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小売業に優秀な人材は集まるのか?

「人が集まらない」ことを書こうとしたのだが、まず小売業にはどんな人材が必要なのかを考えてみた。自分自身も小売業しかやってこなかったので、個人的には「小売業の優秀な人材」についてしか語れない。

やはり、視野が広い人だと思う。全体を見ている人というのかもしれない。

小売業の基本は現場、つまり店での仕事になる。店の仕事は、接客を中心とした販売が主な仕事と思っているかもしれないが、それは違う。高単価な商品を接客で売る店は当然のことながら最も重要視されるが、そういう類の店は非常に少ない。そういう意味で「ミステリーショッパー」などの評価は全く意味がない。店の仕事は非常に多い。接客とレジ作業はルーチンな業務だし、商品入荷時の検品や登録、品出し、商品の演出、POP作業もある。品出しも簡単な単品フォロー品と、新規商品群で違ってくる。レイアウト変更も伴う。そして、それぞれに守るべきマニュアルがある。例えば演出にはカラーコントロールもあるし、陳列にも最大陳列量などのストアメイキングマニュアルがある。

作業中、やるべきことだけに目を向けている人と、全体を見渡しながら動いている人に分けることができる。全体を見て動いている人は、指示を出せている。例えば演出を真剣にやっていて、レジのお客様に気が付かなかったりすることがよくある。それを指摘して、教育してもなかなか改善できないスタッフもいる。ただ、接客や演出で群を抜くレベルのスタッフもいる。でもそういうレベルのスタッフは当然全体も見えている。

本部での仕事も同じだ。店での仕事を経験して本部勤務になるケースが多いが、店や他セグメントとの協調ができるかがポイントになる。どうしても自分の数字を中心に考えてしまいがちになるが、本部の担当者の数値責任の範囲と、店の数値責任は必ずしも同じではない。本部はあくまでも店の数字を手助けする立場ということを忘れがちになる。あくまでもスタッフ(本部)はライン(店)を助ける位置づけということを理解しているかが大事な要素になる。そういう視野で小売りの本部の仕事はすべきだと思う。

ただ、そういう意識を持つ人材は、だんだん少なくなっている。以前の会社でも、「視野の広い」スタッフに支えられてきた。ただそういう人材も高年齢化して、若手からは数人くらいしか視野が広い人材は出てこなかったように感じる。新卒採用に関しても、定期採用は3年目くらいから始めたが、会社の規模は順調に大きくなっていったにもかかわらず、年々応募者は減り、コロナ前には東京、大阪、九州の説明会には数人しか応募がなかった。

話は逸れるが、新卒者の求人倍率を調べてみると、従業員5000人以上の会社の求人倍率は0.34倍、1000~4999人は1.14倍,300~999人は1.6倍、300人未満は6.5倍だそうだ。求人倍率は1人に何社から求人が来るかということなので、規模が大きくなればなるほどハードルが高くなっている。裏を返せば、大企業の人気は高い。さらに現状の給与、待遇面から大企業志向は強くなっている。これだけパブリシティで給与待遇のことが言われると、そこに目がいってしまう。中小小売業はどうしても構造的に待遇拡大志向には、ついていきにくい。

小売業はなかなか活性化しづらい環境に来ているようだ。特に中小小売業に若く視野が広いスタッフが増えなければ、新しく元気な企業が出てこない。だんだん面白くない業種になってしまう。実は、一番スタートアップしやすい業種なのだが・・・

■今日のBGM

仕入れるだけなら誰でもできる

ビレッジバンガード(ビレバン)の数字を見ていて、浮かんだのが標題の言葉になる。「仕入れる人」と「売る人」の気持ちが1つでないと商売はうまくいかない。できれば「仕入れる人」と「売る人」は同じが望ましい。小売業が大きくなると「商品部」と「店」との間に、多かれ少なかれ温度差は必ず出てくる。

ビレバンはマニアックな商品を仕入れて、さらに雑多な売場で、「宝探し感」ある店だ。そして、衣料品や雑貨(食品も)まで広範囲な品ぞろえになっている。商品の幅が広がれば広がるほど、マニアが欲しがる商品が見えてこなくなる。さらに店舗数が増えると、そういう商品の好きなスタッフも減ってきて、店の対応も店舗間の格差が出てくる。

