理することでひずみが出る。現場と本部の乖離が会社の成長を止める。「店で売上は計上される」つまり現場感を持ち続けることが最も必要だと考える。

営業売上数値と商品売上数値は、一緒になるはずだ。目的は一緒なのに、指示事項が違ってくることが一番危険な状態だと思う。

■今日のBGM

会社の存続は出店戦略にあり

以前、立ち上げた会社が何とかやっていけると思ったのは最初の2店舗の成功によるところが大きい。2店目が先日営業を終了したマリノアシティ福岡だった。最初の2店とも坪数は40坪強で間口の広い店だった。ピークには両店とも年間2億くらいの売上があったと記憶する。ただそこから出店した数店舗の数字は苦労した。

落ち着いて分析すれば、商品のSKUや在庫金額から考えて35坪~45坪の大きさが必要で、間口が広く、長方形かそれに近い店が一番フィットしていた。モール出店では、間口が狭く30坪以下の小型店で、さらに3階に出店すると失敗の確率は上がった。3階でもエスカレーター前とかはまだ戦えた。もう1つの基準として、競合になる店や、いつも数字を意識している店の売上を確認していた。それによって自店の数字の想定を立てることができる。

整理すると、昔運営していた店舗の出店場所としては、間口が広い店がベストで、モールであれば2階まで、そして35坪前後の大きさ。さらに、競合の売上を確認して提示された条件をもとに数値予測を作り社内会議をした。

数値予測は5か年(契約年数)の店損益を簡易なPL(損益計算書)で作成した。それによる店予測損益に投資経費として初年度に総投資額の20%を経費計上し、残金額を毎年35%償却したとして計算した。その数字を見て出店の参考資料としていた。

その数字に加えて、商品バッティングや競合関係、エリア特性(人的交流ができるかなど、特に人的マネジメント)を検討し、最終の細かな調整をデベロッパーとしてきた。出店の可否に関して、妥協して出店した店舗は、ほとんど成功しなかった。

内装投資や、敷金、その他のデベロッパーへの出店費用、品揃え商品費用や、備品経費を想定すると30坪~40坪の出店で2000万以上のキャッシュが出ていく。ぎりぎりで回している中小企業には大きな負担となるし、真剣に考えるべき事案である。キャッシュ残高によっては、借り入れも必要になり、実際出店ごとに融資を受けていた。さらに出店にかかわる経費は、出店投資だけでなく、それに付随する人的戦略への経費もある。転勤させると、その転勤経費や、住宅経費も発生する。さらにスタッフの募集経費も必要になってくる。

多店舗化することによって、商品コストの削減や、オリジナル商品にも取り組める。情報の精度も上がるし、社内の自信や社外の認知度も上がる。出店戦略が中小小売業にとっては企業存続の最も大事な要素になる。それだけに、出店の社内ルールを制度化し、感覚でなく数字でジャッジできるようにすることが必要だと思う。

出店店舗の成功こそ、次のステップへの礎になる。

■今日のBGM

DB(ディストリビューター)には発言力が必要

ディストリビューター(以下DB)を調べると、「MD、バイヤーが発注調達してきた商品を「適正に」「効率よく」配分すること 店頭在庫を整えることが主な業務になる。」とある。自社商品、別注商品が作れるだけの規模になると非常に必要なポジションだ。

昔、イトーヨーカドーのDBは権限が強く、バイヤーが発注しても在庫が多ければ仕入れを許可しなかったらしい。当然商品部内の組織ではなかった。これは大きなポイントになる。商品部内にいるとバイヤーやMDと机を並べているので、強い指摘ができない。以前在籍したビブレも商品部にDBを在籍させていた。ともすればバイヤーの部下、同僚としての扱いになる。仲良く同席していると当然在庫や商品動向への提言機能は弱まる。

店舗数が増えてくるとオリジナル商品の比率が高まり、その商品の管理をDBがする。オリジナル商品の店別動向や在庫管理データをつかみ、情報を開示する。当然動きが悪い商品をどうするかもジャッジする。売れている店に移動させたり、値段を下げてなくす指示もする。つまり商品の司令塔になる。

在庫管理も当然DBの主要業務になる。各店の売上予算、在庫予算を把握し、仕入金額を把握する。売上の予測と仕入金額で在庫予算との乖離は当然わかる。仕入原価も分かるので月末在庫と月末の利益着地も想定できる。在庫が多くなりそうなら、仕入れをストップさせるし、商品が売れてなければ利益予測をして値段を下げる指示もする。

