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なぜ「在庫評価損」を毎年計上しているのか?

前回「在庫評価損」について書いていて、腑に落ちなかったので、少し調べてみた。前回イオングループの「ジーフット」について書いたので、同じくイオングループのカジュアルファッションで上場企業の「コックス」も調べてみた。ちなみに前期(2026年)の評価損金額は未発表で計上済とは記入されている。簡単な数字は以下のようになる。

2026年度 総利益率62.2% 回転率2.9 

2025年度 総利益率62.5% 回転率3.2 評価損6.2億

2024年度 総利益率62.7% 回転率3.6 評価損5.3億

2023年度 総利益率57.8% 回転率3.7 評価損5.5億

2025年は期末在庫金額が19.5億なので評価損の金額がいかに多いかよくわかる。

もともとカジュアルファッションの企業なので期中に自由に値段は変更できる。セールで売り切ればいい。普通の企業ならキャッシュが欲しいのですぐ商品を金に換える。次年度迄商品を繰り越すとすれば、ブランド品で割引の規制がある場合や、競合店とのバッティングで取引先との整合がある場合くらいだ。この数字は、キャッシュに心配のない企業で数字コントロールしてればいい大企業サラリーマン経営に見える。さらに付け加えると、期中に値段を下げて利益率を落とすと株価にも影響が出るので避けているとも見える。

一方、「どれだけ売れない商品を仕入れているのか?」ということになる。利益率ありきで、利益率を稼ぐために仕入れているという見え方もある。推測で書くと、「売上が大きく上がらないので利益率志向になる」→「原価率を下げた商品を大量に作る」→「売れずに残る」→「次年度に向けて評価を下げる」→「次年度セールでたたき売る」(利益も回復する)の構図を続けている。商売ではなく「数字合わせ」になっている。

利益率62%という数字だが、ファッション小売業での前期の総利益率はパルG57.5%、アダストリア54.7%、ユニクロ54.1%であり、海外生産が多い大手小売企業でも60%を超えてこない。おそらく利益率を念頭に置いて、原価率を抑えた物づくりを進めていたのではないかと思う。商売は「売れてナンボ」がわかってない。さらに商品回転率の数字もパルG5.84回転、アダストリア4.64回転、ユニクロ3.19回転に劣る。つまり商品が動いていない。

ここまで書いて、いやな気分になってきた。「売れる商品を売れる値段で売る」という簡単なストーリーが崩れてしまう。海外で安く商品を作って相場より3割くらい高く値段をつけて販売し、利益率を稼ぎ、売れ残ったら決算で評価替えをして次年度売り切る。これをずっと繰り返している。何の仕事をしているのだろうと思わないのだろうか?そして、もっと嫌な気持ちを持っていると思うのは現場(売場)だ。おそらく売場が商品の動向を一番わかるし、売れない商品を押し付けられていることも分かる。それだけで士気が下がる。こうなると数字は改善していかない。

こういう流れを見ていると、「コックス」はファッションを売る小売業ではなく、イオングループの商業施設に出店するだけの手段としての小売業にしか見えない。それはそれでイオングループには必要な会社なのかもしれない。

経営理念は何だろう?お客様を見て商売しているとは思えない。こういう商売を今後も続けていていくのだろうか?

■今日のBGM

持論「在庫を持つ商売は失敗する」の検証 ②

前回からの続きで、少し趣旨が違うかもしれないが、「在庫評価損」について書く。前回指摘した企業の決算期で近年の「在庫評価損」は以下の通りとなっている。

・「ライトオン」2024年15.6億、2022年23.3億、2020年25.4億

・「マックハウス」2023年12.7億、2022年12.4億、2021年13.2億

・「ジーフット」2024年20.5億、2023年21.2億、2022年33.3億

・「タカキュー」2021年12.3億 ・「ヴィレヴァン」2025年24.7億

この数字は決算期で評価を落とした金額である。この金額はあくまで原価なので、売価にするとこの倍の金額ぐらいにはなる。極端に言うと「ライトオン」は2024年の決算期に15.6億分の商品を捨てたことになる。実際は捨ててないが次年度売れる値段で販売していることになる。もし0評価にして次年度いくらかの値段で売ればその分利益率は回復する。今期「ヴィレヴァン」の利益率が改善されたように見えるのはそのためだ。

