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商売の寿命

小売業界でいろんな会社を見てきたし、在籍してきた。さらに立ち上げた。そしていろんな会社の浮沈を見てきた。

商売の成功をどう計るかはわからない。儲けは少なくても長く続く商売は成功とするのかもしれない。ただ商売は、商品の変化や、顧客の変化、商売している場所の変化でも情勢が変わってくる。

まず、客層の幅を狭めた商売は長く続いていない。在籍していた商業施設のビブレやマルイはヤングターゲットで商売をしていた。ヤング層のブランドもそうだが、流れが短サイクルで変化する。DC(デザイナー&キャラクター)ブランドで集客して、その後109ブランドに移っていったヤング層のトレンドの変化に、売場は追いつけなかった。さらにそのターゲットの会社も浮き沈みが目まぐるしかった。それでもマルイはクレジット商売が実を結び、現在は小売より金融系の会社になっている。その当時のブランドを生み出していた会社も浮かんでは消えていった。つまり、流れが速いヤングターゲットの商売は続きにくく、寿命は短い。例外としては、当時の固定客の年代層と共に年を取って存在するブランドは続いている。販売の場所も百貨店、路面店に移っている。堅く商売はしているが規模はずいぶん小さくなっている。ただすでにヤングターゲットではない。

小売業で堅調に生き残っているのは、ヤングミセスからミセスゾーンが得意な大手アパレルなのかもしれない。ヤングが賑わったときはそれなりにそのターゲットのブランドを開発し、SCが全盛になってからもショップを立ち上げた。各社に共通するところは各年代のたくさんのブランドを持っていることだと思う。それと同様の流れになってきている企業は、ティーンズヤングからヤングミセスゾーンまで幅広くショップを持っているアダストリアやパルグループがあげられる。各ターゲットのそれぞれのシーンに対応するショップも開発している。

広い客層をもってシェアを確保していっている企業も成功パターンかもしれない。昔からよく言われる「高感度値頃」を追求している企業で、衣料系ではユニクロ、住関連ではニトリ、複合的には無印良品などがあげられる。現状はフルターゲットに適合しており、特に低価格ゾーンをボリュームとしているが、今後の社会情勢で若干の変動要素もある。

商品のカテゴリーの専門店は以前にブログで記したように、そのカテゴリーの大きさとカテゴリーの動向を慎重に図る必要がある。そしてそのシェア率を常に意識するべきだ。今回のジーンズカジュアル業界の崩壊のような例もある。カテゴリーの大きさとシェアで寿命が見えてくる。

地元に根付いた専門店は、常に商品のトレンド変化や、商圏変化、客層変化を気にする必要がある。こういった専門店は突出した人物がマネジメントしているケースが多い。その意志がどれだけ引き継がれるか、熱意がどれだけ続くかがポイントになる。

企業の存続は、どうやって前に進みながら進化させていけるかということだと思うが、近年は、感性よりも組織力、データ処理などのシステム力とその分析力のほうが商売の寿命に大きな影響を与えるのではないかと思ってしまう。

まだまだ、過去の慣例や感情で方向性を決めている企業が多そうだが・・・

■今日のBGM

モール(RSC)になくなってきた「わざわざ感」あるテナント

「客層が2極化し、中間層が減っている」と常々書いている。20年位前から郊外モール(RSC)がどんどん建設され、GMSにとって代わってSCの中心になっていった。RSCとは当然広域からの集客を狙って、車で行ける「手の届きやすい贅沢な場所」だったのが、近年の開発ラッシュで「わざわざ感」がなくなり、狭商圏化され、まさにGMSが大きくなっただけの商業施設になってしまっている。大都市郊外では完全にオーバーストア化しており、なくなってしまったGMSと同じ道をたどっているように見える。テナント揃えも「ユニクロ」「GU」「無印」「ABCマート」などの同じようなラインナップになってきた。

