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セレクトショップはどうなるのか?

ヤフーでセレクトショップの意味を調べると、「独自のコンセプトに沿って複数のブランドの商品を仕入れ、販売する業種。」とある。ここに「個性ある複数のブランド」と入れるのが正しいのかもしれない。ここについて話すといろんな意見があり、特に癖のある意見が多いのであくまでも私見で書く。

セレクトショップと大手アパレルの大きな違いは、仕入れて直接お客様に売るか卸業を中心にするかの違いにある。昔から付き合いがあるところはビームスやユナイテッドアローズも地方ではFCをしている会社もあるが、非常に少ない。ほぼ直営店の展開である。名の知れたセレクトショップもあれば、地方で独自にブランドを仕入れているセレクトショップもある。

個人的なことでは、大学生のころ上野アメ横の店「ミウラアンドサン」でスタジャンを買った思い出がある。その後もインポート商品のバイヤーをしていたころはシード館、インターナショナルギャラリー、伊勢丹スライスオブライフは定点観測していた。トゥモローランドに「ボルジー、マカフィー」の出店交渉もしたし、完全にあしらわれたが「ビームス」の出店交渉もした。まだ千駄ヶ谷の小さい事務所だった今のベイクルーズと布帛(シャツ)の商談をしたこともあった。

その当時とは規模もMDも大きく変わっている。トレンドを追いかけてセレクト中心から完全に自主MD商品中心の店に変わっている。上場しているユナイテッドアローズの前期の売上は130135(百万)売上総利益率51.6%と完全に大手小売業としての位置づけだ。買取仕入れだけではここまで利益は出ない。「ソブリン」や「ディストリクト」などで出店していた高感度の店はほぼなくなっている。

大手セレクト店舗はアウトレットのウエイトが上がってきたのではないかと思う。アウトレットも完全に作りこんで利益を稼ぐMD商品が中心になっている。ここ数年はこのアウトレット業態で売上と利益を稼いできたように見える。このターゲット客層は少しずつアウトレット用の商品とわかってきたようで、ここからはそこまで伸ばせないように感じる。できるだけ早くフェイドアウトするべきだと思う。

先日何人かの40代前後の知り合いと話したが、あまりファッションには興味はないが「洋服はアローズやビームスで買う」と言っていた。その人たちは比較的高収入の部類だとは思う。ユナイテッドアローズの上期の前年比は107.5%で11月は118.2%まで伸びている。インポートは高い、ユニクロは皆着ている、選択肢の中では安心感があるので選んでいるようだ。そういわれると昔よりこのゾーンの敵は増えていない。ノンポリでそこそこ収入がある客層はまだ購買客のようだ。アウトレットで安易にショップ名のバリューで引き寄せて売ることは減らしていき、給与労働者30%が属する大企業社員をターゲットに品質や接客を最重点で取り組めば大きくマイナスはしないかもしれない。競合は限られてきており、きちんと囲い込めば今後も安定的なマーケットとも感じる。

関係ないが、昔出店の話も真剣に考えてもらい(断られたが・・・)、誠実なアウトレットを運営し、伊勢丹にもインポートブランドに併設してコーナーをもって、着実に商売しているように見える「トゥモローランド」をメジャーでは一番応援する。

■今日のBGM

ブランドの持続力

ヤフーニュースで「サマンサタバサ」の記事が出ていた。状況は非常に悪いといろんなところで書かれているが、そもそもティーンズヤング対応のブランドは長持ちしない。何度も書いてきたが、お客様は年をとり、ファッションの流れも変わるからだ。

ファッション業界でブランドはどれくらい持続するのか?30~40年前のDCブランドで残っているブランドはほんとに少ない。ビギもニコルももう会社自体が別のものになっているし、あれだけ売れたコムサも今は見かけない。残っているのはクリエイター系でノンエイジ志向が強かったブランドくらいだと思う。ギャルソンやそこから続くデザイナーブランドや一度は倒産したがヨウジヤマモトやケンゾーなど。あとは年代層を広げたブランドが百貨店中心にシフトして続いている。

ティーンズ寄りのブランドの賞味期間はさらに短い。あっという間に落ち込んだストライプインターナショナルの各ブランドもそうだし(もうティーンズ系ではない?)サマンサタバサもその部類に入る。多感な時期で流れがすぐ変わる。それを前提に会社はどう動いていくことが必要だと思う。

