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中心客層をよく知ること

近頃の「米騒動」で、2000円の備蓄米のことがTVをにぎわせている。米はSMから減っていたのは事実で、値段が上がっていたのも事実ではある。では2000円の米は近隣の店舗で手に入るのかというと、どこにも売っていない。若干の米の価格は下がってきたという効果はあるが、今後の方向性は見えない。ただTVでは長蛇の列での販売風景を何度も映し出す。そんなに必死になって探しているようには思えないのだが・・・

偶数月の15日の年金支給日の買い物の映像も、必ずと言っていいほど取り上げられる。インタビューでは、多くの高齢者が年金生活者で月の年金は5~6万しかないと答えている。だが、厚生労働省が発表している高齢者(65才以上)世帯の平均所得は316万で可処分所得は274万円、そのうち年金収入は平均197.4万円となっている。年金は税込みで1世帯当たり月16.4万の計算になる。それを考えると、恣意的ともいえるテレビ報道ではある。

世間の風潮が、「生活が厳しい」流れに乗っているような気がする。はたして実情は、そういう流れなのだろうか?当然「厳しい」感覚はあると思うが、少しあおりすぎのような気もする。この流れは、絶対に年齢別人口構成比の変化が大きく影響しているように感じる。再度書くが、日本の人口は30年前と比べると98.1%と微減だが、60才以上は181.5%と大幅に増加している。人口構成比は19.3%から35.4%となっており、その人口は男性19457千人、女性24346千人、合計43803千人になっており、高齢者の比率は高くなっている。この年齢層の分析をすることが、基本品揃えに一番重要だと思う。そして、現状は必ずしも「高齢者=生活苦」ではないと思う。

このブログで、近頃よく取り上げているが「無印良品」や「ユニクロ」は絶好調を続けている。「無印良品」の国内売上高既存前年比は最近3カ月120.5、109.8、112.2と大幅伸長しているし、「ユニクロ」も111.5、98.7、113.1と伸長している。おそらく収入中間層へ組み込まれる60才以上の購買動向を分析しての結果だろうと思う。そのターゲットをくすぐる素材感や、値頃感の打ち出しが非常にうまい。

トレンドを意識するヤング層(10代~20代)の人口構成比は大幅に減少している。ただ商品のトレンドはこのターゲットから始まる。そして販売するのも楽しい。ただそのゾーンを追いかけると底は浅い。そこに気が付かねば、商売は失敗する。現状では、人口構成を見ている限り、商売を成功させるには、60才以上の高齢者の動きをつかむことが最も重要なこととなっているように思う。

今の50代も含めて60代、70代は昔の実年齢の世代とは全然違う。ファッションや趣味も多様化しており、ある意味「楽しい事」を享受してきた世代だ。このブログでも何度も繰り返しているが、ファッションでは「VAN、JUN」を経験し「DCブランド」も身に着けてきた。その認識を持ってその世代の感覚と対峙する必要がある。話は逸れるが、GMSの衣料服飾売場はそれがまだ理解できてないので、売れてない。「高齢者=シニア(老人)」の感覚で品揃えしている。

今の小売業は「50代~70代」を詳しく分析することが、間違いなく成功のポイントになる。

■今日のBGM

小売業からの地方創生は難しい

先輩夫婦と恒例の旅行をしてきた。今年は四国がメインで、暑かったが雨にも打たれず好天気に恵まれた。

私自身、四国は何度か訪れている。徳島県は母方の故郷で子供時代から何度も行っている。愛媛県は道後温泉としまなみ海道の観光で訪れたことがあり、香川県はマイカル時代ビブレの店舗があったので巡回していた。高知県はPM会社在籍時、高知市内のビルの商業化リニュアル計画のコンサルで数回訪れている。

店をやっている時、四国で出店依頼を受けたことがあるのは徳島のゆめタウンオープンの時だった。遠隔地に出店する時は当然ドミナントを考えて出店する。売れる商品も似通ってくるし、そのほうがマネジメントもしやすい。それに加えて、できれば核になる店が欲しい。以前の会社でドミナントしていたのは、関東圏、関西圏、九州南部だけだった。中部圏も作ろうとしたが、核になる店ができなかったので作り切れなかった。そういう意味で中四国は、出店を考えられるのは人口の多い広島市などの県庁所在地くらいで、点だけになり地域全体がまとまらない。そうなると、どうしても中小小売業は出店をためらってしまう。さらに、地元で強い企業があり、なかなか参入できないという状況もある。

