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無印良品の決算

大変恐れ多いのだが、無印良品の決算が発表されたので、感想を書いてみる。

無印良品については、今年1月と4月に主に四半期決算数字についてこのブログで書いている。1月には在庫が課題ではないかと記したが、中間決算のコメントで在庫処理をするので総利益率は据え置かれており、4月のブログには「ちゃんとした会社」と評価した。その時、無印良品の株でも買おうかと思ったのだが、買っておけば当時2500円前後の株が、今は株式分割し(1株が2株に)先週は3000円まで上がっている。つまり株価は、倍以上になっていることと同様の状況になっている。

前期の無印良品の決算数字だが、売上は7846億 前年比118.6%、営業利益738億 前年比131.5%、経常利益723億 前年比129.6%と過去最高数値となっている。売上総利益率も前年50.8%から51.4%と上昇している。 

このブログにも頻繁に書いているが、小売企業の健全度は、常に「在庫」で図っている。いろんな商品があるが、生鮮食品は賞味期限があり、当然早く売り切ってしまわなければならない。衣料も年間定番的なものはあるが、四季での着装感もある。さらに素材やスタイルの変化も早い。つまりなくしていくタイミングで利益率は変化する。そしてそのタイミングは企業がジャッジする。売れない商品をそのままにしていれば利益率は下がらないが、在庫は増えていくし回転率は悪化する。値段を下げてなくしていけば利益率は下がるが不良在庫は減る。つまり在庫で利益操作は簡単にできる。

無印良品の回転率については、どの数字が適正か見えない。今決算では2.36回転で前期2.27回転よりは改善しているが、前々期と同じ数字になっている。衣料品は定番志向が強いが、単価設定を考えれば年間3回転はしなければならないと思う。ちなみに、競合他社のパルグループの年間回転率は5.3で、アダストリアは4.8回転となっている。住まい関連でもニトリは4.3回転しており、一般的には2回転後半くらいのようだ。食品で菓子類をネットで調べると年間5回転くらいだし、レトルト商材も年間5回転くらいと出てくる。以前も書いたがスキンケア中心の企業である「ハウスオブローゼ」の回転率が2.2回転と低く利益率が71%と高いので、おそらくスキンケア商材の在庫が回転率を引き下げ、衣料品と共に利益率アップにも寄与しているのではないかと思う。

近年の無印良品の出店傾向は、他社の大型モール中心の戦略とは大きく変化しているように見える。路面の大型店や、地方のCSC(コミュニティSC)に隣接しての出店など独自性を見せている。特に大型化を進めており、イオンモール橿原に今春2500坪弱の店舗を出店している。決算ごとに発表されるデータブックで数字を見ると、2025年の売場面積は2021年比で191.4%とほぼ倍増している。ちなみに売上の2021年比は173.5%で売場拡大に追い付いていない。㎡当たり売上は2021年が54.7(千)に対して2025年度は43.7(千)であり、㎡あたり在庫は2021年の47.9(千)に対して129(千)となっている。この数字を見ると、売場の大型化に順応した適正な在庫をつかめてないようにも見える。売場の大型化コンセプトや出店戦略が先行し、動向を見ながら売場の効率を探っている状況ではないだろうか。

諸事情があったのだろうが、関東最大級と言われていた東京板橋の路面店が3年で閉店というニュースもある。まだまだ出店戦略は試行錯誤を繰り返していくだろうと思う。現状の大型モールへ大型店舗を出店できないなら、イトーヨーカドーが狙っているCSCへの出店やその近辺への路面戦略は正解だと思っている。

企業としては、適正な売場面積と適正な在庫の指針を明確に示してもらいたい。その上で「これがいいより、これでいい」のコンセプトを明確に伝えられる商品政策や売場の構築を、早急に目指して欲しい。

■今日のBGM

イオンモールに「おしゃれ感」は必要ある?

イオンモールには過去多店舗出店していたし、北海道、東北、北陸以外のイオンモールは、新店を除けば、ほぼわかる。レイクタウンや各エリアの中心となる大型モール以外にはもうファッション(おしゃれ感)を打ち出したショップはいらないと思っている。現役から離れ、小売業を冷静に見るようになってつくづく感じる。

一番大きな変動は、中心客層の変化で、高齢者比率の増加にある。郊外モールがスタートした30年前と比べて人口は減っており、そのうち60才以上は181.5%と大幅増で、人口構成比も19.3%から35.4%となっている。年金だけの世帯収入は平均年200万弱とされている。つまり30年前にファッションを語っていた客層がどんどん高年齢層に突入している現実があり、ファッションを語るべき層は激減しているということになる。

