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ヤングターゲットの商業ビルは成り立たない

マイカル在籍時、最後はビブレで仕事をしていた。ビブレは、DCブランド全盛期の大型商業施設では、マルイ、パルコと並んでヤングターゲットのファッションビルとしての位置づけにあった。ビブレの営業を統括している時、店舗数は23あったと記憶する。その当時は試行錯誤を続けていて食品併設で百貨店志向の店もあった。その後イオンに吸収され、現存するのは横浜と明石の2店だけになっている。明石は食品併設型で「無印良品」と「ユニクロ」がある成功パターンのデベロッパーで横浜は広い意味でのヤングターゲットのビルではある。

マルイはモディ含めて現在は27店舗ある。食品併設のフルライン型店舗や、都心のネット型?店舗もあり、従来のファッションビル型店舗は有楽町くらいとなっている。北千住や他2.3店舗での百貨店型店舗があるが、基幹店だった新宿店も含めて催事面積が増えており、失礼ながら小売デベロッパーとしては、力を入れていないように見える。企業として、小売業よりエポスカードやムービングなど他事業へ力点が変化しているのではないだろうか。

先日、静岡パルコが来年1月閉店すると発表された。それを除くとパルコは14店舗となる。見たことがない店舗はひばりが丘くらいだが、パルコは全店舗ほぼきちんとテナントリーシングできている。浦和や調布のように食品ニーズ顧客へのリーシングもあるが、大都市では従来のファッション提案中心の商業ビルとなっている。おそらく昔からのファッションビルとしての流れを守っているのはパルコのみのように見える。

もうすでに、地方ではファッションビルは完全に成り立たなくなっている。東京都下と100万都市以外で成り立っているファッションビルは、静岡パルコ閉店で、あとは金沢フォーラスくらいになった。

ヤングターゲットを取り巻く商環境は、どんどん厳しくなっている、ターゲット年齢を15才~35才と捉えると、ターゲット人口は1990年に34058(千人)、2010年28430、2024年24631と減少しており、2024年は1990年比で72.3%となっている。さらにその年代の人口構成比も27.6%から19.9%と大きくダウンしている。そして15才~39才の都道府県の転入出では東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)、愛知、大阪、福岡を除き全国的に転出超過となっている。つまり俗にいうヤング層はどんどん人口が減ってきており、さらにその人口減に加えて東京、大阪、名古屋、福岡の大都市圏に移動している。それにより、その他の地域のヤングターゲット客層は大幅に減っているということになる。

さらに、大都市圏であってもファッションのみの提案では当然成り立たっていない。飲食はもとより、バラエティ雑貨やキャラクターグッズ関連、古着などターゲットを幅広くしている。好調な業績の心斎橋パルコではインターナショナルなブランドからポップカルチャー、「無印良品」や「ハンズ」、さらにはシネマや大阪らしい食堂街までうまくまとめて構成されている。ただ、御堂筋をはさんだ「心斎橋オーパ」は来春閉店と発表されており、好立地になった「なんばマルイ」は空床が目立ち催事店舗も多い。つまり大都市圏でも細かく手を加えないと完全に淘汰されていっている。

なぜだか、静岡パルコの撤退報道は、心に響いた。昔の商売が終わりを告げられたような気がした。うまく書けないが、地方都市ではファッションは根付かないのか?ファッションの商売も郊外モールで戦うしかないのか?・・・

もう、今の時代では個人でファッション関連の商売はできない環境になっている。

■今日のBGM

アウトレットモールも淘汰されつつある

先日、所用があり、その近くにあった「佐野プレミアム・アウトレット」に立ち寄った。2年ぶりくらいだったが、来街者の主目的になるブランドが退店しており、非常に魅力がなくなっていたので驚いた。2年前には個人的に「トゥモローランド」のアウトレット目的で行ったが、その時点で退店しており、それでもメインブランドとしての「グッチ」や「ボッテガ」はあった。そして今回は、その2店舗ももうなくなっていた。ちなみに「グッチ」のアウトレット店舗は国内6店舗で「ボッテガ」は5店舗、「トゥモローランド」は7店舗のようだ。

SC協会に登録しているアウトレットモールは32物件あり、そのうち三井アウトレットパークが13物件、プレミアム・アウトレットが10物件となっている。20年ほど前に、アウトレットモールを誘致するコンサルに携わっていて、当時のチェルシージャパン(現三菱地所・サイモン)の担当者と話をしたことがある。アメリカでのアウトレット事業ノウハウを日本に持ち込んだ会社になる。その時日本で成功するアウトレットはそんなに多くないと分析していた。具体的な数は忘れたが10か所もなかったような気がする。

