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ポイント販促が異常に多い

これだけ暑くなると、歩いて買い物には行きたくない。バーゲンも始まっているSCもあるので車での買い物が増える。先日も駅前のSMへ行くには暑いのでどうするかと言っていたが、イオンがイオンペイでの買い物でポイント10%と告知されていたので、車でイオンへ買い物に行った。SMの安定感が駅周辺のSMより劣っているイオンへは、割引日や、ポイント戦略日にしか行かないようになってしまっている。

今月のイオンのポイント戦略日は10、13~15、26~28の7日間がイオンペイポイント10倍、20、29、30が5%オフ、その他15日がGG感謝デー(55才以上5%オフ)おおよそ10日が還元デーになっている。意味合いは微妙に違うが、ほぼ5%引きの日が非常に多い。

ポイント戦略はいつごろからこんなに増えたのだろうか?ビブレで店長をしていた最後の時期位にポイント10%のDM戦略を多用した思い出がある。バーゲン以外セールをしなかったブランドショップの売上が跳ね上がり、販促効果は大きかった。ただ会計処理上の変化があり、ポイント戦略は禁止になったように思う。さらに、ポイントによる不正も多かったのもその要因になった。

当初の会計処理はポイント使用時に経費計上していたが、その後ポイント付与時点に計上になったような気がした。少し調べてみると、現状は大会社以外に関してはポイント利用時に計上となっている。ただしイオンのような大会社はポイント付与した時点で仕訳が必要になっているようである。ポイント使用率を想定して契約負債とし、その分を減らした売上、売上負債と現金に仕訳けるようになっている。つまり売上計上は契約負債を引いた金額になっている。(これであっているのかはわからないが・・・)ポイント使用率を設定することで結果的には5%オフよりポイント10倍のほうが利益マイナス面に関しては影響が小さいということはわかる。

こういうポイント戦略が販促として効果が大きいのは食品売場だと思う。食品売り場を活性化することが多くの小売業の一番の課題になる。デイリー客が増えるし、商業施設の売上の核になる。そのために特売をしてチラシ販促をしたり、生鮮の専門店を入店させたりする。そういった販促手法から、ポイント戦略に変わってきている。

GMS食品業種の利益率は25~26%と言われている。昔、ビブレで店長をしていた時は生鮮のテナントを売場に組み込んでいたので21%くらいだったと記憶する。利益構造も変化していると思うが、「売場全品5%オフ」のような販促は絶対企画できなかった。現在のチラシの内容は昔ほど値段を訴求していないし、利益の出る総菜の拡大で利益率は改善しているかもしれない。今後は「5%オフ」や「ポイント10%」企画はどんどん増えていくと思う。各社の取り組み姿勢にもよるが、安易な販促なので、これがさらに5%オフから7%オフになっていくことも考えられる。ちなみに売上年間25億、回転率月3回転、利益率25%の食品売場で3日の5%オフと7日のポイント10倍(使用率30%設定)を実施したと想定すると、手計算では月度利益は-0.1%強位の計算結果になった。仕入努力や生鮮品の値引き率の減少で十分改善できる数字にも見える。

カード会員の囲い込みや、ネット客の拡大、スマホ決済への取り組みなど、企業としてのプラス要素は大きい。ただ、一方で商品のライフサイクルを考えた販促や時系列による売場の変化など、取り組むべき業務がないがしろにされてしまうかもしれない。小売業としてこれだけポイント戦略が多いと、その流れが当たり前になってしまうことが一番怖い。

■今日のDVD(モンキーズ)

適正な利益率は?

前回、ユニクロのMDについて書いていて、いつも気になっていたことを思い出した。毎年の決算数字で、ユニクロの売上総利益率は適正なのだろうかということだ。

商売をやっていて、売上総利益率は非常に気になる数字ではある。過去の経験では量販店時代やビブレ時代も、記憶ではアンダーウェアが40%に近く、衣料品、服飾品では40%を超えることはなかった。売上効率が高かった売場で35%を超えていた印象しかない。その後自分で会社をやってみて、在庫を第一チェックポイントとして運営し40%は超えていった。店舗数が増えていき、取引先との別注商品をスタートし45%以上には上げていけた。それ以上上げていくには、商品ロットの問題があり、店舗数を増やすことと、当然のことだが、全店で高く消化できる商品を作ることが必要になってくる。

