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イオンは優れた会社だが・・・

前回、再生に向けた3社について書き、その中で、今回はタカキューの再生について書こうと思った。イオンは優れた企業だと感じていたので、そのイオンが手放そうとしている企業の再生は難しいと思ったからだ。イオンがいろんな角度から分析、対策した結果からの結論だし、業界自体もアゲインストの中での再生になると思う。タカキューの決算短信やHPを見ると「感性?」を打ち出しているようで、過去のイオンでの再生の方向性とは違うようなので、それはそれでいいのだが・・・

その内容を書きながら、優秀な企業であるイオンがなぜGMSをやめないのかをずっと考えていた。以前も同じようなことを書いたが、やはりやめない理由がわからない。

私事になるが、イオンがマイカルの経営再建に乗り出して約1年、イオングループで働いた。結局は辞める決断をしたが、その1年はその後小売業を続けるうえで非常に有意義だった。その期間にイオンの研修を受講した。退職したため中退したが、有意義でレベルの高い研修だった。退職時にそのテキストや資料は全部返却させられたので、あまり詳しくは書いてはいけないのかもしれない。研修期間は1年以上で毎月の集合研修とG別課題解決に向けての自主研修、さらにはネット講座もあった。その後その受講していた社員はイオン本体やグループ会社の経営職になっていったようだ。その時のノートは、その後自分で起業した時や経営課題を考える時に何度も見返した。そんな有意義な研修をいろんなポジションでやっている企業が成長しないわけがないと思う。

なぜGMSは続けているのか?2025年決算ではGMS事業として売上は全体売上の35.1%を占めているが、営業利益では6.8%しかない。グループでの営業利益は金融、デベロッパー、ヘルス&ウエルネスが上位3カテゴリーで、その構成比は合わせて54.7%と半分を占める。SM事業も営業利益はGMSの2倍であり構成比は13.8%になる。GMSの詳細は読み取りにくいが食品事業は伸長しており、衣料品は前年割れの状況のようだ。GMSではイオンより優等生だったイトーヨーカドーが衣料品から撤退しており、もうGMSとしての存続は厳しい状況になっている。イオンのGMSも食品頼りになっており、その食品もSM(スーパーマーケット)事業と併せれば改善がさらに進むのではないかと思う。そして、間違いなくGMSの解体を考えるべきだと思っている。

続ける理由は何か?大きな要因は収益の柱になっている金融事業の根底にGMSがあるということかもしれない。カード戦略を中心とした金融事業の根底にあるのはGMSの客数、客層にある。GMSのポイント戦略や販促面へのアプローチでカード顧客を広げていっている。ただこれはGMSからデベロッパー事業に置き換えることはできないのだろうか?当然テナント各社独自の戦略もあるが、ルミネカードやエムズカードなどの普及を考えれば可能だと思う。そしてまだまだ好調なSM業態を起点にしてもいい。

さらに、東日本大震災の時、セーフティゾーンになったように災害時の生活拠点化としての位置づけを想定しているということも考えられる。これは地域貢献の最たることではあるが、これも現状のSCの機能に委譲し、各テナントにその役割を明確に依頼すればいいと思う。その他、従業員の処遇など当然のように課題は数多くあるが、それはどこの企業でもよくあることだ。

きっと一番大きな原因は、創業者一族の、「礎だったGMSをなくせない」という強い意志のような気がする。そして、間違いなく、イオングループの次のステップは、祖業でもあるGMSをきれいに解体することから始まると思う。

■今日のBGM

商品の幅を広げると商売は難しくなる

ヴィレッジバンガードの経営状況の悪化は、商品の幅が広がりすぎた事が大きな引き金になっている。

少し商品の用語の説明をする。まず小さな商品単位を品目と呼ぶ。一般的にはアイテムと同義になる。品目が集まって品種になる。品種が集まって品群になる。例えば品群が婦人衣料、品種がスカート、品目がフレアスカートという分け方になる。

ヴィレッジバンガードの商品構成は、多くの品群が入れ混じっている。衣料品、服飾品、書籍、文具、玩具、食品など。さらにそこから細分化され、衣料服飾系でもメンズ、レディス、アクセ、鞄、時計、帽子など多岐にわたり、さらにそれぞれにキャラクターが打ち出されている。それぞれの商品サイクルは違っており、付随するキャラクターのピークタイムも見極めなければならなくなってくる。はたしてどれだけのスタッフでこの商品を管理していたのだろうか?そして、どの程度のデータをどれくらいの頻度で出力し、商品の改廃のジャッジをどういう基準でしていたのだろうか?