本来、RSCにはどんな客層が来てほしかったのだろうか。業態のフォーマットを見ると価格はアッパー、モデレートで、商品の特色はトレンドとホット商品と区分されている。

多少、各ブランドのニュアンスは違うが、RSCから減りつつあるテナントがいくつかある。

ユニクロがやっている「プラステ」というショップは、以前からずっと気にしていて、自分の店の出店時にはSCに「あればいいな」と思っていた。いろんなSCを見て回るときもあるかないかチェックしていた。客層も商品も売り方もきちんと徹底されており、晩期にもそこまでセールを打ち出さないし、引っ張らなかった。近年、RSC特にイオン系から消えてきている。店舗数は現在43店舗で2020年に102店舗から大幅に減っている。イオン系は6店舗、ららぽーとは2店舗となっている。このターゲット客層は広いので、おそらく一番難しくなってきたゾーンなのかもしれない。

「ナチュラルビューティベーシック」(以下NBB)もRSCスタート時はほぼ全店のラインナップにあったショップだ。RSCがスタート当初から旧サンエーインターナショナルでは「&バイPD」と並んでラインナップしたかったブランドで、ほぼ一等地にレイアウトされていた。販売代行をしていた時、このブランドを2店舗運営していた。現在もイオン系12店舗、ららぽーと5店舗あるが、駅ビル型にシフトしているように感じる。ターゲット客層も当時はヤングかヤングミセスか見えにくかったが、現状は20~30代に変化しており、若返っているように感じる。

この2店舗はRSCへの出店はストップしているようにも感じられる。さらにRSCのテナントの中ではトレンドにシフトしているセレクト系のショップも、間違いなく出店するSCを選んでいる。

トレンドリーダーやSCイメージを持ち上げるようなショップがどんどん消えていき、本来あるべきショップリーシングをしているRSCは本当に少なくなってきている。当然経費高騰で賃料も大きく下げられなくなってくると、多くのSCは似たようなゾーニングになってくる。さらにキーテナント(イオンモールでいうとGMSのイオン)もSM以外は集客の要にはなっておらず、どんどん魅力が薄れてきている。

本当に、そのSCのカギを握るテナントがなくなってきているように感じる。

■今日のBGM

個人消費の実態

先日の日経に、丸井グループの青井社長の記事があった。その中に「衣料品の国内市場は金額では1990年の約15兆円から8兆円程度まで半減しているが、数量はほぼ倍増している。」との発言があった。単純に衣料品の単価は4分の1になる。その後のコメントは個人消費の中身が変わってきていて、消費者は意味のあるお金を使いたがっていると続いている。

先日、「着てない服(着られない服?)を捨てるパート1」をやったが、箪笥の肥やしは、ある意味一定のブームを経た商品が多かった。ボトムは、どこのシップスで買ったか思い出せないが、シップスのブランドコラボの商品が多かった。当然サイズが合わないので捨てることになる。カットソーやニットやアウター類はまだ手を出してないが、たくさんの商品を捨てることになりそうだ。現役でなくなり、出張や公式の場もなくなってくると、ほとんど買い物はしないし、買ってもアウトレットか無印、ユニクロになってきている。衣料品への支出は大きく減ってきており、確かに単価も4分の1以下に落ちている。ちなみに数量も半分以下に減ってはいる。

百貨店やファッションビル、路面店が中心の販路も減ってきており、百貨店や路面店は一部のコア客層になり、ファッションビルはなくなってしまっている。郊外モール(RSC)が買い物の場の中心になっている。当然主役はユニクロやGU、アダストリアの各ブランドなどに変化しており、単価は大きくダウンしていると理解していた。具体的にどれくらいの変化があったのか見えにくかったが、私自身もDC時代を経験してきて、さらにそのブームの中心の丸井の社長の発言だったので、実感は大きい。

