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企業の賃上げが最重点課題?

歳を重ねると、主だったことの比重が小さくなり、なぜか社会のことに目が向き始める。政治に対しても独り言が増える。今回は、「小売り」「ファッション」とは少し離れる内容で書くことをご容赦願いたい。

選挙が近づき、各党が政策を述べている。石破首相は「企業の賃上げが最重点課題」と言い続けている。賃上げへのコメントは多いが、政治が企業の賃上げをバックアップできるのか、具体的には全くわからない。組合組織の連合も全労連も高水準での「賃上げ」を要求している。

国税庁発表の赤字法人率は、2022年が最新で64.8%だったようだ。ちなみに小売業は31.6万社の企業のうち22.6万の企業が赤字で赤字法人率は71.4%となっている。赤字企業はほとんどが中小企業で、その中小企業は国内企業数で99.7%を占めており、国内従業員の70%が働いている。そして、国内企業数の1%に満たない大企業の利益剰余金は2021年末で484.3兆円という数字もある。

こういう数字を見ていると、大企業の内部留保分を人件費に振り替えて賃上げをさせることが、首相の言う「賃上げ」ということだと見て取れる。そして政治家は「経団連」や「経済同友会」の大企業のみが「企業」という認識しかない。国民の70%が働く中小企業は眼中にないとしか思えない。

3年前まで従業員100名くらいの小売業を経営していた。頑張って定期昇給もしてきたし、 増益が続いたときは、年3回賞与も出していた。そして、会社立ち上げからコロナ期までは規模の拡大を考えながら、毎年黒字決算を続けてきた。それでもコロナ期の3年は重い時期だった。築いてきたものが崩れ落ちた。小売業で、店を開けないのでは何もできない。その時の国からの補助金は、雇用調整助成金があった。ただ、集客できないので営業成績は上がらず、マイナス利益の歩留まり的な要素しかなかった。その助成金もマニュアルが複雑で書類も多く、作成するのが1日仕事だったように思う。

雇用調整助成金もハローワークへの提出だったが、コロナ期以前もハローワークには最低月1回は行っていた。従業員の入退社手続きで、雇用保険加入手続き、退社手続き、離職票の提出など、さらにアルバイトの募集掲示手続きにも行っていた。ただそんなに行っていたにもかかわらず、「キャリアアップ助成金」は全く知らなかった。有期社員から無期社員にすれば当時は1名57万円の助成金があったようだ。少なくても15名以上はそうしてきたように思う。当然調べなかったミスだが、あれだけハローワークに通っていたので、もう少しアプローチがもらえてもよかったのではないだろうか?やはり助成金を拡充しても、従業員が多く、情報量も多い大企業が一番活用するのかもしれない。

政治は計算ではないと思う。3割が働く大企業も7割が働く中小企業によって支えられている。3割の労働者の賃上げだけが国の景気を変えるわけではない。中小企業で働く7割の労働者とその家族のためにどう動くかが本質ではないかと思う。そして情報取集能力の弱い中小企業にもっと歩みより、改善していくことが、一番大事なポイントのような気がする。

ただ、現実は国内企業数1%の大企業とのきずなが深く、政治家として接触もしやすい。1%と話をして調整すれば、表面上は賃上げに努力している絵も描ける。こんな感じで解決していくのだろうが、社会格差はどんどん広がっていく。

■今日のBGM

ポイント販促が異常に多い

これだけ暑くなると、歩いて買い物には行きたくない。バーゲンも始まっているSCもあるので車での買い物が増える。先日も駅前のSMへ行くには暑いのでどうするかと言っていたが、イオンがイオンペイでの買い物でポイント10%と告知されていたので、車でイオンへ買い物に行った。SMの安定感が駅周辺のSMより劣っているイオンへは、割引日や、ポイント戦略日にしか行かないようになってしまっている。

今月のイオンのポイント戦略日は10、13~15、26~28の7日間がイオンペイポイント10倍、20、29、30が5%オフ、その他15日がGG感謝デー(55才以上5%オフ)おおよそ10日が還元デーになっている。意味合いは微妙に違うが、ほぼ5%引きの日が非常に多い。

ポイント戦略はいつごろからこんなに増えたのだろうか?ビブレで店長をしていた最後の時期位にポイント10%のDM戦略を多用した思い出がある。バーゲン以外セールをしなかったブランドショップの売上が跳ね上がり、販促効果は大きかった。ただ会計処理上の変化があり、ポイント戦略は禁止になったように思う。さらに、ポイントによる不正も多かったのもその要因になった。

