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中小小売業の人件費

連日報道される「103万の壁」のニュースで、中小小売業は耐えられるのかと感じてしまう。その少し前には「時給1500円」のニュースも多く報道されていた。

中小小売業で収益を改善することはまず絶対条件として「売上を上げること」になる。自店でヒット商品が生まれたり、取扱ブランドが脚光を浴びたりして売上が上がる。ただその売上を維持するのは非常に難しい。特にファッションは長くは続かない。「利益を上げる」にはある程度の商品量が必要で規模が拡大しないと、なかなか仕入原価が下がらない。さらに規模を拡大するには当然店舗数も必要になり、投資を続けていかねばならない。そして最終的には「販売スタッフ」の質と人数のアップが不可欠になる。

立ち上げた会社でのラフな損益計算書を見ると、最も黒字が出た年度には人件費率が18%だったのが、コロナ期には34%になり大きく赤字を計上している。黒字期においても地代(家賃、駐車場費、共益費)の負担率よりも人件費が高くなっている。当然小売業は労働集約型で人件費の占める割合が非常に高い。

今回の「103万の壁」だが会社に損益上ダメージが大きいのは「106万の壁」がなくなる事だと思う。2024年10月から従業員50名以上の会社が対象になっている。以前の会社は約100名の従業員数だったので該当する。例えば時給1000円で月18日、日6時間働くとそのボーダーラインになる。今までは「130万の壁」が大きかったのだが今後は「106万の壁」になる。国は2020年代に時給1500円にすると言っている。と、するとボーダーラインだった人はどう働くか?時間を短くするか、壁を超えるか?今後配偶者特別控除の「150万の壁」をどうするかも考えなければならない。

それと同時に大きな負担が増えるのは企業にも当てはまってくる。個人の負担額を折半して会社が支払う義務が生じてくる。106万の人がそのまま働いたとして、健康保険+厚生年金+(介護保険)で折半分年間160千弱の会社負担が生じる。当然国の政策により時給は上がる。さらに年間130万働くと200千の負担額になる。以前の会社でも10名くらいはこのラインのアルバイトがいたので年間2000千以上の経費負担増になる。当然他のスタッフの月給や時給も上がるので人件費負担額はどんどん膨れる。時給アップと社会保険負担増で以前の会社だと、単純に2店舗分以上の人件費増になる。

中小小売業が、この人件費増とどう戦っていくのか?円安は続き海外生産のコストは上がり、出店条件も厳しくなる。小売業で販売力を落とすことはできない。力のある企業に飲まれるしかないのだろうか?

■今日のBGM

商売の寿命

小売業界でいろんな会社を見てきたし、在籍してきた。さらに立ち上げた。そしていろんな会社の浮沈を見てきた。

商売の成功をどう計るかはわからない。儲けは少なくても長く続く商売は成功とするのかもしれない。ただ商売は、商品の変化や、顧客の変化、商売している場所の変化でも情勢が変わってくる。

まず、客層の幅を狭めた商売は長く続いていない。在籍していた商業施設のビブレやマルイはヤングターゲットで商売をしていた。ヤング層のブランドもそうだが、流れが短サイクルで変化する。DC(デザイナー&キャラクター)ブランドで集客して、その後109ブランドに移っていったヤング層のトレンドの変化に、売場は追いつけなかった。さらにそのターゲットの会社も浮き沈みが目まぐるしかった。それでもマルイはクレジット商売が実を結び、現在は小売より金融系の会社になっている。その当時のブランドを生み出していた会社も浮かんでは消えていった。つまり、流れが速いヤングターゲットの商売は続きにくく、寿命は短い。例外としては、当時の固定客の年代層と共に年を取って存在するブランドは続いている。販売の場所も百貨店、路面店に移っている。堅く商売はしているが規模はずいぶん小さくなっている。ただすでにヤングターゲットではない。