小売業の総利益率の原価は商品原価と考えていい。ただそこから商品の評価損が加えられる。つまり割引をしての評価が加えられる。商品原価(期間仕入れ分)÷(商品売価―値下額)が原価率となる。大きな数字ではないがそこに商品のロス分(万引き、不良品)が加味される。製造原価は商品にもよるが30%前後と言われている。

ユニクロの調達原価は35%前後と言われており、商社等の手数料を加えると38~40%が商品原価として計上されているようだ。ちなみに、前期決算での売上総利益率は53.9%となっている。この利益率をどう見るか?売上は3.1兆円の規模になる。ものすごい金額の商品を仕入していることになる。決算書を見ると前年より25206(百万)商品在庫(原価)が増えていて、売上が3.1兆なので3.8兆円以上(売価)の商品(売価)を仕入れていることになる。それでも原価は40%前後というのなら、相当まともな商売をしているように思える。

始めて取引する際に、最初の原価は、取引形態にもよるが55%~60%くらいだろうと思う。10年も商売を続ければ50%くらいにはなる。発注量にもよるが一部の商品を別注して40~45%の原価にはなる。これは20店舗強まとめた過去の経験上の数字で、ユニクロくらいの天文学数字でも40%くらいの仕入原価であれば、おそらく相当売価を抑えてきていると思う。さらに原価率から逆算すると、利益率は6%くらい下がってはいるので、期中でのプライスダウンも相当な額になっていそうな気がする。決算書を見て計算してみたが金額が大きすぎて、わからなくなってきた。(算出したが、あっているかどうか想像もつかない…)

何が言いたかったかというと、ユニクロは、売れる値段を考えた仕入れをし、売れなかったらその商品を迅速になくしていっているということだ。つまり利益率を考えた商売をせずに、売れる値段設定をして、売れなければ迅速になくしていっているということになる。当然最低の利益率は念頭にはおいているが、売れることを最優先にしている。商品特性は違うが、アダストリアの売上総利益率は54.7%、パルGが55.9%であり、ユニクロの規模を考えると適正な値段と商品処理を優先的に行っていることがよくわかる。

厳しい会社は、商品価値を市場価値で見てないことがある。ライトオンはワールド傘下後の決算で売上総利益率は39.9%まで下がっている。3期前は50.7%の実績だった。その時の在庫は2.5倍位あった。店舗数が減ったこともあるが、利益率のマイナスも考えると、商品評価を大きく下げており、企業での商品価値と市場価値の差が大きかったことは間違いない。適正な数字かもしれないが、上場小売業梨で売上総利益率が60%を超える会社もある。

ただ、価値観はそれぞれなので商品価値は判断しづらい。ユニクロの利益率を商品展開と決算数字で確認して納得できたように、決算数字を見ていると色々見えてくるものもある。それぞれの会社の戦略や取り組み姿勢がよくわかってくる。

■今日のBGM

ユニクロは客層の幅が広いから・・

近頃、食品の買物ついでに、ユニクロと無印良品は定期的に見ている。本当に誰が中心になって、商品のMDを組み立てているのかと感心する。やはり両店とも、あまり外れる商品はなく、タイミングを見極めてプライスダウンもしており、商品のライフサイクルもうまくコントロールしている。あまりとがった商品もなく、必要な商品が提案できている。

先日も、朝の番組で、「高機能のアンダーウェア」を試して、いろんな角度から評価し、高評価の商品を紹介していたが、結局No1だったのはユニクロの高機能アンダーウェアだった。各下着メーカーなども比較されていたが惜敗していた。同じ番組で、食料品などではいつも「トップバリュ」などがランキングされるが、イオンの商品はランキングされていない。専門メーカーや小売最大手も寄せ付けない強みがある。

ユニクロで、半月くらい前から、「ポーター」に似たバックが、3~4種類くらいバックのフェイスにしては大きく提案されている。今年の1月に1型発売されたらしく、さらに2024年に韓国で先行発売され爆発的な人気があったようだ。「ユニクロ:C」の商品もあり、値段は2990~4990だったように思う。

おそらく、ユニクロ以外の会社で、この商品は作れないし、売れないなと感じる。値段が全く違うので、別物と言い切れそうだが、なかなかファッション系の他の会社では作りたくても作らないし、作ったとしても店頭では売りにくい。そして何よりこの値段では作れない。

