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ライトオンは立て直せるか?

5月の小売業上場各社の既存店売上前年比を見ていたら、約半数の企業は100%超で堅調な数字だったが、メンズ色の強い企業が少し悪かったようだ。景気が悪い時に出る傾向で「お父さんのものは後回し」的な流れのようにも見える。中でも落ち込みが最も大きかったのはライトオンで既存前年比75.1%となっている。

ここ3カ月で見ると3月78.9%、4月82.7%、5月75.1%と低迷を続けている。ここ数年の業績悪化で、証券市場区分も去年の10月にプライムからスタンダードへ移行されている。

もともとはジーニングカジュアルを打ち出して大きくなってきた会社だ。ジーンズの追い風の中、売場も増え、売場面積も大きくなっていった。ジーンズ中心の売場は在庫金額が大きくなる。パンツのサイズもメンズでも27~34インチまで揃えなければならないし、中心サイズのストックを入れると1品番1色で10本以上の在庫が必要になる。近年はボトムのサイズ分類はアジャスターや脇ゴムでトップスと同じサイズで展開しているが、ナショナルブランドは依然インチ表示のままだ。一世を風靡したジーンズのボリューム感を持った店から、ファッションの流れの変化もあり、ライトオンも現状はジーニングテイストを持ったフル客層へのカジュアルショップに変わっていった。その環境下で商品量や値段で「ユニクロ」「GU」には太刀打ちできず低迷を続けている。

数字が厳しいので、買い物ついでで近隣のいくつかのSCで売場を見たのだが、迷走感が出ている。定番のジーンズもリーバイスも含めて割引商材が多く、特にメンズはセール品もアソートで取引先から借りているような商材が目立つ。ボトムに関して言えば基本デニムのリーバイス501が17000円の時代に売上を考えると品揃えもボリュームアップできない。レディス、キッズも在庫を抑えているのか、中途半端になっておりお客様は競合店に流れているように見える。

前期の決算書では売上前年比97.3%、売上総利益率48.1%(前年49.3%)経常利益-1046(百万)純損失-2545(百万)(前年-1166)、在庫回転率2.2回転(年)となっている。今年度上期は売上前年比86.6%、売上総利益率44.3%(前年50.1%)経常利益―1353(百万)(前年191)上期純損失―1617(百万)(前年―95)在庫回転率1.26(半期)前年1.12(半期)と発表されている。おそらく在庫過多を続けていたため、今期在庫縮小のための値下げを強行したが、在庫整理では売り上げアップに結び付かず、利益率を下げただけの状況だったようだ。この数字を見ると、現状の売場の状況は納得できる。

小売業の決算数字にはいろんなことが隠されている。ライトオンのように在庫整理をしたが売り上げに結び付いてないように、適正金額で商品在庫が計上されていないケースが多い。決算数字をよくするために在庫評価を市場評価と乖離させれば、悪い決算にならない。ライトオンも今上期に利益率を前年差-5.8%落として在庫処理を断行したが、売上前年比86.6%と大きく落としている。売上につながる評価にすればさらに利益率は落ち込んでいくと予想される。さらに不振店舗を削減するための除却損や、返却されるべき敷金と相殺される経費も大きく、数字が悪化すれば実数値は急激に落ち込む。まだ余力がありそうな決算数字だが、隠れているリスクも大きい。

再浮上させる策はあるのだろうか?

■今日のBGM

ファイブフォックス

ファイブフォックスの会長だった上田稔夫氏が亡くなられた。ファッション業界に一時代を築き上げた人物だ。ファイブフォックスはDCブランド全盛期の「コムサデモード」「ペイトンプレイス」などを展開していたファッション業界の大企業で、2000億超の売上で経常利益率もピークは13%あったとのことだ。

ファイブフォックスは黒を基調にしたモードファッション「コムサデモード」がメインブランドで、少し宗教染みた会社というイメージが強い。開店前に大きな声でスタッフ全員声を合わせて挨拶をしていたのを何度も見た記憶がある。商品の中に台紙を入れて同じ大きさに合わせて商品整理を徹底し、VP(演出)はモノトーン基調で固めており、さらに店内音楽はビートルズで統一していた。上田氏はファッションビジネスで大事なのは「商品」「店舗」「在庫コントロール」だと言っていたそうだ。全くその通りだと思う。