小売業で堅調に生き残っているのは、ヤングミセスからミセスゾーンが得意な大手アパレルなのかもしれない。ヤングが賑わったときはそれなりにそのターゲットのブランドを開発し、SCが全盛になってからもショップを立ち上げた。各社に共通するところは各年代のたくさんのブランドを持っていることだと思う。それと同様の流れになってきている企業は、ティーンズヤングからヤングミセスゾーンまで幅広くショップを持っているアダストリアやパルグループがあげられる。各ターゲットのそれぞれのシーンに対応するショップも開発している。

広い客層をもってシェアを確保していっている企業も成功パターンかもしれない。昔からよく言われる「高感度値頃」を追求している企業で、衣料系ではユニクロ、住関連ではニトリ、複合的には無印良品などがあげられる。現状はフルターゲットに適合しており、特に低価格ゾーンをボリュームとしているが、今後の社会情勢で若干の変動要素もある。

商品のカテゴリーの専門店は以前にブログで記したように、そのカテゴリーの大きさとカテゴリーの動向を慎重に図る必要がある。そしてそのシェア率を常に意識するべきだ。今回のジーンズカジュアル業界の崩壊のような例もある。カテゴリーの大きさとシェアで寿命が見えてくる。

地元に根付いた専門店は、常に商品のトレンド変化や、商圏変化、客層変化を気にする必要がある。こういった専門店は突出した人物がマネジメントしているケースが多い。その意志がどれだけ引き継がれるか、熱意がどれだけ続くかがポイントになる。

企業の存続は、どうやって前に進みながら進化させていけるかということだと思うが、近年は、感性よりも組織力、データ処理などのシステム力とその分析力のほうが商売の寿命に大きな影響を与えるのではないかと思ってしまう。

まだまだ、過去の慣例や感情で方向性を決めている企業が多そうだが・・・

■今日のBGM

モール(RSC)になくなってきた「わざわざ感」あるテナント

「客層が2極化し、中間層が減っている」と常々書いている。20年位前から郊外モール(RSC)がどんどん建設され、GMSにとって代わってSCの中心になっていった。RSCとは当然広域からの集客を狙って、車で行ける「手の届きやすい贅沢な場所」だったのが、近年の開発ラッシュで「わざわざ感」がなくなり、狭商圏化され、まさにGMSが大きくなっただけの商業施設になってしまっている。大都市郊外では完全にオーバーストア化しており、なくなってしまったGMSと同じ道をたどっているように見える。テナント揃えも「ユニクロ」「GU」「無印」「ABCマート」などの同じようなラインナップになってきた。

本来、RSCにはどんな客層が来てほしかったのだろうか。業態のフォーマットを見ると価格はアッパー、モデレートで、商品の特色はトレンドとホット商品と区分されている。

多少、各ブランドのニュアンスは違うが、RSCから減りつつあるテナントがいくつかある。

ユニクロがやっている「プラステ」というショップは、以前からずっと気にしていて、自分の店の出店時にはSCに「あればいいな」と思っていた。いろんなSCを見て回るときもあるかないかチェックしていた。客層も商品も売り方もきちんと徹底されており、晩期にもそこまでセールを打ち出さないし、引っ張らなかった。近年、RSC特にイオン系から消えてきている。店舗数は現在43店舗で2020年に102店舗から大幅に減っている。イオン系は6店舗、ららぽーとは2店舗となっている。このターゲット客層は広いので、おそらく一番難しくなってきたゾーンなのかもしれない。

「ナチュラルビューティベーシック」(以下NBB)もRSCスタート時はほぼ全店のラインナップにあったショップだ。RSCがスタート当初から旧サンエーインターナショナルでは「&バイPD」と並んでラインナップしたかったブランドで、ほぼ一等地にレイアウトされていた。販売代行をしていた時、このブランドを2店舗運営していた。現在もイオン系12店舗、ららぽーと5店舗あるが、駅ビル型にシフトしているように感じる。ターゲット客層も当時はヤングかヤングミセスか見えにくかったが、現状は20~30代に変化しており、若返っているように感じる。

