カテゴリー: 経営環境 (3ページ目 (9ページ中))

セルフレジの功罪

近隣のSMはどんどんセルフレジに変わっている。よく使っているヤオコーとイオンに限定して推測でのレジ台数だが、曜日によって変化はあるが、平日だとヤオコーは有人レジ5台前後、セルフレジ20台前後の体制、イオンモール内のイオンは有人レジが10台前後、セルフレジ、レジゴー各20台前後の体制のようだ。近隣その他のSMもセルフレジへの移行を進めている。SMはレジ対応にかかる人件費は非常に大きく、セルフレジへの移行は急ピッチになっている。個人的にはイオンではレジゴーで対応しており、スムーズにレジ対応が終わるのと、買い物金額がわかるので便利に使っている。ネットでレジゴーの記事を読んだが、ある程度万引き防止のシステムはあり、さらに子供たちが楽しんでやっているらしく客単価も下がっていないらしい。ちなみにその他の業種でもユニクロ、GU、ダイソーなどがセルフレジをスタートさせている。

ここからはあくまでも私感で書く。SMでは短時間労働者への待遇改善(時給、社保など)による負担が大きくなり、人件費問題は非常に大きいと思う。気になるのは、セルフレジ化により人員を削減しただけでなく、その人員分をどう売場に反映させているのかということだ。SMへの買い物は午前中行くことが多いが、店によって品揃えの充実度が全く違う。特に生鮮品やデイリー食品などの必要な商品の品揃えに差が大きい。つまり、人を減らして経費調整がわかる店と、レジ要員を減らして売場対応を強化している店の差が非常に大きいように感じられる。当然後者のほうが好感度は高いが・・・

結局、経費削減だけでは、効果は短期間になってしまい、逆に従来の営業面にはあまり効果がでてこない。結果として、次年度はさらに何だかの経費削減していかねばならない状況が続く。その経費削減効果を次のステップのプラスに持っていけるかどうかが課題になるのではないかと思う。上記した午前中の品揃えができていないSMが、そのプラス要因で、生鮮売場やデイリー食品が充実したらお客様の信頼感は増す。次につながる。個店でいうと、厳しい店が賃料を下げてもらっても、その削減分は改善するが、削減分をプラスに転じさせなければ、結局は続かないのと同様のことになる。そのプラス要因で他のマイナスポイントを改善していくこと、さらにプラスになる何かを見つけることが大事だと思う。

本当によく言われることだけど、経費を削減して利益が出るのは一過性のことで、そのメリットを生かしながら、営業面でプラスになる戦略を考えていくことが重要なことだ。経費はマイナスすれば0以下にはならない。営業のプラスはずっと青天井かもしれない。

余談だが、先日食品を買いに行く途中にホームセンターに立ち寄った。欲しい商品の形状がわからず困っていて、担当の従業員を呼んでもらった。サイズが明確でなかったので買えなかったが、その女性従業員の素晴らしい笑顔と対応で、あまり利用していないホームセンターだったが「また行こう。」という気になった。

無人化もいいけど「人の力」もまだまだ大きい。

■今日のBGM

ティーンズヤングショップの寿命は短いが・・・

キャラクターを打ち出したティーンズヤングのブランドを多数見てきた。時代の流れに合わせて、大きく伸びて光輝いた時期があったブランドも数多くあったが、今も続いているブランドは本当に少ない。顧客が年を重ねて、離れていくか、その客層と同じようにターゲット年齢を上げていくかしかない。実際残っているブランドは百貨店に出店場所を変えており、客層も当然上がっている。品揃えショップもインパクトが強かったショップは特に続きにくい。ボリュームプライスで値頃を打ち出したショップでも、往年の流れはない。堅調なショップは思いつく中ではハニーズくらいかもしれない。ショップにインパクトを持たせず、売れ筋を細かくチェックし海外の工場でコストを落として作り量販するスタイルを続けている。ティーンズヤングのトレンドは短サイクルで、一挙に盛り上がる反面冷え込むのも早い。

