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RSC(大型SC)への提言 ➁

絶対にRSCは食い合いになって淘汰されていく。GMSが出店にしのぎを削り、生存競争に残った最後のGMSだったイトーヨーカドーも解体されていく。以前に書いたのだが自分のまわり15km圏に8つのRSCがある。小さめのアリオなど含めればもっとある。将来的に最低2つは成り立たなくなる。その他もNSC(近隣型SC)としては残るが不要なテナント部分が稼働しないRSCは想定できる。

GMSが厳しくなって、イオンやイズミはRSCで生き残った。そこにららぽーとや独立系も参入してきており、その形態も現状はリートやファンドに組み入れられている物件も多い。ここからは淘汰が始まる。

厳しくなってくると会社はどう動くか?当然改装計画を立案し、審議し、改装を実施する。イオンモールなどでは「活性化計画」と言われている。改装計画を審議し当然のように投資をかけることによって増益になる計画を承認する。今までの経験から考えると、流れが悪くなってきた物件を改装等の計画でその流れを止めることができた物件は、増床以外でほぼ見たことがない。店名を変えたりしたがその成功は長くは持たない。特に厳しくなったモールに新しいテナントを現条件で入店させるのは至難の業だし、その条件で入るのは同質化したテナントやサービス系テナントだけになる。増床計画があったRSCの改装でも、成功した物件はそんなに多くない。テナント側も増床部分は厳しいとすでに理解している。つまり改装効果を追い求めるあまり、将来的にさらに厳しくなる予測が現実的である。(短期的にはリニュアルセールでにぎわっても結局はもとに戻る。)

現実的には現状の流れを食い止めて、顧客の流出を防ぐ改装を考えることを優先すべきではないかと考える。つまり、投資した分を必ず回収する改装より、「投資経費をかけて発生するだろうマイナスを止める」改装を実施するべきではないだろうか。消耗品費や修繕費のように儲けるためではなく、維持する必要経費と考えるべきだと思う。営業数値の減少を止めるべき投資と考えるべきだと思う。

経費だけ使って数字の上振れがなければ、当然減益になる。ただ将来の大きな減益を止めることはできる。何年か経たないとその結果は出ないかもしれないが、投資基準は別として、間違いなくそういう改装も必要になってくる。非常に難しい問題だけれど、何年か後に優位性を持つことも大きな戦略だと思う。

■今日のBGM

12月の商売

12月の商売は昔と大きく変わった。11月末にブラックフライデーが始まって、ボーナスサンデーの流れが弱まり、ギフトニーズも減ってきた。さらに元旦営業が普通になり、年末の必需品の駆け込みもなくなった。ブランド時代はギフトとプレセール等でにぎわったが、年を開けてのバーゲンもなくなり20日過ぎからバーゲンが立ち上がる。

商売の妙があるのが12月の商売だった。12月最量販期、1月バーゲンでそのための商品を仕入れなければならない。取引先もここで在庫をなくさないとデッドストックになってしまう。商談で原価交渉をして「半値7掛け、半値6掛け」(原価35%,30%)での仕入れをしてバーゲンでダウンする利益の補填をする月だった。

そういう商売を今もしているのだろうか?秋冬売れなかった商品をなくすための利益計画を策定してプライスダウンする準備をしているのだろうか?12月バーゲンに向けて売れなかった商品の処理計画をしているのだろうか?

買い物に行って売り場を見ると、そういう気配はあまり感じず、例えば「全品10%オフ」とか「20%オフ」とか計画的に処理をしているようには見えない店が多い。細かい商品アイテムごとの処理計画はないのだろうか?例月と12月商戦はそんなに変わっていない。売り場を見る限り12月の特別さを感じない。

この頃、しまむらが気になっているので、しまむらのチラシを見る。「総力祭」という打ち出しで均一訴求となっている。300円、500円、700円、900円、1500円、2000円、3000円でのくくりでカットソーは1000円以下均一、コート1500円、掛布団2000円、ダウン3000円が目玉商品。問屋や名古屋、岐阜の取引先から安く仕入れて、自店の不稼働商材も併せてマークダウンしてプライスのくくりで売っているのだろうと思う。昔からの商売をやっている。お客様も12月を感じる。

しまむらの利益率は過去3年33.9%,34.1%,34.1%と大きく変化はない。当然企業としては利益率の改善は取り組んではいるだろうが、回転率を重視している経営なので大きな改善は難しいのかもしれない。ただ買取商材はきちんと販売期間内でなくすという姿勢は正しい商売だと思う。売っていた商品は違うが、商売の考え方はしまむらのほうが好きだ。