もう一つ記事で指摘していた「中流層中心のMDの失敗」はまさにその通りだと思う。完全に2極化が進んでいると思うし、中流層ターゲットにすれば逆に2極化の流れでは「どの層も支持しない。」が正論だ。

ブランドビジネスは難しい。生き残っているブランドには何か「成功の鍵」(KFS)がある。クリエイター系だけでなく百貨店客層をターゲットにシフトしたブランドは続いている。さらに量販店でも販売員付きコーナーブランドは、周りのスタッフの少なさの中、接客面で優位に立ち数字を維持しているとも聞く。企業としては客層の幅を広げるべくブランド数やショップ名を増やして維持していっていくか、深く掘り下げていってコアの客層に向けていくしかない。

サマンサタバサはある意味予測されていた事態で、前オーナーはうまく手放したし、コナカのM&Aの失敗ということになる。なぜ買収したのだろう?最近ではマッシュグループもM&Aされたが、複数のブランドがあり、持っている他のブランドの客層の幅も広いが牽引してきた「ジェラードピケ」はおそらく失速すると思う。今後の動向は要チェックかもしれない。

ティーンズはすぐにヤングに、ヤングはすぐにヤングミセスに、ヤングミセスはすぐにミセスになる。ターゲットを固定していれば当然新しい客を取り組まなければならない。ティーンズヤングは感性が時代ごとに変化しさらに細分化していく。当たれば大きいが、その分消えるのも早い。

ブランドは「誰に売るのか?」「その顧客の特性は?」「ブランドにとってメリットのある市場の定義は?(例えば機能性なのか、ファッション性なのか?デイリーなのかビジネスなのかなど)」「その市場規模は?」を十分に吟味することが必要で、さらに途中での顧客動向の変化を素早く見極めることが必要だ。

■今日のBGM

RSC(大型モール)への提言

NSC(小型モール)の役目は生活関連商品の買いやすさと利便性にあると思う。RSCはそこに「わざわざ買いにいく」商材やテナントが付け加えることで成り立っていると思っている。当然広商圏ロケーションや規模や行きやすさなどが加味されるが・・・

「わざわざ買いに行く」テナントはRSCができ始めたころは出店していたが、次第に姿を消していく。中には当初はそういうテナントだったが、その後客層に合わせていって成功していったテナントもあるし、消えていったテナントもあるし、さらに消えていきつつあるテナントもある。

現状のRSCは近隣に乱立し全く差別化ができなくなっている。わざわざ性のあるテナントがなくなり、どこに行っても同じショップMDになっている。さらに好調企業はショップの大型化を図り、それによってさらに各SCの同一化が進んでいる。当然そういう状況が続けば、SC間の競合力の差で淘汰が始まる。GMSが乱立した時と同じ状況になる。

「わざわざ買いに行く」つまり差別化できるテナントはなぜ出店しなくなったのか?そういうテナントと出店を続けるテナントは大きな違いがいくつもある。差別化できるテナントはコンセプト自体が、極端に言うと「お客様を選ぶ」「自分たちの考えを理解してくれるお客様だけでいい」「仕事のペースが違う」などなど・・・

RSCに出店しない理由を順不同で列挙すると

  1. 営業時間が長い。どんどん長くなる。定休日がない。
  2. SCのセールや販促イベントが多すぎる。
  3. SCでの会議や打ち合わせが多い。 
  4. 客層の幅が広く、目的客の比率が低い。
  5. 賃料や他の経費が高い etc

つまり、自分たちの空間、世界を作りにくいということ。そこを解決すれば出店の糸口はできる。

そこで提言である。

  • 本部や店のリーシング担当がどうしても入れたいテナントを探し10店舗くらいでまとめる。→この見極めが最も大事だが、リーシング担当は絶対に入れたい店舗は数店舗想定に必ずある。(それがなければ仕事をしていない。)
  • SCの1画に500坪から1000坪くらいの場所を確保する。→現状それぐらいの面積は十分まとめて開けることは可能だと思う。それは3階の奥でもいいしデッドスペースでいい。
  • その1画にリーシング担当の推薦する店舗を検討の上リーシングする。

