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チェーンストア理論➁

品種・・・商品部門より小さな概念で(商品)ラインより大きな範囲を指す。ライン…特定の価格ゾーンの商品品種をいう。 品目・・・アイテム。お客様が識別できる商品の最小分類。 単品・・・「SKU」生産者や流通業者にとって考えられる限りの商品の最小分類を指し、POSが扱うのは単品で、いくつかの単品をグループ化したものが品目。

「単品」「品目」「品種」の説明である。

「何が売れている?」漠然とした質問だが、品種なのか、品目なのか、単品なのかわからない。何を指すのかちゃんとした言葉が必要で、話が通じなくなる。さらに各社独自の言葉もあり何を言っているかわからないことがある。マイカルがイオン傘下に入ったとき、旧マイカルの従業員は、言葉の違いで悩んでストレスを感じたと多くの人が言っていた。

この言葉を統一しようとしたのがチェーンストア理論の渥美先生で、上記の説明は手元にある2002年度版の「チェーンストアのための必須単語1001」での説明を記入した。

前回しまむらについて書いたが、しまむらの業態はVS(variety store)と記したが、これも「必須単語」の業態の類型で、以下の通りの内容となっている。VS・・・価格レンジ「ロワーP」 商品特色「廉価短期消耗実用品 衣料4~6割」                                「必須単語」説明では以下の通り。・・・商品頻度の高い非食品を幅広くそろえた、便利総合品、売価の上限が低く抑えられている。実用衣料が主力で、売り場面積150~500坪でセルフサービスである。NSC,CSCの第2、第3の核店となる。1人売り場60坪以上でやりくりし、売場販売効率が低く、低商品回転率でも高収益なのが特徴。(抜粋)

しまむらについては業態の説明とおおむね一致する。20年以上も前の必須単語だが「SPA(speciality retailer of private label apparel)」の説明もあるし、主要経営効率計算公式もまとめてある。   

チェーンストア理論の在り方は理解できるし、各社ともそれを基本にしてフォーマットを作って戦ってきたと思う。私自身はチェーンストア理論とは考え方は違う店をやってきたが、言葉の統一は必要なものだと思っている。その中で「必須単語1001」は絶対必要なもので、標準語として続けてほしい。

各社、言葉が通じないのは小売業界としておかしい。標準語は絶対必要だと思う。

■再度画像アップ ※祝阪神優勝 岡田監督とは同じ年。学部は違うが同窓。六大学で江川を打てるのは岡田しかいなかった記憶がある。

しまむら ➁

いろいろ考えてみた。

なぜ、この業態で好調を続けられるのか?同じようにチェーンストアの成功を目標にして、GMSに向かわずにVS(バラエティストア)に向かったのか?それをぶれずに60年以上もやり続けることができたのか?なぜ好調を維持できるのか?

GMSがなくなっていく理由がわかったような気がする。非食品は完全にお客様から「No!」のジャッジをもらっている。高度成長期に充実させようとした「中流意識層」への対応売場が現状は全く必要とされてない。大きな売り場を埋めるために、不要な商品を集めすぎている。シーン別の売り場などは完ぺきに自己満足だし、儲かる売場(必要とされる売場)だけでもういいのではないか?作ってきた売り場を進化させているつもりでいるだけで、実は進化させていなかった。無駄なことばかりやってきた。売れない商品でも仕入れたし、欠落アイテムも補完した。でもそれは必要なかった。

特に時代の変化は大きい。円安不況の中、中流層の崩壊が顕著で、購買動向も大きく変わってきた。特に20代~40代の変化は大きい。そこを百貨店やGMSは拾えていない。ユニクロやABCマートのような一種のカテゴリーキラーやしまむらや西松屋のようなVSに流れている。

そこまでは整理できるが、あの雑然とした売り場でいいのだろうか?GMS時代のストアメイキングマニュアルは不要なのだろうか?商品はペラハン(入荷時のペラペラのハンガー)のまま陳列していてもいいのだろうか?陳列量はあれでいいのだろうか?演出もレイアウトもあれでいいのだろうか?