旅行期間中、全労連が「直ちに最低賃金一律1500円以上に」と発表していた。四国の最低賃金を調べてみると、徳島県980円、香川県970円、愛媛県956円、高知県952円となっている。中小規模でコツコツ商売をやっている企業は、大手小売業の参入で人不足になることは明らかだ。全労働人口の70%を抱える中小企業は、そんなに簡単にクリアできる最低賃金ではない。

そうなると、閉鎖的な商圏に新規参入するとすれば大手企業中心になり、それにより地元企業も厳しくなってくる。そしてさらに県庁所在地など都市部に企業は集中し、ますます郊外には人がいなくなる。その都市部でも、四国で言えば、徳島にはもう百貨店はなくなっている。他の百貨店も高松三越が売上224億となんとか百貨店の規模感はあるが、高知大丸84.3億、松山三越49.8億と百貨店としては非常に厳しい数字で、閉店前の厳しいゾーニングになっている。20年位前に高知大丸をリサーチしていて、神戸大丸のように本館周辺にサテライト店がいくつかあったことを思い出した。それが今や存続の危機になっている。人口も減少傾向にあり、今後の四国での小売業は、間違いなく縮小方向になってくる。

7月偽予言の風評の影響からか、観光地にも外人客が少なく、日本人観光客も多くはなかった。ただ、観光産業には宝の山のような気がした。観光スポットをさらに広げていければ観光地としての側面からは大きな期待は持てる。ただ、だれが資本投下するのだろうか。そして、外国人観光客の流れは今後も続くのだろうか。

四国四県を車で走ってみて、小売業だけでなく「地方創生」は限りなく難しいと感じた。

■今日のショット(徳島 かずら橋)

ららテラス川口

見た第一印象は「大丈夫?」だった。

売場区画を作りにくい地形、食品売り場に「?」、テナントのターゲットに「?」。駅前の1等地物件が、空いたままだった理由がよくわかった。

川口市は人口約60万人。隣接駅は東京都赤羽駅。通勤に便利で、駅周辺には大型マンションが多い。クルド人問題で取り上げられ、外国人も多い。昔は駅前にそごうだけでなくマルイもあった。さらに郊外にも大型RSCのイオンモール川口前川、イオンモール川口もある。JR川口駅の1日乗降客は149千人で埼玉県では5番目の多さとなっている。

「ららテラス」の他施設を調べてみると、地域密着型で比較的買いやすいテナントが多く、わざわざ感より、利便性を重視しているように見える。ただ、旧川口そごうの物件であり、デッキで駅と直結しており、何よりも11階建てで3万㎡近い売場面積がある。そごうの売場面積は32621㎡となっていた。床はおそらくそごう時代のままで、「からくり時計」も復活している。所謂、百貨店のハコのままになっている。

沿線の大宮には、百貨店が2つあり、ルミネ、丸井がある。浦和には伊勢丹とパルコがある。百貨店は川口にはもういらないことは実証済み。駅ビルスタイルにするのか、従来の「ららテラス」ターゲットのするのか非常に難しかったのではないだろうか。結局は両方取り組んだという結果のように見える。近隣の浦和パルコがそのモデルになりそうだが、決定的に課題になるのは、各フロアの地形が悪く、各フロアの大きさが小さい事だと思う。

B1Fに食品SMの入店は難しかったのだろう。それでも、フードコートをやめてB1F全部を提案しても導入できなかったのかと感じる。駅近ならマルエツくらいしかないし、なんとか地元の「ヤオコー」か、流行りの「ロピア」など賃料を度外視しても優先的に入れたほうが良かったのではないだろうか?「対面テナント」と「成城石井」は客層とアンマッチのような気がする。メインフロアではない1階の半分を銘店や「西武そごうショップ」にして1Fを食物販にしてもよかった。全部を提案してもSMの導入は無理だったのだろうか。三井不動産の企業力をしても難しかったのだろう。

