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ファイブフォックス

ファイブフォックスの会長だった上田稔夫氏が亡くなられた。ファッション業界に一時代を築き上げた人物だ。ファイブフォックスはDCブランド全盛期の「コムサデモード」「ペイトンプレイス」などを展開していたファッション業界の大企業で、2000億超の売上で経常利益率もピークは13%あったとのことだ。

ファイブフォックスは黒を基調にしたモードファッション「コムサデモード」がメインブランドで、少し宗教染みた会社というイメージが強い。開店前に大きな声でスタッフ全員声を合わせて挨拶をしていたのを何度も見た記憶がある。商品の中に台紙を入れて同じ大きさに合わせて商品整理を徹底し、VP(演出)はモノトーン基調で固めており、さらに店内音楽はビートルズで統一していた。上田氏はファッションビジネスで大事なのは「商品」「店舗」「在庫コントロール」だと言っていたそうだ。全くその通りだと思う。

DCブームの後、 「野菜売り場の近くに大きな店を出せ。」との大号令で、「コムサイズム」を立ち上げ、脱ファッションビルで大型モール(GMS)に参入したのもファイブフォックスだった。「野菜売り場」はお客様が必ず通る。つまりデイリーのお客様の目につく一番の場所にファミリー市場の店を出した。この業態はファッション業界の常識を覆した。これが今のモールのファッション大型区画のスタートだったと思う。

昔の仕事柄、各ブランドの開発担当者と打ち合わせをしていたが、ファイブフォックスは冷たいイメージが強く、特に弱いデベロッパーには強気だったような気がする。売れているブランドはえてしてその傾向が強いが、大手だった「ビギ」や「ニコル」よりその印象は強い。それだけブランドの位置づけを大事にしていたのかもしれない。

コムサブランドはモードテイストの黒を基調としたMDブランドで、他の黒基調だった「ギャルソン」や「ワイズ」などデザイナーブランドよりクリエイティブさはなく、店舗イメージや演出、売り方を差別化させて、そこを武器にお客様を引き付けていたと思う。ただ、やはりモノトーンのMDブランドとして感じられてしまうと、ブームが去ると厳しい状態になっていった。現在年商が200億くらいということだが、それでもすごいと思ってしまう。売り上げの中心は「コムサフィユ」(子供服)ではないかなと思う。

商売哲学の「商品」「店舗」「在庫コントロール」については記事を読んで初めて知ったが、「商品」は小売業では共通だが、「店舗」「在庫」を意識していたことには共感する。あのレベルまで売場のイメージを固めてしまうと逆にマイナス要素になるかもしれないが、「おたたみ」のマニュアルや演出は驚かせた。コムサ憲法と言われるマニュアルがあると聞いたこともある。環境面を含めた店舗マニュアルは必要だと思う。「在庫」に関しては常々私自身も商売の基本だと思っているので、このブログでも一番ページを割いている。ファッションビジネスで大事なことと言っていたことには強く共感する。

改めて、デザイナーブランドでなくMDブランドで年商2000億まで育て上げた力量には時代背景もあったが、「すごみ」を感じる。

ただ、私はファイブフォックスの服を自分用には買ったことはない。

■今日のBGM

ファッション店舗は激減している

先月、知り合いの会社が株式譲渡された。ファッション小売店舗だが、一時は大型モール(RSC)中心に50店舗以上展開していた。譲渡時は10店舗を割っていたそうだ。大型モールは増えたがファッション関連の店舗は激減しているのではないか。個別にはMDや販売体制の問題もあるが、それ以前に店舗数が減っている。大型モールにファッションのニーズが少なくなっているのかもしれない。

大型モールの国内最初はどこか難しいが、現状のモール型は2000年のダイヤモンドシティキャラ(川口)がスタートのような気がする。その後、従来のGMSには入店しなかった「ワールド」「イトキン」「オンワード」など百貨店系メーカーや「サンエーインターナショナル」などヤングファッション系ブランドがディフュージョンブランドを大型区画で展開し、新しいモールのイメージを強めた。そこから20年経過しGMSを消滅させ、今は全国どこにでも点在している。つまり大型モールを引っ張ったのは都心から郊外へ広がったファッション店舗の力が大きい。