35年以上も前のことになるが、インポートの品揃えショップを立ち上げようと動き回ったことがあった。そういうゾーンには一種のマニアのようなお客様がいる。そのお客様を見て、満足させる品揃えをすると大変なことになる。今はわからないが、その時代は単品では発注はできなかった。ミニマムの発注量が設定された。さらにアイテムのみの拾い買いなら原価は当然高かった。つまりトータルで提案しているブランドで、例えばカットソーだけ仕入れることは難しく、仕入れできても原価は高く発注量も設定される。当然返品はできない。そういう商品は評判が良くても売りづらい。つまり「見せる」だけの商品になることが多い。ただ、その商品があることによって店格が上がり、そういう商品の好きな人たちが集まる。ただ、「見る」だけのお客様は増えても、売上や利益は上がらない。そういう商品を仕入れるのは楽しいし、もてはやされるが、売れなければ商売は続かない。売れる商品の開発が必要になる。

さらに商品にも寿命はある。寿命がなさそうな商品群でもそれはある。食品に賞味期間があるように、衣料、雑貨にもある。商品を入れるだけでは、商売はできない。商品の寿命を考えてなくしていかねばならない。売場に手を加えて売る努力をする。ただ、それだけではよほど人気の商品以外はなくならない。売れ残った商品をどう処理をしていくかも非常に大きなポイントになる。値段を下げて売りつくしていくのが普通だが、値段を下げると当然利益は下がる。

「面白い商品があるから仕入れる」だけなら誰でもできる。商品を販売して現金にして、やっとその金で新しい商品を仕入れることができる。その理屈がわからないと商売はできない。立ち上げたインポートの品揃えショップの評価は高かったが、商売にはならなかった。

ビレバンには、昔やっていた会社で取り扱っていた商品も入っていた。ただシーズンが終わり、なくすべくタイミングでもそのままで、残品的にずっと残っていた。そのまま次のシーズンまであっても、もう売れない。売れ残り品はすぐわかる。

商売は「仕入れること」が一番楽しい。だが、売り切って初めて仕事は終わる。生鮮食品では、なくならなければ、廃棄するしかない。衣料品も雑貨も理屈としては同じで、売り切らないと、次の商品は仕入できない。その理屈を誰かが明確にマネジメントしないと、事業は成り立たない。

■今日のBGM

もう誰も小売業に参入しないのではないか?

小売各社が発表する、月次売上のデータがある。各社2月の数字を見ていて、ふと思い立って、以前コロナ前からの数字を毎年拾っていた月があり、そこに今年の数字を記入してみた。その対象月は12月と1月だった。既存店前年比のみを記入していたのだが、その数字を掛け合わせてみた。これで既存店の動向が明確にわかるわけではない。期中にできた店もあるだろうし、なくなった店もある。ずっとその期間、店がある割合はわからないが、指標にはなると思う。

12月はコロナ前2019年の数字から順に2024年12月の前年比までを掛け合わせてみる。2019年比ベスト5はABCマート145.4%、しまむら125.8、西松屋119.4、アオキ116.3、ハニーズ110.4となる。 ワースト5はライトオン49.0%、マックハウス73.5、ジーフット75.8、パレモ75.2、ビレバン77.0の順となる。 ちなみにユニクロは101.9、アダアストリアは98.7、ユナイテッドアローズ(UA)87.9となっている。尚、無印良品はコロナ期間の数字は発表されておらず、数字はつかめない。

1月はコロナ前2020年の数字から順に2025年1月までの数字までを掛け合わせる。ベスト5はABCマート120.6%、西松屋115.6、しまむら114.6、ハニーズ110.9、ユニクロ105.6 。 ワースト5はライトオン62.8%、ジーフット75.6、タカキュー76.3、TSI78.7、UA80.8の順となる。 ちなみにアダストリアは98.2、ニトリは101.4となっている。