デッキとつながったメインフロアの3階は何とかして「館の顔」のフロアにしたかったことはよくわかる。ただおそらくあまり食指が動かない物件だったのか、3.4階のテナント揃えは「何とか」のイメージが強い。セレクトも「UAグリーンレーベル」「アーバンリサーチストア」をメインフロアに導入しているものの、都心近郊の駅ビルより厳しいテナント揃えに見える。5階以上はカテゴリー大型区画になり、実需と利便性を考えたフロアになっている。5階は「ユニクロ」「GU」の1フロア構成で、6階はボリューム路線の「パシオス」と「ムラサキスポーツ」「ウィゴー」「コカ」、7階は「ダイソー」「ノジマ」、8階は「西松屋」とアミューズ・カルチャーのフロアとなっている。

全体を見ると、引き継いだ百貨店のグレード感ある内装が、逆にマイナスになっているようにも見える。まだオープンしてから日が浅いからかもしれないが、来店客層は駅ビルの客層に見えた。対面の食品テナントと「成城石井」が「パシオス」「西松屋」と共存して正解なのか?各フロアの客層が違いすぎているようにも思うが、今後回遊性はあるのだろうか?賃料設定も厳しそうに見えるが、SCの採算は取れるのだろうか?

好立地なのに、なかなか借り手がつかなかった理由はわかる。簡単ではない物件だろう。ひょっとしたら賃貸条件も破格なのかもしれない。またしばらくしたら、見に行ってみる。

■今日のBGM

アリオ、イトーヨーカドーとファウンドグッド

飲み会に行く前に、川口そごう跡の「ららテラス川口」でも見ようと、川口駅に立ち寄った。そのついでに「アリオ川口」にも足を運んだ。久々に「アリオ川口」を見て、いろいろ考えさせられた。

まず、イトーヨーカドーの食品売場のレベルは、相変わらず高い。足元のマンション群に囲まれ、その客層への総菜中心のデイリー食品は充実している。値段もいつも買物しているイオンよりは安い。エリア特性があるのか生鮮3品の売場の大きさに変化があるが、相変わらず欠品は少なく、きちんと売場管理がなされている。売場が大きく、持て余している感じはあるが、足元商圏のシェア率は高そうだ。

撤退した衣料売り場だが、アダストリアとの協業の「ファウンドグッド」は、うまくいってないようだ。立ち上げの時に見たが、現状の売場はその時の売場より30%くらい縮小されている。やはり客層とのギャップが大きい。浦和イトーヨーカドーの「ファウンドグッド」をたまに見るが、イトーヨーカドー来店客とのギャップが大きすぎて、全く売れてないように感じていた。逆にモール内のイトーヨーカドーだと受け入れられているのかと思ったが、やはり客層のギャップはここでも大きかった。衣料売り場は「ファウンドグッド」を縮小し、量販店委託ブランドのコーナーを増やしている。所謂、メーカーコーナーで「クロコダイル」「ハッシュパピー」「ケント」「ギャロリア」「アンナルナ」「インスパイア」などのブランドがコーナー展開をしている。取引形態はいろいろあるが、最終商品リスクはヘッジできる取引だろうと思う。浦和店の衣料品売場も同じような展開であり、やはり従来のイトーヨーカドーのお客様中心であり、新しい客層は取り込めてなさそうだ。「ファウンドグッド」も、どのゾーンを狙っているか見えにくく、さらに「ユニクロ」「GU」よりは高い値段では量販店の顧客は取り込めない。アダストリアは今までの出店場所を選んでの出店とは違い、量販店の客層との相違に苦しんでいるようだ。人的課題もあり、どちらがリスクをかぶる契約かわからないが(おそらくイトーヨーカドー)、おそらく全店展開は難しいと思う。

「アリオ川口」だがやはり「イトーヨーカドーと〇〇の専門店」という域を出ていない。売場面積も3万㎡強と大きくもなく、イトーヨーカドー食品とシネマやジョーシンなどの強みしかなく、引き付けるテナントも多くはない。アリオはイトーヨーカドーグループの商業施設の開発運営会社(セブンアンドアイ・クリエイトリンク)のPMだと思うが、独立してのデベロッパー会社ではなくあくまでもグループの不動産管理会社にしか過ぎない。ということは、あくまでも発言力が強いのは「セブン&アイ」であり、独立性はほぼないという位置づけだと思う。そのためイトーヨーカドーの売上をどう上げていくかが主の目的になり、テナントのフォローや、パワーアップさせたテナントの導入がおろそかになってしまっている。イオンの本体のイオンリテールが運営する「イオンモール」が、モールとして完成度が低いのと同様の状況下にある。そのため大きな投資はかけられず、テナントの劣化が進み、モールとしての魅力はどんどんなくなってくる。独立性が強いイオンモールが運営する「イオンモール」との差は大きい。