当初の会計処理はポイント使用時に経費計上していたが、その後ポイント付与時点に計上になったような気がした。少し調べてみると、現状は大会社以外に関してはポイント利用時に計上となっている。ただしイオンのような大会社はポイント付与した時点で仕訳が必要になっているようである。ポイント使用率を想定して契約負債とし、その分を減らした売上、売上負債と現金に仕訳けるようになっている。つまり売上計上は契約負債を引いた金額になっている。(これであっているのかはわからないが・・・)ポイント使用率を設定することで結果的には5%オフよりポイント10倍のほうが利益マイナス面に関しては影響が小さいということはわかる。

こういうポイント戦略が販促として効果が大きいのは食品売場だと思う。食品売り場を活性化することが多くの小売業の一番の課題になる。デイリー客が増えるし、商業施設の売上の核になる。そのために特売をしてチラシ販促をしたり、生鮮の専門店を入店させたりする。そういった販促手法から、ポイント戦略に変わってきている。

GMS食品業種の利益率は25~26%と言われている。昔、ビブレで店長をしていた時は生鮮のテナントを売場に組み込んでいたので21%くらいだったと記憶する。利益構造も変化していると思うが、「売場全品5%オフ」のような販促は絶対企画できなかった。現在のチラシの内容は昔ほど値段を訴求していないし、利益の出る総菜の拡大で利益率は改善しているかもしれない。今後は「5%オフ」や「ポイント10%」企画はどんどん増えていくと思う。各社の取り組み姿勢にもよるが、安易な販促なので、これがさらに5%オフから7%オフになっていくことも考えられる。ちなみに売上年間25億、回転率月3回転、利益率25%の食品売場で3日の5%オフと7日のポイント10倍(使用率30%設定)を実施したと想定すると、手計算では月度利益は-0.1%強位の計算結果になった。仕入努力や生鮮品の値引き率の減少で十分改善できる数字にも見える。

カード会員の囲い込みや、ネット客の拡大、スマホ決済への取り組みなど、企業としてのプラス要素は大きい。ただ、一方で商品のライフサイクルを考えた販促や時系列による売場の変化など、取り組むべき業務がないがしろにされてしまうかもしれない。小売業としてこれだけポイント戦略が多いと、その流れが当たり前になってしまうことが一番怖い。

■今日のDVD(モンキーズ)

中心客層をよく知ること

近頃の「米騒動」で、2000円の備蓄米のことがTVをにぎわせている。米はSMから減っていたのは事実で、値段が上がっていたのも事実ではある。では2000円の米は近隣の店舗で手に入るのかというと、どこにも売っていない。若干の米の価格は下がってきたという効果はあるが、今後の方向性は見えない。ただTVでは長蛇の列での販売風景を何度も映し出す。そんなに必死になって探しているようには思えないのだが・・・

偶数月の15日の年金支給日の買い物の映像も、必ずと言っていいほど取り上げられる。インタビューでは、多くの高齢者が年金生活者で月の年金は5~6万しかないと答えている。だが、厚生労働省が発表している高齢者(65才以上)世帯の平均所得は316万で可処分所得は274万円、そのうち年金収入は平均197.4万円となっている。年金は税込みで1世帯当たり月16.4万の計算になる。それを考えると、恣意的ともいえるテレビ報道ではある。

世間の風潮が、「生活が厳しい」流れに乗っているような気がする。はたして実情は、そういう流れなのだろうか?当然「厳しい」感覚はあると思うが、少しあおりすぎのような気もする。この流れは、絶対に年齢別人口構成比の変化が大きく影響しているように感じる。再度書くが、日本の人口は30年前と比べると98.1%と微減だが、60才以上は181.5%と大幅に増加している。人口構成比は19.3%から35.4%となっており、その人口は男性19457千人、女性24346千人、合計43803千人になっており、高齢者の比率は高くなっている。この年齢層の分析をすることが、基本品揃えに一番重要だと思う。そして、現状は必ずしも「高齢者=生活苦」ではないと思う。

このブログで、近頃よく取り上げているが「無印良品」や「ユニクロ」は絶好調を続けている。「無印良品」の国内売上高既存前年比は最近3カ月120.5、109.8、112.2と大幅伸長しているし、「ユニクロ」も111.5、98.7、113.1と伸長している。おそらく収入中間層へ組み込まれる60才以上の購買動向を分析しての結果だろうと思う。そのターゲットをくすぐる素材感や、値頃感の打ち出しが非常にうまい。