繰り返しになるが、これが正確な流れではない、あくまでも個人的な指標ではある。

この数字を眺めると、必需商品、さらに値頃感がある企業はコロナ以降も安定的な数字になっており、あまり大きな影響はなかったように見える。逆にファッション感が高い会社はコロナ時の落ち込みが大きく(12.1月はバーゲン期にも重なる)、回復も遅い。さらにコロナで大きく数字を落とした企業は、この数年で会社組織も大きく変わっている。つくづくコロナ5年間の空白期間の影響は大きく、数字は最近やっと回復してきた感が強い。

それに加えて、以前このブログでも数字を出したが、購買客層の変化も大きい。日本の総人口は2000年と比べると約98%と微減となっている。一番大きな変化は65才以上の比率で2000年は総人口比17.4%だったのが、2023年は29.1%まで上昇している。65才以上人口は実に164.4%まで増えている。50才以上にすると人口構成比は38.6%から49.5%と広がっている。そして最も購買力がある15~49才は人口が81.7%まで減っている。つまり、小売りの販売環境も世間の流れと同様、高齢化に対応せざるを得なくなっている。その流れが数字の流れになっていて、「値頃感」、「必需品」という言葉がキーワードになっている。

商売を始める動機として、当然「儲けること」を念頭に置く。その上で「何を」「誰に」売るかを明確にする。スタートアップするのに「高い年代層」に「値頃品」を売るという発想は、あまり念頭に置かない。たとえ、それを念頭に置いたとしても、販売経路が限られてくる。郊外モールや、駅ビルからは誘致されにくい。「トレンド品」を「高感度な客層」に売ることはかっこいいし立ち上げてみたいが、現状の流れでは成功の確率は当然低い。

小売業への新規参入は、ますます難しくなってきている。

■今日のBGM

客層を選ぶのか、客層に合わせるのか?

各社の1月の売上速報を見て、ブログを書き始めて途中でやめた文章が残っていた。それを読んでいて、まとめきれなかったのだが、少し修正をしてみようと、再度書いてみることにした。

タカキューの数字を拾っていて、間違って第3四半期決算資料を開いてしまい、それを見ていた時に感じたことだ。数字に関しては改善を示しており、今期決算でどういう着地になるのかというところだとは思う。ただ、決算概要の中に「再成長に向けた課題解決」という項目があり、理路整然と示されているのだが、現実としてどうなのかと少し引っかかった。きれいな言葉で書かれてはいるが、現場はそう動くかなと思った。ターゲットを明確にしてMDを再設計するということだが、いかにも書類上のことのようにしか思えなかった。

タカキューはイオングループの会社だったし、まだ現在でもイオンは大株主ではある。イオンという会社は、やはり大企業であり、明らかに昔の小売業ではない。短期間だが、仕事をしてきてそれは痛切に感じた。特に従業員教育に関しては驚くほどの内容があり、小売の勉強をしないとついて行けない厳しさもあった。タカキューが、その環境下にいたということは、おそらく政策論は十分やりつくしているのではないかと思う。小さな変化は当然あるが、再成長に向けた今回の実施施策が、どれだけ従業員に響いたのかはわからない。外部から新しい風を入れて変革しようというのはわかるが、従業員はもう疲れているのではないだろうか?

私自身も明確にわからないので、文章がまとまらなかったのだが、一番気になるのは「ブランドを再定義する(ポジショニングを変える)」ことは正しいのかどうかということだ。このブログの標題の「お客様を選ぶのか、お客様に合わせるか?」が明確でなく、そこが一番すっきりしない。長年商売をしてきて、お客様が離れていった。その結果、数字が悪化している。離れていったお客様を再度呼び込むためにお客様に合わせるのか、きちんとした戦略を立てて、再度お客様像を変えるのかということだ。しかし出店場所は大きくは変わらない。従来のお客様がターゲットになる。新しいお客様を引き込めるかどうかのリスクは高い。

そして、再定義したポジショニングが得意な販売チャネルはどこなのか?どこにするのかも明確にする必要がある。ショップ運営で大事なポイントだと思う。ただ、今はもう自社のブランドポリシーを推し続けていくより、お客様に合わせていくしかないような気がする。もし「お客様を選ぶ」方向なら、今の出店政策を根本的に変える必要があるように思う。

