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店と本部

先日、ネットで「ユニクロは給与が高く優秀な人材が入社するが、離職率が高い。」という動画を見た。「業務内容が幅広く、仕事量が増え、仕事とプライベートのバランスが悪い。」というハードワークに加え、「なかなか本社勤務になれず、キャリアが停滞する」というのが大きな理由のようだ。

小売業ではすべてが当たり前のことで、これが理由になること自体が不思議なことだと思う。現場では、「売上管理や、在庫管理、人事管理など業務が多岐にわたっており、仕事量が多すぎる」とのことだ。どんな小さな小売業でも店をマネジメントするのは普通のことだ。土日中心の商売なので学生時代とは生活パターンが変わり、友人関係とのプライベートな付き合いも厳しくなるのも当たり前のことだ。それを理解せずに、給与面の優遇のみ考えて入社したのだろうか?それが問題なら、それを理解せず入社した社員の責任ではないか?

ここで、取り上げたいのは、「なかなか本社勤務になれず、キャリアが停滞する」という理由についてになる。

何故、本社勤務になれなければキャリアは停滞するのだろうか?どうして、店より本社がポジションとして上位にあるのだろうか?「ユニクロは本社勤務の人数が少ないので、なかなか本社勤務になれない」ともコメントしていたが、小売業では本社勤務の人数が少ない企業のほうが賢明な企業だ。一番重要なのは店であり、店で稼ぐ売上になる。近年はネットの売上も大きくなっているが、あくまでも店の売上が営業数値の大部分を占める。

では、なぜ本部で仕事をしたいのだろうか?商品部に行ってバイヤーやマーチャンダイザーになりたいから?営業部に行って、営業政策や販促活動、演出活動をしたいから?すべて本社主導で動いていると勘違いしている。今は厳しい状況下にあるが、イトーヨーカドーの組織図は、一番上がお客様で、その下がお取引先、株主、地域社会となっている。社内組織で最も上位にあるのが営業店で、一番下に取締役会がある。店がお客様と対峙し、売上を計上することで商売は動いていくことを再認識させられる。

私事になるが、量販店に入社して7年で5店舗売場を経験し、その後商品部へ異動した。そのころ東京本部は青山一丁目にあり、表面上はキャリアとしていいステップだと見える。その後本部と店の間にはいろんな問題もあり、少し精神的に厳しい状況になった。とかく、店と本部はスムーズに事が進むことが少ない。結局6年近く在籍し、希望して再び店勤務になった。その後はすぐ体調も改善し、楽しく仕事を続けたし営業数字も順調に達成させることができた。個人のキャリアとしては30代で店長職になり、複数店店長を経て40代で営業部長も経験した。最後の本部在籍時も本部要員は減らし、店中心に考えて動いたつもりだ。すべて本部から店への異動が大きな転機になった。

「店」と「本部」という分け方も正解なのかわからないが、規模が大きくなればなるほど両者には大きな壁があるような気がする。おそらくどの小売業の会社も「本部」が「店」の上位にあるように見えている。当然経営者がいる「本部」が対外的には重要かもしれないが、「店」が企業の収益を計上している。個人的に小売業の組織は、経営職を除くと、ほぼ「店」所属の体制が一番望ましいと思っている。営業部長も商品部長も事業部長も「店」の店長を兼任すればいいと思う(その店には力量のあるNo2を配置すればいい)。管理系以外は大型店の所属で業務遂行できるのではないだろうか。そうすることによって、販売計画や戦略商品の成功事例や失敗要因をすぐに検証でき、各店にフィードバックもできる。つまり、政策が実績に結び付いているかが、いち早く確認できる。そして、店と本部の連動がスムーズになる。少し極論かもしれないが、「Plan- Do -See」が迅速に進むことは間違いない。

「店」の動き方や、現場の状況がわからない「本部」は、特に小売業においては全く必要ない。つまり「本部勤務になれば、キャリアが停滞する」企業のほうが望ましいと思う。

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イトーヨーカドー、アダストリアからの調達終了

8月14日の日経新聞に「ヨーカ堂、今期秋冬商品を持ってアダストリアからの商品調達を打ち切る。」という記事があった。「ファウンドグッド」を続けないということになり、今後は経営資源を食品スーパー(SM)に集中するということのようだ。

「ファウンドグッド」に関してはこのブログでスタート期に3度(2024年2.3.4月)書いており、今年も6月に書いている。再度読み直したのだが、立ち上げ期から成功を危惧しており、最近も「数字は上向いてないように見える」という内容となっている。成功するには、お互いの資金を出し合って、会社を立ち上げるべきだったと思っていた。

