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厳しさを増す中小小売業

先日、友人と話していて、「人がいな過ぎて、まともに商売ができない」ということを言っていた。

中小小売業には販売スタッフが全く集まってない。データでは小売業含めての中小企業の65.6%が要員不足らしい。ましてや土日勤務の小売業には多少時給を高くしても集まらない。レジ業務や品出しに加え接客もあり、業務内容も多岐にわたっていることも原因のようだ。当然、時給も上げているし待遇面は配慮している。ただただ、集まらない状況のようだ。その友人も、エリアを統括するマネージャーや近隣店舗スタッフが欠員補充に入っている状況と言っていた。

要員不足から、売場も乱れていく。当然やるべきことができないのでそうなっていく。そうなると、売場は安易な方向に進んでいく。接客(ちょっとした声掛けも含む)に手が回らなくなり、セルフで売れる商材が増えてくる。セール商材や値頃感を打ち出した商品のウエイトが上がっていく。安易に売れそうな過去品揃えしてなかったターゲットの商材にも手が出る。

ここで、一番危惧することは「企業コンセプト」が崩れることだ。厳しい状況になった現状、もう一度そのコンセプトを話し合い、変更していくのか、継続するのか決めるべきだ。これが企業の今後について一番大事なことだと思う。

かつて、過去の経験からの成功モデルを想定し、小売業を立ち上げた。その後再度、コンセプトや方向性を見直した。企業のミッション(存在価値)を設定し、そのターゲット商圏を分析し、そこに向かう分析をし、成功要因を導き出したつもりだった。具体的数字にも落とし込み、目標も定めた。さらに少し伸び悩んできたときには、時間をかけて、昔研修で学んだいろんな角度で戦略立案してみた。それにより、立ち上げた事業の成功には向かっていけると感じた。だが、コロナで木っ端みじんに吹き飛んだ。

厳しい中小小売業は、そういう企業としての方向性を再度きちんと整理していく必要があるのではないかと思う。そして、その方向性に沿って戦略をジャッジしていく時期だと思う。

さらに、こういう時期だからこそ、各店の棚卸も必要だ。損益を考えて継続するべき店かどうか全店チェックする。要員不足の店が、今後再びきちんとした要員で商売できるのか?そしてその店は、きちんと収益を出していけるのか?もし、将来的に大きく収益が見えない店があれば、撤退して、人を異動させるということもできる。当然各店の償却残の金額や、違約金、撤去費なども考えてジャッジしなければならない。ドミナントできてない店は特に注意が必要だ。マネジメント層がデータをまとめて、再度各店の方向性を明確にする必要がある。

企業は「人」「物」「金」とよく言われる。「物」は「金」があれば解決するし、「金」は財務内容次第では手配できる。「人」はどうしようもできない。「人」抜きで拡大して失敗した会社を多く見てきた。これだけ「人不足」の状況が続く中、一度立ち止まって事業としての棚卸をし、その結果として前向きに半歩後退するのも正しい選択かもしれない。

■今日のBGM

ポイント20倍

もともと買物は好きだし、食品売場も好きなので、デイリーの買物にはほとんど同行している。大変失礼なことではあるが、イオンへ行くときは5%オフの日とポイント10倍の時だけに限られている。それでも、ポイント10倍の日はかなり多いので回数は多い。そんな中、今月は11日~14日までイオンペイでの買物でポイント20倍となっている。前回も8月にあった記憶があるので決算前にやるのかもしれない。

ポイント20倍だと具体的には10000円の買物に1000円のポイントが付与され、そのポイントは後日使用することができる。一時的な割引とは違うが、1000円引きとほぼ同じ感覚と捉えられる。そのポイントを使うことで再来店を促せるし、固定客化にはつながる。

少し仕組みを調べてみたが、複雑だった。10000円の商品をポイント分1000ポイント(20倍)付与で売った場合、ポイントは将来使える価値として計算する。商品の売上は10000+1000=11000となり、現状の価値10000が10000×(10000÷11000)≒9090で売上は9090円となる。7掛けで仕入れたとすれば原価は7000なので利益額は2090と減る。そして本来発生する利益額との差3000―2090が契約負債としてBS(貸借対照表)に残る。そして後日1000円(原価70%)の商品を 全額ポイント(1000pt.)で払ったときに、売上910(BSの負債の額10000-9090)でその原価700となり利益は210となる。つまり合算すると10000円の商品の原価は7700となっており、利益額は2300で当初の利益額から-700の実績となる。簡潔に言うとすれば、通常販売なら11000(10000+ポイント分)売上原価7700、総利益3300(30%)の費用を分散させることによって、売上10000、売上原価7700、売上総利益2300(23%)とさせている。これにより、一気に利益をマイナスさせなくてすむようにしている。ただ、利益は当然マイナスする。