何年か商売をやってくると、売場の基本レイアウトや品揃えは想定できる。そして想定売上に対しての在庫量も逆算する。そこから適正な売場面積も導ける。さらに商品の切り上げ期も分かってくる。

例えば50坪程度メンズカジュアルの店を長年やっていたとする。当然商品の流れがあり、従来の品群での売上のアップダウンがあり、その中で在庫の持ち方や売り場のレイアウトを考えて商売をしている。例えば、そこに新しい品種としてカジュアルアクセを導入する。さらに加えてシルバーアクセもコーナー化する。そこの効率次第で、従来の売場を変更していく。服飾雑貨が売れることで時計も導入する。ディスプレイ程度に品揃えした、鞄や、帽子も拡大する。そうなると全く当初のMDとは変わっていく。売場のコンセプトも変化していく。

つまり、衣料品に加えて服飾品という品群が増え、服飾での品目が増える。売上がその導入により上昇しても、売場面積は変わらないので間違いなく各品種の効率は変化する。それをうまくつかんで、売場をアコーディオン化できればいいが、既存品種も従来通りの品揃えでは、在庫は膨らむ。当然処分しないと不良在庫が増え続ける。もし服飾品の売上の比重が上がれば、当初の店のイメージは大きく変わる。そして、不良在庫を処分すると利益が下がる。利益ダウンを後回しにすると、処分が遅れた不良在庫が増えていく。そうなると商品回転率はどんどん下がる。

おそらくヴィレッジバンガードはそういう状況が続いた結果のような気がする。ここ最近買収されたライトオンもマックハウスも同じような状況の結果になっている。好調を続けるユニクロは品群を増やしてないし、商品構成比率も大きくは変動していない。逆に品種品群を増やしている無印良品は、売場を大型化し細かなデータ管理をしている。

売場面積が変わらずに商品の幅が広がれば、当然歪みが出てくる。軌道修正は当然データありきになる。商品の売上分母だけでなく、回転率など消化状況を重視し、品群や品目さらには単品ごとの効率をデータ化し、素早く改廃対応する必要がある。

何度も書いているが、商売は利益率より適正な商品回転率を重視するべきだと思っている。

■今日のBGM

やっぱり、この会社は・・・

このブログの今年3月にヴィレッジバンガードについて書いた。私自身「小売りのキーは在庫」を念頭に仕事をしてきたし、その観点で企業を見る。ヴィレッジバンガードの回転率の低さは業態が複雑であっても、少し異常に見えた。今期決算が発表され、リストラ案も併せて出されているが、おそらく再浮上には大きな改革と多数のヒット商品が必要な気がする。

商売の基本は、「商品を仕入れ」て「商品を売って現金化」して「代金を支払う」ということに尽きる。売れなければ支払えない、支払えなければ仕入れられない、仕入れられなければ商売は続かない。簡単な仕組みだ。いろんな形態はあるが、一般的に現金払いの時は(もうさすがに手形はない?)、末締めの翌末払いが多いように思う。つまり月初に仕入れれば約60日後に、月末に入れれば約30日後に支払う。平均すると45日後には支払いが発生する。その間に売れなければ支払えないということになる。企業の規模や取引年数にもよるし、原価率にもよるが長く見ても4~5か月後には商品は現金に変わってないと商売は続かない。さらに衣料関連では四季があるので、季節外れでは売れない現実もある。つまり商品は最低でも年3~4回転は必要ではないかと思う。