好調を続ける企業は「ユニクロ」、「無印良品」、「ニトリ」や「ABCマート」などのフル感性ターゲットの企業が多い。そしてまさしく「これがいいより、これでいい」という「無印良品」の目指す満足感が主流になっている時代のような気がする。そしてここではよく書いているが、「生活感」を感じる商品のニーズが強い。「生活感」の定義には、商品や着装感だけでなく、買いやすさや親しみやすさなどの売場環境も含まれている。

月度毎に発表される上場企業の9月の売上状況を見ていて、事業再生中の「タカキュー」が前年比79.7%と異常に悪い数字に終わっていた。企業譲渡された「ライトオン」が84.6%であり、その数字をも下回っている。もっとも、9月は日曜が前年より少なく、猛暑が続いており、衣料店舗には大きなアゲインストがあった。

実は、少し「新タカキュー」には違和感を持っていた。HPが変わったのだが、IRを見てファッションアパレルへの変化を感じた。企業のイメージ戦略を意図的に大きく変えたのだろうが、ニュースリリースや代表挨拶は昔のファッションブランドのようだ。(ポーズした社長の写真は必要?)決算説明会資料も余り響かず、イメージ戦略的に見える。

決算数字だが、最近の数字では第二四半期決算数字が発表されており、売上高は前年比91.2%、前前年比86.1%とマイナストレンド、売上総利益率は本年が62.4、前年62.1、前前年61.5と微増になっている。上期営業利益はそれぞれ3157(千)、101519(千)、55811(千)で、第二四半期時点の在庫で回転率は今期1.23、前期1.34、前々期1.48となっている。大きく変化はないが、売上は厳しくなりつつあり、利益率を上げる方向に向かっているように見える。そして営業利益は厳しい数字になっている。量販系の専門店と思っていたのだが、60%以上の利益率は必要なのだろうか?

近隣のイオンモールに出店しているので店もよく見ているが、たしかに整然とされており、ストアメイキングマニュアルに沿った売場だが、入りやすくはない。商品も手に取りにくい。つまり、整然としており、着装感を演出強化しているが、SCの客層とはあってなさそうに見える。もう少し価格訴求をしたりして、賑わいを作り、入店を促した方がいいように感じる。現状では、郊外モールよりターミナルに近い商業施設の客層のほうがマッチしているのではないだろうか。イオン系の企業だったためにイオン系のSCに多く出店しており、新しくした目指すべきコンセプトと客層感の違いが少し大きいかもしれない。

RSC(大型モール)とGMSが両立していた時代は終わり、GMSは淘汰されようとしている。そのためか、現状のRSCの客層はGMSの客層に近づいてきている。特にイオンモールの客層には、その変化を強く感じる。その流れをつかめない店は、他のSCで戦うか、RSCの主流になりつつある客層に対応していかねばならない。もう標準型のイオンモールにはファッション(おしゃれ感)を打ち出す店は、多くはいらないのではないだろうか。

■今日のBGM

アンドエスティの少し気になること

アンドエスティ(アダストリア)の中間決算が発表された。売上前年比102.6%、売上総利益率前年同期比-0.5%、営業利益前年同期比-19.4%、期末在庫前年比98.7%となっている。夏商材の在庫処理で値引き額が拡大し利益ダウンになったようだ。春夏商売はプロパー消化ができず、在庫を持ち越さないように処分した結果と会社は発表しており、その結果の数字になっている。

前回のブログにも書いたが、小売業の課題は、ターゲット年齢層の絶対数の減少にあると思っている。ファッション業界では、より一層ターゲット年齢層は減少しており、現実的で、リーゾナブル価格への流れが強くなっていると感じている。そしてその流れにうまくマッチしているのが「ユニクロ」や「無印良品」で、年齢層の幅を広くしている。

今までのファッション業界は、それぞれ細かなベクトルがあり、その細かな客層のシェア率を上げ、客数を拡大していき大きくなっていった。そしてファッション業界に生活感はあまりいらなかった。ただ現状はその層の絶対客数が減っているし、高年齢化が進むことでファッションでも生活感がキーワードになりつつある。

アダストリアに、そういう状況に対応するブランドはあるのだろうか?ジーンズ業界出身でよく似た企業だと思っているパルグループは、「3コインズ」で幅広い年齢層からの支持を得ている。前期「3コインズ」の売上は709億と発表されており、パルグループ売上2078億の34%を占めている。アダストリアでの基幹ブランドは「グローバルワーク」で前期売上は517億でグループ売上2931億の17.6%の売上構成比になっている。ただ「グローバルワーク」が広い年齢層に向けたブランドとは思えない。売場作りや演出を見る限り、高齢者は気安く入店できない。アダストリアで考えると「スタジオクリップ」がそのグルーピングかもしれないが、あまり大型化、多店舗化しているようには見えない。