この「再成長に向けた課題解決」を見ると、今まで繰り返されてきたことの焼き直しで、きれいごとにしか見えない。現場感が見えてこないこと、具体的な戦略の変化が見えないことを、従業員がどう捉えるのだろうか?そこが、変革のポイントになるだろうと思う。

やっぱり、書き直しても、うまくまとまらなかった。

■今日のBGM

店舗大型化への壁

先日、「グローバルワーク」が増床改装で売上を上げていき、アダストリアのコアブランドにしていくという記事についてコメントした。売場を大きくするということを、簡単に政策に上げるが実は非常に難しい。大型化したためになくなっていったショップは数多くある。

RSC(大型モール)を主な出店場所とするなら、売場は50坪以上で組み立てたほうがいいと思う。40坪くらいまでの小型店と、それ以上の中型店では条件面で差が出てくる。おそらく近年はその傾向が強いのではないだろうか?特にリーシングに苦労しているSCにとっては、空床期間は短くさせたい。さらにある程度の大きさのテナントを導入させたい。そのためには若干の条件面での優遇はある。例えば坪当たりの最低保証の金額を低くしたり、最低保証をなくしたりして歩率のみにする交渉も可能になる。

例えば、40坪が適正だったボリュームゾーンのメンズカジュアルの店で、売場を広げるには何をするか?まずプライスラインの幅を広げる。ブランド商材を投入したり、高感度商材を導入したりする。値段の幅を下に下げるのはなかなか厳しいので、ボリュームゾーンを厚くすることも当然考える。メリットはグレード感が出ることだが、デメリットは「値段が上がる」ということになる。さらに、カジュアルからドレスへの幅を広げることも考えられる。それにより、客層の幅は広がるが、ここでのデメリットは「客層の変化」「商品回転率の悪化」があげられる。雑貨類の拡大もある。ここまでになると、「商品品揃えの得意、不得手」というポイントも出てくる。アウター、カジュアル、雑貨とも仕入れの視点が変わってくる。それだけに品揃えの偏差値は上がる。つまり、現状の店に絶対プラスすべき商材やブランドなど必然性がなければ、大きく売場は広げにくい。

最も安易に考えれば、レディス衣料を加えて世界観を広げることだが、これは一番危険な取り組みだ。まず商品サイクルも違うし、見せ方も違う。同じ目線で品揃えできる人間は数少ない。MD型のショップでは全体のまとめ役が必要になり、その責務は大きい。このやり方で売場を広げて成功した例はブランドショップぐらいで、MD型のショップではあまり見たことがない。

商品だけの問題点も上げたが、当然「人」「金」の問題も出てくる。売場が大きくなってセルフ販売に変えるのならいいが、従来の販売方法を続けるなら、当然人員を増やす必要がある。つまり人件費は増える。さらに拡大することによる内装費や経費負担も増える。それを吸収できるだけの売上増は当然必要にはなる。

さてどうすればいいか?もう一度ゼロベースから店のコンセプトを作り直していく必要がある。例えば、ユニクロのように「シーン」は強調せずに、「商品」「値段」だけを大きな切り口にしたり、無印良品のように「世界観」を決めて、その「世界観」を共有してあらゆる商品群を品揃えしたりする。両者とも目線を揃えるべき「決まり」が必要で、そこをジャッジすべきマーチャンダイザーがいる。つまり最初からショップのブランドを作っていくしかない。

単純に売場を広げたり、客層の幅を広げたりするには、多くの検証が必要で、安易に決定すべきではない。今まで築いてきた店のMDテーマがぼやけていくことが一番の致命傷になることが多い。

売場の大型化には、最初からブランドを作りかえるほどの労力が必要になる。

■今日のBGM

アダストリアの向かう方向は?