国内のアウトレットモールの売上だが、プレミアム・アウトレットでは2023年度で御殿場1240億(※2024年は1409億)、三田674億、りんくう502億、三井アウトレットでは木更津690億、長島610億、入間318億となっており、その他のアウトレットでは軽井沢が2024年590億と発表されている。ちなみに上記したブランドで「グッチ」は木更津、御殿場、軽井沢、長島、三田、沖縄、「ボッテガ」は木更津、御殿場、軽井沢、長島、三田にある。つまり売上上位店舗にしかない。現状のアウトレットは、施設のグレードを上げるべきプレミアムブランドがどれだけ入店しているかで人気は上下する。売上300億が、プレミアムブランド出店のボーダーのようになっているように思う。

店をやっていた時、福岡マリノア、りんくうの近くのイオンモール泉南や三田と隣接しているイオンモール神戸北に店があったのでアウトレットはよく見ていた。SC協会に登録されたアウトレットも半分くらいは見ている。

従来のアウトレットモールの商売はプレミアムブランドで集客し、セレクトショップや国内外の有名ブランドの商品を多く販売するという図式だった。御殿場プレミアム・アウトレットには、引き付けるプレミアムブランドが多数出店しており店舗の改廃も定期的に行っている。ただ近年はプレミアムブランドが出店を控えるようになっており、代わって大手セレクトの店舗が集客の要になってきているように見える。

アウトレットといえど、できるだけ値引額は小さく売りつくしたい。値段を下げると利益は落ちる。商売をやっていれば当たり前のことだ。つまり、アウトレットに回す商品が多ければ商売が失敗したということになる。ただ、「ユナイテッドアローズ」のアウトレット店舗は国内に30店舗もある。これがすべて売れ残ってマークダウンした商品ばかりなら、利益を食いつぶし、会社は成り立たない。そこで近年は集客も多いので、完全にアウトレット売場用のMDとして構築されている。つまり普通に利益の出る商売をやっているということになる。こういう事例は多くのテナントで見られ、将来のアウトレットモールの存続についての課題になりそうな気がする。セレクトショップの中でも「トゥモローランド」の店舗数が少ないのは、アウトレット用の商品を多く作ってないからだと思う。

現状のアウトレットモールの動向を見ると、都市部にある三井アウトレットパークは郊外モール(RSC)感覚での需要はあるし、アウトレット用に作った商品でもニーズはあるかもしれない。食品SMを併設しても活性化するようにも思う。逆に郊外にある「佐野プレミアム・アウトレット」のように、テナントリーシングが本来のアウトレットの理想形から崩れていけば、わざわざ行くこともなくなり、狭商圏化してしまい厳しくなっていくように感じる。

アウトレットモールの売上300億が1つのラインなら、本来の意味でのアウトレットモールは国内10店舗くらいが上限なのかもしれない。

■今日のBGM

もう店を出す環境にはない・・・

「もう一度店をやるなら」とよく考える。先日も「洋服ダンスを片付けて」と言われて、着なくなった服を見て、ブランド古着の店を考えたが、ネットを見たらそういう店は山ほどあった。真剣に考えると、「店を出す」ハードルは非常に高い。

帝国データバンクが「雇用過不足」に関してのアンケート結果を公表した。正社員不足の企業は51.6%と半数を超えている。小売業では非正社員の不足割合が54.2%となっており、増加傾向に歯止めがかかっていない。人手不足倒産も過去最多となる見通しのようだ。小売業にとってみれば、人手不足は大きなアゲインストになる。特に衣料品や服飾品の店はコンビニのようにレジの無人化は難しいし、ロボットで接客もできない。

商品調達に関しても再び円安傾向に戻り、海外生産商品のコストも上がっていく。メーカーも小売現場の状況が厳しくなってくれば、リスクを持って商品を作りづらい。小売り主導になっていくだろうが、小さな資本では難しい。