おそらく要員数や経費と関係していると思う。新しいハンガーに変える手間と購入経費より、人件費や商品動向(POS)経費を優先した結果かもしれない。おそらくぎりぎりのオペレーションコストなのかもしれない。レジ要員と品出し要員を中心に回していると、細かなところまで手を回せないというのが現状かもしれない。

さらに、割引商品の比重も高い。在庫と利益のバランスはあるが、どういう指標で割引対象にしているか興味深い。今まで言って来たが「利益率」より「回転率」を重視する会社のほうが小売業では正解だと思っている。(利益率を優先する会社は将来的には成り立たない。)間違いなくしまむらは「回転率」重視で動いている。プライスダウンする決定プロセスを知りたい。今の回転率で今後どのように利益を改善していくかを知りたい。

もう何店舗か見ないと、いろんな仕組みややり方が想定できないが、どういうマネジメントをしているか聞いてみたい。

近いうちにまた違う店を見に行こうと思った。

■今日のBGM

チェーンストア理論

先日、あまり気にしてこなかったしまむらの数字を見て、まず全社の平均月度回転率が0.59だったことに大変驚いた。6000億を超える企業でユニクロより回転率は高い。しまむらをネットで調べていると、創業者は「商品回転率を基準に品揃えを考えるべき」と考えて創業したと書かれている。チェーンストア理論を学んで呉服屋からの創業だったようだ。

日本の主な小売業の経営者は、チェーンストア理論を渥美俊一氏主宰のペガサスクラブで学んでいる。ダイエーの中内氏、ジャスコの岡田氏、イトーヨカドーの伊藤氏などが最初からのメンバーで、ニトリやしまむらの社長もここで学んでおり、多くの流通業の経営者に影響を与えている。

チェーンストア理論は本部一括仕入れで本社集約型でのマネジメントを実施し多店舗展開での経営効率を上げることをモデルとした理論だ。私自身は、何度か講演を聞いたが全く興味を持てなかった。

その当時の仕事内容とは大きな相違があった。(倒産した企業だったからかもしれないが…)ファッション型のビブレにいて、「店主導」「店仕入れ」を基本としていたからだ。ただ店長時代に感じたことは「なぜ、本部がこんなに現場を理解していない?」「本部が現場の意見を聞かない。」「本部からの一方的な指示が多い。」など本部中心の動き方に疑問を持っていた。その後、本部に在籍したときは「小さな本部」を模索した。後に立ち上げた小売りの会社も基本は「店仕入れ」を中心にしており、本部はできるだけ小さくすることを念頭に置いてきた。今でも「本部絶対的主導」が正しいとは思っていない。

ただ小売業の課題は「在庫」ということは、今までの小売人生から十分理解していたので、在庫回転率を念頭に置いた経営はやってきた。25店舗前後しか店舗はなかったが回転率は月0.5回転以上の実績だった。ただその管理体制をどうしていくかが課題で、完結はできたとは思っていない。以前も書いたが「バイヤー」より「ディストリビューター」的なポジションが力を持つことが望ましいし、社長もしくはそれに準ずる人間が「在庫管理」をしていくことが絶対的に多店舗展開での基本だと思っている。

業種がクロスオーバーしていても回転率が高いしまむらや高回転を続けるユニクロが、どういう組織でどういう権限を持って仕事をしているか聞いてみたいとは思うし、そこが好調企業のポイントの気がする。

■今日のBGM

インフレ下の好調企業

例によって9月の既存店前年比を4年前から掛け合わしていると、なんと、しまむらは115.0、西松屋は103.4と概算で既存店売り上げが、コロナ前より伸長している。前回ユニクロ、アダストリアが100%を割り込んでいて、コロナ前まで回復してないと書いたが、好調企業もある。プライスレンジや客層が違って、一概には言えないが、コロナの影響やインフレの逆風下でも売り上げは伸長させている。少し客層ターゲットは違ってはいるが、GMSの平場の不振を考えると素晴らしい実績だと思う。

ファッション専門店ではなくカテゴリーキラー(西松屋はそうかも?)ではなく、服飾雑貨やグッズまで扱う衣料品チェーンストアという位置づけかもしれない。比較的値頃品を中心に品揃えしており、昔の言葉だと「良品廉価」の店といえる。SCよりも路面のイメージが強い。駐車しやすい立地が多く、わざわざ郊外の大型SC(RSC)に行かなくても、デイリー商品を簡単に値頃で買える利便性がある。コロナ禍で買い物を楽しむより、必要なものを値頃価格で買うというニーズにマッチした結果だと思う。当然MDも進化している。