その当時立ち上げた「ワールド」のブランド「ショップTK」や「オペーク.クリップ」などは激減し「ハッシュアッシュ」はなくなった。イトキンの「avv」もほとんど見ないし、オンワードも「エニーファム(エニシィス)」もあまり見ない。サンエーインターナショナル(現TSIホールディングス)の「ナチュラルビューティベーシック」も大型モールへの出店スピードはダウンし、「&バイPD」はなくなった。いずれもメインフロアの大型区画にあり、大型モールの顔だった。

カジュアル系ではユニクロの国内店舗数は2019年817店が2023年に820店、同じくGUが421店から463店と大きな変動はない。アダストリアは国内2017年1220店から2023年1509店と増えている。大型ショップはほぼ横ばいだが、一世を風靡したストライプインターナショナルが2017年1400店から2023年には700店舗と半減している。ライトオンも2017年513店が2023年には373店に減少している。多くのカジュアル系の店舗は激減しており、それに代わって古着や値段志向の強いショップがやや増えてきている感はある。

逆に、1階のSMの近くには食物販のテナント、上層階には「100均、300均」や「携帯ショップ」など所謂「その他」業種の出店が増えている。さらに店舗の大型化が進んでおり、ユニクロや無印良品、ABCマートは増床出店が多い。どちらかというと必需品を大型化させているイメージは大きい。

ファッションが商業施設のイメージになる事は間違いない。新しいブランドを探し提案できなかった百貨店は、顧客年令が上がり衰退した。GMSも同様にお客様の年齢が上がって、デイリーウェアの品揃えの年齢も上がり、30代から50代の顧客を大型モールにとられた。中心客層が上がっていけば大型モールも同じ流れになる。すでにお客様は商業施設の使い分けはできている。新しいファッションの流れや新しいショップを探して導入していかねば間違いなく衰退する。常に新鮮であり続けなければ商業施設は淘汰されていく。

■今日のBGM

値段の影響

服を選ぶとき、「好きであこがれているブランド」「何とかこのラインまでは頑張って着たい」「普段着ならいい(このゾーンは年々広くなっている)」「買わない」のランクが個人的にはある。当然そこには価格の壁があり、価格のランクもある。

店を立ち上げた時、洋服屋ではなかったが「普段着ならいい」グループの商品をきちんと売れるように環境も考え、品揃えしたつもりだ。自分なりにビジネスモデルも検証してスタートさせた。

商売の理屈を単純に考えてみる。5000円で商品を販売する。利益は50%必要だとすれば仕入原価は2500円になる。取引先も50%の利益を得るには1250円で調達する必要がある。3年前の為替レートは1ドル105円だったのが155円近くまで円安になっている。企業努力を考えず単純に価格を置き換えると、取引先原価が1850円まで上がり、やはり取引先が50%乗せると仕入原価は3700円になる。単純に計算すれば7400円で販売しなければどこかにひずみが出る。為替の変動で当たり前だが、値段を据え置けば小売店か取引先にひずみが出てくることを再確認してほしい。例えば小売店が上場企業なら、無言の圧力はあり取引先の利益減になるし、取引先が強ければ必然的に小売店の利益減になる。

当然、商品はコストを考えて、素材を変化させたり、工場を変えたりするし、店も経費削減をやっていく。その前提で、商品がどの値段まで通用するか?例えばワイシャツで考える。ブランド品や10000円以上の商品ならその購買客層から大きな抵抗感はなさそうだが、5000円から10000円までの商品なら2000円上がると間違いなく売上は鈍る。一般的には値上げが大きく影響するのは30%アップくらいからだと言われている。個人的にも5000円で買っていた商品が7000円になれば買わない。5000円以下の購買層になると完全に値段志向になる。つまりモデレート層が価格志向層に引っ張られる。