「グローバルワークを1000億に」という記事が出ていた。具体的には都心部への進出と、既存店の改装増床で500~600㎡の店をモデルにしていくという。

企業の大きさはある意味「売上の規模」になってしまう。2024年度ファッション業界(グルーピングは難しいが)では年間売上3兆を超えた「ユニクロ」を筆頭に、「良品計画」6617億、「しまむら」6350億、「アダストリア」2756億、「ワールド」2023億、「パルグループ」1925億、「オンワード」1896億となっている。「ワールド」や「オンワード」は卸もあり並列するには難しいし、「しまむら」も少し異なる位置づけではある。ただもうすでにあの「ワールド」や「オンワード」よりも「アダストリア」が大きな位置づけにあることは、時代を感じる。

上位に位置している2社はほぼメインブランドを中心に大きくなっている。他のブランドもあるが、「ユニクロ」は“ユニクロ”と“GU”が中心だし、「良品計画」は“無印良品”だ。売上数値を見ていると、いろんなブランドを持っている企業は、一定以上売上規模が大きくなっていない。さらに顧客層を絞り込んで「お客様を選ぶ」企業も規模は拡大していない。「ワールド」や「オンワード」など30代前後からの客層で、客数も減少傾向にある百貨店をメインターゲットにしている企業や、セレクト業態などは大きな売上分母にはなりにくい。同時に社内で競合になりそうなブランドを持つ企業も、ブランドの改廃が進み、売上は大きくならない。

「グローバルワークを1000億に」というのは核になるブランドを作っていくという方向だと思う。同じジーンズカジュアルからスタートした「パルグループ」には現状“3コインズ”という核になるブランドがある。3コインズの売上は2024年度630.6億で“グローバルワーク”の516.7億より大きい。企業内でのウェイトも”3コインズ“は32.7%に対して“グローバルワーク”は18.8%と小さい。両社の利益率は「アダストリア」55.2%に対し「パル」は55.3%。メインブランドの比率のせいか在庫回転率は「アダストリア」は年4.8回転、「パル」は5.9回転。「パルグループ」は“3コインズ”の収益改善を課題には上げているが、営業利益は186.1億とアダストリアとほぼ同額となっている。つまり売上の大きく安定感のあるメインブランドを作ることで企業数値も安定してくることになる。

核になるブランド(ショップ)に言えることは、客層の幅が広いことが必須になる。それは“ユニクロ”や“無印”や“3コインズ”を見ても明らかだ。その意味で“グローバルワーク”の客層の幅をどうやって広げていくのかも大きなポイントになりそうだ。さらにどちらかというと単品量販型の店でなく、着装提案型のイメージが強いのでフル感性に対応させるにも工夫が必要な気がする。さらに店の立地や大きさを標準化させる必要もある。イトーヨーカドーとコラボしている“ファウンドグッド”はあまりスムーズなスタートではないと思う。客層の幅を意識しすぎているように感じる。私見ではあるが高齢者層を70代までにすればファッション感度は変わらず、値段の切り口だけで十分対応できると思う。

私は、アダストリアの福田会長には、「小売業」や「商売のポイント」を教えてもらったと思っている。ここまで企業を大きくしてきたのはすごい努力があったと思う。引き継いだ次の世代が、さらに企業力を高めていくためにはどうしていくべきか、そしてどうしていくのかをじっくり見ていきたい。

まだまだバトンを渡さないかもしれないが・・・

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なくなりつつあるファッションビル

「心斎橋オーパが閉店」との記事があった。「心斎橋オーパ」は大阪御堂筋沿いにあり「オーパ」のフラッグシップ店舗だと思う。ファッションビルと呼ばれる10~20代をメインターゲットにしてきた商業施設はどんどん姿を消している。

ファッションビルを調べてみると、「衣類や雑貨などファッション関連を取り扱う専門店を主なテナントとするショッピングセンターの一種」とある。近年はターミナル駅にある駅ビルもそのカテゴリーに入っている。諸説あるがファッションビルは西武グループが池袋でスタートさせたと言われている。特に渋谷カルチャーを作った、パルコパート1、2,3、クワトロの4館体制は、街づくりや、ファッショントレンド、若者文化を発信していった。1980年代には「デザイナー&キャラクターブランド」(俗にいうDCブランド)ブームが起こり「ラフォーレ」や「マルイ」を中心に広がっていった。1990年代からは「ギャルブーム」が始まり「渋谷109」は聖地になっていった。