商品だけでなく、売場を作るコストも同様に上がってきている。工事業者も人件費や資材の高騰もあり、予算と工事費が合わず、受注を控えざるを得なくなっている。

さらに、出店する商業施設にも同様のコストアップの流れがある。集客を図るために家電などの大型カテゴリー店舗や、ユニクロや無印良品のような大型店舗を導入せざるを得なくなっている。その結果、商業施設で大型店舗のウェイトはどんどん大きくなっている。その賃料はそこまで高くできないため、他のテナント賃料にしわ寄せがくる。つまり中小型店の出店条件は、おのずと上昇してくる。

小売業としては、もっと根本的な問題の「何を」「どのターゲット」に売っていくかも見えてこない。数字が読めない。トレンド商品を狙うにはその土壌が必要で、今後さらに減少するであろう客層への商売は難しい。ニッチゾーンでは、長続きしそうにないしリスクが大きい。おそらく、狙いはロープライスメガネなどの「ノンエイジ、ボリュームプライス」で大手があまり手を出しにくいゾーンだが、20年位前には見つけられたが、今はもうないに等しい。

つまり、現状では、隙間も見えず、さらに資本力のない企業が新規参入するのは非常に難しくなっている。

となると、戦えるMDプランがある企業や小売業へ参画したい企業が考えるのは、不振企業へのM&Aになる。とりあえず、売場と内装と人はいる。さらにローコストで手に入る。近年、流れの悪い上場小売業にその流れが顕著になっている。さらに近年は、表面的には見えにくいが、投資ファンドが株主参入している企業も増加している。

ただ、現状ダウントレンドの事業を、そんな簡単に再構築できるとは思えない。そして、特にファッション事業はもうすでにオーバーストア化している状況にある。つまり、小売業に参入しても簡単には成功はできないし、大きなメリットは望めない。

やはり、いくら考えても、個人では何もできない。

■今日のBGM

「コーエン」売却 ➁

前回、㈱ユナイテッドアローズ(UA)の「コーエン売却」について書いたが、解せないことが多い。企業の思いは、当然第三者にはわからない。

近隣のSCで「コーエン」と売却先のショップ「マックハウス」を見てきた。コーエンは変わらずジーニングテイストのあるカジュアルを展開しており、明るいムードはあった。少し商品過多気味なのか「2点で~引き」を展開していた。さすがUA傘下ということもあり内装も手が入っているし、スタッフも充実しているように見えた。「マックハウス」は広い売場で、スタッフも少なくあまり元気なムードは見えなかった。以前はキャリー商品も多かったが、グループ傘下企業の「ジャバ」や「シティヒル」の商品が入りテイストの問題はあるが、ボリューム感は出ていた。従来のジーニングカジュアルのイメージは薄くなっている。

コーエンについてネットで少し調べてみた。会社設立は2008年でUAの100%子会社で1号店はレイクタウン。さらに商品企画、生産、物流は三菱商事にアウトソーシングとなっており、三菱商事主体でスタートしている。2022年にUAの社長が「ブランド改革し立て直し」と言及し、社長はUAの専務が兼任している。その時のコメントは「在庫効率を追求し品番数を減らしすぎた」と苦戦要因を語っている。ただその後、在庫過多とその在庫評価損の計上で利益率を大幅に落としてしまっている。

暴論になるかもしれないが、敢えて気になる点を書く。

プライム上場で1500億企業のファッションアパレルであるUAが、なぜ、ファンド系企業に会社を譲渡したのだろうか?おそらく譲渡金額もそこまで高くないと思う。赤字事業を切り離すのは経営として正しいのかもしれないが、他に改善策はなかったのだろうか?そんなに赤字は大きかったのだろうか?おそらくセレクト業態は今後縮小市場になっていくだろうと思われる中、別ターゲットの市場開発も必要ではないだろうか?そしてこれだけの企業でその開発もできなかったのだろうか?

UAの売上はコロナ期以降順調に伸長しているが、まだコロナ前の数字には未達だ。さらにアウトレット業態の拡大で数字をカバーしてきたが、アウトレット店舗の商品は、本来のアウトレットではなく自社MD商品だということが認知されてきて、今後の伸びは期待できない。従来のこだわり系のショップをなくしていった数字をSC系の「グリーンレーベル」でカバーしようとしているが、UAとしてのブランド価値の位置づけは下がってきているように見える。数字面では今後のSC系のカジュアルゾーンの開発は必須だったはずだ。その中で「コーエン」の売却は後ろ向きの感はぬぐえない。

さらになぜ、譲渡企業がアパレルでは「シティヒル」「ジャバG」「テットオム」などマイナストレンドの企業を抱えるファンド系企業だったのだろうか?そして「マックハウス」のMDと同様の傘下ブランドの品揃えになった場合、従来のお客様は受け入れてくれるのか?さらに今後の雇用問題になるが、UAグループの雇用条件の継続など従業員のモチベーションは保たれるのだろうか?