ANAPの社長交代の記事が新聞にあった。20代の女性のようだ。ANAPとはある商業施設のリーシングで、地元FCを介して出店してもらったことがある。何度か創業社長と話した程度で、その社長独自の個性ある商品戦略だったと記憶する。「109」ブームの後半ぐらいだった。その後販売代行をしていた時、イオンモール泉南のオープンでANAPも出店しており、すごい人気で大きな売上と聞いて驚いた。このゾーンがイオンモールに出店するのかと驚いた記憶がある。その後上場したのは数年前に知った。数字を見てみると業績のピークは売上が2010年91億で営業利益は2012年5.7億となっている。コロナ以降赤字に転落し、前年決算は債務超過となっている。出店店舗を見るとイオンモールが多く、アンテナショップはあるが、郊外モールを主戦場にしている。近年は少し気にしてみていたが、営業面ではタイムサービスが多く、それでも販売員が一生懸命売っていたので、ある意味すごさを感じていた。

少し詳しくデータを見ると2016年くらいから、インターネットでの売上が店舗売上よりも大きい。その流れが今回のネット会社のファイナンス契約と社長交代につながっているようだ。しかし「109」ブームからここまで残っていることがすごいし、上場したのもすごい。個性的な社長だったし、そのあとをよく上場し経営してきたと思う。モールに出店した戦略がすごかったのか、仕入れ政策を含むMD能力が高かったのか、スタッフへのマネジメントが優れていたのか。さらには、上場にはどういうビジョンがあったのか。債務超過になった経営よりも、若い社長に変わったことよりも、続いてきた理由のほうに興味がある。ネットの影響の大きさにはびっくりしたが、ネットでもこの客層にこれだけ売れた根拠は何だろうか?

今後は新体制になって、戦略を変えていくのだろう。決してターゲットゾーンのトップブランドでもなく、ブームが下火になっても生き残り、上場までした会社の大きな強みは何だったのかを十分検討してほしい。短命と言われるティーンズヤングショップの次のステップは何かを示してほしい気がする。

■今日のBGM

GMSの終焉 ➁

前回イトーヨーカドーのことを書いたが、ここでは以前も記したが、イオンのGMSについても触れたい。企業の動き方や方向性の違いがあるが、イオンもGMSはもう終わりに近いと感じる。

イオングループの決算説明会の資料を見ると、2024年度はGMS事業で3.4兆円(関連会社込み)の売上で企業での構成比35.4%、で営業利益は283億円で構成比は11.2%となっている。グループの営業利益は金融、デベロッパー、ヘルスウェルスの順で、その3事業でグループの56.3%を占めている。近年は合併を重ねてSM(スーパーマーケット)事業が大きく伸長しており、営業利益ではGMS事業を大きく上回っている。尚、GMS事業のうちSM(食品)の構成比は2023年で63%であり、物販は食品に負うところが大きい。多少の計算方法の違いはあるかとは思うが、ヨーカドーの2021年度の食品構成比は67.1%となっている。以下に述べるテナント賃料の計上次第だがヨーカドーの状況とほぼ変わらない。

決算数値の詳細は、各社違ってくるので一概にジャッジはできない。イオンの大型モール(RSC)にはイオンモールが運営している物件と、GMSであるイオンリテールが運営している物件がある。この営業利益はどう分けているのかわからないが、おそらくそれぞれに計上されていると思われる。この営業収益は大きい。2013年にイオンリテール物件の管理運営をイオンモールが受託しているが、あくまでもイオンモールの収益はPMフィーということと発表されている。この時点でイオンリテールのモール型物件は54モールと記述されており、モール物件自体はイオンモールに移管されていない。とすればイオンリテールのテナント収益は大きく、衣料品売上構成比はヨーカドーより低いかもしれない。