グループでいうと前述した「パルコ」が現在でも一番存在感はある。ネットで見ると現状16店舗(松本が閉店で15になる)となっている。それでも閉店した店も多く、上述した渋谷も3店なくなり、宇都宮や千葉など10店舗程なくなっている。イオン系では「オーパ」が14店舗(心斎橋が閉店で13になる)。オーパもネット上では8店舗程閉店している。同じくイオン系では「フォーラス」は金沢1店舗になっており、好調だった仙台を中心に「オーパ」への業態変更もあり6店舗なくなっている。「ビブレ」は23店舗あったが(東北の別会社を含めると31店)イオングループ下でフォーラス同様「オーパ」への業態変更もあり現状2店舗となっている。かつては各主要都市に必ず1つはファッションビルが存在していた。

20代中心にファッション動向が変化したのだろうか?まずターゲット年令層が大きく減っている。年代層別人口を調べると1995年は15才~29才までの人口が27241(千人)で全体構成比では21.6%を占めていた。それが2023年には人口は18209(千人)で構成比は14.6%まで大きく減ってきている。対象の人口は66.8%まで下がっている。単純にその世代でファッションに興味を持つ比率が同じだとしても、おそらく購買客数は70%以下になっている。

さらにZ世代(2000年前後生まれ)の調査では「ブランドを意識しない」割合が70%超というデータもある。そしてファッションについてはデザイナーブランドのチェックも欠かさないが、購入店舗の上位は「ザラ」「ユニクロ」「GU」「セカンドストリート」となっており、さらに通販のウェイトも上がっている。少し古いが2014年の消費者庁の若者の消費動向調査では、30才未満の1カ月当たりの洋服の平均支出額は1999年度男性5338円女性9345円が、2014年男性2201円女性5081円とほぼ半減するほど大きく下落している。

ターゲット人数が大きく減少し、さらにファッションへの購入金額が減っていく流れの中では当然ファッションビルは成り立ってはいかない。

何とか現状も数字を確保しているファッションビルもある。百貨店と連動してインバウンド客に向けたブランドも展開している「心斎橋パルコ」や大都市ターミナルの駅ビルの「ルミネ」や「アトレ」などは順調な流れのようだ。つまり大きな商圏を持っていることとその立地環境に左右されており、MDそのものよりそれ以外の集客環境のウェイトが高くなっているように感じる。

もう間違いなく、大都市圏以外ではファッションだけで集客できる商業施設は成り立っていない。

■今日のBGM

セールが多くなり、セール期間が長くなった

いつの間にか冬のバーゲンは12月からになってしまった。まだ百貨店や駅ビルは1月スタートが多いが、郊外モールは12月スタートが普通になってきた。ただ昔のように一斉バーゲンのイメージはなく、「並んでまで行く」イメージはない。特にモールなどは日ごろからセールのオンパレードで「売場全品いつでもセール」の店もある。

数年前までバーゲンは7月、1月だった。それがいつの間にか前倒しされている。近年は11月に「ブラックフライデー」と称する大きなセールが現れ、ほとんど11月からセール状態になっている。

そもそも値段を下げる理由は何だろうか?季節感に基づく商品の入れ替えが大きな理由ではある。大きくは夏物と冬物の処理で、その処理によりキャッシュを貯めて、その金で、次のサイクルの商材を仕入れる。そのキャッシュを大きくするために大きな販促(バーゲン)を使う。

従来の商売は、夏であれば5月中旬から、冬であれば11月中旬くらいから季節商材や、動きの悪い商品の原価を下げてメーカーが出荷するようになる。その商品を買って7月、1月のバーゲン期まできちんと販売して、そこで利益を貯める。その後バーゲンで利益を考えながら値段を下げる商売に入る。特に12月はボーナスとクリスマスのギフト期が重なり、売上と利益を稼げる月だった。春夏商材は7月、8月に、秋冬商材は1月、2月になくして、その金で次節の秋冬物、春夏物を仕入れて利益を回復させていく。そんな商売サイクルだった。その商売サイクルも変わってしまったと言えるかもしれない。春夏秋冬の4シーズンではなくなり、春と秋が極端に短くなってきている。当然それにより、季節商材の売れ方も変わるし、社会催事にも変化が出る。