単品情報もデータでわかる。以前の会社では1カ月0.2回転以下の商品(10点仕入れて2点売れると0.2回転)は売れている店へ移動させるか、値段を下げるかのジャッジをしていた。楽なボーダーラインだが早め早めのジャッジは必要だ。ジャッジラインは会社が政策的に決めればよい。小型店は早めに不振商品を他店に移動させて、商品を入れ替えたい。さらに、売れている店があるのならその店の売り方や演出など成功事例として共有させたい。

商品仕入担当は、当然自分で仕入れた商品はかわいい。売れると思って仕入れたのだから、売れないのは売場の責任と思っている。売場は逆に売場の欲しい商品がわかってないと思っている。これはいつも見られる様相だ。どちらかの意見に偏らないため、DBを管理するポジションには、営業系でなく数字で冷静に判断できる管理系の責任者を置くべきだと思う。そしてその責任者は営業の責任者と対等である必要がある。

小売業の数値は「売上」「利益」「在庫」で評価される。とかく「売上」「利益」のみ語られ「在庫」を見落としがちになる。「在庫を整えることがDB」という定義を再認識するべきだと思う。

■今日のBGM

今の商業環境で、商売を始められるか?

昔、叔母と叔父が西宮で、それぞれ豆腐屋をやっていた。忙しくて年末には毎年両親も手伝いに行っていた。大豆から豆腐を作ってそれを売る。焼き豆腐はバーナー?で火を入れる。所謂製造直売で儲かっていたように記憶する。自転車で売りにも行っていた。土日も大変だと思ったが、商売は金になるものだと思っていた。

自宅で商売をする。つまり家賃はかからない。原価も安いので儲かる。うまいので売れる。さらに家族経営なので人件費もかからない。(厳密にはかかっているが・・・)商売の成り立ちだと思う。

今豆腐屋をやっていると、どうなっているか?SCで商売しなければ人は集まって来ないので、入店すると家賃は高い。そうなると家族経営は難しくなり、人を雇う。SMなどとの競合が厳しく値段競争に負けてしまう。この流れで個人経営はどんどん減っていく。さらにずっと味を求めてやっていても、商店街がなくなってきたのと同じタイミングで寂れていく。

現実はどうか?SCの数も過剰になり、乱立し、より集客力のあるSCに入店するには、敷居がどんどん上がってくる。入店するのに敷金や内装管理費やその他多くの経費が掛かる。当然チープな内装では入れない。出店経費は非常に高くなる。SCも集客を上げるために、「売れる店舗」をリーシングする。当然「売れる店舗」の条件は優遇される。そうなれば他の店舗に当然しわ寄せがあり、どんどん出店のハードルが上がる。つまり利益も上げていけるMDが必要になる。

衣料服飾品においても、現状のお客様の流れはボリュームプライス志向が強まっている。ハイエンドは少なく、その購買場所も限られてきている。価格志向に走れば当然商品を企画して大量に作っていかねばならない。国内ではコストが合わず、諸経費が抑えられる海外で生産する。そんな中でも円安が続き、コストも上昇する。売れる商品を作るには大量の購買データも必要になる。つまり大企業シフトはますます強まる。近頃は商品を作って卸していた企業が、自ら出店するケースが増えている。つまり「買い」での商売は厳しくなっている。

単店で戦えるとすれば、そのエリアでは「そこでしかない物」を売るしかない。ただ「そこにしかない物」は仕入なら原価は高い。利益対策も考えなければならない。卸企業の戦略としても1つの店舗(会社)に集中して卸すことはしない。ローカルチェーンでブランド戦略をしている店がこのセグメントに入る。実際そういう店は大型モールにはいくつか入っている。

今の商環境で、個人もしくは小資本で、商売を立ち上げても絶対成功しない。もし成功するビジネスモデルがあるのなら、「人」「物」「金」の回しやすい企業と共同で立ち上げていくしかないように思う。小売業はもう「とりあえずスタートする」スタートアップ事業ではなくなったと思う。

今日のBGM

大企業の社長は中小企業の社長をできない

このごろ、この類の内容が多くなっていて恐縮するが、やはり大企業の社長や新聞各社が他人事のように言う「景気の回復は中小企業次第」というコメントには大変憤りを感じている。今回も同様の内容になっていることをご容赦願いたい。

