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GMSの終焉 ➁

前回イトーヨーカドーのことを書いたが、ここでは以前も記したが、イオンのGMSについても触れたい。企業の動き方や方向性の違いがあるが、イオンもGMSはもう終わりに近いと感じる。

イオングループの決算説明会の資料を見ると、2024年度はGMS事業で3.4兆円(関連会社込み)の売上で企業での構成比35.4%、で営業利益は283億円で構成比は11.2%となっている。グループの営業利益は金融、デベロッパー、ヘルスウェルスの順で、その3事業でグループの56.3%を占めている。近年は合併を重ねてSM(スーパーマーケット)事業が大きく伸長しており、営業利益ではGMS事業を大きく上回っている。尚、GMS事業のうちSM(食品)の構成比は2023年で63%であり、物販は食品に負うところが大きい。多少の計算方法の違いはあるかとは思うが、ヨーカドーの2021年度の食品構成比は67.1%となっている。以下に述べるテナント賃料の計上次第だがヨーカドーの状況とほぼ変わらない。

決算数値の詳細は、各社違ってくるので一概にジャッジはできない。イオンの大型モール(RSC)にはイオンモールが運営している物件と、GMSであるイオンリテールが運営している物件がある。この営業利益はどう分けているのかわからないが、おそらくそれぞれに計上されていると思われる。この営業収益は大きい。2013年にイオンリテール物件の管理運営をイオンモールが受託しているが、あくまでもイオンモールの収益はPMフィーということと発表されている。この時点でイオンリテールのモール型物件は54モールと記述されており、モール物件自体はイオンモールに移管されていない。とすればイオンリテールのテナント収益は大きく、衣料品売上構成比はヨーカドーより低いかもしれない。

おそらくGMS事業の非食品の構成比はどんどん下がっているだろうし、赤字状況だと思う。イオンリテールの衣料月坪売上は100千以下だと聞く。普通に考えれば商売になっていない。もともとGMSの衣料の儲けの大半は、インナーウェアだった。肌着からスタートしたGMS企業も多かった。利益も取れるし、商品の回転も早い。呉服からのスタートが多い百貨店との違いが現代の商売の違いにつながる。得意なインナーを「ヒートテック」や「エアリズム」のユニクロや他の専門店に奪われ、中心客層の高年齢層までが専門店に目を向け始めたことが、GMSの衣料品からの客離れの要因の1つだと思う。

衣料品は、もともとEDLP(エブリデイロープライス)と言い続けていたのが、どう間違ったのか「イオンスタイル」で付加価値を求め始め、失敗した。ヨーカドーが伊勢丹からカリスマバイヤー?を招聘して失敗したのと同じ道をたどった。

GMSはもう完全に終わっている。イオンはデベロッパー業態のイオンモールも安易なショップMDで頭打ちになってきている。イオンモールの成功のポイントは当初三菱商事と合同で開発運営しており(ダイヤモンドシティ)、流通業以外からのポジションで開発したSC(営利よりあるべき姿を求めた)でスタートしたことが非常に大きかった。近年はその魅力が薄れてきておりテナントMDはららぽーとに後れを取っている。小売業としてのイオングループの課題は、GMSを解体して思い切った収益の構造変革をすることが必要になっている。逆にそれがデベロッパー業であるイオンモール自体の活性化にもつながるかもしれない。さらにSM事業やヘルスウェルス事業の活性化にもつながる。

鈴木敏文氏がいなくなったヨーカドーは、株主である外資が決断を迫った。イオンは誰が創業者一族の首に鈴をつけに行くのだろう?

■今日のBGM

売りたい物がわかる売り場

いろんな売場を見てきたが、「売りたいものがわかる売り場」が一番いい売り場だと思っていたし、そのように言って来た。

「売りたいもの」はセールスプラン(販売計画)の中心になる。その商品群を何点売っていくか、それに類似した商品群をどれくらい品揃えしていくか、その商品群でどれくらいの売上を作るか。そしてその商品の特性やアピールポイントをスタッフ全員が共有することで、お客様へのアプローチも明確になる。さらにその商品特性がわかるように演出するし、接客も強化される。

