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商品回転率が低い企業はリスクが隠れている

商品回転率を上げることが商売の基本だと、常々言っているし、当然だと思っている。何度も書いてきたが、「商品を仕入れて、それを売って、その金で支払う」が商売の基本だからだ。企業が大きくなってくると、その基本が見えなくなる。商品回転率が低い企業はリスクが隠れていると思っている。

ライトオンの上期の決算短信を見ていて、やはり何かが隠れていたと思った。くれぐれも今回はライトオンの業績に意見する物でなく、こういうことがあったのではないかという個人的な推測を記す物であり、個人の感想と思ってほしい。売価還元法で原価を算出している旨あったので簡単な計算方法で数字を出してみた。

前期末、原価在庫10479(百万)で、今上期末は原価在庫8326となっており、原価在庫の前年比は79.5%、売価在庫は原価率から逆算すると前年差は-5243と大幅の削減をしている。ちなみに上期の売上は21298(百万)で売上前年比は86.6%となっている。回転率は在庫が減ったことで前年が半期で1.12回転、今年が1.26回転と改善している。これでも回転率は年間3回転しない。年3回転することは4カ月で商品が売れてなくなるということなのだが、そこまで回っていない。付け加えるとおそらく支払いは4か月以内だと思う。

今期首の売価在庫は(単純に原価率で計算する)20191(百万)となり、同様に上期末の売価在庫は14948となる。売上は21298なので、値段を下げなければ、計算式でいうと期首在庫(20191)-売上(21298)+仕入売価=14948となり仕入売価は16055となる。これを所謂5掛けで入れたとすると仕入原価は8027となり、そのまま計算すると利益率は48.9%になる。ただ実際には上期利益率は44.3%になっている。概算してみたが仕入れを原価50%でして(所謂5掛け)、さらに約3400(百万)の商品がなくなることで、公表されている利益率44.3%になる。簡単にいうと6800(百万)の商品評価を半額処分すれば公表数字が導き出される。

どうしたかはわからない。ただ34億円の金額分だけ商品の評価を落としたとは考えられる。その他の原因もあるかもしれない。評価を落として販売したとしても売上前年比は86.6という数字だ。評価ダウンした商品が売れたとしても、既存の商品は売れてない。逆に評価を落とした商品が売れてないのかもしれない。

再度言うが、今回はライトオンの業績について言及する物ではない。あくまでも私自身の主観での数字で、現実とは違っているかもしれない。ただこの数字から、商品回転率の悪い企業は何だかの負の要素があるのではないかと考えられるということだ。悪く考えれば、在庫高で決算数字を変えることができる。昔は決算セールという名の下で売上を稼ぎ、在庫も減らしてきた。決算が終わって在庫を減らすということは正確な決算だったのかとも考えられる。管理体制も疑われる。回転率の悪化は、営業面だけでのキャッシュフローは悪化すると思われるし、利益率を優先した在庫評価と言われても仕方ない。

商品の価値はお客様が評価し、売る側が決める商品評価(売価)ではない。お客様、つまり市場が決めるものだ。そして商品回転率が悪いということは、商品がお客様に評価されていないと認識するべきだと思う。

■今日のBGM(まだトノバンがあった。)

ライトオンは立て直せるか? 2

前回、ライトオンの状況を書いたのだが、あまりに傍観者的な内容だったかなと感じていた。「どうするべきか?」「立て直すには?」が欠けているとは思っていた。ただ現状では非常に難しい問題になっているのではと思う。

もう、所謂全国チェーンのジーンズ専門店(?)はライトオンとマックハウスぐらいだが年々ダウントレンドで、現状のMDも昔のジーンズ専門店ではない。アダストリアもアーバンリサーチも、もともとはジーンズ専門店からのスタートだが、方向転換して今があるのは、「先を見る力」があったと言わざるを得ない。ジーンズメイトも一時株主変更時、攻勢をかけたが失敗した。いろいろ考えても、いろんなハードルが高すぎて難しいという結論になる。

まだまだ地方では頑張っているジーンズ専門店もあるが、どうしてもブランドのエリア分断があり、ナショナルチェーンにはなれない。高知の「ジーンズファクトリー」や岡山、徳島の「ビックアメリカンショップ」、旧三信衣料系のジーンズショップなどエリアに根付いて頑張ってはいる。多くはデニムラインと「ダントン」「オーシバル」などBshop系の品揃え、SCなどのインショップでは「ノースフェイス」や「チャムス」などわかりやすいブランドのミックスで確実に運営されている。ブランドを卸している会社が、エリアを考えて専門店を選んでおり、なかなか全国チェーンには品揃えの壁がある。