アダストリアとしての方向性は、むしろ現状のターゲットのさらなるシェアアップに向いているようにも見える。衣料服飾だけでなく「飲食」への進出、アウトドアブランド「カリマー」の株式取得、プレステージブランドの開発など従来の客層のカテゴリーの幅を広げる方向のように見える。年齢層を広くとらえる生活雑貨「ジョージズ」も取り込んだが、本格的な動きは見えず、そのグループのライバルブランドと戦うには相当な努力が必要だと思う。一般的には、新しいカテゴリーに新規参入して成功するのは簡単ではない。

年齢層の幅という意味ではイトーヨーカドーとの「ファウンドグッド」の取り組み中止と「フォーエバー21」の撤退は大きかった。やはり量販店の客層の幅の大きさや、低価格商材の「デザインと品質」には苦労したと思う。そのゾーンが得意な取引先もあるが、企業体質が違うしバイヤーの感性も違うので、うまく取り込めてなかったのではないだろうか。アダストリアの従来のターゲットとは、想定外のニーズがあったのだと思う。そういえば「ユニクロ」の柳井氏はジャスコ(イオン)出身だし、「無印良品」は西友が開発したショップだ。やはり企業の色が違うのかもしれない。

現在のアンドエスティは、昔からよく知っているアダストリアと違ってきているように見える。ここまでブランドを広げていくとは思ってなかった。経営を次の世代にタッチしたのだと思うが、今戦っている年代層はどんどん少なくなっていくと危惧する。企業としては、少なくなりつつある現状の客層のシェアを上げる戦略に見えるが、幅広い年齢層に取り組んでいくことには目を向けないのだろうか?

■今日のBGM

生活感ある商品を売る

週1.2回は、買物に行く。ほとんどが食品とデイリー的な雑貨の買物になる。食品の買物を見ていてもやはり値段が大きなポイントになっている。明らかに昔に比べて高い。そしてロスリーダーとしての食品売場ではなくなった。つまり昔は食品でお客様を呼んで、衣料品などで稼ぐという構図だった。もうGMSでは食品で利益を確保しなければ全体の利益構造が崩れるようになっている。それだけ食品の構成比が上がっている。

以前からずっと書いているが、お客様となる年代層の変化も大きくなっている。20年前の高齢者人口(65才以上)構成比20.1%から2025年は29.6%と大幅に増え、20年後には37%まで高まる見込みとなっている。つまり、嗜好品の購入頻度は下がり、食品中心の必需品中心の購買動向になっていく。

そういう中、中小小売業の倒産も増えてきている。2024年には企業倒産件数が、2013年以来の1万件を超えている。小売業の倒産も倒産件数では前年比117%となっており、特に資本金5000万未満の小規模倒産が増大している。需要の変化や、人手不足と人件費の上昇が大きな要因になっている。

衣料や服飾系の店は、いろいろな個性を打ち出して、その個性をMDテーマとして品揃えしてきた。さて、今後も従来の「店の個性」を打ち出した品揃えで戦えるのだろうか?お客様の生活スタイルも変わり、さらにターゲットの客数が大幅に減ってくる。おそらく10年前と同じような感覚で同じような品揃えをしていれば、客数の自然減もあり売上は10%近く落ち込んでいるのではないだろうか?富裕層対象以外のブランドビジネスをしている店は、当然もっと厳しくなってきていると思う。売れるブランドも顧客はだんだん減少していき、新しく出てきたブランドの影響を受ける。ターゲット年齢が若ければ若いほど、その人気は長続きしない。単純に人口構成比でそれはわかる。

今までのMDの基本は「差別化」だったのではないかと思う。いろいろな差別化がある。店の大きさや、演出の仕方。当然、商品のプライスラインやトレンド性もある。しかし、今後は「差別化」すればするほど、客数は減っていくのではないだろうか?今後は、表現が難しいが「生活感」が基本になるような気がする。

「生活感」はいろいろな角度で捉えられるが、「価格志向」もその要素だと思う。生活感には「買いやすい」「手が出しやすい」という意味も含まれている。ちょっとイメージが違うかもしれないが。高級車のレクサスにも「UX」や「NX」もあるし、ベンツにも「A」や「GLA」も出てきて、手が届きやすいイメージも作っている。ファッションで言うと、サイズが大きめなシルエットの服や、シンプルなアイテムの商品が増えてきている。そしてその組み合わせでまとめ買いをさせる。どちらかというと商品の個性よりも「着装提案」のイメージが強くなっている。単品の値段を下げ、買い上げ点数を増やそうとしている。「ユニクロ」を想定してみればわかりやすい。他には「フル感性」への提案が必要になってくる。当然若い客層の商品を見せてはいくが、サイズ感や着装感は年代を意識させない事が必要になってくる。「ユニクロ」もそうだが「無印良品」も非常にうまい。