売場を作らせてみると、売場の責任者によって、売場の色は変わる。特に店仕入の店は大きく違ってくる。同じような商品を品揃えしていても店長によって売場の作り方は変わってくる。当然セントラルバイイングで売場作りマニュアルを徹底している店は除いてのことだが、中小小売業は基本的な考えは指示されているが、売場作りは売場スタッフによることが多い。通路幅や、カラーを意識して、整然ときれいな売場を作る店長もいるが、雑でも「これが売りたいのだな」がわかる売り場のほうがなぜか数字はいい。思い入れが売場に現れる。

少し企業が大きくなると、ストアメイキングマニュアルやVMDなどのきれいな言葉が踊りだす。私自身も演出面でカラーコントロールマニュアルを考え色目の並びとか補色や明暗、反対色などを意識したこともある。そもそも見え方で売上が上がるのかは疑問が多い。VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)とは何なのか?VP(ビジュアルプレゼンテーション)とどう違うのか?そしてどれだけ売場に変化ができて、どれだけ売り上げが変わっていくのか?なかなか頭で考えるだけでは数字はとれてこない。

いつも言っているように、小売りの組織では一番現場が優先されるべきだ。本部で考えた演出手法は売場に相容れるのだろうか?さらによくある事例として、外部の会社に任せるケースも多い。そうなると完全に「現場不在」になってくる。本部や外部で提案された見せ方は「きれい」が評価の基準で、売れることに目的がない。

売場は最低限、本部が定めた通路幅や最大陳列量を守って、「売り場の意思」を見せればいい。その表現があっているかどうかは売上でわかる。売る気があれば、ストアメイキングマニュアルなどの知識は、最低限理解してさえいればそれでいい。

大きな会社も一緒だが、売れることが究極の目標になる。「商品を仕入れた人の気持ち」と「商品を売っていく人の気持ち」と「商品をよりよく見せる人の気持ち」が同じであることが一番大切なことだと思う。

■今日のBGM

個店仕入と本部仕入

チェーン店の商品部は渥美先生のチェーンストア理論では、商品開発担当者のマーチャンダイザー(MD)と提供方法の開発をするバイヤー、オペレーションラインを指導するスーパーバイザー(SV)と定義づけられている。理論上はそうかもしれないが、チェーン店は一括で商品を作ったり、仕入れたりする部署との意味合いになっている。

当然、量をまとめて作る事や仕入する事のメリットは大きく、利益率アップの大きな要因になっていく。さらに取引先との信頼関係も強くなる。販売ラインで販売力や商品のチェックができる力をつけることで、商品部スタッフはジョブローテーションとして次のステップになる事はある。半面、現場と本部の温度差が大きく、なかなか相いれないことも多い。

私自身も量販店時代はそういう環境だったが、その後ビブレ業態に移ってからは、個店仕入れに変わりそのメリット、デメリットを肌で感じてきた。店舗数が増えることで、当然全店で同じ商品を提供すべく商品部もあったが、うまく流れているようには感じなかった。のちに、会社を立ち上げ、店仕入でスタートし店舗数が増えて共通の商品を作り始めても同様の感覚はあった。個店仕入れと本部仕入との切り替えが企業の方向性を明確にするうえで大きな過渡期になるような気がする。

ビブレも立ち上げた会社もそうだったが、店仕入れは自分で商売をやっている感が強いので店長は面白く仕事ができていて、モチベーションも高かったと思う。「自分で仕入れた商品」が売れるのは面白いし楽しい。自分で品揃えに合わせて売り場も作っていく。販売計画も立案し数値計画とも整合させていく。ただし会社は成長していくにつれて、課題も増えていく。仕入金額や利益計画や在庫計画などの調整が難しくなってくる。特に店舗数が増えると全店好調というわけはないので、ひずみが出てくる。例えば売れてない店の商品を他店に移動させて販売したり、その商品を値下げしたりして、従来の自店の計画とのずれが出てくる。

企業が大きくなっていくには、商品を一括仕入れする商品部は必ず必要になってくる。さらに店別のデータを分析することによって、的確な商品の数量も分かってくるし、好調店、不振店間の商品の移動も容易になる。ただいろんなケースで店舗への強行的な指示も出てきて、店との乖離も大きくなる。「指示通り売れ」対「売れる商品を作れ(仕入れろ)」の構図は、当然発生するし、事実たくさん見てきた。