青井社長は今後について「好きなものにお金を使うメリハリ消費が強まっていく」と結んでいるが、それはいつの時代にもあることで、ピンとくる結論ではなかった。さらに今後百貨店などの大型商業施設は、「店舗はモノを売り買いする拠点から、イベントで人が集まる場へと変わっていく」とも言っている。受け身の発言だ。

昔、西武百貨店が文化を発信し、シードや劇場を作っていったが、それはファッション以外の文化的な「何か」で街に人を集めようとしていた。流通業丸井で培ったクレジットカード中心の金融業で大きくなった会社なのだから、好立地を生かして、イベントで人を集めるだけでなく、「何か」を作り出してほしい。

渋谷やなんばの丸井は悲しい・・・

■今日のBGM

小売業が生き残るために必要なこと

ライトオンやマックハウス、アナップなどの営業不振に伴う株主変更や、タカキューのファンド支援などいろんなスキームで企業の再興が急激に増えてきている。企業がもともと描いていたゴール(通過点?)と違う形にどんどん変わっていくのだろうと思う。金融資産としての取り組みになり、お客様(顧客)不在の企業になってしまうことを危惧する。

企業は何を目的にスタートしたのだろうか?ユニクロの企業理念は「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」とあるが、それはその理念に手が届くだろう時期に来た時に作られたものであり、最初のミッションは「・・良い服を着る喜び、幸せ、満足を提供します」とある。アダストリアも今の理念とは別に「お客様の生活にワクワクを提供する事」とあり、ニトリも、理念とは別にロマン(志)として「住まいの豊かさを人々に提供する」とある。小売業はやはり「お客様の満足感」を与えることがすべて根底にあると思っている。

「お客様の満足感」からスタートし、しばらく経過すると企業の存続を考える時が必ず来る。その時にそこからの企業の方向性と可能性を考える。

崩壊したジーンズカジュアル業界を考えると、ライトオンがピークの売上が2007年1067億で今期が389億、マックハウスが2009年567億で今期予測が135億となっている。どこかの段階で成長余力がないことを確認できなかったのだろうか。それともまだ成長業界だと認識していたのだろうか?上場しているので企業の成長戦略が必要だが、過去の成功体験から抜け出せなかったということになる。業界自体を細かく分析し、会社の存続を考えるならば、いつまでも過去の成功体験を引きずらず、他の業態(商売)をいち早く開発して、マイナス分をカバーするべきだったのではないかと思う。(やってはきたのだろうが・・・)

ただ、上記2社は上場企業で成長が義務付けされているが、ジーンズ業界を生き延びている企業もたくさんある。企業が大きくならなくても固定客のライフスタイルを提案して品揃えしている専門店は、各地域に根付いて安定した売上を確保している。企業は大きくなって成長し続けることも大事だが、立ち止まって、現状の顧客のニーズを考えて、満足度を上げていくことも必要なことではないかと思う。

ファッション業界でも同様のことがいえる。まずティーンズヤングのトレンドを打ち出す企業は存続していない。将来の成長戦略がなく、目先の事業で終わっている。片方である一定の規模で内部充実を図り、既存顧客の満足度を高めることで存続している企業はある。さらに生き残るために業態を分析して、方向性を明確にし、細かく戦略の方向性を変えていく企業は成長している。

立ち止まって、お客様を理解し、業態を分析し、明確な方向性を考えることが、生き残るために必要なことだが、どうしても過去の成功体験を引きずる。そしてその成功体験を作った人間が経営層にいると道は開かない。

もう「勘」と「汗」の時代ではない。

■今日のBGM

小売業は「在庫」で損益は隠れる

コロナ以降、経営が躓いた企業が増えている。何度も指摘していたジーンズカジュアル業界のライトオンもマックハウスもTOBで経営を譲渡する。今年1月には債務超過になっていたタカキューも第三者割当増資でファンドから金融支援を受けた。それによりイオン傘下ではなくなった。マックハウスも同様にチヨダ傘下ではなくなっている。

