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アンドエスティの少し気になること

アンドエスティ(アダストリア)の中間決算が発表された。売上前年比102.6%、売上総利益率前年同期比-0.5%、営業利益前年同期比-19.4%、期末在庫前年比98.7%となっている。夏商材の在庫処理で値引き額が拡大し利益ダウンになったようだ。春夏商売はプロパー消化ができず、在庫を持ち越さないように処分した結果と会社は発表しており、その結果の数字になっている。

前回のブログにも書いたが、小売業の課題は、ターゲット年齢層の絶対数の減少にあると思っている。ファッション業界では、より一層ターゲット年齢層は減少しており、現実的で、リーゾナブル価格への流れが強くなっていると感じている。そしてその流れにうまくマッチしているのが「ユニクロ」や「無印良品」で、年齢層の幅を広くしている。

今までのファッション業界は、それぞれ細かなベクトルがあり、その細かな客層のシェア率を上げ、客数を拡大していき大きくなっていった。そしてファッション業界に生活感はあまりいらなかった。ただ現状はその層の絶対客数が減っているし、高年齢化が進むことでファッションでも生活感がキーワードになりつつある。

アダストリアに、そういう状況に対応するブランドはあるのだろうか?ジーンズ業界出身でよく似た企業だと思っているパルグループは、「3コインズ」で幅広い年齢層からの支持を得ている。前期「3コインズ」の売上は709億と発表されており、パルグループ売上2078億の34%を占めている。アダストリアでの基幹ブランドは「グローバルワーク」で前期売上は517億でグループ売上2931億の17.6%の売上構成比になっている。ただ「グローバルワーク」が広い年齢層に向けたブランドとは思えない。売場作りや演出を見る限り、高齢者は気安く入店できない。アダストリアで考えると「スタジオクリップ」がそのグルーピングかもしれないが、あまり大型化、多店舗化しているようには見えない。

アダストリアとしての方向性は、むしろ現状のターゲットのさらなるシェアアップに向いているようにも見える。衣料服飾だけでなく「飲食」への進出、アウトドアブランド「カリマー」の株式取得、プレステージブランドの開発など従来の客層のカテゴリーの幅を広げる方向のように見える。年齢層を広くとらえる生活雑貨「ジョージズ」も取り込んだが、本格的な動きは見えず、そのグループのライバルブランドと戦うには相当な努力が必要だと思う。一般的には、新しいカテゴリーに新規参入して成功するのは簡単ではない。

年齢層の幅という意味ではイトーヨーカドーとの「ファウンドグッド」の取り組み中止と「フォーエバー21」の撤退は大きかった。やはり量販店の客層の幅の大きさや、低価格商材の「デザインと品質」には苦労したと思う。そのゾーンが得意な取引先もあるが、企業体質が違うしバイヤーの感性も違うので、うまく取り込めてなかったのではないだろうか。アダストリアの従来のターゲットとは、想定外のニーズがあったのだと思う。そういえば「ユニクロ」の柳井氏はジャスコ(イオン)出身だし、「無印良品」は西友が開発したショップだ。やはり企業の色が違うのかもしれない。

現在のアンドエスティは、昔からよく知っているアダストリアと違ってきているように見える。ここまでブランドを広げていくとは思ってなかった。経営を次の世代にタッチしたのだと思うが、今戦っている年代層はどんどん少なくなっていくと危惧する。企業としては、少なくなりつつある現状の客層のシェアを上げる戦略に見えるが、幅広い年齢層に取り組んでいくことには目を向けないのだろうか?

■今日のBGM

在庫の評価は誰がするのか?

今年の3月、5月、7月に「ヴィレッジヴァンガードの在庫内容の悪さ」について書いた。今日、ネットを見ていたら、財務面での専門家がブログでヴィレヴァンの課題をまとめていた。倒産リスクを財務面から細かく分析しており、結論はよく似通ったきびしい結果になっている。前期の決算での滞留商品の処理で在庫内容を改善させ、利益率を改善し、オンラインやポップアップ事業を拡大し利益を確保しようとしていると結んでいた。売場売上とその他事業の売上の大きさに大きな差があることから、言外には相当難しいと匂わせている。

ヴィレヴァンの2026年2月期は利益率が37.5%から43.2%に大幅に改善する計画になっている。過去の決算を見ると、衣料品「チチカカ」を取り扱った時期に43~44%の利益率を計上しているが、その後は40%前後の推移になっている。前期決算では2472(百万)の評価損を計上しているが、過去には2013年にも4692(百万)の評価損を計上している。その時の実績や、評価損計上商品の売上も読み込んでの数字かもしれないが、そこまで利益率が改善できる理由は見えない。売上計画も第一四半期は前年を割っており、特に前年にマイナス要因(台風、曜日巡り)が大きかった8月も前年未達売上であり、状況が上向いているとは思えない。