トレンドを意識するヤング層(10代~20代)の人口構成比は大幅に減少している。ただ商品のトレンドはこのターゲットから始まる。そして販売するのも楽しい。ただそのゾーンを追いかけると底は浅い。そこに気が付かねば、商売は失敗する。現状では、人口構成を見ている限り、商売を成功させるには、60才以上の高齢者の動きをつかむことが最も重要なこととなっているように思う。

今の50代も含めて60代、70代は昔の実年齢の世代とは全然違う。ファッションや趣味も多様化しており、ある意味「楽しい事」を享受してきた世代だ。このブログでも何度も繰り返しているが、ファッションでは「VAN、JUN」を経験し「DCブランド」も身に着けてきた。その認識を持ってその世代の感覚と対峙する必要がある。話は逸れるが、GMSの衣料服飾売場はそれがまだ理解できてないので、売れてない。「高齢者=シニア(老人)」の感覚で品揃えしている。

今の小売業は「50代~70代」を詳しく分析することが、間違いなく成功のポイントになる。

■今日のBGM

小売業からの地方創生は難しい

先輩夫婦と恒例の旅行をしてきた。今年は四国がメインで、暑かったが雨にも打たれず好天気に恵まれた。

私自身、四国は何度か訪れている。徳島県は母方の故郷で子供時代から何度も行っている。愛媛県は道後温泉としまなみ海道の観光で訪れたことがあり、香川県はマイカル時代ビブレの店舗があったので巡回していた。高知県はPM会社在籍時、高知市内のビルの商業化リニュアル計画のコンサルで数回訪れている。

店をやっている時、四国で出店依頼を受けたことがあるのは徳島のゆめタウンオープンの時だった。遠隔地に出店する時は当然ドミナントを考えて出店する。売れる商品も似通ってくるし、そのほうがマネジメントもしやすい。それに加えて、できれば核になる店が欲しい。以前の会社でドミナントしていたのは、関東圏、関西圏、九州南部だけだった。中部圏も作ろうとしたが、核になる店ができなかったので作り切れなかった。そういう意味で中四国は、出店を考えられるのは人口の多い広島市などの県庁所在地くらいで、点だけになり地域全体がまとまらない。そうなると、どうしても中小小売業は出店をためらってしまう。さらに、地元で強い企業があり、なかなか参入できないという状況もある。

旅行期間中、全労連が「直ちに最低賃金一律1500円以上に」と発表していた。四国の最低賃金を調べてみると、徳島県980円、香川県970円、愛媛県956円、高知県952円となっている。中小規模でコツコツ商売をやっている企業は、大手小売業の参入で人不足になることは明らかだ。全労働人口の70%を抱える中小企業は、そんなに簡単にクリアできる最低賃金ではない。

そうなると、閉鎖的な商圏に新規参入するとすれば大手企業中心になり、それにより地元企業も厳しくなってくる。そしてさらに県庁所在地など都市部に企業は集中し、ますます郊外には人がいなくなる。その都市部でも、四国で言えば、徳島にはもう百貨店はなくなっている。他の百貨店も高松三越が売上224億となんとか百貨店の規模感はあるが、高知大丸84.3億、松山三越49.8億と百貨店としては非常に厳しい数字で、閉店前の厳しいゾーニングになっている。20年位前に高知大丸をリサーチしていて、神戸大丸のように本館周辺にサテライト店がいくつかあったことを思い出した。それが今や存続の危機になっている。人口も減少傾向にあり、今後の四国での小売業は、間違いなく縮小方向になってくる。

7月偽予言の風評の影響からか、観光地にも外人客が少なく、日本人観光客も多くはなかった。ただ、観光産業には宝の山のような気がした。観光スポットをさらに広げていければ観光地としての側面からは大きな期待は持てる。ただ、だれが資本投下するのだろうか。そして、外国人観光客の流れは今後も続くのだろうか。

四国四県を車で走ってみて、小売業だけでなく「地方創生」は限りなく難しいと感じた。

■今日のショット(徳島 かずら橋)