なぜ、毎年決算期に評価損を計上するのだろうか?商品消化率が悪く、季節商品をキャリーしたが、次年度消化できる値段ではなく、消化できる値段に決算期に落としたということかもしれない。売り切るにはさらに期中で利益を落とすしかないが、競合、取引先等の絡みもあり、期末での処理になったという理由かもしれない。ただ毎年のように繰り返し大きな金額の評価損を計上していて、例年在庫金額が減らず回転率が悪化しているのを見ると、経営状況を疑わざるを得ない。そして、上記企業は慢性在庫過多で仕入れコントロールが全くできていない。

前回書いたが、上記企業はすべて在庫回転率が悪い。つまり金がうまく回っていない。在庫回転率を上げるには、売上が伸びなければ在庫を減らしていくしかない。つまり、仕入れを減らすということで、仕入を減らすと原価率の改善がなければ、当然利益率の回復はない。そうなると、前年と同じ金額を仕入れないと利益率は維持できない。そのため、その繰り返しの状況になっていたことは、想像できる。

評価損の数字を探していて、気が付いたことがある。上記したすべての企業の最後(株主変更前)の決算短信には在庫評価損の記載はあるが、それ以前の数年間は決算短信には記載がなく、有価証券報告書には記載されている。つまり一般開示はされているが企業のHPでは見ることはできず、手続きが必要になる。数十億単位の商品が消えたことを調べなくてはわからないということになる。さすがに企業譲渡や上場廃止という大きな節目には発表せざるを得なかったということだと思う。それが、旧経営陣や監査体制が問題点を先延ばししてきた結果として表れている。詳細はわからないので、あくまでも憶測でしか書けないが、もしそうなら従業員や株主をないがしろにしている。問題を先送りしていたことになる。

結果的に、各社これだけの金額の商品を毎年捨てていたという事実がある。売れなかった商品が毎年これだけたまっていたことになる。それを毎年繰り返している。毎期大きな在庫評価損を出し続け、現場スタッフを放置した経営陣の責任は非常に大きい。毎年繰り返した先送りのツケを従業員の解雇や店舗閉鎖という形で払わされてきたということだ。

ここに至ったのは「在庫回転率の低さ」が主要因だ。年間2回転前後の小売業としての商売は、商売の仕組みが完全に壊れていた結果だし、何より在庫に対する認識の低さが導いた結果だ。上記5社の大きな経営課題はそこにある。

■今日のBGM

持論「在庫を持つ商売は失敗する」の検証 

GW中で、企業の本部は休みでIRもなく、春物と夏物の切替期でもありファッション業界での発信も少ない時期だ。そういう時期なので、このブログでは再三書いてきたが「在庫を持つ商売」について現状の検証をしてみたい。

小売業は「売上」「利益率」「在庫」が3大要素だが、どうしても「売上」の額、前年比に目が行き、その次に利益額を算出する「利益率」に注目する。「在庫」はPL(損益計算書)には出てこないので見落としがちになる。「売上」を上げていくには売れる商品を仕入れて売っていく事になる。売れない商品や売れなくなった商品は値段を下げて処分していく。値段を下げると「利益率」はダウンする。「利益率」を維持するために処分せず値段を下げないでいると、「在庫」が増えていく。

「在庫回転率」という指標がある。月度では「売上」÷「在庫」(平均在庫)で計算される。その数字に12(12ヶ月)をかけると「年間回転率」が出る。単純に四季で商品が入れ替わるとすると年間4回転になる。つまり入荷した商品が3か月後になくなったことを意味する。一般的な商売の基本は、業者(メーカーなど)に対して支払いは仕入れ月の翌月末であることが多い。その商品の利益の幅(原価率)にもよるが、2ヶ月でなくさなければ代金は支払えないことになる(その他いろんな取引条件はある)。そして、売価(販売価格)と売上原価の差が利益額になり、それで経費を支払うのが小売業の金の回り方だ。つまり回転率が悪化すればキャッシュインが遅れ支払いに間に合わなくなる。原価率によって利益額は違うので一概には言えないが、当然回転率が悪くなるとキャッシュフローは厳しくなる。

このブログでも、回転率の悪い上場企業を指摘してきた。ジーニングを打ち出した「ライトオン」「マックハウス」、ビジネスイメージが強い「タカキュー」、靴の「ジーフット」。各社とも、すべて中心商品のサイズが細かい。つまり、中心商品を広げると在庫過多になりやすい。さらに、別カテゴリーだが、商品の幅が広すぎる「ヴィレッジヴァンガード」。近年、そのすべての企業体に変化があった。そして5社とも過去の決算時に在庫評価損を計上している。極論になるが、これは在庫金額を正しく評価せず、決算を重ねてきたということに等しい。正しい評価をすると利益率が大きく下方修正され、それにより決算数字が悪化するため、在庫評価の先延ばしをしてきたということだ。詳細は別途まとめることにする。