私自身の持論は、商品部バイヤー(仕入れ担当者)は店の店長を兼任させるべきだと思っている。その店には店長格のNo2を配置すれば、ある程度仕入れ活動として動ける。同様に商品部の責任者はどこかの事業部長を兼任すればよい。現場での商品の流れを肌で感じたほうがいい。商品担当と営業担当が別々に数字を管理することでひずみが出る。現場と本部の乖離が会社の成長を止める。「店で売上は計上される」つまり現場感を持ち続けることが最も必要だと考える。

営業売上数値と商品売上数値は、一緒になるはずだ。目的は一緒なのに、指示事項が違ってくることが一番危険な状態だと思う。

■今日のBGM

会社の存続は出店戦略にあり

以前、立ち上げた会社が何とかやっていけると思ったのは最初の2店舗の成功によるところが大きい。2店目が先日営業を終了したマリノアシティ福岡だった。最初の2店とも坪数は40坪強で間口の広い店だった。ピークには両店とも年間2億くらいの売上があったと記憶する。ただそこから出店した数店舗の数字は苦労した。

落ち着いて分析すれば、商品のSKUや在庫金額から考えて35坪~45坪の大きさが必要で、間口が広く、長方形かそれに近い店が一番フィットしていた。モール出店では、間口が狭く30坪以下の小型店で、さらに3階に出店すると失敗の確率は上がった。3階でもエスカレーター前とかはまだ戦えた。もう1つの基準として、競合になる店や、いつも数字を意識している店の売上を確認していた。それによって自店の数字の想定を立てることができる。

整理すると、昔運営していた店舗の出店場所としては、間口が広い店がベストで、モールであれば2階まで、そして35坪前後の大きさ。さらに、競合の売上を確認して提示された条件をもとに数値予測を作り社内会議をした。

数値予測は5か年(契約年数)の店損益を簡易なPL(損益計算書)で作成した。それによる店予測損益に投資経費として初年度に総投資額の20%を経費計上し、残金額を毎年35%償却したとして計算した。その数字を見て出店の参考資料としていた。

その数字に加えて、商品バッティングや競合関係、エリア特性(人的交流ができるかなど、特に人的マネジメント)を検討し、最終の細かな調整をデベロッパーとしてきた。出店の可否に関して、妥協して出店した店舗は、ほとんど成功しなかった。

内装投資や、敷金、その他のデベロッパーへの出店費用、品揃え商品費用や、備品経費を想定すると30坪~40坪の出店で2000万以上のキャッシュが出ていく。ぎりぎりで回している中小企業には大きな負担となるし、真剣に考えるべき事案である。キャッシュ残高によっては、借り入れも必要になり、実際出店ごとに融資を受けていた。さらに出店にかかわる経費は、出店投資だけでなく、それに付随する人的戦略への経費もある。転勤させると、その転勤経費や、住宅経費も発生する。さらにスタッフの募集経費も必要になってくる。

多店舗化することによって、商品コストの削減や、オリジナル商品にも取り組める。情報の精度も上がるし、社内の自信や社外の認知度も上がる。出店戦略が中小小売業にとっては企業存続の最も大事な要素になる。それだけに、出店の社内ルールを制度化し、感覚でなく数字でジャッジできるようにすることが必要だと思う。

出店店舗の成功こそ、次のステップへの礎になる。

■今日のBGM

DB(ディストリビューター)には発言力が必要

ディストリビューター(以下DB)を調べると、「MD、バイヤーが発注調達してきた商品を「適正に」「効率よく」配分すること 店頭在庫を整えることが主な業務になる。」とある。自社商品、別注商品が作れるだけの規模になると非常に必要なポジションだ。

昔、イトーヨーカドーのDBは権限が強く、バイヤーが発注しても在庫が多ければ仕入れを許可しなかったらしい。当然商品部内の組織ではなかった。これは大きなポイントになる。商品部内にいるとバイヤーやMDと机を並べているので、強い指摘ができない。以前在籍したビブレも商品部にDBを在籍させていた。ともすればバイヤーの部下、同僚としての扱いになる。仲良く同席していると当然在庫や商品動向への提言機能は弱まる。

店舗数が増えてくるとオリジナル商品の比率が高まり、その商品の管理をDBがする。オリジナル商品の店別動向や在庫管理データをつかみ、情報を開示する。当然動きが悪い商品をどうするかもジャッジする。売れている店に移動させたり、値段を下げてなくす指示もする。つまり商品の司令塔になる。