ヴィレッジバンガードの商品回転率を年度別に出してみた。年初売価在庫、期末売価在庫(原価率から逆算)を2で割って平均在庫とし年間売上で割ってみると、2024年は1.13回転となる。つまり1年間でやっと1回商品が入れ替わるということになる。取扱商品が衣料服飾品だけはないので季節指数があてはまりにくく、さらに書籍の一般的な回転率もわからない。ただ、近年は衣料品や雑貨の比率が高まっていたようにも見えるので、あまりにもこの商品回転率は、低すぎるように思う。過去10年の回転率を計算してみたが2016年の1.56回転からほぼダウントレンドになっており、2023年は0.97回転と1回転していない。つまり在庫過多状況が続いているということになる。

当然、経営側はその事実を理解している。毎年の決算短信にはコメントしているし、実際今期は店舗縮小の名目ではあるが2472(百万)の商品の評価損を計上している。さらに2013年にも同様に4692(百万)の商品評価損を計上している。そして今期以降に81店舗、今期39店舗の退店計画を発表している。決算時の店舗数は293店舗となっているので今後約3割の店舗を減らす計画のようである。

尚、今年度の数値予測は売上25921(百万)前年比103.8%、売上総利益率43.2%(前年度差+5.7%)営業利益1048(百万)(前年差+1984百万)と発表している。今期は出店1退店39となっていて期末の店舗数は-38であり、計算すると次年度1店舗当たり売上は101650(千)で今年度の85195(千)に対して119.3%となっている。この状況下で店舗当たり売上が119%伸長し、利益率が5.7%も上がる計画はどう考えてもあり得ない。当然39店舗の閉店セールは実施するのだろうし(それが売上の上昇予測要因?)、この在庫状況ならもっと値段を下げなければ商品はなくならない。利益はどうやって上げていくのだろうか?ネット売上にそこまでプラス効果は期待できないのではないか。

個性が強く、「宝物探し」的なMDで大きくなっていったが、郊外モールなどへの出店も増え、標準化された売れ筋の品揃えも増えていった。商品量が少ないから、マニアは探して買う喜びがあるが、ありすぎるとどこにでもある品揃えになり、「わざわざ感」がなくなってしまう。前回も書いたが、昔経営していた店の商品品揃えとも重なることがあったので、定期的に見ていたが、間違いなく「切り上げ期」が遅すぎた。ひどいときは次年度まで商品が寝てしまっていた。本や雑貨と同じように衣料品や服飾品も年間商品と捉えているように感じていた。当然売れずに在庫は増える。アイテムが広いので店長や本部スタッフの得意分野でのみ商売をしていたのではないだろうか?売場の個々の商品サイクルがわかってないように見えた。

そういえば、昔も商品の評価損を出していたなと思って調べると前述した2013年だった。結局10年以上たっても同じことをやっている。そして時代は、その時分よりもヴィレバンに迎合していない。このカテゴリーに手を差し伸べる企業はあるのだろうか?

■今日のBGM

ポイント販促が異常に多い

これだけ暑くなると、歩いて買い物には行きたくない。バーゲンも始まっているSCもあるので車での買い物が増える。先日も駅前のSMへ行くには暑いのでどうするかと言っていたが、イオンがイオンペイでの買い物でポイント10%と告知されていたので、車でイオンへ買い物に行った。SMの安定感が駅周辺のSMより劣っているイオンへは、割引日や、ポイント戦略日にしか行かないようになってしまっている。

今月のイオンのポイント戦略日は10、13~15、26~28の7日間がイオンペイポイント10倍、20、29、30が5%オフ、その他15日がGG感謝デー(55才以上5%オフ)おおよそ10日が還元デーになっている。意味合いは微妙に違うが、ほぼ5%引きの日が非常に多い。

ポイント戦略はいつごろからこんなに増えたのだろうか?ビブレで店長をしていた最後の時期位にポイント10%のDM戦略を多用した思い出がある。バーゲン以外セールをしなかったブランドショップの売上が跳ね上がり、販促効果は大きかった。ただ会計処理上の変化があり、ポイント戦略は禁止になったように思う。さらに、ポイントによる不正も多かったのもその要因になった。