厳しくなった会社が抜け出すには、管理主導で動くしかない。おそらく過去営業主導で動いて内容が悪化してきたと思う。そういう意味では、各数値の適正化を急ぐ必要がある。ライトオンの前年度実績では1店舗あたり年間売上は1.26億、月度売上約10.5百万、売価在庫は平均54百万となっている。今の売上を維持して回転率を年間3回転まで上げるとして売価在庫は42百万となる。その在庫で運営するとすれば、坪在庫を最大500千として80~100坪を適正坪数にするべきだと思う。現状の坪数は決算書でもわからないのだが、明らかに大型化が進んでいる。大型化により売り上げ効率が悪化し、さらに販売員の守備範囲が広くなっている。ジーニングカジュアルを続けるなら、接客の要素を上げるためにも販売員の密度は高いほうがいい。坪数の削減はデベロッパーとの交渉が難しいし、再度売場投資も発生するのでハードルは高いが、間違いなく最優先で整理すべき事項だと思う。

MDについては、頑張っている地方の専門店と同じMDは全国チェーンではできないだろうし、どうすればいいか言及できないが、テイストをジーニングカジュアルで進めるなら、もう一度デニムの品揃えや集積可能なトレンドとなるブランドを整理して、そのコーナーを確立させるべきだと思う。20~30坪で例えば重厚なウッディベースの内装でショップインショップ化を図ればどうだろう。その他の面積でキッズ含めた衣料品を買いやすい値段で品揃えする。坪数縮小でボリュームも出るし、イメージも固まる。売場内にインパクトある1角を作ることで売り場も締まってくる。

他人事で書いたが、言うだけならだれでもできる。金をかけて軌道修正するにはリスクも大きい。ただ現状の数字を見ていると、小売りとしての商売の基本と大きく乖離しているように思う。繰り返すようだが、営業面から対策を考えずに、管理面(数値面)からあるべき売場を考えたほうがいい。営業面から考えると失敗を重ねるだけのような気がする。売上計画より在庫計画、利益計画を重視して対策を立ててみてほしい。

今後も数字の流れは厳しいと思う。変革に注目している。

■今日のBGM

ライトオンは立て直せるか?

5月の小売業上場各社の既存店売上前年比を見ていたら、約半数の企業は100%超で堅調な数字だったが、メンズ色の強い企業が少し悪かったようだ。景気が悪い時に出る傾向で「お父さんのものは後回し」的な流れのようにも見える。中でも落ち込みが最も大きかったのはライトオンで既存前年比75.1%となっている。

ここ3カ月で見ると3月78.9%、4月82.7%、5月75.1%と低迷を続けている。ここ数年の業績悪化で、証券市場区分も去年の10月にプライムからスタンダードへ移行されている。

もともとはジーニングカジュアルを打ち出して大きくなってきた会社だ。ジーンズの追い風の中、売場も増え、売場面積も大きくなっていった。ジーンズ中心の売場は在庫金額が大きくなる。パンツのサイズもメンズでも27~34インチまで揃えなければならないし、中心サイズのストックを入れると1品番1色で10本以上の在庫が必要になる。近年はボトムのサイズ分類はアジャスターや脇ゴムでトップスと同じサイズで展開しているが、ナショナルブランドは依然インチ表示のままだ。一世を風靡したジーンズのボリューム感を持った店から、ファッションの流れの変化もあり、ライトオンも現状はジーニングテイストを持ったフル客層へのカジュアルショップに変わっていった。その環境下で商品量や値段で「ユニクロ」「GU」には太刀打ちできず低迷を続けている。

数字が厳しいので、買い物ついでで近隣のいくつかのSCで売場を見たのだが、迷走感が出ている。定番のジーンズもリーバイスも含めて割引商材が多く、特にメンズはセール品もアソートで取引先から借りているような商材が目立つ。ボトムに関して言えば基本デニムのリーバイス501が17000円の時代に売上を考えると品揃えもボリュームアップできない。レディス、キッズも在庫を抑えているのか、中途半端になっておりお客様は競合店に流れているように見える。