去年の決算数字を しまむら(以下S)、西松屋(以下N)、ユニクロ(以下U)、アダストリア(以下A)で比較すると面白い。

  売上高 S 6161億 N 1695億 U 23011億 A 2426億

利益率 S 34.1 N 34.8 U 52.4 A 54.7

人件費率 S 10.8 N 7.3 U 13.8 A 14.3

地代家賃 S 5.3  N 9.0 U ※8.5~9.0 A14.4

     ※ユニクロは地代家賃計上基準変更前からの想定

月度回転率 S 0.59 N 0.30 U 0.53 A 0.37

      ※期末在庫から算出

当期利益率 S 6.2  N 4.5 U 11.9 A 3.1 

しまむらや西松屋はSPAというよりは「買い」の商売比率が高く利益率は低いが、人件費が低く、さらに地代家賃も低い。しまむらとアダストリアでは地代家賃の差が9.1もある。徹底的にチェーンストア理論に基づいたチェーンストアかもしれない。しまむらの回転率に基づいた商売を徹底しているところは共感する。

インフレ状態の中、やはりここ数年続いた流れが大きく変わってきている。どのターゲットの「感度」と「値頃」を目線にしていくのかで店の数字は大きく変わりそうだ。

あまり細かく見てこなかったしまむら、西松屋を一度ゆっくり見てみようと思った。

・・・先日久々に伊勢丹と高島屋をぶらぶら見たが、連休明けでもあり、閑散としていた。伊勢丹の免税場所にお客様は見られず、高島屋は地元客だけのように見えた。

■先日の昼食(京都とは違いすぐ入れる)

回転率からみる在庫の信憑性 ➁

前回から引きずって、再度書く。

昔の話だが、マイカルが倒産危機にあった時、「特損セール」(社内的な呼び名かもしれない)を実施した。キャッシュインを増やすためで、特にストック在庫、倉庫在庫の一掃セールだったと記憶している。本部にいたので数店舗巡回した記憶がある。その時の商品は当然価値を下げての「自己見切り」中心での販売だった。よくこんな値段でストックしていたなと思う商品が多かった。つまりストック在庫の評価を下げてのセールだった。

売れる価格をジャッジするのは難しいが、利益を落とせないので、簡単に値段を下げられない。当然「売る努力」を求められるが、厳しい(動きが悪い)商品は2~3か月売場の動向をチェックしていたり、全店のデータを見ているとすぐにわかる。

ライトオンやマックハウスがそうだとは言わないが、厳しい状況になってくると利益重視になってくる。利益率を落とせば当然会社損益に大きな影響が出る。ただファッション業界で月0.2回転していない会社は考えにくい。資産効率が悪すぎる。まだデニムウエイトが高いのだろうか。

例えば、前期マックハウスの商品在庫は4348(百万)で利益が48.0%なら売価在庫は8362(百万)となる(単純計算)。年間売上18443(百万)とすると年間回転率2.2回転。月度回転率0.18回転。月度回転率を0.2回転にして年間2.4回転に上げるには、売価在庫を7684(百万)まで減らす必要がある。その差は678(百万)。月度0.02回転上げるだけでも(売上はそのまま)それだけ減らせねばならない。320店あるとすれば1店舗2.1(百万)、現状1店当たり在庫は26.1(百万)なので可能な数字ではある。ただ、それぐらい評価が難しい商品は現状あるのではないか。ちなみにその分の商品評価を下げれば単純計算で全体の利益率は43.4%になり4.6%ダウンする。上場企業は発表しにくい数字になる。

小売業は在庫が軽くなければ、動きが鈍くなる。商品が多すぎれば、そこから売れ筋を探すのに苦労するし、売れ筋を仕入れる枠も減る。悪循環になってしまう。動きの悪い商品を早く見つけて、できるだけ早くなくす必要がある。それをなくした金で新しい商品に変えていく。そうすることによって売場に鮮度感が出て、好循環になっていく。

経営上、なかなか手を付けるのは難しく、手を付けると損益に大きな影響が出るので在庫内容の精査は順番が後になる。ただ体質を変えるには荒療治が必要ではないかと思う。

■今日のBGM

回転率からみる在庫の信憑性

上場専門店の売上数字を、前回簡易的に計算してみたが、債務超過のタカキューは別にすると、ライトオン、マックハウスというジーンズカジュアルから派生した専門店の数字が気になったので去年の決算数値を確認してみた。