では、その原資はどこから出ているのか?明確にはわからないが、20倍ものポイントを付与する際は、基本ポイント(1倍)はイオンリテールが負担し、イオンペイの利用促進の目的の際はイオンフィナンシャルサービスが広告宣伝費として負担すると書いてある記事もある。どこが負担してもイオングループなのだが、一番傷が浅いのは上記した経費処理ではないだろうか。ポイント分をすべて経費で計上すれば非常に大きなものになる。どちらも収益面でのマイナス要素にはなるが、おそらく、金をイオングループで落としてもらおうというグループの政策だと思う。グループの収益構造を見れば、金融事業がリーダーであり、従来の中心事業の小売りが手段になっているようにも見える。そう考えれば利益貢献が小さいイオンリテールの存在価値もある。GMS事業をやめない理由にもつながる。

こういう販促とその実態を見ると、中小小売業はもう完全に大手企業には太刀打ちできないのではないかと考えてしまう。ただ、そうなれば大手企業の中で小売業はだんだん縮小されていくのかもしれない。マルイがフィンティック事業(金融情報業)で営業利益の8割を占め、小売業がなくなりテナント収入中心になっていったのと、同じトレンドともいえる。打算的に考えると、イオンも今後のステップとしてはGMSをやめて、イオンモールでのテナント化が普通の流れになるが、そうならないのは、まだまだ金融事業の規模が目標に届いていないということかもしれない。それとも、GMS創業者の意地なのか?

■今日のBGM

コーエン売却③ ・・・よほど切り離したかった?

数日前に、ユナイテッドアローズ(UA)のジーイエットへのコーエン売却について、少し詳細がわかる記事が出ていた。

コーエンの前年の業績は店舗数76店舗で、売上高約104億(前年比109%)、営業損失―3.6億、純損失―6,7億円だったようだ。なお総資産は約28億円、純資産は−38.1億円の債務超過状況と記事にはある。さらにUAはコーエンに対する約57億円の債権放棄を前提としている。なお、譲渡金額は2億円となっている。

この状況で数字だけを見ると、計算上負債は66億円強となる。そして資産をすべて売却しても債務が38億強残っている。だがUAの債権放棄を加味すれば負債は9億円に減少し、純資産は19億円(57億―38億)になり、資産もプラスに転じることになる。つまり債務超過ではなくなる。UAは57億円の債権放棄をしても切り離したかったということにもなる。

当然、UAやコーエンの担当者は誰も知らないし、両社の実情も全くわからない。その上で、気になったことを書いてみる。

ジーイエットの第3四半期決算を見てみる。金融投資事業が入っていて、暗号資産の評価損が売上原価に入っているのかどうか詳細は見えにくいが、小売事業では期間売上前年比93.3%、営業利益-9.16億となっている。おそらく閉店を進めていて、閉店セールで売上は何とか確保できているが利益率はダウンしている結果だと思う。コーエンはジーイエット傘下のアパレル企業とのプラス効果を譲渡理由に挙げているが、旧ジャバグループなどとの連動は大きなプラスにはならないと思う。つまり、譲渡先が腑に落ちない。アメカジの流れがあり、きれいに売っていた感があるブランドを、大きな債権放棄までして手放した先がジーイエットだったことがわからない。債権放棄しての純資産を考えると、2025年売上104億、店舗数76の会社を欲しがるところは多かったはずだ。例えば、アダストリアやパルGもターゲットが被る店はあるが、順当に考えればそのどちらかになっても不思議ではない。考えられる理由は、在庫評価が不明瞭なことか、販売員がUAに残るというような人の問題くらいしか思いつかない。

次に気にかかるのは、UAの企業力だ。コーエンの店舗数と売上から計算すると1店舗当たりの売上は年間1.4億弱になる。大型店もあるが標準的には40~60坪くらいだと思う。この数字を見るとそこまで厳しい数字には見えないが、他の企業と収益構造が違うのかもしれない。財務諸表がないのでわからないが、一般的に考えれば経費が多くかかっているか、在庫過多のどちらかだと思う。