当初の会計処理はポイント使用時に経費計上していたが、その後ポイント付与時点に計上になったような気がした。少し調べてみると、現状は大会社以外に関してはポイント利用時に計上となっている。ただしイオンのような大会社はポイント付与した時点で仕訳が必要になっているようである。ポイント使用率を想定して契約負債とし、その分を減らした売上、売上負債と現金に仕訳けるようになっている。つまり売上計上は契約負債を引いた金額になっている。(これであっているのかはわからないが・・・)ポイント使用率を設定することで結果的には5%オフよりポイント10倍のほうが利益マイナス面に関しては影響が小さいということはわかる。

こういうポイント戦略が販促として効果が大きいのは食品売場だと思う。食品売り場を活性化することが多くの小売業の一番の課題になる。デイリー客が増えるし、商業施設の売上の核になる。そのために特売をしてチラシ販促をしたり、生鮮の専門店を入店させたりする。そういった販促手法から、ポイント戦略に変わってきている。

GMS食品業種の利益率は25~26%と言われている。昔、ビブレで店長をしていた時は生鮮のテナントを売場に組み込んでいたので21%くらいだったと記憶する。利益構造も変化していると思うが、「売場全品5%オフ」のような販促は絶対企画できなかった。現在のチラシの内容は昔ほど値段を訴求していないし、利益の出る総菜の拡大で利益率は改善しているかもしれない。今後は「5%オフ」や「ポイント10%」企画はどんどん増えていくと思う。各社の取り組み姿勢にもよるが、安易な販促なので、これがさらに5%オフから7%オフになっていくことも考えられる。ちなみに売上年間25億、回転率月3回転、利益率25%の食品売場で3日の5%オフと7日のポイント10倍(使用率30%設定)を実施したと想定すると、手計算では月度利益は-0.1%強位の計算結果になった。仕入努力や生鮮品の値引き率の減少で十分改善できる数字にも見える。

カード会員の囲い込みや、ネット客の拡大、スマホ決済への取り組みなど、企業としてのプラス要素は大きい。ただ、一方で商品のライフサイクルを考えた販促や時系列による売場の変化など、取り組むべき業務がないがしろにされてしまうかもしれない。小売業としてこれだけポイント戦略が多いと、その流れが当たり前になってしまうことが一番怖い。

■今日のDVD(モンキーズ)

適正な利益率は?

前回、ユニクロのMDについて書いていて、いつも気になっていたことを思い出した。毎年の決算数字で、ユニクロの売上総利益率は適正なのだろうかということだ。

商売をやっていて、売上総利益率は非常に気になる数字ではある。過去の経験では量販店時代やビブレ時代も、記憶ではアンダーウェアが40%に近く、衣料品、服飾品では40%を超えることはなかった。売上効率が高かった売場で35%を超えていた印象しかない。その後自分で会社をやってみて、在庫を第一チェックポイントとして運営し40%は超えていった。店舗数が増えていき、取引先との別注商品をスタートし45%以上には上げていけた。それ以上上げていくには、商品ロットの問題があり、店舗数を増やすことと、当然のことだが、全店で高く消化できる商品を作ることが必要になってくる。

小売業の総利益率の原価は商品原価と考えていい。ただそこから商品の評価損が加えられる。つまり割引をしての評価が加えられる。商品原価(期間仕入れ分)÷(商品売価―値下額)が原価率となる。大きな数字ではないがそこに商品のロス分(万引き、不良品)が加味される。製造原価は商品にもよるが30%前後と言われている。

ユニクロの調達原価は35%前後と言われており、商社等の手数料を加えると38~40%が商品原価として計上されているようだ。ちなみに、前期決算での売上総利益率は53.9%となっている。この利益率をどう見るか?売上は3.1兆円の規模になる。ものすごい金額の商品を仕入していることになる。決算書を見ると前年より25206(百万)商品在庫(原価)が増えていて、売上が3.1兆なので3.8兆円以上(売価)の商品(売価)を仕入れていることになる。それでも原価は40%前後というのなら、相当まともな商売をしているように思える。