ららテラス川口

見た第一印象は「大丈夫?」だった。

売場区画を作りにくい地形、食品売り場に「?」、テナントのターゲットに「?」。駅前の1等地物件が、空いたままだった理由がよくわかった。

川口市は人口約60万人。隣接駅は東京都赤羽駅。通勤に便利で、駅周辺には大型マンションが多い。クルド人問題で取り上げられ、外国人も多い。昔は駅前にそごうだけでなくマルイもあった。さらに郊外にも大型RSCのイオンモール川口前川、イオンモール川口もある。JR川口駅の1日乗降客は149千人で埼玉県では5番目の多さとなっている。

「ららテラス」の他施設を調べてみると、地域密着型で比較的買いやすいテナントが多く、わざわざ感より、利便性を重視しているように見える。ただ、旧川口そごうの物件であり、デッキで駅と直結しており、何よりも11階建てで3万㎡近い売場面積がある。そごうの売場面積は32621㎡となっていた。床はおそらくそごう時代のままで、「からくり時計」も復活している。所謂、百貨店のハコのままになっている。

沿線の大宮には、百貨店が2つあり、ルミネ、丸井がある。浦和には伊勢丹とパルコがある。百貨店は川口にはもういらないことは実証済み。駅ビルスタイルにするのか、従来の「ららテラス」ターゲットのするのか非常に難しかったのではないだろうか。結局は両方取り組んだという結果のように見える。近隣の浦和パルコがそのモデルになりそうだが、決定的に課題になるのは、各フロアの地形が悪く、各フロアの大きさが小さい事だと思う。

B1Fに食品SMの入店は難しかったのだろう。それでも、フードコートをやめてB1F全部を提案しても導入できなかったのかと感じる。駅近ならマルエツくらいしかないし、なんとか地元の「ヤオコー」か、流行りの「ロピア」など賃料を度外視しても優先的に入れたほうが良かったのではないだろうか?「対面テナント」と「成城石井」は客層とアンマッチのような気がする。メインフロアではない1階の半分を銘店や「西武そごうショップ」にして1Fを食物販にしてもよかった。全部を提案してもSMの導入は無理だったのだろうか。三井不動産の企業力をしても難しかったのだろう。

デッキとつながったメインフロアの3階は何とかして「館の顔」のフロアにしたかったことはよくわかる。ただおそらくあまり食指が動かない物件だったのか、3.4階のテナント揃えは「何とか」のイメージが強い。セレクトも「UAグリーンレーベル」「アーバンリサーチストア」をメインフロアに導入しているものの、都心近郊の駅ビルより厳しいテナント揃えに見える。5階以上はカテゴリー大型区画になり、実需と利便性を考えたフロアになっている。5階は「ユニクロ」「GU」の1フロア構成で、6階はボリューム路線の「パシオス」と「ムラサキスポーツ」「ウィゴー」「コカ」、7階は「ダイソー」「ノジマ」、8階は「西松屋」とアミューズ・カルチャーのフロアとなっている。

全体を見ると、引き継いだ百貨店のグレード感ある内装が、逆にマイナスになっているようにも見える。まだオープンしてから日が浅いからかもしれないが、来店客層は駅ビルの客層に見えた。対面の食品テナントと「成城石井」が「パシオス」「西松屋」と共存して正解なのか?各フロアの客層が違いすぎているようにも思うが、今後回遊性はあるのだろうか?賃料設定も厳しそうに見えるが、SCの採算は取れるのだろうか?

好立地なのに、なかなか借り手がつかなかった理由はわかる。簡単ではない物件だろう。ひょっとしたら賃貸条件も破格なのかもしれない。またしばらくしたら、見に行ってみる。

■今日のBGM

アリオ、イトーヨーカドーとファウンドグッド

飲み会に行く前に、川口そごう跡の「ららテラス川口」でも見ようと、川口駅に立ち寄った。そのついでに「アリオ川口」にも足を運んだ。久々に「アリオ川口」を見て、いろいろ考えさせられた。

まず、イトーヨーカドーの食品売場のレベルは、相変わらず高い。足元のマンション群に囲まれ、その客層への総菜中心のデイリー食品は充実している。値段もいつも買物しているイオンよりは安い。エリア特性があるのか生鮮3品の売場の大きさに変化があるが、相変わらず欠品は少なく、きちんと売場管理がなされている。売場が大きく、持て余している感じはあるが、足元商圏のシェア率は高そうだ。