そういう視点で見ると、UAは今のセレクト業界以外では戦えない企業に見える。そして、上場している関係もあり、売上を上げていく事に最も注力しているようにも見える。安易にアウトレットを拡大し、アウトレット用商品を作って数字を作っているように見えるし、グリーンレーベルも大型SCに来る新しい客層にUAの名前だけで商売しているように見える。このごろあまりショップを見てないので細かくは言えないが、昔は「ソブリン」や「ディストリクト」などのショップもあり、トレンドを引っ張っていたイメージがあるが、今はUAから派生した買いやすいブランドが多い印象が強い。トレンドより値頃化して客層を広げ、UAの名前で売っている感がある。そんな中、上場企業として違うターゲットへ進出が必要で、そのブランドがコーエンではなかったかと思う。そして、そのコーエンから撤退するということは、新しいターゲットゾーンでは戦えなかったという印象しかない。今後UAの値頃感を持った派生ブランドが飽きられれば、企業としての魅力は小さくなっていくのではと思ってしまう。

今回のコーエンの譲渡には、わからないいろんな経緯があると思う。ただ、UAがUAという名を借りずに、違うターゲットや環境で戦っていたブランドを破格で手放すのは、非常に残念な思いが大きい。

■今日のBGM

イオンの株でも買って見る?

「イオンの株を買ったら?」と勧められた。去年の5月くらいに株価を見ていて無印良品とイオンの株価には注目していた。無印良品は8月に株価分割を実施し、イオンもその当時は株価分割後で1500円くらいだった。小売業の業績は、決算数字や会社の戦略で、ある程度は予測できる。その意味で、株価分割され、さらに上昇している無印良品株は5、6月に買おうかと考えただけに、本当に失敗した。無印良品は、その当時発表された社長方針で、「期末に向けて売上は大幅増も、在庫過多を解消するため、利益率は現状維持」との発言があり、中間決算数字を見て同じ感想を持っていたため、好意的に受け取っていた。イオンは、イオンモールを上場廃止しイオンの子会社にしたことは評価していたが、まだ将来像が読めてこないのでずっと見逃している。ただ、最近の戦略が明確になってきており、ひょっとしたら化けるかもと思っている。

イオングループは金融事業を拡大しようとしている。イオンの前期決算で総合金融事業の営業利益は611億円で前年比119.8%、グループ全体収益に占める割合は25.7%で最も大きい。ちなみにGMS事業は売上構成比35.1%だが営業収益は6.9%しかない。さらに今期第四半期までで、金融事業の営業利益は404億円でグループ全体比率は27.9%となっている。ちなみにGMS事業の営業利益は前年より改善しているものの-116億円という結果だ。つまり小売業No1の集客力を利用しての金融事業の収益拡大と、それにより基幹事業たる小売業の改善を進めていく方針が明確になっている。近頃のイオンカードの優待日の多さや、イオングループ企業へのカード優待の拡大も顕著で、金融事業を企業の柱にしようとしていることがうかがえる。

イオンの株は個人株主が多く、現状個人株主数は90万人前後、株主全体の3割以上の構成比らしい。ちなみにセブンアイでは1割強が個人株主比率ということだ。個人株主への優待強化は機関投資家からは敬遠されているが、長期保有株主になっていく株主が増えるということになる。そして個人株主は議決権を行使し、会社提案への賛成比率も高いようだ。今後も、個人株主の比率をさらに上げてくようで、近い将来個人株主の数を200万人まで伸ばしたいらしい。イオン株主優待制度はまず配当金は1株あたり40円前後。株数に応じて買上げ金額に対してのキャッシュバック、各種優待企画との並行利用などの特典がある。

少し簡単に計算してみると、100株、株価2200円で試算すると、22万の投資。日本人平均世帯の食品消費支出年間108万、住居衣料品支出22万で そのうちイオンで8割使うと約100万の支払いとなる。その計算では、3万の優待返金がある。さらに、カード割引特典日も多い。特に近頃はカード特典が多く、1月も5%オフデイとポイント10%デイが10日もある。その特典も利用すれば最低でも、配当と優待返金等で広い意味での配当利回りが20%近くはある。ちなみにイオンHPの株主優待制度を見ると、100株保有のAさんは半年で100万買物をすることになっており、年間で6万円のキャッシュバックとなっている。ただしカード優待返金特典は半年100万買物が上限のようではある。

現状のイオンは、カード優待企画が多く、さらにイオンペイの普及に力を入れている。イオングループの企業(マルエツなどSM等)も同様にイオンカードのポイント還元は非常に多い。顧客の囲い込み戦略で金融事業を拡大し、小売市場の専有化を目指している。マルイグループを見ても金融事業での収益の安定は企業の推進力になっている。