在庫管理も当然DBの主要業務になる。各店の売上予算、在庫予算を把握し、仕入金額を把握する。売上の予測と仕入金額で在庫予算との乖離は当然わかる。仕入原価も分かるので月末在庫と月末の利益着地も想定できる。在庫が多くなりそうなら、仕入れをストップさせるし、商品が売れてなければ利益予測をして値段を下げる指示もする。

単品情報もデータでわかる。以前の会社では1カ月0.2回転以下の商品(10点仕入れて2点売れると0.2回転)は売れている店へ移動させるか、値段を下げるかのジャッジをしていた。楽なボーダーラインだが早め早めのジャッジは必要だ。ジャッジラインは会社が政策的に決めればよい。小型店は早めに不振商品を他店に移動させて、商品を入れ替えたい。さらに、売れている店があるのならその店の売り方や演出など成功事例として共有させたい。

商品仕入担当は、当然自分で仕入れた商品はかわいい。売れると思って仕入れたのだから、売れないのは売場の責任と思っている。売場は逆に売場の欲しい商品がわかってないと思っている。これはいつも見られる様相だ。どちらかの意見に偏らないため、DBを管理するポジションには、営業系でなく数字で冷静に判断できる管理系の責任者を置くべきだと思う。そしてその責任者は営業の責任者と対等である必要がある。

小売業の数値は「売上」「利益」「在庫」で評価される。とかく「売上」「利益」のみ語られ「在庫」を見落としがちになる。「在庫を整えることがDB」という定義を再認識するべきだと思う。

■今日のBGM

今の商業環境で、商売を始められるか?

昔、叔母と叔父が西宮で、それぞれ豆腐屋をやっていた。忙しくて年末には毎年両親も手伝いに行っていた。大豆から豆腐を作ってそれを売る。焼き豆腐はバーナー?で火を入れる。所謂製造直売で儲かっていたように記憶する。自転車で売りにも行っていた。土日も大変だと思ったが、商売は金になるものだと思っていた。

自宅で商売をする。つまり家賃はかからない。原価も安いので儲かる。うまいので売れる。さらに家族経営なので人件費もかからない。(厳密にはかかっているが・・・)商売の成り立ちだと思う。

今豆腐屋をやっていると、どうなっているか?SCで商売しなければ人は集まって来ないので、入店すると家賃は高い。そうなると家族経営は難しくなり、人を雇う。SMなどとの競合が厳しく値段競争に負けてしまう。この流れで個人経営はどんどん減っていく。さらにずっと味を求めてやっていても、商店街がなくなってきたのと同じタイミングで寂れていく。

現実はどうか?SCの数も過剰になり、乱立し、より集客力のあるSCに入店するには、敷居がどんどん上がってくる。入店するのに敷金や内装管理費やその他多くの経費が掛かる。当然チープな内装では入れない。出店経費は非常に高くなる。SCも集客を上げるために、「売れる店舗」をリーシングする。当然「売れる店舗」の条件は優遇される。そうなれば他の店舗に当然しわ寄せがあり、どんどん出店のハードルが上がる。つまり利益も上げていけるMDが必要になる。

衣料服飾品においても、現状のお客様の流れはボリュームプライス志向が強まっている。ハイエンドは少なく、その購買場所も限られてきている。価格志向に走れば当然商品を企画して大量に作っていかねばならない。国内ではコストが合わず、諸経費が抑えられる海外で生産する。そんな中でも円安が続き、コストも上昇する。売れる商品を作るには大量の購買データも必要になる。つまり大企業シフトはますます強まる。近頃は商品を作って卸していた企業が、自ら出店するケースが増えている。つまり「買い」での商売は厳しくなっている。

単店で戦えるとすれば、そのエリアでは「そこでしかない物」を売るしかない。ただ「そこにしかない物」は仕入なら原価は高い。利益対策も考えなければならない。卸企業の戦略としても1つの店舗(会社)に集中して卸すことはしない。ローカルチェーンでブランド戦略をしている店がこのセグメントに入る。実際そういう店は大型モールにはいくつか入っている。