今回のヴィレヴァンの記事も、決算内容の悪化は在庫に起因していると財務の専門家は指摘している。私も過去のブログでも「課題は在庫」と強調している。商品の幅が広すぎて、各々の商品の管理不足でライフサイクルが見えておらず、適切な在庫運営ができないまま、在庫過多になってしまっている。つまり、商品の足し算(仕入)だけで引き算(在庫処理)がなかったということになる。過去に経営していた店と同じ商品を品揃えしていたが、売り切るべき時期に売り切らず、次年度まで商品をキャリーしていた。在庫への取り組みは全くなされて無いようだった。今年度在庫評価損を除いての在庫金額(11335百万)と、公表された今年度売上原価予測金額(14715百万)で単純計算すると年間商品回転率は1.30回転となる。前年の回転率よりは改善されているが、小売業としての数字としてはあまりにも低すぎる。これでは、ほぼ1年間でやっと売場が変わる状況になる。商品回転率を上げるには、滞留している古い在庫の評価を徹底的に見直すことが必要だ。

近年、企業譲渡されていった「ライトオン」も「マックハウス」も滞留在庫が収益悪化の起因となっている。ジーンズは年間定番で価値は変化しないという商品管理で、いつのまにか回転率が悪化し、経営が悪化していった。そのため「ライトオン」も2023年に在庫評価損1564(百万)を計上しており、「マックハウス」も2019年に在庫評価損726(百万)を計上している。

在庫の評価で、企業の収益は大きく変わる。在庫評価を下げると、資産は減り、利益率は下がる。特に小売業では、在庫評価は非常にあいまいなものだと思う。極端な例だが、夏物商品としてのTシャツは秋までには売り切ってしまうという考えが普通だが、また来年売ればいいという考えもできる。そういうことが積み重なって在庫額は増えていく。在庫が増えると売れている商品が見えにくくなってくる。売れない商品や販売時期のずれた商品をなくして、その金で新しい商品を仕入れ、販売提案していき、売場を常に新鮮に保っていくことが商売の基本だ。「利益を取るか在庫を取るか」で企業の体質が出てくる。パルグループの社長が言う「市場(いちば)に例えたら乾物屋ではなく魚屋でないとあかん」という考えがまっとうだ。

商品の評価は誰がするのか?それは間違いなく、「お客様」がするものだ。つまり「お客様」のニーズがあれば商品は売れてなくなり、ニーズがなければ売れ残る。企業はそのニーズを理解する必要がある。商品在庫が多すぎるということは、商品が「お客様」に必要とされてないということだ。企業に必要なのは「お客様目線」で商品を見て品揃えし、適正な在庫評価をすることだ。

■今日のBGM

商売は現場から

先日飲んでいて、友人が「ちょっと気づいたことがあって、それを確認するために1日歩き回った。」と、言っていた。仕事でのヒントを得て、想定できそうな場所で検証していたようだ。つまり現場感の確認だが、これは非常に大事なことだ。

小売業もずっとやっていると、ルーチンに慣れてしまった日常になってしまう。店にいると毎日することがあり、品出しやレジ対応をしているうちに毎日が終わる。細かい現場の変化に気が付かなくなってくる。売上が上下しても、今までとどこが違うのか、何をすればいいのかを考えるのが後回しになる。

売れているものの変化に一番早く気付くのは、現場である売場のはずだ。商品整理をしていると商品が減っていることに気づくし、レジ対応で売れている商品には気がつく。そこからどうしていくのか?仕入れ量を増やす。売場演出を変える。積極的な接客をする。そんな基本的なことができているのだろうか?店長は、他店で売れているデータを見る。なぜ売れているのか電話して聞く。近隣ならば見に行く。その売り方を真似して売ってみる。これも当たり前のことだ。

各地で、働く場所は増えてないのに最低時給は上がっている。そうなれば、当然労働環境のいいところへ人は流れる。土日勤務もある小売業は、だんだん従業員が集まらなくなる。そうなると規模が小さい小売業にはそのしわ寄せがきて、従業員の仕事はどんどん増える。要員不足が、当たり前の仕事をできなくしているのかもしれない。