その上で、イオンの小売業の再整備は絶対に必要だと思う。売上高の金額は大きいが、もうすでにGMSは崩壊している。食品以外の売場は冷静に数字を見極め、決断していく時に来ている。GMSの食品以外を個別に運営すれば間違いなく赤字になる。各カテゴリーを会社化すればすぐに結論は出る。㈱ジーフットがそれを示している。そのジャッジができて、改善ができれば、大きな利益の出る体質に変わる。

さて、100株でも買ってみるか。

■今日のBGM

数字を読む 2

厳しい数字状況で、気になる会社の四半期決算短信が発表されている。年度決算数値ではないが、今後の方向性や現状の問題点が見えてくる。チェックしている会社で1月発表されたデータを簡単に見てみる。

イオングループのジーフットが先日第三四半期決算短信を発表している。前年の決算で、イオンを引受先として第三者割当増資を実施し、さらに他の財務支援も受け債務超過を解消したが、今期第三四半期で再び債務超過の状況になっている。営業利益は第三四半期で−10.5億、経常利益は−12.2億と発表されている。売上は同期比で前年96.5%、利益率43.6%前年差-0.4、在庫前年比112.9%となっており、前年より悪化傾向は続いている。商品回転率はおそらく前年より悪化が予測され1.4回転前後になると思われる。ちなみに業界トップのABCマートの前年の利益率は50.5% 回転率は2.04回転となっている。

ジーフットはイオンGMSの靴売り場(グリーンボックス)も運営しており、純然たる専門店と言いにくい。近年「アスビー」への変更を進めており、専門店化を図っているがGMSから靴売り場はなくせない。おそらくここがネックになっている。ABCマートのように商品ターゲットを絞り込み、商品のメーキングができれば改善できるが、GMS客層の取り組みを続けると、客層の幅が広がり売場がぼやけてしまう。イオンとしてGMSの赤字をヘッジしているとも考えられるためGMSの存続も含めてイオンのジャッジが必要かもしれない。もともと靴業界はサイズが多く、それに加えて客層の幅が広ければ当然商売は厳しい。

タカキューも第三四半期決算を発表している。売上は同期比で前年90.4%、利益率63.0%前年差+1.0、営業利益32百万前年比17.0%、経常利益128(百万)前年比43.6%となっている。ただし決算期には有価証券売却益を計上するとしている。第3期末在庫では前年比135%となっており、売上前年比を考えると在庫過多であり、商品回転率も相当ダウンすると思われる。ちなみに第3四半期までの回転率は前年2.03に対して1.32まで落ち込んでいる。利益率の改善は高値入の商品を多く投入した結果と考えられる。ただ、在庫過多状況であり、回転率を考えるとそこまで商品の消化はできてないように見える。

現状主な主戦場は、元イオングループということもあり、郊外モールが多いが、売場の見せ方が整理されすぎているように感じる。ブランドビジネス出身の社長にありがちな、よく言えば「売場をきれいに見せる」、悪く言えば「気楽に入れない」店になってしまっているように見える。さらに、数値面も在庫を処分すれば利益率が急落するリスクが隠れている。やはり主な品種のスーツ業界はサイズが多く、単価も上がるため、在庫がキーポイントになる。

ライトオンの今月発表した第一四半期決算短信を簡単に見てみる。売上前年比64.7%、利益率52.8(前年+0.6)在庫前年比71.4%となっている。経常損失は続いており、今後ワールドからの資本援助で解消されるが、現状では債務超過の状況となっている。まだ今後のMDについては未知数だが、短信ではレディス商材が支持を集めたとある。レディスの比重を上げていくのであれば、ショップのゾーニングや内装にも違和感が出てくるかもしれない。サイズが細かいジーンズのウェイトをどこまで下げていけるかも含めて、「ジーンズのライトオン」としてのMDをどう変えていくかが注目される。さらに、ワールド自体が、このカテゴリーやそのMDを得意には見えず、どういう再生のスタートを切るか興味深い。

最後にヴィレヴァンの中間決算にも触れておく。売上は前中間期比で91.4%、売上総利益107.8%、総利益率45.2%前期比+6.9、営業利益167(百万)(前年同期-608)と改善数値を発表している。ただ、前期末に棚卸評価損2472(百万)、減損損失674(百万)計上しており、その評価減の戻り益が多分に含まれており、次年度以降の数字でなければ検証はできない。私見では、以前書いたが、商品管理体制を確立しなければ再浮上は難しいと思っている。

今回書いた4社はすべて在庫過多が原因で営業不振に陥ってきた。靴やスーツやジーンズのサイズの多さ、商品アイテムの広がりによる在庫の重さが、商品のジャッジやトレンドへの動きへの遅さを導いている。そこを改善しなければ再建はおぼつかない。個人的には、大手企業子会社の ジーフットやライトオンは、上場廃止の方向となるのではないかと思っている。

■今日のDVD

来年は中小小売業がどんどん厳しくなる

年末年始であわただしくなり、小売業にとっては最量販期を迎えている。会社をやっている時は、元旦の売上が年間売上の1%と読んでいた時代もあった。近年は労働環境の変化もあり、元旦営業しない商業施設も増えている。スーパー大手のヤオコーは正月3が日が定休日になる。労働環境の改善もあるが、この流れに中小小売業はついていけるのだろうか?

