カテゴリー: 経営管理 (1ページ目 (15ページ中))

売場内装には気持ちを入れる

先日、以前の会社で売場の内装を中心になってやってもらっていた友人から電話があった。昔立ち上げた店を、譲渡した会社が契約更新で内装を変更するらしい。

内装についてはこだわりを持っていた。過去、DCやインポート、セレクト、ストリートなど、いろんな個性のある内装を見てきた。売場にオブジェがあったり、高そうな石を使ったり、売場が商品をイメージさせていた。地方のオーナー達も、ローコストでイメージをどう打ち出すかを考えて売場を作っていた。商品だけでなく、売場を見ているだけで楽しい時代だった。そういう目で見ると、現状のSCのテナントは標準化された内装で標準化された商品を売っている感が強い。

経営的観点からみると、出店コストは大きい。売場内装だけでも、更地でAB工事含めると最低坪400千は必要だと思う。近年はもっと上昇しているかもしれない。つまり40坪の店で1600万の内装費ということになる。出店経費としては工事負担金などの別途経費も必要になる。さらに敷金などキャッシュアウトも多い。損益上も経費と減価償却費に分けて計上されていくが影響度は大きい。当然、経営上内装コストはできるだけ下げていきたい。

以前立ち上げた店は、ボリュームプライスの量販型品揃え店舗だった。一般的にボリュームプライスの店はセルフ要素も強いので、できるだけ商品を打ち出させる店が多い。当然スタート時から全国チェーンにできるとは考えてなかった。そういう意味もあって、売場イメージにはこだわった。ボリュームプライスの商材だからこそ、売場に個性を出すことを考えた。印象に残る店は、商品の印象もそうだが、売場の印象によるところも大きい。お客様の購買行動を表すアイドマ(AIDMA)の法則でもアテンション(興味)とメモリー(記憶)では大きな要素になる。そういう意味で売場イメージは重要だと考えていた。

退店した店も入れて30店舗近くオープンさせたが、すべて売場イメージに音楽を取り入れた。各店毎に、それぞれジャンルやミュージシャンなどを感じさせる環境を取り入れた。それは売場環境の最低限の決まりにした。売場環境と音楽を連動させようとした。当然あくまでもローコストだ。自己満足かもわからないが、売場イメージを感じてくれるお客様は一定数いたように思っている。

近年、大型モールに行っても、インパクトある内装の店はほとんどない。ユニクロに代表されるように蛍光白色で明るい清潔な店が多い。当然全国各地に出店しており、共通の商品で共通の売り方になるので必然的にそうなる。アダストリアに少し個性的な店はあるが、とがった店は全くなくなってきた。さらにモールには目新しい店舗があまり入らず、売場内装でも新鮮味のある店は少ない。ちょっと個性を感じる地元の専門店もSCから押し出されつつある。

数字が厳しくなっている現状での出店や改装は、成功が必至で、なかなか個性を打ち出せない。個性なき改装は本部主導になってしまうことが多い。本来は、売っていく人間がどうしたいかを主張するべきだと思う。せめて小さな個性でも、店の気持ちを取り入れる必要はあると思う。そして、少しはインパクトに残る「何か」も入れてほしい。

■今日のBGM

ビジネスモデルを再検証する

上場企業の6月の売上を見て、中小ファッション系の小売業はそれ以上に苦しんでいると想像できる。大企業ほど資金力もなく、前回書いた利益確保するための商品手配も遅れるし、そうなれば手持ち見切り商品が増え、利益率も確保できない。さらに、要員不足で販売パワーも上がっては来ない。

企業が成功するには、成功するビジネスモデルがあり、その考えを周知徹底できるかにかかっている。ただ、数字の変化でそのビジネスモデルが変化して行くことが多く、それが業績下降の1つの要因になっている。近年の収益悪化企業にもはっきりと表れている。

