カテゴリー: 経営環境 (2ページ目 (10ページ中))

イトーヨーカドーを売却する?

セブン&アイホールディングスがヨーカドーを売却するというニュースが出ている。これはコンビニ事業にとって、いい事なのだろうか?詳しく読むと、コンビニ事業以外を分離したヨークホールディングスの株式売却のようで、このヨークホールディングスにはヨーカドーやロフト、赤ちゃん本舗など31社が含まれている。各社切り売りするのか、すべてなのかの詳細は見えていない。いずれにしても外資の買収案に対抗するため、低収益の他事業を切り離して株価を上げていくというのが今回の対応になっているということだ。

もうコンビニ事業単体で、数字を伸ばせる体制になったのだろうか?もともとはPOS管理が進んでいたGMS事業やSM事業との情報共有で、大きくなっていったのだと思う。今でも数字が伸び悩んでいるとはいえ、日販売り上げを調べてみると、セブンが67万、ファミマが56万、ローソンが55万となっていて、圧倒的な販売力を持っている。

日本人的な発想で言えば、なかなか育ててくれた親会社は切りにくい。セブン&アイの井坂社長はセブンイレブンの出身で、ヨーカドーの出身ではない。それでもここまで大きくなった経緯は十分に理解している。ヨーカドーの衣料品をなくしGMSから撤退させていった「親を否定する」ジャッジは大きな判断だったが、果たしてヨーカドーを売却できるだろうか?イオンGがまだ赤字のGMS事業を続けているのは、創業家への無駄な配慮だと思っている。コンビニ事業単体で十分成果は出せると考えれば、ジャッジできると思う。

昔、イオン内の研修で「コンビニ業態について」という課題で、グループで研究し半年近く打ち合わせをしたことがあった。その時、「イートイン」や「おでんと酒」の提供などそのあとコンビニで実行された企画もあり、面白い経験だった。ちなみにイオングループの「ミニストップ」はスイーツなどが人気で企画力は素晴らしいが、いまだに日販42万となっていて後塵を拝している。その時、今後コンビニはインフラとして絶対必要になってくるとは感じていた。人口減少が進み、過疎化が進む今、買い物をする場所や集まる場がなくなってきている。そのエリアの中心にいろんな機能を持ったコンビニがあれば本当に便利なものになると思う。そういう意味でセブンイレブンの店舗網は将来も魅力的なものだと思う。課題はFC制が続くかということ、さらに過疎地の生活拠点としてのコンビニに「公」が介入できるかということだと考える。

もうヨーカドーやヨークマートからの情報やシステムから学ぶことがないなら、打算的に動いたほうがいいように感じる。人情や過去の成功体験に引っ張られている「西」の企業体質と違う動き方のほうが、「東」のイトーヨーカドーグループらしく見える。

■今日のBGM

CSC(コミュニティショッピングセンター)にはGMSは必要?

ずいぶん前のブログに「自宅近く15km圏には8つの大型モール(RSC)がある」と書いている。RSCとは、定義から規模が4万㎡以上の規模のSCを指している。ただ本来の意味のRSCはおそらくもう2~3SCしかない。他のSCはイオンでいうと「(ジャスコ・・・)と(80?)の専門店」という昔のGMSの大型版にしかなっていない。分類で分けると中規模SC(敷地面積2000坪~5000坪)をCSC(コミュニティショッピングセンター)と分類されており、その定義ぐらいの価値しかないように感じる。

15km圏でNo1のRSCは「ららぽーと富士見」であり、それに続くのは「コクーンさいたま新都心」だと思う。ちなみに富士見は8万㎡、約290店舗で売上は486億、コクーンは7.8万㎡、約270店、売上は430億となっている。2つのモールに共通しているのは、GMSは入居していないということだ。(コクーンのヨーカドーはSM)テナント数も多くテナントのバラエティも豊富だ。ファッション系テナントでは富士見にはセレクト系でUAは「ビューティ&ユース」「グリーンレーベル」、ジャーナルで「レニューム」、ライセンスでは「ヒューゴボス」「ラルフローレン」、コクーンにはビームスの「ビーミング」、「グリーンレーベル」「アルマーニエクスチェンジ」「ラルフローレン」などがある。両モールともテナント数も多く、幅広いラインナップになっている。