おそらくGMS事業の非食品の構成比はどんどん下がっているだろうし、赤字状況だと思う。イオンリテールの衣料月坪売上は100千以下だと聞く。普通に考えれば商売になっていない。もともとGMSの衣料の儲けの大半は、インナーウェアだった。肌着からスタートしたGMS企業も多かった。利益も取れるし、商品の回転も早い。呉服からのスタートが多い百貨店との違いが現代の商売の違いにつながる。得意なインナーを「ヒートテック」や「エアリズム」のユニクロや他の専門店に奪われ、中心客層の高年齢層までが専門店に目を向け始めたことが、GMSの衣料品からの客離れの要因の1つだと思う。

衣料品は、もともとEDLP(エブリデイロープライス)と言い続けていたのが、どう間違ったのか「イオンスタイル」で付加価値を求め始め、失敗した。ヨーカドーが伊勢丹からカリスマバイヤー?を招聘して失敗したのと同じ道をたどった。

GMSはもう完全に終わっている。イオンはデベロッパー業態のイオンモールも安易なショップMDで頭打ちになってきている。イオンモールの成功のポイントは当初三菱商事と合同で開発運営しており(ダイヤモンドシティ)、流通業以外からのポジションで開発したSC(営利よりあるべき姿を求めた)でスタートしたことが非常に大きかった。近年はその魅力が薄れてきておりテナントMDはららぽーとに後れを取っている。小売業としてのイオングループの課題は、GMSを解体して思い切った収益の構造変革をすることが必要になっている。逆にそれがデベロッパー業であるイオンモール自体の活性化にもつながるかもしれない。さらにSM事業やヘルスウェルス事業の活性化にもつながる。

鈴木敏文氏がいなくなったヨーカドーは、株主である外資が決断を迫った。イオンは誰が創業者一族の首に鈴をつけに行くのだろう?

■今日のBGM

GMS(総合スーパー)の終焉 ①

このところイトーヨーカドーの閉店のニュースが頻繁に流れる。それを見て、妻が「何故、優等生だったヨーカドーがなくなっていくの?」と聞いてきた。去年の4月にも同じような内容で簡単に書いた記憶があるが、現状のGMSについても併せて少し書いてみる。

GMS全盛期はダイエー、ヨーカドー、ジャスコ、マイカル、ユニーが大手5社だったが、ダイエー、マイカルはイオン(ジャスコ)傘下になり、ユニーもパンパシフィック(ドン・キホーテ)傘下になっている。売上は年々減少しており、手元のデータでも2022年のGMS合計売上は2年前の-1.7兆円と凋落の一途の状況となっている。

ヨーカドーのイメージは「優等生」であり、他の「やんちゃ」な関西系GMSとは一線を画していた。本当にお客様第一だった。以前も書いたが本社スタッフのデスクも役職者に向かず、入口(お客様)に向いている。組織図も一番上はお客様、取引先それから店で一番下が社長、取締役会、株主総会だった。接待や贈り物は受け取らず、流通業の優等生のイメージが強い。徹底したデータ管理で利益率も他のGMSの+3%以上だったと記憶する。大学時代の有名なマーケティングの先生が「流通行くなら絶対ヨーカドー」と言っていた記憶もある。

ではなぜ現状があるのか?GMS全盛期は、「集中と分散」でいうと「集中」期だったと思う。「1億総中流」と言われたように、目指すライフスタイルも大きな変動はなかった時代だった。ところが近年は生活スタイルも多様化され、ニーズも「分散」化している。ヨーカドーは「集中」するマネジメントにはたけている。現状のセブンイレブンもそうだ。逆にイオンGはGMS事業以外にも多様化した企業をマネジメントしている。