新聞記事の内容から察すると、商品のリスク、内装負担、販売員はイトーヨーカドー(IY)にあったようだ。この条件は、IYからの強い協力要請の結果だと思う。「残った商品は26年以降も販売は続ける」と記事にあるように、商品リスクがIYにあることがわかる。

現状、IYのセブン&アイホールディングスでの立ち位置が厳しくなっており、IYの株式を売却する話も出てきている。その流れで、IYはスーパーマーケット(SM)事業に集中する方向に動いている。IYとしては、「ファウンドグッド」事業は、上記したようにほぼリスクを負担しており、短期的に黒字化のめどが立たない事業として結論付け、事業撤退を決定したということだと思う。数字が順調でなければIYとすれば続けるメリットはない。データ分析が得意な、現実的な会社であるIYらしい結論だ。

「ファウンドグッド」は何店舗か見に行ったが、同じIYでも立地が大きく異なる。古いIYもあるしGMSとしての店もある。さらには大型SC(アリオ)内にあるIYもある。アダストリアにとっては、経験したことのないGMSの客層だったはずだ。MDを進めてきたアダストリアのスタッフには、簡単には対応はできなかったと思う。おそらく大型モール内のGMSをイメージしてのMDだったと思うが、それでは対応できない店が多すぎた。プライスラインもユニクロよりも若干高めに設定されており、競合にも勝てていない。さらに販売スタッフの数も教育も足らなかった。ユニクロは1店舗当たりのスタッフは最低40~50名と聞くが、アリオ内の大型物件でも5~10名程度ではなかっただろうか。ユニクロやGUを競合と考えていたのであれば、商品面、販売体制面でも完全に見劣りしていた。何度か見たアリオ川口内でのショップは、オープン期より縮小されており、厳しい状況がうかがえた。

アダストリアにとっては数字としては大きなマイナスはないが、従来の販売チャネル以外での失敗は社内外には大きい痛手でとなったのではないか。どちらかというと顧客や市場をよく研究してファッション業界では手堅く、偏差値の高い企業のイメージがあったのだが、少し取り組みが甘かったイメージが残る。企業として多角化を上げており、マルチカテゴリー戦略を打ち出している企業としては少し気にかかるマイナスになった。

IYの今後の非食品の売場は、今取り組んでいる商品リスクが小さい量販店ブランドのコーナー化を増やし、さらには大きなマイナスが出ないような条件(固定賃料は低く設定し、売上歩率での契約など)で、テナント出店にもシフトしていくと思われる。「しまむら」との組み合わせも面白いし、好立地なら「無印良品」にすべて任せるというリーシングもある。無印の近年の出店は生活感のある場所への出店が増えているように思う。

40年以上小売業に携わってきて、「イトーヨーカドー」と「アダストリア」は私にとって優秀な会社のイメージしかない。量販店時代は取引先各社からイトーヨーカドーの優れた商品戦略、在庫戦略を聞き、その後アリオ立ち上げ時のコンサルに加わった時も企業体質のすごさを感じた。ビブレ在籍時や小売業経営者の時にはアダストリアには大変お世話になった。その2社が取り組んでも結果が出なかった。

間違いなく、客層のバラツキがあるGMSの非食品売場は成り立たない。この結論はここでも実証されている。

■今日のBGM

競合激化するSM(スーパーマーケット)業界

再三、このブログで取り上げているが、国内需要は高齢化によって必需品中心にならざるを得ない状況にある。現状国内の60才以上人口構成比は35.4%であり、30年前の倍の構成比になっており、その人口は43800(千)人になっている。まだ働ける年齢とはいえ、現役ではなくなりつつある世代になる。当然、ファッション関連やビジネス志向の商品は伸びるわけはなく、食品を中心に必需品の購買ウエイトが上がってくる。その流れ通り、SM業界の数字は堅実に伸びている。6月のスーパー全体の売上は前年比104.2%と4カ月連続伸長となっている。

近隣にまたヤオコーができるようだ。駅前に昨年5月オープンしたばかりだ。新物件のオープンは来年6月となっている。ちなみに駅前物件と新物件の距離は500mくらいしかない。調べてみると駅近辺1km圏には、ヤオコーを含めて、マルエツ2店、コープ、ベルク、オーケーなど10店程度のSMがある。マルエツは500mくらいの距離に2店出店している。武蔵浦和駅前から2kmで浦和駅の商業集積があり、3Kmのところにイオンモール北戸田もある。そしてSMの密度は濃い。

