カテゴリー: 経営環境 (7ページ目 (7ページ中))

もうナショナルチェーンはできないのではないか?

小売業界、ファッション業界に新しい風は今後吹くのだろうか?ローカルチェーンはナショナルチェーンになれるのだろうか。ユニクロは山口県宇部市、アダストリアは茨城県水戸市、ハニーズは福島県いわき市からスタートしている。

地方で成功している店はある。その店が全国にはなかなか波及できない。ブランドを販売してそれを軸にMDを組んでいる店が多く、エリア間のバッティングがあり、エリアを超えると思ったようなMDができないことが要因になる。ジーンズ老舗専門店発祥のセレクト店にこの傾向は強い。DCブランドブームの時も、大都市以外はFC店が主流でエリアごとにFCのオーナーがいた。アダストリアはジーンズ専門店がスタートだったし、ユニクロはVANショップをやっていたと聞く。

ナショナルチェーンへの転換の最大の要因はブランドMDから自主MDに方向転換することだと言える。

次のステップはナショナルチェーンとしてのビジネスモデルを確立できるかだと思う。ローカルチェーンはブランドMDが多いため接客重視で、プロパー販売をすることが基本になる。必然的に顧客管理をして、顧客の顔を見据えた仕入れが必要になる。ナショナルチェーンは当然客層の幅を広げ、組織を作り、管理面、商品面とも本部機能を充実する必要がある。商品は当然自主MDでセントラルバイングのウエイトが上がるし、それに伴い管理機能も万全を期す必要が出てくる。そして何よりもそれを推進する資金調達が必要になってくる。

商品原価を下げるためには、商品を作りこむ必要があり、利益率を上げるにはそのMD商品を売り込むことが必須になってくる。原価を下げるためには取引先との別注が必要で、その最低ロットは最低1型200~300は必要になってくる。さらに自社で作りこむにはそれ以上の数量で作りこまねばならない。ということはそれを売るべき場所、さらにはきちんと消化できる店が最低30店ちかくは必要になる。円安の影響で海外生産でも商品原価を下げにくい状況にもある。

さらに、SCも成熟期から衰退期の過渡期で、コロナ以降は特に賃料収入は維持していきたい方向にあり、将来を見越しての賃料優遇も考えにくい。スタッフの人件費も高騰が続いている。

株式上場を目指した岡山から出たストライプインターナショナルも赤字決算が続いているし、タカキューやライトオンなど上場企業でさえ厳しい数字になっている。ナショナルチェーンを目指すより、安定したローカルチェーンのほうが居心地いいかもしれない。

■今日のBGM

世間が思っている以上に中小小売業は厳しい

岸田首相が「賃金を上げる」、サントリーの新浪社長(経済同友会代表)が「給料は上げられる」という記事を見るたびに、そんなに簡単なことかと思うし、逆に今までやってきた商売がいかに儲からないのか、努力不足だったのかと考えさせられる。ただ会社数で99%を占める中小企業社長は「じゃお前がやってみろ」と思っているのではないだろうか?内部留保など中小企業ではほんの一部の企業しかないと思うし、仕組みも作っている途上の企業は、なかなかの難問題だと思う。

特に中小小売業の厳しい環境は続く。労働環境の問題や給与課題で人材不足は続くし、国外生産の比率が高い業界は円安では商品原価が上がり続ける。そういう環境下で価格は上げられない。まだまだインフレについていける社会ではない。

私事でいうと、以前やっていた会社でコロナになって政策投資銀行から数億円、取引銀行3行からあわせて数億円の借り入れをした。7年返済で銀行は即返済、政策投資銀行は2年目からの返却の契約だった。過去赤字決算はなく順調な会社だったし、何年かは決算賞与も出した。ただコロナで数億円の負債を負うことになった。「ゼロゼロ融資」とは言っているが、借金に変わりない。返さなければならない。経営の失敗で負った借金ではない。その借金で数年間(返済期間)は前を向いた経営はできなくなる。コロナ期間は当然苦しく、すぐには立て直せない。コロナ後も背負うものが多く、昔のように簡単に前を向いた投資もできない。

能登地震の被害を見ていても、いろんな会社、商店や飲食、美容院などが大きな被害にあっている。ここから立ち直るには大きな力がいるし、当然金もいる。能登の人の責任など何もない。ここでも「融資する」になれば、もうやる気力もなくなると思う。国が資金援助しなければ、再興はできない。報道によると国からの補助金は最大300万円とのことだ。東北地震の前例からこの金額になっている。何度も言うが、東北も能登も被災者の責任は何もない。余裕があるらしい経団連や同友会への参加企業は、返済なしの資金援助でもしたらどうだろうか?国もその資金援助分は非課税にするとか策はある。

厳しい環境の中、必死になって収益の改善努力をしている中小企業は。全会社の99%を占めることを再認識すべきだと思うし、国やリーディングカンパニーたる大企業はそこへの投資、資金援助を積極的に行うべきだと思う。

せめて過去10年で収めた納税額ぐらいの金額を国は援助金として出せないのだろうか?