先日ネットで年収2000万以上のラグジュアリーカード会員の調査が掲載されており、よく身に着ける「ハイ」ブランドはヴィトン24%、エルメス18.1%に対して、よく身に着けるブランドはユニクロが42.1%となっていたそうだ。普段着やインナーはユニクロという流れかもしれない。ファッションにおいては、高所得層はモデレート層ターゲットにはあまり流れてなさそうだ。

モデレート層が減ってきて、さらにその層が両極に引っ張られている。モデレート層を取り組むべき専門店が厳しくなってきている。

常々、「感性」「値段」「環境」を念頭に店づくりをしていくべきだと思っている。「値段」が厳しい状況下で、ちょっとしたこだわりを見せる商品の開発力が必要になってくる。さらに商品以外の売場内装や販売環境を再度見直し、強化する必要性も高まってきていると思う。

言うのは簡単だけれど・・・

■今日のBGM

大型モール(RSC)の評価基準

近隣に大型モールがたくさんあり、買物のついでに店を見て回る。厳しい状況だと感じるモールも少なくない。

大型モール(RSC)の創成期からいろんなモールを見てきた。売場企画に加わったこともあるし、最後は出店者側として、出店交渉もしてきた。つまりモール側で企画や、運営もしたし、出店側で開発業務やテナントとして商売もしてきた。現状でも、モールを見るとそのモールの状況はわかる。資産流動化されていたり、資本関係が複雑で最終の損益までは見通せないが、おかれている現状は見える。今のモールでチェックすべきショップMDとしてのポイントを何点か上げてみたい。

まず当たり前のことだけれど、テナントがきちんと埋まっていること。空床区画はすぐわかる。催事区画で埋めている場合もある。催事区画も空床区画と同じ扱いに過ぎない。什器や商品ですぐわかるし、きれいな催事も内装の作り方や店名の電飾の有無で判断できる。(定借物件の内装規定で店サインに電飾を加えるように指定されることが多い。)近年は3層のモールで3階のテナントや、食品側と離れている場所に空床(催事)は多い。

さらに、空床を埋めるためのサービス業種をリーシングするケースが多い。顕著な例は「携帯電話ショップ」であり、「ガチャガチャ」や駄菓子屋、古着屋、各種教室などのサービス系のショップが増えてきていないかもポイントになる。

3番目としてきちんと集客できるテナントは揃っているかをチェックする。「ユニクロ」、「GU」、「無印良品」、「ABCマート」など。そういう大型集客ショップは、できればメインフロアではなく高層階にあるほうが望ましいと感じる。個人的にはアダストリアであれば最低2店舗(3店舗?)はあるべきだし、近頃モールから退店しているがユニクロの「プラステ」があるモールは個人的には信頼できた。

さらに、メインフロアは店の顔になるフロアなのでテナントのラインナップは当然チェックすべきポイントになる。感性やトレンドを意識できるテナントがあるのがベストだと思う。値段を打ち出すショップがメインフロアに見えるのはそのモールがあまりいい流れではないように感じる。ファッションだけでなく「旬」を感じるテナントや「わざわざ買いに行きたい」テナントがメインフロアには欲しい。

その他、ショップMD以外では「SM(スーパーマーケット)の集客力」や「集客カテゴリー(シネコンなど)があるか」「交通アクセス面」などの環境的なポイントはある。

上記の観点で近隣のモールで見ると「コクーン」が最もポイントが高いが、規模が大きいだけに今後のメンテナンスが課題になる。逆に「アリオ川口」は現状大変厳しい状況で、イトーヨーカドーの動き次第ではオーナー変更も考えられ、大きな変革がありそうに思う。