逆に、譲渡金額はわからないが、大型モールを主戦場にしている「コーエン」を受け入れるジーイエットのメリットは大きい。「マックハウス」はイオン系など大型モールの店舗は少なく、企業として今後の店舗拡大には大きなプラスになる。「コーエン」のスタッフを受け入れることで販売力の向上にもつながる。さらに上述したように、関連アパレル企業も活性化する。

今回の売却は、UAという会社が洋服と同様に上品でスマートな企業に見えていただけに驚いた。詳細を知らない者が勝手なことを書くが、UAが赤字をなくしたという事実以上に、UAの企業力に疑念を持ってしまった。

■今日のBGM

「コーエン」売却

ユナイテッドアローズ(UA)が子会社である㈱コーエンの全株式を、ジーイエット(旧マックハウス)に売却すると発表した。

ジーイエットの「基本合意締結のお知らせ」に㈱コーエンの財務状況が簡単に掲載されているが、前期は純資産-3810(百万)総資産2834(百万)となっており、前年から債務超過が続いている。UAの決算説明会資料を見ると、コーエンの前期は売上昨対109.0と発表しているが、在庫評価損を計上しており、今期は売上総利益率+4.0%の計画となっている。つまり前期まで在庫過多状況であり、前期中に在庫評価を大きく落として利益を落としたことがうかがえる。

UAが始めた、手ごろな価格のカジュアルショップという印象で、乱れた売場でなくこぎれいに運営していた感がある。昔やっていたショップと同じSCにありよく見ていた。きれいにカジュアルを見せようとしていた印象が強く、VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)を柱にしていた時期もあったように思う。成功しているようには見えなかったので、あくまでもVP(ビジュアルプレゼンテーション)にしかならなかったようだ。値段を切り口にはしているが、UAが運営しているらしくあくまでも商品にこだわっている感が強かった。主な店舗は郊外モールが多いが、駅ビルやファッションビルのほうがマッチしていると思っていた。

カジュアルと言っても幅は広いが、価格面でもボリューム感も中途半端でメインターゲットがぼやけているように感じた。ターゲット年齢は少し高く感じたが、そこの客層にもインパクトはない。決算説明会資料にあるように、「売上低下→在庫過多→利益低下」とここ数年のカジュアル系の会社の売却パターンと同じ傾向だったようだ。最終的な売却理由は、UAとは完全に「商売の土俵」が違ったということになる。

UAの中間決算の概況を見ると、販管費の前年比が売上総利益の前年比を上回っている。給与アップによる人件費増とあるが、人件費率は前年を下回っている。販促費の増でもここまで狂わない。さらに今期決算に向け「今春夏商品の一部を秋冬在庫に振り替えて消化を進め売上総利益率のマイナスを抑制」とあるが、そこまでお客様は甘くないとも思う。今期中間決算の在庫は前年の中間決算比で113.9%まで増加している。今期の決算次第だが、UA自体の状況もあまり良くないように感じる。

ところで、売却先がジーイエットでコーエンは再生できるのだろうか?ジーイエットの直近の決算数値は最終損益が5.9億円の赤字になっている。前年同期から拡大し、売上高も減少している。ファンドからの増資で資本金、準備金が増加し自己資本比率は上がっているというだけで、リスクを持った赤字企業を受け入れて、改善は可能なのだろうか?さらに小売事業以外に金融投資事業を開始しており、現時点でビットコイン投資額は21億規模になっている。

ファッション事業の上場企業が、ファッション事業の子会社を改善できなかったのはなぜだろうか?「セレクト」と「ボリュームSPA」は相容れなかったのだろうか?失礼ながら、なぜマックハウス(ジーイエット)に譲渡なのだろうか?