おそらく、近隣2店舗出店は競合激化によるところだろうと思う。オーケーは近隣にあるが、オーケーも含めてロピアなど新興ディスカウントSMの進出に抵抗した結果かもしれない。マルエツの近隣の2店舗戦略も「競合に出店されるなら・・」という同様の結果だと思う。ただ今回の出店で一番ダメージを受けるのは300mも離れていないマルエツの1店舗になる。

地元民として、新物件は決していい場所だとは思えない。南側には学校が2校あり、その先にはベルクスやイオンモールがある。東側にはロッテの工場や2軍球場があり、その先は線路で商圏が分断されている。駅に向かっての東北側はマンション群だが、駅中心に商業集積があり、西側はマンションや住宅地になるが、SMのコープが近隣にある。さらに新物件は駅に向かうメインの道路に面しておらず、立ち寄りやすい場所ではない。

間違いなくSMの魅力だけでは、自社も含めて各社との食い合いになる。SM以外で何か引き付けるものが絶対必要になってくる。説明会の資料には述床面積9140㎡で3層、1階はピロティ(駐車場)と飲食、2階がヤオコー、3階が専門店となっている。この立地で、ある程度わざわざ性を高めるには間違いなく魅力ある専門店が必要になってくる。

昨年の駅前出店の時にもヤオコーの「テナントの弱さ」を指摘したが、今回の出店場所は、ますます集客力のあるテナントが必要になってくる。現状、武蔵浦和駅周辺には、ある程度の商業集積には必要な「ユニクロ」「無印良品」がない。これだけ高層マンションがあり、交通の利便性がいい立地でこの2店舗がないというのは、街自体に欠落があるようにも思えてくる。フロア構成上2社は難しいかもしれないが、この商業物件としての成功は、この2社へのリーシングにかかっていると思う。

国内の大型モール(RSC)はもうすでに停滞期に入っており、今後は、少しずつ淘汰されていくように思う。商圏に合わない大型化しすぎたRSCが多く、空床部分も目立ってきている。さらに、先述したように高齢化が進んでおり、以前のGMSのようなCSC(コミュニティSC)や、SMが中心のNSC(ネイバーフッドSC)といった利便性あるSCの時代に戻っていくと思う。その時には自店でのSMのMD力だけでなく、フル感性で日常的なテナントとの共存が絶対に必要になってくる。

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難しい靴業界で成長続けるABCマート

ここ数回ずっと在庫のことを書いてきた。自分で商売するときは「在庫を持たない」商売をしようと思っていた。過去小売りの仕事をしてきて「ジーンズカジュアル」と「靴」は在庫を持って商売しているイメージしかなかった。両カテゴリーに言えることは、サイズが細かいということになる。細かなサイズに合わせて在庫を持てば当然在庫は増える。中心サイズがなくならないように多く持つと1品番当たりの在庫は増えていく。さらに定番的な商品が多く、値段を打ち出しにくい。

ビブレの店長時代、店長は自主直営売場の数値責任を持っていた。当然各売場には、仕入れ権限のある売場の責任者がいるが、MD計画、数値計画は店長が確認する。一番利益面でわかりにくかったのが靴業種だった。サイズが多岐にわたり在庫も多くなる状況はジーンズと同様だが、ジーンズの売場はトップス、アウターでの調整ができる。靴は皮革とケミカル、スポーツなどに分かれるが、調整できるアイテムは少ない。取引先との商売条件も多くあり(消化、委託など)買い取り商材は大きな値下げが発生することも多く、利益率が高い状況で安定することがなかった。難しい業種だった。

ジーンズのナショナルチェーンはどんどん厳しくなり、全国チェーン展開の専門店は近年のライトオン、マックハウスの事業譲渡もあり、ビジネスとしては成り立ちにくくなってきている。一方靴業界も同様でありアメリカ屋靴店やマルトミなどの倒産例もあり、特にカジュアル志向が強くなった現状では靴業界も淘汰されようとしているように見える。そういう状況下、靴業界のABCマート、チヨダ、ジーフットの大手3社の決算数字をチェックしてみた。