この2店舗はRSCへの出店はストップしているようにも感じられる。さらにRSCのテナントの中ではトレンドにシフトしているセレクト系のショップも、間違いなく出店するSCを選んでいる。

トレンドリーダーやSCイメージを持ち上げるようなショップがどんどん消えていき、本来あるべきショップリーシングをしているRSCは本当に少なくなってきている。当然経費高騰で賃料も大きく下げられなくなってくると、多くのSCは似たようなゾーニングになってくる。さらにキーテナント(イオンモールでいうとGMSのイオン)もSM以外は集客の要にはなっておらず、どんどん魅力が薄れてきている。

本当に、そのSCのカギを握るテナントがなくなってきているように感じる。

■今日のBGM

時給1500円にできない企業は退出する!払えない企業はダメ!

サントリーの新浪社長の言葉が、ずっとひっかかっている。10月18日経済同友会の記者発表で話した言葉だ。もう会社を経営していないので、全く関係ない立場だが、乱暴な発言だと思う。どういう意図があったのだろうか。奮起を促したのだろうか?中小企業は不要なのだろうか?このブログでも、この時給政策については書いてきた。

2020年代の時給1500円は理論的にも無理だと経済評論家も言っているし、単純に今後の毎年の必要賃上げ率を考えても難しい。さらに会社数の99%を占め、労働者数70%を占める中小企業の約半数が下請企業の現状を考えれば、この発言の突き放し方は厳しい。当然、仕組みをお互いに考え、それが可能な社会にしようという気持ちだろうが、きつい言葉に聞こえる。さらに、時給1500円払えない会社の従業員は、時給1500円以上の企業に移ればいいと言っているが、そのハードルは高くないだろうか。努力して勉強し、語学も堪能な新浪氏のような人間ばかりではない。

先日、ワイドショーでどうやったら時給が上げられるかという質問があった。経済評論家はシステム投資をして省力化を図るべきだというようなことを言っていた。国が投資を手伝ってくれるのか?省力化で削減されたスタッフは他の企業に移れるのか?ただその評論家も2020年代時給1500円は不可能との見解を持っていた。

優秀な新浪氏はサントリーに移る前は、ローソンの社長だった。少しコンビニについて調べてみた。コンビニは周知のとおり、直営店は少なく、FCのオーナーが運営している。所謂中小企業の運営となっている。

ローソンのFCにはいくつかのパターンがあるが一般的な条件で計算してみた。年間フランチャイジー収入は最低1860万(月度155万)となっている。本部にチャージする金額が荒利300万以下は45%、300~450万は70%、450万超は60%となっている。具体的な数字にすると、ローソンの一般的売上日販は55万(ずいぶん上がった・・)で、月度は1650万となる。2023年売上総利益率は31.5%と決算で発表しているので、平均的な店の総利益額は約520万になる。上記の本部にチャージする額を計算すると282万になる。つまり粗利益520万―チャージ料282万=238万が収入と考えられる。経費は電気代のみ折半で他の事務経費はFC負担となっている。大きな経費の人件費だがまずコンビニの従業員数は平均で15名くらいのようだ。令和元年の経産省のコンビニアンケ―ト調査のデータを見て、簡単に分析すると平均で1人当たり勤務は週3.5日、1日5時間くらいとなる。そうすると月間約70時間の労働となる。時給1000円で13人が70時間働くと91万円となり、残り2人をオーナー夫妻と想定すれば147万のオーナー収入となる。ただし電気代の折半分やその他の経費を考えると夫婦で120万くらいの収入が見えてくる。(いろんな雑用などを考えてそれが納得できる金額かどうかはわからない。)あくまでも私自身の想定であって、現実はもっと高収入なのかもしれない。

さて、最低賃金が時給1500円になったとして、売上や利益が変わらなければ、スタッフの人件費は137万になり、オーナー夫婦の収入は80万前後になってくる。当然時給が上がれば、社保加入者も増えてくるし、ベテラン従業員は当然1500円以上の時給になるので、それ以上の人件費は必要になり、オーナーの収入はさらに減っていく。

インフレで商環境は当然変化するだろうが、苦しくなるのは間違いない。新浪氏の発言内容では、コンビニのFCの企業は退出することになる。ローソンは、天下の三菱商事の子会社なので、存続に問題はないのだろうか?