いろいろ疑問は残る。

■今日のBGM

マリノア やはりアウトレット・・・

マリノアシティ福岡の跡地に、三井アウトレットパークが27年春に開業することが決まったようだ。店舗数は200店規模で、鳥栖プレミアムアウトレット(佐賀)を上回り九州最大級で三井アウトレットパークとしては九州で最初の出店になる。三井アウトレットパークの各施設の実績から、埼玉の入間アウトレットパークとほぼ同じ大きさで、売り場面積30000㎡前後、目標売上300億くらいの規模ではないかと思う。九州では佐賀に鳥栖プレミアムアウトレットがあり、2023年度実績は、店舗数170店、売上310億となっている。

マリノアシティ閉店の時にもブログで書いたが、マリノアシティには思い入れが強かった。福岡で仕事をしている時マリノアシティはオープンし、かつての会社では自社店舗の2号店として出店した。売上規模も常にベスト2には入っていて、いい印象しかない。アウトレット棟ではなかったので、普通の品揃え店舗だったのだが客層とマッチしたのか、順調な数字を続けることができた。1点単価は20数店舗中No1で非常にいい客層だったと記憶する。

マリノア跡地のアウトレットとしての課題は、三井不動産は当然理解しているし、簡単にクリアするとは思うが列挙して見る。

・構造的に、商業施設の中に公道があり、一体感が出にくい。そのためマリノアシティはアウトレット棟とそれ以外のエリアで2分割されていた。

・増床を重ねたためアウトレット棟は統一感がなかった。

・九州の中心街の天神とは近隣駅(姪浜)と20分以内の立地で、百貨店が至近距離にあるためプレミアムブランドが出店しにくい。

・マリノアを閉めたため、「シップス」「ユナイテッドアローズ」「セントジェームス」などのアウトレットショップが厳しい状況のSC「マークイズ」へ移設した。     等々・・・

さらに、アウトレットに慣れたお客様が増え、アウトレット商品への不信感も多くなっている。大手セレクト店舗や大手アパレル店舗は、本来のアウトレット商品ではなく、アウトレット用に作った商品の品揃えウエイトがどんどん増えてきている。そして、もうすでにお客様も気付いている。

三井不動産が開発すると話を聞いたとき、大阪の門真の「ららぽーと+アウトレット」がベストだと思っていたが、やはり規模的に無理だったようだ。商圏は半分が海だが高級住宅地にも隣接しており、その層をターゲットにしたSMを誘致するのも面白いと思っていた。マリノアの数字も「ユニクロ」が退店してから下降していったようにも思う。つまり、広域商圏だけでなく、足下商圏からの集客(デイリー層)も重要な戦略だと思う。

ヨットハーバーに隣接している立地でもあり、立地を生かした飲食店やプレミアムブランド、少しターゲットは変わるが大型の「無印良品」など、アウトレットと一線を画すゾーンも必要になってくると思う。比較的値段にこだわらない客層が多かった印象が強いのでその客層が快適に過ごせるエリアもあってもいい。くだらないことだが、車客が多いので大型普通車専用駐車場で駐車幅を広く取り、有料駐車区画を作るなど差別化しても面白い。

思い入れがあって、好きだった場所なので、どういう商業施設になるか楽しみにしている。

■今日のBGM

赤字の中小小売業に前向きな策はない

数日前の日経新聞の社説に「実質賃金の上昇へ労組は意欲的な要求を」という提言があった。当然、大企業に向けての提言ではあるが、赤字の中小企業にも以下のコメントがある。「赤字の中小企業には賃上げ原資を補填するような支援を検討しているが、それでは生産性は向上しない。経営者を前向きな投資に向かわせてこそ、強い日本経済の実現につながる。」

2024年の「国税庁法人統計法人税表」から赤字法人率は64.8%で約189万社あるようだ。その企業にどうやって前向きな投資をさせるのだろうか?

コロナ禍におけるゼロゼロ融資返却や人件費高騰で中小企業の倒産件数は、2023年には9年ぶりに9000件を超え前年比では32%増となっている。コロナ前から倒産件数は増えていたがコロナ禍で大きく増えた状態になっている。国も借り換えや経営改善のサポートを行っているが厳しい状況は続いている。そして小売業も企業数は31.6万社あり、22.6万社が赤字で赤字法人率は71.4%となっている。

小売業の「前向きな投資」とは何だろう?小規模な店舗にPOSシステムなどの 導入は必要だろうか?導入したとしても効率化は図られるが、営業数値にどれだけプラス効果があるのだろうか?一番前向きな投資は出店だろうが、好物件は当然賃料も高いし内装経費なども高くなる。何よりも投資金額は非常に大きくなる。その資金はどこから捻出するのだろうか?新たに借金をするのだろうか?