常々、小売商売は在庫で損益が隠れると言ってきた。在庫評価で利益はいくらでも変えられる。PL(損益計算書)は良好な数字もBS(貸借対照表)で見るとリスクが隠れていることが多い。順調な企業では看過されるが、厳しい企業は在庫でひずみが出てくる。つまり在庫評価を甘くすると利益は出るが資金繰りは厳しい。在庫を現実的な数値で評価すると大きな損失が出る。

ライトオンもマックハウスもジーンズカジュアル業態で、サイズが細かいので在庫が増える。タカキューもスーツが中心であり現在はサイズが変わっているが、まだまだサイズが細かい。つまり、もともと在庫を抱える業種になっている。デニムに季節やファッション変動はあまりないので、商品が回転しなくても(売れなくても)在庫評価を落とさない。スーツも同様で若干のトレンドは変わるものの、大きく変更がなければ評価を落とさないので、在庫金額は大きく減ってはいかない。ちなみにライトオンの年間商品回転率は前々期(2023)2.2回転、前期(2024)は3.0回転、マックハウスは前々期2.3回転、前期1.98回転、タカキューは前々期2.5回転、前期2.8回転となっている。ライトオンは前回ブログに書いたが、前期に売価90億近く在庫評価を落としているし、タカキューも前期に在庫を40%以上減らしている。

在庫評価を落とせば、原価在庫はそのままで売価在庫のみ減るので、原価率が悪化し利益は落ちる。商品の賞味期限は明確ではなく、企業が設定している。ただビンテージと呼ばれるもの以外は商品が回転していなければ、当然評価は落とさなければならない。季節商品はその晩期にセールで商品をなくす。ファッション企業であれば最低年3回転はしなければ、売れない在庫は不良在庫になる。(四季なので4回転は必要だが・・・)さらに商品の支払いサイトは手形でない限り最長でも90日後になり、3か月後には支払いが生ずる。つまり入荷して90日で売れれば支払いが滞らないことになる。財務的に問題があっても年4回転だと何とかキャッシュは回っていくということになる。

ライトオン、マックハウス、タカキューはいずれも厳しくなって5~6年後に、企業を譲渡している。上場企業で資金的に猶予があったかもしれない。今回の企業譲渡に関して言えば、このブログでもずっと警鐘を鳴らしていた。

ワールドはライトオンの事業を継続するが、ファッション企業だけあって、在庫を前期末に大きく処理をさせている。営業面は規模やMDの方向性が見えてないが、比較的スムーズにスタートするかもしれない。マックハウスは買いたたかれたというイメージがあるが、今後の営業面では在庫面での負の遺産が大きく出る気がする。タカキューは承継前に在庫の処理はしたものの、ファンド傘下ではやはり数字重視になっていかざるを得ず、今(2025)第二四半期決算では、在庫を増やして利益を確保しているように見える。投資ファンドが継承すれば、次に売り抜くことを考えるので、長期的な考えは少なく、再建には相当の覚悟が必要だと思う。

売上傾向が悪くなり、在庫回転率の低い企業は、いち早く在庫の適正化を急ぐ必要がある。

小売業の損益は在庫で大きく左右される。

■今日のBGM

マックハウスもTOB

先日、ライトオンに続きマックハウスもTOBが発表された。TOBの価格は1株当たり32円で、チヨダが全株売却する。ジーエフホールディングスが投資会社を通じてその株を取得する。10月11日時点の終値は334円なので90%安の価格になる。

ジーンズ業界は厳しいと書いてきたが、ライトオンに続いてマックハウスも売却される。マックハウスに関しては親会社が靴業界の大手チヨダだったので、まだ猶予はあると思っていたが、ライトオンとほぼ同時期に発表された。