中小企業には、数字や、仕組み、システムだけではなかなかクリアできない問題が多い。一度、新浪氏もどこかのローソンのFCのオーナーをやってみてほしい。

■今日のBGM

ちょっと記憶に残る売り場

先月営業終了した、福岡のマリノアシティで撤去作業中の写真が送付された。懐かしい写真が多かったが、その写真の中にレジバックにディスプレイした、簡単に作ったアルバムジャケットを集めたものがあった。

店の内装を考える時、少しでもインパクトが必要だと思っている。やっていた店はどちらかというとボリュームプライス志向の店で、プレステージの高い店のように内装コストもかけられない状況でもあった。床はフローリングもできないし、照明も埋め込めない。比較的固定什器を多くしたが、基本稼働什器(すぐ動かせる)中心での内装になってしまう。でも売場をチープに見せたくないのでイメージを作ろうと思っていた。1号店からそう考えていて、店のイメージを音楽で表現していった。在任中はすべての店で音楽のテーマを見せていた。レジバックにはテーマに沿ったアルバムジャケットを集め、流せる余裕のある店はモニターでDVDを流していた。(当然JASRACに使用料は支払っていた。)

商品のインパクトが強い店は、そのインパクトを店づくりでも表現する。それがグレード感だったり、商品のテーマだったりして、商品に合わせて店もデザインする。当然そういう居心地のいい空間にはコストもかかる。逆に商品もボリュームゾーンでいろんなターゲット、客層の店は、画一的なイメージで売場を変えやすくするために可動式の什器が多くなる。当然コストも抑えなければならない。さらにチェーン店にしないと商品原価も抑えられないので、当然多店舗化を目指す。そうなると同一内装でイメージも同一化させる。内装を同一化させることで什器も統一でき、什器も作りこみすることで内装コストも下げていける。内装コストは出店経費で一番大きい。

立ち上げた会社のビジネスモデルを考えた時、まずは軌道に乗せること、その後は60店舗くらいまで広げることを念頭に置いた。そこまでの規模なら、エリアに多店舗出ることはないので、内装はローコストで少しインパクトあるものにしたいと思っていた。結果的にそれが正しかったのかどうかはわからないが、各エリアで面白い内装で店舗イメージが作れたとは思っている。ただ店舗数が増えるにしたがって、その意図が店長レベルまで伝わっていかなったことは反省材料ではあった。

各店でアルバムのジャケットを見てくれたり、DVDやBGMを聞いて、感想を言ったり質問を投げかけられたりすることが多かったようだ。スタッフも好きなジャンルの音楽でなければ当然興味はない。ただ、お客様には少なからずインパクトは与えられたように思う。

面白いエピソードがある。岐阜県の店でDVDやアルバムジャケットを見ていたお客様が、店のスタッフに例によって質問した後、「名古屋の店はシカゴ(アメリカのロックバンド)だったね。」と言って帰っていったらしい。

ちょっと記憶に残る売場ではあったようだ。

■今日のBGM

ジーンズカジュアル業界

小売業の数字を毎月見ていて、気になるのは「ライトオン」や「マックハウス」というようなジーンズを核としたカジュアルショップの数字の低迷だ。もともとはジーンズカジュアルを中心に販売してきたが、近年はレディスやキッズに幅を広げており、呼称としてジーンズカジュアル業界が正しいのかどうかわからない。