ジーンズ業界の成功モデルは、もともとはジーンズ愛好者のための店だった。もっと簡潔に言うと「リーバイス501」を基本とした品揃えの店だった。今でも残っているジーンズ専門店は、そのビジネスモデルに沿って商売をしている。ライトオンやマックハウスは客層の幅を広げていって、フルターゲット化していったことが失敗の原因だと思う。売場も広がり、「ジーンズの店」から「カジュアルファッションの店」へ変革し、個性が薄れていった。さらに、そこはいろんな競合がいる激戦地でもあった。そしてサイズの多いボトムをボリュームアップし店のイメージを打ち出したことで在庫過多になり、ジーンズ専門店のビジネスモデルから外れていった。

ヴィレッジヴァンガードも「宝探しができる本屋」だった。それがトレンド客層からボリューム客層にターゲットが変化し、品揃えも広範囲なボリューム商品まで広がっていった。当然、各専門分野の専門店の品揃えには勝てない。商品の幅が広がったので細かな商品の管理が手薄になり、不稼働商品が増え、商品の処理が遅れていった。

つまり、企業がスタートした時のビジネスモデルと大きな乖離ができると、お客様は離れていく。

逆に、ビジネスモデルがぶれてない企業だが、「市場に例えたら乾物屋より魚屋」との創業社長の言葉通り、回転率を徹底的に追及するパルグループ。現在は「4週間MD」を確立させており、以前の8週間より短縮させている。現在も過剰在庫を持たない体質を続けている。ユニクロも「ライフウェア(究極の普段着)の最適化」を打ち出しており、衣料品中心で「中途半端な多角化の排除」を実践している。近年は鞄、靴にも手を広げているが、あくまでも実験的アプローチで深追いをしていない。

売上が停滞してくると、どうしても顧客ターゲットを拡大したくなる。そして、顧客ターゲットの拡大は競合の激化へ行きつく。品揃えの幅を広げることで今までのターゲットの品揃えがおろそかになり、従来の固定客まで逃してしまうリスクがある。そして新しい分野の競合も出てくる。品揃えの幅が広くなると、資本力の面から当然新たな競合の規模も大きくなる。その大きな資本と戦えるのか、戦うのかを冷静に判断しなければならない。特に中小企業は個性(ビジネスモデル)を薄めていってはいけないと考える。

流れが悪くなった時は、冷静に企業のビジネスモデルの再検証をすることが最も望ましいことだと思う。

■今日のショット(若竹農場)

パルコが夏のバーゲンを開催中止する

パルコが「今期の夏のバーゲンの開催を中止する」と新聞発表があった。気温上昇で夏物の販売期間が延びていることや、小売り各社もAIによる需要予測で在庫を減らせるようになったことが主要因とのことだ。確かに、昔の「2月8月は売れない月」から8月は「売れる月」に変わっている。新聞の論調は好意的な見方のようだ。

言わんとすることはよくわかる。ただ、7月になってなぜ発表したのだろう。おそらくずっと前に決定され、発表が今になったということだとは思う。当然各テナントには事前に通達していたと思う。そうでなければデベロッパーの信頼度は全くなくなる。

パルコはデベロッパーであり、小売業ではない。つまり賃料をもらってその賃料でコストを支払い、収益計上する。「最低賃料+歩率」「共益費」「販促費」などが各テナントとの契約となっており、それがデベロッパーの売上になる。つまり大きく言えば、歩合賃料などは変動要素になるが、テナントの店舗売上はそのままデベロッパー売上につながるわけではない(大型売り場は売上歩率だけというケースもある)。小売業(テナント)として考えると、当然売上は実売上であり、デベロッパーに払う家賃などは経費となる。わかりやすく言えば売上1000万、家賃(共益費込み)200万、販促費20万とすると。テナントの売上は1000万だが、デベロッパーの売上は220万+α(デベロッパーに支払う経費分)ということになる。デベロッパーの売上は当然実売上によって変動要素はあるが、テナントの売上の変動よりは安定しているといえる。

何を言いたいかと言えば、小売業は前年のセール時の売上に対して当然MD計画を組んでいて、最低でも前年数字を確保しようとする。ここでデベロッパーから「館としてバーゲンをやらない」と言われれば、売り上げダウン要素になってしまう。おそらく各店舗のバーゲンは自由にやっていいのだろうが、館としての販促効果はなくなり、各店舗のマイナス要素は避けられない。逆にデベロッパーとしては、バーゲンの代替企画は当然あると思うが、バーゲンの大きな販促企画経費(グランバザールとしてのCM、演出、媒体などのプロモーション経費)のコストカットの要素も見えてくる。