転機の1つは、「SCの大型化」だと思う。効率重視のヨーカドーはその流れに乗らなかった。その前にダイエーは「自前主義」で出店に投資をかけすぎ(出店場所を借りるのではなく所有する)有利子負債が大きくなっていった。マイカルがマイカルタウン構想で今のモールに近いことをやっていったが、「力不足」と「出店エリアのミス(なぜか海沿いが多く、商圏の半分は海)」で負債が積みあがっていった。その後イオンが「狸が出るような土地」に大型SC(RSC)を開発し、街づくりにつながり成功していく。車社会になって駅前立地よりも郊外の駐車能力が大きく、テナントのバラエティ感があるSCにお客様が流れていった。都市近郊に多かったヨーカドーはその流れには乗らなかった。後に大型SCのアリオを開発するが、やはり「規模」より「効率(利益)」を求め成功には至らなかった。

次に、大型専門店の出現と、新鮮な専門店が増えたことがあげられる。手元数字では2006年ヨーカドーの売上は1.49兆、ユニクロは0.45兆に対して2023年ヨーカドーは1.23兆、ユニクロは2.77兆と売上規模は完全に逆転されている。ちなみにテナントとしてユニクロを積極的に導入したイオンに比べて、ヨーカドー内への出店は非常に少ない。生活雑貨でもニトリや家電などの専門店も大きく伸長した。専門店各社は拡大していくRSCに出店を加速させていった。さらに堅調だった食品(SM)の数字も近年は地元密着型SMや値段志向のSMに流出しつつある。その多様化された専門店の波をヨーカドーは取り込めなかったし、立ち向かえなかった。

もう1点あげるとすれば、グループの位置づけ上位がヨーカドーからセブンイレブンに変わったことが大きい。集中型体質企業では当然好調業態に投資は向けられるし、人材にも比重をかける。ここでダウントレンドだったGMSへのテコ入れは完全に遅れていった。

今回の「衣料品からの撤退」でGMSとしてのヨーカドーはもうなくなった。もう一度今のGMSをリニュアルできるのなら、NSC(ネイバーフッドSC)として新しくスタートはできるとは思う。今後は多すぎるRSCよりNSCが注目されると思う。そのためにリニュアル投資やテナントリーシング力は必要だが、現状の立地や食品のMD力を生かせば「イオンタウン」には勝てそうな気もするのだが・・・

■今日のBGM

売りたい物がわかる売り場

いろんな売場を見てきたが、「売りたいものがわかる売り場」が一番いい売り場だと思っていたし、そのように言って来た。

「売りたいもの」はセールスプラン(販売計画)の中心になる。その商品群を何点売っていくか、それに類似した商品群をどれくらい品揃えしていくか、その商品群でどれくらいの売上を作るか。そしてその商品の特性やアピールポイントをスタッフ全員が共有することで、お客様へのアプローチも明確になる。さらにその商品特性がわかるように演出するし、接客も強化される。

売場を作らせてみると、売場の責任者によって、売場の色は変わる。特に店仕入の店は大きく違ってくる。同じような商品を品揃えしていても店長によって売場の作り方は変わってくる。当然セントラルバイイングで売場作りマニュアルを徹底している店は除いてのことだが、中小小売業は基本的な考えは指示されているが、売場作りは売場スタッフによることが多い。通路幅や、カラーを意識して、整然ときれいな売場を作る店長もいるが、雑でも「これが売りたいのだな」がわかる売り場のほうがなぜか数字はいい。思い入れが売場に現れる。

少し企業が大きくなると、ストアメイキングマニュアルやVMDなどのきれいな言葉が踊りだす。私自身も演出面でカラーコントロールマニュアルを考え色目の並びとか補色や明暗、反対色などを意識したこともある。そもそも見え方で売上が上がるのかは疑問が多い。VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)とは何なのか?VP(ビジュアルプレゼンテーション)とどう違うのか?そしてどれだけ売場に変化ができて、どれだけ売り上げが変わっていくのか?なかなか頭で考えるだけでは数字はとれてこない。

いつも言っているように、小売りの組織では一番現場が優先されるべきだ。本部で考えた演出手法は売場に相容れるのだろうか?さらによくある事例として、外部の会社に任せるケースも多い。そうなると完全に「現場不在」になってくる。本部や外部で提案された見せ方は「きれい」が評価の基準で、売れることに目的がない。