チヨダも靴業界ではABCマートに大きく水をあけられ、本業重視する方向かもしれない。赤字の子会社には構っていられないということだろうか?チヨダはもともとテナントとしてはダイエー寄りであり、イオン系には出店が少なかった。その流れで郊外モール(RSC)の流れに乗れず伸び悩んでいるように感じる。マックハウスも同様の戦略もあり270店舗の規模の割には、売上面ではライトオンと大きな差がある。店舗の大きさにも差があるが、1店舗当たりの売上がライトオンの半分ぐらいの数字になっている。

これでジーンズ業界は大きく変わる。マックハウスはワールドの「ハッシュアッシュ」との取り組みで少し上向きかなと感じていたが、このTOBでワールドとの取り組みはほぼ終わるだろう。今後株を取得するジーエフホールディングスは、ファッション系では、ジャバグループやテットオムをグループ会社にしているが、現状のMDとの相乗効果は弱い。ただ、今後の方向性は、ライトオンと同様に、ターゲットをファミリー層に変更し、ジーンズのイメージを弱め、オリジナル比率を上げていくことは間違いない。

ジーンズ業界については、ジーンズの原点と言われるリーバイス501が2万近くするようになり、完全に客層は変わっている。値段や履きやすさを求めれば当然ユニクロやGUに流れていく。昔からのコアな客層はジーンズテイストを持ったセレクトショップに流れていっている。そしてその客層は大きく減っている。わずかにBshop系ブランドとセレクトされている地方専門店は新鮮なにおいもあり、客数を伸ばしているように見える。ただ客層を選ぶのと、商品のバッティング問題が大きく、店舗数は広げにくい。

一昔前のNBジーンズ全盛時代は完全に終わっている。ビジネスモデルも市場に合わない。サイズが細かく、そのため在庫回転率は悪く、キャッシュが回らない。ライトオンもマックハウスも年間2回転前後の回転率になっている。売上が落ちてくると当然仕入れられないし、品揃えもできなくなる。さらに、売上の補完として、回転率が高い商品を仕入れることで、店のイメージが変わり、従来の客層は逃げる。そうはいっても、ジーンズカジュアルは見せていかねばならない。その繰り返しで品揃えが崩れていく。ジーンズ専門店からスタートした、アダストリアやパルグループはさすがに先が読めていたのかもしれない。

チェーン展開するジーンズ専門店、ジーンズカジュアル専門店の時代は完全に終わった。

■今日のBGM

ワールド傘下になったライトオンの今後

9月にこのブログで、「ライトオンは自力以外での再生を模索しているのではないか」と書いたが、やはりワールド傘下での再生を、決算と同時に発表した。ここ数カ月、売場を見ていて、「数字が厳しくて何とかしなければいけない」ムードはなく、委託っぽいセール商品と秋色の商品を打ち出していた。全く商売に前向きさがなく、どこかがデューデリをしている雰囲気があった。

格安でもワールド傘下にならざるを得ないのは、数字上しょうがない状況にあったと思う。私は、常々「商売は在庫」と言っていて、いくらジーンズ中心でも回転率が悪すぎ、商品価値を高く計上しすぎだと感じていた。このブログの6月に書いたが、ライトオンも価格を見直し、上期決算で概算34億分の値段を下げて利益を大きく落としていた。当然ワールドもそこを指摘していて、今決算で店舗閉鎖の在庫分と併せてさらに大きく在庫評価を落としている。

簡単に計算してみる。決算短信によると、期末原価在庫が5111(百万)で決算売上総利益が39.9%なら、単純計算で期末売価在庫は8504(百万)になる。期首原価在庫+仕入原価―売上原価=期末原価在庫で計算すると10479+(x)+23343=5111となり仕入原価は17975となる。同様に売価も期首売価在庫+仕入売価―売価売上=期末売価在庫で計算する。(原価率から逆算する。)20190+(x)―30808=8504となり仕入売価は27122となる。仕入売価27122で仕入原価17975では商品値入率は33.7しかない。商品値入率を仮に50%で計算すると商品仕入売価は35950となる。つまり原価50%ですべて仕入れたとすると35950―27122=8828(百万)の値段を下げた計算になる。計算上は期首の売価在庫の40%強の評価を落としたことになる。(今後のことを考えて大きく評価を落としたかもしれない。)在庫評価をこれだけ落とせば今後の運営はずいぶん楽になる。