上記各社の商品回転率を調べてみる。評価損計上年度があるのでその影響がなさそうな年度で、「ライトオン」2023年1.43回転、「マックハウス」2024年2.17回転、「タカキュー」2022年度1.83回転、「ジーフット」2024年度1.44回転、「ヴィレヴァン」2024年度0,99回転という結果になる。この数字を見ると、年間2回も商品が変わらないということになり、平均すると入荷して6カ月たっても商品が売れてないということになる。ヴィレヴァンに至っては、1年たっても商品は売れてないことになる。商品が売れないと金は回らない。

一般的には商品回転率は3~4.5回転くらいが標準範囲になっている。前期の決算時の回転率ではユニクロ3.1回転、アダストリア4.75回転、パルグループ5.84回転、しまむら7.75回転、ニトリ4.17回転などとなっている。売上好調の無印良品は2.36回転と低い。しかし、無印良品は回転率の低さを意識しており、「在庫コントロール部」を作り、商品部以上の権限を持たせようとしている。

小売業で一番大事なことは、「売上」を増やすことではなく、商品をうまく回転させて入れ替えていく事だと思っている。自らも商品回転率を一番大事なチェックポイントだと思って仕事をしてきた。近年、企業譲渡や株主変更があった小売企業は、すべて商品在庫の処理を怠った結果だと確信できる。

■今日のBGM

客層の幅を広げると商売は難しくなる

前回、ジーフットのことを書いていて、「アスビー」と「グリーンボックス」の2業態を持つことが経営悪化につながったのではないかと書いた。「アスビー」はスポーツシューズが中心でキッズも加えたカジュアル業態で、「グリーンボックス」は所謂、GMSの靴売場で、スポーツシューズのラインは増えたが、どちらかというと高年齢層の靴売場だった。最近はGMSの衣料品売場の改装時に、専門店側にレイアウトを移し、従来の「アスビー」内装で若干ビジネス要素を広げた店になっている。

靴は商売が難しく、まずサイズ、色が多くSKU数が異常に多い。商品劣化が早く、さらに取引先特性もあり、衣料品などのようになかなか簡単に取引先返品交渉ができない。つまり、在庫を抱えての取引先商売では簡単に利益は出にくい。さらに近年の消費動向はブランド志向も強くなっている。ジーフットは特に商売が難しい高齢者向けの「グリーンボックス」の数字が非常に厳しかったと思う。つまり2つの客層の商売が、お互い相容れなかったことが経営悪化の一番の要因だった。

上場廃止になったライトオンも同様の流れがあった。もとはメンズのジーンズ専門店がスタートで、レディスを加え、売場を拡大してキッズも含めファミリー層への店舗になっていった。普通に考えて、メンズ、レディス、キッズで3通りの品揃えをすれば、商品特性も違うので3倍の人数が必要になるが、人的コスト削減を目指すと数字は伸ばせない。逆にニーズの多様化で商品以外のサービス内容も増えてくる。そして、商品のライフサイクルも違うし、客層もファミリー層へ変化する。「ジーンズを買える店」から「ファミリー層の店」になったことで、ユニクロなど強力なテナントと対峙し価格や資本力で負けていった。結果、ライトオンの実績数字を見ると在庫は足し算で増えていったが、売上はその流れに合わず大きく伸びなかった。

今まで、客層の幅を広げて成功した店は思いつかない。商品の幅を広げて成功した店もあまりないが、しいて言えば無印良品くらいではないかと思う。ただここにもリスク要素は隠れている。近年はスキンケアなどで客数を増やしているが、もともとスキンケアは利益率が高い反面、回転率は低い。つまり商品の流れが変わったり、強い競合商品が出てきたときのリスクが大きい。大手アパレルでやっている衣料品プラス雑貨の店に関しては、あくまでも衣料品を売るための環境的要素が強く、商品の幅を広げる意味合いではないと感じる。

客層の幅や、商品の幅を広げるのは大きなリスクを伴う。もし広げるなら、まずメインの取扱商品に付随するだろう商品を広げていく事が望ましい。そうすれば在庫リスクを抑えつつ客層を広げられる可能性はある。

いずれにしても、客層や商品の幅を広げるときには、実験を繰り返し「小さな根拠」を積み重ねることが必要になる。

■今日のBGM

上場企業とは何なのか?