前述した8つの大型モールのうち5つはイオンモールだ。いずれもテナント数は多いが、類似しているテナントが多く、テナントにあまりわざわざ感はない。となると必然的にGMSのニーズも出てくる。さらに3つはイオンモールの物件でなくイオンリテールのモールになる。そうなればどうしてもGMS強化に動き、テナントリーシング力は弱くなってくる。

そのうちの1つである、イオンモール北戸田でGMSの2階部分を全面改装していた。この改装で遠隔地からお客様を呼ぼうとしているのかというと、大きな疑問符が付く。売場半分はキッズリパブリックとして子供関連を終結。その他の衣料の改装は、おそらくテナント揃えで弱いところを広い面積をとって引きこもうとしている。つまり、スーツやフォーマル、ミセス、アダルトの打ち出し強化が主で、量販店ブランド(ジュンコシマダパート2、ポロ、ケントなど)も固めて、在庫リスクもヘッジしている。トップバリュコレクションはショップとしての見え方は弱く、完全にユニクロには太刀打ちできず、アダルトカジュアルの店になっている。飯の種のアンダーウェアを奥に持っていき、利益構造がどうなるかわからない。商圏的には子供は増えている珍しい地域だけれど、足元商圏の強化が主目的で、おそらく大きな効率改善はできないと思う。そもそも、高所得者層などの新しい客層(ブランドニーズ等)を呼べているとは思えない子供ゾーンの拡大で、成功している事例はあるのだろうか?

あくまでもテナントの弱いところを、GMSで補うという改装のように見えた。つまり、足元のお客様のための改装であって、広域からの新しいお客様を引き込むものではない。狭商圏でのSCになってしまっている。狭商圏で4.4万㎡の売場面積は大きすぎる。テナントの欠落から見れば、大型家電の導入や、ニトリや100均の大型化、GUの導入などのほうが喜ばれたのではないだろうか?当然賃料との兼ね合いもあるが、今回の投資対効果には疑問符が付く。

以前に書いたが、サラリーマンの発想する改装はいらない。こういう改装で満足し続けるのなら大きな面積のモールは必要ないのではないかと思う。

■今日のBGM

メーカー機能はどうなっていくのか

ネットで上場アパレル12社の上期決算がまとめられていた。(ユニクロと無印は決算期の兼ね合いで本決算だった。)ユニクロ、しまむら、無印、アダストリア、ワールド、オンワード、TSI、UA、ワークマン、三陽商会、バロック、Tベースの12社だ。数字についてはいろいろあるが、それよりこのくくりで一緒にできるんだというのが感想だった。感覚的にはワールド、オンワード、三陽商会、TSIはメーカーのイメージが強い。ただ直営展開も増えていて、小売りのイメージも大きくなってきてはいる。

40年以上前小売業に入社した時は、オンワード、三陽商会はメーカーで主な販路は百貨店だった。ワールドは専門店卸のイメージが強くそこから大きくなっていった。それがDCブームから自主の店を持つようになって、小売業の規模が増えていき、SCの拡大に併せてさらに形を変えてきている。ワールドの決算説明書を見ると、卸事業はプラットホーム事業に含まれているように見える。その事業の売上構成比は25%で、おそらく直営事業を指すブランド事業の構成比65%を大きく下回る。

小売業が利益率を上げていくには、当然仕入原価を下げる必要がある。その流れで当然上場企業は、商品を自らの手で作り始める。海外工場を作ったり、提携したりしてコスト(商品原価)を削減していく。そこまでいかなくても、ある一定の規模になればメーカーと組んでロットを大きくして原価を下げていく。所謂OEMと呼ばれる手法で商品を作り始める。メーカーの展示会で商品を発注するのは、多く発注できない個店や小規模企業になる。発注が小ロットになれば当然仕入原価は高い。世間の流れと同様に、小売業の購買客の流れは2極化しており、一般的には値頃感を求める客層が増えてきている。そのゾーンの競合は厳しくお客様の値段に対する要求もどんどん厳しくなっている。仕入原価が高いと当然売価も下げにくい。

中小規模小売店の商品の調達は、問屋やメーカーになる。小ロットでの発注では、メーカーリスクになるケースが多くなる。ある程度の量を作ることで当然コストは下がるが、発注量が少ない状況で商品を作ると、リスクはメーカーが持つことになる。もし受注が付かなければ、商品を作っても原価をさらにダウンさせて販売することにもなる。そしてある程度の売上の読みを持って、受注なしで先行して作成していく商品も多い。