撤退した衣料売り場だが、アダストリアとの協業の「ファウンドグッド」は、うまくいってないようだ。立ち上げの時に見たが、現状の売場はその時の売場より30%くらい縮小されている。やはり客層とのギャップが大きい。浦和イトーヨーカドーの「ファウンドグッド」をたまに見るが、イトーヨーカドー来店客とのギャップが大きすぎて、全く売れてないように感じていた。逆にモール内のイトーヨーカドーだと受け入れられているのかと思ったが、やはり客層のギャップはここでも大きかった。衣料売り場は「ファウンドグッド」を縮小し、量販店委託ブランドのコーナーを増やしている。所謂、メーカーコーナーで「クロコダイル」「ハッシュパピー」「ケント」「ギャロリア」「アンナルナ」「インスパイア」などのブランドがコーナー展開をしている。取引形態はいろいろあるが、最終商品リスクはヘッジできる取引だろうと思う。浦和店の衣料品売場も同じような展開であり、やはり従来のイトーヨーカドーのお客様中心であり、新しい客層は取り込めてなさそうだ。「ファウンドグッド」も、どのゾーンを狙っているか見えにくく、さらに「ユニクロ」「GU」よりは高い値段では量販店の顧客は取り込めない。アダストリアは今までの出店場所を選んでの出店とは違い、量販店の客層との相違に苦しんでいるようだ。人的課題もあり、どちらがリスクをかぶる契約かわからないが(おそらくイトーヨーカドー)、おそらく全店展開は難しいと思う。

「アリオ川口」だがやはり「イトーヨーカドーと〇〇の専門店」という域を出ていない。売場面積も3万㎡強と大きくもなく、イトーヨーカドー食品とシネマやジョーシンなどの強みしかなく、引き付けるテナントも多くはない。アリオはイトーヨーカドーグループの商業施設の開発運営会社(セブンアンドアイ・クリエイトリンク)のPMだと思うが、独立してのデベロッパー会社ではなくあくまでもグループの不動産管理会社にしか過ぎない。ということは、あくまでも発言力が強いのは「セブン&アイ」であり、独立性はほぼないという位置づけだと思う。そのためイトーヨーカドーの売上をどう上げていくかが主の目的になり、テナントのフォローや、パワーアップさせたテナントの導入がおろそかになってしまっている。イオンの本体のイオンリテールが運営する「イオンモール」が、モールとして完成度が低いのと同様の状況下にある。そのため大きな投資はかけられず、テナントの劣化が進み、モールとしての魅力はどんどんなくなってくる。独立性が強いイオンモールが運営する「イオンモール」との差は大きい。

間違いなく、脱GMSとしてのイトーヨーカドーは方向性が見えていない。SMもあれほどの大型売り場は必要なのだろうか?そして、特に衣料品撤退後の売場が解決できてない。そんな状況下では、モール全体の改善はどんどん後回しになる。発言力もなさそうな子会社では、モールのテナントゾーンのケアもできない。今後も、広域からとるべき客数は恐らくどんどん減っていくと思う。イトーヨーカドーグループ(ヨークホールディングス?)は、完全に迷走していると感じた。

■今日のBGM

商業PM(プロパティマネジメント)のもどかしさ

前回、㈱イオンモールと㈱イオンリテールの関係を書いていて、過去の経験から、商業施設のPMのもどかしさを思い出した。

前回書いたイオンの例で言うと、㈱イオンリテールの所有するイオンモールの名前のSCを、㈱イオンモールが数多くPM(管理運営)しているということになる。わかりやすい事例で言うと、近隣に北戸田イオンモールがあるのだが、ここは恐らく㈱イオンリテールの所有物件で、PM(モールの管理運営)は㈱イオンリテールからフィーをもらって㈱イオンモールが行っている。尚、食品含めたイオンゾーンはGMSとしてイオンリテールがキーテナントとして運営している。賃貸面積は44000㎡あり、RSCの大きさはあるが、テナント揃えは狭商圏型で、現状は大きなCSC(コミュニティSC)の見え方でしかない。もう少し広域からも集客できるテナントを導入することによって、川口や浦和からの集客をとるべきSCだと思う。特にグランドフロアのテナントラインナップが弱い。

この場合PMである㈱イオンモールがテナントの入れ替えなどの改装提案をしても、投資対効果を検討して㈱イオンリテールがジャッジする。半年くらい前に、イオンの直営売場の2階は投資をかけて大きな改装をした。それも、㈱イオンリテールのジャッジでの改装になる。イオンの2階直営平場の改装と1階グランドフロアのテナント入れ替えはどちらが重要か?そしてどちらを優先するか?ここでSCを㈱イオンモールが所有していれば、グランドフロアの改装の内容次第では1階のテナントの入れ替えの改装をするジャッジがあるかもしれない。当然グループ企業なので話し合いはあると思うが、投資内容をジャッジするのは資産を保有する㈱イオンリテールで、㈱イオンモールには権限がない。