30坪程度の店を商業施設に出店するには、内装投資で最低1000万、共用工事負担金などで150万程度、損金にはならないが敷金500万程度は必要になる。支払い時期は少しずれるが、オープン商品の仕入原価分で最低500万の支払いも発生する。その他、備品や採用費なども含めると2500万くらいの資金がなければ出店できない。近年はさらに内装コストが上昇している。商業施設もテナント誘致に苦しんでおり、テナントの大型化が進んでいる。テナントの大型化が進むと、大型テナントの出店ありきの条件から、その皺寄せで小型区画の出店条件は上昇する。

投資をして出店するからには成功することが必須となってくる。近年の商業施設の成功物件は規模の大型化や、エリアでの寡占化で、当然出店へのハードルも上がってくる。さらにテナント構成も類似してきており、新規テナントの参入も既存大手企業の開発ショップ中心になってきている。つまり新規参入の余地も少なくなってきている。

そんな中で、コロナ禍で経営資源が枯渇し、コロナ融資で何とかやりくりしている中小小売業がどうやって前向きな出店投資ができるのだろうか?そして出店投資に対してどういう支援があるのだろうか?

この社説は大きな意図はなく、第三者として文字を埋めたのだろうが、やはりきれいごとの文章で、全く響かない。22万社強の赤字小売企業は、自然淘汰されるか、M&Aで大企業の傘下に入るしかない策は見えない。

■今日のBGM

無印良品の決算

大変恐れ多いのだが、無印良品の決算が発表されたので、感想を書いてみる。

無印良品については、今年1月と4月に主に四半期決算数字についてこのブログで書いている。1月には在庫が課題ではないかと記したが、中間決算のコメントで在庫処理をするので総利益率は据え置かれており、4月のブログには「ちゃんとした会社」と評価した。その時、無印良品の株でも買おうかと思ったのだが、買っておけば当時2500円前後の株が、今は株式分割し(1株が2株に)先週は3000円まで上がっている。つまり株価は、倍以上になっていることと同様の状況になっている。

前期の無印良品の決算数字だが、売上は7846億 前年比118.6%、営業利益738億 前年比131.5%、経常利益723億 前年比129.6%と過去最高数値となっている。売上総利益率も前年50.8%から51.4%と上昇している。 

このブログにも頻繁に書いているが、小売企業の健全度は、常に「在庫」で図っている。いろんな商品があるが、生鮮食品は賞味期限があり、当然早く売り切ってしまわなければならない。衣料も年間定番的なものはあるが、四季での着装感もある。さらに素材やスタイルの変化も早い。つまりなくしていくタイミングで利益率は変化する。そしてそのタイミングは企業がジャッジする。売れない商品をそのままにしていれば利益率は下がらないが、在庫は増えていくし回転率は悪化する。値段を下げてなくしていけば利益率は下がるが不良在庫は減る。つまり在庫で利益操作は簡単にできる。

無印良品の回転率については、どの数字が適正か見えない。今決算では2.36回転で前期2.27回転よりは改善しているが、前々期と同じ数字になっている。衣料品は定番志向が強いが、単価設定を考えれば年間3回転はしなければならないと思う。ちなみに、競合他社のパルグループの年間回転率は5.3で、アダストリアは4.8回転となっている。住まい関連でもニトリは4.3回転しており、一般的には2回転後半くらいのようだ。食品で菓子類をネットで調べると年間5回転くらいだし、レトルト商材も年間5回転くらいと出てくる。以前も書いたがスキンケア中心の企業である「ハウスオブローゼ」の回転率が2.2回転と低く利益率が71%と高いので、おそらくスキンケア商材の在庫が回転率を引き下げ、衣料品と共に利益率アップにも寄与しているのではないかと思う。

近年の無印良品の出店傾向は、他社の大型モール中心の戦略とは大きく変化しているように見える。路面の大型店や、地方のCSC(コミュニティSC)に隣接しての出店など独自性を見せている。特に大型化を進めており、イオンモール橿原に今春2500坪弱の店舗を出店している。決算ごとに発表されるデータブックで数字を見ると、2025年の売場面積は2021年比で191.4%とほぼ倍増している。ちなみに売上の2021年比は173.5%で売場拡大に追い付いていない。㎡当たり売上は2021年が54.7(千)に対して2025年度は43.7(千)であり、㎡あたり在庫は2021年の47.9(千)に対して129(千)となっている。この数字を見ると、売場の大型化に順応した適正な在庫をつかめてないようにも見える。売場の大型化コンセプトや出店戦略が先行し、動向を見ながら売場の効率を探っている状況ではないだろうか。