以前、ユニクロのチラシ折込について、ユニクロの客層の幅の大きさが背景にあるという旨を書いたことがある。はたして、一般購買客で吉田カバンをどれくらい知っているのだろう。通勤電車で吉田カバンを持っている比率は間違いなく10%以下だと思う。さらに70才以上になれば知名度はもっと下がってくる。おおまかに勝手な予想だが、ユニクロのお客様で吉田カバンの知名度は20%以下だろうと思う。つまり、機能や値段を見て購買するお客様がターゲットであれば、「似ている」という意識は必要ない。単純にちょっと「洒落て」いて「機能的」で値段が「リーズナブル」であれば客層にぴったりはまるということになる。

もし、この商品が売れ続けるなら、ユニクロのMDの狙いはうまくはまる。近頃、本家の吉田カバンは、いろんなブランドとコラボをしている。プレミアム感をどんどん出している。ここでも完全に客層の2極化の様相を呈してきている。

ユニクロも無印良品も商品アイテムは少ないが、客層を狭めず、商品は的確に絞り込んできている。ユニクロはジルサンダーやクリストフ・ルメールを皮切りに有名デザイナー監修のブランドも低価格で打ち出し、安売りのイメージとも一線を画そうとしている。無印もヘルス&ビューティーなど拡大し商品の幅を広げ続けている。

幅広い客層に、アパレル中心に的確な商品を送り続けるユニクロや、1カテゴリーでは売れるアイテムを集中させ、カテゴリーの幅をどんどん広げていく無印良品の商品MDの仕事について、真剣に詳しく聞いてみたい。

■今日のBGM

イオンリテール(小売業)とイオンモール(デベロッパー)

まだ、流通アナリストの「総合スーパーでイオンだけ生き残った」という文面が頭から離れない。以前ブログに書いた「㈱イオンモール上場廃止」について、再度㈱イオンリテール側からどう見るかを考えてみたい。

㈱イオンモールを上場廃止にしてイオンの子会社化したことは、おそらく、各会社の意思決定を早くすることが一番の要因だと思っている。大きなポイントとして、㈱イオンリテールが資産を持ち、賃料収入を得ているイオンモールを、資産含めてすべて㈱イオンモールに移管することがあげられる。つまり、㈱イオンリテールは所謂「ジャスコ(イオンのGMS)」中心の小売業だけの会社になる。それにより、会社の収益構造が変化するので、企業としての生き残りを明確にできる。

前回も書いたが㈱イオンリテールが資産を所有するイオンモールは数多くある。㈱イオンモールはもともと三菱商事とスタートさせたモール事業(㈱ダイヤモンドシティ)で2007年に㈱イオンモールとして始まった。㈱イオンリテールもモール事業があり、その後2013年に㈱イオンリテールの54モール、15SCの管理運営(PM:プロパティマネジメント)を㈱イオンモールが請け負っている。わかりにくいかもしれないが、㈱イオンモールの主な業務は今までは、資産も保有している㈱イオンモールの物件のPMと資産は㈱イオンリテールのモール(名称はイオンモール)のPMが主な業務だった。今後どういう流れで資産を移管するかは未定だが、これで両社の流れは大きく変わる。単純に、㈱イオンモールの主な業務は商業施設のプランニング含めた運営管理、㈱イオンリテールは小売業(GMS)専業となると考えられる。

私見ではあるが、おそらく㈱イオンリテールでのテナント収益は黒字で、不振のGMSとしての小売業を支えてきたのではないかと思う。詳細はつかめてないが、㈱イオンリテールの営業収益全体におけるテナント収益は約20%と推測されている。当然課題はGMS事業になっていることから、不振のGMS事業への投資を優先させ、安定収益があるモール(テナント)事業への投資を遅らせていたのではないかと思う。㈱イオンモールとしても同じグループ会社の物件とはいえ㈱イオンリテールの物件には強く提案ができず、思い切った施策が打てなかったように思う。PM事業への投資等によって㈱イオンリテールの数字に影響を与えることはリスクが大きいし、㈱イオンリテールもそれを望んでなかったのではないだろうか。そういう環境下でもあり、㈱イオンリテールの物件は、モールとして新鮮さを感じず、テナント各社にとってはあまり魅力を持てないSCだったように思える。