前期の決算書では売上前年比97.3%、売上総利益率48.1%(前年49.3%)経常利益-1046(百万)純損失-2545(百万)(前年-1166)、在庫回転率2.2回転(年)となっている。今年度上期は売上前年比86.6%、売上総利益率44.3%(前年50.1%)経常利益―1353(百万)(前年191)上期純損失―1617(百万)(前年―95)在庫回転率1.26(半期)前年1.12(半期)と発表されている。おそらく在庫過多を続けていたため、今期在庫縮小のための値下げを強行したが、在庫整理では売り上げアップに結び付かず、利益率を下げただけの状況だったようだ。この数字を見ると、現状の売場の状況は納得できる。

小売業の決算数字にはいろんなことが隠されている。ライトオンのように在庫整理をしたが売り上げに結び付いてないように、適正金額で商品在庫が計上されていないケースが多い。決算数字をよくするために在庫評価を市場評価と乖離させれば、悪い決算にならない。ライトオンも今上期に利益率を前年差-5.8%落として在庫処理を断行したが、売上前年比86.6%と大きく落としている。売上につながる評価にすればさらに利益率は落ち込んでいくと予想される。さらに不振店舗を削減するための除却損や、返却されるべき敷金と相殺される経費も大きく、数字が悪化すれば実数値は急激に落ち込む。まだ余力がありそうな決算数字だが、隠れているリスクも大きい。

再浮上させる策はあるのだろうか?

■今日のBGM

イオンモール浦和美園

見たい映画があり近隣では浦和美園のイオンシネマしか上映してなかったので行って来た。車で30分かかるので映画のタイミングでしか行く物件ではないのだが、またまた表題の物件について書くことを、ご容赦願いたい。

本当に潜在能力を感じるモールで、前回記したように交通の便もよく、行くたびに都市化が進んでいるように感じる。微妙な問題だが旧浦和市民をうまく取り込めれば、レイクタウンやコクーン、大宮駅前とは一線を画すことができるのではないかと思う。

今春、大改装を実施したようだが、収益が合わなかったのか、投資金額が抑えられていたのか、中途半端な改装になっている。物件のポテンシャルを誰も認識してないのかなと思う。この物件は都市型のRSCとして意識すべきだと思う。

まず、モールのグランドフロアのテナントの棚卸ができてない。契約期間の問題もあり移設はできにくかったのかもしれないが、誰かが腹をくくればできるはずだ。2階以上で展開すべきショップがそのままになっている。逆にその移設ができてないから上層階にまだ空床があり、上層階の魅力が上がってこない。ここでは具体的に記さないが、都市型のららぽーとなら間違いなく1階にはないテナントが多数あり、そのテナントがそのままになっている。

さらにユニクロ、GUを外部棟にするなら、ユニクロではなく外部棟のグレード感を上げてみることもできたはずだ(セレクトショップなどの誘致)。極論でいうと、モール棟での出店がユニクロと合意できないなら、イオンGMSの2階を渡せばよかったのではないか。(駐車棟とつながっているので出店メリットは大きい。)

イオン(GMS)の2階、3階だが、果たして合格点なのだろうか?前回改装した時(?)、感じたのだが、坪売りや効率がイオン内基準で想定されており、専門店や他の競合との基準とかなりかけ離れている気がした。つまりイオンではクリアされていても一般の土俵では全く戦えないのではないかということだ。「トップバリュコレクション」として改装されていたが、平場感をなくし立体感を見せただけで、商品のセグメントは変わっていない。以前より取引先との協業スペース(量販店販売員付きブランド)を大きめにとって自主MDの売場を小さくして効率を上げようとしているが、おそらく大きな変化はないように思う。イオンの平場から、次の「ユニクロ」「GU」「無印良品」を作るべきステップとして改装するべきだと考えるのだが、そういう話し合いの結果がこの改装なのだろうかと思う。この売場ならやはりGMSの非食品(特に衣料服飾品)はいらない。

店舗数が多くなると、個店、個のSCの位置づけが見えにくくなる。特にイオンのように上場企業になればコンプライアンスの問題もあり、責任者は同じ部署(SC)に長く駐在できない。そのSCを一番わかっているのはSCの責任者であり、本部のスタッフではない。 SCに思い入れをどれだけ持てるかで、物件の価値は変化する。SCの数も多く、責任者も在籍時の数字しか考えないと 、思い切った店舗戦略をとれないのかなと思う。