諸事情があったのだろうが、関東最大級と言われていた東京板橋の路面店が3年で閉店というニュースもある。まだまだ出店戦略は試行錯誤を繰り返していくだろうと思う。現状の大型モールへ大型店舗を出店できないなら、イトーヨーカドーが狙っているCSCへの出店やその近辺への路面戦略は正解だと思っている。

企業としては、適正な売場面積と適正な在庫の指針を明確に示してもらいたい。その上で「これがいいより、これでいい」のコンセプトを明確に伝えられる商品政策や売場の構築を、早急に目指して欲しい。

■今日のBGM

イオンのポイント戦略を考える

またまたイオンの話になるのを容赦願いたい。

食品の買物は、売場を見るのも好きなので、完全にルーティンになっている。10月に入ってから、おそらく10%前後の値上げを感じている。買った内容と数量感でだいだいの値段はわかる。事実、値上げ発表している商品も多いし、便乗値上げのように感じる商品もある。総務省の物価指数では「食料工業製品」は8月に前年同月比6.5%高と11か月連続で上昇している。そして賃上げはその指数まで追い付いていない。2024年家計調査では、食料品購入額は平均月額89936円でエンゲル係数は28.3%と43年ぶりの最高値のようである。さらに高齢化は進んでおり、間違いなく今後もさらにエンゲル係数は上昇していく。

スーパーマーケット(SM)の利益率は、ファッション系アパレルの売上総利益率50%以上と比べると非常に低い。SM業界の売上総利益率は平均26%くらいのようだ。イオンの食品SM会社グループのUSMHは28.3%でマックスバリュー西日本は24.6%となっている。ロープライス型SMのオーケーが21.7%、ロピアは20%前後と言われている。営業利益率は2%前後が多く、物価の上下が経営数字にも響いてくる。物価上昇で値段を据え置けば、利益率悪化で経営不振に向かう現実もある。つまり価格を上げれば利益は安定するが、売上は鈍化する。価格を据え置けば売上は維持できるが、利益率は下がる。

売上対策としてのSMの販促は、現状チラシとポイント戦略が多い。品揃えで大きな差が出なければ、当然価格戦略が多くなる。その中で、前回も書いたが、イオンの繰り出すポイント戦略の圧倒的なパワーには驚かされる。一般的なSMではポイント3倍(1.5%還元)が主流だが、イオンではポイント10倍日が非常に多い。以前コメントしたのが6月で5%オフとポイント10%で10日とある。ちなみに今月は5%オフの日が4日(GG感謝デー含む)イオンカード、イオンペイでポイント10倍の日が7日ある。9月にはイオンペイでポイント20倍の日もあった。つまり食品も5%引き相当の日が11日あるということになる。これは定期的な買い物パターンを考えるとすべて5%オフ相当で買い物ができるということになる。その売上構成比次第だが、前述した各社の利益率を考えれば普通ならここまで取り組めない。食品全品5%オフということ自体、過去経験した店長時代には考えられない販促になる。

このポイント戦略は、イオンカードの拡大戦略と「イオンペイ」の普及を考えての販促であり、その経費負担はどうなっているのかはわからない。おそらくポイント戦略に関しては、イオンカード側の負担になっているのではないかと思う。すでに小売業ではなくなった感のある丸井の例を見るだけでも、カード戦略における収益は間違いなく大きい。前期のイオン金融事業の売上はイオングループ比率で5.2%に過ぎないが、営業利益の比率は25.7%であり、営業利益は616.6億に上る。ちなみにGMS事業はイオングループの売上比率は約39%と大きいが営業利益は6.9%しかない。

ポイント10倍の戦略は他のSMとの大きな差別化になる。利益率が示す通り、衣料品や服飾品には大きな購買目的要素にはならないが、デイリーニーズの食料品には効果的な販促にはなる。過去、月2回の「20、30日」だけ買い物に行っていたのだが、完全にポイント10倍が増えたことで、イオンカレンダーを見てイオンの買物が主になった。さらに近隣のSMのマルエツ(イオングループ)も毎週日曜はイオンカード、イオンペイで5%オフとなっている。