始めて取引する際に、最初の原価は、取引形態にもよるが55%~60%くらいだろうと思う。10年も商売を続ければ50%くらいにはなる。発注量にもよるが一部の商品を別注して40~45%の原価にはなる。これは20店舗強まとめた過去の経験上の数字で、ユニクロくらいの天文学数字でも40%くらいの仕入原価であれば、おそらく相当売価を抑えてきていると思う。さらに原価率から逆算すると、利益率は6%くらい下がってはいるので、期中でのプライスダウンも相当な額になっていそうな気がする。決算書を見て計算してみたが金額が大きすぎて、わからなくなってきた。(算出したが、あっているかどうか想像もつかない…)

何が言いたかったかというと、ユニクロは、売れる値段を考えた仕入れをし、売れなかったらその商品を迅速になくしていっているということだ。つまり利益率を考えた商売をせずに、売れる値段設定をして、売れなければ迅速になくしていっているということになる。当然最低の利益率は念頭にはおいているが、売れることを最優先にしている。商品特性は違うが、アダストリアの売上総利益率は54.7%、パルGが55.9%であり、ユニクロの規模を考えると適正な値段と商品処理を優先的に行っていることがよくわかる。

厳しい会社は、商品価値を市場価値で見てないことがある。ライトオンはワールド傘下後の決算で売上総利益率は39.9%まで下がっている。3期前は50.7%の実績だった。その時の在庫は2.5倍位あった。店舗数が減ったこともあるが、利益率のマイナスも考えると、商品評価を大きく下げており、企業での商品価値と市場価値の差が大きかったことは間違いない。適正な数字かもしれないが、上場小売業梨で売上総利益率が60%を超える会社もある。

ただ、価値観はそれぞれなので商品価値は判断しづらい。ユニクロの利益率を商品展開と決算数字で確認して納得できたように、決算数字を見ていると色々見えてくるものもある。それぞれの会社の戦略や取り組み姿勢がよくわかってくる。

■今日のBGM

ユニクロは客層の幅が広いから・・

近頃、食品の買物ついでに、ユニクロと無印良品は定期的に見ている。本当に誰が中心になって、商品のMDを組み立てているのかと感心する。やはり両店とも、あまり外れる商品はなく、タイミングを見極めてプライスダウンもしており、商品のライフサイクルもうまくコントロールしている。あまりとがった商品もなく、必要な商品が提案できている。

先日も、朝の番組で、「高機能のアンダーウェア」を試して、いろんな角度から評価し、高評価の商品を紹介していたが、結局No1だったのはユニクロの高機能アンダーウェアだった。各下着メーカーなども比較されていたが惜敗していた。同じ番組で、食料品などではいつも「トップバリュ」などがランキングされるが、イオンの商品はランキングされていない。専門メーカーや小売最大手も寄せ付けない強みがある。

ユニクロで、半月くらい前から、「ポーター」に似たバックが、3~4種類くらいバックのフェイスにしては大きく提案されている。今年の1月に1型発売されたらしく、さらに2024年に韓国で先行発売され爆発的な人気があったようだ。「ユニクロ:C」の商品もあり、値段は2990~4990だったように思う。

おそらく、ユニクロ以外の会社で、この商品は作れないし、売れないなと感じる。値段が全く違うので、別物と言い切れそうだが、なかなかファッション系の他の会社では作りたくても作らないし、作ったとしても店頭では売りにくい。そして何よりこの値段では作れない。

以前、ユニクロのチラシ折込について、ユニクロの客層の幅の大きさが背景にあるという旨を書いたことがある。はたして、一般購買客で吉田カバンをどれくらい知っているのだろう。通勤電車で吉田カバンを持っている比率は間違いなく10%以下だと思う。さらに70才以上になれば知名度はもっと下がってくる。おおまかに勝手な予想だが、ユニクロのお客様で吉田カバンの知名度は20%以下だろうと思う。つまり、機能や値段を見て購買するお客様がターゲットであれば、「似ている」という意識は必要ない。単純にちょっと「洒落て」いて「機能的」で値段が「リーズナブル」であれば客層にぴったりはまるということになる。