間違いなく、脱GMSとしてのイトーヨーカドーは方向性が見えていない。SMもあれほどの大型売り場は必要なのだろうか?そして、特に衣料品撤退後の売場が解決できてない。そんな状況下では、モール全体の改善はどんどん後回しになる。発言力もなさそうな子会社では、モールのテナントゾーンのケアもできない。今後も、広域からとるべき客数は恐らくどんどん減っていくと思う。イトーヨーカドーグループ(ヨークホールディングス?)は、完全に迷走していると感じた。

■今日のBGM

適正な利益率は?

前回、ユニクロのMDについて書いていて、いつも気になっていたことを思い出した。毎年の決算数字で、ユニクロの売上総利益率は適正なのだろうかということだ。

商売をやっていて、売上総利益率は非常に気になる数字ではある。過去の経験では量販店時代やビブレ時代も、記憶ではアンダーウェアが40%に近く、衣料品、服飾品では40%を超えることはなかった。売上効率が高かった売場で35%を超えていた印象しかない。その後自分で会社をやってみて、在庫を第一チェックポイントとして運営し40%は超えていった。店舗数が増えていき、取引先との別注商品をスタートし45%以上には上げていけた。それ以上上げていくには、商品ロットの問題があり、店舗数を増やすことと、当然のことだが、全店で高く消化できる商品を作ることが必要になってくる。

小売業の総利益率の原価は商品原価と考えていい。ただそこから商品の評価損が加えられる。つまり割引をしての評価が加えられる。商品原価(期間仕入れ分)÷(商品売価―値下額)が原価率となる。大きな数字ではないがそこに商品のロス分(万引き、不良品)が加味される。製造原価は商品にもよるが30%前後と言われている。

ユニクロの調達原価は35%前後と言われており、商社等の手数料を加えると38~40%が商品原価として計上されているようだ。ちなみに、前期決算での売上総利益率は53.9%となっている。この利益率をどう見るか?売上は3.1兆円の規模になる。ものすごい金額の商品を仕入していることになる。決算書を見ると前年より25206(百万)商品在庫(原価)が増えていて、売上が3.1兆なので3.8兆円以上(売価)の商品(売価)を仕入れていることになる。それでも原価は40%前後というのなら、相当まともな商売をしているように思える。

始めて取引する際に、最初の原価は、取引形態にもよるが55%~60%くらいだろうと思う。10年も商売を続ければ50%くらいにはなる。発注量にもよるが一部の商品を別注して40~45%の原価にはなる。これは20店舗強まとめた過去の経験上の数字で、ユニクロくらいの天文学数字でも40%くらいの仕入原価であれば、おそらく相当売価を抑えてきていると思う。さらに原価率から逆算すると、利益率は6%くらい下がってはいるので、期中でのプライスダウンも相当な額になっていそうな気がする。決算書を見て計算してみたが金額が大きすぎて、わからなくなってきた。(算出したが、あっているかどうか想像もつかない…)

何が言いたかったかというと、ユニクロは、売れる値段を考えた仕入れをし、売れなかったらその商品を迅速になくしていっているということだ。つまり利益率を考えた商売をせずに、売れる値段設定をして、売れなければ迅速になくしていっているということになる。当然最低の利益率は念頭にはおいているが、売れることを最優先にしている。商品特性は違うが、アダストリアの売上総利益率は54.7%、パルGが55.9%であり、ユニクロの規模を考えると適正な値段と商品処理を優先的に行っていることがよくわかる。

厳しい会社は、商品価値を市場価値で見てないことがある。ライトオンはワールド傘下後の決算で売上総利益率は39.9%まで下がっている。3期前は50.7%の実績だった。その時の在庫は2.5倍位あった。店舗数が減ったこともあるが、利益率のマイナスも考えると、商品評価を大きく下げており、企業での商品価値と市場価値の差が大きかったことは間違いない。適正な数字かもしれないが、上場小売業梨で売上総利益率が60%を超える会社もある。