店が動けなくなると、商品はどうやって調達していくのか?店に変わって商品部がMD計画を立てて、品揃えしていくのだろうか?では、誰の意見を聞いて仕入するのか?商品部の担当者が毎日店にいて商品をチェックしていればそれは可能だが、一般的には取引先の情報によるところが大きい。取引先からの情報は、当然売場からのまた聞きの情報だし、売るためにプラス要素もつける。取引先は、当然発注ロットが多い商品部との商売を望む。商品部に現場感がないと「気持ち」と「行動」がバラバラになる。現場の情報やニーズを確認しなければ、商品の仕入れはできないはずだ。

商品部は商品動向を細かくチェックしているか?売り方や演出方法の情報を店と共有しているか?利益面優先で商品を仕入れてないか?作ってないか?売れることを最優先で作っているか?そして、そこには現場の声も入っているか?

小売業は、売場がすべて主導で、答えも売場にあると思っている。店長は何が売れているかを確認できるし、売れない商品をどうやって売れるようにするかも考えられる。そして売れる商品がわかれば、その商品を確保できるし、似た商品を仕入れることもできる。それを商品部が共有できれば、商品のロットを増やし、売れている店をモデルに全店に提案できる。頭で考えた商売はできないし、数字(利益)から入る商売も必ず失敗する。それがわかる人間がマネジメントするのが理想の組織だと思う。ただ現実的には、企業規模が小さいほど、売場であるべき動き方をしている店長は少なく、売場の力が弱くなる。

BtoCの小売業では、どんな問題もボトムアップのほうがいいに決まっている。トップダウンで成功するのは、唯一トップに強い現場感があるときのみだと思っている。

■今日のBGM

店と本部

先日、ネットで「ユニクロは給与が高く優秀な人材が入社するが、離職率が高い。」という動画を見た。「業務内容が幅広く、仕事量が増え、仕事とプライベートのバランスが悪い。」というハードワークに加え、「なかなか本社勤務になれず、キャリアが停滞する」というのが大きな理由のようだ。

小売業ではすべてが当たり前のことで、これが理由になること自体が不思議なことだと思う。現場では、「売上管理や、在庫管理、人事管理など業務が多岐にわたっており、仕事量が多すぎる」とのことだ。どんな小さな小売業でも店をマネジメントするのは普通のことだ。土日中心の商売なので学生時代とは生活パターンが変わり、友人関係とのプライベートな付き合いも厳しくなるのも当たり前のことだ。それを理解せずに、給与面の優遇のみ考えて入社したのだろうか?それが問題なら、それを理解せず入社した社員の責任ではないか?

ここで、取り上げたいのは、「なかなか本社勤務になれず、キャリアが停滞する」という理由についてになる。

何故、本社勤務になれなければキャリアは停滞するのだろうか?どうして、店より本社がポジションとして上位にあるのだろうか?「ユニクロは本社勤務の人数が少ないので、なかなか本社勤務になれない」ともコメントしていたが、小売業では本社勤務の人数が少ない企業のほうが賢明な企業だ。一番重要なのは店であり、店で稼ぐ売上になる。近年はネットの売上も大きくなっているが、あくまでも店の売上が営業数値の大部分を占める。

では、なぜ本部で仕事をしたいのだろうか?商品部に行ってバイヤーやマーチャンダイザーになりたいから?営業部に行って、営業政策や販促活動、演出活動をしたいから?すべて本社主導で動いていると勘違いしている。今は厳しい状況下にあるが、イトーヨーカドーの組織図は、一番上がお客様で、その下がお取引先、株主、地域社会となっている。社内組織で最も上位にあるのが営業店で、一番下に取締役会がある。店がお客様と対峙し、売上を計上することで商売は動いていくことを再認識させられる。

私事になるが、量販店に入社して7年で5店舗売場を経験し、その後商品部へ異動した。そのころ東京本部は青山一丁目にあり、表面上はキャリアとしていいステップだと見える。その後本部と店の間にはいろんな問題もあり、少し精神的に厳しい状況になった。とかく、店と本部はスムーズに事が進むことが少ない。結局6年近く在籍し、希望して再び店勤務になった。その後はすぐ体調も改善し、楽しく仕事を続けたし営業数字も順調に達成させることができた。個人のキャリアとしては30代で店長職になり、複数店店長を経て40代で営業部長も経験した。最後の本部在籍時も本部要員は減らし、店中心に考えて動いたつもりだ。すべて本部から店への異動が大きな転機になった。