もともとPM業は、オーナーの意思で運営管理の手法は変わってくる。資産を持たないPM会社が、資産保有者に意見を通しづらく、思い通りに動けない状況になることは多い。おそらく今後は㈱イオンモールが資産を持つデベロッパーとして、旧㈱イオンリテールの物件の改良は進んでいくと思う。今まで㈱イオンリテールの物件ではモールの改装提案や、テナント誘致、入れ替えは厳しい状況だったと思う。それが㈱イオンモールに変わればそのテナントの影響力も考え、いろんな方向から検討され、前向きな改良が進んでいくかもしれない。

㈱イオンリテールのテナント収益が欠ければ、いよいよGMS事業の存続がイオングループの課題になってくる。イオングループのSM(スーパーマーケット)事業は好調であり、ヘルス事業も好調を続けている。GMS内で収益が改善できていない衣料品や装飾品、住居品などを続けるべきか、続けるなら持続可能なMDは何かの結論を出す時期に来ている。

赤字状況であるGMS存続のジャッジは急がれていると思う。

■今日のBGM

総合スーパーでイオンだけ生き残った?

先日、ビジネス誌オンラインの「プレジデントオンライン」に「総合スーパーでイオンだけ生き残ったワケ」という記事があった。銀行出身の流通アナリストが執筆していた。モータリゼーションの変化で大型モール(RSC)へ購買客が流れたことでイオンだけ残ったという内容だった。その流れは当然あり、大きな要素ではあるが、そのことは改めて書くほどのことではない。それより「総合スーパーでイオンだけ生き残った」ということを流通アナリストが書いていること自体に驚いた。当然イオンの総合スーパー(GMS)の状況はわかっているとは思うが、決算内容を見てもイオンとしてはGMSが一番の課題になっているはずだ。

2025年2月期の決算資料を見ると、GMS事業の売上は35594(億)あるが営業利益は163億しかない。全体の売上が101348億でGMS事業の売上構成比は35.1%あるが営業利益は6.8%しかない。ちなみに営業利益は金融611億、デベロッパー530億、ヘルス事業360億、SM(スーパーマーケット)329億の順で、小売以外の金融、デベロッパーで全体営業利益の約半分を稼いでいる。ただ、その2事業も当然小売業があってこその数字にはなる。

総合スーパー(GMS)事業は、地域会社も含んでの数字であり、SM事業との区分がつきにくいが、イオンリテール(本体のGMS事業)としては79億円の営業利益で前年を割り込んでいる。ちなみにイオンリテールの詳細は出ていないが、第3四半期決算では売上は13785億、営業損失162、7億と発表されている。

総合スーパー(GMS)事業は食品や衣料品、服飾品、住居関連品などで構成されており、それを総称している。所謂、昔のスーパーの「ジャスコ」業態と考えればわかりやすい。「総合スーパーでイオンだけ生き残った」とあるが、はたして、生き残っているのだろうか?

おそらく、食品やヘルス関連以外は間違いなく赤字だと思う。セグメントを変えて、食品をSM事業にヘルス関連をヘルス事業に分けたほうが効率も利益も改善するのではないかと思う。つまり衣料品や服飾品、住居関連品をなくして、そのスペースを専門店に変えれば全体の数字は改善するのではないかと普通に考える。

イオンモールにGMSとして入店しているので、収益面では厳しくてもグループ全体にはメリットがあるというのだろうか?お客様はGMSがあるから安心してイオンモールに行っているというのだろうか?当然立地は違うが、「ららぽーと」のほうが客数も多いし、SCの売上も大きい。テナント数も「ららぽーと」のほうが多い。「ららぽーと」の多くにはGMSのテナント入店はない。イオンリテールの衣料品のところに「ユニクロ」「GU」や「西松屋」などを入店させ、住居品のところに「ニトリ」や家電など、さらには大型化している「無印良品」を導入させれば、現状のニーズは解消されるし、既にそのテナントがあっても他テナントの導入でバリエーションも増えてくる。SCの資本費以上で賃貸させれば赤字にはならないし、少なくとも月坪100千の売上もない現状のGMS衣料品等の売上効率を簡単に上回る。さらに新しいテナントを入れることでSCの活性化にもつながる。現状のイオンモールには個性がなく、似たようなテナントのラインアップで、完全に「ららぽーと」に負けている。