ただ、価値観はそれぞれなので商品価値は判断しづらい。ユニクロの利益率を商品展開と決算数字で確認して納得できたように、決算数字を見ていると色々見えてくるものもある。それぞれの会社の戦略や取り組み姿勢がよくわかってくる。

■今日のBGM

ユニクロは客層の幅が広いから・・

近頃、食品の買物ついでに、ユニクロと無印良品は定期的に見ている。本当に誰が中心になって、商品のMDを組み立てているのかと感心する。やはり両店とも、あまり外れる商品はなく、タイミングを見極めてプライスダウンもしており、商品のライフサイクルもうまくコントロールしている。あまりとがった商品もなく、必要な商品が提案できている。

先日も、朝の番組で、「高機能のアンダーウェア」を試して、いろんな角度から評価し、高評価の商品を紹介していたが、結局No1だったのはユニクロの高機能アンダーウェアだった。各下着メーカーなども比較されていたが惜敗していた。同じ番組で、食料品などではいつも「トップバリュ」などがランキングされるが、イオンの商品はランキングされていない。専門メーカーや小売最大手も寄せ付けない強みがある。

ユニクロで、半月くらい前から、「ポーター」に似たバックが、3~4種類くらいバックのフェイスにしては大きく提案されている。今年の1月に1型発売されたらしく、さらに2024年に韓国で先行発売され爆発的な人気があったようだ。「ユニクロ:C」の商品もあり、値段は2990~4990だったように思う。

おそらく、ユニクロ以外の会社で、この商品は作れないし、売れないなと感じる。値段が全く違うので、別物と言い切れそうだが、なかなかファッション系の他の会社では作りたくても作らないし、作ったとしても店頭では売りにくい。そして何よりこの値段では作れない。

以前、ユニクロのチラシ折込について、ユニクロの客層の幅の大きさが背景にあるという旨を書いたことがある。はたして、一般購買客で吉田カバンをどれくらい知っているのだろう。通勤電車で吉田カバンを持っている比率は間違いなく10%以下だと思う。さらに70才以上になれば知名度はもっと下がってくる。おおまかに勝手な予想だが、ユニクロのお客様で吉田カバンの知名度は20%以下だろうと思う。つまり、機能や値段を見て購買するお客様がターゲットであれば、「似ている」という意識は必要ない。単純にちょっと「洒落て」いて「機能的」で値段が「リーズナブル」であれば客層にぴったりはまるということになる。

もし、この商品が売れ続けるなら、ユニクロのMDの狙いはうまくはまる。近頃、本家の吉田カバンは、いろんなブランドとコラボをしている。プレミアム感をどんどん出している。ここでも完全に客層の2極化の様相を呈してきている。

ユニクロも無印良品も商品アイテムは少ないが、客層を狭めず、商品は的確に絞り込んできている。ユニクロはジルサンダーやクリストフ・ルメールを皮切りに有名デザイナー監修のブランドも低価格で打ち出し、安売りのイメージとも一線を画そうとしている。無印もヘルス&ビューティーなど拡大し商品の幅を広げ続けている。

幅広い客層に、アパレル中心に的確な商品を送り続けるユニクロや、1カテゴリーでは売れるアイテムを集中させ、カテゴリーの幅をどんどん広げていく無印良品の商品MDの仕事について、真剣に詳しく聞いてみたい。

■今日のBGM

定期借家契約 ➁・・・ 撤去工事

前回、退店時のことを書いていて、ちょっと引っかかっていることがあり、そのことを書いてみる。ただ、この問題の正解はわからない。

退店時には契約上、工事区分でいうB.C工事の撤去が出店側の負担区分となっている。現実としては、その工事の負担金額はデベロッパーとの調整によって違っており、同じデベロッパーでも、個別のSCによっても違うことが多い。つまり、後継テナントとの話し合いで残存を希望する什器があればそれは撤去せず残すことができ、その分撤去工事の経費が減らせる。その調整をしてくれるSCのスタッフや内装監理室の担当によって撤去金額は変わる。ただしこれは交渉事であり、あくまで契約上はスケルトン渡しになっている。