売場は最低限、本部が定めた通路幅や最大陳列量を守って、「売り場の意思」を見せればいい。その表現があっているかどうかは売上でわかる。売る気があれば、ストアメイキングマニュアルなどの知識は、最低限理解してさえいればそれでいい。

大きな会社も一緒だが、売れることが究極の目標になる。「商品を仕入れた人の気持ち」と「商品を売っていく人の気持ち」と「商品をよりよく見せる人の気持ち」が同じであることが一番大切なことだと思う。

■今日のBGM

個店仕入と本部仕入

チェーン店の商品部は渥美先生のチェーンストア理論では、商品開発担当者のマーチャンダイザー(MD)と提供方法の開発をするバイヤー、オペレーションラインを指導するスーパーバイザー(SV)と定義づけられている。理論上はそうかもしれないが、チェーン店は一括で商品を作ったり、仕入れたりする部署との意味合いになっている。

当然、量をまとめて作る事や仕入する事のメリットは大きく、利益率アップの大きな要因になっていく。さらに取引先との信頼関係も強くなる。販売ラインで販売力や商品のチェックができる力をつけることで、商品部スタッフはジョブローテーションとして次のステップになる事はある。半面、現場と本部の温度差が大きく、なかなか相いれないことも多い。

私自身も量販店時代はそういう環境だったが、その後ビブレ業態に移ってからは、個店仕入れに変わりそのメリット、デメリットを肌で感じてきた。店舗数が増えることで、当然全店で同じ商品を提供すべく商品部もあったが、うまく流れているようには感じなかった。のちに、会社を立ち上げ、店仕入でスタートし店舗数が増えて共通の商品を作り始めても同様の感覚はあった。個店仕入れと本部仕入との切り替えが企業の方向性を明確にするうえで大きな過渡期になるような気がする。

ビブレも立ち上げた会社もそうだったが、店仕入れは自分で商売をやっている感が強いので店長は面白く仕事ができていて、モチベーションも高かったと思う。「自分で仕入れた商品」が売れるのは面白いし楽しい。自分で品揃えに合わせて売り場も作っていく。販売計画も立案し数値計画とも整合させていく。ただし会社は成長していくにつれて、課題も増えていく。仕入金額や利益計画や在庫計画などの調整が難しくなってくる。特に店舗数が増えると全店好調というわけはないので、ひずみが出てくる。例えば売れてない店の商品を他店に移動させて販売したり、その商品を値下げしたりして、従来の自店の計画とのずれが出てくる。

企業が大きくなっていくには、商品を一括仕入れする商品部は必ず必要になってくる。さらに店別のデータを分析することによって、的確な商品の数量も分かってくるし、好調店、不振店間の商品の移動も容易になる。ただいろんなケースで店舗への強行的な指示も出てきて、店との乖離も大きくなる。「指示通り売れ」対「売れる商品を作れ(仕入れろ)」の構図は、当然発生するし、事実たくさん見てきた。

私自身の持論は、商品部バイヤー(仕入れ担当者)は店の店長を兼任させるべきだと思っている。その店には店長格のNo2を配置すれば、ある程度仕入れ活動として動ける。同様に商品部の責任者はどこかの事業部長を兼任すればよい。現場での商品の流れを肌で感じたほうがいい。商品担当と営業担当が別々に数字を管理することでひずみが出る。現場と本部の乖離が会社の成長を止める。「店で売上は計上される」つまり現場感を持ち続けることが最も必要だと考える。

営業売上数値と商品売上数値は、一緒になるはずだ。目的は一緒なのに、指示事項が違ってくることが一番危険な状態だと思う。

■今日のBGM

今の商業環境で、商売を始められるか?