小売業の現状を考えると、メーカーの商品リスクはどんどん上がっているように感じる。さらに中小小売業の経営状況も悪化している。大企業は自前で商品を作る。この状況でメーカーは商品を作り続けていけるのだろうか?この記事にあった上場アパレル12社のメーカーからの仕入は減っているだろうし、メーカーだった企業も直営事業に重きを置いているように見える。卸中心の大手名古屋のクロスプラスの決算説明書を見ても直営小売分野の売上が全体の20%まで上がってきている。

社会環境を見ると、どんどん値段合戦になっているように見える。そうなると、商品調達先のメーカーへの要求がどんどん厳しくなってくる。中小小売店が厳しくなっていく環境下で、メーカーの今後の商品戦略が難しくなってくるのは間違いない。

■今日のBGM

小売業を冷静に分析できなくなっている

私用で大阪に行って来た。毎回行くたびに思うのだが、どんどん観光客の数が増えているように感じる。東京近郊にも観光客は多いのだが、大阪は京都が近く、観光スポットが限られているせいか、なぜか多く感じる。特に東南アジア系が多い気がする。通天閣近辺は日本人のほうが間違いなく少ない。どぎつく、はでなサインが喜ばれているのだろうか?

インバウンドの数字を調べると、平成23年度は売上が5.3兆円で1人当たり21.3万円の消費となっている。そのうち買い物は1.4兆となっており、消費の比率は34.7%から26.4%に落ちてきている。さらに24年は1~9月ですでに5.8兆円超ですでに前年を上回っている。ただここでも買物ウエイトは下がってきているようだ。観光客の「モノ消費」から「コト消費」へ移行が顕著になってきている。

「モノ消費」の中心の百貨店の売上はコロナ前くらいまで盛り返してきているようだ。明確な数字は未発表だが、新宿伊勢丹の免税売上は1000億超とのことだ。西の雄、梅田阪急は今年1~7月で559億と発表されている。大阪ミナミに集まる外国客のニーズをうまく引き受けているのが心斎橋大丸で、今期の全館売上予測を1000億超としており、インバウンド売上は45%にも達するようだ。(本当に心斎橋筋は日本人のほうが少ないのでは?)

景気のいい話を書いたが、百貨店の売上のうち国内需要のシェアは87.4%まで落ち込んでいるとも発表している。そしてインバウンド需要は大都市に限られている。百貨店以外の大手小売業ではセブンアイホールディングスが上期中間決算で純利益34.9%減と発表されているし、イオンも中間決算で純利益76.5%減でGMSは82億の赤字と発表している。堅調なイズミも上期は経常損益21.9%減となっている。

他の小売業の状況を見るとユニクロは2024年8月期決算で国内売上前年比104.7%営業利益132.2%、アダストリアは2025年上期既存売上前年比103.4%、営業利益前年比100.9%、無印も2024年8月期決算で既存店売上前年比112,8%、営業利益前年比169.4%と伸長している。ニトリ、しまむら、西松屋も2025年上期は既存店で売上、経常利益とも前年をクリアしており比較的好調な数字を発表している。

数字を見ていると、都市部の百貨店を除く大型商業施設の流れはあまり良くなく、比較的値段志向の専門店の流れは悪くない。インバウンドで潤っているのは大都市の百貨店で、国内での需要は値段志向になっているように見える。インバウンドの需要が「モノ」から「コト」へ変わってくると、小売業界は大変な時期になっていくようにも見える。円安の追い風でインバウンド客が増えているのであれば、また円が強くなったらそのプラス分が消えてしまうが、逆に日本自体の景気が上向いていくのだろうか?その要素はないようにも思えるが・・・外国人のための街のような大阪ミナミを見て、今後どうなっていくのかますます読めなくなってきた。

しかし、契約残年数が少ないからだとは思うが、一等地になった「なんばマルイ」はやる気は見えず、もったいない。

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中小小売業の人件費 ➁

前回のブログをアップしようと思ったら、16日の日経新聞土曜版で「勤務先企業がパート年金保険料肩代わり」と1面のトップ記事として掲載された。まとめてアップしようかと思ったが、パート2として書くことにした。