今の商環境で、個人もしくは小資本で、商売を立ち上げても絶対成功しない。もし成功するビジネスモデルがあるのなら、「人」「物」「金」の回しやすい企業と共同で立ち上げていくしかないように思う。小売業はもう「とりあえずスタートする」スタートアップ事業ではなくなったと思う。

今日のBGM

大企業の社長は中小企業の社長をできない

このごろ、この類の内容が多くなっていて恐縮するが、やはり大企業の社長や新聞各社が他人事のように言う「景気の回復は中小企業次第」というコメントには大変憤りを感じている。今回も同様の内容になっていることをご容赦願いたい。

先日、昔の取引先の社長と飲んでいるとき、その社長がお盆休みの案内を出したら、「長い夏休み、どこか行くのですか?」と取引先の店長に聞かれたという。店長は今年の盆休みは特に長いので何気に聞いたようだ。その社長は、「商品の発送ができないので休みにしただけで、お盆期間も毎日仕事する」と答えたそうだ。実態は間違いなくこういう状況だと思う。従業員は休ませても、社長は仕事を普通にやっている。

以前も書いたが、中小企業の社長にほとんど休みはない。後方各部署に責任者と担当がいて個別にマネジメントしている組織になっている企業は数少ないと思う。私自身、売上1兆円超企業の部長職も経験し、それはそれで忙しかったが、20億を超えたぐらいの中小小売業の社長のほうが間違いなく忙しかった。

小売業は人を雇うにもまず売場が中心になる。売場が売上げを作ってくるので、売場の人員の確保が優先される。現状の時給アップや、土日勤務の労働環境を考えると小売業に容易に人が集まるとは思えない。本部に人を配置するには店の体制が安定した後になる。

小売業の後方業務は、まず経理がある。立ち上げた会社では全店の伝票(仕入、返品、値下げ、移動)の本部控えを送付させていた。本部でも各店の数値管理表(売上、仕入れ、在庫、利益のデータ)を作成しその伝票類と毎日の売上を管理していた。月度が終わるとその仕入データを取引先別に計上して、支払いの基になる帳票を作成する。それをもとに翌々月の支払日に支払っていた。その支払いもパソコンで約70社ある取引会社に振り込む。1回の振込みも1億以上にはなる。その他本部や各店での経費や従業員の経費も集計し振り込む。

人事的な作業もある。給料を確定させなければならない。各店からのタイムカードや人事関係の各種書類をチェックして給与を作成する。出勤簿への記入や有休の確認、残業時間のチェックも当然する。毎月入退社数は5名以上入るので、毎月一度はハローワークに、雇用保険の加入や離職票の提出をしに行っていた。そして給与も明細を作って店に送付し、給料日に振り込んでいた。出勤簿や給与台帳は重要で、コロナ時ややこしい雇用調整助成金の申請にも必要だった。業績評価も当然のようにやっており給料改定も行う。当然人事台帳の更新もする。

仕入と人件費を確定させて各店の数値を確定させ、各店の営業月報や損益月報も作成し、店長にはフィードバックしていた。当然会計ソフトや、給与ソフトは使っていたが、元のデータ作りは労力が必要になる。その他営業系のデータ管理もある。細かい仕事はいくらでもある。最多27店舗の管理業務を本部スタッフ、社長を入れて3名でやっていた。これに加えて月1度は全店巡回していた。もっと楽なシステムを導入することはできるだろうが、全体の仕組みを変えるにはもう少し規模が必要だった。店舗数を増やすには投資が必要になる。損益が安定していなければいい融資を受けられない。ずっと右肩上がりではない。

自画自賛するようだが、よく働いていたと思う。上場企業の社長はこんな仕事はしないと思うが、おそらくできない。では私が上場企業の社長はできるか?企業基盤がしっかりしていれば、おそらくできる。

■今日のBGM

バーゲンでもあまり値段が下がらない

8月はできればお盆までに夏物商品をなくす目途をつけたい。お盆すぎると集客はぐっと落ちるので値段を下げてでも売っていく。商品をなくしていく。盆過ぎには初秋物が投入され、売場の色を秋色に変える。昔の販売計画はこんな感じだった。

8月に入ったが、SCの各店の売場はあまり乱れていない。なぜか年間通して割引している店はあるが、この夏物最終処分時期の売場のイメージはない。「いい買い物をした」のイメージがだんだんなくなっている。