小売業は夏が長期化との考えはあっても、前年の数字は絶対確保しようとする。それに向かってMDも組んでいるし、セール商材も調達している。夏が長期化する傾向はわかってはいるが、前年の数字は追いかける。他の駅ビルや全国のイオンモールもバーゲンタイトルを変え、時期は遅らせてはいるが恒例のバーゲンはするし、新宿伊勢丹も6月26日にスタートしている。日曜日にイオンモールに食品を買いに行ったが、専門店はバーゲン一色だった。ただでさえ6月の数字は良くない企業が多い。当然売り上げ確保に全力投球する。

パルコも過去には「ポーカーフェイス」や「コレクターズ」「ローズマリー」など小売企業が傘下にあった。小売企業に寄り添うデベロッパーであったはずだ。さらに、地方のヤング層にファッションを提案してきたパルコから、渋谷、心斎橋のようなラグジュアリーやインバウンド要素の高い店に変わってきており、「身近な小売りの現場に寄り添う館」のイメージが消えていっているように見える。

何度も言うが、「夏のバーゲン中止」はおそらくもっと早く決定しており、各テナントとは調整をしての発表だとは思うが、頑張っている日本の小売業には寄り添ってないような気がしてならない。

■今日のBGM

本当に中小小売業は成長できない

もう新しいテナントは、中小企業から現れない。このブログでは、ずっと書いているが、さすがにデベロッパーも気が付いている。あれだけ急ピッチで開発してきたイオンモールも国内新規SCは八王子と福島県の伊達しか発表されていない。八王子は専門店数が21ということで新業態としての位置づけのようだ。ららぽーとも2029年に府中を計画しているのみとなっている。テナント構成はおそらく他のSCと変化なく大企業のテナント中心になり、そこに地元店が数店舗入店するおなじみのラインナップになると思う。もう個性を出したテナントは入店せず、わざわざ行ってみたいRSCは出てこないと思う。そうなった原因は、イオンモールを中心とした大型モールの乱立にも一因がある。

まず、一般的に中小小売店が事業拡大するには、エリアで地道に商売し、認知され店舗を増やしていくしかなかった。土地コストの安い地方から始まったモール戦略が、地方のそういう店舗を導入してモールの認知力を高めていった。そして急激なモール数の拡大に合わせて、出店を重ねていった地方発祥の店舗が完全に息切れしていった。大企業がモール用のブランドを開発していくにつれ、フロア変更や条件変更もあり、フェードアウトしていった。企業力が、急激なモール事業の拡大についていけなくなってしまった。逆にモールも大企業のどこにでもあるテナントが多くなり、個性化が図れなくなっている。そして、近年のRSCは大企業のテナントが多くなり、さらにテナントの大型化もあり、条件面のしわ寄せが中小型店舗に来ている。その結果、完全に中小小売店は成長できない状況に追い込まれている。

ただ、今でも頑張っている地方の名店はある。特にセレクト店舗が多い。そういう店は、販売スタッフを大事にする。待遇よりも商品が好きで働いているスタッフが多いからだ。大事な顔見知りのお客様とファッションの話をしたいスタッフだから、わざわざその店まで買いに来てくれるお客様を大事にする。オーナーはそういうスタッフやお客様を大事にする商売をしている。SCの環境は個店のお客様を大事にしにくい。かつて、SCに出店していた個性的なショップはそれが理由で退店していった。

ただ、そういう名店も長くは続かないように思う。主には「人対人」で成り立っているからだ。まず取引先との問題。ほとんどがカリスマ的なオーナーとの商売から始まっており、そのオーナーとの意志がどこまでつながっていくかだ。人が変わると突然ビジネスライクになることもよくあることだ。商売条件の変更もあり得る。さらに、「次の顧客」を開拓できるかだ。「人対人」はお互い年をとる。つまり「顧客の若返り」も課題になってくる。地方にその課題解決はできない。