どういうことかというと、社会保険料が「年収の壁」によって手取りが減る対策として、その個人の負担分を企業が肩代わりする仕組みのようである。具体的には現状の労働者の社会保険の負担割合(折半なので会社5:労働者5)を収入に合わせて9:1~5:5までの仕組みを作るというものだそうだ。つまり企業負担が大きくなり、折半までは肩代わりするということだ。前回書いた中小企業の負担がさらに増えるということになる。これによって労働者側は手取りの急減を避けられる。さらに企業規模要件の撤廃や、5人以上の個人事業所も適用対象とする方針も示したようだ。

もしこうなれば、社会保険料の負担増分の多くを企業が負担することになる。これが本当に進んでいけば、中小企業のダメージは相当大きい。新聞にもあったが、企業間格差が拡大する。おそらく中小企業の淘汰が始まるだろう。特に経費に人件費の占める割合の大きい小売業は大変な時期に入る。前回書いたブログの前提がさらに重くなっている。

ちょっと話は逸れるかもしれないが、サントリーの新浪社長の「時給1500円にできない会社は退出」の言葉通り、厳しい会社はなくなり、労働者も高い給与を払える会社に移ればよいという発想になる。だが果たして、働くことは「給料」が基準なのだろうか?全員が高い給料を払えるサントリーに就職したいわけでもないし、得意でない分野の仕事をしたいわけでもない。さらに入社できるかもわからない。小売業でも全員がユニクロで働きたいわけでもない。やりたい仕事と給料のギャップはいつの時代もある。

新しく企業を立ち上げても継続が難しくならないか?スタートアップ企業が減ってしまうのではないか?などの疑問も残る。小売業では、現状以上に新しいショップが出現せず、同じラインナップのテナントリーシングばかりになりそうな気がする。もうすでにそういう状態ではあるが・・・

おそらく、金銭的に余裕のある企業が、厳しい企業を吸収していく流れが加速するだろう。そして、その流れに乗れなかった会社はどんどん「退出」していく。

厳しい中小企業の淘汰によって、ますます、小売業でいう客層の2極化が進んでいくようにも感じる。

■今日のBGM

中小小売業の人件費

連日報道される「103万の壁」のニュースで、中小小売業は耐えられるのかと感じてしまう。その少し前には「時給1500円」のニュースも多く報道されていた。

中小小売業で収益を改善することはまず絶対条件として「売上を上げること」になる。自店でヒット商品が生まれたり、取扱ブランドが脚光を浴びたりして売上が上がる。ただその売上を維持するのは非常に難しい。特にファッションは長くは続かない。「利益を上げる」にはある程度の商品量が必要で規模が拡大しないと、なかなか仕入原価が下がらない。さらに規模を拡大するには当然店舗数も必要になり、投資を続けていかねばならない。そして最終的には「販売スタッフ」の質と人数のアップが不可欠になる。

立ち上げた会社でのラフな損益計算書を見ると、最も黒字が出た年度には人件費率が18%だったのが、コロナ期には34%になり大きく赤字を計上している。黒字期においても地代(家賃、駐車場費、共益費)の負担率よりも人件費が高くなっている。当然小売業は労働集約型で人件費の占める割合が非常に高い。

今回の「103万の壁」だが会社に損益上ダメージが大きいのは「106万の壁」がなくなる事だと思う。2024年10月から従業員50名以上の会社が対象になっている。以前の会社は約100名の従業員数だったので該当する。例えば時給1000円で月18日、日6時間働くとそのボーダーラインになる。今までは「130万の壁」が大きかったのだが今後は「106万の壁」になる。国は2020年代に時給1500円にすると言っている。と、するとボーダーラインだった人はどう働くか?時間を短くするか、壁を超えるか?今後配偶者特別控除の「150万の壁」をどうするかも考えなければならない。

それと同時に大きな負担が増えるのは企業にも当てはまってくる。個人の負担額を折半して会社が支払う義務が生じてくる。106万の人がそのまま働いたとして、健康保険+厚生年金+(介護保険)で折半分年間160千弱の会社負担が生じる。当然国の政策により時給は上がる。さらに年間130万働くと200千の負担額になる。以前の会社でも10名くらいはこのラインのアルバイトがいたので年間2000千以上の経費負担増になる。当然他のスタッフの月給や時給も上がるので人件費負担額はどんどん膨れる。時給アップと社会保険負担増で以前の会社だと、単純に2店舗分以上の人件費増になる。

中小小売業が、この人件費増とどう戦っていくのか?円安は続き海外生産のコストは上がり、出店条件も厳しくなる。小売業で販売力を落とすことはできない。力のある企業に飲まれるしかないのだろうか?