どこでも一緒のイオンモールと「ららぽーと」の差はそこにあるのかもしれない。

■今日のBGM・・・「トノバン」見てきた。このアルバムは学生時代大きなインパクトがあった。

ファイブフォックス

ファイブフォックスの会長だった上田稔夫氏が亡くなられた。ファッション業界に一時代を築き上げた人物だ。ファイブフォックスはDCブランド全盛期の「コムサデモード」「ペイトンプレイス」などを展開していたファッション業界の大企業で、2000億超の売上で経常利益率もピークは13%あったとのことだ。

ファイブフォックスは黒を基調にしたモードファッション「コムサデモード」がメインブランドで、少し宗教染みた会社というイメージが強い。開店前に大きな声でスタッフ全員声を合わせて挨拶をしていたのを何度も見た記憶がある。商品の中に台紙を入れて同じ大きさに合わせて商品整理を徹底し、VP(演出)はモノトーン基調で固めており、さらに店内音楽はビートルズで統一していた。上田氏はファッションビジネスで大事なのは「商品」「店舗」「在庫コントロール」だと言っていたそうだ。全くその通りだと思う。

DCブームの後、 「野菜売り場の近くに大きな店を出せ。」との大号令で、「コムサイズム」を立ち上げ、脱ファッションビルで大型モール(GMS)に参入したのもファイブフォックスだった。「野菜売り場」はお客様が必ず通る。つまりデイリーのお客様の目につく一番の場所にファミリー市場の店を出した。この業態はファッション業界の常識を覆した。これが今のモールのファッション大型区画のスタートだったと思う。

昔の仕事柄、各ブランドの開発担当者と打ち合わせをしていたが、ファイブフォックスは冷たいイメージが強く、特に弱いデベロッパーには強気だったような気がする。売れているブランドはえてしてその傾向が強いが、大手だった「ビギ」や「ニコル」よりその印象は強い。それだけブランドの位置づけを大事にしていたのかもしれない。

コムサブランドはモードテイストの黒を基調としたMDブランドで、他の黒基調だった「ギャルソン」や「ワイズ」などデザイナーブランドよりクリエイティブさはなく、店舗イメージや演出、売り方を差別化させて、そこを武器にお客様を引き付けていたと思う。ただ、やはりモノトーンのMDブランドとして感じられてしまうと、ブームが去ると厳しい状態になっていった。現在年商が200億くらいということだが、それでもすごいと思ってしまう。売り上げの中心は「コムサフィユ」(子供服)ではないかなと思う。

商売哲学の「商品」「店舗」「在庫コントロール」については記事を読んで初めて知ったが、「商品」は小売業では共通だが、「店舗」「在庫」を意識していたことには共感する。あのレベルまで売場のイメージを固めてしまうと逆にマイナス要素になるかもしれないが、「おたたみ」のマニュアルや演出は驚かせた。コムサ憲法と言われるマニュアルがあると聞いたこともある。環境面を含めた店舗マニュアルは必要だと思う。「在庫」に関しては常々私自身も商売の基本だと思っているので、このブログでも一番ページを割いている。ファッションビジネスで大事なことと言っていたことには強く共感する。

改めて、デザイナーブランドでなくMDブランドで年商2000億まで育て上げた力量には時代背景もあったが、「すごみ」を感じる。

ただ、私はファイブフォックスの服を自分用には買ったことはない。

■今日のBGM

ファッション店舗は激減している

先月、知り合いの会社が株式譲渡された。ファッション小売店舗だが、一時は大型モール(RSC)中心に50店舗以上展開していた。譲渡時は10店舗を割っていたそうだ。大型モールは増えたがファッション関連の店舗は激減しているのではないか。個別にはMDや販売体制の問題もあるが、それ以前に店舗数が減っている。大型モールにファッションのニーズが少なくなっているのかもしれない。

大型モールの国内最初はどこか難しいが、現状のモール型は2000年のダイヤモンドシティキャラ(川口)がスタートのような気がする。その後、従来のGMSには入店しなかった「ワールド」「イトキン」「オンワード」など百貨店系メーカーや「サンエーインターナショナル」などヤングファッション系ブランドがディフュージョンブランドを大型区画で展開し、新しいモールのイメージを強めた。そこから20年経過しGMSを消滅させ、今は全国どこにでも点在している。つまり大型モールを引っ張ったのは都心から郊外へ広がったファッション店舗の力が大きい。