ブラックフライデーの時も大きくプライスダウンコーナーを取っていたのはユニクロだけだった。セールスチャンスに不稼働商材をマークダウンするのはごく普通だと思う。利益率重視はいいが、商品の鮮度はお客様にはすぐばれる。自発的に不稼働商品をプライスダウンし売り込んでなくしていくというより、セールに協賛しているだけのような取り組みの店が多すぎる。

12月の商売も例年盛り上がらないようになってきている。

■今日のBGM

ワークマンのフランチャイズチェーン

「ワークマン」の売上の伸びが止まったという記事を見て、何気なくそうだろうなと思ったのだが、あまり詳細を知らずにいた。以前やっていた店と同じSCに入店していて、すごい集客があったので少し驚いて観察したことがあった。その時は「ブームだし、この商品をみんなが着る?」と懐疑的でさらにFCだと聞いて驚いた記憶がある。

DCブランド全盛時代、大都市は直営店、地方都市はFC店という構図があった。FC契約の構図はFC先が内装を作って、商品を仕入れそのブランドの服を売るというもので、ブランド側はその商圏内にはそのブランドを卸さないことが前提で、取引形態は委託販売(年2回セール値引きあり、残商品は返品)が多かったように思う。

「ワークマン」のFC条件を調べてみた。少しわかりにくく、きちんと確認が必要だとは思うが2タイプある。わかりやすいのはBタイプで従来の俗にいう販売代行と言われていた契約内容だ。昔、サンエーインターナショナル(現TSI)と代行契約をして10数店舗やっていたので内容は理解できる。月度売上3500千までは500千の収入。それを超えれば超えた分の3%分が上乗せされる契約内容で、月度売上月10000千であれば500+(10000-3500)×0.03=695千の収入になる。一般的な販売代行手数料率は13~15%(※その前後はある)で、この契約なら10000千売上で手数料率が約7%になり契約自体は全く魅力がない。おそらくこの契約を選ぶことは少ないのではないか?

Aタイプは細かい経費は別として、オープン時商品原価分2240万を負担するということ。その在庫はオーナーの資産になるということらしい。さらに利益は月間の荒利額の40%が収入のようだ。つまり月度売上が1000万で荒利率が36%だと利益額は(1000千×0.36)×0.4=1440千が月度収入になる。その他営業経費が300千くらい引かれる。つまり月間収入は1140千となる。報奨金制度もあり上乗せはあるらしいが、オープン時の商品原価分の負担は大きい。その返済は分割でもいいようで立ち上がりの資金は少なくても済むようだ。

想定面積が100坪ということだが、夫婦でやるとして、店をやっていた経験上要員数は最低5名(これでも厳しい)で、そのうちフル勤務(1日8時間×20日)3名(当然オーナー夫婦も込み)短期バイト(月80時間前後)2名は必要となる。夫婦以外に月度給与は交通費や社保を入れると400千は必要になる。そうすると、夫婦の収入は月740千になる。これをどう考えるかだが、おそらく夫婦そろっての休みは取れない。さらに給与計算や経費処理等の会社としての仕事もあり、ほぼ休みなしの状況は予測される。最近の採用難を考えると募集も難しい。販売員が確保できて何とかやっていけるとすれば上記した最低月売上1000万は必要だと思う。

さらに、品揃えは「ワークマン」側に任せるのだろうか?発注責任はどこにあるのだろうか?「ワークマン」側に優秀なSV(スーパーバイザー)が必要で、そうでなければ売場の維持管理ができない。原価在庫が22400千はあるので不稼働な在庫をどう処理していくかも指示がないとできない。

詳細は分からないところが多いが、「ワークマン」のFCになかなか魅力は感じない。オリジナル商品をどんどん作って荒利益を上げることでFCに収入が増えなければ続かないのではないだろうか?直営店もありそうなので、儲かりそうな店は直営で賄うのではないか?

今後の「ワークマン」の伸長がFCにかかっているのであれば、ブーム的なものはあるにしろ、大きく伸長していかないのではないだろうか。

■今日のショット(山中湖)

しまむら ➁

いろいろ考えてみた。

なぜ、この業態で好調を続けられるのか?同じようにチェーンストアの成功を目標にして、GMSに向かわずにVS(バラエティストア)に向かったのか?それをぶれずに60年以上もやり続けることができたのか?なぜ好調を維持できるのか?