上記上場2社の数字だが、ライトオンは8月決算期で売上は389億前後、前年比82.8%、既存前年比87.0%、マックハウスは8月上期で売上前年比80.6%、既存前年比91.8%、第一四半期の予測では通期売上135億、前年比は87.6%と発表している。ちなみに公表売上のピークがライトオンは2007年度1067億、マックハウス2009年567億となっている。ともにピーク期の40%に届いていない。当期の営業利益予測もライトオン-24億(第3四半期時点の会社予測)、マックハウス-8.9億(第一四半期での会社予測)となっており、現状の数字状況から見ると、さらに赤字幅は広がっていくと思われる。ライトオンは2019年から、マックハウスは2018年から、コロナの影響もあり営業赤字は続いている。

数字を見て気になっているので、SCに行くときは必ず売場は見ている。ライトオンはあまり動きがなく、積極的な商売をしてないような気がする。先週見た時も、売場は、ほぼ秋の体制になっていて、残暑厳しい中、なかなかお客様を呼び込めないような状況だった。前回ライトオンについてのブログコメントで、利益のダウンが大きかったので、大幅な在庫処理をしたと書いたのだが、その商品はどこで売っているのだろうか?8月、9月と完全に「売り」の体制は見えない。会社として何かあるのかもしれない。マックハウスはしばらく見てないが以前見た時は、メンズ、ジーンズの見え方を弱めて、提携したワールドのハッシュアッシュの打ち出しを強めていた。カジュアルショップへの移行を早めたいように感じた。

もうジーンズカジュアルは1つのカテゴリーではなく、カジュアルウェアに飲み込まれている。ユニクロやGUで、機能的で買いやすい値段のジーンズが、カジュアルアイテムの1つとして完全に浸透している。アメカジブームやインポートデニムブームなどを経て従来のコア客層は、よりマスから離れていっている。少しこだわりを持つ客層が「Bshop」系のセレクト店に流れているような状況だと思う。

ライトオンやマックハウスの失敗は何か?同一業態を拡大し続けたことにあるかもしれない。パルもアダストリアも、もとはジーンズカジュアルの店でスタートしている。その将来性をどう読むかだが、スタート段階で客層の幅を広げていくべきだった。客層の幅に応じてジーンズ以外の提案もすべきだった。さらにライトオンはイオンモールとともに拡大し、売場も大きくなり、売場の焦点がぼやけてきた。ジーンズの特性だけでは競争が激しいカジュアル路線では戦えなかった。今はその売り場の大きさが一番のネックになっている。マックハウスは、逆にイオンモールに乗らなかったことが拡大できなかった大きな要因だと思う。

今の流れを引き戻すのは非常に厳しい。マックハウスは親会社がチヨダであり、まだ延命方法は十分考えられる。(チヨダもイオンモールに乗らなかったのでABCマートと大きく差がついたが・・・)ライトオンの今期の10月の決算発表には注目したいが、自力以外での再生する方法も模索する必要がありそうな気がする。もうしているか・・・

■今日のBGM

セルフレジの功罪

近隣のSMはどんどんセルフレジに変わっている。よく使っているヤオコーとイオンに限定して推測でのレジ台数だが、曜日によって変化はあるが、平日だとヤオコーは有人レジ5台前後、セルフレジ20台前後の体制、イオンモール内のイオンは有人レジが10台前後、セルフレジ、レジゴー各20台前後の体制のようだ。近隣その他のSMもセルフレジへの移行を進めている。SMはレジ対応にかかる人件費は非常に大きく、セルフレジへの移行は急ピッチになっている。個人的にはイオンではレジゴーで対応しており、スムーズにレジ対応が終わるのと、買い物金額がわかるので便利に使っている。ネットでレジゴーの記事を読んだが、ある程度万引き防止のシステムはあり、さらに子供たちが楽しんでやっているらしく客単価も下がっていないらしい。ちなみにその他の業種でもユニクロ、GU、ダイソーなどがセルフレジをスタートさせている。