イオン自体も当然そこは理解していると思う。今期デベロッパー事業のイオンモールと、サービスその他事業のイオンディライトを上場廃止にし、イオンの完全子会社にしている。一義的には、㈱イオンリテールが所有しているSCのイオンモールを㈱イオンモールに移管することかもしれない。しかし、深読みかもしれないが、イオンモール内のGMSの解体も視野にあるのかもしれない。そうなればGMSの売上は減り、会計上ではテナントの賃料だけの売上計上になり、売上は大きくマイナスする。しかし、収益は大きく改善する。

創業者一族の岡田会長の最後にやる仕事は「総合スーパー(GMS)の解体」ではないだろうか。それはなかなか創業家以外のサラリーマンではできない。

そういう状況下で、「総合スーパーでイオンだけ生き残った」と言えるだろうか?

■今日のBGM

定期借家契約 ➁・・・ 撤去工事

前回、退店時のことを書いていて、ちょっと引っかかっていることがあり、そのことを書いてみる。ただ、この問題の正解はわからない。

退店時には契約上、工事区分でいうB.C工事の撤去が出店側の負担区分となっている。現実としては、その工事の負担金額はデベロッパーとの調整によって違っており、同じデベロッパーでも、個別のSCによっても違うことが多い。つまり、後継テナントとの話し合いで残存を希望する什器があればそれは撤去せず残すことができ、その分撤去工事の経費が減らせる。その調整をしてくれるSCのスタッフや内装監理室の担当によって撤去金額は変わる。ただしこれは交渉事であり、あくまで契約上はスケルトン渡しになっている。

いろんなことがあったが、何件かをここに書いてみる。

・後継テナントが決まっていたにもかかわらず、そことの調整はなしで契約書通りほぼスケルトン渡しとなった  

→ 契約書草案で「デベロッパー指定の業者が撤去工事を実施」とあったのを苦労して「他の業者も併せて検討する・・」のような契約に緩和してもらった。ただし、そのためか後継テナントとの話し合いはなかった。オフィスビル中心の不動産系のSCで子会社が施設管理をしており、全く融通が利かなかった。ちなみに後継テナントは1年前にはほぼ出店は決まっていたと後日聞いた。ほぼ敷金は帰ってこず、退店13店舗中最も撤去工事費は高かった。現実的には間違いなく撤去工事の調整はできた。

・B工事撤去の見積もりが異常に高く、添付された詳細図面をみたら自社の区画でなく、売場面積が5倍くらいある他区画の図面での請求書が届いた

→ 日本で一番大きい企業。こちらから確認の電話をして、後日修正の請求書が届いたが、あるべきでない事。C工事の 撤去に関しては後継テナントと細かく調整してくれた。

・使える什器は使い、天井照明もそのままで、足らない什器や環境に手を入れて出店。契約時に引き継ぎ時の売場写真を細かくとり、その状況を現状として契約書の覚書を作り契約した。

 →当然のようにスケルトン渡しでの請求があった。個別面談をして契約書の再確認をしてもらいデベロッパーに納得してもらった。面談するまではかたくなに拒否された。

撤去時にもめることは非常に多い。何よりもお互いに前向きな仕事ではない。デベロッパー側とテナント側とのはざまで、工事に関してはいろんな問題が出てくる。特に退店は営業数値が厳しい状況だった店がほとんどで、退店時に発生する経費が大きくなるとそのまま損益に響く。大企業は別だが中小企業ではできるだけ経費を抑えたい。細かく打ち合わせをすることが間違いなく必要で、後ろ向きの仕事にはなる。後継テナントの声も交えてプラス要素に導ければデベロッパー側にもメリットが出る。そう考えて交渉してもらえればスムーズに進む。ただデベロッパー(オーナー企業)とは違うPM業者が管理していると、さらにワンクッションはいるのでそれも難しくなる。

最後に、少し外れた感想を書く。大手デベロッパーほど中小企業へのケアは薄い。当然一概には言えず、担当者にもよるが、退店時の対応だけでなく営業面の問題も同様に感じた。出店が近隣エリアに固まったり、同じデベロッパーに集中したりすることは、会社の政策だけでなく、友好なリレイションシップがそうさせたことも大きな要因にはなった。