今後は、理想的なテナントリーシングが厳しい状況が間違いなく続く。

■今日のBGM

ファウンドグッド

“「場所によって客層が違う。」とアダストリア関係者は語った。”と新聞にあった。「ファウンドグッド」をイトーヨーカドーに展開しているアダストリアの感想のようだ。

まず店を始めるには、ビジネスモデルを作る必要がある。誰に売るのか?そのターゲットは商売をするには潤沢か?何を売るのか?など・・・

誰に売るのか?で悩んでしまった。というのが冒頭の言葉のように思う。

「ファウンドグッド」の立ち上げの状況を見てこようと思って近隣のイトーヨーカドー浦和店に行った。昔はドル箱店舗と言われていた浦和店もオープンから50年以上も経過し、完全に古い足元客のための店になっている。天井も低く1フロア400坪くらいの昔の駅前型GMSになる。1階の共用部以外をほぼすべてをつかって「ファウンドグッド」はある。浦和駅徒歩4分という立地で、伊勢丹No2の売上の浦和伊勢丹の北側にある。浦和駅にはアトレ浦和があり、開発された東口にはパルコ(食品はヤオコー)がある。イトーヨーカドー浦和店のメイン客層は昔からの顧客の足元の中高年になる。言い換えるとシニア層が多い。ここだけ見ていたら偏った見解になると思って、アリオ川口のイトーヨーカドーに向かった。アリオ川口のイトーヨーカドーはモールに来るお客様になっている。

冒頭のコメントと同じ感想になる。GMSがダメになった理由でもある。イオンやイズミの衣料品平場が悪いながら持ちこたえているのは、モール戦略で客層を若返らせ標準化させているからだ。アダストリアの社員はおそらくGMS、特にモールにあるキーテナントとしてではないGMSを見たことがなかったのではないかと思う。裏を読めば、アダストリア側には大きなリスクがない契約になっているのだろう。

感想は、まだ真剣に取り組めていないに尽きる。「とりあえず、商品を埋めた」感が強い。単品量販ではあるが、あくまでもグローバルワークやローリーズファームのベーシック商品を値頃にした感が強い。内装や演出もお互いどこまでやっていくのかが見えてない。

やはり、お互いの方向性が固まっていないように思う。特に本部での意思は現場まで届くのには時間がかかる。以前、お互いが資本を出し合って「別会社を立ち上げるべき」と指摘したが、その必要がありそうだ。ちなみに広い売場に浦和店にはスタッフは見えず、川口店には1名しかいなかった。

思いつくまま書く。商品では衣料品以外でお客様を呼び込む必要を感じる。なぜ、インナー商品をやってないのだろうか?必需品で回転率が高い商品を取り組むことによって、来店頻度が増す。ユニクロも素材感を打ち出した「ヒートテック」で完全にフルライン客層になったように思う。無印のように生活雑貨を増やしてもいいようにも感じる。さらに店のカテゴリーが浦和店と川口店のように違っているので、店を分類して基本品揃え以外での対策が必要になる。例えばプライス志向の強い店に不稼働商材の処分コーナーを常時設けるとか、イトーヨーカドー得意のデータ分析で店の特性を活かしたレイアウトを作ったりするべきだ。

アダストリアは、こちらが指摘するまでもなく、感性だけで生き残らず、優秀な企業体質なので、今後はどんどん変革していくだろう。ただ、大多数が大型モールや駅ビル、ファッションビル育ちでもあるので、「しまむら」や「西松屋」の商売をどうとらえるかが成功の鍵のような気がする。「ファウンドグッド」の取り組みによってこのゾーンを開拓することが、企業として大きな成長につながると思う。

定期的に見てみたい。

■今日のBGM

ファッション業界

「これがいいより、これでいい」 無印良品のスタート期のスローガンと言われている。今の時代に当てはまる言葉のような気がする。

日経平均株価が最高値で、上場各社は大幅なベースアップを行い、初任給も大幅に上がっている。日経平均が高かったバブル期はもう少し生活に実感があったように感じる。

当時のファッションはブランドブームで俗にいう「ボディコン」ブランドが全盛だったし、20代中心にDCブランドが席巻していた。マルイには「ピンキー&ダイアン」や「J&R」が並び、まばゆいフロアがあった。ビームスやシップスもトラッドの流れから変化しセレクトショップのスタートにもなった。好景気到来と言われている現状と比べるとファッションへのあこがれが強かったように感じる。少し前にも「モンクレール」「デュベチカ」などからブームになったダウンジャケットの人気の中、「カナダグース」が世間にはあふれかえっていた。しかしファッション以外の理由もあるが、今はほとんど見なくなった、ファッションの話は一部でしか上がってこない。

ファッションは「憧れ」からスタートするように思う。そういう意味もあり昔は働きたいと思う人たちも増えていた。「好きな服を着たいから」「好きな服を売りたいから」ということから販売員になる人たちもたくさんいた。当然待遇面の問題もあるだろうが、まず「好きな服」から仕事を見つける人たちがいた。今の時代にそういう憧れを持って販売の仕事に向き合う人たちはいるのだろうか?