ここで商業PMについて考える。仕事の内容は、商業施設の価値を向上させることを目的とした管理運営業務ということになる。ただSCの運営業務での最も大事なことは「お客様に満足してもらうこと」になる。そのために販促活動や演出をしたり、対テナントとの話し合いをしたりしていく。その他の業務もあるが、その業務は「お客様の満足」につながる。その見え方は俗にいう「BtoC」であり、企業が一般消費者へのサービスを提供する、例えば小売業のようなビジネスモデルに見える。ただ、フィーをもらっているのはお客様からではなく請負先になり、つまり企業間取引の「BtoB」になっている。

わかりやすい一例をあげる。SCを活性化するため、有名テナントを誘致して、そのSCのグレード感を上げ、広域から集客しようとする計画を提案する。そのテナントも出店に前向きだが、誘致するために店の一等地を提供する必要がでてくる。そのためには既存のテナントを移設しなければならない。さらに有名テナントの賃料は固定ではなく、低い歩合でのケースもある。その計画を実行するには、現状テナントの移設交渉、さらに移設費用の交渉等も必要になってくる。さらに売上歩率であれば、売上を読み違えると当然今までの賃料を下回るリスクもある。ただ、実行すると商業施設としてのプラス要素は大きい。

どちらのビジネスモデルでも、大きな検討事項であるが、「BtoC」のケースではその改装の影響力を理解してもらいやすく、社内決済までのスピード感もある。「BtoB」の場合は企業風土や業種も違う場合が多く、自由に提案もしにくく、検討にも時間がかかることが多いし、決済は厳しいことが多い。特に商業PMは請負先が不動産業や金融業が多く、商業の話に壁は高い。

今はもう変わったかもしれないが、商売感覚が異なる業種との企業間での交渉は非常に難しかった。いい経験にはなったが、商業PMはもどかしいことが多かった思い出がある。

■今日のショット(万博に行って来た)

イオンリテール(小売業)とイオンモール(デベロッパー)

まだ、流通アナリストの「総合スーパーでイオンだけ生き残った」という文面が頭から離れない。以前ブログに書いた「㈱イオンモール上場廃止」について、再度㈱イオンリテール側からどう見るかを考えてみたい。

㈱イオンモールを上場廃止にしてイオンの子会社化したことは、おそらく、各会社の意思決定を早くすることが一番の要因だと思っている。大きなポイントとして、㈱イオンリテールが資産を持ち、賃料収入を得ているイオンモールを、資産含めてすべて㈱イオンモールに移管することがあげられる。つまり、㈱イオンリテールは所謂「ジャスコ(イオンのGMS)」中心の小売業だけの会社になる。それにより、会社の収益構造が変化するので、企業としての生き残りを明確にできる。

前回も書いたが㈱イオンリテールが資産を所有するイオンモールは数多くある。㈱イオンモールはもともと三菱商事とスタートさせたモール事業(㈱ダイヤモンドシティ)で2007年に㈱イオンモールとして始まった。㈱イオンリテールもモール事業があり、その後2013年に㈱イオンリテールの54モール、15SCの管理運営(PM:プロパティマネジメント)を㈱イオンモールが請け負っている。わかりにくいかもしれないが、㈱イオンモールの主な業務は今までは、資産も保有している㈱イオンモールの物件のPMと資産は㈱イオンリテールのモール(名称はイオンモール)のPMが主な業務だった。今後どういう流れで資産を移管するかは未定だが、これで両社の流れは大きく変わる。単純に、㈱イオンモールの主な業務は商業施設のプランニング含めた運営管理、㈱イオンリテールは小売業(GMS)専業となると考えられる。

私見ではあるが、おそらく㈱イオンリテールでのテナント収益は黒字で、不振のGMSとしての小売業を支えてきたのではないかと思う。詳細はつかめてないが、㈱イオンリテールの営業収益全体におけるテナント収益は約20%と推測されている。当然課題はGMS事業になっていることから、不振のGMS事業への投資を優先させ、安定収益があるモール(テナント)事業への投資を遅らせていたのではないかと思う。㈱イオンモールとしても同じグループ会社の物件とはいえ㈱イオンリテールの物件には強く提案ができず、思い切った施策が打てなかったように思う。PM事業への投資等によって㈱イオンリテールの数字に影響を与えることはリスクが大きいし、㈱イオンリテールもそれを望んでなかったのではないだろうか。そういう環境下でもあり、㈱イオンリテールの物件は、モールとして新鮮さを感じず、テナント各社にとってはあまり魅力を持てないSCだったように思える。