「店」と「本部」という分け方も正解なのかわからないが、規模が大きくなればなるほど両者には大きな壁があるような気がする。おそらくどの小売業の会社も「本部」が「店」の上位にあるように見えている。当然経営者がいる「本部」が対外的には重要かもしれないが、「店」が企業の収益を計上している。個人的に小売業の組織は、経営職を除くと、ほぼ「店」所属の体制が一番望ましいと思っている。営業部長も商品部長も事業部長も「店」の店長を兼任すればいいと思う(その店には力量のあるNo2を配置すればいい)。管理系以外は大型店の所属で業務遂行できるのではないだろうか。そうすることによって、販売計画や戦略商品の成功事例や失敗要因をすぐに検証でき、各店にフィードバックもできる。つまり、政策が実績に結び付いているかが、いち早く確認できる。そして、店と本部の連動がスムーズになる。少し極論かもしれないが、「Plan- Do -See」が迅速に進むことは間違いない。

「店」の動き方や、現場の状況がわからない「本部」は、特に小売業においては全く必要ない。つまり「本部勤務になれば、キャリアが停滞する」企業のほうが望ましいと思う。

■今日のBGM

イトーヨーカドー、アダストリアからの調達終了

8月14日の日経新聞に「ヨーカ堂、今期秋冬商品を持ってアダストリアからの商品調達を打ち切る。」という記事があった。「ファウンドグッド」を続けないということになり、今後は経営資源を食品スーパー(SM)に集中するということのようだ。

「ファウンドグッド」に関してはこのブログでスタート期に3度(2024年2.3.4月)書いており、今年も6月に書いている。再度読み直したのだが、立ち上げ期から成功を危惧しており、最近も「数字は上向いてないように見える」という内容となっている。成功するには、お互いの資金を出し合って、会社を立ち上げるべきだったと思っていた。

新聞記事の内容から察すると、商品のリスク、内装負担、販売員はイトーヨーカドー(IY)にあったようだ。この条件は、IYからの強い協力要請の結果だと思う。「残った商品は26年以降も販売は続ける」と記事にあるように、商品リスクがIYにあることがわかる。

現状、IYのセブン&アイホールディングスでの立ち位置が厳しくなっており、IYの株式を売却する話も出てきている。その流れで、IYはスーパーマーケット(SM)事業に集中する方向に動いている。IYとしては、「ファウンドグッド」事業は、上記したようにほぼリスクを負担しており、短期的に黒字化のめどが立たない事業として結論付け、事業撤退を決定したということだと思う。数字が順調でなければIYとすれば続けるメリットはない。データ分析が得意な、現実的な会社であるIYらしい結論だ。

「ファウンドグッド」は何店舗か見に行ったが、同じIYでも立地が大きく異なる。古いIYもあるしGMSとしての店もある。さらには大型SC(アリオ)内にあるIYもある。アダストリアにとっては、経験したことのないGMSの客層だったはずだ。MDを進めてきたアダストリアのスタッフには、簡単には対応はできなかったと思う。おそらく大型モール内のGMSをイメージしてのMDだったと思うが、それでは対応できない店が多すぎた。プライスラインもユニクロよりも若干高めに設定されており、競合にも勝てていない。さらに販売スタッフの数も教育も足らなかった。ユニクロは1店舗当たりのスタッフは最低40~50名と聞くが、アリオ内の大型物件でも5~10名程度ではなかっただろうか。ユニクロやGUを競合と考えていたのであれば、商品面、販売体制面でも完全に見劣りしていた。何度か見たアリオ川口内でのショップは、オープン期より縮小されており、厳しい状況がうかがえた。

アダストリアにとっては数字としては大きなマイナスはないが、従来の販売チャネル以外での失敗は社内外には大きい痛手でとなったのではないか。どちらかというと顧客や市場をよく研究してファッション業界では手堅く、偏差値の高い企業のイメージがあったのだが、少し取り組みが甘かったイメージが残る。企業として多角化を上げており、マルチカテゴリー戦略を打ち出している企業としては少し気にかかるマイナスになった。

IYの今後の非食品の売場は、今取り組んでいる商品リスクが小さい量販店ブランドのコーナー化を増やし、さらには大きなマイナスが出ないような条件(固定賃料は低く設定し、売上歩率での契約など)で、テナント出店にもシフトしていくと思われる。「しまむら」との組み合わせも面白いし、好立地なら「無印良品」にすべて任せるというリーシングもある。無印の近年の出店は生活感のある場所への出店が増えているように思う。

40年以上小売業に携わってきて、「イトーヨーカドー」と「アダストリア」は私にとって優秀な会社のイメージしかない。量販店時代は取引先各社からイトーヨーカドーの優れた商品戦略、在庫戦略を聞き、その後アリオ立ち上げ時のコンサルに加わった時も企業体質のすごさを感じた。ビブレ在籍時や小売業経営者の時にはアダストリアには大変お世話になった。その2社が取り組んでも結果が出なかった。