先日、昔の取引先の社長と飲んでいるとき、その社長がお盆休みの案内を出したら、「長い夏休み、どこか行くのですか?」と取引先の店長に聞かれたという。店長は今年の盆休みは特に長いので何気に聞いたようだ。その社長は、「商品の発送ができないので休みにしただけで、お盆期間も毎日仕事する」と答えたそうだ。実態は間違いなくこういう状況だと思う。従業員は休ませても、社長は仕事を普通にやっている。

以前も書いたが、中小企業の社長にほとんど休みはない。後方各部署に責任者と担当がいて個別にマネジメントしている組織になっている企業は数少ないと思う。私自身、売上1兆円超企業の部長職も経験し、それはそれで忙しかったが、20億を超えたぐらいの中小小売業の社長のほうが間違いなく忙しかった。

小売業は人を雇うにもまず売場が中心になる。売場が売上げを作ってくるので、売場の人員の確保が優先される。現状の時給アップや、土日勤務の労働環境を考えると小売業に容易に人が集まるとは思えない。本部に人を配置するには店の体制が安定した後になる。

小売業の後方業務は、まず経理がある。立ち上げた会社では全店の伝票(仕入、返品、値下げ、移動)の本部控えを送付させていた。本部でも各店の数値管理表(売上、仕入れ、在庫、利益のデータ)を作成しその伝票類と毎日の売上を管理していた。月度が終わるとその仕入データを取引先別に計上して、支払いの基になる帳票を作成する。それをもとに翌々月の支払日に支払っていた。その支払いもパソコンで約70社ある取引会社に振り込む。1回の振込みも1億以上にはなる。その他本部や各店での経費や従業員の経費も集計し振り込む。

人事的な作業もある。給料を確定させなければならない。各店からのタイムカードや人事関係の各種書類をチェックして給与を作成する。出勤簿への記入や有休の確認、残業時間のチェックも当然する。毎月入退社数は5名以上入るので、毎月一度はハローワークに、雇用保険の加入や離職票の提出をしに行っていた。そして給与も明細を作って店に送付し、給料日に振り込んでいた。出勤簿や給与台帳は重要で、コロナ時ややこしい雇用調整助成金の申請にも必要だった。業績評価も当然のようにやっており給料改定も行う。当然人事台帳の更新もする。

仕入と人件費を確定させて各店の数値を確定させ、各店の営業月報や損益月報も作成し、店長にはフィードバックしていた。当然会計ソフトや、給与ソフトは使っていたが、元のデータ作りは労力が必要になる。その他営業系のデータ管理もある。細かい仕事はいくらでもある。最多27店舗の管理業務を本部スタッフ、社長を入れて3名でやっていた。これに加えて月1度は全店巡回していた。もっと楽なシステムを導入することはできるだろうが、全体の仕組みを変えるにはもう少し規模が必要だった。店舗数を増やすには投資が必要になる。損益が安定していなければいい融資を受けられない。ずっと右肩上がりではない。

自画自賛するようだが、よく働いていたと思う。上場企業の社長はこんな仕事はしないと思うが、おそらくできない。では私が上場企業の社長はできるか?企業基盤がしっかりしていれば、おそらくできる。

■今日のBGM

バーゲンでもあまり値段が下がらない

8月はできればお盆までに夏物商品をなくす目途をつけたい。お盆すぎると集客はぐっと落ちるので値段を下げてでも売っていく。商品をなくしていく。盆過ぎには初秋物が投入され、売場の色を秋色に変える。昔の販売計画はこんな感じだった。

8月に入ったが、SCの各店の売場はあまり乱れていない。なぜか年間通して割引している店はあるが、この夏物最終処分時期の売場のイメージはない。「いい買い物をした」のイメージがだんだんなくなっている。

いつ商品をなくしていくのだろう?ユニクロを中心としたSPA型の小売業が増え、大きなセールに比重をかけてない。52週の販売計画の下、在庫状況を見て細かなセールを増やし、商品をなくしていく体制に変化している。それに合わせて取引先の体制も変わっていったのかもしれない。

ただ、そういう企業体質の会社ばかりではない。本当にやるべきことをやっているのかという疑問がある。上場会社の決算を見ると、利益率を上げることを優先していると感じることが多い。回転率は鈍化している。商品動向に基づいて、商品を処分しているのだろうか?「品揃え失敗」で利益を落としている企業はあまり見当たらない。「1月、7月は売上を確保して利益率は落とすが、利益額でカバーし、在庫は減らしていく。2月、8月は減った在庫に先取り商品を入れて利益率を回復させていく。」という昔の商売はなくなってきたというのだろうか?在庫高によって利益率が変動していくような細かな予算を組んでいないのではないかと感じる。季節商材が少なくて、商品回転率が年2回転と低くても、残商品を年2回はなくしてしまわなければならない。商売が攻撃的でなくなったのかもしれない。逆にユニクロのほうが、あれだけ商品を自社で作って利益率51.9%(23年決算数値)は十分攻撃的な結果かもしれない。