ファッション関連の中小小売業は、厳しい流れが続いている。おそらくこの流れは変わらない。ここ数年、上場している大企業でも売上の低迷により、M&Aが増えてきている。さらにファンド系企業の支援を受けて再生を図っている企業も多い。ただ、「ANAP」や「メソッド(シーズメン)」など従来の継続事業であるべき小売業の数字が低迷を続けているケースが多い。友人の経営している会社も、譲渡や廃業となった例が増えてきた。特に多店舗展開している企業が苦しくなってきている。

まず、価格志向が強まる中、柔軟な価格対応ができる品揃えを簡単にはできない。30店舗くらいの規模の会社でも、会社主導で売れる商品を継続して作っていけない。企業商品を作るのに中途半端な店舗数かもしれない。その商品も取引先と「相乗り」的な商品が多く、売上利益ともに貢献度は低い。逆に売れないとリスク要因になってくる。さらに「買い」の商品だけでは差別化も図れず、利益率も上げていけない。

規模拡大は成長するための第一条件になるが、どんどん出店コストも増大していく。内装コストも素材高騰で大きく上昇しており、デベロッパーへの出店経費も上がっている。SCのテナントリーシングも変化がなく、大手テナント中心の同じようなラインアップになっており、それ以外のスペースは賃料優先になっている。そのため、前向きなテナント出店には大きなリスクが伴うようになってきている。その環境下で出店に対して消極的になり、多店舗化のスピードが上がってこない。多店舗化が遅れると、当然チェーンメリットはなくなり収益の改善も進まない。

そして、スタッフが集まらない。給与面はもとより、正月定休の事例のように大企業との労働環境の違いはどんどん大きくなる。これだけ「待遇」のことがマスコミで流れれば、「やりがい」や「仕事の面白さ」よりもそちらが優先される。もとより「土日勤務で立ち仕事」という小売業には、労働力は集まってこない。

先日、西松屋が業績予測を修正していた。売り上げダウンとともに営業利益の大幅ダウンを発表した。IRでは「販売費、一般管理費は計画内で推移の見込みも、衣料品の滞留在庫を前倒しで処分したことで値下げロスが増加する見込み」となっている。これにより売上総利益率は2%以上のダウンになる。この発表は会社経営のミスではあるが、企業の正常な体質を感じるし、企業の度量の大きさも感じる。在庫評価のミスは隠そうと思えば隠せる。特に小売業は隠しているだろう企業は多い。さらに業績が悪化している企業は、在庫評価で調整している決算を多く見る。中小小売業であればなおさらだ。

いよいよ、中小小売業は首が回らなくなってきている。来年は、倒産、廃業、M&Aがどんどん増えていく。今後、中小小売業は、地域に数店舗あるセレクトショップのような固定客をターゲットにする店以外は残らない。

■今日のBGM(大晦日に)

利益率は簡単に上げられるし、簡単に落とせる

ヴィレッジヴァンガードの退店ラッシュと、セールのことがネットの声に出ている。捨て値で売っているらしい。評価損商品の売り方はわからないが、前期末に評価損2472(百万)を計上しているので捨て値にして販売していることは想像できる。これだけの金額の評価損があると誰がジャッジしたのだろう。そして毎年どういう棚卸をしていたのだろう。毎年の不稼働商品が積もり積もっての結果だと思う。さらに2013年にも4692(百万)の評価損を計上している。そして他の小売業ではライトオンが2023年に1564(百万)の評価損を計上している。

つまり、利益は「簡単に上げられるし簡単に落とせる」ということになる。売れていない商品をなくすには取引先に返品するか、値段を下げて売ってしまうしかない。取引条件はわからないが、取引先からの依頼で「売れるだけ売って返してくれればいい」という所謂委託条件でなければ、ほぼ買い取り条件になる。値段を下げるときに、原価を下げる値引を取引先が負担することもあるが、多くは小売り側のリスクで値段を下げてなくしていく。値段を下げれば当然利益は落ちる。このヴィレヴァンの評価損の大きさから、毎年の利益率の低下を避けるため、例年適正な在庫評価をしていなかった結果と言わざるを得ない。