そして、その図式はテナントにも変化が出てきている。先述した「売場全品いつでもセール」の店は、単品メーカーの直営店が多く、それによって当然小売店に卸すより安く販売できる。それを直接売るときに割引訴求している。公取が定めた2重価格表示をうまく抜ける方法はいくらでもある。ユニクロなど大手もメーカーなどを通さず、自社で商品を作っている。そういう企業は、あくまでも小売店であり、メーカーではない。細かなMDのもと短サイクルで商品を作り、きちんとした値段を打ち出し、その演出計画もあり、陳列台帳もある。しかし短サイクルで商品を作っており、商品計画との差異が出た時は自社セールをして、バーゲン期に関係なく値段を下げてなくしていく。

デベロッパーは売上を上げたい。当然それにより賃料収入を増やしたい。さらに近年の郊外モールのテナントは、前述したように商品サイクルが早くなり、従来の四季による切り口だけではなくなっている。そうなるとどうしてもセール期が長くなる。そしてその流れに対応できる店が増えてきている現実がある。流れに対応できない商品のサイクルが長そうな業態(スーツ、ジーンズなど)は姿を消していっている。デベロッパーもその流れには逆らえず、個別セールを黙認している。モール型のSCの多くはそういう現状にある。逆に百貨店やファッション系のSCではまだセールを野放しにはしていない。ここに客層の差別化が出て2極化がさらに進んでいる。

昔よく言っていた「中間層」は、いなくなったのだろうか?

■今日のBGM

ちょっと気になること

11月の小売上場各社の数字が発表されている。11月は気温が低下してやっと冬物が動き出し、各社とも前年を大きく上回る数字だったようだ。ユニクロは既存昨対112.2%、アダストリア108.9、無印119.2、UA116.2とほぼ全社大きく前年をクリアしてきている。

ここでちょっと気になったのはワールド傘下になったライトオンが既存昨対83.7%と大きく前年を割っていることだ。チェックした上場各社の中では当然ワーストの数字だ。同様にファンドにTOBされた同業態のマックハウスは100.9%となんとかクリアしている。ずっとライトオンについてはこのブログでも触れてきたし、ワールド傘下になったのだからもういいとは思っていたが、どうも解せないことがある。

このブログの6月25日に上期決算数字を概算して34億円分の商品価格を下げているのではないかと書いている。10月に発表した今期決算書で再度確認してみる。くれぐれも勝手に推測しての計算ということは最初に再度断りを入れておく。

若干狂いは出るが、売価還元法で計算する。前年の利益率は48.1%なので原価率を51.9%とすると、期首原価在庫が10479(百万)であれば売価在庫は20190となる。今期末の利益率は39.9%なので期末の原価在庫5111から逆算すると期末売価在庫は8504となる。今期の商品仕入高は17693でありこれを原価50%(甘い!)で仕入れたとすれば仕入売価は35386となる。単純に期首売価在庫+仕入売価-今期売上=期末売価在庫になり、ここに今期売上(売価)38808を挿入すると20190+35386―38808=16768となる。値段を動かさなければこの売価在庫になる。期末原価在庫から計算した売価在庫は8504なので、16768-8504=8286(百万)の金額分商品が減っている。商品を破棄してないなら、単純に考えると80億以上の在庫評価を下げていることになる。つまり売価を下げているということだ。決算期に商品評価損として特別損失1564(百万)の計上を発表しているが、それでは数字が合わないような気がする。

計算が違っていれば指摘していただきたいが、これだけの商品の価値を下げて、商品をどうしたのだろうか?160億円分の商品を半額処分にするのと同じことで、それでも売れないだろうか?その半額にした商品が半分売れたとして、売上40億くらいは底上げできる。前期の売上が380億だがその数字が入っての売上だろうか?ちなみに今年は2月に既存店売上前年比をクリアしているのみで、トータルの前年比は82.7%となっている。その在庫評価を落とした商品は売れていないのか?売れてこの数字なのか?それとも破棄したのか?経験上不良品以外の商品を破棄することはないのだが、80億円超の商品はどこに消えたのだろうか?それを現金にしていたなら資金繰りも変わってくる。一般的にはセールをしてキャッシュに変えて商品をなくしていくのだが、売場にその気配は全然なかった。

ワールドに譲渡されたのでどこかで大きなセールをするのかわからないが、これだけの金額を処理しても売上数字に変化がでてこないのを不思議に思う。年末年始でなくしていくのだろうか?