過去の成功体験での客層はどんどん離れていき、さらにその客層は生活感を増している。お客様の変化に気づかなければ、数字が厳しくなるのは当たり前のことだ。不安定な経済環境もあり、広い意味での「生活感」が小売業のキーワードになってきていると思う。

■今日のBGM

百貨店、専門店、GMSは相容れない

商品担当(バイヤーなど)について書こうと思っていたのだが、いろいろ考えていると、やはり業態によってその仕事も変わり、一概に書けないなと思ってしまった。当然客層によって仕入れる商品は変わってくる。

百貨店には、いたことがないので、その業務はわからない。百貨店は、元呉服商が多く接客力があり、売場は天井が高く、高級感を打ち出し、内外のブランドを売っていくという印象が強い。そういう意味で、百貨店バイヤーは「ブランドを持ってくる」「ブランドを見つけてくる」というイメージがある。例えば、ブランドを日本に初めて紹介した人として百貨店バイヤーを紹介したりする。そして百貨店メーカーにMDをさせて、売場を提供し、売れた分を仕入れるという形態が主流だったと思う。伊勢丹に「スライスオブライフ」という自主の売場があり、よく見に行ったがここでも「ブランドを持ってくる」型の品揃えショップだった。つまり百貨店のバイヤーの仕事は「ブランドを見つける」が主要業務のような気がする。

専門店はその名の通り、特定分野の商品を限定し、専門的に販売する店となる。商品を絞り込むことで品揃えに細かさが出てくる。品種単位まで細かく管理することで、顧客の満足度を高める。商品の値段やテイストなどでいろいろなタイプの専門店はあるが、その専門性に応じたバイヤーの知識や感度が必要になる。さらに主に買取商品が多く、消化率から利益面や商品回転率も考えねばならず、数値意識も必要になる。専門店のバイヤーは「売れる商品(単品)をいかに見つけるか」「いかに利益を稼ぐか」が業務だと思う。

GMSは大きな面積で、衣食住幅広く品揃えし、所謂大衆向けの大きな小売業態ということになる。いろいろなセグメントはあるが、衣料品のバイヤーは特に値段を意識し、少ない在庫で、商品の高回転を求められる。ただ専門店と違い、他業務へのジョブローテーションも多く、専門性は弱い傾向はある。尚、取引先は、量販店対応の取引先が中心になっている。量販店のバイヤーは「価格」「回転率」を中心に考えて動いていたと思う。

つまり、やっていることはほぼ似ているが、各業態によって求められる仕事が全く違うことがわかる。

以前、イトーヨーカドーに伊勢丹のカリスマバイヤーが招かれて、衣料品の立て直しを図ったが失敗に終わった。おそらく今までのそのカリスマバイヤーの知見がGMSでは全く必要なかったからだ。衣料品を売る目的が違うし、お客様が選ぶ目的も違うからだ。おそらくGMSにいた人達は誰も成功すると思っていなかったと思う。

イトーヨーカドーとアダストリアとの「ファウンドドッグ」も、前回の失敗に少し似ていた。アダストリアの本来の出店場所であるアリオのような大型モール(RSC)内のイトーヨーカドーでは、ある程度は戦えてはいたと思う。ただ、アダストリアが未経験のGMS(CSC)では、全く売れなかったのではないだろうか?専門店は当然出店する場所を自店のMDを考えて選ぶ。自店のMDをよく知っている開発担当者が出店計画を立案する。おそらくイトーヨーカドーが個店毎に出店依頼していれば、全店には絶対出店していない。そこが、この結果になった。

商品ターゲットと客層があってなければ、絶対売れない。客層が違う店に同じ商品を品揃えしても当然売れ方に変化が出る。狙っている客層が違う店に、売りたい商品を押し付けても売れない。同じ客層にシフトさせるのも個店の役目かもしれないが、SCの業態が違えばやはり難しい。ファッションで、業態の垣根はなかなか崩せない。

■今日のBGM

自主再建が厳しかった3社の現状

このブログを書き始めて、厳しい状況を分析してきたライトオン、マックハウス、タカキューの3社は自主再建ができなかった。売場や数字を見ているとその状況はよくわかったし、さらにそういう結末も予測していた。特に持論でもある「在庫過多」から導かれた結果だったように思う。そういう経緯もあり、現状の3社の決算状況は四半期ごとに興味深く見ている。