売上予算、利益予算、在庫予算、それに伴う仕入予算を細かくボトムアップで作成するべきだと思う。当然修正は会社トップがするが、トップダウンでの予算作成ではひずみは大きい。店に予算責任への比重を上げることによって、店の動き方は変わる。本部主導になればなるほど店の動き方は鈍い。ユニクロのように商品の動向ジャッジを数字で判断できる状況にないのなら、店の判断で数字も変わるようにしたほうがいい。「売り場の意思」が見えたほうが店は勢いづく。

SCの8月の売場を見ていると「欠点を隠した優等生」のようなショップばかりのような気がする。「必死感」もあったほうがいい。そういう感覚が一番お客様に伝わると思う。

■今日のBGM

小売業の本部機能は店のためにある

小売業の後方部隊はできるだけ小さくすべきだというのが持論だ。特に営業系の本部組織はミニマムにすべきだと思う。会社規模が大きくなってくればくるほど、本部要員が増え、本部要員が増えれば増えるほど現場に余計な仕事が増える。これは間違いなく起こる事実だ。規模が大きくなると全体の把握がしにくくなり、その確認として会議が増える。当然会議が増えると資料が増える。小売業の資料は現場の数字が中心になり、その確認作業として現場への資料作成を依頼する。

GMSの店長時代、日曜の夕方になるとスタッフルームに売場の責任者が集まってきて書類作成をしていた。月曜日に本部の商品部の会議に必要なデータを作成し送付していた。売上より必要な書類を優先してしまう風土になっていた。その後、本部へ赴任して本部人員削減を言い続けたがなかなか組織は変えられなかった。

本部は店のためにある。店の要望を聞いて動くべき場所だと思う。本部のスタッフがいてよかったという風土にする必要がある。本部として商品を作るとき、仕入れるとき、店の状況がわかって、店のニーズがわかって仕入れているか?店に行って店と同じ立場で販売をしているかどうか?そこで気づいたことを売場に反映しているかどうか?売り場のレイアウトや演出は的確かどうか?販売体制に問題はないか?店と意見を交わさないといけない。

本部は偉いと思われがちだ。全然偉くない。店が一番偉い。店が動かなければ会社は成り立たない。ただ本部は店がわからない商品動向の変化や、トレンドの変化などはどんどん発信しなければならない。それも本部で発信するのでなく、現場で指導して実践して初めて情報が広がっていくことに気が付くべきだ。余談だがイトーヨーカドーの会社の組織図は最上部に店が並んでいたと思う。組織図の逆三角形の下に社長、取締役会、株主があった。「店=お客様」が最上位の考え方だった。

どうすればよいか。本部は店長を数年経験したぐらいの若いスタッフを配置すべきだと思う。できればジョブローテーションをして3年くらいの間隔で交代させる。店舗数が少なければ店長兼任が最も望ましい。現場の感覚が必要だし、若いスタッフだとベテランからの意見にも耳を傾ける。現実的には企業は安定感が欲しいのでどうしてもベテランを本部スタッフに登用する。そうすることによる弊害が大きい。若手は意見を言いづらいし、仕事の流れに変化が出ない。(従来の流れを踏襲する。)新しい感覚が生まれない。

経営していた会社では、営業面の本部要員は配置しなかった。管理職はあったが店勤務にしていた。できるだけ現場と本部の距離を作らないことが大事だと思っている。管理職が店を巡回するときは店と話し合い、必ず指示できるような体制にした。本当に営業の本部機能が必要になるのは40店舖くらいになるときだと思う。その時は全体で商品の自主MDができるし、営業面での企画もできるようになる。そしてそういう時でも本部よりも店を優先し若手をジョブローテンションの下、本部に配置したい。