DCブームの後、 「野菜売り場の近くに大きな店を出せ。」との大号令で、「コムサイズム」を立ち上げ、脱ファッションビルで大型モール(GMS)に参入したのもファイブフォックスだった。「野菜売り場」はお客様が必ず通る。つまりデイリーのお客様の目につく一番の場所にファミリー市場の店を出した。この業態はファッション業界の常識を覆した。これが今のモールのファッション大型区画のスタートだったと思う。

昔の仕事柄、各ブランドの開発担当者と打ち合わせをしていたが、ファイブフォックスは冷たいイメージが強く、特に弱いデベロッパーには強気だったような気がする。売れているブランドはえてしてその傾向が強いが、大手だった「ビギ」や「ニコル」よりその印象は強い。それだけブランドの位置づけを大事にしていたのかもしれない。

コムサブランドはモードテイストの黒を基調としたMDブランドで、他の黒基調だった「ギャルソン」や「ワイズ」などデザイナーブランドよりクリエイティブさはなく、店舗イメージや演出、売り方を差別化させて、そこを武器にお客様を引き付けていたと思う。ただ、やはりモノトーンのMDブランドとして感じられてしまうと、ブームが去ると厳しい状態になっていった。現在年商が200億くらいということだが、それでもすごいと思ってしまう。売り上げの中心は「コムサフィユ」(子供服)ではないかなと思う。

商売哲学の「商品」「店舗」「在庫コントロール」については記事を読んで初めて知ったが、「商品」は小売業では共通だが、「店舗」「在庫」を意識していたことには共感する。あのレベルまで売場のイメージを固めてしまうと逆にマイナス要素になるかもしれないが、「おたたみ」のマニュアルや演出は驚かせた。コムサ憲法と言われるマニュアルがあると聞いたこともある。環境面を含めた店舗マニュアルは必要だと思う。「在庫」に関しては常々私自身も商売の基本だと思っているので、このブログでも一番ページを割いている。ファッションビジネスで大事なことと言っていたことには強く共感する。

改めて、デザイナーブランドでなくMDブランドで年商2000億まで育て上げた力量には時代背景もあったが、「すごみ」を感じる。

ただ、私はファイブフォックスの服を自分用には買ったことはない。

■今日のBGM

ファッション店舗は激減している

先月、知り合いの会社が株式譲渡された。ファッション小売店舗だが、一時は大型モール(RSC)中心に50店舗以上展開していた。譲渡時は10店舗を割っていたそうだ。大型モールは増えたがファッション関連の店舗は激減しているのではないか。個別にはMDや販売体制の問題もあるが、それ以前に店舗数が減っている。大型モールにファッションのニーズが少なくなっているのかもしれない。

大型モールの国内最初はどこか難しいが、現状のモール型は2000年のダイヤモンドシティキャラ(川口)がスタートのような気がする。その後、従来のGMSには入店しなかった「ワールド」「イトキン」「オンワード」など百貨店系メーカーや「サンエーインターナショナル」などヤングファッション系ブランドがディフュージョンブランドを大型区画で展開し、新しいモールのイメージを強めた。そこから20年経過しGMSを消滅させ、今は全国どこにでも点在している。つまり大型モールを引っ張ったのは都心から郊外へ広がったファッション店舗の力が大きい。

その当時立ち上げた「ワールド」のブランド「ショップTK」や「オペーク.クリップ」などは激減し「ハッシュアッシュ」はなくなった。イトキンの「avv」もほとんど見ないし、オンワードも「エニーファム(エニシィス)」もあまり見ない。サンエーインターナショナル(現TSIホールディングス)の「ナチュラルビューティベーシック」も大型モールへの出店スピードはダウンし、「&バイPD」はなくなった。いずれもメインフロアの大型区画にあり、大型モールの顔だった。

カジュアル系ではユニクロの国内店舗数は2019年817店が2023年に820店、同じくGUが421店から463店と大きな変動はない。アダストリアは国内2017年1220店から2023年1509店と増えている。大型ショップはほぼ横ばいだが、一世を風靡したストライプインターナショナルが2017年1400店から2023年には700店舗と半減している。ライトオンも2017年513店が2023年には373店に減少している。多くのカジュアル系の店舗は激減しており、それに代わって古着や値段志向の強いショップがやや増えてきている感はある。