いろんなことがあったが、何件かをここに書いてみる。

・後継テナントが決まっていたにもかかわらず、そことの調整はなしで契約書通りほぼスケルトン渡しとなった  

→ 契約書草案で「デベロッパー指定の業者が撤去工事を実施」とあったのを苦労して「他の業者も併せて検討する・・」のような契約に緩和してもらった。ただし、そのためか後継テナントとの話し合いはなかった。オフィスビル中心の不動産系のSCで子会社が施設管理をしており、全く融通が利かなかった。ちなみに後継テナントは1年前にはほぼ出店は決まっていたと後日聞いた。ほぼ敷金は帰ってこず、退店13店舗中最も撤去工事費は高かった。現実的には間違いなく撤去工事の調整はできた。

・B工事撤去の見積もりが異常に高く、添付された詳細図面をみたら自社の区画でなく、売場面積が5倍くらいある他区画の図面での請求書が届いた

→ 日本で一番大きい企業。こちらから確認の電話をして、後日修正の請求書が届いたが、あるべきでない事。C工事の 撤去に関しては後継テナントと細かく調整してくれた。

・使える什器は使い、天井照明もそのままで、足らない什器や環境に手を入れて出店。契約時に引き継ぎ時の売場写真を細かくとり、その状況を現状として契約書の覚書を作り契約した。

 →当然のようにスケルトン渡しでの請求があった。個別面談をして契約書の再確認をしてもらいデベロッパーに納得してもらった。面談するまではかたくなに拒否された。

撤去時にもめることは非常に多い。何よりもお互いに前向きな仕事ではない。デベロッパー側とテナント側とのはざまで、工事に関してはいろんな問題が出てくる。特に退店は営業数値が厳しい状況だった店がほとんどで、退店時に発生する経費が大きくなるとそのまま損益に響く。大企業は別だが中小企業ではできるだけ経費を抑えたい。細かく打ち合わせをすることが間違いなく必要で、後ろ向きの仕事にはなる。後継テナントの声も交えてプラス要素に導ければデベロッパー側にもメリットが出る。そう考えて交渉してもらえればスムーズに進む。ただデベロッパー(オーナー企業)とは違うPM業者が管理していると、さらにワンクッションはいるのでそれも難しくなる。

最後に、少し外れた感想を書く。大手デベロッパーほど中小企業へのケアは薄い。当然一概には言えず、担当者にもよるが、退店時の対応だけでなく営業面の問題も同様に感じた。出店が近隣エリアに固まったり、同じデベロッパーに集中したりすることは、会社の政策だけでなく、友好なリレイションシップがそうさせたことも大きな要因にはなった。

出退店に関しては、契約書を細かく読み込み、疑問点を理解するまで交渉する事、そして営業の担当者(本部、店)とは良好な関係を持っておくことが非常に大切なことだ。

■今日のBGM

定期借家契約とやっておくべきこと

振り返ってみると、以前の会社で12店舖退店している。今になって、そんなに退店していたのかと思う。結構な金と労力を使ったなと思う。

自社の出店の教訓として2つの結論を得た。SCでは3階以上に出店しないということ、最低売場面積を設定すべきということだ。新規で立ち上げるとどうしてもデベロッパーより立場が低くなり、「出店させてもらう」立場になる。そうなるとあまり強い主張はできなくなる。ちなみに退店した12店舗中7店舗がSCの3階以上で、最低設定売場面積より小さかった店は5店舗あった。それでも契約満了までに退店した店は1店舗しかない。

その中で不本意な退店が3店舗あった。すべて契約満了時の話し合いで、デベロッパー側から「定借満了」で再契約しない旨伝えられた。そのうち2店舗は継続の意思が強かったし、もう1店舗も条件交渉次第では残る意思はあった。現状のテナントの出店契約は5年か6年の定期借家契約であり、そうはいっても話し合いにより再度新しく契約を結ぶことが多い。ただ3店舗ともほぼ次のテナントは決まっていたようだ。そして、自店は平均以上の坪売上はあったと思うが、代替場所の提示はなかった。

その3店舗とも後継テナントは大手資本の会社であり、おそらく政治的なもので、条件も自店のほうが高かったと思う。そういうことは今までの慣例や、伝聞でいろいろ聞いてきた。当然、企業は1つのSCの収益より会社のメリットを優先する。例えばそこに出店することで他のSCへの出店を決めたり、複数店出店の1店となったり、双方の政治的メリットが優先される。3店舗のうち1店舗は隣接の大型店舗の拡大で、おそらく歩率要素が高い契約だろうから、固定賃料だった自店のほうが賃料は高かったと思う。それでもSCとしての賃料は減っただろうが、それにより他SCへの出店というメリットがあったようだ。もう1店舗も大量出店の一環で、間違いなくそのSCの賃料もダウンしたと思われるが、他のSCの空床の解決にはつながったと思う。3店舗とも自店の売上はSCの平均点以上だったが、代替区画の提案がなかったことから、そこまで必要なテナントとされていなかったのかもしれない。ここで思うことは、SCの動向を把握できなかったことにある。退店が増えたコロナ期が重なったことも大きい理由にもなる。