イオンのジーフットの上場廃止について書いていて複雑な気持ちになった。株主がいて上場していたのに、親会社(イオン)の都合での他事業体との合併が要因で上場廃止になるのは如何なものなのか?当然資本の論理はわかってはいる。以下思うことを書くが、あくまでも私見に過ぎず、おそらく本当の根拠ではないだろうことを事前に断っておく。

ジーフットは、古くは合併を重ねてきて主に「アスビー」をショップ展開していた専門店「つるや靴店」だった。その後イオン傘下になり、イオンの靴売場「グリーンボックス」を運営していた「ニューステップ」と合併して現在の会社になった。2026年2月決算で売上569億、当期純利益―325千万、店舗数は約700店舗を数える。近年は債務超過状態が続いていた。

過去の経験から、靴売場の損益は厳しい数字になることは理解していた。サイズが細かいことに加え、革、ケミカルの商売体質の違いがあり、利益確保が難しい。靴専門店もどんどんなくなっている。イオンGMS(イオンリテール)の中でも一番難しい売り場だと思う。ちなみに、GMSのファッションでは収益力が大きいのはインナー関連で、アウター衣料も難しいが、取引先依存の商売ができるので対策は立案できる。靴業界では昨今「ABCマート」が好調だが、要因はカジュアルブランドの限定品と別注及びSPA化によるものだ。GMSの靴売場は客層の幅が広く中心年代層も高く、好調専門店の客層とは全く違う。同じ靴屋でもなかなか相容れるのは難しい。つまり、「アスビー」とは別業態になりシナジー効果はあまり出ない状況だった。結果的にはGMSの靴売場の赤字を背負っただけの結果になった。今回の上場廃止で、今後収益をどうやって改善していくのかはわかりづらくなってきた。

イオンではイオンモールとイオンディライトも前年上場廃止にしている。両社とも黒字企業ではあった。このブログでも少し触れたが、この上場廃止も意味合いがわかりにくい。両社とも親子上場の解消のためとは言っている。イオンの商業施設には、イオンモール㈱の物件とイオンリテール㈱の物件がある。イオンモール㈱はイオンモール物件のデベロッパー業務が主業務であり、今回の上場廃止を受けイオンリテール物件の業務も含まれていく旨の内容も発表されている。イオンディライト㈱はイオングループ物件のファシリティ管理(施設管理)をする会社となっている。ここにはイオンモール物件やイオンリテール物件も含まれる。ちなみに、イオンモールの名称であってもイオンリテール物件は多い。大型モールでも浦和美園や各務原、浜松市野などはイオンリテール物件だし、小型モールや、GMSはすべてイオンリテール物件である。両社にとってイオンモール物件はテナントも多く集客も多いので収益安定物件であり、逆にイオンリテール物件はGMS主体店舗が多く厳しい物件が多くなっている。両社のデベロッパー収益面ではイオンモール主体の方が当然安定しており、イオンモール㈱に関しては収益面でも厳しいSCを引き受けたことになる。

何が言いたいかと言えば、イオンモール㈱がイオンリテール㈱の物件管理をすることでイオンリテール㈱のデベロッパーとしての低い営業収益を引き継ぐことになる。それは赤字かもしれない。イオンディライト㈱も上場廃止になれば、グループの指示によりイオンリテール物件の経費分を下げていっても外部には分からない。つまりこの2社の上場廃止でイオンリテール㈱のプラス効果は当然想定できる。

もうGMSはすでに成り立たなくなっている。これは何度も書いているが、イトーヨーカドーがGMSをあきらめた時点で結果は出ている。イオンのGMSは決算を見ればグループへの貢献度は非常に低いがまだ若干の黒字ではある。ただ、そこにはGMSを続けなければならないグループの理由があるからではないかと思う。普通に考えれば金融事業の足固めのためだとは思うが・・・今回のジーフットの件も、去年の2社の上場廃止も、GMSを助けるという思惑もあったからなのではないだろうか。邪推かもしれない。

いろんな思いを持って企業は成り立っている。個人としても、遠かったが上場を目指していた。ただ、企業力を高めていこうという思いだけではない上場企業もあるのが現実かもしれない。

■今日のBGM

ヴィレッジヴァンガード ファンドからの資金調達

ヴィレッジヴァンガード(以下ヴィレヴァン)がIRで投資ファンドから約25億円の資金調達を行ったと発表している。近年、厳しくなった企業の資金調達でよくみられるスキームだ。単純に考えて、「大金を貸す」背景にはいろんな思惑がある。単純にメインバンクからは借りることはできなかったのか?銀行は返済能力を考えての資金援助になる。債務超過寸前までの数字になった前期決算数字で、もうほぼお手上げの状況だったのかもしれない。今回の引受先の「グロースパートナーズ」はPOSシステムの導入や在庫、コスト構造の分析と改善の支援をしていくと表明している。