逆に、1階のSMの近くには食物販のテナント、上層階には「100均、300均」や「携帯ショップ」など所謂「その他」業種の出店が増えている。さらに店舗の大型化が進んでおり、ユニクロや無印良品、ABCマートは増床出店が多い。どちらかというと必需品を大型化させているイメージは大きい。

ファッションが商業施設のイメージになる事は間違いない。新しいブランドを探し提案できなかった百貨店は、顧客年令が上がり衰退した。GMSも同様にお客様の年齢が上がって、デイリーウェアの品揃えの年齢も上がり、30代から50代の顧客を大型モールにとられた。中心客層が上がっていけば大型モールも同じ流れになる。すでにお客様は商業施設の使い分けはできている。新しいファッションの流れや新しいショップを探して導入していかねば間違いなく衰退する。常に新鮮であり続けなければ商業施設は淘汰されていく。

■今日のBGM

NSC(ネイバーフットショッピングセンター) 2

平成3年度統計で年金受給者数は4023万人いるとのことである。人口の30%を占め、その1家庭当たりの年金額は22万496円となっている。さらに「老後2000万問題」もあり貯金の取り崩しで生活している。ただ「食」に関しては最低限必要品でニーズは落ちることはない。

近隣にヤオコーが出店した。駅前の高級マンション「プラウド」の1~5階の1画に入店し、専門店は16店で、延床面積は2200坪(ヤオコー950坪、5層)となっておりヤオコーの初年度売り上げ目標は26億と公表している。商圏は1km圏5.4万人、2Km圏17.7万人、3km圏33.3万人という恵まれたエリアではある。ただ近隣(100メートル圏)にマルエツが2店もあり、駅ビルに食の専門店が多数入店している。

消費支出は伸びているが物価高騰に食われ、消費数量が減っている。2023年消費支出は1.1%の増加だが物価変動が3.8%あり実質は2.6%の減少と家計調査報告にある。おそらく状況は変わらない。給与が大企業中心にアップはしたが、物価に釣り合っているのだろうか?特に「食」に関しては毎日需要するもので支出を減らすべく、「オーケー」や「ロピア」などの格安スーパーに人気が集まっている。季節や輸入コストで値動きが大きく値段志向が強まっている。高年齢化もあり買い物は1部の富裕層を除くと「食品」中心の流れになってきている。

ヤオコーは35期連続増収増益で、SMの超優等生だ。私も食品売り場を持つビブレの店長時代、南古谷のウニクスを見に行って勉強させてもらった。提案型のSMの印象が強かった。おそらくSMとしてはどこにも負けないのではないかと思う。ただ食品以外をどうとらえていくか。NSCとしてのテナントのラインアップは何を優先しているのかと思う。今回の高級マンションと言われる「プラウド」への出店のテナント揃えはこれでいいのかとも思う。

ヤオコーが狙うべき客層の「衣料」、「服飾」、「雑貨」のニーズは何なのかを考えると、値段志向一点ではない。ある程度の感性を持ち合わせている。今回のテナント揃えは何を優先したのかと感じる。「賃料」で選んだようにも見える。飲食やクリニックモールを除くと「セリア(100均)」ドラッグ、買取大吉、パリミキ、ダンススタジオ、コンタクトアイシティなどで高層マンションに囲まれた駅前物件としてはコンセプトがない。3階1フロアを「無印良品」にするだけでSCが締まってくるように思う。ほかにもそういうショップは探せばある。「3コインズ(メガ版)」やダイソーの大型ショップもある。もう少し規模が必要だが「ユニクロ」もありだ。さらにアダストリアは絶対NSC、CSC向けのブランドを模索している。テナントが固定賃料の高さを嫌がるなら、「低い固定賃料+売上歩率」にしても売上額で賃料はカバーできると思う。

優等生の食品SMだけで戦うより、SC全体で戦えばさらに相乗効果が出ると思う。過剰な数の大型モール(RSC)がもう厳しい状況にあるので、NSCの成功タイプを早急に確立すべきのような気がする。