ここからはあくまでも私感で書く。SMでは短時間労働者への待遇改善(時給、社保など)による負担が大きくなり、人件費問題は非常に大きいと思う。気になるのは、セルフレジ化により人員を削減しただけでなく、その人員分をどう売場に反映させているのかということだ。SMへの買い物は午前中行くことが多いが、店によって品揃えの充実度が全く違う。特に生鮮品やデイリー食品などの必要な商品の品揃えに差が大きい。つまり、人を減らして経費調整がわかる店と、レジ要員を減らして売場対応を強化している店の差が非常に大きいように感じられる。当然後者のほうが好感度は高いが・・・

結局、経費削減だけでは、効果は短期間になってしまい、逆に従来の営業面にはあまり効果がでてこない。結果として、次年度はさらに何だかの経費削減していかねばならない状況が続く。その経費削減効果を次のステップのプラスに持っていけるかどうかが課題になるのではないかと思う。上記した午前中の品揃えができていないSMが、そのプラス要因で、生鮮売場やデイリー食品が充実したらお客様の信頼感は増す。次につながる。個店でいうと、厳しい店が賃料を下げてもらっても、その削減分は改善するが、削減分をプラスに転じさせなければ、結局は続かないのと同様のことになる。そのプラス要因で他のマイナスポイントを改善していくこと、さらにプラスになる何かを見つけることが大事だと思う。

本当によく言われることだけど、経費を削減して利益が出るのは一過性のことで、そのメリットを生かしながら、営業面でプラスになる戦略を考えていくことが重要なことだ。経費はマイナスすれば0以下にはならない。営業のプラスはずっと青天井かもしれない。

余談だが、先日食品を買いに行く途中にホームセンターに立ち寄った。欲しい商品の形状がわからず困っていて、担当の従業員を呼んでもらった。サイズが明確でなかったので買えなかったが、その女性従業員の素晴らしい笑顔と対応で、あまり利用していないホームセンターだったが「また行こう。」という気になった。

無人化もいいけど「人の力」もまだまだ大きい。

■今日のBGM

店長は、まず売上予算を達成させる

巷で話題の兵庫県知事のニュースを見るたびに、公務員の仕事は結果が見えにくいのだなと感じる。小売業に限らず、民間の企業は「数字」が結果になる。公務員の仕事はなかなか数字化できない。やはり、「えらそう」「贈賄強要」「各種叱責」にはわかりやすい数字評価ではなく、ほとんどが「気持ち」でのやり取りになっている。

ここで「パワハラ」論争をするつもりではないが、小売業を考えると会社が求める「数値」への取り組み次第で上下関係の軋轢は変化するのではないかと思う。

小売業で店長に求められる数値責任は、まず「売上」。仕入れ権限があれば、次に「在庫」。あとは「売上」と「在庫」に関係するが、「利益」。それぞれ与えられた予算に対しての「予算比」、前年数字に対しての「前年比」。つまりすべて相関関係にはある「売上」「在庫」「利益」が数値責任になる。この与えられた予算数値と実績で評価は決まる。ただすべて数値は「売上」が起因となる。利益率は高くても売上総利益高は「売上×利益率」だ。「売上」が伸びれば、必然的に「在庫」は減る。つまり「売上」「在庫」「利益」は相関関係にある。それを考えれば、間違いなく店長の一番の職務は「売上」予算を達成させることだ。

「いい売場」とはどんな売場なのだろうか?答えはたくさんありそうだが、やはり「売れている売場」だと思う。お客様が買ってくれる売場だから、売れている。数ある店で立ち寄って買い物するということは引き付ける「何か」がなくてはならない。

売れていない店をどう立て直すか?私自身は常に値段に訴えた。売れない商品は値段を下げてなくす。いろんな見方はあるが、不稼働商品のセール(値段を下げる)をやることで、お客様の目は売場に向けられる。興味を持たれると、次のステップにつながる事が多い。再来店があったり、他の商品も手に取ってもらえるようになる。ただその時必要なことは、必ず内容を吟味して数値計画を立案し、売上予算は絶対クリアさせることだ。同時に気にすることは、セールで売上を取りながら、在庫はできるだけ減らしていく。さらにセール以外の売場を徹底的に整理する。売れてくるとスタッフも動きが軽くなる。セール以外でも売れ筋が見えてくる。