間違いなく、客層のバラツキがあるGMSの非食品売場は成り立たない。この結論はここでも実証されている。

■今日のBGM

競合激化するSM(スーパーマーケット)業界

再三、このブログで取り上げているが、国内需要は高齢化によって必需品中心にならざるを得ない状況にある。現状国内の60才以上人口構成比は35.4%であり、30年前の倍の構成比になっており、その人口は43800(千)人になっている。まだ働ける年齢とはいえ、現役ではなくなりつつある世代になる。当然、ファッション関連やビジネス志向の商品は伸びるわけはなく、食品を中心に必需品の購買ウエイトが上がってくる。その流れ通り、SM業界の数字は堅実に伸びている。6月のスーパー全体の売上は前年比104.2%と4カ月連続伸長となっている。

近隣にまたヤオコーができるようだ。駅前に昨年5月オープンしたばかりだ。新物件のオープンは来年6月となっている。ちなみに駅前物件と新物件の距離は500mくらいしかない。調べてみると駅近辺1km圏には、ヤオコーを含めて、マルエツ2店、コープ、ベルク、オーケーなど10店程度のSMがある。マルエツは500mくらいの距離に2店出店している。武蔵浦和駅前から2kmで浦和駅の商業集積があり、3Kmのところにイオンモール北戸田もある。そしてSMの密度は濃い。

おそらく、近隣2店舗出店は競合激化によるところだろうと思う。オーケーは近隣にあるが、オーケーも含めてロピアなど新興ディスカウントSMの進出に抵抗した結果かもしれない。マルエツの近隣の2店舗戦略も「競合に出店されるなら・・」という同様の結果だと思う。ただ今回の出店で一番ダメージを受けるのは300mも離れていないマルエツの1店舗になる。

地元民として、新物件は決していい場所だとは思えない。南側には学校が2校あり、その先にはベルクスやイオンモールがある。東側にはロッテの工場や2軍球場があり、その先は線路で商圏が分断されている。駅に向かっての東北側はマンション群だが、駅中心に商業集積があり、西側はマンションや住宅地になるが、SMのコープが近隣にある。さらに新物件は駅に向かうメインの道路に面しておらず、立ち寄りやすい場所ではない。

間違いなくSMの魅力だけでは、自社も含めて各社との食い合いになる。SM以外で何か引き付けるものが絶対必要になってくる。説明会の資料には述床面積9140㎡で3層、1階はピロティ(駐車場)と飲食、2階がヤオコー、3階が専門店となっている。この立地で、ある程度わざわざ性を高めるには間違いなく魅力ある専門店が必要になってくる。

昨年の駅前出店の時にもヤオコーの「テナントの弱さ」を指摘したが、今回の出店場所は、ますます集客力のあるテナントが必要になってくる。現状、武蔵浦和駅周辺には、ある程度の商業集積には必要な「ユニクロ」「無印良品」がない。これだけ高層マンションがあり、交通の利便性がいい立地でこの2店舗がないというのは、街自体に欠落があるようにも思えてくる。フロア構成上2社は難しいかもしれないが、この商業物件としての成功は、この2社へのリーシングにかかっていると思う。

国内の大型モール(RSC)はもうすでに停滞期に入っており、今後は、少しずつ淘汰されていくように思う。商圏に合わない大型化しすぎたRSCが多く、空床部分も目立ってきている。さらに、先述したように高齢化が進んでおり、以前のGMSのようなCSC(コミュニティSC)や、SMが中心のNSC(ネイバーフッドSC)といった利便性あるSCの時代に戻っていくと思う。その時には自店でのSMのMD力だけでなく、フル感性で日常的なテナントとの共存が絶対に必要になってくる。

■今日のBGM

難しい靴業界で成長続けるABCマート

ここ数回ずっと在庫のことを書いてきた。自分で商売するときは「在庫を持たない」商売をしようと思っていた。過去小売りの仕事をしてきて「ジーンズカジュアル」と「靴」は在庫を持って商売しているイメージしかなかった。両カテゴリーに言えることは、サイズが細かいということになる。細かなサイズに合わせて在庫を持てば当然在庫は増える。中心サイズがなくならないように多く持つと1品番当たりの在庫は増えていく。さらに定番的な商品が多く、値段を打ち出しにくい。