その当時立ち上げた「ワールド」のブランド「ショップTK」や「オペーク.クリップ」などは激減し「ハッシュアッシュ」はなくなった。イトキンの「avv」もほとんど見ないし、オンワードも「エニーファム(エニシィス)」もあまり見ない。サンエーインターナショナル(現TSIホールディングス)の「ナチュラルビューティベーシック」も大型モールへの出店スピードはダウンし、「&バイPD」はなくなった。いずれもメインフロアの大型区画にあり、大型モールの顔だった。

カジュアル系ではユニクロの国内店舗数は2019年817店が2023年に820店、同じくGUが421店から463店と大きな変動はない。アダストリアは国内2017年1220店から2023年1509店と増えている。大型ショップはほぼ横ばいだが、一世を風靡したストライプインターナショナルが2017年1400店から2023年には700店舗と半減している。ライトオンも2017年513店が2023年には373店に減少している。多くのカジュアル系の店舗は激減しており、それに代わって古着や値段志向の強いショップがやや増えてきている感はある。

逆に、1階のSMの近くには食物販のテナント、上層階には「100均、300均」や「携帯ショップ」など所謂「その他」業種の出店が増えている。さらに店舗の大型化が進んでおり、ユニクロや無印良品、ABCマートは増床出店が多い。どちらかというと必需品を大型化させているイメージは大きい。

ファッションが商業施設のイメージになる事は間違いない。新しいブランドを探し提案できなかった百貨店は、顧客年令が上がり衰退した。GMSも同様にお客様の年齢が上がって、デイリーウェアの品揃えの年齢も上がり、30代から50代の顧客を大型モールにとられた。中心客層が上がっていけば大型モールも同じ流れになる。すでにお客様は商業施設の使い分けはできている。新しいファッションの流れや新しいショップを探して導入していかねば間違いなく衰退する。常に新鮮であり続けなければ商業施設は淘汰されていく。

■今日のBGM

値段の影響

服を選ぶとき、「好きであこがれているブランド」「何とかこのラインまでは頑張って着たい」「普段着ならいい(このゾーンは年々広くなっている)」「買わない」のランクが個人的にはある。当然そこには価格の壁があり、価格のランクもある。

店を立ち上げた時、洋服屋ではなかったが「普段着ならいい」グループの商品をきちんと売れるように環境も考え、品揃えしたつもりだ。自分なりにビジネスモデルも検証してスタートさせた。

商売の理屈を単純に考えてみる。5000円で商品を販売する。利益は50%必要だとすれば仕入原価は2500円になる。取引先も50%の利益を得るには1250円で調達する必要がある。3年前の為替レートは1ドル105円だったのが155円近くまで円安になっている。企業努力を考えず単純に価格を置き換えると、取引先原価が1850円まで上がり、やはり取引先が50%乗せると仕入原価は3700円になる。単純に計算すれば7400円で販売しなければどこかにひずみが出る。為替の変動で当たり前だが、値段を据え置けば小売店か取引先にひずみが出てくることを再確認してほしい。例えば小売店が上場企業なら、無言の圧力はあり取引先の利益減になるし、取引先が強ければ必然的に小売店の利益減になる。

当然、商品はコストを考えて、素材を変化させたり、工場を変えたりするし、店も経費削減をやっていく。その前提で、商品がどの値段まで通用するか?例えばワイシャツで考える。ブランド品や10000円以上の商品ならその購買客層から大きな抵抗感はなさそうだが、5000円から10000円までの商品なら2000円上がると間違いなく売上は鈍る。一般的には値上げが大きく影響するのは30%アップくらいからだと言われている。個人的にも5000円で買っていた商品が7000円になれば買わない。5000円以下の購買層になると完全に値段志向になる。つまりモデレート層が価格志向層に引っ張られる。

先日ネットで年収2000万以上のラグジュアリーカード会員の調査が掲載されており、よく身に着ける「ハイ」ブランドはヴィトン24%、エルメス18.1%に対して、よく身に着けるブランドはユニクロが42.1%となっていたそうだ。普段着やインナーはユニクロという流れかもしれない。ファッションにおいては、高所得層はモデレート層ターゲットにはあまり流れてなさそうだ。

モデレート層が減ってきて、さらにその層が両極に引っ張られている。モデレート層を取り組むべき専門店が厳しくなってきている。

常々、「感性」「値段」「環境」を念頭に店づくりをしていくべきだと思っている。「値段」が厳しい状況下で、ちょっとしたこだわりを見せる商品の開発力が必要になってくる。さらに商品以外の売場内装や販売環境を再度見直し、強化する必要性も高まってきていると思う。