売上面ではABCマートの絶好調ぶりが群を抜く。2025年決算で3772億計上されておりコロナ期以前の数字から136.7%伸長している。チヨダはマックハウスを除外して調べてみた。売上数字は年々マイナス傾向で1000億企業だったのだが、2025年787億まで落ち込み、コロナ前からでは89.5%の売上となっている。ジーフットは2025年売上が600億でコロナ前からでは67.3%の状況となる。

利益率は2025年決算でABCマートは50.5%、チヨダは47.7%、ジーフットは44.1%。営業利益率はABCマート16.8%、チヨダ5.3%、ジーフット-1.3%となっている。チヨダはコロナ期以外黒字体質ではある。ちなみにジーフットは2023年に債務超過になっており、2025年親会社のイオンからの第3者割当で解消している。1店舗当たり売上はABCマート248(百万)、チヨダ87(百万)、ジーフット63(百万)と大きな差がある。

一番重視している回転率はABCマートが年2.04回転で数年はほぼ2回転前後。チヨダは年2.21回転と前期大幅改善しており、過去の1.8回転前後から良化している。ジーフットは年1.46回転で、過去の1.3回転前後からは改善しているがまだまだ低い。

完全にカジュアル化の波が大きく、スポーツブランドを打ち出すABCマートの出店戦略が成功しており、特に売場大型化がその要因にもなっている。近年主流になった大型モール(RSC)の全国拡大に併せて企業規模が拡大している。逆にチヨダは大型モールへの流れに乗れず、従来のGMSやSCでの商売を続けている。ジーフットは当然イオン系SC中心になるが、イオンGMS内(所謂ジャスコ)の靴売場も運営しているため、SC部分への出店が大きく出遅れた。さらに現状のGMS内の衣料服飾品の赤字体質が続けば、企業存続にも赤信号が灯る可能性もある。

在庫面に関して考えると、ABCマートは常にプライスダウンを打ち出し消化率を上げようとしている。売場内でも大きなセールコーナーを取っているし、いたるところで催事も見かける。アパレルを加えた売場が増えているのも在庫面の課題解消策かもしれない。それでもあと年0.5回転くらいのプラスは必要だと思う。チヨダも回転率の大幅上昇もあり、意識は高まっている。逆にジーフットは決算時に在庫課題はいつも上げているが、全く改善は見られない。

追随する企業のアゲインストの流れが大きく、対抗する企業がない状況下で、カジュアル志向が続けば「ABCマート」1強の流れは確定的になっている。

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商品の幅を広げると商売は難しくなる

ヴィレッジバンガードの経営状況の悪化は、商品の幅が広がりすぎた事が大きな引き金になっている。

少し商品の用語の説明をする。まず小さな商品単位を品目と呼ぶ。一般的にはアイテムと同義になる。品目が集まって品種になる。品種が集まって品群になる。例えば品群が婦人衣料、品種がスカート、品目がフレアスカートという分け方になる。

ヴィレッジバンガードの商品構成は、多くの品群が入れ混じっている。衣料品、服飾品、書籍、文具、玩具、食品など。さらにそこから細分化され、衣料服飾系でもメンズ、レディス、アクセ、鞄、時計、帽子など多岐にわたり、さらにそれぞれにキャラクターが打ち出されている。それぞれの商品サイクルは違っており、付随するキャラクターのピークタイムも見極めなければならなくなってくる。はたしてどれだけのスタッフでこの商品を管理していたのだろうか?そして、どの程度のデータをどれくらいの頻度で出力し、商品の改廃のジャッジをどういう基準でしていたのだろうか?

何年か商売をやってくると、売場の基本レイアウトや品揃えは想定できる。そして想定売上に対しての在庫量も逆算する。そこから適正な売場面積も導ける。さらに商品の切り上げ期も分かってくる。

例えば50坪程度メンズカジュアルの店を長年やっていたとする。当然商品の流れがあり、従来の品群での売上のアップダウンがあり、その中で在庫の持ち方や売り場のレイアウトを考えて商売をしている。例えば、そこに新しい品種としてカジュアルアクセを導入する。さらに加えてシルバーアクセもコーナー化する。そこの効率次第で、従来の売場を変更していく。服飾雑貨が売れることで時計も導入する。ディスプレイ程度に品揃えした、鞄や、帽子も拡大する。そうなると全く当初のMDとは変わっていく。売場のコンセプトも変化していく。