いつ商品をなくしていくのだろう?ユニクロを中心としたSPA型の小売業が増え、大きなセールに比重をかけてない。52週の販売計画の下、在庫状況を見て細かなセールを増やし、商品をなくしていく体制に変化している。それに合わせて取引先の体制も変わっていったのかもしれない。

ただ、そういう企業体質の会社ばかりではない。本当にやるべきことをやっているのかという疑問がある。上場会社の決算を見ると、利益率を上げることを優先していると感じることが多い。回転率は鈍化している。商品動向に基づいて、商品を処分しているのだろうか?「品揃え失敗」で利益を落としている企業はあまり見当たらない。「1月、7月は売上を確保して利益率は落とすが、利益額でカバーし、在庫は減らしていく。2月、8月は減った在庫に先取り商品を入れて利益率を回復させていく。」という昔の商売はなくなってきたというのだろうか?在庫高によって利益率が変動していくような細かな予算を組んでいないのではないかと感じる。季節商材が少なくて、商品回転率が年2回転と低くても、残商品を年2回はなくしてしまわなければならない。商売が攻撃的でなくなったのかもしれない。逆にユニクロのほうが、あれだけ商品を自社で作って利益率51.9%(23年決算数値)は十分攻撃的な結果かもしれない。

売上予算、利益予算、在庫予算、それに伴う仕入予算を細かくボトムアップで作成するべきだと思う。当然修正は会社トップがするが、トップダウンでの予算作成ではひずみは大きい。店に予算責任への比重を上げることによって、店の動き方は変わる。本部主導になればなるほど店の動き方は鈍い。ユニクロのように商品の動向ジャッジを数字で判断できる状況にないのなら、店の判断で数字も変わるようにしたほうがいい。「売り場の意思」が見えたほうが店は勢いづく。

SCの8月の売場を見ていると「欠点を隠した優等生」のようなショップばかりのような気がする。「必死感」もあったほうがいい。そういう感覚が一番お客様に伝わると思う。

■今日のBGM

小売業の本部機能は店のためにある

小売業の後方部隊はできるだけ小さくすべきだというのが持論だ。特に営業系の本部組織はミニマムにすべきだと思う。会社規模が大きくなってくればくるほど、本部要員が増え、本部要員が増えれば増えるほど現場に余計な仕事が増える。これは間違いなく起こる事実だ。規模が大きくなると全体の把握がしにくくなり、その確認として会議が増える。当然会議が増えると資料が増える。小売業の資料は現場の数字が中心になり、その確認作業として現場への資料作成を依頼する。

GMSの店長時代、日曜の夕方になるとスタッフルームに売場の責任者が集まってきて書類作成をしていた。月曜日に本部の商品部の会議に必要なデータを作成し送付していた。売上より必要な書類を優先してしまう風土になっていた。その後、本部へ赴任して本部人員削減を言い続けたがなかなか組織は変えられなかった。

本部は店のためにある。店の要望を聞いて動くべき場所だと思う。本部のスタッフがいてよかったという風土にする必要がある。本部として商品を作るとき、仕入れるとき、店の状況がわかって、店のニーズがわかって仕入れているか?店に行って店と同じ立場で販売をしているかどうか?そこで気づいたことを売場に反映しているかどうか?売り場のレイアウトや演出は的確かどうか?販売体制に問題はないか?店と意見を交わさないといけない。

本部は偉いと思われがちだ。全然偉くない。店が一番偉い。店が動かなければ会社は成り立たない。ただ本部は店がわからない商品動向の変化や、トレンドの変化などはどんどん発信しなければならない。それも本部で発信するのでなく、現場で指導して実践して初めて情報が広がっていくことに気が付くべきだ。余談だがイトーヨーカドーの会社の組織図は最上部に店が並んでいたと思う。組織図の逆三角形の下に社長、取締役会、株主があった。「店=お客様」が最上位の考え方だった。

どうすればよいか。本部は店長を数年経験したぐらいの若いスタッフを配置すべきだと思う。できればジョブローテーションをして3年くらいの間隔で交代させる。店舗数が少なければ店長兼任が最も望ましい。現場の感覚が必要だし、若いスタッフだとベテランからの意見にも耳を傾ける。現実的には企業は安定感が欲しいのでどうしてもベテランを本部スタッフに登用する。そうすることによる弊害が大きい。若手は意見を言いづらいし、仕事の流れに変化が出ない。(従来の流れを踏襲する。)新しい感覚が生まれない。