その時の候補テナントへの想定条件を考えてみた。

  • 賃料はすべて込み(共益費、販促費など)で10%以内の1年契約(再契約あり)
  • 営業時間は9時間(例えば10時~19時)定休日は毎週1日(例えば火曜日)→その1画だけは上記時間のみの営業とする。
  • 内装は各テナントがイメージに合った内装で出店。→内装イメージを高くする。当然内装はSCがチェックし決定する。
  • テナントが出店する1画はSCでイメージを持った環境整備をする。
  • 全体販促参加は強要しない。

  

こんな絵空事を提言しても絶対受け付けてくれない。間違いなく却下される。でも考える必要はあると思う。

こうすることによってSCの差別化が図れるし、運営能力も間違いなく向上する。

こういうところにしか生き残り戦略の糸口はない。

■今日のBGM

やはりファッション系の出店は少ない

SCに出店する店は少なくなってくると予測してきた。コロナで傷んだ企業が、同じくコロナで傷んだ大企業がやっているSCには出店できない。利潤を追求する大企業は当然賃料を下げるわけがない。現状維持かそれ以上を言ってくる。その条件に対応できるのは利益率の高い新業態か、収益が安定している企業になる。収益が安定している企業はさらに大型化を模索し、省力化を図り、坪家賃も引き下げる。全体の坪数は変わりないので、賃料のしわ寄せは、当然他の出店テナントに来る。

実際に現場を見てないが、イオンモールのリニュアル店舗のHPをみる。(新しい順)※新改装店のみ。あくまでも公式発表でなくHPでの個人的な検索数。

■イオンモール京都 11/2オープン

新店15    飲食系7 通信(携帯等)2 その他(保険、体験型等)3       衣料1(ワークマン女子) 雑貨1(ゾフ) 催事1(イケア) 

■イオンモール幕張新都心 9/15~順次オープン

新店22     飲食6 その他(車、家、ゲーム等)9 生活雑貨2       衣料系3(古着2、オフプライス1)雑貨2(サックスバー、ABCマート)

■イオンモール広島府中 9/22~順次オープン

新店14    飲食5 その他(ゲーム、ヘアー、ペット等)3 生活雑貨2       衣料系3(ハニーズ、スタイルミキサー、ワークマン女子)雑貨1(チェルシーニューヨーク)    

やはりファッション系の出店は少ない。当然リニュアルは多いが政策的な出店と思える「ワークマン女子」(ベイシアとイオンの確執はなくなった?)とバロックの新業態「スタイルミキサー」が目立つ程度。雑貨でも数字は厳しいと思われる「チェルシー」やイオンモールではあまり望まれてないだろう「ハニーズ」の出店は、きついリーシングを物語っているし、あとは大手の「ABCマート」と「サックスバー」の大型化出店。その他、飲食や携帯、保険、ペットなどの出店が多い。ファッション関連ではリニュアルの目玉になりそうな出店は見当たらない。コロナで入れ替わりの激しい飲食やメインフロア外の改装が中心になっている。

広島府中や幕張新都心はイオンモールの中では大型SCであり、リーシングも力を入れただろう物件だ。見てもなく失礼だが、大きな目玉のないリニュアルのような気がする。

今後も、今まで改装の目玉だったファッション店舗の導入は減っていき、好調店舗の大型化と「その他業種」の導入中心のリニュアルが中心になっていくことが予測される。それによってテナントの好不調の差が広がり、大型SCの魅力がどんどん薄れていくように思う。

■今日のBGM

顧客はどんどん年をとる

ずいぶん以前に書いたと思うが、顧客管理をやればやるほど固定客の年齢は上がっていくので客層は高くなっていく。昔から中高年対象の店なら新規顧客になるかもしれないが、ヤングターゲットだった店はどんどん顧客ターゲット年齢は上がっていく。

「レイカズン倒産」と聞いて、原因はそこにあると思った。平成系ブランドと言われて、どちらかというとショップブランドというより平成系品揃えショップの主力ブランドだったと思う。もうずいぶん前のことでほとんど忘れてしまったが、DCブランドの流れが悪くなってきて光が当たったブランドだったと記憶する。当時カジュアル品揃え店舗でカットソーが売れていた「ナイスクラップ」が大ヒットし、追随していったブランド群の1つだったように記憶する。同じ流れだった「マジェスティックレゴン」も別会社の経営になっている。

今その当時のカジュアル系ブランドで残っているのは、「45RPM」「「チャイルドウーマン」「ヒステリックグラマー」などがあるが、完全にブランドのターゲットや立ち位置を変えている。