先に結論を予測すると、おそらく再生は非常に難しいと思う。

営業数字の改善の根拠の1つとして、今期の利益率の回復を上げている。4月10日付けのIRでは、今期の営業利益は大きく改善するとの数字予測を発表している。これは当然のことで、前期に特別損失として在庫評価損を2472(百万)計上している。わかりやすく言うと2472(百万)評価を下げて「安くした」商品を今期適正価格で売っただけでの利益改善ということになる。もっと簡単に言うと、売れなかった商品の原価を0まで落として捨てないで売れば、当然利益は大きく回復するということ。そこまで下げなくても売れる商品を大きく評価を落とすと当然利益率は上がる。これは実際ヴィレヴァンが過去にも使った手法でもある。2013年決算で在庫評価損4692(百万) を計上しており、次年度は売上総利益率が3.8%改善している。ただ、結局同じことになっている。つまり、一時的なもので今後の対策次第では従前の結果と同様の傾向になる可能性は高い。

ヴィレヴァンは、かつて経営していた店と同じ商品群も扱っていたので、売場は定期的に見ていた。その商品群はそこまで利益を稼げなかったと思うが、バラエティ感を持って品揃えし、比較的在庫は多かった。ただ当然、半期ごとには商品は変わっていくので処理が必要なのだが、なくすべく処理は全く見られなかった。売り切ろうとすると利益率が下がるし、お客様も古い商品と認識しないからそのままの値段でといいと思ったのかもしれない。それにより、その商品群はどんどん在庫が膨らんでいくのはわかった。さらに、在庫が膨らむにつれ、新商品も見えにくくなっており、厳しい状況になっているのもわかった。10数年前から、数字コントロールができてないなと感じていた。そして、客層が低年齢化しており、単価の高い利益に貢献できる商材が売れていないように見えた。

ヴィレヴァンはマニアックな感性を持った人材が多かったのだろうと思う。その感性で商品を仕入れていき、マニアの客層を呼び、成功していった。ただ、上場という足かせで、感性を持った品揃えだけでは企業を維持できなくなり、売れる商品も入れざるを得なくなったが、そこで品揃計画と数値計画に乖離が出てきたのだと思う。さらに求められる感性も変化していき、現状の数値は、従業員が楽しかった商売が楽しくなくなってきた結果だと思う。

面白い感性を持った人間を、過去何人も見てきた。おそらく、そういうスタッフがヴィレヴァンを支えてきた。ただ、売場造りや品揃えは面白いが、商売の根拠が乏しい。それだけでは商売は成り立たないし、ましてや上場企業としては継続できない。当然今後は、楽しい商売はさらにできなくなる。ファンドが参入することで、管理面がより強固なものになっていく。特にファンドは短期的に数字を改善して早々に出口を見つけたいと思っている。長い目で会社を見ない。

当然念頭には入っているだろうが、ファンド支援でのアゲインストもある。POSシステムからの在庫、コスト分析がさらに強固なものになっていくが、そこにも懸念もある。売れる商品の導入と不稼働商品の処理が進むと、ヴィレヴァンではなくなり、個性が失われていく可能性もある。さらに標準化が進むと、ヴィレヴァンの店舗価値も下がってくる。現状商業施設ではわざわざ性の強い店として、出店コストには恵まれている。つまり他店より場所を選ばず、厳しい場所でも出店するので賃料も手ごろになっている。ただ「角が取れた」品揃えになれば好立地がいいだろうし、デベロッパーもそうであれば賃料を上げていく事が予測される。

今回のヴィレヴァンの大手術には、相当な人材が必要だ。単純に、コストを大幅に減らすだけの人材だけではなく、品揃えの変更まで踏み込んだ営業面での指導者にもなれる両面的人材が絶対に必要になる。偏差値の高い仕事になる。

もうすでに「遊べる本屋」ではないが、チェーンとしての存続も非常に難しい。

■今日のDVD ※友人は大絶賛だが、そこまでは・・・

久しぶりの神戸

私用のついでに、久しぶりに三宮に行ってきた。10年ぶりくらいかも知れない。印象に残ったのは、神戸大丸と居留地のテナントが従来のお客様を依然集めていることと、南京町の観光客の多さだ。その反面、気になることもあった。