もうよほどの名店でも、地方で路面店だけでは生きていけない。だから、地元の名店がRSCの1階に出店したりする。ただ、近年はデベロッパーが好調テナント(ユニクロや無印等)の大型化を断れなくなっており(近隣他SCへの移転を防ぐ)、そういう地方名店がそのあおりを受けて消えていっている。さらに大型区画にして出店している名店もあるが、売場からはその強烈な個性は消えている。

モールのリーシング担当者も、複数ショップを展開する取引先と出店交渉する方が話は早いし、まとまりやすい。さらには大きな区画も提案できる。そうなればさらに中小小売業の出店の余地はない。以前の会社でも、あるSCでは隣接大型テナントの拡大で収益店舗を退店したこともあるし、出店交渉で前向きに動いていたが、大企業からの横やりで話がなくなったりしたことがある。

人手不足も重なり、もう中小小売業は事業拡大に前向きにはなれない。逆に整理する時期になっている。

■今日のBGM

この流れでは小売企業は利益率を求めてくる・・・

友人と話していると、小売業に販売員が全く集まらない状況らしい。当然の流れで、これからもずっと続くことは予測される。全国の企業で給料アップが続いており、大卒初任給の平均は24.8万円となっている。大都市近辺はそれ以上になるらしい。これを時給換算すると22日8時間勤務で1410円になる。アルバイトの地域最低時給も全国加重平均値は1121円になっており、東京、神奈川では1200円超で、低い県でもすでに1000円は超えている。そんな中、小売業では最低時給ではスタッフが集まらないようだ。立ち仕事で土日勤務になれば当然かもしれない。さらに調べてみると、ユニクロの正社員の初任給は37万円、転勤なしでも28万円となっている。無印良品は学歴関係なく27.4万円のようだ。

厳しい労働環境で、給与が低ければますます販売員は集まらない。当然どんな企業でも給与を上げる。上げなければ高賃金のところに流れる。最低賃金だけではなく、既存社員の給与を上げなければ給与ピラミッドが崩れてしまう。既存アルバイトも当然時給はアップさせる。さらに「106万の壁」がなくなり、企業の社会保険料の負担も増える。つまり企業の人件費はどんどん上がっていく。人件費が上がっていくと労働分配率も上昇する。そして労働分配率を抑えるためには、企業として利益率を上げようとする。営業数値上、当然の政策に見える。

ここでいつも問題になることがある。無理に利益率を上げようとすることだ。トップがその政策を出せば会社はその方向に向かう。施策としては、高値入率商品を数多く投入する。値下げは極力控える。単純に売れる高値入商品を入れて、順調に消化し、さらに追加フォローも順調に流れれば問題なく利益率は上がる。利益率が上がれば、人件費分をプラスされた利益額でカバーされ、労分率は上がらない。ただ、商売はそんなに簡単ではない。順調に売れて、仕入も継続できる商品などほぼない。つまり、結果的には利益は改善できても売上が改善されなければ、仕入れた分当然在庫は膨らむ。そして不稼働在庫が増える。不稼働在庫の値段を下げて処分しなければ回転率も悪化する。

どんな企業でも不稼働在庫は処分していかねばならない。ファッションライターの小島健輔氏はユニクロのシーズン通しての平均値下げ率は10%~15%と試算している。回転率が高そうなユニクロでさえ年間これだけの値段を下げている。為替の変動やボーディングコストの上昇もあるが、ユニクロの利益率が54%台というのは適正価格を追求している結果だとも言える。ユニクロのように完全にSPA型MDで回転率も考えている企業でも、利益率は「商売の結果」として納得できる数字になっている。

つまり、利益率は「商売の結果」だ。利益率を無理に上げようとすると、どこかにひずみが生まれる。一般的には、売上が伸びず在庫が膨らみ回転率が悪化する。

数字だけで経営をしてはいけない こういう時こそ、現場主義になり、現場発の提案に耳を傾けるべきだ。商売はやはり「売れてナンボ」の世界だ。

■今日のBGM

地方の百貨店の存続は難しい

群馬県の県庁所在地である前橋市のスズラン百貨店が今年11月をもって閉店するという記事があった。また地方中心都市から百貨店が消えていく。

昔の地方中心都市は、現在では好立地ではない。鉄道を引くにあたって、街の中心地は難しかったため、少し離れた場所に駅を建設していった。つまり、昔は交通網としての駅中心の街ではなかった。地方都市の旧市街地が駅と離れているのは、そういう歴史がある。旧市街地の衰退は、鉄道の充足により影響を大きく受けている。前橋もその影響は大きい。