ライトオンもマックハウスもジーンズカジュアルを打ち出した専門店で、その業界では1位、2位の企業だった。その2社がそのビジネスモデルで自主再建できずにTOBされたということは、もうその分野では成功はできないということになる。当然、商売の失敗はあったが、環境変化も大きな要因だった。ライトオンの直近の決算を見てもまだ企業のマイナスを処理中の印象しかない。戦略としてもEC強化くらいしか前向きなものは見えない。親会社にあたるワールドにとってのメリット部分は活かしていくとは思う。別の交渉にはなるが、好立地物件へのグループブランドの出店などは想定できる。ただワールド傘下ということもあり、規模の縮小はあっても継続事業を確実に進めていく気配は見える。

マックハウスは親会社のチヨダからのTOBを経て再生ファンドの傘下に入っている。出資しているジーエフホールディングスという会社を調べたのだが、どうもよくわからない。傘下のアパレル企業としてはジャバG(神戸の老舗企業、ブランドはロートレアモン、子供服のべべなど)、シティヒルなどがある。このTOBの経緯も分かりにくい。間違いなく親会社チヨダは切り離したかったということはわかる。市場取引価格330円の株が32円でのTOBということに現れている。ただファンドの思惑と違い、その後の株価が低迷し、そのため資金調達スキームが崩れそうになったようだ。そこで金融事業と題してビットコイン投資を始めている。レディスカジュアルのアナップと同じ手法だ。ジーニングカジュアルとしての企業再生とはかけ離れているようだ。コアの事業として従来の事業が継続できるかどうかも不確実な状況のような気がする。

債務超過だったタカキューは昨年の1月に官民ファンドによる再生支援を受け、金融機関、投資ファンドから第3者割当増資を受けている。そして同時にイオンとの提携を解消している。債務超過解消した前年数値は、落ち込んでいた売上も96.2%まで戻した。ただ今期第一四半期は90,8%と伸び悩み、前期に比べて利益率は+2.4%だが在庫は119.0%と増加している。ちょっときれいになったHPに違和感を覚えたが、イオングループとして再生に取り組んだ方法とは違った角度で取り組んでいる様子は伺えた。ただイオングループの力は相当大きかったと思うのだが・・・

この3社の取扱商材はもう大きな市場ではなくなりつつある。ジーンズ業界はコアの客層は、地元にあるセレクト店舗に流れ、そうでない客層はユニクロなどで充分間に合っている。スーツを中心にしたビジネス顧客に向けたファッションも、カジュアル化が進んでおり、市場全体が小さくなっている。さらにそのターゲットのカジュアル衣料を扱う店は山ほどある。小さくなったターゲットで商売できるようにダウンサイジングするか、他の業種を取り組むしか対策は考えられない。

現状の数字や再生支援している企業を見ると、存続に向けた大幅な縮小案と現状の立地の有効利用が可能なワールドがバックアップするライトオンしか、先が見通せないように感じる。それでも規模は大幅に縮小されると思う。さらに、ファンドを利用しての再生は短期間での収益改善を目指すケースが多く、永続的な企業運営には疑問符が付く。

今後の数字も確認していこうと思う。

■今日のBGM

業界大手2社がTOBされたジーンズカジュアルは大幅規模縮小するしかない

難しい靴業界で成長続けるABCマート

ここ数回ずっと在庫のことを書いてきた。自分で商売するときは「在庫を持たない」商売をしようと思っていた。過去小売りの仕事をしてきて「ジーンズカジュアル」と「靴」は在庫を持って商売しているイメージしかなかった。両カテゴリーに言えることは、サイズが細かいということになる。細かなサイズに合わせて在庫を持てば当然在庫は増える。中心サイズがなくならないように多く持つと1品番当たりの在庫は増えていく。さらに定番的な商品が多く、値段を打ち出しにくい。

ビブレの店長時代、店長は自主直営売場の数値責任を持っていた。当然各売場には、仕入れ権限のある売場の責任者がいるが、MD計画、数値計画は店長が確認する。一番利益面でわかりにくかったのが靴業種だった。サイズが多岐にわたり在庫も多くなる状況はジーンズと同様だが、ジーンズの売場はトップス、アウターでの調整ができる。靴は皮革とケミカル、スポーツなどに分かれるが、調整できるアイテムは少ない。取引先との商売条件も多くあり(消化、委託など)買い取り商材は大きな値下げが発生することも多く、利益率が高い状況で安定することがなかった。難しい業種だった。