今、好調な小売業はユニクロやしまむら、西松屋など接客が重視されない会社になっている。本部がマネジメントできる体制が整っている会社だ。当然単価が低く品数も多いので必然的にそうなる。仕事も作業化されている。会社で売れる商品を作り出し、データで商品動向を把握し、そのデータに基づいて売場体制を構築する。

小売業はどんな業態でも、売りたい商品を売るのが仕事にはなる。ただ思い入れが強く、「人」の要素が強い企業が厳しいのが現状である。

人手不足は深刻と聞く。販売業は土日も勤務が普通だし、立ち仕事でもある。定職としては最も敬遠される職種となる。さらに、そこまで大きな収入にはならない。収入を得るのが目的で待遇面を重視する人には向かない。

なかなか「これでいいより、これがいい」時代には戻ってこない。

■今日のBGM

日経平均株価最高値と小売業

株価最高値ということだが、どうも好景気という雰囲気は感じない。国民の約3割位しか株取引をしてない中で、その恩恵はどれくらいあるのだろうか?当然円安で輸出企業は高収益予測となっている。トヨタは今年の見通し営業利益は4.9兆円と発表されている。熊本の半導体工場の大卒初任給は28万ということで好景気のニュースが流れている。

就業者の70%は中小企業で働いている。中小企業がどれくらい恩恵を受けているのだろうか?給与は物価高騰率よりアップするのだろうか?現人口の3割位いる年金受給者に恩恵はあるのか?さらには2010年くらいから国としては輸入超過が続いている。現状は値上げに収入が追い付いてない状況で厳しい生活感しか感じていないのではないか?今後の金利上昇にどれだけ収入が追い付いていけるのか。

景気は小売業に大きな影響を及ぼす。バブル期はボディコンやブランドファッションが好調で幅広い層にも好景気が伝わった。さて今回はどういう流れになるのだろうか?

現状の小売業の流れは、衣食住とも低価格路線になっている。ファションでは「ユニクロ」「しまむら」「西松屋」など、食では「ロピア」や「OK」など、住では「ニトリ」など比較的価格志向の強い企業が強い。モデレートなポジションだったイトーヨーカドーに代表されるGMSはほぼ終焉を迎えたし、そのゾーンで堅実なのは「アダストリア」くらいしか思いつかない。その「アダストリア」もIYやイズミと低価格帯を模索している。

ブランド人気は当然あり、インバウンド中心と言われているが、当然日本の金持ちはさらに含み益が増えているので、そのゾーンは絶好調と聞く。百貨店の外商は比率を上げているし、高級車も売れ続けている。大都市の百貨店はインバウンドもあり大きく数字を伸ばしている。

ファッションに関しては昔ほどこだわりを感じず、ブランド意識も下がっているように感じる。高給与と言われている会社の会社員も、とりあえずセレクトショップのオリジナル商品を買っているという流れで固執している感じはない。上場している「ユナイテッドアローズ」や「TSI」も伸びてはいない。気に入ったものがあれば買うという自然な買い方のようだ。

この2極化はここ数年続くと思う。低価格志向は同質化に向かう。そこからの差別化する方法を模索しなければいけない。商品なのかシステムなのか、売場などのハードなのか、売り方なのか、ここから差別化の糸口を見つけなければならない。

■今日のBGM

マルイとパルコ

実家に用事があって、そのまま大阪で少しぶらぶらした。(今回も飲んだだけのような気がする・・・)