また昔の話になって申し訳ないが、前橋は社会人として小売業に従事した最初の土地であり、初めて行った街でもあった。それまで北関東以北には足を踏み入れたこともなかった。当時の前橋は中心市街地に前三百貨店(三越系)、西武2館(西友西武)、スズラン百貨店に加えて量販店のニチイ(マイカル)、長崎屋があった。この当時のGMSは今の郊外型ではなくニチイも6層の駅ビルタイプだった。ちなみに隣接している高崎には、スズラン百貨店高崎店、高島屋高崎店、藤五(伊勢丹系列、その後BIBI)があり、量販店ではダイエー(6層)ニチイ(8層)の大型物件があった。

今回の前橋スズラン閉店により、県庁所在地の中心市街地から百貨店がなくなることになり、過去5つもあった大型商業施設が消えてしまうことになる。ちなみに高崎市街地にあるスズラン百貨店高崎店も移転し、物販3層の2000坪位に縮小しており、もう百貨店の姿ではない。結果的に群馬県の百貨店は、高島屋高崎店1店舗になってしまうことになる。

その高島屋高崎店の売上は2025年2月期で161億円と公表されている。30年くらい前はスズラン百貨店計で420億位の売上(高崎スズランが約200億)だったと記憶する。当時の高島屋も200億超くらいで、後に別会社化されていたような気がする。私事ではあるが、その当時は高崎サティ、ビブレの店長を務めていたのでそういう記憶がある。現状、高島屋はスズラン百貨店の移転縮小で数字が辛うじて回復しているようだ。ただ、百貨店客層の戻りはそんなに大きくない。伸びてきているとはいえ、現状の売上では百貨店としての存続は非常に厳しいラインではないだろうか?高島屋でも売上はワースト2(ワーストは大宮)のようだし、今後前橋の百貨店客層をどう取り込むことができるかが、存続のポイントになりそうだ。

ただ、群馬県の商業の現状を見ると、完全にRSC中心に変わってしまっている。駐車場施設が少ない駅前に、わざわざ電車を利用して買い物に来る客数が増えるとは思えない。特に百貨店中心客層の高年齢層は、外出の機会も減っていく。さらに地方駅前のメイン客層はティーンズ層であり、そのターゲットの人口減も重なる。10年先を考えると駅前での百貨店の存続はないとしか思えない。

近隣の北関東の百貨店の数字を調べてみると。栃木県は東武宇都宮百貨店が2024年2月期売上269億円であり、近年は200億前後という情報もある。損益面も2024年純損失8.4億円という数字がある。茨城県では水戸京成百貨店は2025年2月期売上232億円、純損失6.4億円という数字となっている。両店とも地方関連会社としての扱いなので正確な帳票でないのかもしれないが、収益は赤字の状況のようだ。逆に栃木県の福田屋百貨店は大型RSCのような郊外物件で、未上場で数字は公表されてないが売上は2022年415億円(単店ではない)のようだ。

つまり、北関東各県に残っている百貨店はすべて赤字の状況が続いているということのようだ。いよいよ地方百貨店の存続は難しくなってきている。

■今日のBGM

今後、伸びる要素のあるSCは?

小売業の流れは本当に早い。45年位前、大学を出て就職口がなく何とか流通業に滑り込んだ。その当時はGMS絶好調時代で、どんどん店舗を拡大していった。それがもうダイエーがなくなり、イトーヨーカドーもGMSではなくなった。入社したマイカルも民事再生後イオングループとなった。さらにイオングループのGMSも体裁は整えているが、SMを除くと収益は出ていない。金融戦略のために、損益度外視で続けている現状がある。つまりGMSはなくなったと同じ状況にある。

さらに、百貨店もすでに大都市にしか成り立たなくなってきている。大都市東京都下でも、渋谷でさえ百貨店はなくなってしまう。おそらく10年後には半数ぐらいの県庁所在地でも百貨店はなくなってしまうのではないかと思う。個人的にはファッションビルも経験したが、マルイ(一応ファッションビルの分類)は金融業に転じほぼなくなり、ビブレもほぼ消滅し、パルコのみ大都市で残っている。駅ビルも同様の流れで、交通拠点の駅でしか成り立っていない。