出退店に関しては、契約書を細かく読み込み、疑問点を理解するまで交渉する事、そして営業の担当者(本部、店)とは良好な関係を持っておくことが非常に大切なことだ。

■今日のBGM

定期借家契約とやっておくべきこと

振り返ってみると、以前の会社で12店舖退店している。今になって、そんなに退店していたのかと思う。結構な金と労力を使ったなと思う。

自社の出店の教訓として2つの結論を得た。SCでは3階以上に出店しないということ、最低売場面積を設定すべきということだ。新規で立ち上げるとどうしてもデベロッパーより立場が低くなり、「出店させてもらう」立場になる。そうなるとあまり強い主張はできなくなる。ちなみに退店した12店舗中7店舗がSCの3階以上で、最低設定売場面積より小さかった店は5店舗あった。それでも契約満了までに退店した店は1店舗しかない。

その中で不本意な退店が3店舗あった。すべて契約満了時の話し合いで、デベロッパー側から「定借満了」で再契約しない旨伝えられた。そのうち2店舗は継続の意思が強かったし、もう1店舗も条件交渉次第では残る意思はあった。現状のテナントの出店契約は5年か6年の定期借家契約であり、そうはいっても話し合いにより再度新しく契約を結ぶことが多い。ただ3店舗ともほぼ次のテナントは決まっていたようだ。そして、自店は平均以上の坪売上はあったと思うが、代替場所の提示はなかった。

その3店舗とも後継テナントは大手資本の会社であり、おそらく政治的なもので、条件も自店のほうが高かったと思う。そういうことは今までの慣例や、伝聞でいろいろ聞いてきた。当然、企業は1つのSCの収益より会社のメリットを優先する。例えばそこに出店することで他のSCへの出店を決めたり、複数店出店の1店となったり、双方の政治的メリットが優先される。3店舗のうち1店舗は隣接の大型店舗の拡大で、おそらく歩率要素が高い契約だろうから、固定賃料だった自店のほうが賃料は高かったと思う。それでもSCとしての賃料は減っただろうが、それにより他SCへの出店というメリットがあったようだ。もう1店舗も大量出店の一環で、間違いなくそのSCの賃料もダウンしたと思われるが、他のSCの空床の解決にはつながったと思う。3店舗とも自店の売上はSCの平均点以上だったが、代替区画の提案がなかったことから、そこまで必要なテナントとされていなかったのかもしれない。ここで思うことは、SCの動向を把握できなかったことにある。退店が増えたコロナ期が重なったことも大きい理由にもなる。

課題として挙げられるのは、完全にコミュニケーション不足ということだ。社長として毎月1度は臨店していたが、もう少しデベロッパーとの話し合いをするべきだった。同様のことがエリアの責任者にも言えると思う。

ただ一番大事だったことは、会社として必要な店なら、さらに良くしていこうという考えを持たねばならなかったということだ。定借終了1年前には、再度自店の流れを詳細にデータ化し、どうしていくべきか社内決定すべきだった。そしてそのタイミングで、商品政策も含めて再投資をかけての売場リニュアルも検討すべきだったと思う。退店すれば当然撤去費用がかかる。その分を改装費用にも充てられる。さらに、別区画への移設の提案をしてもよかった。今になって定期借家契約のプラスの意味も考えるべきだったと思う。

大事な店は、そのままにせず、さらにブラッシュアップをすることが必要なことだ。再契約期は、それを考える貴重な時期だととらえるべきだった。

■今日のBGM(追悼 エディ藩)

「金(カネ)」の意識を持つ

学生時代からギャンブルはよくやっていた。パチンコは負けが多かったが、麻雀は強かったと自負している。今考えると、単に負けてないぐらいだったかもしれない。社会人になってからは、公営ギャンブルが加わった。最初の赴任先が群馬だったこともあり、競馬、競艇、競輪、オートとすべて揃っていた。勤務スケジュールは、開催日に合わせて作っていた時期もあった。麻雀も引き続きやっていて、雀荘のおばさんに「ここにタイムカード置こうか?」と言われたこともあった。ギャンブルに勝った思い出はインパクトが強いので残っているが、間違いなくトータルすると負けているのだろうとは思う。