旧正月も終わったのだが、インバウンド景気はすさまじい。特にミナミには人があふれていて、観光客が全体の7割くらいいそうな気がした。

そんな中で印象に残ったのが、マルイとパルコの存在感の違いだ。マルイもパルコも俗にいうファッションビルを代表する企業だった。私自身もビブレに在籍していたのでよく見させてもらった。DCブランドブームはマルイが引っ張ったし、もともと文化的要素が強くセレクトショップや専門店をうまく育てたのはパルコだった。

難波マルイは高島屋前が整備されて一等地になっている。ただ売場は雑居ビル化していて、空床も目立つ。フロアコンセプトもなく、催事出店が目立つ。立地や客数を考えればもっと成功すると思うし、何よりも昔の得意ゾーンで戦えば収益店舗になりうる可能性は大きい。「もうちょっと頑張れよ!」と思ってしまった。

マルイはもう小売業を完全に捨てている。収益基盤はカード事業が築いた金融業や、物流などその他の事業で賄っているのではないか?従来のファッションビルのマルイも不動産賃貸業としてのビルで、もうすでに小売業ではなくなっている。商業施設としてのコンセプトはどんどん薄れていて、場所貸しに徹している。以前グループのビルに出店していたことがあるが、店のショップMDという概念がどんどんなくなってきて、退店した経緯がある。

パルコは成功しているのではないか。オープン時はこのMDがいつまでもつかと思ったが、インバウンドもあり、さらに大丸との相乗効果がうまく作用している。「sacai」や「マルジェラ」「kolor」など難しそうなブランドも商売できてそうだし、入口の「ヒューマンメイド」は入場待ちの列もあった。飲食ゾーンや高層階の無印やハンズもうまく回っていそうだ。

都心百貨店は2館連動でうまく分けられているところが成功している。伊勢丹や梅田阪急のメンズ館。心斎橋パルコも大丸とうまくすみわけができている。でもやはり都心のみしか成功しそうにない。都心の一等地でも2館連動しないと厳しいのではないか?「ギンザシックス」も空床が多いし三越から少し離れるだけで厳しそうに見える。そういう意味では難波駅前で高島屋に近いマルイは戦えると思うのだが・・・

もうすでにファッションビルは都心でも成り立ちにくいようになっている。乗降客が多いターミナル型しか成功していない。やはり隣接して百貨店やデイリーニーズの店が必要になってくる。

ファッションビルと言われていた業態はもうなくなっているのかもしれない。

※友人の店が阿倍野キューズモールでリニュアルしたので行って来た。中に入っているイトーヨーカドーは全く元気がなかった。火曜の午前中という時間帯のせいかもしれないが食品に欠品が目立った。衣料品は売り尽くし中で売る気は見えない。アダストリアとの「ファウンドグッド」も入荷していて、売場に出てはいたが、什器や内装や人が変わらなければやはり魅力は感じない。雑貨系は売れそうだった。とりあえず売場に元気が出ないと厳しい。

■今日の逸品(アレンパの芋焼酎)

イトーヨーカドーとアダストリア

イトーヨーカドー(以下IY)の撤退についての感想を書いたばかりでいたら、「IYが撤退した衣料品平場をアダストリアが改革。6月までに64店舗に導入。」との記事が報道された。

IY専用のアパレルブランド「ファウンドグッド」(100坪~300坪)をアダストリアが商品提供し売場演出、販促、販売員教育もサポートするという。イズミとは「シュカ」というブランドをプロデュースしているが規模は今回のほうがかなり大きい。

こうなったいきさつを想定してみる。(あくまでも想定。)IYが衣料からの撤退を決め、テナント導入を進めるという政策は去年の春くらいからは動いていたと思う。そして、おそらくテナント導入はうまくいかなかったのではないか。ここでも何度か書いたが今のGMSのIYにRSCモールになれたテナントは興味を示さないし、デベロッパーが収益を優先する条件ではなかなかリーシングできない。そんな中で友好関係にあるイズミと協業を始めたアダストリアとの話し合いでのスタートの気がする。「スタディオクリップ」のFCもスタートさせ、話し合いを続けた結果、今回の協業に至ったのではないか。

果たしてうまくいくか?