■今日のBGM

サラリーマンが提案する改装

近くのイオンでGMSの衣料品中心の改装をしている。まだ出来上がってはいないが、浦和美園で見た、「トップバリュコレクション」の改装のようだ。

以前「トップバリュコレクション」の改装については書いたが、この投資対効果は十分な数字なのだろうか?おそらく各カテゴリーを明確にして区分し、縮小コーナー化していき、各カテゴリーの在庫を減らす。その空いたところに、量販店メーカーブランドを加える。売上アップより効率アップの改装だと思う。ただコーナー化することによって担当者を張り付ける必要も出てくる。そう考えると、間違いなく大きな効果はないだろうと思う。

この改装の発議者は誰なのだろう。店長は発議者ではなさそうだ。本部主導の改装だと思う。間仕切りの壁と、それに伴う什器などで大きな改装ではないが売場面積が大きいので相応の投資金額にはなる。サラリーマンがいかにも仕事をしている流れでやっている改装で、GMSの衣料の大幅な数値改善という根本的な問題は解決しない。

店舗改装は気持ちが入らないと成功しない。現場に近い人間が発案して、プランをまとめていくほうが説得力はある。細かい数字根拠もそのほうが現実味を増す。その提案した改装概要を、図面に落として、概算の投資予算をはじき出す。改装によって導かれる数字の改善と総投資金額と投資内容での経費処理から、改善効果を計算し、改装決定者に諮る。会計処理上10万円未満の什器は経費処理して、それ以上は資産計上となる。資産は毎年償却され経費計上されるのが一般的だ。

ビブレに在籍時は改装の発議はいろんな立場でしてきた。そういう意味では面白い会社で、現場責任者である店長が改装の発議をすることもできた。ヤングターゲットの商業施設だったこともあり、ファッションの動向が目まぐるしく変わり、それに呼応するべく多くの改装をしてきた。数億単位の改装もあり、40前後の若造に投資を託してくれた。ただ会社の流れが悪くなり、活性化できる改装が後手後手になってきた。

気持ちを持った社員が、そのスタッフに気持ちを持たせて計画し、思いを持ったスタッフが運営していくのが理想の改装だと思う。

イオンの改装を見ていると、少し出血を止めるべく改装で、本来の原因をとらえてどうしていくべきかの改装ではないと思う。おそらく商品部も店のラインもそれにより大きな変化が出るとは感じていない。根本的な問題は「GMSにファッションは必要か」ということであり、その結果は出ているにもかかわらず、先延ばししているだけとしか思えない。

サラリーマンがオーナー社長(会長?)には、なかなか意見できない。オーナーがその結果をジャッジし結論を出すまで、無駄な投資は続いてく。オーナー企業はどこでもありがちなことだ。

私事であるが、以前このブログにも書いたが、イオンの岡田社長が「イオンはELP(エブリデイロープライス)でそれを徹底する」と訓話し、それを聞いてある意味感動し、納得はしたが、それが退社にもつながった。あれから20年以上たち、あの時の訓話は、それ以降ぶれすぎているようにも感じる。ELPを目指しているとは思えない。もうそろそろGMSの衣料品は縮小から廃止へのジャッジが必要だと思う。イトーヨーカドーはオーナーの力がなくなったので衣料品はなくなっていっている。

誰かが首に鈴をつけないと・・・

■今日のBGM

商売の寿命

小売業界でいろんな会社を見てきたし、在籍してきた。さらに立ち上げた。そしていろんな会社の浮沈を見てきた。

商売の成功をどう計るかはわからない。儲けは少なくても長く続く商売は成功とするのかもしれない。ただ商売は、商品の変化や、顧客の変化、商売している場所の変化でも情勢が変わってくる。