GMSがなくなっていく理由がわかったような気がする。非食品は完全にお客様から「No!」のジャッジをもらっている。高度成長期に充実させようとした「中流意識層」への対応売場が現状は全く必要とされてない。大きな売り場を埋めるために、不要な商品を集めすぎている。シーン別の売り場などは完ぺきに自己満足だし、儲かる売場(必要とされる売場)だけでもういいのではないか?作ってきた売り場を進化させているつもりでいるだけで、実は進化させていなかった。無駄なことばかりやってきた。売れない商品でも仕入れたし、欠落アイテムも補完した。でもそれは必要なかった。

特に時代の変化は大きい。円安不況の中、中流層の崩壊が顕著で、購買動向も大きく変わってきた。特に20代~40代の変化は大きい。そこを百貨店やGMSは拾えていない。ユニクロやABCマートのような一種のカテゴリーキラーやしまむらや西松屋のようなVSに流れている。

そこまでは整理できるが、あの雑然とした売り場でいいのだろうか?GMS時代のストアメイキングマニュアルは不要なのだろうか?商品はペラハン(入荷時のペラペラのハンガー)のまま陳列していてもいいのだろうか?陳列量はあれでいいのだろうか?演出もレイアウトもあれでいいのだろうか?

おそらく要員数や経費と関係していると思う。新しいハンガーに変える手間と購入経費より、人件費や商品動向(POS)経費を優先した結果かもしれない。おそらくぎりぎりのオペレーションコストなのかもしれない。レジ要員と品出し要員を中心に回していると、細かなところまで手を回せないというのが現状かもしれない。

さらに、割引商品の比重も高い。在庫と利益のバランスはあるが、どういう指標で割引対象にしているか興味深い。今まで言って来たが「利益率」より「回転率」を重視する会社のほうが小売業では正解だと思っている。(利益率を優先する会社は将来的には成り立たない。)間違いなくしまむらは「回転率」重視で動いている。プライスダウンする決定プロセスを知りたい。今の回転率で今後どのように利益を改善していくかを知りたい。

もう何店舗か見ないと、いろんな仕組みややり方が想定できないが、どういうマネジメントをしているか聞いてみたい。

近いうちにまた違う店を見に行こうと思った。

■今日のBGM

しまむら①

しまむらに行って来た。非常に驚いた。

しまむらに行ったのは2度目で、前回は母親が入院するので必要なものを買いにロードサイド店に行っただけで、真剣に見たのは初めてだった。

1店舗しかゆっくり見ていなくて、評論するのはおこがましいし、好調企業に意見をするつもりもない。思ったことだけを書く。思ったことを並べる。

値段を打ち出し、余計なものはおかない。売れない商品は即なくす。ストアメイキングマニュアルなんかいらない。来ているお客様のニーズに合わせて売り場を作る。ロープライスで徹底する。その上を見ない。ローコストオペレーションに徹する。いらない商品部門はやらない。売り場は1980年に私がニチイ(マイカル)に入社した時以上に雑然としている。

しまむらの年度の実績を再度確認する。

売上高 616125百万  営業利益 53202百万  1418店 

売上総利益 209986百万(34.5%)  人件費 66420百万 人件費率10.8%

商品在庫 54266(百万)従業員数 11942人 

総面積 2233275㎡ 賃借料32678(百万)

単純に店舗数で割る

売上 434.50(百万) 在庫38.27(百万)売価在庫58.42(百万)

1店舗面積平均 1574.9㎡(476.4坪) 1店舗人件費46.840(百万)従業員8.4人

1店舗平均月度売上 36.2(百万) 1店舗月度平均人件費 3.903(百万)

1店舗平均家賃 23.045(百万) 1店舗月度平均家賃 1.920(百万)

1店舗の概況は以下の通り

売場面積 476.4坪 ※インショップ、ロードサイドすべて込みの平均

月度売上 36.2百万 (月坪売上7.6万)月度売上総利益 12.5百万

平均在庫 58.42百万 月度回転率0.62

家賃 月坪家賃4000円強※自社物件も混みなので実際はこれより高い。月坪6000円前後か?

店舗人件費 本部要員を考えると 3.5百万前後/月くらいか?