ジーンズのナショナルチェーンはどんどん厳しくなり、全国チェーン展開の専門店は近年のライトオン、マックハウスの事業譲渡もあり、ビジネスとしては成り立ちにくくなってきている。一方靴業界も同様でありアメリカ屋靴店やマルトミなどの倒産例もあり、特にカジュアル志向が強くなった現状では靴業界も淘汰されようとしているように見える。そういう状況下、靴業界のABCマート、チヨダ、ジーフットの大手3社の決算数字をチェックしてみた。

売上面ではABCマートの絶好調ぶりが群を抜く。2025年決算で3772億計上されておりコロナ期以前の数字から136.7%伸長している。チヨダはマックハウスを除外して調べてみた。売上数字は年々マイナス傾向で1000億企業だったのだが、2025年787億まで落ち込み、コロナ前からでは89.5%の売上となっている。ジーフットは2025年売上が600億でコロナ前からでは67.3%の状況となる。

利益率は2025年決算でABCマートは50.5%、チヨダは47.7%、ジーフットは44.1%。営業利益率はABCマート16.8%、チヨダ5.3%、ジーフット-1.3%となっている。チヨダはコロナ期以外黒字体質ではある。ちなみにジーフットは2023年に債務超過になっており、2025年親会社のイオンからの第3者割当で解消している。1店舗当たり売上はABCマート248(百万)、チヨダ87(百万)、ジーフット63(百万)と大きな差がある。

一番重視している回転率はABCマートが年2.04回転で数年はほぼ2回転前後。チヨダは年2.21回転と前期大幅改善しており、過去の1.8回転前後から良化している。ジーフットは年1.46回転で、過去の1.3回転前後からは改善しているがまだまだ低い。

完全にカジュアル化の波が大きく、スポーツブランドを打ち出すABCマートの出店戦略が成功しており、特に売場大型化がその要因にもなっている。近年主流になった大型モール(RSC)の全国拡大に併せて企業規模が拡大している。逆にチヨダは大型モールへの流れに乗れず、従来のGMSやSCでの商売を続けている。ジーフットは当然イオン系SC中心になるが、イオンGMS内(所謂ジャスコ)の靴売場も運営しているため、SC部分への出店が大きく出遅れた。さらに現状のGMS内の衣料服飾品の赤字体質が続けば、企業存続にも赤信号が灯る可能性もある。

在庫面に関して考えると、ABCマートは常にプライスダウンを打ち出し消化率を上げようとしている。売場内でも大きなセールコーナーを取っているし、いたるところで催事も見かける。アパレルを加えた売場が増えているのも在庫面の課題解消策かもしれない。それでもあと年0.5回転くらいのプラスは必要だと思う。チヨダも回転率の大幅上昇もあり、意識は高まっている。逆にジーフットは決算時に在庫課題はいつも上げているが、全く改善は見られない。

追随する企業のアゲインストの流れが大きく、対抗する企業がない状況下で、カジュアル志向が続けば「ABCマート」1強の流れは確定的になっている。

■今日のBGM

ららぽーととイオンモール ➁

前回、セレクト系のショップのRSC(大型モール)への出店傾向についてコメントした。そしてその出店先は「ららぽーとに限られているように見える」と書いた。RSCのアッパー層をターゲットにするセレクト系ショップのリーシングが、イオンモールとららぽーとの立ち位置の違いに現れてくると思うので、再度まとめてみる。

まず、ユナイテッドアローズの出店について調べてみる。主な出店ブランドは「UAグリーンレーベル」であるが、このブランドのターゲットはRSCや地方ターミナル客層を想定している。そのため、当然出店店舗が各地のRSCには多くなる。ららぽーとへの出店は11店舗(ラゾーナ含む)、イオンモールへの出店は3店(レイクタウンとモゾ、京都)となっている。その他の店舗もテラスモールやマークイズ横浜など大型物件中心になる。イオン系ではモゾや京都はもともとの開発運営母体からイオンモールが引き継いでおり、実際は規模感の大きいレイクタウンのみへの出店とみてもいいような気がする。「ビューティー&ユース」もららぽーと2店、イオンモールはなし、「シテン」もららぽーと9店、イオンモールは前述したモゾのみ。やはりユナイテッドアローズのRSC出店はららぽーと中心であり、他は各地の大型モールへの出店(テラスモールなど)という流れになっている。

ビームスの出店については、ビーミングでららぽーと9店、ビームスで1店。イオンモールは前述したモゾのみ。その他西宮ガーデンズ、コクーンなど。シップスについてはららぽーと2店、その他テラスモールや西宮ガーデンズ。ベイクルーズはレリュームを中心にららぽーとに20店舗弱。ららぽーと福岡にはベイクルーズストアがあり、エキスポシティにはスピック&スパンも出店している。イオンモールはレイクタウン1店のみで、その他テラスモールや西宮ガーデンズには出店している。