ワールドと組むことに関してはどうなのだろうか?ワールドしかなかったということだったと思う。ワールドとも私自身は長い付き合いだが、オンワードやイトキンと同様のサラリーマンの会社というイメージが強い。他のアパレルとは違い「会社」らしい雰囲気がある。もともとは専門店商売が中心で「コルディア」「ルイシャンタン」などを取り扱っていたが、DCブームから「タケオキクチ」「オゾック」「アクアガール」「アンタイトル」でヤング層を拡大し、SCが広がっていくと「TK」「ハッシュアッシュ」「シューラルー」でファミリー層への販路が広がっていった。当然百貨店ミセスゾーンは得意ゾーンだ。DCブームもファミリー層へのマーケットの取り組みも、現状を考えればうまくいったというイメージはない。

さて、どう取り組んでいくのだろうか?単純に考えるとマックハウスと取り組んでいる「ハッシュアッシュ」を投入しジーンズテイストを弱めていくのだろうと思う。ここ数カ月のマックハウスの数字も改善してきており、一番手堅いコラボになるのではないだろうか。ジーンズテイストを弱めてファミリー層ターゲットを打ち出していく方向だろうと思う。ただこれだけでは、ライトオンのいいロケーションの売場を手に入れるだけの事業構築になる。長く培ってきたライトンのジーンズカジュアルを、伊藤忠との関係でワールドがつながりのあるエドウィンとのコラボなどで、再構築を図ることも考えられる。ただジーンズカジュアルは完全にアゲインストの流れで、これはあくまでも可能性に過ぎないかもしれない。

ワールドとしては、格安で、340店舗という多くの売場を手に入れたので、現状ではあまり大きなことをせず、ファミリーターゲットに変更と事業の棚卸をして、売場と在庫の整理を急ぐと思う。ただ、ライトオンの源流であるジーンズカジュアルを見つめなおし、小さくてもいいので本質がわかる少しこだわった店も是非見せてもらいたい。

■今日のBGM

どんどん2極化と寡占化は進んでいる

先月末にチェーンストアの売上分析をして、現状の流れは単純に値上げ分の売上増で買上点数は減っていると書いた。その他の小売業も中間決算や四半期決算を発表していて、売上は増加しているが、為替の影響や、人件費高騰、物流経費の増加などの要因で利益を圧迫してきている。

順調な売上を続ける企業の中間決算の発表がいくつかあった。西松屋の上期決算は売上高については過去最高を更新したが、税引き利益は前年同期を割っている。為替差損が原因のようだ。仕入れコストの上昇もあり総利益率も前年差-0.2%となっている。ニトリの第一四半期決算も純利益は前年6.3%増だったが、賃金改定など販管費増加で通期予測は据え置かれている。アダストリアの上期決算も売上は9%増も人件費中心に経費増で純利益は2%減と発表されている。

9月の売上も発表されているが、8月に続いて曜日廻りが良く、全体的に売上数字は好調に推移している。既存昨対でユニクロが8月125.3、9月122.1と大きく伸長している。ハニーズも117、118.3と好調。この2社の好調な流れが目立つ。客層が変わるがユナイテッドアローズも107.8、115.0と好調を維持している。他の主要企業も売上の流れは悪くない。流れが悪い企業はライトオン(8月89.0、9月87.0)シーズメン(8月90.1、9月88.0)Tベース(8月94.8、9月96.1)。数字が戻ってこないジーンズカジュアルはマックハウス(8月106.3、9月115.5)の回復に比べて、ライトオンは回復基調にない。