本部と店の温度差はできるだけ少なくなるようにするべきだ。

■今日のBGM

最低賃金引き上げ

最低賃金の引き上げで、全国加重平均の時給は1054円になるとの報道がある。いよいよ小売業は大企業しか生き残れないかもしれない。

小売業は「立ち仕事」「土日休みづらい」などの理由で人材不足は続いている。過去の経験から、欠員が出るたびに募集をするが、なかなか応募はこない。年々厳しくなっている。今回の引き上げで今まで時給850円が最低賃金だったエリアも時給900円近くにアップする。ただ時給900円で募集しても間違いなく来ない。おそらく募集相場は時給1000円近くになる。受け入れ側の問題も当然あるが、時給を最低賃料に近づければ近づけるほど定着率は低くなる。そのたびに募集経費は発生する。さらに募集時給を上げることで当然既存のスタッフの給与も上げなければならない。さらに賃上げ分は当然賞与にも加算される。

会社は、給与に加えて社会保険の負担分の50%を支払っている。健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料あわせて約30%の個人負担分の半分15%相当(都道府県により変化する)を負担している。さらに今年の10月から51人以上の会社も週20時間以上の従業員にも社会保険を適用することが義務化されることになっている。

会社にとっては、経費負担がどんどん大きくなっている。

新聞の社説などを読むと、中小企業も賃金引き上げに伴ってシステムの導入を進めたり、省力化の努力をするべきとの意見がある。労働集約型の小売業で、さらに接客ウエイトが高い専門店はどう対応すればいいのだろう。後方の人材を減らしていくしか頭に浮かばない。おそらく後方部隊の経費は最低限まで落としている。どうやればいいのか具体的事例の提案が欲しい。こういう他人事のような意見は必要ない。

人件費を吸収するには売上を上げるか、利益率を上げるかになる。コロナ以降、売上が伸び悩んでいる現状を考えると、売上確保より利益率を上げていく流れにはなる。利益率を上げるにはどうするか?オリジナル商品を増やして商品の原価を下げる。つまり企業商品を作ったり、取引先との別注商品を作ったりして、原価率を下げ、それを販売する。その商品を拡販することによって利益率を改善していく。しかし、それを中小企業がやっていけるか?取引先との別注商品を作るにも、商品コストを下げるのだからある程度の数量が必要になる。そして当然全品引き取りになる。店舗数が少ないと当然1店舗あたりの在庫が増える。売れなければ逆に利益ダウンの要因になる。経験上オリジナル商品を作るには最低40店舗くらいの店舗数は必要だと思う。中小企業でオリジナル商品を作るにはリスクは大きい。

「買い」の商売を続けるにも、現状ほとんど海外生産商品で、為替の問題もあり、取引先の利益も考えると商品原価は上がり、従来の値段を維持しづらい。値段を上げると売れなくなるし、値段を維持すると利益が上がらない。

おそらく、賃貸物件で償却もしなければならない店が5店舗以内の小売業は相当厳しくなってくる。いよいよ小売業は大企業しか生き残れない。

■今日のBGM

マリノアシティ福岡

マリノアシティ福岡が8月18日で閉館だという。後継施設は三井不動産の「三井アウトレットパーク」との報道がある。

マリノアシティとはなぜか縁があった。ちょうどオープンした時、あまり意図はなかったが訪れている。当時は天神ビブレの店長をしていて福岡で勤務していた。その時はいい場所にあると思ったのと(観光として)、キーテナントの「ミスターマックス」とは違和感があるなと感じたぐらいだった。その後退職し、友人がマリノアで仕事を立ち上げて会いに行ったとき、アウトレットとして増床されており変化に驚いた。その時閉店していた店舗があり、いい場所だったので興味を持ち交渉し、その場所に出店した。調べてみると17年前だ。好調に推移し、その後会社の譲渡はあったが、今回の閉館まで営業している。月に1度は店巡回をしていたので200回以上は訪れている。

「三井アウトレットパーク」で成功するのだろうか?アウトレットでは難しいのではないかと思う。スタート当初はマリノアシティくらいしかアウトレットはなく、都心に近い(天神から30分くらい)メリットが大きかった。その後鳥栖にプレミアムアウトレットができ佐賀、長崎を止められ、北九州と広島にイオンのジアウトレットができ、北九州、山口、大分からのお客様を止められている。MDレベルは一般的に見ると三菱地所のプレミアムアウトレットが優っていると思われ、さらに天神に近すぎるアゲインストもあり、ブランドを集めにくくなってくる。加えて福岡のお客様はファッションにこだわりが強く、今回どれだけメニューを揃えられるかが課題となってくると思う。

SCとしては「三井ららぽーと」のほうがイオンモールよりショップMDが福岡にあっており、可能性は高いが、5km圏にある三菱地所の「マークイズ」やイオンの「マリナタウン」が成功しているとは思えず、よほどの吸引力のあるものがないと厳しいと思う。