数値計画で利益率を考えてみる。平月売上3000千、利益率45%、在庫10000千の店で、不稼働商品1000千を半額で販売したとする。完売して売上は3500千と想定する。その月度末在庫を10000千で設定すれば、仕入れ額は4000千、原価50%で仕入すれば利益率は44.4%と-0.6%しかダウンしない。つまり、内容を吟味して数値計画を整合できれば大きな傷は負わない。

在庫を減らしてさえいれば、売上数値が安定してくれば仕入れが活性化するので利益は戻ってくる。売上が改善してくれば、売場スタッフとの交流も円滑になる。売場に笑顔が出てくる。実際、売り上げが好調な店は、売場の雰囲気は明るい。さらに上司からも、性格的に合わなくても、強く言われなくなる。

小売業では、売上数値さえ安定させれば、パワハラも軽減される。

・・・何度も経験してきた。

■今日のBGM

商品回転率が低い企業はリスクが隠れている

商品回転率を上げることが商売の基本だと、常々言っているし、当然だと思っている。何度も書いてきたが、「商品を仕入れて、それを売って、その金で支払う」が商売の基本だからだ。企業が大きくなってくると、その基本が見えなくなる。商品回転率が低い企業はリスクが隠れていると思っている。

ライトオンの上期の決算短信を見ていて、やはり何かが隠れていたと思った。くれぐれも今回はライトオンの業績に意見する物でなく、こういうことがあったのではないかという個人的な推測を記す物であり、個人の感想と思ってほしい。売価還元法で原価を算出している旨あったので簡単な計算方法で数字を出してみた。

前期末、原価在庫10479(百万)で、今上期末は原価在庫8326となっており、原価在庫の前年比は79.5%、売価在庫は原価率から逆算すると前年差は-5243と大幅の削減をしている。ちなみに上期の売上は21298(百万)で売上前年比は86.6%となっている。回転率は在庫が減ったことで前年が半期で1.12回転、今年が1.26回転と改善している。これでも回転率は年間3回転しない。年3回転することは4カ月で商品が売れてなくなるということなのだが、そこまで回っていない。付け加えるとおそらく支払いは4か月以内だと思う。

今期首の売価在庫は(単純に原価率で計算する)20191(百万)となり、同様に上期末の売価在庫は14948となる。売上は21298なので、値段を下げなければ、計算式でいうと期首在庫(20191)-売上(21298)+仕入売価=14948となり仕入売価は16055となる。これを所謂5掛けで入れたとすると仕入原価は8027となり、そのまま計算すると利益率は48.9%になる。ただ実際には上期利益率は44.3%になっている。概算してみたが仕入れを原価50%でして(所謂5掛け)、さらに約3400(百万)の商品がなくなることで、公表されている利益率44.3%になる。簡単にいうと6800(百万)の商品評価を半額処分すれば公表数字が導き出される。

どうしたかはわからない。ただ34億円の金額分だけ商品の評価を落としたとは考えられる。その他の原因もあるかもしれない。評価を落として販売したとしても売上前年比は86.6という数字だ。評価ダウンした商品が売れたとしても、既存の商品は売れてない。逆に評価を落とした商品が売れてないのかもしれない。

再度言うが、今回はライトオンの業績について言及する物ではない。あくまでも私自身の主観での数字で、現実とは違っているかもしれない。ただこの数字から、商品回転率の悪い企業は何だかの負の要素があるのではないかと考えられるということだ。悪く考えれば、在庫高で決算数字を変えることができる。昔は決算セールという名の下で売上を稼ぎ、在庫も減らしてきた。決算が終わって在庫を減らすということは正確な決算だったのかとも考えられる。管理体制も疑われる。回転率の悪化は、営業面だけでのキャッシュフローは悪化すると思われるし、利益率を優先した在庫評価と言われても仕方ない。