■今日のBGM

売場環境の維持…レイアウト・演出他

出店が決まると、売場図面の作成になる。店がオープンしてからもレイアウトや演出は売場の鮮度を見せる意味でも、大きなポイントになる。

レイアウトや演出も開発部中心に本部主導になっていることが多いが、間違いなく営業(特に店長)が中心になるべきだと思う。やはり「何を売りたいか」「どうやって売っていくか」は販売計画の基本で、それは現場により近いところで進めて行かなければ売場に「魂」が入らない。完全に店は作業だけで本部主導ですべて決定していけるのは、組織がきちんと機能している優良企業のみではないかと思う。ただ店に対するモチベーションアップの切り口は絶対に必要で、優良企業でも何か店が起因するプランもあると思う。

ストアメイキングマニュアルは各社にあると思うが、それは理想像に過ぎず、ほぼマニュアル通りにはならない。演出の仕方や陳列の仕方のマニュアルは当然あっていいが、最低限すべきことだけでいいと思う。例えば主通路の通路幅やサブ通路の通路幅、最高陳列量、最低陳列量など売り場を作るにあたっての基本を徹底し、あとは店に任せればいい。過去大手小売業で有名なコンサル会社を利用してVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)を推し進めていたが、成功したとは聞かなかった。(すぐ崩れたので失敗だったと思う。VMDではなくVP(ビジュアルプレゼンテーション)に過ぎなかった。)やはり売場作り、演出も現場に近いところで進めるべきだ。

最後に、売場環境で一番大きなポイントになる内装だが、内装には大きな経費が掛かり収益に直結する。素材の値段も上がっており、人的コストも上がっている。簡単にいうとローコストでインパクトある内装がベストだが、安い原価の商品をなかなか高く売れないのと同じで難しい。商品の値段が高ければ高いほど、売場のグレード感は必要だが、商品がボリュームゾーンであれば値ごろ感ある内装であっていいということはない。多店舗展開の店は当然売場区画の大きさや商品アイテムや商品ボリュームも大きく変化しないので同一イメージ、レイアウトが望ましいが、店舗数が少ない店やエリアに複数店持たない店は、できるだけ印象に残る内装が欲しい。友人の店で作業足場を組んだ店や、鉄骨むき出しの店など工夫した店は面白かった。什器以外でも映画や音楽のテーマで売り場のイメージを出すなど考えることはできる。お客様に商品だけでなく興味を持ってもらうべき店にしてほしい。

近頃SCを見ていると、興味を持つ店が全くなくなってきた。どこに行っても同じ店があり、その傾向が強いので「わざわざ感」を持てない。デベロッパーのリーシングの面白さがなくなってきているのが最大の原因だが、実はテナント側からも興味を持つようなインパクトがなくなってきている。ファッションビルのデザイナーブランドの内装インパクトまでは必要ないが、MDも含めて興味を持てる店がなくなっている。逆にテナントゾーニングで「こんなところになぜ?」と思う店は多い。その多くはショップとゾーニングがあっていない。

出店する側も冷静に出店環境を精査し、お客様を引き付ける店づくりを考えていくべきだ。

■今日のBGM

売場環境の維持…売場開発

売場環境を整える第一の問題は、出店場所を間違わないことになる。どこに、いくらの賃料で、どういう売場にするかを適正にジャッジする必要がある。

まず、自店をよく知っていること。自店の成功例、失敗例を列挙していると自ずとどこに出店すればいいか、やめたほうがいい区画かが、わかってくる。さらにその店舗環境(近隣テナントとの相性、フロアやエリア、区画の形状、大きさなど)でおおよその売上は読めてくる。

以前の会社ではモールの3階はほぼ失敗したし、小型店での失敗例も多く、小型店で開発した新ショップの既存店はほぼすべて退店し、新ショップでの出店は取りやめた。

さらに自店を知る上では、現状の既存店毎の数値状況も当然理解していかねばならない。自店の売上、収益予測は状況を理解した上作成し、それは当然賃料交渉時に必要になる。つまり提示賃料が収益上どう影響するのか計算する必要がある。売上と利益は当然ながら人件費や家賃、その他経費を考えればどれくらいの営業利益が出るかを計算する。過去そのエリアの責任者には契約内容を加味した損益計算書を契約年数分時系列で作成させた。さらにそこに当然投資が入ってくる。簡易的に予測損益を計算していたが、投資に対しての経費率は10~20%で初年度経費計上し、資産計上分は概略で残投資額の35%を減価償却費として毎年の収益予測に計上した。その計算で契約期間の収益を計算していた。SCからの条件で当然収益基準に満たなければ条件交渉するし、合わなければいい物件でも出店はしない。おそらくこの数字が一番の出店根拠になる。