特にカジュアル品揃え系の店は近年激減している。ユニクロに代表されるSPA型専門店が増え、さらに駅前ファッションビルから郊外モールへ買い物の主戦場が変化しており、各ショップや品揃店の立ち位置が見えなくなってしまった。さらに前述したが、従来の顧客は年齢を重ね、新しいターゲットの開発ができてない。郊外モールにシフトした「ストライプインターナショナル」や「ハートマーケット」、少し意味合いは違うが「アナップ」や「イング」もどんどん店舗を減らしている。

「レイカズン」はもともとの卸先は専門店だった。その専門店がもう成り立っていない。前述したターゲット年齢もあるが、やはり値段の壁も大きい。例えば、販路が専門店であれば専門店もメーカーもともに利益を50%出すとすれば、25%で作って50%で卸す構図になる。ユニクロなどSPA企業は25%で作って60%で売っても40%分値段が安くなるし、利益も大きい。引き付ける商品がなければお客様はもう専門店には足を運ばない。

今残って成り立っている専門店は、昔のジーンズ専門店くらいしか見当たらない。ジーンズにトレンドは少ないし、値段も崩れていない。ある程度の値段は通る。重厚な内装なら、なおいい。Bshop系の「ダントン」や「オーシバル」などを組み合わせれば根強いファンもついてくる。ただ以前から述べているように、在庫の問題があり多店舗化は難しい。

昔売れていたレディス品揃えブランドは、「客層の変化」と、「卸先の減少」、「値段の壁」で大きな戦略変更がなければ、どんどんなくなっていく。

■今日のBGM

中流?

いつも読んでいる漫画雑誌の4コマ漫画(作:業田良家)で、「夫婦が買い物に行って値段POPの大きいジャンパー、シャツ、パンツを見て最後に旦那さんが「俺の着ているもの全部値段がわかる。」と言ってユニクロらしき店から出てくる。」というものがあった。そのあと最後の1コマで「この店で、買った服しか、持ってない。」と詠まれている。

「ブラックフライデー」+「感謝デー」ということもあり近くのイオンモールに買い物に行ったが、集客があったのはユニクロと食品売場くらいだった。いつもの「感謝デー」より少し多いぐらいの客数のようだった。ユニクロは販促に呼応してセールコーナーを大きくとっていた。

また別の話だが、先日実家に帰った折り、所謂値頃価格のホテルに3泊した。観光地のグレードの高いホテルはほぼ満室で、中途半端な値段なら安いほうがいいと思って予約したのだが、ほぼ高齢者のツアーや夫婦客で満室近かった。ちなみに観光地は東南アジアの訪日客でほぼ埋め尽くされていた。

自分がそう思っているだけかもしれないが、どうしても値段訴求に向かっているお客様が多くなっているように感じる。少し前まで洋服はセレクトショップのアウトレットで買っていると言っていたノンポリの友人もユニクロ派に転じた。

ファッション業界もユニクロや無印、アダストリアの値段が中心になりブランド志向が崩れていっている。「取引先から買って仕入れて売る」時代から「自社で作って売る」時代に変わっているのでそうなるのは必然だとも言える。中にワンクッションはいらないだけで値段は下がるに決まっている。そしてお客様はもうそこに気づいている。

方や先日の日経新聞には「モンクレール+sacai」の広告が大きく掲載されていたり、地方でもラグジュアリーブランドのホテルがどんどん建設されている。お金を出せばそこに心地よさがあることも分かっている。

中流がいなくなったというよりも、仕組みがわかってきたという感じのほうが強い。

ただ、ニュースでは「コロナ前に戻った」と言っているし、有識者もそういっているが、「失われたコロナの3年間」の代償は大きいことも忘れてはならない。

■今日のショット(忍野八海)

Workwear for the handsome women

日経新聞を宅配していると折り込まれている、「Ai」というファッション情報誌を知っているだろうか?