少し愚痴も入った・・・。

■今日のBGM

アウトレットは完全に飽和状態

千歳アウトレットモール「レラ」が終了する方針とのニュースがあった。昨年末には福岡の「マリノアシティ」も建て替えの検討に入ったとのニュースがあり、昨年6月には「八ヶ岳リゾートアウトレット」が閉鎖された。三菱地所の「プレミアムアウトレット」、三井不動産の「アウトレットパーク」に続いて大手イオンが「ジアウトレット」として参入した北広島、北九州も空床が目立ち、厳しい状況が伝えられている。

以前も書いたと思うが、PM会社にいた時、当時のチェルシージャパン(現三菱地所・サイモン株式会社)に開発の話をしたとき(千歳レラだったような気もする)「日本にはアウトレットが成功する場所はそれほど多くない。」と言われた。現在アウトレットは「プレミアムアウトレット」が10か所、「アウトレットパーク」が13か所「ジアウトレット」3か所と大手だけでも26か所もある。

そもそもアウトレットは各小売業、各ブランドの在庫過多商品を売り切る場所で、掘り出し物的商品や売り切ってしまいたい商品の値段を下げてなくしていく場所だった。

小売業は当然利益を追求する。商品をだぶつかせて、その商品の値段を下げれば利益率が下がっていく。利益を追求するには、売れる商品を売れる量作るのが基本になってくる。つまりアウトレットに回す売れない商品が多ければ、会社の利益は下がっていくし、当然プロパー店(一般店?)の売上も下がっているということになる。だが、売れ残り商品が多くないとアウトレットの商売は成り立たない。売り上げが悪いと言われている会社もある。ただアウトレットに商品を移して売ることによって、利益率が下がるリスクも出てくる。近年は利益率を優先する会社が増えてきている。

一般的には好調企業は、アウトレットに流れる商品は少なく、不振企業はアウトレットに移して値段を大きく下げるには、利益が下がるリスクを伴う。

その一方でアウトレットモールは増えてくる。そうなれば当然商品の魅力度が下がってくる。大手セレクトではアウトレット用のブランドを作って売り上げを上げ、さらに利益率の低下も防いでいる。ただ、もうすでにそれをお客様は見抜いている。さらにプレミアムブランドは出店しないか立地を選ぶ。つまり魅力的なショップが減ってきている。アウトレットモールの乱立は魅力をどんどん下げている。

今後は、間違いなく淘汰が始まる。もしくは門真のららぽーとで応急的に始めたRSCへのフロア単位での出店が出てくるのではないか。(門真は鶴見アウトレットの受け皿としてのリーシングがもたらした。)さらに最低限SMは併設しなければSCとして成り立たなくなるかもしれない。

ますますアウトレットモールのショップMDやアウトレット商品に魅力はなくなっていくと思う。

■今日のBGM

コロナ明けの12月商戦は?

年末年始は商売では大きな売上を確保する時期になる。流れの変化は当然あるがコロナ明けの12月、1月の数字は気になる。

小売上場企業の開示された12月売上速報を見たが、既存売上数値でいうとABCマートが昨対110.3%、アオキが105%と+5%越えは2社。ユニクロは84.6%と大きくダウンしている。ユニクロは少し値段が高めに感じたのだが、ワールドワイドで考えている会社なので問題は大きくないかもしれない。ただ90%割れは厳しい数字。他ではアダストリア101%、しまむら102.4%、ニトリ98.4%と前年並みくらいが流れのようだ。厳しい流れは上記ユニクロ以外ではライトオン83.7%マックハウス81.4%と、くしくも指摘してきた商品回転率の悪い会社。

根拠はないけどコロナ前からの既存店売上前年比を掛け合わして、2018年を100として12月はどうだったかを計算してみた。(当然、その間のイレギュラーがあって信頼できる数字ではないが、傾向はわかる。)コロナ前から105%以上の企業はABCマート131.1%、アオキ112.9%、ハニーズ110.0%、しまむら109.5%、西松屋109,2%の5社。調べた中のワースト5はライトオン57.9%、マックハウス71.9%、タカキュー76.6%、ビレッジバンガード77.6%、チヨダ84.2%。