まず、客層の幅を狭めた商売は長く続いていない。在籍していた商業施設のビブレやマルイはヤングターゲットで商売をしていた。ヤング層のブランドもそうだが、流れが短サイクルで変化する。DC(デザイナー&キャラクター)ブランドで集客して、その後109ブランドに移っていったヤング層のトレンドの変化に、売場は追いつけなかった。さらにそのターゲットの会社も浮き沈みが目まぐるしかった。それでもマルイはクレジット商売が実を結び、現在は小売より金融系の会社になっている。その当時のブランドを生み出していた会社も浮かんでは消えていった。つまり、流れが速いヤングターゲットの商売は続きにくく、寿命は短い。例外としては、当時の固定客の年代層と共に年を取って存在するブランドは続いている。販売の場所も百貨店、路面店に移っている。堅く商売はしているが規模はずいぶん小さくなっている。ただすでにヤングターゲットではない。

小売業で堅調に生き残っているのは、ヤングミセスからミセスゾーンが得意な大手アパレルなのかもしれない。ヤングが賑わったときはそれなりにそのターゲットのブランドを開発し、SCが全盛になってからもショップを立ち上げた。各社に共通するところは各年代のたくさんのブランドを持っていることだと思う。それと同様の流れになってきている企業は、ティーンズヤングからヤングミセスゾーンまで幅広くショップを持っているアダストリアやパルグループがあげられる。各ターゲットのそれぞれのシーンに対応するショップも開発している。

広い客層をもってシェアを確保していっている企業も成功パターンかもしれない。昔からよく言われる「高感度値頃」を追求している企業で、衣料系ではユニクロ、住関連ではニトリ、複合的には無印良品などがあげられる。現状はフルターゲットに適合しており、特に低価格ゾーンをボリュームとしているが、今後の社会情勢で若干の変動要素もある。

商品のカテゴリーの専門店は以前にブログで記したように、そのカテゴリーの大きさとカテゴリーの動向を慎重に図る必要がある。そしてそのシェア率を常に意識するべきだ。今回のジーンズカジュアル業界の崩壊のような例もある。カテゴリーの大きさとシェアで寿命が見えてくる。

地元に根付いた専門店は、常に商品のトレンド変化や、商圏変化、客層変化を気にする必要がある。こういった専門店は突出した人物がマネジメントしているケースが多い。その意志がどれだけ引き継がれるか、熱意がどれだけ続くかがポイントになる。

企業の存続は、どうやって前に進みながら進化させていけるかということだと思うが、近年は、感性よりも組織力、データ処理などのシステム力とその分析力のほうが商売の寿命に大きな影響を与えるのではないかと思ってしまう。

まだまだ、過去の慣例や感情で方向性を決めている企業が多そうだが・・・

■今日のBGM

個人消費の実態

先日の日経に、丸井グループの青井社長の記事があった。その中に「衣料品の国内市場は金額では1990年の約15兆円から8兆円程度まで半減しているが、数量はほぼ倍増している。」との発言があった。単純に衣料品の単価は4分の1になる。その後のコメントは個人消費の中身が変わってきていて、消費者は意味のあるお金を使いたがっていると続いている。

先日、「着てない服(着られない服?)を捨てるパート1」をやったが、箪笥の肥やしは、ある意味一定のブームを経た商品が多かった。ボトムは、どこのシップスで買ったか思い出せないが、シップスのブランドコラボの商品が多かった。当然サイズが合わないので捨てることになる。カットソーやニットやアウター類はまだ手を出してないが、たくさんの商品を捨てることになりそうだ。現役でなくなり、出張や公式の場もなくなってくると、ほとんど買い物はしないし、買ってもアウトレットか無印、ユニクロになってきている。衣料品への支出は大きく減ってきており、確かに単価も4分の1以下に落ちている。ちなみに数量も半分以下に減ってはいる。

百貨店やファッションビル、路面店が中心の販路も減ってきており、百貨店や路面店は一部のコア客層になり、ファッションビルはなくなってしまっている。郊外モール(RSC)が買い物の場の中心になっている。当然主役はユニクロやGU、アダストリアの各ブランドなどに変化しており、単価は大きくダウンしていると理解していた。具体的にどれくらいの変化があったのか見えにくかったが、私自身もDC時代を経験してきて、さらにそのブームの中心の丸井の社長の発言だったので、実感は大きい。