ジーンズショップは、サイズが細かく品番も多くメーカーも多いため、特にデニムの在庫が多くなり、商品が回転せず、売れていても、経営は非常に厳しい。特に現在はルーズなサイズ分類が中心になり、ライトオンでもデニムの在庫ウエイトは下がっており、売り場のボリューム感を出すために、一時は売台 にデニムの類似品が陳列されており、在庫を減らそうという苦労がうかがえた。

去年の決算を見てみると以下の数字になる。

・ライトオン 売上48229百万 利益率49.3 ※2019年対比65.2% 394店

自己資本比率44.2% 流動比率62.5% 

1店舗平均 月度売上10200千 平均在庫57300千 回転率0.18 

・マックハウス 売上18443百万 利益率48.0※2019年対比65.8% 320店

      自己資本比率35.8% 流動比率71.3%

      1店舗平均 月度売上 4800千 平均在庫26100千 回転率0.18

      (マックハウスは他の業態もある。)

非常によく似た数字になっている。

在庫が減ると自己資本比率は下がる。流動比率は上がる。経営分析は在庫高にも左右される。

きしくも、両社とも月度回転率は0.18となっている。年間定番商品が多いと回転率は低い。デニム中心になるとそうなるかもしれない。

ファッションで言うと春夏秋冬の四季がある。年4回衣替えがあり商品が変わるとして4÷12で1カ月0.33回転になる。現在は在庫勘定方法が変わったらしいがユニクロは月0.5回転だったと聞いているし、アダストリアも悪化していても前期は月度0.37回転になる。

両社の決算数字に対して異議を唱えるわけではないが、本当にこの回転率で商売をやっていけているのかとは思う。SPAであれば在庫日数が大きくても原価率を考えると許容範囲はあるが、買いの商材は支払いが半年後であっても、この回転率ならキャッシュが回らない。

この在庫評価は適正なのだろうか?販売できる値段になっているのだろうか?この在庫回転率を見るとこの商売は長く続かなそうに見えるが・・・

■今日のBGM

専門店の商品部

小売業をやってきて規模が少しずつ大きくなってくると、当然本部組織も大きくなってくる。経理や人事などの後方部隊の仕事は明確なもので、存在目的ははっきりするが、商品部がどういう位置づけかが課題になる。

ユニクロなどのSPA企業は商品部の位置づけは明確だし、「商品を売る人」「商品を取引先から買う人(作る人)」の立ち位置が明確な場合は大きな問題にはならない。企業が発展途上にある場合、店に仕入れの裁量を持たせるケースが多い。中には店仕入れのウェイトが大きい会社もある。昔、在籍していた「ビブレ」も店仕入れのウェイトが高く、定番志向の強い「アンダーウェア」や「生活雑貨」以外はほぼ店仕入れだった。セグメントごとに商品部のバイヤー(MD)が2名くらいいた。その後立ち上げた会社も店仕入れの比率が高く商品部専任のスタッフは配置しなかった。(ライン職が兼任で組織してきた。)

店に仕入れの裁量を与えている会社には商品部は不要だと思っている。理想かもしれないが、全店で展開する商品を作ったり、セレクトしたりする仕事も主要な店長(ライン職)がすればいいと思う。その商品のジャッジするする人間は当然必要だが、経営幹部がそれをやればいい。

むしろ、商品登録をしたり商品データを管理するべきスタッフが必要だといえる。「ディストリビューター」と言われたりするが、どちらかというと「商品を販売サイクル上どうしていくか」をジャッジするスタッフが必要になる。データ分析して、「増やすべき商品、なくすべき商品」を的確に指示が出せるスタッフということになる。そのデータから利益計画、在庫計画につながっていく。それを商品部というなら、商品部は必要になる。そのポジションが最も必要なポジションだと思う。管理職がすべき仕事かもしれない。

商売はあくまでも現場だ。本部にスタッフが多いと経営職や管理職と顔合わせする機会も増える。いろんな質疑に答えねばならないので、質疑の回答への矛先は店スタッフに流れる。そうすると店スタッフの仕事が増える。本来の仕事ができなくなる。わかりやすく言うと質疑の回答を書類作成するために店からデータ招集をするケースが多く、店スタッフがその資料を作成する。「お客様向け」の労働時間を割いて「社内向け」の仕事が多くなってくるということだ。

「物を買う」「物を作る」ことは取引先情報もありそんなに難しいことではない。仕入れた商品、作った商品をどうやって売っていくか、商品をどうやって消化していくかのほうが大きい。それを考えるのが現場ラインの大きな仕事になる。その戦略を作成し指示するのが商品部の仕事ではないかと考える。

今日のBGM

商品の値段は誰が決めるのか?