経営していた会社では、営業面の本部要員は配置しなかった。管理職はあったが店勤務にしていた。できるだけ現場と本部の距離を作らないことが大事だと思っている。管理職が店を巡回するときは店と話し合い、必ず指示できるような体制にした。本当に営業の本部機能が必要になるのは40店舖くらいになるときだと思う。その時は全体で商品の自主MDができるし、営業面での企画もできるようになる。そしてそういう時でも本部よりも店を優先し若手をジョブローテンションの下、本部に配置したい。

本部と店の温度差はできるだけ少なくなるようにするべきだ。

■今日のBGM

トマム(星野リゾート)の事例と小売業

トマム(星野リゾート)を持っていた中国企業が不動産投資会社に売却するというニュースが今月初に流れた。どういうことかわからないのか、先日ニュースで説明をしていた。

星野リゾートはコンセプトを明確にしてリゾートでのおもてなしを大事にしたホテルを複数運営している。非常に評判が良く、心地よく過ごせる施設が多い。近年急成長しているイメージが強い。以前、資金はどこから出ているのかと調べたら、「星野リゾート・リート」という投資法人があり、そこから受託を受けて「星野リゾート」が運営をしているという仕組みが分かった。つまり「星野リゾート」は運営会社ということになる。トマムも今回売却した中国企業に以前183億で売却しており、その企業が今回408億で売却したということだ。売却差益が225億ということになる。

去年の7月に商業施設のPM(プロパティマネジメント)について書いたことがあるが、商業施設で起こっていることがホテル業界にも当然のようにある。企業に投資をすることと同様に、ホテルや商業施設に投資をする。そして投資先の収益率を高めてそこから利益を享受するか、再度投資物件を売却して売却益を得る。その投資物件の維持管理や物件価値を高めるための星野リゾートなどの運営会社や商業施設のPM運営会社が必要になる。

商業施設でも「イオンモール」と名前はついていても物件の所有者は別(イオンではない)の施設もある。そこを企画フィー、PMフィーをもらって「イオンモール」がテナントを集め、運営をしているということになる。詳細はわからないが、前回書いた「マリノアシティ福岡」も一部は「福岡リート」が所有しており、三井不動産がアウトレットの企画、運営管理を受託するという図式の可能性もある。

株と同じで不動産として、商業施設やホテルを所有することは近年増えてきている。ただこの状況は必ずしもいいことではないと思っている。小売業はずっと小売業を続けるために努力するし、観光業はお客様を呼び込むために快適な環境やホテルを運営する。その結果、つまりお客様の満足料が利益になってくる。それが小売業や観光業だった。証券化してしまうと「利益を出して売りぬけること」を優先する。商業要因以外(施設の維持管理面など)のわかりやすい投資はするが、よほどの根拠がない限りなかなか大きな投資をしない。そうするとどうなるか?長期的なビジョンはなくなる。証券化された物件はとりあえず物件価値を上げて、高く売り抜けることを目的としかしなくなる。

「そごう西武」の池袋西武も同じ流れのように思う。ヨドバシが土地代を出し、おそらく百貨店以上の収益は稼げると思う。そこで収益を確定して「そごう西武」を売り抜ければそれでいい。将来おこるだろう環境変化や池袋以外の残りの百貨店のことはあまり関知しない。「文化」を担ってきた西武百貨店は完全になくなる。

金融資産としての考え方と商業や観光業の考え方とには大きなギャップがある。商業施設や観光ホテルはお客様を見て商売し、「お客様第一」と考える。持ち主がファンドなど「金融業」になると、決定権は「小売業」や「観光業」になくなり、当然「金融業」になってくる。将来的ビジョンのジャッジも「金融業」になってくる。現状ではなかなか長期的な計画は決済されにくい。

商業施設のPMをしていて感じることが多かった「どこを向いて仕事をしているのか(お客様不在感)」が、観光ホテル業でも表れてくるのではないかと思う。同じ気持ちで同じ方向を向いて仕事をするのが難しくなるのではないかと思う。

■今日のBGM

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