会社を経営し始めて、ギャンブルは一切しなくなった。自分の金で商売をし始めたからだと思う。商売で動く金はギャンブルの金とは桁が違う。店舗数が増えていって、一回の支払いで1億以上になることもあった。本部は金を産まないので、本部スタッフは極力少なくして、できることは自分でやってきた。当然金の支払いも自分で振り込みをしていた。ギャンブルをやっている暇もないが、もっと大きな金のリスクを持ったギャンブルをしているのと同じ状態だった。

小売の仕組みがわかってくると、店長は店の損益について追及されるし、利益を出すことを追求される。利益を出すことは、売上がある程度安定してくればそんなに難しくない。売上を安定させることが第一ハードルにはなる。ただ極論すると、可能かどうかは別にして、催事を連発してセール商品を売り続ければ、売上は確保できる。実際若いころはそうやって売上予算を達成させ続けていた。そして、それを続けているうちに売上を確保するコツはわかってきた。でもそれは売上達成ゲームであり、商売ではない。利益率も原価を抑えた商品を多く品揃えしていれば確保できる。在庫のリスクを考えなければ、これもクリアできる。

ここで考えなければならないのは、金が残っているかということだ。一度、店長は家計簿をつけてみたらいい。(店なので家計簿ではないが・・・)単純に店のキャッシュイン、キャッシュアウトをチェックしてみてほしい。当然、店長は店の契約条件を知っていると思う。月度の締めが違ってくるが、単純に考えてみればいい。自分で決めごとを作ってもいい、経理に支払い日を確認してもいい。そうすれば単純に、「売上―経費(給与も含む)―仕入金額」でいくら金が残ったかがわかる。

経費には決められたもの(契約上のもの)や変更しにくいもの(人件費)もある。抑えられる経費は本当に少ない。とすれば現金を残すには仕入金額をマネジメントするしかなくなってくる。つまり仕入金額は好きに使っていいのではなく、財布の中身を考えて使っていく必要があるということになる。

企業は経営尺度をPL(損益計算書)とBS(貸借対照表)で見る。ただどうしても営業側にいるとPLで話しがちになる。せめて店長は、自分の店の資金繰りの状況くらいはわかって商売してほしい。

なかなか経営者の気持ちにはなれないが、商売は「売上達成ゲーム」ではないことも分かってほしい。

■今日のBGM

商売をやってきて今だから思えること・・・商品調達

年齢を重ねると運動不足を指摘される。暇を見て歩いているのだが、その時間がいろいろ考える時間にはなっている。そういう時、過去自分で立ち上げた小売りの会社で、引っかかっていることを考えることが多い。

小売業では、まず売上を上げていくことだが、それは数店舗やってみて、立ち上げた時の考え方は間違ってなかったと思った。順調に推移した。そこから店舗を拡大していくのだが、20店舗くらいまでは勢いで何とかなったように思う。その次のステップで考えていった1つが、利益率アップへの体質改善についてだった。つまり自主商品を作っていき、利益率を上げていくということだった。今考えると時期尚早だったのかもしれないと思ってきている。

成功している小売業の大手は、自社で商品を作って販売している。そのスタート段階では、当然生産工場とのパイプ等もあるので、まずは取引先と相乗りしたりして取引先を通すことになる。その時の商品原価は個別商品によって違うが、以前の商売だと上代の40%台くらいだったと思う。ロットによっては40%後半になる。企業が大きくなると直接工場との商談になるので諸経費込みで30%前後になるかもしれない。以前やっていた業界では、取引開始時の卸原価は50%台が多く、取引先によっては60%を超えることもあった。商売が大きくなると原価は下げていけるが、それでも利益率を改善するには取引先との商品開発は必須事項だった。

個店仕入れから商売はスタートした。店長は昔から一緒にやってきたメンバーが多く、取引先を設定すれば、数値計画を考えて仕入をしていた。店舗数が増えても商品部は作らず、リーダー的なマネージャーや店長が取引先を開発し、窓口として全店に広げていった。ただあくまでも店長の責任のもと仕入をしていた。店長は、会社の指標に基づいて、売上、利益、在庫の予算を作成し、月度の仕入れ額をもそこから算出していた。「商売は在庫」が常に根底にあり、在庫管理は徹底していた。ピーク期は年間7回転前後の回転率だったと思う。