販売価格は適正なのだろうか?「売れる値段」が適正なのか「取引先がつけた価格」や「自分たちで設定した値段」が適正なのか?

小売業は棚卸をする。棚卸とは「商品の手持ち数量または金額またはその両方とを、確認すること、さらにその価格を確定すること。」と記されている。現金と棚卸資産以外は常に会計帳簿上に明記されている。現金も必ず手持ち現金を調べているので、資産高で不確定なものは棚卸資産だけとなる。その商品の価値はどう判断するのだろうか?棚卸時はその時点での値段で棚卸資産を確定するが、その価格は正しいのだろうか?小売業の一番見えないところだと思う。

経営していた会社では、一般仕入れ商品は商品回転率を0.5回転/月(月に10点の在庫が5点売れるということ)、俗にいう別注商品は0.3回転/月をほぼ念頭に置いていた。(別注は当然利益率が高いので。)つまり一般商品は入荷して2か月で、別注商品は3か月前後でなくなることを商品のサイクルと考えていた。なぜ2か月かというと以前書いたが、商品の支払いがほぼ2か月後になるからだ。

それでは0.5回転以下の商品の値段はそのままでいいのか?その値段では売れてない、つまり適正な値段ではないということではないだろうか?当然その商品特性も加味する必要はあるが。

値段を下げると利益率はダウンする。ただ売れない商品をそのままにしてはおけない。当然演出を強化したり、レイアウトを変えたり、接客を強化したりする策は当然ある。それでも売れないときはなくすべきだと考える。ではどうしてなくせばいいのか。

まず、店舗数が多い時は他店と情報交換し、データが見える場合はそのデータを確認して消化状況の良い他店に引き取ってもらう。取引先と交渉して返品する方法もある。ただ他店で売れていて自店で売れてないということは少し自店の販売努力が足らないとも考えられる。

一番簡単な方法は値段を下げて売りきってしまうことになる。

そこで問題になるのは「利益」と「在庫」になる。利益を重視して販売期間を伸ばすか、早く在庫をなくして、その処分した売上金で新しく商品を仕入れるかという問題になる。当然その後の利益計画を再度作成する必要はある。

「在庫」と「利益」に常に相関関係にありずっと課題になり続ける。

日本には「春」「夏」「秋」「冬」の季節がある。ファッションで考えると「衣替え」があり「色の変化」がある。そのタイミングで商品をなくすことができる。さらにSCや各店にはいろんな販促活動がある。売れない商品はそのタイミングで適正な値段に変えて、なくすことが最も必要なことだと考える。

「売れる値段」が商品の値段なら、値段を決めるのはお客様になる。

今日のBGM

出店計画について

小売業の一番の投資は出店投資になる。資金力のない企業は出店の失敗は会社の危機につながる。以前30坪の店をSCに出店するだけで2000万円以上の資金が必要と書いた。敷金は当然退店時返却されるが、撤去費として考えるとほぼそれぐらいになる。

それでも、店舗数を広げない意図があり、囲い込んだ顧客商売以外の業態であれば、店舗数の拡大によるメリットは当然大きい。

出店計画については、ここしばらく話題にしている人件費のアップや、人材不足の問題以外にも検討すべきことが多い。冷静に分析する必要がある。

自分のことを振り返ると、経営していた会社で出店数は全部で31、退店は8.退店理由で見ると3店舗は営業不振による退店。後はSCの都合と契約満了。営業不振の3店舗はMDのミス(新業態の失敗)と出店場所のミス。契約満了での退店理由は人員問題(販売員が慢性的に不足)が3店舗。デベロッパー側の会社都合はマスターリースしていたSCが出店場所を返却したためが1店とゾーニング変更に伴う代替区画の交渉決裂が1件。振り返ると失敗店舗は営業不振による退店の3店舗かなと思う。