ビブレの店長時代、店長は自主直営売場の数値責任を持っていた。当然各売場には、仕入れ権限のある売場の責任者がいるが、MD計画、数値計画は店長が確認する。一番利益面でわかりにくかったのが靴業種だった。サイズが多岐にわたり在庫も多くなる状況はジーンズと同様だが、ジーンズの売場はトップス、アウターでの調整ができる。靴は皮革とケミカル、スポーツなどに分かれるが、調整できるアイテムは少ない。取引先との商売条件も多くあり(消化、委託など)買い取り商材は大きな値下げが発生することも多く、利益率が高い状況で安定することがなかった。難しい業種だった。

ジーンズのナショナルチェーンはどんどん厳しくなり、全国チェーン展開の専門店は近年のライトオン、マックハウスの事業譲渡もあり、ビジネスとしては成り立ちにくくなってきている。一方靴業界も同様でありアメリカ屋靴店やマルトミなどの倒産例もあり、特にカジュアル志向が強くなった現状では靴業界も淘汰されようとしているように見える。そういう状況下、靴業界のABCマート、チヨダ、ジーフットの大手3社の決算数字をチェックしてみた。

売上面ではABCマートの絶好調ぶりが群を抜く。2025年決算で3772億計上されておりコロナ期以前の数字から136.7%伸長している。チヨダはマックハウスを除外して調べてみた。売上数字は年々マイナス傾向で1000億企業だったのだが、2025年787億まで落ち込み、コロナ前からでは89.5%の売上となっている。ジーフットは2025年売上が600億でコロナ前からでは67.3%の状況となる。

利益率は2025年決算でABCマートは50.5%、チヨダは47.7%、ジーフットは44.1%。営業利益率はABCマート16.8%、チヨダ5.3%、ジーフット-1.3%となっている。チヨダはコロナ期以外黒字体質ではある。ちなみにジーフットは2023年に債務超過になっており、2025年親会社のイオンからの第3者割当で解消している。1店舗当たり売上はABCマート248(百万)、チヨダ87(百万)、ジーフット63(百万)と大きな差がある。

一番重視している回転率はABCマートが年2.04回転で数年はほぼ2回転前後。チヨダは年2.21回転と前期大幅改善しており、過去の1.8回転前後から良化している。ジーフットは年1.46回転で、過去の1.3回転前後からは改善しているがまだまだ低い。

完全にカジュアル化の波が大きく、スポーツブランドを打ち出すABCマートの出店戦略が成功しており、特に売場大型化がその要因にもなっている。近年主流になった大型モール(RSC)の全国拡大に併せて企業規模が拡大している。逆にチヨダは大型モールへの流れに乗れず、従来のGMSやSCでの商売を続けている。ジーフットは当然イオン系SC中心になるが、イオンGMS内(所謂ジャスコ)の靴売場も運営しているため、SC部分への出店が大きく出遅れた。さらに現状のGMS内の衣料服飾品の赤字体質が続けば、企業存続にも赤信号が灯る可能性もある。

在庫面に関して考えると、ABCマートは常にプライスダウンを打ち出し消化率を上げようとしている。売場内でも大きなセールコーナーを取っているし、いたるところで催事も見かける。アパレルを加えた売場が増えているのも在庫面の課題解消策かもしれない。それでもあと年0.5回転くらいのプラスは必要だと思う。チヨダも回転率の大幅上昇もあり、意識は高まっている。逆にジーフットは決算時に在庫課題はいつも上げているが、全く改善は見られない。

追随する企業のアゲインストの流れが大きく、対抗する企業がない状況下で、カジュアル志向が続けば「ABCマート」1強の流れは確定的になっている。

■今日のBGM

商品の幅を広げると商売は難しくなる

ヴィレッジヴァンガードの経営状況の悪化は、商品の幅が広がりすぎた事が大きな引き金になっている。

少し商品の用語の説明をする。まず小さな商品単位を品目と呼ぶ。一般的にはアイテムと同義になる。品目が集まって品種になる。品種が集まって品群になる。例えば品群が婦人衣料、品種がスカート、品目がフレアスカートという分け方になる。

ヴィレッジヴァンガードの商品構成は、多くの品群が入れ混じっている。衣料品、服飾品、書籍、文具、玩具、食品など。さらにそこから細分化され、衣料服飾系でもメンズ、レディス、アクセ、鞄、時計、帽子など多岐にわたり、さらにそれぞれにキャラクターが打ち出されている。それぞれの商品サイクルは違っており、付随するキャラクターのピークタイムも見極めなければならなくなってくる。はたしてどれだけのスタッフでこの商品を管理していたのだろうか?そして、どの程度のデータをどれくらいの頻度で出力し、商品の改廃のジャッジをどういう基準でしていたのだろうか?