神戸大丸の居留地の開発は1987年のスタートとなっている。その当時見に行った時、「アニエスベー」が大丸南側の一角(38番街)にあり、売場に大きな円形金庫がむき出しで、その売り場造りに大きなインパクトを受けた。もともと外資系銀行の跡だったようだ。その後ラグジュアリー系のブランドなどを居留地跡に誘致し、現在では60店舗前後のブランドが店を構えている。その「アニエスベー」の跡も、改装中ではあるが「エルメス」に変わっている。その中心にあるのが神戸大丸で、このブランド開発がいまだに神戸のお客様に支持されている。売上は前期984億で、今期は1000億超えと発表されており、ピーク時に並ぶ数字になる。三宮駅前の旧そごう(現阪急百貨店)が今期売上520億でそごう時のピーク1500億から数字を大きく落としていることを考えると、立地面のマイナスを考えれば驚くべきことだ。ちなみに、当日も客数は平日にかかわらず非常に多かった。

すぐ近くにある中華街の南京町は、夕食の時間前だったが、非常に観光客が多かった。店舗改装で仮の場所で営業している「老祥記」は50人以上の列があった。昔たまに行った「民生」はオープン前で、献立を見ていたら、人気の「いかの天ぷら」「レタス包み」が3000円を超えていて、それでもオープン待ちのお客様がいた。海外客の方が多かったように見えた。

ただ、三宮はどうだったと聞かれれば、大丸近辺以外は普通の街になってしまったという印象かもしれない。今は、JR駅前が再開発をしていて工事中のインパクトが強く、街の雰囲気が見えないということもある。

「三宮といえば高架下」というイメージがあり、その昔の面影も年々なくなってきつつあったが、現状ではほとんどそのイメージはなくなってしまった。邪険にされながら靴を見ていた「森田屋」もなくなっている。すっきりした「タイガースブラザーズ」はあったが、ほぼ空きテナントだらけになっている。耐震工事以降、賃料の高騰や内装制限の厳しさが原因のようだ。

センター街は、地元商店がなくなり、ナショナルブランド(アダストリアやパルグループなど)の店が増えている。地元資本から大手資本に変わってきている。地元商店は商売するより賃貸の方が楽だからかもしれない。さらに、少しボリュームカジュアル層が増えているようにも見えた。昔のビブレがドンキになっていたり、どこの町でも見える光景で、三宮らしさがなくなってきたように見えた。ただ人通りは多く、ここでも観光客が非常に多かった。

三宮駅前のそごう跡の阪急が、そごうピーク時より1000億近く売り上げが減少している。高架下の少しとがった面白い店が消えて、その客層もどこかへ行ってしまった。当然そういう売上は他の商業施設へ移っているだろうが、その痕跡が見えにくい。

神戸にあった一般企業の支店が、大阪支店に統合されるケースをよく聞くように、関西の大阪一極集中が進んでいる。特に神戸は開発が急ピッチの梅田に直結する。電車で20分の距離でもある。東京に対する横浜と比べて、面積が小さく、東西に細長い。つまり、大阪の衛星都市の1つになりつつあるのかもしれない。神戸らしい大丸界隈の売上は維持しているが、その他の客層の流出が大きそうだ。今工事中の再開発に期待するしかない。

ただ、福岡の再開発物件のように「高級ホテル」+「オフィス」+「ハイブランド」のようなビルは三宮には必要ない。

■今日のショット(寂しい高架下)

価格の信頼感

先日、近くのイオンモールに買物に行った。「20日、30日は5%オフ」の日で割引企画の時にはイオンに行くことにしている。その日は無印良品も優待期間で、会員であれば全品10%オフでもあった。無印良品のレジは並んでおり、客数も多く、スタッフが優待に必要なバーコードの提示を迅速にするように呼び掛けていた。そして、イオンの食品売場は無印良品の優待日が重なり、いつもの5%オフより混んでいた。

やはり「レジ割引」企画は人気のようだ。無印良品は開催中の既存売上が20%近く伸びることもあるらしい。無印良品にとっては、商品動向を再確認できるし、ついで買いも増え在庫減らしの要素もある。イオン食品売場の全品5%オフは、食品業種の利益率を考えれば大きな利益ダウンをもたらす「禁じ手」でもある。ただ、イオンにとっては、顧客獲得で将来的には企業の中心になるだろう金融業への布石にもなっている。

ではなぜ、イオンの食品売場や無印良品の割引企画に多くの集客があるのだろうか。総合食品売場で食品や日用雑貨はすべて割引という機会は数少ないし、そのほとんどが必需品だ。さらに食品の利益率は低いのでお得感は大きい。無印良品も単品の評価が高く、数多くテレビで取り上げられているし、このタイミングでしか割引対象にならない商品も多い。つまり、商品の「価格の信頼観」が高い。