このブログでは何度か書いているが、商品代金の支払いは、一般的には仕入れてから2か月~3か月後の支払いになる。3か月間で売れれば商品代金も払えるし、利益も確保できる。3か月で売れない商品が多くなれば、資金はショートしていくし、キャッシュが少なければ次の仕入れもできない。ヴィレヴァンの決算数字を見ると商品回転率は年1回転前後なので、単純に商品は1年後に金に代わることになる。商品代金は支払い済みなので当然キャシュは減っていく。それを防ぐために、値段を下げて売ればキャシュは入ってくるが、利益率は落ちる。利益率が落ちれば利益額も減るので営業数字は悪化する。過去10年値段を下げずに何とか決算数字は取り繕ってきたが、いよいよキャッシュも減ってきた。在庫も多くて身動きが取れない。そこで、やっと多額の商品の評価損で再整理をしたということになる。これでもまだまだ不十分に見えるが・・・

当然、上場企業でもあるし商品のPOS管理はしていると思う。そのPOSデータをどう活用していくかが今後の大きな課題になる。ヴィレヴァンについて書いている専門家?の中にも「POSがヴィレヴァンをダメにした」という記事もあった。POSがあるから個性ある商品がなくなったとの意見だ。ただ、それは違う。POSを使いこなせなかったということが正しい。販売期間が長くなった商品はまず売れない商品であり、その商品をなくして新しい商品を入れるために指示が出せなかったということだ。

昔、イトーヨーカドーはディストリビューター(DB)の力が強いと言われていた。バイヤーより権限があったと聞いていた。商品の動きを単純に数字で把握して、ジャッジをするスタッフだ。DBが商品の売り上げ動向や消化率、単品の在庫日数(何日在庫が寝ているか)を確認し、その商品の対策を指示する。当然在庫金額の把握もしていて、商品回転率や、予算との乖離も指摘する。その分析結果で在庫予算がオーバーする場合、仕入れは当然ストップの指示が出る。そして、値引きをもらって値段を下げるか、単純に値下げするか、売れている店に集積させるか、もしくは返品するかなどの指示をする。

ヴィレッジヴァンガードは商品データでの決め事を作る必要がある。売上と在庫のバランスを設定し、売上、在庫を念頭に置いた数値計画を作成する必要がある。それを品種、品群ごとに作る。そしてその期間を超えたときはどうすべきかも明確にしなければならない。仕入れは楽しいものでなく、仕入れた責任が付いてくることを認識させる必要がある。

あれだけ嗜好品のイメージのある店で、年間在庫回転率1回転前後なら、絶対商品の山になるし、間違いなく利益は出せない。今期は前期の評価損商品の売上も見込めるので、若干の利益は回復するが、今後も商品回転率が改善しなければ、企業存続は間違いなく難しくなる。

■今日のBGM

大型モールのリーシングについて 

イオンモールに代表される大型モールの魅力はどんどんなくなっている。類似したテナントMDのモール乱立により、狭商圏化されてしまっている。量販店(GMS)の乱立期に似てきている。結果的にGMSは、ほぼなくなってしまった。

大型モールの狭商圏化の大きな要因は、テナント構成がどこのSCも類似してしまっていることにある。つまりどこに行っても変わらないので、お客様は近隣の行きやすいSCに行っているということだ。イオンモールの新店には、地元の専門店以外はどこのイオンモールにもあるテナントで固められている。テナント側も、同じラインナップであれば、SCの商圏規模を想定するだけで、おおよその売上は読めるので出店しやすい。ただ他のSCと商圏が重なったりすると、売上は下がってくる。つまり、SCの個性が共通化されると、狭商圏化は進む。

なぜ、新しいテナントをリーシングできないのか?まず、好調テナントのリーシングを優先していることがあげられる。現状では「ユニクロ」や「無印良品」の出店は必須になってきている。そしてその売場は大型化しており、「ユニクロ」は大型モールにおいては平均的にも300坪は必要で500坪規模の店もある。「無印良品」もMDにもよるが大型化が進んでおり、「ユニクロ」同様の面積は必要になってきている。さらに出店を優先するため、低層階での提案になっている。