靴業界はそこまで詳しくはないが、ABCマートはビジネス離れやスニーカー好調の流れでスポーツの強みを生かして、ブランド戦略とプライス戦略で好調を推移していると思う。そもそもサイズが細かく在庫過多になりがちな業界で、このプライス戦略をとれて利益を確保し続けているのは大変なことだと思う。大きなロットの商品MD戦略が当たっていると思う。アオキはカジュアル路線が好調のようだ。しまむら、西松屋、ハニーズはこのブログでも分析しているようにチェーンストア理論に基づいたMDがインフレの流れの中、ニーズとマッチしていることが要因だと思う。

逆に指摘してきた、ライトオン、マックハウスは非常に厳しい数字になっている。特にライトオンは相当厳しいのではないか?ニュースリリースを見てもシンジケートローンの対応や内部統制システムの改定など少しあわただしい。マックハウスは親会社のチヨダも厳しいので大きな変革が考えられる。タカキューは大胆に店舗を閉めたのでここからどう動くのかが注目だが、イオンGでもありフォローもあるかもしれない。ビレバンは全く想定になかったが、ドン・キホーテとかぶってきており、個性化と顧客の低年齢化が課題かもしれない。

年明けは、元旦が幸運日で日が良かったが、能登地震も重なり、不安な正月を迎えた。

今年も変動の年になりそうな気がする。

■今日のBGM

商売は数字

常々、バイヤーよりディストリビュータが大事だと言っている。管理職は数字で話をしろとも言って来た。小売業は感性のウエイトが高いが、やはり商売は数字に行きつく。

●利益率 利益高/売上高×100

売上高―売上原価=利益高 

売上原価=期首原価在庫+仕入原価―原価在庫

原価在庫=売価在庫×原価率 

原価率=(期首原価在庫+仕入原価)/(期首売価在庫+仕入売価―売価変更額)

・・・利益率の簡単な計算式になる。この計算式で会社から与えられた予算利益率との比較で数字をコントロールする。さらにこの計算式で仕入れ管理(仕入額、仕入原価も逆算できる)もできる。

●限界利益率 限界利益率=限界利益高/売上高×100

限界利益高=売上高-変動費(売上原価+変動経費)=利益高―変動経費

●損益分岐点 固定費/ 限界利益=固定費/(粗利益-変動経費)

・・・与えられた部門の損益が0になるときの売上高

●労働分配率  人件費/荒利益

・・・40%前後が妥当 50% 以上は赤字

●商品回転率  月度 月度売上/平均在庫

●在庫日数   月度 30日/月度商品回転率

●仕入れ債務回転期間 仕入れ債務/1カ月当たりの売上原価

・・・一般的には40日以下だが小売業は60日以下くらいまで

・・・在庫日数と債務回転期間で資金繰りの状況がわかる

簡単に小売業で必要な数字の計算式をいくつか記したが、管轄している店や部門の数字はどうなっているだろうか?期間単位で数字のチェックは必ずするべきで、そこで営業の方向性を決定させる必要がある。

さらに、経営数字と同様に、商品データの数字も一定の基準があるべきだと思う。それによって商品の売り方(レイアウト、演出)や、集約、処分(プライスダウン)のジャッジが必要で、そこには感性(感覚)を加味することは必要ない。

経営的観点での数字については各社の基準があるので、その基準を明確にして店長以上の管理職には徹底させる必要がある。仕入れるだけならだれでもできるし、商品を作るのもそんなに難しくない。何を基準にして作るか、どの数字に合わせて仕入れるか、それを理解していなければバイヤーはできない。

感性だけでは商売はできない。

■正月の酒(最高にうまい麦焼酎 是非!)

厳しさが増しそうな年

年明けから能登地震や空港事故もあり、あまり明るい年明けではないが、年末年始の商戦はどんな流れなのだろうか?年末にいくつかのSCに足を運んだが、バーゲンに入ったという印象はあまり感じなかった。年末に悲観的なことを書いたのでこの流れで小売業はどうすればいいか考えたい。もし会社を続けていたらどうしていただろうか?