カード販促の軽費負担がどう変動していくかわからないが、現状イオングループはカード戦略で食品中心のデイリー顧客の囲い込みを図っている。インフレが続き価格競争が激化していく中、このカード戦略は有効な差別化策になる。ただ、どれくらいの原資が必要なのか想像もつかないが、いつまでもこのポイント戦略は続くのだろうか。

高年齢化が進む中、ポイント戦略が周知され継続されていけば、コンビニ事業の脅威になってきた「まいばすけっと」も含め、イオングループのSM業態(GMSの食品含む)はさらにシェアを高めていきそうな気がする。

■10月19日の日経 二連版広告 「ブルネロ クチネリ」

イオンモールに「おしゃれ感」は必要ある?

イオンモールには過去多店舗出店していたし、北海道、東北、北陸以外のイオンモールは、新店を除けば、ほぼわかる。レイクタウンや各エリアの中心となる大型モール以外にはもうファッション(おしゃれ感)を打ち出したショップはいらないと思っている。現役から離れ、小売業を冷静に見るようになってつくづく感じる。

一番大きな変動は、中心客層の変化で、高齢者比率の増加にある。郊外モールがスタートした30年前と比べて人口は減っており、そのうち60才以上は181.5%と大幅増で、人口構成比も19.3%から35.4%となっている。年金だけの世帯収入は平均年200万弱とされている。つまり30年前にファッションを語っていた客層がどんどん高年齢層に突入している現実があり、ファッションを語るべき層は激減しているということになる。

好調を続ける企業は「ユニクロ」、「無印良品」、「ニトリ」や「ABCマート」などのフル感性ターゲットの企業が多い。そしてまさしく「これがいいより、これでいい」という「無印良品」の目指す満足感が主流になっている時代のような気がする。そしてここではよく書いているが、「生活感」を感じる商品のニーズが強い。「生活感」の定義には、商品や着装感だけでなく、買いやすさや親しみやすさなどの売場環境も含まれている。

月度毎に発表される上場企業の9月の売上状況を見ていて、事業再生中の「タカキュー」が前年比79.7%と異常に悪い数字に終わっていた。企業譲渡された「ライトオン」が84.6%であり、その数字をも下回っている。もっとも、9月は日曜が前年より少なく、猛暑が続いており、衣料店舗には大きなアゲインストがあった。

実は、少し「新タカキュー」には違和感を持っていた。HPが変わったのだが、IRを見てファッションアパレルへの変化を感じた。企業のイメージ戦略を意図的に大きく変えたのだろうが、ニュースリリースや代表挨拶は昔のファッションブランドのようだ。(ポーズした社長の写真は必要?)決算説明会資料も余り響かず、イメージ戦略的に見える。

決算数字だが、最近の数字では第二四半期決算数字が発表されており、売上高は前年比91.2%、前前年比86.1%とマイナストレンド、売上総利益率は本年が62.4、前年62.1、前前年61.5と微増になっている。上期営業利益はそれぞれ3157(千)、101519(千)、55811(千)で、第二四半期時点の在庫で回転率は今期1.23、前期1.34、前々期1.48となっている。大きく変化はないが、売上は厳しくなりつつあり、利益率を上げる方向に向かっているように見える。そして営業利益は厳しい数字になっている。量販系の専門店と思っていたのだが、60%以上の利益率は必要なのだろうか?

近隣のイオンモールに出店しているので店もよく見ているが、たしかに整然とされており、ストアメイキングマニュアルに沿った売場だが、入りやすくはない。商品も手に取りにくい。つまり、整然としており、着装感を演出強化しているが、SCの客層とはあってなさそうに見える。もう少し価格訴求をしたりして、賑わいを作り、入店を促した方がいいように感じる。現状では、郊外モールよりターミナルに近い商業施設の客層のほうがマッチしているのではないだろうか。イオン系の企業だったためにイオン系のSCに多く出店しており、新しくした目指すべきコンセプトと客層感の違いが少し大きいかもしれない。

RSC(大型モール)とGMSが両立していた時代は終わり、GMSは淘汰されようとしている。そのためか、現状のRSCの客層はGMSの客層に近づいてきている。特にイオンモールの客層には、その変化を強く感じる。その流れをつかめない店は、他のSCで戦うか、RSCの主流になりつつある客層に対応していかねばならない。もう標準型のイオンモールにはファッション(おしゃれ感)を打ち出す店は、多くはいらないのではないだろうか。

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