もともとPM業は、オーナーの意思で運営管理の手法は変わってくる。資産を持たないPM会社が、資産保有者に意見を通しづらく、思い通りに動けない状況になることは多い。おそらく今後は㈱イオンモールが資産を持つデベロッパーとして、旧㈱イオンリテールの物件の改良は進んでいくと思う。今まで㈱イオンリテールの物件ではモールの改装提案や、テナント誘致、入れ替えは厳しい状況だったと思う。それが㈱イオンモールに変わればそのテナントの影響力も考え、いろんな方向から検討され、前向きな改良が進んでいくかもしれない。

㈱イオンリテールのテナント収益が欠ければ、いよいよGMS事業の存続がイオングループの課題になってくる。イオングループのSM(スーパーマーケット)事業は好調であり、ヘルス事業も好調を続けている。GMS内で収益が改善できていない衣料品や装飾品、住居品などを続けるべきか、続けるなら持続可能なMDは何かの結論を出す時期に来ている。

赤字状況であるGMS存続のジャッジは急がれていると思う。

■今日のBGM

総合スーパーでイオンだけ生き残った?

先日、ビジネス誌オンラインの「プレジデントオンライン」に「総合スーパーでイオンだけ生き残ったワケ」という記事があった。銀行出身の流通アナリストが執筆していた。モータリゼーションの変化で大型モール(RSC)へ購買客が流れたことでイオンだけ残ったという内容だった。その流れは当然あり、大きな要素ではあるが、そのことは改めて書くほどのことではない。それより「総合スーパーでイオンだけ生き残った」ということを流通アナリストが書いていること自体に驚いた。当然イオンの総合スーパー(GMS)の状況はわかっているとは思うが、決算内容を見てもイオンとしてはGMSが一番の課題になっているはずだ。

2025年2月期の決算資料を見ると、GMS事業の売上は35594(億)あるが営業利益は163億しかない。全体の売上が101348億でGMS事業の売上構成比は35.1%あるが営業利益は6.8%しかない。ちなみに営業利益は金融611億、デベロッパー530億、ヘルス事業360億、SM(スーパーマーケット)329億の順で、小売以外の金融、デベロッパーで全体営業利益の約半分を稼いでいる。ただ、その2事業も当然小売業があってこその数字にはなる。

総合スーパー(GMS)事業は、地域会社も含んでの数字であり、SM事業との区分がつきにくいが、イオンリテール(本体のGMS事業)としては79億円の営業利益で前年を割り込んでいる。ちなみにイオンリテールの詳細は出ていないが、第3四半期決算では売上は13785億、営業損失162、7億と発表されている。

総合スーパー(GMS)事業は食品や衣料品、服飾品、住居関連品などで構成されており、それを総称している。所謂、昔のスーパーの「ジャスコ」業態と考えればわかりやすい。「総合スーパーでイオンだけ生き残った」とあるが、はたして、生き残っているのだろうか?

おそらく、食品やヘルス関連以外は間違いなく赤字だと思う。セグメントを変えて、食品をSM事業にヘルス関連をヘルス事業に分けたほうが効率も利益も改善するのではないかと思う。つまり衣料品や服飾品、住居関連品をなくして、そのスペースを専門店に変えれば全体の数字は改善するのではないかと普通に考える。

イオンモールにGMSとして入店しているので、収益面では厳しくてもグループ全体にはメリットがあるというのだろうか?お客様はGMSがあるから安心してイオンモールに行っているというのだろうか?当然立地は違うが、「ららぽーと」のほうが客数も多いし、SCの売上も大きい。テナント数も「ららぽーと」のほうが多い。「ららぽーと」の多くにはGMSのテナント入店はない。イオンリテールの衣料品のところに「ユニクロ」「GU」や「西松屋」などを入店させ、住居品のところに「ニトリ」や家電など、さらには大型化している「無印良品」を導入させれば、現状のニーズは解消されるし、既にそのテナントがあっても他テナントの導入でバリエーションも増えてくる。SCの資本費以上で賃貸させれば赤字にはならないし、少なくとも月坪100千の売上もない現状のGMS衣料品等の売上効率を簡単に上回る。さらに新しいテナントを入れることでSCの活性化にもつながる。現状のイオンモールには個性がなく、似たようなテナントのラインアップで、完全に「ららぽーと」に負けている。