一番大きなことは人事面をどう変えていくかだと思う。

小売業や飲食業は所謂労働集約型産業で、世の中の「働き方改革」の流れになかなか乗り切れずにいる。つまり働く人が集まらなければ成り立たない産業で、さらに立ち仕事で土日は休みづらい。ちょっと逸れるが、国が推奨することは、「働き方改革」だけでなく日本中に1%しかない大企業に向けたもののような気がする。それをすべての企業で取り組むことは無理がある。パブリシティ効果による「働き方」については世間の注目度は高く、ますます小売業に働く人が集まらないようになっている。小売業の中では「品出し」「検品」「レジ業務」など、まだ作業計画がわかりやすい仕事はそれでも給与を上げることによって集まるが、「接客」「演出」などなかなか具体的作業が見えにくい仕事には集まりにくい。

まず、どうやったら小売業に人(販売員)は集めることができるか?集まらない原因は何だろうか?大きな原因は土日の休みづらさにある。お盆や年末年始も同様のことがいえる。私たちが入社した時はそれを十分に理解していた。ただ今の労働環境からみると大きな障壁になっている。

まず、給与規定を変更して日曜は月2日休むことを恒常化し、さらに「日曜手当」として日祭日は出勤日数に応じて手当をつければどうだろう。日祭日に働くことがマイナスではなくプラスに感じる労働条件に変えてみる。それによって結果的に少しでも給与を上げていくことができる。

次に必要なのは、社員の視野を広げることだと思う。小売業の社員は「売ること」が使命で、「売ること」により会社がどう変わっていくかがあまり見えてない。「売ること」の楽しさ以外に会社としての仕組みや、商売のやり方についての理論が理解できていない。これが理解できないから先が見えてこない。

社員教育を重点項目にする。「会社が目指すもの」を意識させる。さらに商業理論を簡単に教える。そして問題解決への手順も全員で話し合う。会社が目指すものとは会社の理念のことだ。この会社はどういう目的で作られたかを理解させる。これは全員で意思統一すべきことだと思う。

さらに商売の仕組みを考えさせる。金の流れや、利益の仕組み、一般的に言われている商売のポイントを理解させる。「売り上げ」や「利益率」だけでない商売の仕組みをわからせる。私自身もイオンの「経営者研修?」で漠然としていたものがはっきりした。損益計算書だけでなく貸借対照表にも目が行くようになった。

最後に評価基準をわかりやすく全員に示すことだと思う。業績評価でいいと思うが、その評価基準の再設定と、個人計画の提出とそのフィードバックを明確にする。

厳しくなりそうな時期だから、一度徹底すべきこともある。モチベーションを上げることも必要だ。こういう時期だからこそ人事面の見直しが最も必要だと思う。

■今日のBGM(自分にとっての音楽の原点)

小売業の2極化

そこまで景気動向に精通してはいないが「円は戻ってまた高くなる。」ということはもうないのではないかと感じる。経済評論家でなくてもわかるような事態だと思う。

円安が続いている。国債を発行しすぎているので金利を上げると、国は金利負担が増す。さらに借入金の金利も上がり、一般市民にも影響が大きい。円安で輸出企業は儲けている。代表的な業種は「車」関連があげられる。ただ流れは電気自動車に変わってきている。今の状況では「車」業界も完全に弱くなる。さらに電気に変わることでガソリンでのサプライチェーンは大きな転機を迎える。それに代わる輸出産業が出てこなければますます流れは悪くなる。さらに日本は資源を持っている国ではない。資源を持っている国への依存度が高い。

物価の高騰に合わせて、「給料を上げていく」と国は大号令をかけるが、その原資はどこから来るのか?労働者の70%を占める中小企業従事者はどうやって給料が上がっていくのか?

そういう中で小売業はどうなっていくのだろう?限られた百貨店でインバウンドや高所得者の「貨幣より物」化で増収は起こっている。逆にしまむらや西松屋のように低価格を打ち出している専門店の伸びが大きい。SMもオーケーやロピアのように値段での打ち出しが強い店が好調だし、イオンも値下げを打ち出した商品が増えてきている。ファッション専門店も低価格帯のユニクロや、若干そのゾーンに引っ張られる流れのアダストリアが中心になっている。

上下に引っ張られて、真ん中が希薄になってきている。前回書いたきっかけになったサマンサタバサの記事の中にこう書かれていた。【「中途半端なブランド」を一体どの層が支持するのか。「どっちつかず」ということは「どの層も支持しない」ことでもある。】記事の内容はもうすでに周知されているようなことだったけど、このコメントは鋭いと思う。

中流を意識したSC特にRSCはさらに厳しくなると思うし、その収益のマイナス分をテナントに向けると、テナントは動かない。テナントは無理して出店できないので、出店する場所や機会が減ってくる。特にコロナの痛みが大きい中小企業はさらに厳しい。低価格志向のテナントが増えるし、好調テナントの大型化は進む。どんどん悪循環が続きそうだ。

厳しい時代になってきている。

■今日のBGM(年越しにyoutubeででも聞いてください。心が洗われます)

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