昔、叔母と叔父が西宮で、それぞれ豆腐屋をやっていた。忙しくて年末には毎年両親も手伝いに行っていた。大豆から豆腐を作ってそれを売る。焼き豆腐はバーナー?で火を入れる。所謂製造直売で儲かっていたように記憶する。自転車で売りにも行っていた。土日も大変だと思ったが、商売は金になるものだと思っていた。

自宅で商売をする。つまり家賃はかからない。原価も安いので儲かる。うまいので売れる。さらに家族経営なので人件費もかからない。(厳密にはかかっているが・・・)商売の成り立ちだと思う。

今豆腐屋をやっていると、どうなっているか?SCで商売しなければ人は集まって来ないので、入店すると家賃は高い。そうなると家族経営は難しくなり、人を雇う。SMなどとの競合が厳しく値段競争に負けてしまう。この流れで個人経営はどんどん減っていく。さらにずっと味を求めてやっていても、商店街がなくなってきたのと同じタイミングで寂れていく。

現実はどうか?SCの数も過剰になり、乱立し、より集客力のあるSCに入店するには、敷居がどんどん上がってくる。入店するのに敷金や内装管理費やその他多くの経費が掛かる。当然チープな内装では入れない。出店経費は非常に高くなる。SCも集客を上げるために、「売れる店舗」をリーシングする。当然「売れる店舗」の条件は優遇される。そうなれば他の店舗に当然しわ寄せがあり、どんどん出店のハードルが上がる。つまり利益も上げていけるMDが必要になる。

衣料服飾品においても、現状のお客様の流れはボリュームプライス志向が強まっている。ハイエンドは少なく、その購買場所も限られてきている。価格志向に走れば当然商品を企画して大量に作っていかねばならない。国内ではコストが合わず、諸経費が抑えられる海外で生産する。そんな中でも円安が続き、コストも上昇する。売れる商品を作るには大量の購買データも必要になる。つまり大企業シフトはますます強まる。近頃は商品を作って卸していた企業が、自ら出店するケースが増えている。つまり「買い」での商売は厳しくなっている。

単店で戦えるとすれば、そのエリアでは「そこでしかない物」を売るしかない。ただ「そこにしかない物」は仕入なら原価は高い。利益対策も考えなければならない。卸企業の戦略としても1つの店舗(会社)に集中して卸すことはしない。ローカルチェーンでブランド戦略をしている店がこのセグメントに入る。実際そういう店は大型モールにはいくつか入っている。

今の商環境で、個人もしくは小資本で、商売を立ち上げても絶対成功しない。もし成功するビジネスモデルがあるのなら、「人」「物」「金」の回しやすい企業と共同で立ち上げていくしかないように思う。小売業はもう「とりあえずスタートする」スタートアップ事業ではなくなったと思う。

今日のBGM

大企業の社長は中小企業の社長をできない

このごろ、この類の内容が多くなっていて恐縮するが、やはり大企業の社長や新聞各社が他人事のように言う「景気の回復は中小企業次第」というコメントには大変憤りを感じている。今回も同様の内容になっていることをご容赦願いたい。

先日、昔の取引先の社長と飲んでいるとき、その社長がお盆休みの案内を出したら、「長い夏休み、どこか行くのですか?」と取引先の店長に聞かれたという。店長は今年の盆休みは特に長いので何気に聞いたようだ。その社長は、「商品の発送ができないので休みにしただけで、お盆期間も毎日仕事する」と答えたそうだ。実態は間違いなくこういう状況だと思う。従業員は休ませても、社長は仕事を普通にやっている。

以前も書いたが、中小企業の社長にほとんど休みはない。後方各部署に責任者と担当がいて個別にマネジメントしている組織になっている企業は数少ないと思う。私自身、売上1兆円超企業の部長職も経験し、それはそれで忙しかったが、20億を超えたぐらいの中小小売業の社長のほうが間違いなく忙しかった。

小売業は人を雇うにもまず売場が中心になる。売場が売上げを作ってくるので、売場の人員の確保が優先される。現状の時給アップや、土日勤務の労働環境を考えると小売業に容易に人が集まるとは思えない。本部に人を配置するには店の体制が安定した後になる。