代わりに、RSC(大型モール)がイオンモール中心に続々出店してきた。ただ、20年以上経過し、現状はもう完全に勢いは弱まってきている。新規物件は少なく、新規出店場所も地方郊外が多く、今後の地方人口減を考えると、全くプラス要素はない。完全に飽和状態になってきており、逆にイオンはCSC(コミュニティSC)やNSC(ネイバーフットSC)の開発を進めている。反面、大都市近郊に慎重に出店を続けるららぽーとは堅調に数字を確保してきている。

この50年近くの商業施設の動きを簡単にまとめると以上のようになる。

今後20年で果たしてどう変わるか?高齢者が増え続け、大都市に人口は集中し地方都市はますます高齢化が進む。20代から50代までの人口は現状の5911万人から10年後は5200万人前後に、20年後は4800万人前後にまで減少する。10年後は現状の88%になり、20年後は81%になってしまうということだ。さらに高齢者層(特に年金受給者層)は、「食」への消費は大きく減らせず、おのずと「衣」への出費は減ってくる。

国内の人口推移を見ていれば、国内の消費量は間違いなく大幅減となる。当然、大手資本の企業は海外を視野に入れるようになる。そうしないと数字はまとまってこない。国内では、郊外のRSCは、地方中核になった物件(400億規模)とららぽーとのような大都市近郊の物件以外は、マイナストレンドになってしまう。特に郊外の中核物件以外のイオンモールは淘汰が始まる。百貨店、駅ビルも大都市物件のみ存続されるが、地方はどんどん淘汰されていく。

狙い目を探すなら、おそらく大都市近郊のCSCではないかと思う。関東でのイトーヨーカドー物件がわかりやすいが、GMSの食品以外をテナントにした物件と思えばいい。衣料服飾品や住まい雑貨の大きな売場に「ユニクロ」や「無印良品」を導入する環境ができれば、その物件は間違いなく再生する。その環境づくりができるかどうかだ。同様にイオンもできそうだが、イオンは金融政策上GMSを続けそうだ。おそらく今後唯一可能性があるのは、都市型に限るがこういう物件だと思う。

唯一の狙い目に、どの企業が一番早く着手するか注目している。

■今日のBGM

コンビニについて考えてみた

セブン&アイの鈴木元会長が亡くなられた。コンビニの「生みの親」と言われている。お会いしたことはないが、以前も書いたことがあるがイトーヨーカドーの体質はよくわかっている。特に鈴木氏が作り上げた「セブンイレブン」(以下セブン)は小売業の1つの大きな柱になっている。

マイカルをやめる前、イオンの経営者養成の社内研修を受けた。1年以上の研修で非常に厳しく、課題解決などのスキルを学び、最終的にチーム分けされ、出された課題について岡田会長にプレゼンするというような研修だった。課題はいくつかあったが、チームには「今後のコンビニを活性化させるには?」というテーマが与えられた。おそらくイオンの課題をテーマにしていたと思うが、チームで必死に検討した思い出はある。(途中で退社したが・・・)その時のプランは「ガソリンスタンドとの協業」や「店内での酒含めた飲食」(その後どこかで実現していた)などをまとめていた記憶がある。ただ、いろいろ分析すると「セブン」には勝てないなとは感じていた。

近年のコンビニ業界を見ていると、「都心対策」が一番注目されているような気がする。イオンの「まいばすけっと」対策で値段に太刀打ちするためにどうしていくか。各コンビニの個性をどう出していくのか。等… そのためにファミリーマートがTシャツ中心にアパレルに参入し、セブンも再びアダストリアとコラボするというニュースが出てくる。このアパレル参入については非常に厳しい見方をしてしまう。商品を見てどうこう言う以前に必要あるのかということだ。