青井社長は今後について「好きなものにお金を使うメリハリ消費が強まっていく」と結んでいるが、それはいつの時代にもあることで、ピンとくる結論ではなかった。さらに今後百貨店などの大型商業施設は、「店舗はモノを売り買いする拠点から、イベントで人が集まる場へと変わっていく」とも言っている。受け身の発言だ。

昔、西武百貨店が文化を発信し、シードや劇場を作っていったが、それはファッション以外の文化的な「何か」で街に人を集めようとしていた。流通業丸井で培ったクレジットカード中心の金融業で大きくなった会社なのだから、好立地を生かして、イベントで人を集めるだけでなく、「何か」を作り出してほしい。

渋谷やなんばの丸井は悲しい・・・

■今日のBGM

小売業が生き残るために必要なこと 2…会社の方向性

前回、小売業を立ち上げる時の理念は何かを書いた。「お客様に満足感を与えること」がすべての企業の根底にあった。その理念から次のステップに進んでいく。例えば、ユニクロは「服を変え、常識を変え、世界をかえていく」、アダストリアは「なくてはならぬ人となれ なくてはならぬ会社になれ」と変革していく。

グローバルな企業になるか、ローカルでも信頼感を深めていく企業になるか、2つの流れがある。それは企業としての方向性であり、絶対企業が決めるべきものだと思っている。ユニクロのように世界に目を向けて進んでいく企業もあれば、地域で圧倒的に信頼される企業もある。それは会社を始めてから、流れの中で決めていくべきものだと思う。立ち上げた会社でもその方向性を作った。

当然会社は成長していく必要がある。従業員の給与はベースアップしていかねばならないし、出店投資やデータ分析などをするためのシステムにも資金を回していかねばならない。ブランドビジネスを狭商圏内で続けていく事業以外は、当然拡大政策になる。

ランチェスター戦略という、経営戦略がある。もともと軍事戦略モデルとして考案されたもので、それをもとに作った「マーケットのシェア理論」がある。小売業では商圏設定にも使われていた(現在はハフモデル分析が多い)。これは市場競争の目安としてポジションを分析し、狙うべき目標を判断するために使われる。マーケットシェアの目標値を大きくは7段階に分けている。以前の会社では何とか市場認知シェア(シェア10.9%)を目標に経営計画を立案していった。

業種が細かく明確なほど年間需要はわかりやすく、その業種内での立ち位置はすぐにわかる。いろんなデータをまとめて、それを提供する企業もある。

例えば、矢野経済研究所の調査では眼鏡業界だと2022年の国内需要は4918億となっている。2022年売上トップ3はメガネトップ850億、ジンズ670億、パリミキ470億でそれぞれのシェアは17%、13.4%、9.4%となる。マンチェスター理論のシェア論ではメガネトップが上位目標値(準1番シェア:どんぐりの背比べの中では上位)ジンズ、パリミキが影響目標値(市場に影響を与えられる)と分類される。つまり、その立ち位置と現状の数字動向を分析して、自社の方向性を明確にしていく。

何度も登場させて申し訳ないが、ジーンズカジュアル業界について考えてみる。ネットを調べてみると2014年にデータがありボトムの市場規模は1018億円とある。インナー、アウターを同金額と考えるとジーンズカジュアル業界は3000億と仮に推測する。(正確なデータがおそらくあるとは思うが・・・)ずいぶん乱暴な数字だとは思うが、仮にその数字で分析すると、ライトオンのピークの売上は1067億、マックハウスは567億となっており、それぞれシェアは35.6%と18.9%となる。ライトオンのシェア率はランチェスター理論では安定目標値41.7%に近く完全にNo1企業になる。その数字がどんどん下降線をたどり、業界全体の数字を変わらないと考えると、2019年にはライトオンはシェア率24.6%に下がり、何とか上位値にはいるが、2022年には15.7%まで落ち込む。マックハウスは2023年には6.1%まで落ち込み下から2番目の存在目標値(市場で存在を認めることができる)になってしまっている。

会社の置かれたポジションを冷静に分析し、業界動向も理解し、数字動向と重ね合わせ、企業の戦略を当然判断しなければならない。安定した企業運営をしている会社は、きちんとした分析を実施し、戦略、方向性を明確にしている。

■今日のBGM

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