発行当初のニュースリリースをネットで見ると平成26年11月から第4日曜日に折り込みとなっている。B4 変形タブロイド 4C 中綴じ32~48ページ 部数60万で講談社が制作し日経新聞が発行するラグジュアリーなファッションマガジンというようになっている。ターゲットは日経新聞を購読する100万人の女性の中核を形成する35~49才のようだ。

これだけのクオリティの高い小冊子を作るだけで大きなコストだし(紙質もいい)、折込料だけでも非常にコストがかかる。もう9年続いているということはニーズもあるしその効果もあるということだろう。ちなみにメルカリでは1部300円~で掲出されている。

9月号は28ページで(わずかにコストカット?)広告7ページ(シャネル2ページ、ブレゲ2ページ、ブシュロン、エスト(花王)、Gアルマーニ)。他はテーマ構成で服飾(ボッテガ、ブルネロクチネリなど)、美容(ポーラ、コスメデコルテなど)。ファッションはブランド打ち出しではシャネル、フェンディ、ボッテガ、Gアルマーニが各1ページ。テーマでホワイトバック(フェラガモ、グッチ、ヴィトンなど)、ラグジュアリージャケット(ラルフ、ブルネロクチネリ、ジルサンダーなど)、デイリーウェア(トリーバーチ、ポールスチュアートなど)、ブラックシューズ(ボッテガ、ディオール、エルメスなど)が各1ページ。その他協賛でヤヌークジーンズ1ページ。小物、バック、眼鏡で1ページ。その他美容で協賛もあり7ページ(当然ブランドページもある。)ちょっとしたトピックページが2ページ(上方女性落語家 桂二葉を取り上げたのはgood choice!⇒唯一読めたところ)という構成になっている。

日経の女性読者のグレード感はこの水準なのだろうか?やはり女性のほうが圧倒的にファッション志向が強い。9年間続いているということは、ニーズもあり、購買モチベーションにもなっているのだろう。今まで何気に見て捨てていたが、この小冊子を見て購買につながっているということは、新宿伊勢丹や梅田阪急を筆頭にする都心百貨店はまだまだ大丈夫だ。ラグジュアリー系は健在だということだろう。

かえすがえすも、池袋西武はもったいない。

■Ai(アイ)

回転率からみる在庫の信憑性

上場専門店の売上数字を、前回簡易的に計算してみたが、債務超過のタカキューは別にすると、ライトオン、マックハウスというジーンズカジュアルから派生した専門店の数字が気になったので去年の決算数値を確認してみた。

ジーンズショップは、サイズが細かく品番も多くメーカーも多いため、特にデニムの在庫が多くなり、商品が回転せず、売れていても、経営は非常に厳しい。特に現在はルーズなサイズ分類が中心になり、ライトオンでもデニムの在庫ウエイトは下がっており、売り場のボリューム感を出すために、一時は売台 にデニムの類似品が陳列されており、在庫を減らそうという苦労がうかがえた。

去年の決算を見てみると以下の数字になる。

・ライトオン 売上48229百万 利益率49.3 ※2019年対比65.2% 394店

自己資本比率44.2% 流動比率62.5% 

1店舗平均 月度売上10200千 平均在庫57300千 回転率0.18 

・マックハウス 売上18443百万 利益率48.0※2019年対比65.8% 320店

      自己資本比率35.8% 流動比率71.3%

      1店舗平均 月度売上 4800千 平均在庫26100千 回転率0.18

      (マックハウスは他の業態もある。)

非常によく似た数字になっている。

在庫が減ると自己資本比率は下がる。流動比率は上がる。経営分析は在庫高にも左右される。

きしくも、両社とも月度回転率は0.18となっている。年間定番商品が多いと回転率は低い。デニム中心になるとそうなるかもしれない。

ファッションで言うと春夏秋冬の四季がある。年4回衣替えがあり商品が変わるとして4÷12で1カ月0.33回転になる。現在は在庫勘定方法が変わったらしいがユニクロは月0.5回転だったと聞いているし、アダストリアも悪化していても前期は月度0.37回転になる。

両社の決算数字に対して異議を唱えるわけではないが、本当にこの回転率で商売をやっていけているのかとは思う。SPAであれば在庫日数が大きくても原価率を考えると許容範囲はあるが、買いの商材は支払いが半年後であっても、この回転率ならキャッシュが回らない。

この在庫評価は適正なのだろうか?販売できる値段になっているのだろうか?この在庫回転率を見るとこの商売は長く続かなそうに見えるが・・・

■今日のBGM

専門店はコロナ前まで回復したか?

毎月、月初に上場企業は前月度の月次数字を報告する。会社を経営し始めてから専門店の数字はチェックしてきた。ここ数カ月はインバウンド景気もあり、商業が活性化したと報じられていて、売り上げ前年比は大幅に改善しているようである。ただ現状の小売業界はそこまで活性化しているようには見えない。果たしてコロナ前まで回復したのだろうか?実際はどうなのだろうか?