言うのは簡単だけれど・・・

■今日のBGM

大型モール(RSC)の評価基準

近隣に大型モールがたくさんあり、買物のついでに店を見て回る。厳しい状況だと感じるモールも少なくない。

大型モール(RSC)の創成期からいろんなモールを見てきた。売場企画に加わったこともあるし、最後は出店者側として、出店交渉もしてきた。つまりモール側で企画や、運営もしたし、出店側で開発業務やテナントとして商売もしてきた。現状でも、モールを見るとそのモールの状況はわかる。資産流動化されていたり、資本関係が複雑で最終の損益までは見通せないが、おかれている現状は見える。今のモールでチェックすべきショップMDとしてのポイントを何点か上げてみたい。

まず当たり前のことだけれど、テナントがきちんと埋まっていること。空床区画はすぐわかる。催事区画で埋めている場合もある。催事区画も空床区画と同じ扱いに過ぎない。什器や商品ですぐわかるし、きれいな催事も内装の作り方や店名の電飾の有無で判断できる。(定借物件の内装規定で店サインに電飾を加えるように指定されることが多い。)近年は3層のモールで3階のテナントや、食品側と離れている場所に空床(催事)は多い。

さらに、空床を埋めるためのサービス業種をリーシングするケースが多い。顕著な例は「携帯電話ショップ」であり、「ガチャガチャ」や駄菓子屋、古着屋、各種教室などのサービス系のショップが増えてきていないかもポイントになる。

3番目としてきちんと集客できるテナントは揃っているかをチェックする。「ユニクロ」、「GU」、「無印良品」、「ABCマート」など。そういう大型集客ショップは、できればメインフロアではなく高層階にあるほうが望ましいと感じる。個人的にはアダストリアであれば最低2店舗(3店舗?)はあるべきだし、近頃モールから退店しているがユニクロの「プラステ」があるモールは個人的には信頼できた。

さらに、メインフロアは店の顔になるフロアなのでテナントのラインナップは当然チェックすべきポイントになる。感性やトレンドを意識できるテナントがあるのがベストだと思う。値段を打ち出すショップがメインフロアに見えるのはそのモールがあまりいい流れではないように感じる。ファッションだけでなく「旬」を感じるテナントや「わざわざ買いに行きたい」テナントがメインフロアには欲しい。

その他、ショップMD以外では「SM(スーパーマーケット)の集客力」や「集客カテゴリー(シネコンなど)があるか」「交通アクセス面」などの環境的なポイントはある。

上記の観点で近隣のモールで見ると「コクーン」が最もポイントが高いが、規模が大きいだけに今後のメンテナンスが課題になる。逆に「アリオ川口」は現状大変厳しい状況で、イトーヨーカドーの動き次第ではオーナー変更も考えられ、大きな変革がありそうに思う。

今後は、理想的なテナントリーシングが厳しい状況が間違いなく続く。

■今日のBGM

ファウンドグッド

“「場所によって客層が違う。」とアダストリア関係者は語った。”と新聞にあった。「ファウンドグッド」をイトーヨーカドーに展開しているアダストリアの感想のようだ。

まず店を始めるには、ビジネスモデルを作る必要がある。誰に売るのか?そのターゲットは商売をするには潤沢か?何を売るのか?など・・・

誰に売るのか?で悩んでしまった。というのが冒頭の言葉のように思う。

「ファウンドグッド」の立ち上げの状況を見てこようと思って近隣のイトーヨーカドー浦和店に行った。昔はドル箱店舗と言われていた浦和店もオープンから50年以上も経過し、完全に古い足元客のための店になっている。天井も低く1フロア400坪くらいの昔の駅前型GMSになる。1階の共用部以外をほぼすべてをつかって「ファウンドグッド」はある。浦和駅徒歩4分という立地で、伊勢丹No2の売上の浦和伊勢丹の北側にある。浦和駅にはアトレ浦和があり、開発された東口にはパルコ(食品はヤオコー)がある。イトーヨーカドー浦和店のメイン客層は昔からの顧客の足元の中高年になる。言い換えるとシニア層が多い。ここだけ見ていたら偏った見解になると思って、アリオ川口のイトーヨーカドーに向かった。アリオ川口のイトーヨーカドーはモールに来るお客様になっている。