何年か商売をやってくると、売場の基本レイアウトや品揃えは想定できる。そして想定売上に対しての在庫量も逆算する。そこから適正な売場面積も導ける。さらに商品の切り上げ期も分かってくる。

例えば50坪程度メンズカジュアルの店を長年やっていたとする。当然商品の流れがあり、従来の品群での売上のアップダウンがあり、その中で在庫の持ち方や売り場のレイアウトを考えて商売をしている。例えば、そこに新しい品種としてカジュアルアクセを導入する。さらに加えてシルバーアクセもコーナー化する。そこの効率次第で、従来の売場を変更していく。服飾雑貨が売れることで時計も導入する。ディスプレイ程度に品揃えした、鞄や、帽子も拡大する。そうなると全く当初のMDとは変わっていく。売場のコンセプトも変化していく。

つまり、衣料品に加えて服飾品という品群が増え、服飾での品目が増える。売上がその導入により上昇しても、売場面積は変わらないので間違いなく各品種の効率は変化する。それをうまくつかんで、売場をアコーディオン化できればいいが、既存品種も従来通りの品揃えでは、在庫は膨らむ。当然処分しないと不良在庫が増え続ける。もし服飾品の売上の比重が上がれば、当初の店のイメージは大きく変わる。そして、不良在庫を処分すると利益が下がる。利益ダウンを後回しにすると、処分が遅れた不良在庫が増えていく。そうなると商品回転率はどんどん下がる。

おそらくヴィレッジヴァンガードはそういう状況が続いた結果のような気がする。ここ最近買収されたライトオンもマックハウスも同じような状況の結果になっている。好調を続けるユニクロは品群を増やしてないし、商品構成比率も大きくは変動していない。逆に品種品群を増やしている無印良品は、売場を大型化し細かなデータ管理をしている。

売場面積が変わらずに商品の幅が広がれば、当然歪みが出てくる。軌道修正は当然データありきになる。商品の売上分母だけでなく、回転率など消化状況を重視し、品群や品目さらには単品ごとの効率をデータ化し、素早く改廃対応する必要がある。

何度も書いているが、商売は利益率より適正な商品回転率を重視するべきだと思っている。

■今日のBGM

適正な利益率は?

前回、ユニクロのMDについて書いていて、いつも気になっていたことを思い出した。毎年の決算数字で、ユニクロの売上総利益率は適正なのだろうかということだ。

商売をやっていて、売上総利益率は非常に気になる数字ではある。過去の経験では量販店時代やビブレ時代も、記憶ではアンダーウェアが40%に近く、衣料品、服飾品では40%を超えることはなかった。売上効率が高かった売場で35%を超えていた印象しかない。その後自分で会社をやってみて、在庫を第一チェックポイントとして運営し40%は超えていった。店舗数が増えていき、取引先との別注商品をスタートし45%以上には上げていけた。それ以上上げていくには、商品ロットの問題があり、店舗数を増やすことと、当然のことだが、全店で高く消化できる商品を作ることが必要になってくる。

小売業の総利益率の原価は商品原価と考えていい。ただそこから商品の評価損が加えられる。つまり割引をしての評価が加えられる。商品原価(期間仕入れ分)÷(商品売価―値下額)が原価率となる。大きな数字ではないがそこに商品のロス分(万引き、不良品)が加味される。製造原価は商品にもよるが30%前後と言われている。

ユニクロの調達原価は35%前後と言われており、商社等の手数料を加えると38~40%が商品原価として計上されているようだ。ちなみに、前期決算での売上総利益率は53.9%となっている。この利益率をどう見るか?売上は3.1兆円の規模になる。ものすごい金額の商品を仕入していることになる。決算書を見ると前年より25206(百万)商品在庫(原価)が増えていて、売上が3.1兆なので3.8兆円以上(売価)の商品(売価)を仕入れていることになる。それでも原価は40%前後というのなら、相当まともな商売をしているように思える。

始めて取引する際に、最初の原価は、取引形態にもよるが55%~60%くらいだろうと思う。10年も商売を続ければ50%くらいにはなる。発注量にもよるが一部の商品を別注して40~45%の原価にはなる。これは20店舗強まとめた過去の経験上の数字で、ユニクロくらいの天文学数字でも40%くらいの仕入原価であれば、おそらく相当売価を抑えてきていると思う。さらに原価率から逆算すると、利益率は6%くらい下がってはいるので、期中でのプライスダウンも相当な額になっていそうな気がする。決算書を見て計算してみたが金額が大きすぎて、わからなくなってきた。(算出したが、あっているかどうか想像もつかない…)