ここで、家賃設定について考えてみる。大型モールが、どのようにフロア(区画)ごとの資本費を決めているかわからないが、昔在籍したビブレのフロア別の資本費は、グランドフロア(1F)を100として上層階に行くにつれて85%前後?(きちんとした数字があったが・・・)で下がっていく計算だったと思う。当然1階のほうが稼ぐべきフロアということで3階なら1階の7掛強(0.85×0.85)の資本費だったような気がする。つまり上層階に行くほど、低い家賃設定でテナントと交渉できるということになる。「いい場所は高い賃料で、厳しい場所は安くして面白いテナントを導入する」という仕組みだ。現状の大型モールは、1階や2階に人気ある大型区画の導入を優先してリーシングしている。つまりあるべき家賃設定と出店条件がマッチしているのかという疑問もある。

詳しい出店条件は知らないが、デベロッパー側にとって「ユニクロ」や「無印良品」はSCとして必須のテナントになっており、ある程度、出店条件を譲歩しているのではないかと考えてしまう。あくまでも個人的な見方だが、出店を前提に条件面のハードルは低くしているのではないかと思う。最低坪当り賃料を低く設定したり、歩率のみの出店条件にしたり、他の細かい経費(販促費、共益費)をなくしたり、出店優先での交渉はいくらでもできる。そして、さらに大型モールに必須の「家電」「スポーツ」「ハウジング」など大型業種はほかにもある。大型区画が増えれば、当然賃料のしわ寄せは、安い賃料であるべき高層の中小型区画にくる。さらに大手企業の常連のラインアップをリーシングすれば、当然他の区画の賃料は上がっていく。

その環境下で、新規参入したいテナントが出店を検討しても、当然高いハードルでの条件が提示される。賃料だけでなく、共益費、販促費、駐車場負担金、クレジット手数料なども条件に加わる。さらに、敷金や内装工事に加えて共用工事負担金、現場協力金などもある。この条件で、前向きな区画ではなく空き区画を提示されてもなかなか出店できない。近年、資本力のある「携帯ショップ」などの出店が増えている背景にはそういう事情もある。

一方、不動産系の大手であるららぽーとは、GMSと取り組まない分セレクトショップとの取り組みなどを強化しており、都市型のイメージは強い。ただ、テナントの幅は出ているが、立地からくる賃料の高さや、サーキットモールの構造的なデメリットも抱えている。

1960年代からのGMSは約50年で終焉を迎えてきた。1990年代にスタートした大型モールももうすでに30年以上経過し、過去のGMSと同様の課題を抱え始め、成熟期から変革期になりつつある。その大きな武器であるテナントリーシングの課題を、再度見直す時期に来ているように感じる。

■今日のBGM

「コーエン」売却 ➁

前回、㈱ユナイテッドアローズ(UA)の「コーエン売却」について書いたが、解せないことが多い。企業の思いは、当然第三者にはわからない。

近隣のSCで「コーエン」と売却先のショップ「マックハウス」を見てきた。コーエンは変わらずジーニングテイストのあるカジュアルを展開しており、明るいムードはあった。少し商品過多気味なのか「2点で~引き」を展開していた。さすがUA傘下ということもあり内装も手が入っているし、スタッフも充実しているように見えた。「マックハウス」は広い売場で、スタッフも少なくあまり元気なムードは見えなかった。以前はキャリー商品も多かったが、グループ傘下企業の「ジャバ」や「シティヒル」の商品が入りテイストの問題はあるが、ボリューム感は出ていた。従来のジーニングカジュアルのイメージは薄くなっている。

コーエンについてネットで少し調べてみた。会社設立は2008年でUAの100%子会社で1号店はレイクタウン。さらに商品企画、生産、物流は三菱商事にアウトソーシングとなっており、三菱商事主体でスタートしている。2022年にUAの社長が「ブランド改革し立て直し」と言及し、社長はUAの専務が兼任している。その時のコメントは「在庫効率を追求し品番数を減らしすぎた」と苦戦要因を語っている。ただその後、在庫過多とその在庫評価損の計上で利益率を大幅に落としてしまっている。

暴論になるかもしれないが、敢えて気になる点を書く。

プライム上場で1500億企業のファッションアパレルであるUAが、なぜ、ファンド系企業に会社を譲渡したのだろうか?おそらく譲渡金額もそこまで高くないと思う。赤字事業を切り離すのは経営として正しいのかもしれないが、他に改善策はなかったのだろうか?そんなに赤字は大きかったのだろうか?おそらくセレクト業態は今後縮小市場になっていくだろうと思われる中、別ターゲットの市場開発も必要ではないだろうか?そしてこれだけの企業でその開発もできなかったのだろうか?