ふと思い立って、毎月月初に発表される各社の売上数値をもとに簡単に計算してみた。IR情報には過去の履歴も残っておりその数字を参考にして、コロナ後前年比数字(今回は8月数値)からコロナ前数値比を簡単に出してみた。計算方法は単純に2019年8月を起点に2020年8月から2023年8月までの既存店前年比を毎年乗じただけである。当然その期間に既存店の退店があったり、イレギュラー数字も出てくるが、とりあえず単純に毎年の既存前年比を乗じてみた。おそらくこれは各社の正しい数値ではなく、あくまでも参考数値として理解してほしい。(未発表の会社もあるし、発表日が10日以降の会社もあるので、留意した会社のみの数字ではある。)

2019年比(くどいようだがあくまでも推定数字)

100%以上 ABCマート112.6 アダストリア109.5 西松屋104.5      シマムラ 103.0

90%台  ユニクロ97.6 無印96.1 サックスバー93.8 ユナイテッドアローズ93.3 ハニーズ92.7 トーキョーベース92.2 ニトリ90.1

80%台  青山89.7 コックス80.7

80%以下 ライトオン74.1 タカキュー71.3 マックハウス63.7  

以上のようになっている。

100%を超えている会社が4社のみということは、まだまだ数字は回復途上というところだろうか?コロナ後は完全停滞期になっているという状況だ。比較的値段志向の会社が上位にあり、アダストリアが独自のポジションをとっているようにも見える。メンズ業界は非常に厳しい状況で、「家計が厳しくなるとメンズ業界への支出が減る」という構図となっているのかもしれない。大型店舗を展開する会社の数字が安定していることも共通項になる。

ファッションに関してはユニクロの流れがバロメーターになるのかもしれない。いろんな環境や各社の動向を見てもファッションの「新しい波」は当分現れそうにない。

■今日のBGM

テナントリーシングについて望むこと

売場ゾーニングプランはSC開発する上で最も重要なものであり、そのプランでSCの命運を左右される。SCのコンセプトに基づいてテナントを配置する。そのプランに基づいてテナントを誘致する。

そのSC(駅ビルも含める)がどの客層を集めるかによって、テナント構成は変わってくる。20年以上前はどれだけプレステージの高いテナントを導入するかが戦略の1つだったと思う。今でも優先度の高い戦略だとは思うが、客層ターゲットによっては大きな変化が出てきているように感じる。

RSC(リージョナルSC)スタート期は、まずSCイメージを出すため、百貨店ボリューム客層を集客することに加えてトレンド客層も取り組むことを狙ったと思う。オンワード、ワールド、イトキンとの開発で百貨店ブランドディフュージョンショップを多く取り入れた。RSCのグレード感を確定できたことは、その後のSC開発には大きく役立った。「SM+専門店」のイメージから、ある程度従来のSCよりボトムアップし年齢層も若くしたRSCが確立されていった。

それから20年以上経過し、ファッションの流れも変わり、お客様のニーズも大きく変化してきている。プライス志向が強まり、それに伴いテナントの大型化が進んできている。以前にも書いたが、「テナントの大型化」=「SC収益のダウン」という流れは否めない。

SCの出店ラッシュのつけがきて、SCの差別化がなくなってきており、今後は淘汰の時代を迎える。現状もそうだが間違いなく空床スペースは増えていく。退店後に入店するテナントは明らかに「通信系(携帯ショップ)」「美容系」「食品関連」などが多く、他は「ユニクロ」「ABCマート」など好調大型テナントの増床が目立つ。空きスペースは携帯ショップの催事も多く、おそらくお客様からのクレームも多いと思うが、賃料カバーのためやらざるを得ない状況となっている。おそらくこのままではどんどんSCの魅力がなくなっていってしまう。

イオンモールスタート期に、今後伸びるだろうテナントを積極的に導入したように、新しいテナントや出店したいテナントをどんどん開発してほしい。投資やSCの収益のことよりも面白いテナントを開発してほしい。それが差別化にもつながるし、それがSCの存続にもつながる。これも以前書いたが、内装は個性的なものを作るのと引き換えに催事契約でいいと思う。テナント、SC双方がリスクヘッジする契約よりも、お互い少しはリスクを持ってスタートする契約を話し合っていけばいいと思う。

流通系SCにはそれぐらいの度量が欲しい。

今日のBGM

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