何が言いたかったかというと、ユニクロは、売れる値段を考えた仕入れをし、売れなかったらその商品を迅速になくしていっているということだ。つまり利益率を考えた商売をせずに、売れる値段設定をして、売れなければ迅速になくしていっているということになる。当然最低の利益率は念頭にはおいているが、売れることを最優先にしている。商品特性は違うが、アダストリアの売上総利益率は54.7%、パルGが55.9%であり、ユニクロの規模を考えると適正な値段と商品処理を優先的に行っていることがよくわかる。

厳しい会社は、商品価値を市場価値で見てないことがある。ライトオンはワールド傘下後の決算で売上総利益率は39.9%まで下がっている。3期前は50.7%の実績だった。その時の在庫は2.5倍位あった。店舗数が減ったこともあるが、利益率のマイナスも考えると、商品評価を大きく下げており、企業での商品価値と市場価値の差が大きかったことは間違いない。適正な数字かもしれないが、上場小売業梨で売上総利益率が60%を超える会社もある。

ただ、価値観はそれぞれなので商品価値は判断しづらい。ユニクロの利益率を商品展開と決算数字で確認して納得できたように、決算数字を見ていると色々見えてくるものもある。それぞれの会社の戦略や取り組み姿勢がよくわかってくる。

■今日のBGM

ユニクロは客層の幅が広いから・・

近頃、食品の買物ついでに、ユニクロと無印良品は定期的に見ている。本当に誰が中心になって、商品のMDを組み立てているのかと感心する。やはり両店とも、あまり外れる商品はなく、タイミングを見極めてプライスダウンもしており、商品のライフサイクルもうまくコントロールしている。あまりとがった商品もなく、必要な商品が提案できている。

先日も、朝の番組で、「高機能のアンダーウェア」を試して、いろんな角度から評価し、高評価の商品を紹介していたが、結局No1だったのはユニクロの高機能アンダーウェアだった。各下着メーカーなども比較されていたが惜敗していた。同じ番組で、食料品などではいつも「トップバリュ」などがランキングされるが、イオンの商品はランキングされていない。専門メーカーや小売最大手も寄せ付けない強みがある。

ユニクロで、半月くらい前から、「ポーター」に似たバックが、3~4種類くらいバックのフェイスにしては大きく提案されている。今年の1月に1型発売されたらしく、さらに2024年に韓国で先行発売され爆発的な人気があったようだ。「ユニクロ:C」の商品もあり、値段は2990~4990だったように思う。

おそらく、ユニクロ以外の会社で、この商品は作れないし、売れないなと感じる。値段が全く違うので、別物と言い切れそうだが、なかなかファッション系の他の会社では作りたくても作らないし、作ったとしても店頭では売りにくい。そして何よりこの値段では作れない。

以前、ユニクロのチラシ折込について、ユニクロの客層の幅の大きさが背景にあるという旨を書いたことがある。はたして、一般購買客で吉田カバンをどれくらい知っているのだろう。通勤電車で吉田カバンを持っている比率は間違いなく10%以下だと思う。さらに70才以上になれば知名度はもっと下がってくる。おおまかに勝手な予想だが、ユニクロのお客様で吉田カバンの知名度は20%以下だろうと思う。つまり、機能や値段を見て購買するお客様がターゲットであれば、「似ている」という意識は必要ない。単純にちょっと「洒落て」いて「機能的」で値段が「リーズナブル」であれば客層にぴったりはまるということになる。

もし、この商品が売れ続けるなら、ユニクロのMDの狙いはうまくはまる。近頃、本家の吉田カバンは、いろんなブランドとコラボをしている。プレミアム感をどんどん出している。ここでも完全に客層の2極化の様相を呈してきている。

ユニクロも無印良品も商品アイテムは少ないが、客層を狭めず、商品は的確に絞り込んできている。ユニクロはジルサンダーやクリストフ・ルメールを皮切りに有名デザイナー監修のブランドも低価格で打ち出し、安売りのイメージとも一線を画そうとしている。無印もヘルス&ビューティーなど拡大し商品の幅を広げ続けている。

幅広い客層に、アパレル中心に的確な商品を送り続けるユニクロや、1カテゴリーでは売れるアイテムを集中させ、カテゴリーの幅をどんどん広げていく無印良品の商品MDの仕事について、真剣に詳しく聞いてみたい。

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