UAの売上はコロナ期以降順調に伸長しているが、まだコロナ前の数字には未達だ。さらにアウトレット業態の拡大で数字をカバーしてきたが、アウトレット店舗の商品は、本来のアウトレットではなく自社MD商品だということが認知されてきて、今後の伸びは期待できない。従来のこだわり系のショップをなくしていった数字をSC系の「グリーンレーベル」でカバーしようとしているが、UAとしてのブランド価値の位置づけは下がってきているように見える。数字面では今後のSC系のカジュアルゾーンの開発は必須だったはずだ。その中で「コーエン」の売却は後ろ向きの感はぬぐえない。

さらになぜ、譲渡企業がアパレルでは「シティヒル」「ジャバG」「テットオム」などマイナストレンドの企業を抱えるファンド系企業だったのだろうか?そして「マックハウス」のMDと同様の傘下ブランドの品揃えになった場合、従来のお客様は受け入れてくれるのか?さらに今後の雇用問題になるが、UAグループの雇用条件の継続など従業員のモチベーションは保たれるのだろうか?

逆に、譲渡金額はわからないが、大型モールを主戦場にしている「コーエン」を受け入れるジーイエットのメリットは大きい。「マックハウス」はイオン系など大型モールの店舗は少なく、企業として今後の店舗拡大には大きなプラスになる。「コーエン」のスタッフを受け入れることで販売力の向上にもつながる。さらに上述したように、関連アパレル企業も活性化する。

今回の売却は、UAという会社が洋服と同様に上品でスマートな企業に見えていただけに驚いた。詳細を知らない者が勝手なことを書くが、UAが赤字をなくしたという事実以上に、UAの企業力に疑念を持ってしまった。

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赤字の中小小売業に前向きな策はない

数日前の日経新聞の社説に「実質賃金の上昇へ労組は意欲的な要求を」という提言があった。当然、大企業に向けての提言ではあるが、赤字の中小企業にも以下のコメントがある。「赤字の中小企業には賃上げ原資を補填するような支援を検討しているが、それでは生産性は向上しない。経営者を前向きな投資に向かわせてこそ、強い日本経済の実現につながる。」

2024年の「国税庁法人統計法人税表」から赤字法人率は64.8%で約189万社あるようだ。その企業にどうやって前向きな投資をさせるのだろうか?

コロナ禍におけるゼロゼロ融資返却や人件費高騰で中小企業の倒産件数は、2023年には9年ぶりに9000件を超え前年比では32%増となっている。コロナ前から倒産件数は増えていたがコロナ禍で大きく増えた状態になっている。国も借り換えや経営改善のサポートを行っているが厳しい状況は続いている。そして小売業も企業数は31.6万社あり、22.6万社が赤字で赤字法人率は71.4%となっている。

小売業の「前向きな投資」とは何だろう?小規模な店舗にPOSシステムなどの 導入は必要だろうか?導入したとしても効率化は図られるが、営業数値にどれだけプラス効果があるのだろうか?一番前向きな投資は出店だろうが、好物件は当然賃料も高いし内装経費なども高くなる。何よりも投資金額は非常に大きくなる。その資金はどこから捻出するのだろうか?新たに借金をするのだろうか?

30坪程度の店を商業施設に出店するには、内装投資で最低1000万、共用工事負担金などで150万程度、損金にはならないが敷金500万程度は必要になる。支払い時期は少しずれるが、オープン商品の仕入原価分で最低500万の支払いも発生する。その他、備品や採用費なども含めると2500万くらいの資金がなければ出店できない。近年はさらに内装コストが上昇している。商業施設もテナント誘致に苦しんでおり、テナントの大型化が進んでいる。テナントの大型化が進むと、大型テナントの出店ありきの条件から、その皺寄せで小型区画の出店条件は上昇する。

投資をして出店するからには成功することが必須となってくる。近年の商業施設の成功物件は規模の大型化や、エリアでの寡占化で、当然出店へのハードルも上がってくる。さらにテナント構成も類似してきており、新規テナントの参入も既存大手企業の開発ショップ中心になってきている。つまり新規参入の余地も少なくなってきている。

そんな中で、コロナ禍で経営資源が枯渇し、コロナ融資で何とかやりくりしている中小小売業がどうやって前向きな出店投資ができるのだろうか?そして出店投資に対してどういう支援があるのだろうか?

この社説は大きな意図はなく、第三者として文字を埋めたのだろうが、やはりきれいごとの文章で、全く響かない。22万社強の赤字小売企業は、自然淘汰されるか、M&Aで大企業の傘下に入るしかない策は見えない。

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