小売業の後方業務は、まず経理がある。立ち上げた会社では全店の伝票(仕入、返品、値下げ、移動)の本部控えを送付させていた。本部でも各店の数値管理表(売上、仕入れ、在庫、利益のデータ)を作成しその伝票類と毎日の売上を管理していた。月度が終わるとその仕入データを取引先別に計上して、支払いの基になる帳票を作成する。それをもとに翌々月の支払日に支払っていた。その支払いもパソコンで約70社ある取引会社に振り込む。1回の振込みも1億以上にはなる。その他本部や各店での経費や従業員の経費も集計し振り込む。

人事的な作業もある。給料を確定させなければならない。各店からのタイムカードや人事関係の各種書類をチェックして給与を作成する。出勤簿への記入や有休の確認、残業時間のチェックも当然する。毎月入退社数は5名以上入るので、毎月一度はハローワークに、雇用保険の加入や離職票の提出をしに行っていた。そして給与も明細を作って店に送付し、給料日に振り込んでいた。出勤簿や給与台帳は重要で、コロナ時ややこしい雇用調整助成金の申請にも必要だった。業績評価も当然のようにやっており給料改定も行う。当然人事台帳の更新もする。

仕入と人件費を確定させて各店の数値を確定させ、各店の営業月報や損益月報も作成し、店長にはフィードバックしていた。当然会計ソフトや、給与ソフトは使っていたが、元のデータ作りは労力が必要になる。その他営業系のデータ管理もある。細かい仕事はいくらでもある。最多27店舗の管理業務を本部スタッフ、社長を入れて3名でやっていた。これに加えて月1度は全店巡回していた。もっと楽なシステムを導入することはできるだろうが、全体の仕組みを変えるにはもう少し規模が必要だった。店舗数を増やすには投資が必要になる。損益が安定していなければいい融資を受けられない。ずっと右肩上がりではない。

自画自賛するようだが、よく働いていたと思う。上場企業の社長はこんな仕事はしないと思うが、おそらくできない。では私が上場企業の社長はできるか?企業基盤がしっかりしていれば、おそらくできる。

■今日のBGM

バーゲンでもあまり値段が下がらない

8月はできればお盆までに夏物商品をなくす目途をつけたい。お盆すぎると集客はぐっと落ちるので値段を下げてでも売っていく。商品をなくしていく。盆過ぎには初秋物が投入され、売場の色を秋色に変える。昔の販売計画はこんな感じだった。

8月に入ったが、SCの各店の売場はあまり乱れていない。なぜか年間通して割引している店はあるが、この夏物最終処分時期の売場のイメージはない。「いい買い物をした」のイメージがだんだんなくなっている。

いつ商品をなくしていくのだろう?ユニクロを中心としたSPA型の小売業が増え、大きなセールに比重をかけてない。52週の販売計画の下、在庫状況を見て細かなセールを増やし、商品をなくしていく体制に変化している。それに合わせて取引先の体制も変わっていったのかもしれない。

ただ、そういう企業体質の会社ばかりではない。本当にやるべきことをやっているのかという疑問がある。上場会社の決算を見ると、利益率を上げることを優先していると感じることが多い。回転率は鈍化している。商品動向に基づいて、商品を処分しているのだろうか?「品揃え失敗」で利益を落としている企業はあまり見当たらない。「1月、7月は売上を確保して利益率は落とすが、利益額でカバーし、在庫は減らしていく。2月、8月は減った在庫に先取り商品を入れて利益率を回復させていく。」という昔の商売はなくなってきたというのだろうか?在庫高によって利益率が変動していくような細かな予算を組んでいないのではないかと感じる。季節商材が少なくて、商品回転率が年2回転と低くても、残商品を年2回はなくしてしまわなければならない。商売が攻撃的でなくなったのかもしれない。逆にユニクロのほうが、あれだけ商品を自社で作って利益率51.9%(23年決算数値)は十分攻撃的な結果かもしれない。