つまり、衣料品に加えて服飾品という品群が増え、服飾での品目が増える。売上がその導入により上昇しても、売場面積は変わらないので間違いなく各品種の効率は変化する。それをうまくつかんで、売場をアコーディオン化できればいいが、既存品種も従来通りの品揃えでは、在庫は膨らむ。当然処分しないと不良在庫が増え続ける。もし服飾品の売上の比重が上がれば、当初の店のイメージは大きく変わる。そして、不良在庫を処分すると利益が下がる。利益ダウンを後回しにすると、処分が遅れた不良在庫が増えていく。そうなると商品回転率はどんどん下がる。

おそらくヴィレッジバンガードはそういう状況が続いた結果のような気がする。ここ最近買収されたライトオンもマックハウスも同じような状況の結果になっている。好調を続けるユニクロは品群を増やしてないし、商品構成比率も大きくは変動していない。逆に品種品群を増やしている無印良品は、売場を大型化し細かなデータ管理をしている。

売場面積が変わらずに商品の幅が広がれば、当然歪みが出てくる。軌道修正は当然データありきになる。商品の売上分母だけでなく、回転率など消化状況を重視し、品群や品目さらには単品ごとの効率をデータ化し、素早く改廃対応する必要がある。

何度も書いているが、商売は利益率より適正な商品回転率を重視するべきだと思っている。

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適正な利益率は?

前回、ユニクロのMDについて書いていて、いつも気になっていたことを思い出した。毎年の決算数字で、ユニクロの売上総利益率は適正なのだろうかということだ。

商売をやっていて、売上総利益率は非常に気になる数字ではある。過去の経験では量販店時代やビブレ時代も、記憶ではアンダーウェアが40%に近く、衣料品、服飾品では40%を超えることはなかった。売上効率が高かった売場で35%を超えていた印象しかない。その後自分で会社をやってみて、在庫を第一チェックポイントとして運営し40%は超えていった。店舗数が増えていき、取引先との別注商品をスタートし45%以上には上げていけた。それ以上上げていくには、商品ロットの問題があり、店舗数を増やすことと、当然のことだが、全店で高く消化できる商品を作ることが必要になってくる。

小売業の総利益率の原価は商品原価と考えていい。ただそこから商品の評価損が加えられる。つまり割引をしての評価が加えられる。商品原価(期間仕入れ分)÷(商品売価―値下額)が原価率となる。大きな数字ではないがそこに商品のロス分(万引き、不良品)が加味される。製造原価は商品にもよるが30%前後と言われている。

ユニクロの調達原価は35%前後と言われており、商社等の手数料を加えると38~40%が商品原価として計上されているようだ。ちなみに、前期決算での売上総利益率は53.9%となっている。この利益率をどう見るか?売上は3.1兆円の規模になる。ものすごい金額の商品を仕入していることになる。決算書を見ると前年より25206(百万)商品在庫(原価)が増えていて、売上が3.1兆なので3.8兆円以上(売価)の商品(売価)を仕入れていることになる。それでも原価は40%前後というのなら、相当まともな商売をしているように思える。

始めて取引する際に、最初の原価は、取引形態にもよるが55%~60%くらいだろうと思う。10年も商売を続ければ50%くらいにはなる。発注量にもよるが一部の商品を別注して40~45%の原価にはなる。これは20店舗強まとめた過去の経験上の数字で、ユニクロくらいの天文学数字でも40%くらいの仕入原価であれば、おそらく相当売価を抑えてきていると思う。さらに原価率から逆算すると、利益率は6%くらい下がってはいるので、期中でのプライスダウンも相当な額になっていそうな気がする。決算書を見て計算してみたが金額が大きすぎて、わからなくなってきた。(算出したが、あっているかどうか想像もつかない…)

何が言いたかったかというと、ユニクロは、売れる値段を考えた仕入れをし、売れなかったらその商品を迅速になくしていっているということだ。つまり利益率を考えた商売をせずに、売れる値段設定をして、売れなければ迅速になくしていっているということになる。当然最低の利益率は念頭にはおいているが、売れることを最優先にしている。商品特性は違うが、アダストリアの売上総利益率は54.7%、パルGが55.9%であり、ユニクロの規模を考えると適正な値段と商品処理を優先的に行っていることがよくわかる。

厳しい会社は、商品価値を市場価値で見てないことがある。ライトオンはワールド傘下後の決算で売上総利益率は39.9%まで下がっている。3期前は50.7%の実績だった。その時の在庫は2.5倍位あった。店舗数が減ったこともあるが、利益率のマイナスも考えると、商品評価を大きく下げており、企業での商品価値と市場価値の差が大きかったことは間違いない。適正な数字かもしれないが、上場小売業梨で売上総利益率が60%を超える会社もある。