イオン自体も当然そこは理解していると思う。今期デベロッパー事業のイオンモールと、サービスその他事業のイオンディライトを上場廃止にし、イオンの完全子会社にしている。一義的には、㈱イオンリテールが所有しているSCのイオンモールを㈱イオンモールに移管することかもしれない。しかし、深読みかもしれないが、イオンモール内のGMSの解体も視野にあるのかもしれない。そうなればGMSの売上は減り、会計上ではテナントの賃料だけの売上計上になり、売上は大きくマイナスする。しかし、収益は大きく改善する。

創業者一族の岡田会長の最後にやる仕事は「総合スーパー(GMS)の解体」ではないだろうか。それはなかなか創業家以外のサラリーマンではできない。

そういう状況下で、「総合スーパーでイオンだけ生き残った」と言えるだろうか?

■今日のBGM

大手アパレルの行く先は?

前回、「オンワードクローゼット」について簡単にコメントしたが、昔の大手アパレルはこういう残り方をしても、あと十数年で需要がなくなるのではないかとも感じている。ここでいう大手アパレルとは百貨店型アパレルで「ワールド」「オンワード」「イトキン」「三陽商会」を指す。もともとはここに「レナウン」も属していた。「ワールド」「イトキン」は専門店中心からスタートし、「オンワード」「サンヨー」は百貨店主軸というイメージを持っていた。

大型モール(RSC)スタート期から百貨店以外の販路として大型区画を立ち上げてきた。当初は鮮度があり、SCの顔として出店も多かったが、現在は当時のショップのほとんどは見かけなくなった。おそらく過去の顧客ターゲットとの差が大きく、売れる商品や値段も違ってきて、今までの落ち着いた商売ができなかったのではないかと思う。展示会中心のサイクルから短サイクルに変わると商売も当然変わっていく。販売体制の違いも影響していたように感じた。

60代以上の客層には、百貨店メーカーというイメージは強くインプットされている。そういう意味でSCでも「オンワード」「ワールド」などのメーカー名を打ち出して、もう一度ブランドを整理して提案すれば、その世代の客層には響く。ただその客層もどんどん減っていく。

大手アパレル4社の売上だが、ワールドが2010年3141億から2024年は2023億、オンワードが同じく2486億から1896億、三陽商会が1121億から614億、イトキンは非上場で調べた数字では2001年1424億から2024年は321億となっており、すべて大幅ダウンしている。中心販路だった百貨店がどんどん減っていけばこういう数字になってしまう。

逆にRSCの流れから小売専門店大手の数字は大きく伸長している。売上推移でユニクロは2010年8148億が2024年に3兆1038億、無印良品は1643億から6616億、アダストリアは977億から2756億、パルGは699億から1925億になっている。

今後の百貨店の流れを想定しても、都心部くらいしか生き残れそうにない。当然「脱:百貨店」を考えるしかない。その流れで、色の違う企業の買収も進めている。ワールドは子供服の「ナルミヤ」や雑貨の「212キッチン」などを買収し、最近では「ライトオン」も傘下に入れた。古着の「ラグタグ」にも出資している。オンワードも「ウィゴー」や「クリエイティブヨーコ」を買収している。両者とも買収により、企業の色を広げようとしているようにも見える

ただ、新しい風を会社に迎えても、会社の風は変わらないと思う。今まで「小」(被買収企業)が「大」(買収企業)の流れに乗らずに、その個性が変わらなかった例は非常に少ない。今回の買収例で成功しているのは、比較的土俵が近い「ナルミヤ」だけではないだろうか。大手アパレルの社風は絶対に変わらないし、その流れが買収先にも影響する。流れが変わっていたなら、RSCの流れになった時点で変わっている。RSCの流れに乗れなかった現状では、百貨店主導の色は変えられない。おそらく「ライトオン」も「ウィゴー」も、絶対に上向かない。両ブランドの今までのSC戦略での「強み」は消える。今後はRSCからCSC,NSCの時代に変わっていくと思うが、当然その波にも乗れない。

ユニクロに慣れ親しんだ層が、再度百貨店に向かうとは考えられない。大手アパレルに、もうプラス要素はほとんど見えない。百貨店の流れと同じ運命を歩む。

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