もう1点必要なことは、開発担当者はいろんなSCをどれくらい見ているか、そこに出店しているテナントのMDや状況をどれだけ知っているかは絶対必要だと思う。SCを多く見れば見るほどそのSCの状況がわかってくる。リーシングに対しての優位性はSCにあるかテナントにあるかもわかってくる。出店要請された場所の隣接するテナントやゾーニングされたエリアは、どういうメンバーなのかで当然売り上げは変わってくる。SCを多く見てくると相性のいいテナントや相性のいい場所がわかってくる。さらにはデベロッパーも知る必要がある。デベロッパーとの相性もある。以前書いたが、同じイオンのモールでもイオンモールとイオンリテールでは窓口の対応が全く違う。さらに近年多い証券化されたSCとの交渉は、商売の話ではなく完全に不動産契約の話になり、土俵が違うため会話が全くかみ合わないことが多い。私自身SC側にいてリーシングもした経験もあるので、SCとの相性の違いも理解できる。

出店はきちんとした数字を見たうえで検討すべきであり、独断的にやるものではない。当然結果的にそうなっても、反省としてきちんと履歴を残すべきだと思う。

・・・実家に寄ったついでに大阪と福岡に行った。非常に楽しかったが、結局飲みに行っただけだった。

■今日のBGM

本当に景気は上向くのだろうか?

GW期間中に近くのモールに買い物に行ったが、例年通りか、少し少ない集客だったように思う。行楽もあるし普通の土日よりも客数は少ない。

賃金を上げれば消費につながり、景況感は上がっていくと報じられている。経団連や同友会が給料を上げて引っ張っていくと言っているが、国民の労働者の大企業に占める割合は30%弱であり、大企業の下請的企業は中小企業の50%弱を占めるという。当然コストを下げると中小企業に跳ね返ってくる。円安の流れで輸出企業のメリットは大きいが国内向け企業は厳しくなる。「国外向きに会社の方向性を変えるとチャンスだ。」と経済評論家はいうが、そうするには相当の労力が必要になる。つまり労働者の70%の中小企業労働者の景気の恩恵にはしばらく時間はかかる。さらに年金受給者数は平成23年度で3600万人超となっており、総人口の約30%が賃金アップの対象ではない。

前向きな意見は多いが、後ろ向きに考えればいくらでも不安要素は出てくる。事実小売業の売上の上昇機運は低く、インバウンド需要や高所得者層以外に好調要素はなかなか見当たらない。特に中小企業はコロナのゼロゼロ融資の返済が始まり、友人の会社もM&Aをしたり、廃業したりしている。

4月の月次売上速報を確認すると、日祭日1日減でも前年越えの企業は多い。特にファッション系は気温が上がり初夏物の流れが良かったようだ。確認できた中では既存店売上で、ユニクロ前年比118.9%、ユナイテッドアローズ112.3%と2桁増の好調な数字となっている。ただユニクロは今期期首からの累計では99.3%とまだ前年未達となっている。ユナイテッドアローズも年度で見ると先月までの1年間で小売既存店は100.3%と大きくは伸長できてない。数字の流れが悪いジーニングカジュアルのマックハウスはレディス強化で95.5%と少し上向き、ライトオンは状況変わらず82.7%となっている。

大きなヒット商品もない現状、「総中流」の流れは完全に終わっている。大部分がユニクロで商品を納得して買っている現実の中、価格対応ができてない店はせめて付加価値のある環境(売場内装、演出など)を作って付加価値を感じさせる商品を売っていくしかないのではないだろうか?

また、当たり前のことを書いてしまった・・・ 毎日、新聞を読んでいるとずいぶん景気が良くなったように書いているけど、やはり読み物であって、暗い気持ちになる記事は避けているように感じる。新聞社も企業だし、悪いことはほとんど記事にしない。毎朝明るい気持ちになるほうがいい一日になるからかな?