ただ、価値観はそれぞれなので商品価値は判断しづらい。ユニクロの利益率を商品展開と決算数字で確認して納得できたように、決算数字を見ていると色々見えてくるものもある。それぞれの会社の戦略や取り組み姿勢がよくわかってくる。

■今日のBGM

ユニクロは客層の幅が広いから・・

近頃、食品の買物ついでに、ユニクロと無印良品は定期的に見ている。本当に誰が中心になって、商品のMDを組み立てているのかと感心する。やはり両店とも、あまり外れる商品はなく、タイミングを見極めてプライスダウンもしており、商品のライフサイクルもうまくコントロールしている。あまりとがった商品もなく、必要な商品が提案できている。

先日も、朝の番組で、「高機能のアンダーウェア」を試して、いろんな角度から評価し、高評価の商品を紹介していたが、結局No1だったのはユニクロの高機能アンダーウェアだった。各下着メーカーなども比較されていたが惜敗していた。同じ番組で、食料品などではいつも「トップバリュ」などがランキングされるが、イオンの商品はランキングされていない。専門メーカーや小売最大手も寄せ付けない強みがある。

ユニクロで、半月くらい前から、「ポーター」に似たバックが、3~4種類くらいバックのフェイスにしては大きく提案されている。今年の1月に1型発売されたらしく、さらに2024年に韓国で先行発売され爆発的な人気があったようだ。「ユニクロ:C」の商品もあり、値段は2990~4990だったように思う。

おそらく、ユニクロ以外の会社で、この商品は作れないし、売れないなと感じる。値段が全く違うので、別物と言い切れそうだが、なかなかファッション系の他の会社では作りたくても作らないし、作ったとしても店頭では売りにくい。そして何よりこの値段では作れない。

以前、ユニクロのチラシ折込について、ユニクロの客層の幅の大きさが背景にあるという旨を書いたことがある。はたして、一般購買客で吉田カバンをどれくらい知っているのだろう。通勤電車で吉田カバンを持っている比率は間違いなく10%以下だと思う。さらに70才以上になれば知名度はもっと下がってくる。おおまかに勝手な予想だが、ユニクロのお客様で吉田カバンの知名度は20%以下だろうと思う。つまり、機能や値段を見て購買するお客様がターゲットであれば、「似ている」という意識は必要ない。単純にちょっと「洒落て」いて「機能的」で値段が「リーズナブル」であれば客層にぴったりはまるということになる。

もし、この商品が売れ続けるなら、ユニクロのMDの狙いはうまくはまる。近頃、本家の吉田カバンは、いろんなブランドとコラボをしている。プレミアム感をどんどん出している。ここでも完全に客層の2極化の様相を呈してきている。

ユニクロも無印良品も商品アイテムは少ないが、客層を狭めず、商品は的確に絞り込んできている。ユニクロはジルサンダーやクリストフ・ルメールを皮切りに有名デザイナー監修のブランドも低価格で打ち出し、安売りのイメージとも一線を画そうとしている。無印もヘルス&ビューティーなど拡大し商品の幅を広げ続けている。

幅広い客層に、アパレル中心に的確な商品を送り続けるユニクロや、1カテゴリーでは売れるアイテムを集中させ、カテゴリーの幅をどんどん広げていく無印良品の商品MDの仕事について、真剣に詳しく聞いてみたい。

■今日のBGM

大手アパレルの行く先は?

前回、「オンワードクローゼット」について簡単にコメントしたが、昔の大手アパレルはこういう残り方をしても、あと十数年で需要がなくなるのではないかとも感じている。ここでいう大手アパレルとは百貨店型アパレルで「ワールド」「オンワード」「イトキン」「三陽商会」を指す。もともとはここに「レナウン」も属していた。「ワールド」「イトキン」は専門店中心からスタートし、「オンワード」「サンヨー」は百貨店主軸というイメージを持っていた。

大型モール(RSC)スタート期から百貨店以外の販路として大型区画を立ち上げてきた。当初は鮮度があり、SCの顔として出店も多かったが、現在は当時のショップのほとんどは見かけなくなった。おそらく過去の顧客ターゲットとの差が大きく、売れる商品や値段も違ってきて、今までの落ち着いた商売ができなかったのではないかと思う。展示会中心のサイクルから短サイクルに変わると商売も当然変わっていく。販売体制の違いも影響していたように感じた。