■今日のBGM

CSC(コミュニティショッピングセンター)にはGMSは必要?

ずいぶん前のブログに「自宅近く15km圏には8つの大型モール(RSC)がある」と書いている。RSCとは、定義から規模が4万㎡以上の規模のSCを指している。ただ本来の意味のRSCはおそらくもう2~3SCしかない。他のSCはイオンでいうと「(ジャスコ・・・)と(80?)の専門店」という昔のGMSの大型版にしかなっていない。分類で分けると中規模SC(敷地面積2000坪~5000坪)をCSC(コミュニティショッピングセンター)と分類されており、その定義ぐらいの価値しかないように感じる。

15km圏でNo1のRSCは「ららぽーと富士見」であり、それに続くのは「コクーンさいたま新都心」だと思う。ちなみに富士見は8万㎡、約290店舗で売上は486億、コクーンは7.8万㎡、約270店、売上は430億となっている。2つのモールに共通しているのは、GMSは入居していないということだ。(コクーンのヨーカドーはSM)テナント数も多くテナントのバラエティも豊富だ。ファッション系テナントでは富士見にはセレクト系でUAは「ビューティ&ユース」「グリーンレーベル」、ジャーナルで「レニューム」、ライセンスでは「ヒューゴボス」「ラルフローレン」、コクーンにはビームスの「ビーミング」、「グリーンレーベル」「アルマーニエクスチェンジ」「ラルフローレン」などがある。両モールともテナント数も多く、幅広いラインナップになっている。

前述した8つの大型モールのうち5つはイオンモールだ。いずれもテナント数は多いが、類似しているテナントが多く、テナントにあまりわざわざ感はない。となると必然的にGMSのニーズも出てくる。さらに3つはイオンモールの物件でなくイオンリテールのモールになる。そうなればどうしてもGMS強化に動き、テナントリーシング力は弱くなってくる。

そのうちの1つである、イオンモール北戸田でGMSの2階部分を全面改装していた。この改装で遠隔地からお客様を呼ぼうとしているのかというと、大きな疑問符が付く。売場半分はキッズリパブリックとして子供関連を終結。その他の衣料の改装は、おそらくテナント揃えで弱いところを広い面積をとって引きこもうとしている。つまり、スーツやフォーマル、ミセス、アダルトの打ち出し強化が主で、量販店ブランド(ジュンコシマダパート2、ポロ、ケントなど)も固めて、在庫リスクもヘッジしている。トップバリュコレクションはショップとしての見え方は弱く、完全にユニクロには太刀打ちできず、アダルトカジュアルの店になっている。飯の種のアンダーウェアを奥に持っていき、利益構造がどうなるかわからない。商圏的には子供は増えている珍しい地域だけれど、足元商圏の強化が主目的で、おそらく大きな効率改善はできないと思う。そもそも、高所得者層などの新しい客層(ブランドニーズ等)を呼べているとは思えない子供ゾーンの拡大で、成功している事例はあるのだろうか?

あくまでもテナントの弱いところを、GMSで補うという改装のように見えた。つまり、足元のお客様のための改装であって、広域からの新しいお客様を引き込むものではない。狭商圏でのSCになってしまっている。狭商圏で4.4万㎡の売場面積は大きすぎる。テナントの欠落から見れば、大型家電の導入や、ニトリや100均の大型化、GUの導入などのほうが喜ばれたのではないだろうか?当然賃料との兼ね合いもあるが、今回の投資対効果には疑問符が付く。

以前に書いたが、サラリーマンの発想する改装はいらない。こういう改装で満足し続けるのなら大きな面積のモールは必要ないのではないかと思う。

■今日のBGM

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