コンビニはFC事業で成り立っている。いろんな仕組みはあるが、結果的には仕入れ代金はFCのオーナーが支払うことになる。つまり商品を早く売って、現金を回収しなければならない。一般的なコンビニの回転率は月2.3~2.5回転で、セブンに至っては3.5~4回転以上のようだ。その中にファッションを入れてどれくらい回転するのか?肌着としての感覚でも、衣料品よりは回転するが、月0.5回転くらいではないだろうか?ファミマのファッションのコンビニでの売り上げは200億を超え300億に近づいているようだが、ファミマ全体の売上からすると0.6%くらいしかない。什器も3台くらい使うそうだから陳列台別にも効率は良くない。本部がリスクを持つ条件かもしれないが、現場からするとイメージ以外プラスの感覚はあまりないように感じる。急に必要ならネットでもすぐ買えそうだ。つまり、商売より大都市のコンビニ間の差別化が一番の目的になっているようにも感じる。

イオンの研修の時に感じたことは、過疎地にも出店しているセブンが最終的には残っていくだろうなということだ。近年特に感じるが、高齢化と大都市集中で将来的に地方はどんどん過疎化が進んでいく。行政が3セクをFC化してセブンを運営していく事も考えられる。実際、もうそうなっているところもあり、役所の中にコンビニができていたりする現実もある。金融面(セブン銀行)や宅配のシステムも整っている。収益面では大きくならないが「公」と組むことでリスクヘッジができるかもしれない。ライフラインとして絶対に必要になるし、それを想定しての店舗網ではなかったのかと感じる。

ただ、最終的には都心の数字が企業の幹にはなる。現実的にコンビニの最優先課題は、既存商品外の商品での差別化より、現状の品揃えのレベルアップと人的課題の対策になると思う。日販の数字を見る限り、セブン独走の気がするが・・・

■今日のBGM

なぜ「在庫評価損」を毎年計上しているのか?

前回「在庫評価損」について書いていて、腑に落ちなかったので、少し調べてみた。前回イオングループの「ジーフット」について書いたので、同じくイオングループのカジュアルファッションで上場企業の「コックス」も調べてみた。ちなみに前期(2026年)の評価損金額は未発表で計上済とは記入されている。簡単な数字は以下のようになる。

2026年度 総利益率62.2% 回転率2.9 

2025年度 総利益率62.5% 回転率3.2 評価損6.2億

2024年度 総利益率62.7% 回転率3.6 評価損5.3億

2023年度 総利益率57.8% 回転率3.7 評価損5.5億

2025年は期末在庫金額が19.5億なので評価損の金額がいかに多いかよくわかる。

もともとカジュアルファッションの企業なので期中に自由に値段は変更できる。セールで売り切ればいい。普通の企業ならキャッシュが欲しいのですぐ商品を金に換える。次年度迄商品を繰り越すとすれば、ブランド品で割引の規制がある場合や、競合店とのバッティングで取引先との整合がある場合くらいだ。この数字は、キャッシュに心配のない企業で数字コントロールしてればいい大企業サラリーマン経営に見える。さらに付け加えると、期中に値段を下げて利益率を落とすと株価にも影響が出るので避けているとも見える。

一方、「どれだけ売れない商品を仕入れているのか?」ということになる。利益率ありきで、利益率を稼ぐために仕入れているという見え方もある。推測で書くと、「売上が大きく上がらないので利益率志向になる」→「原価率を下げた商品を大量に作る」→「売れずに残る」→「次年度に向けて評価を下げる」→「次年度セールでたたき売る」(利益も回復する)の構図を続けている。商売ではなく「数字合わせ」になっている。

利益率62%という数字だが、ファッション小売業での前期の総利益率はパルG57.5%、アダストリア54.7%、ユニクロ54.1%であり、海外生産が多い大手小売企業でも60%を超えてこない。おそらく利益率を念頭に置いて、原価率を抑えた物づくりを進めていたのではないかと思う。商売は「売れてナンボ」がわかってない。さらに商品回転率の数字もパルG5.84回転、アダストリア4.64回転、ユニクロ3.19回転に劣る。つまり商品が動いていない。