売上予算、利益予算、在庫予算、それに伴う仕入予算を細かくボトムアップで作成するべきだと思う。当然修正は会社トップがするが、トップダウンでの予算作成ではひずみは大きい。店に予算責任への比重を上げることによって、店の動き方は変わる。本部主導になればなるほど店の動き方は鈍い。ユニクロのように商品の動向ジャッジを数字で判断できる状況にないのなら、店の判断で数字も変わるようにしたほうがいい。「売り場の意思」が見えたほうが店は勢いづく。

SCの8月の売場を見ていると「欠点を隠した優等生」のようなショップばかりのような気がする。「必死感」もあったほうがいい。そういう感覚が一番お客様に伝わると思う。

■今日のBGM

小売業の本部機能は店のためにある

小売業の後方部隊はできるだけ小さくすべきだというのが持論だ。特に営業系の本部組織はミニマムにすべきだと思う。会社規模が大きくなってくればくるほど、本部要員が増え、本部要員が増えれば増えるほど現場に余計な仕事が増える。これは間違いなく起こる事実だ。規模が大きくなると全体の把握がしにくくなり、その確認として会議が増える。当然会議が増えると資料が増える。小売業の資料は現場の数字が中心になり、その確認作業として現場への資料作成を依頼する。

GMSの店長時代、日曜の夕方になるとスタッフルームに売場の責任者が集まってきて書類作成をしていた。月曜日に本部の商品部の会議に必要なデータを作成し送付していた。売上より必要な書類を優先してしまう風土になっていた。その後、本部へ赴任して本部人員削減を言い続けたがなかなか組織は変えられなかった。

本部は店のためにある。店の要望を聞いて動くべき場所だと思う。本部のスタッフがいてよかったという風土にする必要がある。本部として商品を作るとき、仕入れるとき、店の状況がわかって、店のニーズがわかって仕入れているか?店に行って店と同じ立場で販売をしているかどうか?そこで気づいたことを売場に反映しているかどうか?売り場のレイアウトや演出は的確かどうか?販売体制に問題はないか?店と意見を交わさないといけない。

本部は偉いと思われがちだ。全然偉くない。店が一番偉い。店が動かなければ会社は成り立たない。ただ本部は店がわからない商品動向の変化や、トレンドの変化などはどんどん発信しなければならない。それも本部で発信するのでなく、現場で指導して実践して初めて情報が広がっていくことに気が付くべきだ。余談だがイトーヨーカドーの会社の組織図は最上部に店が並んでいたと思う。組織図の逆三角形の下に社長、取締役会、株主があった。「店=お客様」が最上位の考え方だった。

どうすればよいか。本部は店長を数年経験したぐらいの若いスタッフを配置すべきだと思う。できればジョブローテーションをして3年くらいの間隔で交代させる。店舗数が少なければ店長兼任が最も望ましい。現場の感覚が必要だし、若いスタッフだとベテランからの意見にも耳を傾ける。現実的には企業は安定感が欲しいのでどうしてもベテランを本部スタッフに登用する。そうすることによる弊害が大きい。若手は意見を言いづらいし、仕事の流れに変化が出ない。(従来の流れを踏襲する。)新しい感覚が生まれない。

経営していた会社では、営業面の本部要員は配置しなかった。管理職はあったが店勤務にしていた。できるだけ現場と本部の距離を作らないことが大事だと思っている。管理職が店を巡回するときは店と話し合い、必ず指示できるような体制にした。本当に営業の本部機能が必要になるのは40店舖くらいになるときだと思う。その時は全体で商品の自主MDができるし、営業面での企画もできるようになる。そしてそういう時でも本部よりも店を優先し若手をジョブローテンションの下、本部に配置したい。

本部と店の温度差はできるだけ少なくなるようにするべきだ。

■今日のBGM

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