冒頭のコメントと同じ感想になる。GMSがダメになった理由でもある。イオンやイズミの衣料品平場が悪いながら持ちこたえているのは、モール戦略で客層を若返らせ標準化させているからだ。アダストリアの社員はおそらくGMS、特にモールにあるキーテナントとしてではないGMSを見たことがなかったのではないかと思う。裏を読めば、アダストリア側には大きなリスクがない契約になっているのだろう。

感想は、まだ真剣に取り組めていないに尽きる。「とりあえず、商品を埋めた」感が強い。単品量販ではあるが、あくまでもグローバルワークやローリーズファームのベーシック商品を値頃にした感が強い。内装や演出もお互いどこまでやっていくのかが見えてない。

やはり、お互いの方向性が固まっていないように思う。特に本部での意思は現場まで届くのには時間がかかる。以前、お互いが資本を出し合って「別会社を立ち上げるべき」と指摘したが、その必要がありそうだ。ちなみに広い売場に浦和店にはスタッフは見えず、川口店には1名しかいなかった。

思いつくまま書く。商品では衣料品以外でお客様を呼び込む必要を感じる。なぜ、インナー商品をやってないのだろうか?必需品で回転率が高い商品を取り組むことによって、来店頻度が増す。ユニクロも素材感を打ち出した「ヒートテック」で完全にフルライン客層になったように思う。無印のように生活雑貨を増やしてもいいようにも感じる。さらに店のカテゴリーが浦和店と川口店のように違っているので、店を分類して基本品揃え以外での対策が必要になる。例えばプライス志向の強い店に不稼働商材の処分コーナーを常時設けるとか、イトーヨーカドー得意のデータ分析で店の特性を活かしたレイアウトを作ったりするべきだ。

アダストリアは、こちらが指摘するまでもなく、感性だけで生き残らず、優秀な企業体質なので、今後はどんどん変革していくだろう。ただ、大多数が大型モールや駅ビル、ファッションビル育ちでもあるので、「しまむら」や「西松屋」の商売をどうとらえるかが成功の鍵のような気がする。「ファウンドグッド」の取り組みによってこのゾーンを開拓することが、企業として大きな成長につながると思う。

定期的に見てみたい。

■今日のBGM

ファッション業界

「これがいいより、これでいい」 無印良品のスタート期のスローガンと言われている。今の時代に当てはまる言葉のような気がする。

日経平均株価が最高値で、上場各社は大幅なベースアップを行い、初任給も大幅に上がっている。日経平均が高かったバブル期はもう少し生活に実感があったように感じる。

当時のファッションはブランドブームで俗にいう「ボディコン」ブランドが全盛だったし、20代中心にDCブランドが席巻していた。マルイには「ピンキー&ダイアン」や「J&R」が並び、まばゆいフロアがあった。ビームスやシップスもトラッドの流れから変化しセレクトショップのスタートにもなった。好景気到来と言われている現状と比べるとファッションへのあこがれが強かったように感じる。少し前にも「モンクレール」「デュベチカ」などからブームになったダウンジャケットの人気の中、「カナダグース」が世間にはあふれかえっていた。しかしファッション以外の理由もあるが、今はほとんど見なくなった、ファッションの話は一部でしか上がってこない。

ファッションは「憧れ」からスタートするように思う。そういう意味もあり昔は働きたいと思う人たちも増えていた。「好きな服を着たいから」「好きな服を売りたいから」ということから販売員になる人たちもたくさんいた。当然待遇面の問題もあるだろうが、まず「好きな服」から仕事を見つける人たちがいた。今の時代にそういう憧れを持って販売の仕事に向き合う人たちはいるのだろうか?

今、好調な小売業はユニクロやしまむら、西松屋など接客が重視されない会社になっている。本部がマネジメントできる体制が整っている会社だ。当然単価が低く品数も多いので必然的にそうなる。仕事も作業化されている。会社で売れる商品を作り出し、データで商品動向を把握し、そのデータに基づいて売場体制を構築する。

小売業はどんな業態でも、売りたい商品を売るのが仕事にはなる。ただ思い入れが強く、「人」の要素が強い企業が厳しいのが現状である。

人手不足は深刻と聞く。販売業は土日も勤務が普通だし、立ち仕事でもある。定職としては最も敬遠される職種となる。さらに、そこまで大きな収入にはならない。収入を得るのが目的で待遇面を重視する人には向かない。

なかなか「これでいいより、これがいい」時代には戻ってこない。

■今日のBGM

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