ここまで書いて、いやな気分になってきた。「売れる商品を売れる値段で売る」という簡単なストーリーが崩れてしまう。海外で安く商品を作って相場より3割くらい高く値段をつけて販売し、利益率を稼ぎ、売れ残ったら決算で評価替えをして次年度売り切る。これをずっと繰り返している。何の仕事をしているのだろうと思わないのだろうか?そして、もっと嫌な気持ちを持っていると思うのは現場(売場)だ。おそらく売場が商品の動向を一番わかるし、売れない商品を押し付けられていることも分かる。それだけで士気が下がる。こうなると数字は改善していかない。

こういう流れを見ていると、「コックス」はファッションを売る小売業ではなく、イオングループの商業施設に出店するだけの手段としての小売業にしか見えない。それはそれでイオングループには必要な会社なのかもしれない。

経営理念は何だろう?お客様を見て商売しているとは思えない。こういう商売を今後も続けていていくのだろうか?

■今日のBGM

持論「在庫を持つ商売は失敗する」の検証 ②

前回からの続きで、少し趣旨が違うかもしれないが、「在庫評価損」について書く。前回指摘した企業の決算期で近年の「在庫評価損」は以下の通りとなっている。

・「ライトオン」2024年15.6億、2022年23.3億、2020年25.4億

・「マックハウス」2023年12.7億、2022年12.4億、2021年13.2億

・「ジーフット」2024年20.5億、2023年21.2億、2022年33.3億

・「タカキュー」2021年12.3億 ・「ヴィレヴァン」2025年24.7億

この数字は決算期で評価を落とした金額である。この金額はあくまで原価なので、売価にするとこの倍の金額ぐらいにはなる。極端に言うと「ライトオン」は2024年の決算期に15.6億分の商品を捨てたことになる。実際は捨ててないが次年度売れる値段で販売していることになる。もし0評価にして次年度いくらかの値段で売ればその分利益率は回復する。今期「ヴィレヴァン」の利益率が改善されたように見えるのはそのためだ。

なぜ、毎年決算期に評価損を計上するのだろうか?商品消化率が悪く、季節商品をキャリーしたが、次年度消化できる値段ではなく、消化できる値段に決算期に落としたということかもしれない。売り切るにはさらに期中で利益を落とすしかないが、競合、取引先等の絡みもあり、期末での処理になったという理由かもしれない。ただ毎年のように繰り返し大きな金額の評価損を計上していて、例年在庫金額が減らず回転率が悪化しているのを見ると、経営状況を疑わざるを得ない。そして、上記企業は慢性在庫過多で仕入れコントロールが全くできていない。

前回書いたが、上記企業はすべて在庫回転率が悪い。つまり金がうまく回っていない。在庫回転率を上げるには、売上が伸びなければ在庫を減らしていくしかない。つまり、仕入れを減らすということで、仕入を減らすと原価率の改善がなければ、当然利益率の回復はない。そうなると、前年と同じ金額を仕入れないと利益率は維持できない。そのため、その繰り返しの状況になっていたことは、想像できる。

評価損の数字を探していて、気が付いたことがある。上記したすべての企業の最後(株主変更前)の決算短信には在庫評価損の記載はあるが、それ以前の数年間は決算短信には記載がなく、有価証券報告書には記載されている。つまり一般開示はされているが企業のHPでは見ることはできず、手続きが必要になる。数十億単位の商品が消えたことを調べなくてはわからないということになる。さすがに企業譲渡や上場廃止という大きな節目には発表せざるを得なかったということだと思う。それが、旧経営陣や監査体制が問題点を先延ばししてきた結果として表れている。詳細はわからないので、あくまでも憶測でしか書けないが、もしそうなら従業員や株主をないがしろにしている。問題を先送りしていたことになる。

結果的に、各社これだけの金額の商品を毎年捨てていたという事実がある。売れなかった商品が毎年これだけたまっていたことになる。それを毎年繰り返している。毎期大きな在庫評価損を出し続け、現場スタッフを放置した経営陣の責任は非常に大きい。毎年繰り返した先送りのツケを従業員の解雇や店舗閉鎖という形で払わされてきたということだ。

ここに至ったのは「在庫回転率の低さ」が主要因だ。年間2回転前後の小売業としての商売は、商売の仕組みが完全に壊れていた結果だし、何より在庫に対する認識の低さが導いた結果だ。上記5社の大きな経営課題はそこにある。

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