上記データを見ると、やはりセレクト系の出店は大手SCではららぽーと中心であり、その他テラスモールや、西宮ガーデンズのような大型化され立地にも恵まれた都市型物件への出店がほとんどとなっている。そして、イオンモールへの出店はほぼレイクタウンだけという結果となった。

セレクトショップへの客層は、都市型の客層が多い。都市部の路面店やターミナルの駅ビルで買い物するお客様が中心となっている。その流れで見ると、ららぽーとのほうが、比較的都市部に近い場所に立地し、イメージも大型モールではあるが駅ビルに近いかもしれない。

イオンモールは、もともと「狸が出るところに店を出せ」からスタートしており、地方郊外の大型モールの位置づけになっている。さらにキーテナントがGMSのイオンというSCでは、ターゲット客層が量販店寄りになりつつある。SC売場面積の四分の一くらいを占めるイオンで中心客層が絞られてしまっている。ららぽーとにはその見え方はなく、SCに「小売企業の色」が強くない。現状一番減少している業態であるGMSの客層がメインターゲットでは、SC内でもアッパーゾーンを取り込みたいセレクト企業には魅力は小さい。レイクタウンへの出店は、他のイオンモールと違いモールにバラエティ感があり、GMSとしてのイオンの匂いが薄いからだと思う。

ずっと書いてきているが、イオンモールから量販店イオン(ジャスコ?)の匂いが小さくならないと、何年後かには、イオンモールも今のGMSと同じような状況になってしまいかねない。

■今日のBGM

若干アッパーゾーンの客層

近頃は、このブログで「ユニクロ」や「無印良品」の商品戦略や売場を持ち上げてばかりいる。5年位前までは「ユニクロ」を真剣に見たことがなかったし、「無印良品」も近年やっと無印創業時以来の頻度で通っている。10年くらい前は、店舗巡回の折にセレクトショップのアウトレットを見て回り、掘り出し物を見つけては喜んでいた。生活環境の変化で「衣食住」の買い方は変わる。そして、コロナ以降、小売業界も2極化が進んでいる。

百貨店やセレクトショップ等でプロパー価格での買物をする層は、どれくらい減っているのだろうか?ネットで調べると、百貨店売上は1991年9兆7130億がピークでそこから大きく落ち込み、近年はインバウンド効果で昨年は5兆7722億まで持ち直しているようだ。この現象はいろんなデータが発表されているので周知のことだと思う。ただ地方は現状、百貨店は淘汰され、購買層も大きく減少している。

衣料関連の専門店の動向をチェックする。コロナ前の売上と近年の売上を比較してみる。前述したユニクロはコロナで落ち込む前の売上比で135.5%(2020年比)、無印良品は150.8%(2019年比)。その他企業でもアダストリア123.9%、パルG145.7%、ABCマート126.4%、ニトリ147.3%、西松屋134.6%とコロナの不振をばねに大きく伸長している。逆にタカキュー43.1%、ライトオン52.5%、マックハウス55.0%とコロナを乗り越えられず、会社の方向性が変わった企業もある。そういう中で比較的アッパーゾーンがターゲットだった企業も、まだ元の数字に戻っていない。ワールド81.0%、オンワード76.4%、ユナイテッドアローズ84.5%、TSI91.4%とまだまだ顧客を取り戻していない。つまり悪い流れだった企業は淘汰され、さらに値頃価格志向の企業が上向いているように見える。

百貨店が中心の販路だった企業は当然のように厳しい。そしてユナイテッドアローズのようなセレクト業態も、前年数値をクリアしては来ているもののコロナ以前の数字にはまだ届いていない。課題は、百貨店等値段が通る販路のマイナスをどこでカバーするかになっているようだ。当然EC戦略が大きい流れではある。EC売上高はオンワード431億、TSI430億、ワールド356億と非常に大きい。しかしまだまだ過去の全体数字をカバーできてはいない。そしてここにきて大型モールへの取り組みも増えてきている。

近年、大型モールにセレクト系の店舗が急増している。ユナイテッドアローズは「グリーンレーベル」というそのゾーンのターゲットのブランドを作り広げてはいるが、ビームスやベイクルーズも「ビーミング」や「レリューム」などのブランドで広がってきている。「グリーンレーベル」の店舗は現在91店舗もある。ただし、他のセレクトショップは出店場所を見極めているようで、現状は大型モールの中でも出店は「ららぽーと」に限られているように見える。(ここに量販系イオンモールとららぽーとのモールの格差が出ている気がする。)旧百貨店対応メーカーもメーカー名を打ち出して出店が増えている。さらにオンワードが「ウィゴー」をグループ化しワールドも「ナルミヤ」や「ライトオン」を傘下に入れており、従来の販路とは違う企業を積極的に取り込んでいるようにも見える。