出店時に考えることは当たり前のことだが、収益が出る物件かどうかということに尽きる。出店検討で必ず作成していたのは契約期間での収益予測。ここで考える必要があるのは普通の店のPLに加えて、投資の経費と償却を加味するということになる。

投資経費で大きいのは内装投資になる。経営していた会社ではまず経費計上分(10万以下の備品、30万以下の什器(※年間出店店舗数による))を内装投資の20%で想定し初年度に経費計上、年間減価償却は計算上(投資額-経費計上額)×30%で想定し試算していた。(当然実処理は会計基準に準ずる。)想定店PLから出店コストまで考えて検討はしていた。これで2年目からは単年度黒字を出店のハードルにしていた。ある意味高いハードルで出店計画をクリアしても退店はあった。

今は、出店のまず一番目のハードルは「人」(販売スタッフ)がいるかどうかになってくる。

さらに高くなった損益分岐点売上をどれだけ下げることができるかの賃料交渉になる。デベロッパーの認識が従来と変わらず、従来と変わらない条件提示だと、健全な会社は絶対出店していかないと思う。逆にデベロッパーは条件を下げてでも売り上げは上げてくるテナント、例えば歩率は下げても売り上げが上がることによってデベロッパー収益は減少しないだろうテナントを導入する必要が出てくる。

果たして今後デベロッパーは妥協してくるのだろうか?

■今日のBGM

今後の出店について思うこと

お盆商戦は大きく前年売り上げをクリアして好調という声が多い。ただ、去年はコロナがまた増えてきて集客に陰りがあった時期で、コロナ前と比べるとまだまだそこまでは戻ってないような数字のようだ。

コロナ3年間の傷は大きく、今年の春夏で退店が目立ったようだ。以前書いた自宅の最寄り駅15Km圏の安定的な商業施設を確認すると、さいたま新都心コクーンでワンズテラスなど衣料雑貨系で4店舗、飲食で4店舗の退店、イオンモール浦和美園でもスピンズなど衣料雑貨系で5店、飲食で2店舗の退店が確認される。

小売業の利益は売上から単純に仕入れ原価との差益を計算したのが売上利益額になり、そこから営業費を差し引いた金額が営業利益になる。SCに置き換えると各テナントの売上計はSCの売上高(管理売上というべき?)とすれば、売上総利益高は家賃収入(共益費なども含める)となる。

ということは、SCは退店が増えると総利益高が減るということになる。いろんな営業費(もちろん人件費も入る。)や資本費(償却など)などで収益は調整できるが、SCで一番大事なのは総利益高を減らさないこと、つまり賃料収入を減らさないことだ。退店が増えるということは賃料収入が減ることは誰でもわかる。そのために新しいテナントを探して出店してもらう。その時に、今までの賃料より少ない賃料でテナントを導入すると、総利益高は減るということになる。新テナントを探すがその時のジャッジの基準が問題になる。テナントリーシングについてはまた改めて書くが、まず大前提は賃料最低現状維持となる。

つまりよほどSCにとってメリットがあるテナントでない限り、賃料は大きく下げてこないということになる。売れているSCなら当然賃料が第一基準になる。逆に空床が目立つ厳しいSCなら条件の交渉がしやすくなる。

従来の出退店は賃料交渉や売場ゾーニングが一番大きなポイントになったが、ここにきて大きな問題が出てきた。「スタッフが集まらない。」「給与基準のアップ」という「人」の問題だ。最低賃金が時給1000円になればフル勤務で月160時間(1日8時間×週休2日)働いて給与は最低1人16万となる。交通費や会社負担の社会保険料などを考えて会社負担を25%とすると、人件費として最低1人20万が経費計上される。4人体制でその他の社員経費を考えると最低1200千/月は必要になる。とすると人件費率20%として(高いが・・・)月度売上は30~50坪の店でも最低6000千以上は必要になる。さらに先に書いたが「スタッフは集まらない。」。

どう考えても、普通の小売屋はよほど数字が想定できて、場所が良く、さらに人の手配がスムーズに対応できそうな店しか、出店はできない。出店投資が大きなリスクになる。

やはりどんどんSCは淘汰される。

■今日のBGM

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