■今日のBGM

従業員教育

以前立ち上げた会社での従業員教育のファイルがある。「仕事の基本とは」「販売について」、「基本的数値の教材」、「受講した社員からのフィードバック」の書類などが入っている。

「仕事の基本とは」は①仕事の姿勢、➁仕事の進め方、③前もって備える、④仕事の質を上げる、の4項目で仕事の基本的な心構えについて整理されている。

「販売について」は、①店に立つ前のちょっとしたアクション、➁お客様にアプローチするときのちょっとしたアクション、③ニーズをつかむには、④商品説明のコツ、⑤クロージングテクニック、⑥店内にお客様がいない時、⑦店のおすすめは何?⑧さらに生かすには?の項目で、販売に必要なことをまとめてある。

「基本的数値の教材」は、①売価・原価と値入率、②粗利益高と粗利益率、③値入額と粗利益高、④仕入・売価と在庫、⑤仕入、売上、在庫と値入、荒利、⑥仕入、売上、在庫と売価変更、ロス、⑦回転日数と回転率の7項目で基本的数字をわかりやすく説明している。尚、コメントとして「①~③までで1時間かかる。2.3回は必要。」と付箋が貼ってあった。

その他、受講者の事前アンケートや事後の感想などがファイルされていた。2日間の研修プログラムで、特に数値については、もう何度か研修の場が必要のようだった。

こういうことが必要だなとは改めて思う。賃金が上がり、従業員確保が大命題になっている小売業で、現状スタッフ教育には手が回ってない状況ではないだろうか?そんな中で、各店舗で差がつくのはちょっとした販売の仕方だったり、スタッフの力量に左右されていると思う。スタッフ教育は組織力のある大手企業が先んじているのかもしれないが、個店でもやるべきことは多い。店長がスタッフとのコミュニケーションをとって、売場の販売体制ができているだけで売上は大きく上がってくる。

「基本的数値」についての教材は、マイカル時代の教育教材だった。新入社員には少し難しく、売場に慣れてきた段階で随時行っていくほうがいいかもしれない。ただこれが商売の基本でもある。昔売場の部門責任者は、この数値は完全に頭に入っていたと思う。その上で、仕入れ活動もしてきた。今の小売業でどれくらいの店長が理解しているのだろうか?セントラルバイイングになったり、店長の職務ではなくなったりしているかもしれないが、この「基本的数値」を理解して商売をしているようには思えない企業は多い。これが理解できて、売上と結びついてくれば小売業が楽しくなってくる。

「仕入」「販売」「営業」「管理」と分業になっていても、販売現場からいろんなことは発信される。従業員全員が同じ方向を向いて、同じ言葉で話せなければ数値は上がってこない。

■今日のBGM

値段の影響

服を選ぶとき、「好きであこがれているブランド」「何とかこのラインまでは頑張って着たい」「普段着ならいい(このゾーンは年々広くなっている)」「買わない」のランクが個人的にはある。当然そこには価格の壁があり、価格のランクもある。

店を立ち上げた時、洋服屋ではなかったが「普段着ならいい」グループの商品をきちんと売れるように環境も考え、品揃えしたつもりだ。自分なりにビジネスモデルも検証してスタートさせた。

商売の理屈を単純に考えてみる。5000円で商品を販売する。利益は50%必要だとすれば仕入原価は2500円になる。取引先も50%の利益を得るには1250円で調達する必要がある。3年前の為替レートは1ドル105円だったのが155円近くまで円安になっている。企業努力を考えず単純に価格を置き換えると、取引先原価が1850円まで上がり、やはり取引先が50%乗せると仕入原価は3700円になる。単純に計算すれば7400円で販売しなければどこかにひずみが出る。為替の変動で当たり前だが、値段を据え置けば小売店か取引先にひずみが出てくることを再確認してほしい。例えば小売店が上場企業なら、無言の圧力はあり取引先の利益減になるし、取引先が強ければ必然的に小売店の利益減になる。

当然、商品はコストを考えて、素材を変化させたり、工場を変えたりするし、店も経費削減をやっていく。その前提で、商品がどの値段まで通用するか?例えばワイシャツで考える。ブランド品や10000円以上の商品ならその購買客層から大きな抵抗感はなさそうだが、5000円から10000円までの商品なら2000円上がると間違いなく売上は鈍る。一般的には値上げが大きく影響するのは30%アップくらいからだと言われている。個人的にも5000円で買っていた商品が7000円になれば買わない。5000円以下の購買層になると完全に値段志向になる。つまりモデレート層が価格志向層に引っ張られる。