店舗数が増え、売上が上がってきて、利益率に目を向けるようになった。その流れの中、取引先から、相乗り商品や別注商品の話が増えていった。営業との兼任ではあるが商品部を作り、あくまでも店主導の仕入れではあるが商品部の別注開発商品も品揃えするようになっていった。

結果としては、5年後くらいに利益率はその当時から5%位上昇する。ただ売上はほぼ変わらなかった。店舗数は増えていたので、店舗当たりの売上は落ちた。それが商品のせいなのか、環境のせいなのか検証はできていない。そこからコロナ禍に入った。

昔在籍したビブレも、店仕入れ主導から本部仕入れ商品の増加でMDが崩れていった。そこまでひどくはないが「私作る人」「あなた売る人」の意識がなかったかとも考えてしまう。商品部との力関係が出てきて、ビブレも20店舗くらいからおかしくなっていった。

商品部の開発商品を管理する分類コードを作って、データ化しきちんと検証すべきだったと思う。商品検討会議や売場作りや販売方法を考えるミーティングも増やすべきだったかもしれない。そして、「店の声」をもっと聴くべきだった。問題点や対策を急ぐことなく検証を続け、仕入れ形態はどうあるべきか、組織をどうするべきかをもっと時間をかけて話し合うべきだったと思う。

「人の力」から「組織の力」への転換期だったのかもしれない。

■今日のBGM

ちゃんとした会社

この時期は、決算や中間決算の数字や経営計画の資料がでてくる時期で、暇に任せてみている。本当に大きな会社は大変だなとは感じる。当然上場している責任はあるので、きちんとした分析と対策は発表する必要はある。

先日、無印良品の中間決算数値が決算説明会資料等と発表された。全体の数字は大幅な増収増益、各段階の利益も大幅な増収増益で過去最高の数字だったようだ。

今年の1月にこのブログで無印良品のことを書いた。無印良品の企業の意思は感じたが、「在庫」に若干危惧している旨を記した。今回の資料でも国内の棚卸資産は1716億と前同時期より320億増となっている。決算説明資料にも160億過剰と報告されており、今期末の営業利益に関しては「発注抑制と不動向商品の在庫消化」のため、第一四半期予測を据え置かれている。売上は第一四半期より大きく伸びたが、営業利益率の予測は第一四半期予測より-0.3%となっている。通期の見通しは「国内は営業収益を引き上げも、在庫適正化に向けた対応強化により営業利益は据え置き」と第一四半期の予測から若干利益面で修正されている。企業として無印良品は好調に数字を伸ばしているが、「棚卸資産の増加とその適正化」が会社として改善するポイントということと発表されている。

在庫をどのように適正化するかには、いろんな方法はあるが、売上上昇に対して営業利益を据え置くということは、利益を落としても処分することだと想定する。詳細はわからないが、「在庫過多」が企業の問題ということを理解して発表している。好調企業だからこれができるのかもしれないが、資料に記すことによっての覚悟は感じる。ちゃんとした会社だと思う。

イオンも決算発表されている。売上は前年106.1%も営業利益は前年94.8となっている。金融とデベロッパー事業で営業利益の約半分を占めていて、小売業と呼べるのかどうかわからない。課題のGMS事業は売上前年比102.6%も営業利益は前年-115億となっている。ライン別には細かく発表はされていないが、食品とHBCが伸長しており、衣料は前年割れのようだ。これだけ大きいと詳細は全く伝わらない。

気になる会社のビレッジバンガードが、第3四半期決算発表と同時に278百万の減損損失を計上する業績予想修正についての発表があった。そのため今期の営業利益も赤字となり、これで3期連続の赤字になる。おそらく期末はさらに赤字幅が増大すると予想する。商品回転率が年1回転前後では、腐らない商品も腐ってしまう。前回指摘した在庫について簡単に計算してみた。第3四半期まで原価で13億弱在庫を削減させている。利益率のダウンと期末在庫から計算して、商品の値入率を43%(2期前の利益率が41%だったので)と想定すると、売価で約23億円の商品価格を下げている計算になった。全体の在庫の9%に過ぎず、これではまだまだ回転率は改善できてないので、今後も細かく実施していくと思われる。商品は資産なので、商品評価を下げると会計上さらに厳しい数字になっていく。

具体的に「在庫過多」を問題点と発表する無印良品は、つくづく「ちゃんとした会社」だと思う。

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