課題として挙げられるのは、完全にコミュニケーション不足ということだ。社長として毎月1度は臨店していたが、もう少しデベロッパーとの話し合いをするべきだった。同様のことがエリアの責任者にも言えると思う。

ただ一番大事だったことは、会社として必要な店なら、さらに良くしていこうという考えを持たねばならなかったということだ。定借終了1年前には、再度自店の流れを詳細にデータ化し、どうしていくべきか社内決定すべきだった。そしてそのタイミングで、商品政策も含めて再投資をかけての売場リニュアルも検討すべきだったと思う。退店すれば当然撤去費用がかかる。その分を改装費用にも充てられる。さらに、別区画への移設の提案をしてもよかった。今になって定期借家契約のプラスの意味も考えるべきだったと思う。

大事な店は、そのままにせず、さらにブラッシュアップをすることが必要なことだ。再契約期は、それを考える貴重な時期だととらえるべきだった。

■今日のBGM(追悼 エディ藩)

チラシ販促の意味

GWに入ってユニクロのチラシが2回新聞に折り込まれた。GWの割引訴求と定番の紹介の内容だった。チラシはかさばるのでチラシ折り込みの少ない日経新聞しかとってない。ただそれでも、近頃はチラシが増えてきている。

2023年のデータで、新聞を取っている家庭の割合は58.1%となっており、2013年度81.2%から10年で大きく減少している。さらにその年代別にみると、購買人数は2016年比で70代以上は82.7%になっており、60代68.2%、50代56.7%で20~40代は30%代まで落ち込んでいる。当然の現象ではあるが、ネットに情報はあふれ、新聞の購読者は減少している。ただ、まだまだ高齢者層は新聞を宅配しているというデータになる。

ユニクロのチラシは見る人も多いと思うが、今回はB3サイズでエリア店舗の合同版だった。大きなセールではさらに大きなサイズで折り込まれることもある。昔は販促の仕事もやっていたので少しはわかるが、製作コストは削減できても、折込料を含めると大きな経費になる。

ファッション企業は、チラシ媒体などの販促手法を当然したがらない。値段に訴えたくないのと、当然のように効果が出ないと考えている。ユニクロがそこまでの経費を使っても、チラシ媒体を使う理由は何だろうか?それは間違いなく客層の幅を広げたいからだ。上記したように60代以上のニーズも取り込みたいと思っているからだと思う。今の60代以上はそんなに老人ではない。60代はDCブランドを経験し、70代以上は「VAN,JUN」時代を経験している。ワンポイントファッションに頼った世代ではない。ユニクロのチラシ戦略は、その世代をよく知る経営者の考えもあると思う。

ターゲット年齢層を上げていかねば、売上確保が難しくなる。以前書いたが2024年の人口は30年前比で98.1%と減っているが60才以上は181.5%と増えており、人口構成比も19.3%から35.4%と大幅に上がっている。ファッショントレンドは20才前後から動き始めるが、趣味の多様化に加え、絶対的人口の減少もありトレンド志向の客層を追いかけると、商売にはなりにくくなっている。

無印良品の出店傾向も、客層の幅を意識しているように見える。RSCへの出店より、CSC,NSC及びその隣接地への出店を加速させているように見える。そして地方、郊外への出店が増えている。さらに「無印500」でコンビニエンス化を図り、さらに店舗の大型化で600坪の路面への単独出店も進めている。出店場所の変化に伴い、商品の幅も広がり客層の幅も広がっている。

話は変わるが、先日ららぽーとに行って店をぶらぶらしていたが、オンワードの「オンワードクローゼット」に50代以上のお客様が多く、にぎわっていた。オンワードの社長が積極的に出店していく旨を話していたが、おそらく「オンワード」の名前に反応する客層狙いなのだろうと感じた。「ワールド」も「イトキン」もこの手法で出店すれば、50代以上の客層は取り込めるかもしれない。