先日ネットで年収2000万以上のラグジュアリーカード会員の調査が掲載されており、よく身に着ける「ハイ」ブランドはヴィトン24%、エルメス18.1%に対して、よく身に着けるブランドはユニクロが42.1%となっていたそうだ。普段着やインナーはユニクロという流れかもしれない。ファッションにおいては、高所得層はモデレート層ターゲットにはあまり流れてなさそうだ。

モデレート層が減ってきて、さらにその層が両極に引っ張られている。モデレート層を取り組むべき専門店が厳しくなってきている。

常々、「感性」「値段」「環境」を念頭に店づくりをしていくべきだと思っている。「値段」が厳しい状況下で、ちょっとしたこだわりを見せる商品の開発力が必要になってくる。さらに商品以外の売場内装や販売環境を再度見直し、強化する必要性も高まってきていると思う。

言うのは簡単だけれど・・・

■今日のBGM

ファウンドグッド

“「場所によって客層が違う。」とアダストリア関係者は語った。”と新聞にあった。「ファウンドグッド」をイトーヨーカドーに展開しているアダストリアの感想のようだ。

まず店を始めるには、ビジネスモデルを作る必要がある。誰に売るのか?そのターゲットは商売をするには潤沢か?何を売るのか?など・・・

誰に売るのか?で悩んでしまった。というのが冒頭の言葉のように思う。

「ファウンドグッド」の立ち上げの状況を見てこようと思って近隣のイトーヨーカドー浦和店に行った。昔はドル箱店舗と言われていた浦和店もオープンから50年以上も経過し、完全に古い足元客のための店になっている。天井も低く1フロア400坪くらいの昔の駅前型GMSになる。1階の共用部以外をほぼすべてをつかって「ファウンドグッド」はある。浦和駅徒歩4分という立地で、伊勢丹No2の売上の浦和伊勢丹の北側にある。浦和駅にはアトレ浦和があり、開発された東口にはパルコ(食品はヤオコー)がある。イトーヨーカドー浦和店のメイン客層は昔からの顧客の足元の中高年になる。言い換えるとシニア層が多い。ここだけ見ていたら偏った見解になると思って、アリオ川口のイトーヨーカドーに向かった。アリオ川口のイトーヨーカドーはモールに来るお客様になっている。

冒頭のコメントと同じ感想になる。GMSがダメになった理由でもある。イオンやイズミの衣料品平場が悪いながら持ちこたえているのは、モール戦略で客層を若返らせ標準化させているからだ。アダストリアの社員はおそらくGMS、特にモールにあるキーテナントとしてではないGMSを見たことがなかったのではないかと思う。裏を読めば、アダストリア側には大きなリスクがない契約になっているのだろう。

感想は、まだ真剣に取り組めていないに尽きる。「とりあえず、商品を埋めた」感が強い。単品量販ではあるが、あくまでもグローバルワークやローリーズファームのベーシック商品を値頃にした感が強い。内装や演出もお互いどこまでやっていくのかが見えてない。

やはり、お互いの方向性が固まっていないように思う。特に本部での意思は現場まで届くのには時間がかかる。以前、お互いが資本を出し合って「別会社を立ち上げるべき」と指摘したが、その必要がありそうだ。ちなみに広い売場に浦和店にはスタッフは見えず、川口店には1名しかいなかった。

思いつくまま書く。商品では衣料品以外でお客様を呼び込む必要を感じる。なぜ、インナー商品をやってないのだろうか?必需品で回転率が高い商品を取り組むことによって、来店頻度が増す。ユニクロも素材感を打ち出した「ヒートテック」で完全にフルライン客層になったように思う。無印のように生活雑貨を増やしてもいいようにも感じる。さらに店のカテゴリーが浦和店と川口店のように違っているので、店を分類して基本品揃え以外での対策が必要になる。例えばプライス志向の強い店に不稼働商材の処分コーナーを常時設けるとか、イトーヨーカドー得意のデータ分析で店の特性を活かしたレイアウトを作ったりするべきだ。

アダストリアは、こちらが指摘するまでもなく、感性だけで生き残らず、優秀な企業体質なので、今後はどんどん変革していくだろう。ただ、大多数が大型モールや駅ビル、ファッションビル育ちでもあるので、「しまむら」や「西松屋」の商売をどうとらえるかが成功の鍵のような気がする。「ファウンドグッド」の取り組みによってこのゾーンを開拓することが、企業として大きな成長につながると思う。

定期的に見てみたい。

■今日のBGM

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