60代以上の客層には、百貨店メーカーというイメージは強くインプットされている。そういう意味でSCでも「オンワード」「ワールド」などのメーカー名を打ち出して、もう一度ブランドを整理して提案すれば、その世代の客層には響く。ただその客層もどんどん減っていく。

大手アパレル4社の売上だが、ワールドが2010年3141億から2024年は2023億、オンワードが同じく2486億から1896億、三陽商会が1121億から614億、イトキンは非上場で調べた数字では2001年1424億から2024年は321億となっており、すべて大幅ダウンしている。中心販路だった百貨店がどんどん減っていけばこういう数字になってしまう。

逆にRSCの流れから小売専門店大手の数字は大きく伸長している。売上推移でユニクロは2010年8148億が2024年に3兆1038億、無印良品は1643億から6616億、アダストリアは977億から2756億、パルGは699億から1925億になっている。

今後の百貨店の流れを想定しても、都心部くらいしか生き残れそうにない。当然「脱:百貨店」を考えるしかない。その流れで、色の違う企業の買収も進めている。ワールドは子供服の「ナルミヤ」や雑貨の「212キッチン」などを買収し、最近では「ライトオン」も傘下に入れた。古着の「ラグタグ」にも出資している。オンワードも「ウィゴー」や「クリエイティブヨーコ」を買収している。両者とも買収により、企業の色を広げようとしているようにも見える

ただ、新しい風を会社に迎えても、会社の風は変わらないと思う。今まで「小」(被買収企業)が「大」(買収企業)の流れに乗らずに、その個性が変わらなかった例は非常に少ない。今回の買収例で成功しているのは、比較的土俵が近い「ナルミヤ」だけではないだろうか。大手アパレルの社風は絶対に変わらないし、その流れが買収先にも影響する。流れが変わっていたなら、RSCの流れになった時点で変わっている。RSCの流れに乗れなかった現状では、百貨店主導の色は変えられない。おそらく「ライトオン」も「ウィゴー」も、絶対に上向かない。両ブランドの今までのSC戦略での「強み」は消える。今後はRSCからCSC,NSCの時代に変わっていくと思うが、当然その波にも乗れない。

ユニクロに慣れ親しんだ層が、再度百貨店に向かうとは考えられない。大手アパレルに、もうプラス要素はほとんど見えない。百貨店の流れと同じ運命を歩む。

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チラシ販促の意味

GWに入ってユニクロのチラシが2回新聞に折り込まれた。GWの割引訴求と定番の紹介の内容だった。チラシはかさばるのでチラシ折り込みの少ない日経新聞しかとってない。ただそれでも、近頃はチラシが増えてきている。

2023年のデータで、新聞を取っている家庭の割合は58.1%となっており、2013年度81.2%から10年で大きく減少している。さらにその年代別にみると、購買人数は2016年比で70代以上は82.7%になっており、60代68.2%、50代56.7%で20~40代は30%代まで落ち込んでいる。当然の現象ではあるが、ネットに情報はあふれ、新聞の購読者は減少している。ただ、まだまだ高齢者層は新聞を宅配しているというデータになる。

ユニクロのチラシは見る人も多いと思うが、今回はB3サイズでエリア店舗の合同版だった。大きなセールではさらに大きなサイズで折り込まれることもある。昔は販促の仕事もやっていたので少しはわかるが、製作コストは削減できても、折込料を含めると大きな経費になる。

ファッション企業は、チラシ媒体などの販促手法を当然したがらない。値段に訴えたくないのと、当然のように効果が出ないと考えている。ユニクロがそこまでの経費を使っても、チラシ媒体を使う理由は何だろうか?それは間違いなく客層の幅を広げたいからだ。上記したように60代以上のニーズも取り込みたいと思っているからだと思う。今の60代以上はそんなに老人ではない。60代はDCブランドを経験し、70代以上は「VAN,JUN」時代を経験している。ワンポイントファッションに頼った世代ではない。ユニクロのチラシ戦略は、その世代をよく知る経営者の考えもあると思う。

ターゲット年齢層を上げていかねば、売上確保が難しくなる。以前書いたが2024年の人口は30年前比で98.1%と減っているが60才以上は181.5%と増えており、人口構成比も19.3%から35.4%と大幅に上がっている。ファッショントレンドは20才前後から動き始めるが、趣味の多様化に加え、絶対的人口の減少もありトレンド志向の客層を追いかけると、商売にはなりにくくなっている。