商品の価値はお客様が評価し、売る側が決める商品評価(売価)ではない。お客様、つまり市場が決めるものだ。そして商品回転率が悪いということは、商品がお客様に評価されていないと認識するべきだと思う。

■今日のBGM(まだトノバンがあった。)

ライトオンは立て直せるか? 2

前回、ライトオンの状況を書いたのだが、あまりに傍観者的な内容だったかなと感じていた。「どうするべきか?」「立て直すには?」が欠けているとは思っていた。ただ現状では非常に難しい問題になっているのではと思う。

もう、所謂全国チェーンのジーンズ専門店(?)はライトオンとマックハウスぐらいだが年々ダウントレンドで、現状のMDも昔のジーンズ専門店ではない。アダストリアもアーバンリサーチも、もともとはジーンズ専門店からのスタートだが、方向転換して今があるのは、「先を見る力」があったと言わざるを得ない。ジーンズメイトも一時株主変更時、攻勢をかけたが失敗した。いろいろ考えても、いろんなハードルが高すぎて難しいという結論になる。

まだまだ地方では頑張っているジーンズ専門店もあるが、どうしてもブランドのエリア分断があり、ナショナルチェーンにはなれない。高知の「ジーンズファクトリー」や岡山、徳島の「ビックアメリカンショップ」、旧三信衣料系のジーンズショップなどエリアに根付いて頑張ってはいる。多くはデニムラインと「ダントン」「オーシバル」などBshop系の品揃え、SCなどのインショップでは「ノースフェイス」や「チャムス」などわかりやすいブランドのミックスで確実に運営されている。ブランドを卸している会社が、エリアを考えて専門店を選んでおり、なかなか全国チェーンには品揃えの壁がある。

厳しくなった会社が抜け出すには、管理主導で動くしかない。おそらく過去営業主導で動いて内容が悪化してきたと思う。そういう意味では、各数値の適正化を急ぐ必要がある。ライトオンの前年度実績では1店舗あたり年間売上は1.26億、月度売上約10.5百万、売価在庫は平均54百万となっている。今の売上を維持して回転率を年間3回転まで上げるとして売価在庫は42百万となる。その在庫で運営するとすれば、坪在庫を最大500千として80~100坪を適正坪数にするべきだと思う。現状の坪数は決算書でもわからないのだが、明らかに大型化が進んでいる。大型化により売り上げ効率が悪化し、さらに販売員の守備範囲が広くなっている。ジーニングカジュアルを続けるなら、接客の要素を上げるためにも販売員の密度は高いほうがいい。坪数の削減はデベロッパーとの交渉が難しいし、再度売場投資も発生するのでハードルは高いが、間違いなく最優先で整理すべき事項だと思う。

MDについては、頑張っている地方の専門店と同じMDは全国チェーンではできないだろうし、どうすればいいか言及できないが、テイストをジーニングカジュアルで進めるなら、もう一度デニムの品揃えや集積可能なトレンドとなるブランドを整理して、そのコーナーを確立させるべきだと思う。20~30坪で例えば重厚なウッディベースの内装でショップインショップ化を図ればどうだろう。その他の面積でキッズ含めた衣料品を買いやすい値段で品揃えする。坪数縮小でボリュームも出るし、イメージも固まる。売場内にインパクトある1角を作ることで売り場も締まってくる。

他人事で書いたが、言うだけならだれでもできる。金をかけて軌道修正するにはリスクも大きい。ただ現状の数字を見ていると、小売りとしての商売の基本と大きく乖離しているように思う。繰り返すようだが、営業面から対策を考えずに、管理面(数値面)からあるべき売場を考えたほうがいい。営業面から考えると失敗を重ねるだけのような気がする。売上計画より在庫計画、利益計画を重視して対策を立ててみてほしい。

今後も数字の流れは厳しいと思う。変革に注目している。

■今日のBGM

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