アッパーゾーンを取り組むより、ボリュームに流れるミドルゾーンを、どうやって引き留めるかが今後の小売業の大きな戦略になってきそうだ。

※日曜日、駅前のヤオコーに朝10時前に買い物に行った。入口近辺に備蓄米が2160円で山積みされていたが、販売員だけでお客様はいなかった。その後売れないので米コーナーや、特売品のエンドで販売していた。加熱した報道にあった混乱は、もう終了したのだろうか?

■今日のBGM(ネットで映画を再度見直したので・・・)

アリオ、イトーヨーカドーとファウンドグッド

飲み会に行く前に、川口そごう跡の「ららテラス川口」でも見ようと、川口駅に立ち寄った。そのついでに「アリオ川口」にも足を運んだ。久々に「アリオ川口」を見て、いろいろ考えさせられた。

まず、イトーヨーカドーの食品売場のレベルは、相変わらず高い。足元のマンション群に囲まれ、その客層への総菜中心のデイリー食品は充実している。値段もいつも買物しているイオンよりは安い。エリア特性があるのか生鮮3品の売場の大きさに変化があるが、相変わらず欠品は少なく、きちんと売場管理がなされている。売場が大きく、持て余している感じはあるが、足元商圏のシェア率は高そうだ。

撤退した衣料売り場だが、アダストリアとの協業の「ファウンドグッド」は、うまくいってないようだ。立ち上げの時に見たが、現状の売場はその時の売場より30%くらい縮小されている。やはり客層とのギャップが大きい。浦和イトーヨーカドーの「ファウンドグッド」をたまに見るが、イトーヨーカドー来店客とのギャップが大きすぎて、全く売れてないように感じていた。逆にモール内のイトーヨーカドーだと受け入れられているのかと思ったが、やはり客層のギャップはここでも大きかった。衣料売り場は「ファウンドグッド」を縮小し、量販店委託ブランドのコーナーを増やしている。所謂、メーカーコーナーで「クロコダイル」「ハッシュパピー」「ケント」「ギャロリア」「アンナルナ」「インスパイア」などのブランドがコーナー展開をしている。取引形態はいろいろあるが、最終商品リスクはヘッジできる取引だろうと思う。浦和店の衣料品売場も同じような展開であり、やはり従来のイトーヨーカドーのお客様中心であり、新しい客層は取り込めてなさそうだ。「ファウンドグッド」も、どのゾーンを狙っているか見えにくく、さらに「ユニクロ」「GU」よりは高い値段では量販店の顧客は取り込めない。アダストリアは今までの出店場所を選んでの出店とは違い、量販店の客層との相違に苦しんでいるようだ。人的課題もあり、どちらがリスクをかぶる契約かわからないが(おそらくイトーヨーカドー)、おそらく全店展開は難しいと思う。

「アリオ川口」だがやはり「イトーヨーカドーと〇〇の専門店」という域を出ていない。売場面積も3万㎡強と大きくもなく、イトーヨーカドー食品とシネマやジョーシンなどの強みしかなく、引き付けるテナントも多くはない。アリオはイトーヨーカドーグループの商業施設の開発運営会社(セブンアンドアイ・クリエイトリンク)のPMだと思うが、独立してのデベロッパー会社ではなくあくまでもグループの不動産管理会社にしか過ぎない。ということは、あくまでも発言力が強いのは「セブン&アイ」であり、独立性はほぼないという位置づけだと思う。そのためイトーヨーカドーの売上をどう上げていくかが主の目的になり、テナントのフォローや、パワーアップさせたテナントの導入がおろそかになってしまっている。イオンの本体のイオンリテールが運営する「イオンモール」が、モールとして完成度が低いのと同様の状況下にある。そのため大きな投資はかけられず、テナントの劣化が進み、モールとしての魅力はどんどんなくなってくる。独立性が強いイオンモールが運営する「イオンモール」との差は大きい。

間違いなく、脱GMSとしてのイトーヨーカドーは方向性が見えていない。SMもあれほどの大型売り場は必要なのだろうか?そして、特に衣料品撤退後の売場が解決できてない。そんな状況下では、モール全体の改善はどんどん後回しになる。発言力もなさそうな子会社では、モールのテナントゾーンのケアもできない。今後も、広域からとるべき客数は恐らくどんどん減っていくと思う。イトーヨーカドーグループ(ヨークホールディングス?)は、完全に迷走していると感じた。

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