無印良品の出店傾向も、客層の幅を意識しているように見える。RSCへの出店より、CSC,NSC及びその隣接地への出店を加速させているように見える。そして地方、郊外への出店が増えている。さらに「無印500」でコンビニエンス化を図り、さらに店舗の大型化で600坪の路面への単独出店も進めている。出店場所の変化に伴い、商品の幅も広がり客層の幅も広がっている。

話は変わるが、先日ららぽーとに行って店をぶらぶらしていたが、オンワードの「オンワードクローゼット」に50代以上のお客様が多く、にぎわっていた。オンワードの社長が積極的に出店していく旨を話していたが、おそらく「オンワード」の名前に反応する客層狙いなのだろうと感じた。「ワールド」も「イトキン」もこの手法で出店すれば、50代以上の客層は取り込めるかもしれない。

「企業を大きくする」ことを成長戦略と考えるなら、客層の幅を広げることは必須事項になる。狭い客層の中でパイを取り合っていても、大きな成長はない。「無印良品」もファッション業界と呼ぶのなら、現状ではファッション業界では「ユニクロ」と「無印良品」しか成長しないのではないかと思う。

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商売をやってきて今だから思えること・・・商品調達

年齢を重ねると運動不足を指摘される。暇を見て歩いているのだが、その時間がいろいろ考える時間にはなっている。そういう時、過去自分で立ち上げた小売りの会社で、引っかかっていることを考えることが多い。

小売業では、まず売上を上げていくことだが、それは数店舗やってみて、立ち上げた時の考え方は間違ってなかったと思った。順調に推移した。そこから店舗を拡大していくのだが、20店舗くらいまでは勢いで何とかなったように思う。その次のステップで考えていった1つが、利益率アップへの体質改善についてだった。つまり自主商品を作っていき、利益率を上げていくということだった。今考えると時期尚早だったのかもしれないと思ってきている。

成功している小売業の大手は、自社で商品を作って販売している。そのスタート段階では、当然生産工場とのパイプ等もあるので、まずは取引先と相乗りしたりして取引先を通すことになる。その時の商品原価は個別商品によって違うが、以前の商売だと上代の40%台くらいだったと思う。ロットによっては40%後半になる。企業が大きくなると直接工場との商談になるので諸経費込みで30%前後になるかもしれない。以前やっていた業界では、取引開始時の卸原価は50%台が多く、取引先によっては60%を超えることもあった。商売が大きくなると原価は下げていけるが、それでも利益率を改善するには取引先との商品開発は必須事項だった。

個店仕入れから商売はスタートした。店長は昔から一緒にやってきたメンバーが多く、取引先を設定すれば、数値計画を考えて仕入をしていた。店舗数が増えても商品部は作らず、リーダー的なマネージャーや店長が取引先を開発し、窓口として全店に広げていった。ただあくまでも店長の責任のもと仕入をしていた。店長は、会社の指標に基づいて、売上、利益、在庫の予算を作成し、月度の仕入れ額をもそこから算出していた。「商売は在庫」が常に根底にあり、在庫管理は徹底していた。ピーク期は年間7回転前後の回転率だったと思う。

店舗数が増え、売上が上がってきて、利益率に目を向けるようになった。その流れの中、取引先から、相乗り商品や別注商品の話が増えていった。営業との兼任ではあるが商品部を作り、あくまでも店主導の仕入れではあるが商品部の別注開発商品も品揃えするようになっていった。

結果としては、5年後くらいに利益率はその当時から5%位上昇する。ただ売上はほぼ変わらなかった。店舗数は増えていたので、店舗当たりの売上は落ちた。それが商品のせいなのか、環境のせいなのか検証はできていない。そこからコロナ禍に入った。

昔在籍したビブレも、店仕入れ主導から本部仕入れ商品の増加でMDが崩れていった。そこまでひどくはないが「私作る人」「あなた売る人」の意識がなかったかとも考えてしまう。商品部との力関係が出てきて、ビブレも20店舗くらいからおかしくなっていった。

商品部の開発商品を管理する分類コードを作って、データ化しきちんと検証すべきだったと思う。商品検討会議や売場作りや販売方法を考えるミーティングも増やすべきだったかもしれない。そして、「店の声」をもっと聴くべきだった。問題点や対策を急ぐことなく検証を続け、仕入れ形態はどうあるべきか、組織をどうするべきかをもっと時間をかけて話し合うべきだったと思う。

「人の力」から「組織の力」への転換期だったのかもしれない。

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