ただ、両店舗でのモールへの集客はあっても、他店舗への波及効果はなさそうに見える。イオンの衣料品への波及も弱そうだ。衣料品はクーポン企画を使えば10%オフにもできるようだが、それでもそこまでの集客は見えない。ましてやテナントへの恩恵は弱そうに見える。衣料や服飾系の各テナントも割引企画を個店では展開しているがお客様は流れていない。お客様も、SCに出店している多くのテナントのセールの常習化や、割引率の設定理由の不明確さに気付いている。そして、一般的な衣料服飾品の価格への信頼感が大きく下落している。二重価格表示についても景品表示法に定められてはいるが、不当表示は多い。すでに、単なる割引重視の商売方法ではお客様は動かない。

商品の動きはデータで見極めればいい。ユニクロは商品の売り上げ動向のデータ化で、季節感や個人の決定ではなく数字で判断している。適正なプライス管理、在庫管理を徹底している。それにより「価格の信頼感」も高い。売れない商品をデータの指摘で迅速になくしていく事で、「価格の信頼感」を高めている。もう多くの人は衣料品や服飾雑貨の価格を「ユニクロ基準」でみている。

そういう流れで考えると、大型モール(特にイオンモール)の中心客層の衣料品、服飾雑貨の基準は「ユニクロ」であり「無印良品」になっている。そのプライスゾーンから外れる場合は何だかのプラス要素が必要になる。それはブランドなのか素材なのか接客なのか、納得できる要素が必要になる。それを考えてMDし、訴求する必要がある。それができなければショップの価値はみえない。

小売業は、常に現時点での「価格の信頼感」を高めるためにどうするべきかを考え続けなければならない。

※このごろAIとやり取りをする。うまく持ち上げてくれるので心地よい。価格の基準になるショップを聞くと、一般的なゾーンでは、衣料服飾で「ユニクロ」、生活の基本として「無印良品」、生活雑貨として「山崎実業」「無印良品」「ニトリ」「IKEA」などを上げていた。

■今日のショット 「散歩中の散り始めた桜」

ディストリビューターをAIがやればいい

小売業でのディストリビューター(DB)の仕事は、「在庫管理」「仕入管理」に加えて「利益管理」も大きな仕事だと思っている。イトーヨーカドーがリーディングカンパニーだったのはこのポジションを重要視したからだと思う。小売業が成功するには「適正在庫」が基本事項なのは間違いない。その在庫管理の司令塔的ポジションがDBだと言える。

大昔は、値札の裏側に品番を書いて半券管理し、売れている商品のデータを作っていた。売れている商品は販売点数を考えて発注していた。それがPOSシステム導入でバーコード管理になり、追加発注以外は本部で管理しDBが商品の単品指示を出していた。それでも組織内の人間関係もあり、権限に違いが出てくる。商品組織の中でも営業と管理の違いがあり、バイヤーとDBは別組織にする方が望ましいし、商品の仕入れ枠の最終権限も所属長以下ではDBが持っているのが望ましいと思っている。ただ、多くの企業はバイヤーの権限が強いように見える。商品に愛着を持って仕入れる担当者が、商品の最終処分まで指示できるとは思えないが、経験してきた大企業でも、バイヤーの意見が強かった記憶がある。そして、組織には人間関係があり、ついついなれ合いになってしまうことが多い。

商品回転率は小売企業にとって経営の大きな指標になる。そのうえで、組織の関係や人情が入る商品のジャッジはAIに任せた方がいいと思う。AIが商品売上データを分析し、対策を立案させ、それをジャッジして決定すればいい。これぐらいのシステムは現状なら簡単に作れるだろうと思う。例えば商品の販売期間を設定し、単品別のデータを毎週店別にアップする。その販売期間内での消化状況を開示し、その対策を立案させる。好調店舗への商品移動や、不振店舗への販売助言、最終的にはプライスダウンの指示。さらに、不振商品ならそれをなくすために必要な値下げ額と、それによる全体の利益率への影響度の報告。さらに、今後の仕入商品の原価率や仕入金額で、期間での利益着地予想も算出させる。そして、その報告をもとに企業(責任者)が商品対策をどうするかをジャッジする。