大雑把な数字なので正確には読めないが家賃比率7~8%、人件費率10%前後、労働分配率30%前後になる。十分に利益は出る。回転率は月度0.62と非常に高い。チェーンストア理論通りの数字になる。

坪売上はユニクロに大きく劣るが、人件費率、商品回転率で上回る。商品特性、調達方法の違い利益率の低い商品部門もあり、利益率は大きく下回るが、経費項目はほぼすべて優っている。利益を上げるにはどれだけ商品の値段をどこまで値段を下げずに引っ張るかだが、ここが企業特性の違いだと思う。当然値段を下げなければ利益率は上がる。ただ半面在庫が増える。利益率と在庫高は調整できるといえばできる。

色々考えさせられたことがあるので、次回再度まとめてみようと思う。

■今日のBGM

売場内装について

SCをみていると近頃はインパクトある売場がなくなっているように思う。ららぽーと門真でも感じたのだが、ここ何年かで出店を始めた店も個性があまりなく、どこにでもあるこなれた売り場になっている。特に売場内装のインパクトがなくなってきている。

RSC(郊外型ショッピングセンター)が注目されてきた頃、出店交渉していて、あるデベロッパーのリーシング担当者にこう言われた。「私は配ダク(配線ダクト)使ったテナントを入店させたことがない。」つまりデザインされた照明計画、器具をきちんと使って、安易な内装はさせないという意味での発言だった。「配ダクを使うな」ということが、いい発言かどうかわからないが、まだまだ凝った内装がいいとされる時代だった。今はモールでも配ダクを使っている店が半分以上ある。それが時流ではある。

ブランド時代を経験しているので、内装のレベル感は理解できるつもりではある。床がフローリングや石を使う時代(その中でもレベル差はある)を経験してきた。当然売っている商品のグレード感によっても内装レベルは大きく変わってくる。

家を作るのと同じで、店舗を作る(内装工事)にはコストがかかる。おそらく今は坪300千では本当にチープな内装しかできないのではないだろうか。40坪の店を坪400千で作った場合内装費で1600万の金が必要になる。これがキャッシュアウトだけでなく改装費や減価償却費のコストになってくるので収益面にも大きく影響する。できるだけコストは押さえたい。

売場のイメージはお客様に大きなインパクトを与える。商品のインパクトも当然必要だが内装がお客様に訴えるものも大きい。「ああ、あの真っ白い店」「西海岸っぽい店」「古い電柱のあった店」などで印象付けることも多い。昔、個人オーナーの店はそういう店が多かった。廃材を使ったり、鉄骨や、ケーブルをむき出しにしたり商品の個性も強かったが、内装イメージの個性も強かった。ローコストでイメージを出した店も数多くあった。

商品が標準化されている現状、店のインパクトがなければお客様は足を運ばない。内装レベルも一定以上の「ユニクロ」や「アダストリア」には勝てない。それを理解する必要がある。

内装イメージをローコストでいかにインパクトを与えられるか、出店時考える必要がある。商品戦略や顧客対応力は全社ルーティンの仕事としてやっている。そこに「売場内装」の考え方も付け加えるべきだと考える。いろんなイメージテーマ戦略があると思う。

「色」「音楽」「映画」「絵画」「景色」・・・

■今日のBGM

回転率からみる在庫の信憑性 ➁

前回から引きずって、再度書く。

昔の話だが、マイカルが倒産危機にあった時、「特損セール」(社内的な呼び名かもしれない)を実施した。キャッシュインを増やすためで、特にストック在庫、倉庫在庫の一掃セールだったと記憶している。本部にいたので数店舗巡回した記憶がある。その時の商品は当然価値を下げての「自己見切り」中心での販売だった。よくこんな値段でストックしていたなと思う商品が多かった。つまりストック在庫の評価を下げてのセールだった。

売れる価格をジャッジするのは難しいが、利益を落とせないので、簡単に値段を下げられない。当然「売る努力」を求められるが、厳しい(動きが悪い)商品は2~3か月売場の動向をチェックしていたり、全店のデータを見ているとすぐにわかる。

ライトオンやマックハウスがそうだとは言わないが、厳しい状況になってくると利益重視になってくる。利益率を落とせば当然会社損益に大きな影響が出る。ただファッション業界で月0.2回転していない会社は考えにくい。資産効率が悪すぎる。まだデニムウエイトが高いのだろうか。