全体的な流れを見ると、ボリューム(値頃)路線の企業は安定しており、特に短サイクルで商品を提案するユニクロやハニーズの流れが特にいい。逆に中間層で戦ってきた会社(アダストリアなど)の伸びが弱い。さらに、ある程度個性を持ったブランドが多いTSIやバロックなども少しアゲインストのような気がする。

都市部に集中してはいるが、百貨店の状況は、プレステージの高いブランドが高所得者やインバウンド需要などで好調のようだ。上場企業の中ではアッパーゾーンのユナイテッドアローズも好調な数字が続いている。ユナイテッドアローズはある程度の所得のノンポリ層が買っているのではないかと思っていて、その層が旧セレクト系の売上を作っていると思っている。そうやって数字を見るとやはり中間層が減少し、さらに2極化は進んでいると感じる。

さらに、企業力の差が今後大きくなることは想定される。このブログでずっと書いてきたが、新規企業が出てくる環境ではなくなっており、寡占化が進んでいきそうな気がする。売上規模は小さくはなったがワールドやサンヨーも好調と記事にある。ウィゴーをオンワードが傘下に入れたし、旧大手アパレルも新しいゾーンに取り組みつつある。寡占化の中でも、会社の方向性を考えるとアダストリアやパルグループなどが中心になってどんどん何か新しい風を入れないと、小売業の硬直化が進んでいきそうな気がする。それがなければ多彩なショップ揃えはできず、商業施設も硬直化する。

■今日のBGM

ジーンズカジュアル業界

小売業の数字を毎月見ていて、気になるのは「ライトオン」や「マックハウス」というようなジーンズを核としたカジュアルショップの数字の低迷だ。もともとはジーンズカジュアルを中心に販売してきたが、近年はレディスやキッズに幅を広げており、呼称としてジーンズカジュアル業界が正しいのかどうかわからない。

上記上場2社の数字だが、ライトオンは8月決算期で売上は389億前後、前年比82.8%、既存前年比87.0%、マックハウスは8月上期で売上前年比80.6%、既存前年比91.8%、第一四半期の予測では通期売上135億、前年比は87.6%と発表している。ちなみに公表売上のピークがライトオンは2007年度1067億、マックハウス2009年567億となっている。ともにピーク期の40%に届いていない。当期の営業利益予測もライトオン-24億(第3四半期時点の会社予測)、マックハウス-8.9億(第一四半期での会社予測)となっており、現状の数字状況から見ると、さらに赤字幅は広がっていくと思われる。ライトオンは2019年から、マックハウスは2018年から、コロナの影響もあり営業赤字は続いている。

数字を見て気になっているので、SCに行くときは必ず売場は見ている。ライトオンはあまり動きがなく、積極的な商売をしてないような気がする。先週見た時も、売場は、ほぼ秋の体制になっていて、残暑厳しい中、なかなかお客様を呼び込めないような状況だった。前回ライトオンについてのブログコメントで、利益のダウンが大きかったので、大幅な在庫処理をしたと書いたのだが、その商品はどこで売っているのだろうか?8月、9月と完全に「売り」の体制は見えない。会社として何かあるのかもしれない。マックハウスはしばらく見てないが以前見た時は、メンズ、ジーンズの見え方を弱めて、提携したワールドのハッシュアッシュの打ち出しを強めていた。カジュアルショップへの移行を早めたいように感じた。

もうジーンズカジュアルは1つのカテゴリーではなく、カジュアルウェアに飲み込まれている。ユニクロやGUで、機能的で買いやすい値段のジーンズが、カジュアルアイテムの1つとして完全に浸透している。アメカジブームやインポートデニムブームなどを経て従来のコア客層は、よりマスから離れていっている。少しこだわりを持つ客層が「Bshop」系のセレクト店に流れているような状況だと思う。