ただ、環境的にはいい場所だし、マリノアシティ自体も成功した物件だった。もし、投資対効果を考えずにプランを提案するとすれば、現アウトレット棟は三井不動産の「ららぽーと門真」タイプ(アウトレットと共存)のららぽーとにしアウトレットを活かし、ハーバーサイドは少しグレード感を上げてみたらと思う。ハーバーサイドはヨットハーバーに隣接していてイメージはいい。神戸三宮の居留地のように百貨店(岩田屋?)の力でテナントミキシングはできないだろうか?もし食品SMを加えるなら「紀ノ国屋」「イカリスーパー」などの高級志向のSM誘致はどうか?話は逸れるが、絶対試みてほしいことがある。ハーバーサイドの駐車場は、1台の駐車スペースを広くして大型車を止めやすくしてほしい。駐車台数は減るが駐車代金を上げればいい。車の停めやすさは特に平日女性客には大きなメリットになる。小さなことだが差別化になる

マリノアシティ福岡は、観光スポットとしてもいい場所だし、自らやっていた店も順調だった。全く悪いイメージはなく、訪れるには本当にいいところだった。思い入れも大きい。ただ商売環境として、アウトレットの吸引力が弱くなってきたのは間違いない。商圏の半分は海なので、さらにもっと大きな吸引力が必要になってくる。

またいつか訪れた時、いい印象が続いてくれていることを期待したい。

どうもありがとうございました。

■恒例の日経新聞広告(見開き表裏)

中小企業は無策?

近頃、新聞や報道で「課題は中小企業」的なことをやたら目にする。元小規模小売業経営者としてどうも納得できないし、不快になる。大手都銀が「中小企業を援助する」と言って営業支援、経営へのアドバイスを強化するという記事もあった。政府からも同様の発言がある。「給与が上がらないのは中小企業に問題がある」と他人事の発言をする大企業経営者も多く報道される。

日本の事業社数の99.7%が中小企業で、日本の労働者の70%は中小企業に就業している。中小企業で最も多い分類がサービス業(なんでもかんでも属している)で41%、小売業が18%でそれに続く。労働者数はサービス業35%、小売業14%の順のようである。

「経営への支援、助言」とは何だろうか?小売業への支援を具体的に聞きたい。会社を経営していた時、経営に対する助言はどこからも一切なかった。銀行も3行取引があったが銀行側からの援助支援はなかったと思う。当方からの要望の検討はしてくれたが・・・当然ビジネスなので支援ばかりはできないだろう。順調な時はどんどん融資を持ち掛けてきて、コロナ禍終盤体力が弱ってきたとき、当座貸越(一定枠内で融資を活用できる)をやめたいと言われたこともあった。国からの補助も企業が調べなければ利用できない状況ではないのだろうか?会社を譲渡してから「キャリアアップ助成金」の制度を初めて知った。有期社員を無期社員に30人以上は登用してきたし、その他コースでも当てはまるものもあった。この制度は2013年から始まっている。社保加入や離職票提出のため月に一度はハローワークに行っていたが、全く気が付かなかったし、話もなかった。

小売業への経営への助言は、おそらく官公庁や金融関係者はできないと思う。数字で解決する要素が少なく、ソフトの要素が高いからだ。もし助言をいただけるなら会計的な助言になるが、そこは税理士で十分カバーできる。取引先ルートや販売先ルートの紹介はおそらくできないと思う。ただ小売業経営者は、小売以外に関しての視野が狭い。他業種の成功例や、利用できる制度、さらに利用できる制度へのアプローチなどを教示してほしいとは思う。コロナ禍での雇用調整助成金の書類を揃えるのは大変な労力だった。当時は当然ハローワークも大変だったが、経営者も大変だった。書類提出ももっと簡潔にできるはずだ。

小売業の収益の源は「売り場」であり、管理、人事、経理の部署は利益を産まない。利益率も高くない業態なので後方部隊の人数も限られる。実際20店舗を超える会社の事務仕事は私を含めて3名で回していた。業務のアウトソーシングもしなかった。その現実の中、上目線でなく歩み寄ってきた公の部署はなかった。

小売業界は大きなターニングポイントにある。新しく頑張ってきている企業はほとんど見かけない。他人事のような掛け声だけでは前へ進めない。具体的な施策で向き合ってほしい。

「課題は中小企業」「中小企業を援助する」という言葉は、他人事のようで不快さを増す。

■今日のBGM

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