例えば、前期マックハウスの商品在庫は4348(百万)で利益が48.0%なら売価在庫は8362(百万)となる(単純計算)。年間売上18443(百万)とすると年間回転率2.2回転。月度回転率0.18回転。月度回転率を0.2回転にして年間2.4回転に上げるには、売価在庫を7684(百万)まで減らす必要がある。その差は678(百万)。月度0.02回転上げるだけでも(売上はそのまま)それだけ減らせねばならない。320店あるとすれば1店舗2.1(百万)、現状1店当たり在庫は26.1(百万)なので可能な数字ではある。ただ、それぐらい評価が難しい商品は現状あるのではないか。ちなみにその分の商品評価を下げれば単純計算で全体の利益率は43.4%になり4.6%ダウンする。上場企業は発表しにくい数字になる。

小売業は在庫が軽くなければ、動きが鈍くなる。商品が多すぎれば、そこから売れ筋を探すのに苦労するし、売れ筋を仕入れる枠も減る。悪循環になってしまう。動きの悪い商品を早く見つけて、できるだけ早くなくす必要がある。それをなくした金で新しい商品に変えていく。そうすることによって売場に鮮度感が出て、好循環になっていく。

経営上、なかなか手を付けるのは難しく、手を付けると損益に大きな影響が出るので在庫内容の精査は順番が後になる。ただ体質を変えるには荒療治が必要ではないかと思う。

■今日のBGM

回転率からみる在庫の信憑性

上場専門店の売上数字を、前回簡易的に計算してみたが、債務超過のタカキューは別にすると、ライトオン、マックハウスというジーンズカジュアルから派生した専門店の数字が気になったので去年の決算数値を確認してみた。

ジーンズショップは、サイズが細かく品番も多くメーカーも多いため、特にデニムの在庫が多くなり、商品が回転せず、売れていても、経営は非常に厳しい。特に現在はルーズなサイズ分類が中心になり、ライトオンでもデニムの在庫ウエイトは下がっており、売り場のボリューム感を出すために、一時は売台 にデニムの類似品が陳列されており、在庫を減らそうという苦労がうかがえた。

去年の決算を見てみると以下の数字になる。

・ライトオン 売上48229百万 利益率49.3 ※2019年対比65.2% 394店

自己資本比率44.2% 流動比率62.5% 

1店舗平均 月度売上10200千 平均在庫57300千 回転率0.18 

・マックハウス 売上18443百万 利益率48.0※2019年対比65.8% 320店

      自己資本比率35.8% 流動比率71.3%

      1店舗平均 月度売上 4800千 平均在庫26100千 回転率0.18

      (マックハウスは他の業態もある。)

非常によく似た数字になっている。

在庫が減ると自己資本比率は下がる。流動比率は上がる。経営分析は在庫高にも左右される。

きしくも、両社とも月度回転率は0.18となっている。年間定番商品が多いと回転率は低い。デニム中心になるとそうなるかもしれない。

ファッションで言うと春夏秋冬の四季がある。年4回衣替えがあり商品が変わるとして4÷12で1カ月0.33回転になる。現在は在庫勘定方法が変わったらしいがユニクロは月0.5回転だったと聞いているし、アダストリアも悪化していても前期は月度0.37回転になる。

両社の決算数字に対して異議を唱えるわけではないが、本当にこの回転率で商売をやっていけているのかとは思う。SPAであれば在庫日数が大きくても原価率を考えると許容範囲はあるが、買いの商材は支払いが半年後であっても、この回転率ならキャッシュが回らない。

この在庫評価は適正なのだろうか?販売できる値段になっているのだろうか?この在庫回転率を見るとこの商売は長く続かなそうに見えるが・・・

■今日のBGM

退店撤去費に思うこと

先日、友人からSC内で場所移動の話があり、移動は了解したようだが撤去工事の費用について電話があった。撤去は初めてでその経費の大きさに驚いたようだ。

撤去工事(原状復帰)については、おそらくいろんなところで不平不満がたまっていると思う。特にこの厳しい状況の中そこまでする必要はあるかということが多い。

まず、契約書で原状復帰工事の項目がどうなっているかだが、不動産系のSCは契約書でデべロッパー(以下デベ)指定の業者で撤去工事をやることになっているケースが多く見られる。(流通系はそういう指定はほぼなかったように思う。)まず、その見積もりが高い。おそらく流通系SCと不動産系SCのテナントへの考え方が全く違うことが起因していると思う。いろいろ書くことはあるが、不動産系SCと契約する時は、指定業者以外の業者(いつも内装関係をやってもらっている業者)でできるかどうかの交渉はする必要はある。契約文面はなんだかの形で変更してもらったほうがいい。

次に、現状は使えるものは使って出店するケースが多い。退店時に次のテナントの意向を聞いてもらって撤去範囲を確定してもらうことが必要だと思う。そこをきちんとつないでもらうように交渉する必要がある。