「企業を大きくする」ことを成長戦略と考えるなら、客層の幅を広げることは必須事項になる。狭い客層の中でパイを取り合っていても、大きな成長はない。「無印良品」もファッション業界と呼ぶのなら、現状ではファッション業界では「ユニクロ」と「無印良品」しか成長しないのではないかと思う。

■今日のBGM

近隣の商業事情から見えること

食品の買物には最寄り駅の武蔵浦和駅に行くことが増えた。駅前の新築マンションに併設してヤオコーができたことが大きい。駅前はどんどん高層マンションが建設され、人が大幅に増えた。比較的若い層が多く、よく行っていた市民プールが取り壊され隣接していた小学校を拡大するとのことである。市の広報によると現状の小学校が22000㎡になり生徒数も2000人の規模拡大と発表されている。駅の乗降客数を調べると1日93000人となっている。

駅近辺に「無印」と「ユニクロ」があれば、絶対に大型店並みに売れると常々思っている。ヤオコーオープン時に2階以上に出店していれば相乗効果は大きかったと思う。近隣のさいたま新都心は駅乗降客が1日99000人で、駅直結の商業施設コクーンシティは2023年429億の売上がある。当然駅の役割は違うが、これだけの乗降客数で武蔵浦和駅近郊の商業規模は小さすぎる。完全に、ベッドタウン化が進んでおり、急激な開発により、商業が抜け落ちている。賃料が合わないからかもしれない。

近隣の浦和パルコが好調で、2025年2月期で315億円と11%の伸長だったようだ。パルコの売上高では渋谷、心斎橋、名古屋に次ぐ4番目で、インバウンド比率がほとんどないにも関わらず伸びており、日経新聞にはテナント構成を3つのカテゴリーで組み合わせて成功していると書かれている。1つはデイリー要素、2つ目が先端を走る専門店、3つ目がポップアップストアとなっている。

きれいごとで評すると、新聞の記事通りだが、結局はデイリー要素をうまく取り入れたことに尽きる。「先端を走る専門店」や「ポップアップストア」はパルコの得意とするところで当然ここを中心に2007年にオープンした。食品SMはオープン時「大丸フードマーケット」で高級感を打ち出していた。上記した2つ目、と3つ目の要素で固められておりファッション服飾の売場中心で大型テナントは少なかった。所謂、パルコらしい店で、パルコとしてもあまり好調店ではなかったと思う。10年後食品SMが地元密着の「ヤオコー」に変わったころから1つ目のカテゴリー「デイリー要素」を打ち出し始めた。確認したところ1階~4階までの専門店はオープン当初は161あったが現状は92区画に減っている。ここからデイリー性のある大型区画を増やしていく。2階に「ノジマ」3階に「無印(増床)」「ロフト」「ユザワヤ」「3コインズ」4階に「GU」「島村楽器(増床)」を導入している。

浦和は西口に県庁や役所、銀行などが多く、商業では「伊勢丹」があり、街のイメージは「プライドが高い街」と言われている。その流れでのパルコ中心の東口再開発だったが、足らない「デイリー性」に変えて好調に転じている。ただ、パルコと地権者の契約内容はわからないが、大型テナントの賃料は小型テナントよりは当然低い。売上増分で吸収できているのかしれないが、収益面の構造がどうなっているのかは見えない。ちなみに浦和駅の乗降客数は176000人となっており、浦和駅と武蔵浦和駅はバスでしか直結しておらず、電車では乗り換えが必要になる。

今後「ユニクロ」や「無印良品」の売上は乗降客数が多い大都市近隣駅のほうが大型モールより大きくなっていくと思う。インフラとして食品SMと同じ位置づけになっていくように感じる。極論だがショップの有無がその駅近郊を選ぶポイントになっていくかもしれない。そういう意味では大型モールが「ユニクロ」「無印良品」をメインにリーシングしているということは、もうすでにその商業施設が大型モール(RSC)の位置づけではなくなっておりNSCやCSCになってしまっているということだ。

イオンはイオンモールを子会社化してCSCやNSCの開発に力を入れると発表されている。このブログでも取り上げているが、「ユニクロ」や「無印良品」は、出店に関して大型モール中心ではなく独自の出店を続けている。商業施設の流れも間違いなく変化していく。

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