マイカル在籍時、同じようなことをした記憶がある。取引先とブランドを立ち上げビブレ(ファッションビル)だけでなくサティ(GMS)までの導入を図り、GMSの売場の活性化を図ろうとした。取引先は「サンエーインターナショナル(現TSI)」、「ピンクハウス」「ワールド」「イトキン」だったと思う。「ZARA」とも取り組んだと記憶する。結果は失敗だった。お互いの会社の取り組み方にずれが出てきて整合が難しかったと思う。お互いの社風も違う。育ってきた風土も違う。組織体系をきちんとしなければうまくできない。さらにお互いのリスクの大きさも違ってくる。

今回の詳しい取り組み内容はわからないが、内装などハード投資や商品リスク、運営問題などの整理がきちんとできるかがポイントになる。成功させるには別会社を作るくらいの労力はいる。今回はファッション小売業で最も優れている「アダストリア」と流通業での優等生のIYとの協業なので、昔私たちが経験した失敗は少ないとは思う。IYで「スタディオクリップ」のFCが成功したことも要因の一つとあるが、そのブランドは認知度が高く、関係は「取引先対小売業」で一般的なものだ。今回の取り組みはIYの活性化がメインなのだろうが、事業としては西友がスタートさせた「無印良品」のようにIYだけでなく、どこにでも出店するブランドを作る意気込みでないと失敗する気がする。当然アダストリアとしても現状の低価格帯の専門店の好調さは織り込み済みで、販路拡大を探っていたはずだ。

将来的にはチェーン展開できるショップを目指すべく、資本を持ち合い、人の交流もし、同じ目標に向かっていくことが成功のポイントになると思う。いち早く運営会社を立ち上げるべきだと思う。

今後の動向に注目したい。

■今日のBGM

上場小売業の年末年始の数字

12月の数字については先月書いたので、1月の数字とあわせて最大量販期である年末年始の数字を見てみる。

1月の売上状況は、アダストリアが前年比114.7%、ABCマートが110.3%、ニトリ110%と2桁伸長しており、さらに主だった企業はほぼ前年はクリアしており堅調な流れだったようだ。12月84.6%と落としたユニクロも100.4%まで戻してきた。少し気になるのは12月91.0%、1月92.7%と2カ月大きく落とした無印良品。要因は冬物在庫の在庫不足とのコメントだった。

1月もコロナ前の数字と比較するために、2019年1月から既存店前年比を毎年掛け合わせてみた。(これが正しい数字ではないが、流れはつかめる。)その数字(コロナ前比)での伸長はABCマート113.7%、西松屋112.2%、ハニーズ111.2%が2桁増。しまむら109.6%、ニトリ108.2%アダストリア101.3%と続く。他はおおよそ90%台。まだまだコロナ前までの数字に戻っていない。ユニクロで97.2%。12月の動向とほぼ変わらないラインナップとなっている。

ABCマート、西松屋、ハニーズ、しまむら、ニトリと価格志向の強い会社が好調に推移しており、2極化を物語っているように感じる。まだまだ物価の上昇に所得が追い付いていないように感じる。

ちなみに価格志向と対極にいるだろうユナイテッドアローズは既存前年比が12月97.8%、1月102.8%と変化なく、コロナ前2019年比はそれぞれ86.9%、85.1%と全くコロナ前に追い付いていない。余談だがユナイテッドアローズのコメントに「マザーニーズが活性化した」というコメントがあり、時代の流れを感じた。

また別途取り上げたいが、厳しい企業の数字は改善していない。ライトオンはコロナ前比では69.0%、イオングループでなくなったタカキューは73.2%と大きく落ち込んでいる。

最後に出退店情報を見ていて、季節的に入れ替わりの時期ではあるが、退店の多さに驚いた。退店数はアダストリア14店、ユニクロ8店、ライトオン、チヨダ9店など。その分2.3月の出店は多いのだろうが少し気になった。

■今日のBGM

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