さらにできるかどうか可能性は低いが、使えるものは使って出店する場合、契約時に引き渡された状態を「現状」としてもらえればコストはさらに低くなる。「入店してもらいたい」、「入店したい」気持ちが、デべと出店者のどちらが大きいかだ。デべがどうしても入店してほしい時はその話し合いも必要だと思う。嫌がるとは思うが催事契約もありだと思う。

退店時の原状復帰での交渉が難航したことは数多くある。デべからの要望で多いのが、「撤去工事はデべでやるので、その経費をデべに払ってくれないか。」というもの。

撤去工事は例えば天井はスケルトンにして返却する(契約書上)。スプリンクラーもあるので脱着にコストがかかる。ただ現状大きく天井の仕様を変える後継テナントはない。ほぼそのままの状態で使える。後継テナントも使える什器や照明は再利用したいのでそのまま使うケースも多い。天井以外のことも加えると、おそらくデべの見積もり額と実際の撤去工事費では大きく差異が出る。その差異分テナントが多く払うことになる。その差異額はどう会計処理をするのか知れないが、そういう要求は普通にある。その時は「金は払うから、撤去した写真を、送付してほしい。」と頼めばいい。実際は使えるものは使うので、「再度細かく詰めていきましょう。」という流れになる。

本来の撤去工事は全くのスケルトンにして返す工事だ。昔のようにブランド、ショップの個性を打ち出した店であれば、デザインや仕様の変更をして出店するので、スケルトン状況が望ましかったと思う。ただ現状は天井や床や造作を大きく変えるケースは少なく、残せる部分はあり、それを利用したほうが出店コストが下がるなら、利用するものは利用する。

退店時の打ち合わせは一番いやな仕事だ。後ろ向きの交渉だし、なんだかの理由があって退店する。この件は契約書の問題にもなってくるが、今までの経験から、お互い話し合って納得して退店したほうが今後のためにも間違いなく望ましいと思う。

今日のBGM

地方専門店は残っていけるのか。

昔の形で残っている専門店はまずないのではないか?

まず思いつくのはトラッド系の専門店。「VAN」から始まって「Jプレス」「ニューヨーカー」「エイボンハウス」などと、ちょっとそこからヨーロピアン「JUN」に流れた専門店。トラッド系は「ポールスミス」や「マーガレットハウエル」の品ぞろえに変わり、DC全盛時にオンリーショップになり、専門店としてはもうほとんど見ることはない。

DCブランドは大都市中心にオンリーショップを直営で展開したが、地方ではトラッド系の専門店が「ビギ」「ニコル」中心にFCとして広がっていく。現在はブランド衰退と同時になくなっている。大手のFCであった企業ももうなくなったか規模が小さくなった。

次にジーンズ系。ジーンズの人気に相まって広がりを見せた。が、おそらく在庫の問題や掛け率の件もあり、インポートデニムブームをピークに減少していく。「三信衣料」から「アーバンリサーチ」を立ち上げ脱ジーンズを図ったアーバンリサーチ、「ポイント」から見事に転身したアダストリアが大手専門店に変化を遂げた。地方にはまだジーンズ専門店からジーンズのにおいがするセレクトに変わっていった店は多い。「Bshop」系のセレクトを加えて生き残っている専門店もある。ただエリアでのバッティングや在庫の重さで大きくはなっていけない。

1970年代後半くらいからじわじわ大きくなってきたセレクトショップも、今は完全に「自主MD+買い」に変化して大手専門店チェーンのようになってきている。(「トゥモローランド」だけ別路線に見えるが・・・)地方のセレクト系はファッションに興味を示す客数がダウンしてきたこともあり、大幅に減ってきた。昔は「ファッションは熊本から」と言われていたが、九州も、もうその面影はなくなった。

いろいろ思うところはあるが、規模を拡大せず、売っていきたい商品を、好きになってくれた顧客に売っていくしかないのかと思う。チェーン化を目指しても相当の分析努力がなければできない。ストライプインターナショナルの例を見ても流れだけでは成功はしない。

山口からのユニクロや水戸からのアダストリアのような企業はもうできないのだろうか?

余談ではあるが、私がいろいろお世話になった人が群馬県の桐生市でセレクトショップをやっている。工場をリノベする大きな投資をして「思い」がわかる店を作った。チェーン化しなくても「会社スタッフ」と「お客様」が満足してくれるならそれだけでいいのかもしれない。

今日のBGM

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