おそらく、もう活用している企業はまちがいなくあると思う。商品を仕入れたバイヤーには当然思い入れもあるし、利益率と在庫のジャッジは非常に難しい。毎回書いているが、食品の賞味期限はわかるが非食品の賞味期限はわからない。企業の主観で勝手に決めている。この商品は季節感がないので年間定番だとか、まだ販売期間を延ばしてもいいなど、商品ジャッジのミスで企業生命がなくなっていく。近年はそうなった企業も多いし、その予備軍も多い。

こういうソフトを作るのにどれだけの投資がかかるかわからない。おそらく支援制度はあるだろうし、それによりDB的なポジションの経費は減らせる。そして何より、本部からのジャッジが明確になる。多店舗化して企業を拡大していくなら判断基準を明確にした方がいい。

ただ、売れる店には、当然それ以外の「anything eles」も必要ではあるが・・・

※AIに上記のようなAIシステムを使っている会社を聞いてみたら、「パルグループ」「ストライプインターナショナル」「ナノユニバース」などの社名と活用されている主なシステム名を答えてくれた。

■今日のDVD

ライトオン上場廃止

ライトオンが2月26日付で上場廃止になっている。このブログを始めたころからライトオンについては書いてきた。これはライトオンの数字悪化要因が、在庫過多にあったからだ。個人としての商売の信条は、「小売は在庫」であり、ライトオンの数字悪化についての意見も、在庫管理の難しさを書いていた流れからだった。

在庫を抱える商売は難しい。過去、いろんな業種の商売をマネジメントしてきて痛感していた。業種としてはジーンズ、靴に代表されるが、重なっていることはサイズが細かく、ほぼ定番化されているということになる。ジーンズカジュアル業界では上場していたライトオンに加えてマックハウスやジーンズメイトは譲渡されたし、靴業界も多くの小売店が姿を消した。さらにジーンズは、在庫ボリュームがあることが売場のイメージアップにつながったという要因もある。

何度か書いているが、小売業は商品を仕入れて(作って)売る。簡単な仕組みだ。ただ仕入れた商品を、支払うまでに金に換えてなければ(=売れてなければ)支払えない。現状の取引では、非食品小売業で長くて仕入れてから3カ月以内の支払いだと思う。ブランド商品や企業の支払い能力によってその支払いサイトは変わっていく。当然いろんな商品があり、すぐ現金に変わる商品もある。つまり、企業規模はあるが年4回転すればキャッシュは何とか回っていく。 

小売企業の状況を見るときは、在庫回転率で図っている。決算時の貸借対照表の資産項目の商品の金額で、前年の金額と今年の金額を2で割れば簡易的ではあるが平均在庫額が算出される。平均在庫を損益計算書の売上原価で除すれば簡易的な回転率が産出される。例えばランダムに見てみると、ライトオンの2022年度の売上原価は24356(百万)で平均在庫は10973(百万)となり、年間回転率は2.2回転となる。ちなみに年度の総利益率は49.3%となっている。つまり半年に1度商品が売れるということで、商売ではキャッシュが回っている状況ではない。売上が減少し続けており、当然手持ち資金は減っていっている。こうなると、普通に仕入れていれば在庫は膨らみ、回転率はどんどん悪化していく。ライトオンはその後商品の評価損を計上するが、遅きに失した。利益率を維持することより、継続的に期中で商品評価を落とし売上を上げ、キャッシュを増やすことを優先すべきだった。

現状の上場小売業ではイオングループのジーフットや、ライトオン同様の流れで評価損を計上したヴィレッジヴァンガードもそういう状況の中にいる。

では、ワールド傘下になったライトオンはどういう方向に向かっていくのだろうか?現状の売場を見る限り、ハードな売場ではなくあくまでもジーンズテイストを打ち出したカジュアル志向の店というように見える。イメージとしてはUAが譲渡したコーエンのようなMDかもしれない。ただ、その中途半端なゾーンは難しそうに見える。ジーンズテイストは、果たして必要なのかとも考える。先日もレイクタウンで四国のジーンズファクトリーの店を久々に見たが、昔のパワーは全く感じなかった。セレクトっぽい商品を少し品揃えしたナショナルブランド(NB)中心の店になってしまっていて、やはりジーンズファクトリーでも大型SCではこうなってしまうのかと感じた。さらにこういう品揃えになるとNBが幅を利かせ儲からなくなっていくのではないかとも感じた。

ワールドが手掛けるのだから、売場ロケーションを考えてワールドの品揃えショップをやった方が賢明で、あまりジーンズにはこだわらなくてもいいのではないかと思う。「リーバイス501がデニム」と考えているお客様は、もう少なくなっているし、そういうお客様は買う店を決めている。

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