ライトオンやマックハウスの失敗は何か?同一業態を拡大し続けたことにあるかもしれない。パルもアダストリアも、もとはジーンズカジュアルの店でスタートしている。その将来性をどう読むかだが、スタート段階で客層の幅を広げていくべきだった。客層の幅に応じてジーンズ以外の提案もすべきだった。さらにライトオンはイオンモールとともに拡大し、売場も大きくなり、売場の焦点がぼやけてきた。ジーンズの特性だけでは競争が激しいカジュアル路線では戦えなかった。今はその売り場の大きさが一番のネックになっている。マックハウスは、逆にイオンモールに乗らなかったことが拡大できなかった大きな要因だと思う。

今の流れを引き戻すのは非常に厳しい。マックハウスは親会社がチヨダであり、まだ延命方法は十分考えられる。(チヨダもイオンモールに乗らなかったのでABCマートと大きく差がついたが・・・)ライトオンの今期の10月の決算発表には注目したいが、自力以外での再生する方法も模索する必要がありそうな気がする。もうしているか・・・

■今日のBGM

ティーンズヤングショップの寿命は短いが・・・

キャラクターを打ち出したティーンズヤングのブランドを多数見てきた。時代の流れに合わせて、大きく伸びて光輝いた時期があったブランドも数多くあったが、今も続いているブランドは本当に少ない。顧客が年を重ねて、離れていくか、その客層と同じようにターゲット年齢を上げていくかしかない。実際残っているブランドは百貨店に出店場所を変えており、客層も当然上がっている。品揃えショップもインパクトが強かったショップは特に続きにくい。ボリュームプライスで値頃を打ち出したショップでも、往年の流れはない。堅調なショップは思いつく中ではハニーズくらいかもしれない。ショップにインパクトを持たせず、売れ筋を細かくチェックし海外の工場でコストを落として作り量販するスタイルを続けている。ティーンズヤングのトレンドは短サイクルで、一挙に盛り上がる反面冷え込むのも早い。

ANAPの社長交代の記事が新聞にあった。20代の女性のようだ。ANAPとはある商業施設のリーシングで、地元FCを介して出店してもらったことがある。何度か創業社長と話した程度で、その社長独自の個性ある商品戦略だったと記憶する。「109」ブームの後半ぐらいだった。その後販売代行をしていた時、イオンモール泉南のオープンでANAPも出店しており、すごい人気で大きな売上と聞いて驚いた。このゾーンがイオンモールに出店するのかと驚いた記憶がある。その後上場したのは数年前に知った。数字を見てみると業績のピークは売上が2010年91億で営業利益は2012年5.7億となっている。コロナ以降赤字に転落し、前年決算は債務超過となっている。出店店舗を見るとイオンモールが多く、アンテナショップはあるが、郊外モールを主戦場にしている。近年は少し気にしてみていたが、営業面ではタイムサービスが多く、それでも販売員が一生懸命売っていたので、ある意味すごさを感じていた。

少し詳しくデータを見ると2016年くらいから、インターネットでの売上が店舗売上よりも大きい。その流れが今回のネット会社のファイナンス契約と社長交代につながっているようだ。しかし「109」ブームからここまで残っていることがすごいし、上場したのもすごい。個性的な社長だったし、そのあとをよく上場し経営してきたと思う。モールに出店した戦略がすごかったのか、仕入れ政策を含むMD能力が高かったのか、スタッフへのマネジメントが優れていたのか。さらには、上場にはどういうビジョンがあったのか。債務超過になった経営よりも、若い社長に変わったことよりも、続いてきた理由のほうに興味がある。ネットの影響の大きさにはびっくりしたが、ネットでもこの客層にこれだけ売れた根拠は何だろうか?

今後は新体制になって、戦略を変えていくのだろう。決してターゲットゾーンのトップブランドでもなく、ブームが下火になっても生き残り、上場までした会社の大きな強みは何だったのかを十分検討してほしい。短命と言われるティーンズヤングショップの次のステップは何かを示してほしい気がする。

■今日のBGM

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