もし、この商品が売れ続けるなら、ユニクロのMDの狙いはうまくはまる。近頃、本家の吉田カバンは、いろんなブランドとコラボをしている。プレミアム感をどんどん出している。ここでも完全に客層の2極化の様相を呈してきている。

ユニクロも無印良品も商品アイテムは少ないが、客層を狭めず、商品は的確に絞り込んできている。ユニクロはジルサンダーやクリストフ・ルメールを皮切りに有名デザイナー監修のブランドも低価格で打ち出し、安売りのイメージとも一線を画そうとしている。無印もヘルス&ビューティーなど拡大し商品の幅を広げ続けている。

幅広い客層に、アパレル中心に的確な商品を送り続けるユニクロや、1カテゴリーでは売れるアイテムを集中させ、カテゴリーの幅をどんどん広げていく無印良品の商品MDの仕事について、真剣に詳しく聞いてみたい。

■今日のBGM

イオンリテール(小売業)とイオンモール(デベロッパー)

まだ、流通アナリストの「総合スーパーでイオンだけ生き残った」という文面が頭から離れない。以前ブログに書いた「㈱イオンモール上場廃止」について、再度㈱イオンリテール側からどう見るかを考えてみたい。

㈱イオンモールを上場廃止にしてイオンの子会社化したことは、おそらく、各会社の意思決定を早くすることが一番の要因だと思っている。大きなポイントとして、㈱イオンリテールが資産を持ち、賃料収入を得ているイオンモールを、資産含めてすべて㈱イオンモールに移管することがあげられる。つまり、㈱イオンリテールは所謂「ジャスコ(イオンのGMS)」中心の小売業だけの会社になる。それにより、会社の収益構造が変化するので、企業としての生き残りを明確にできる。

前回も書いたが㈱イオンリテールが資産を所有するイオンモールは数多くある。㈱イオンモールはもともと三菱商事とスタートさせたモール事業(㈱ダイヤモンドシティ)で2007年に㈱イオンモールとして始まった。㈱イオンリテールもモール事業があり、その後2013年に㈱イオンリテールの54モール、15SCの管理運営(PM:プロパティマネジメント)を㈱イオンモールが請け負っている。わかりにくいかもしれないが、㈱イオンモールの主な業務は今までは、資産も保有している㈱イオンモールの物件のPMと資産は㈱イオンリテールのモール(名称はイオンモール)のPMが主な業務だった。今後どういう流れで資産を移管するかは未定だが、これで両社の流れは大きく変わる。単純に、㈱イオンモールの主な業務は商業施設のプランニング含めた運営管理、㈱イオンリテールは小売業(GMS)専業となると考えられる。

私見ではあるが、おそらく㈱イオンリテールでのテナント収益は黒字で、不振のGMSとしての小売業を支えてきたのではないかと思う。詳細はつかめてないが、㈱イオンリテールの営業収益全体におけるテナント収益は約20%と推測されている。当然課題はGMS事業になっていることから、不振のGMS事業への投資を優先させ、安定収益があるモール(テナント)事業への投資を遅らせていたのではないかと思う。㈱イオンモールとしても同じグループ会社の物件とはいえ㈱イオンリテールの物件には強く提案ができず、思い切った施策が打てなかったように思う。PM事業への投資等によって㈱イオンリテールの数字に影響を与えることはリスクが大きいし、㈱イオンリテールもそれを望んでなかったのではないだろうか。そういう環境下でもあり、㈱イオンリテールの物件は、モールとして新鮮さを感じず、テナント各社にとってはあまり魅力を持てないSCだったように思える。

もともとPM業は、オーナーの意思で運営管理の手法は変わってくる。資産を持たないPM会社が、資産保有者に意見を通しづらく、思い通りに動けない状況になることは多い。おそらく今後は㈱イオンモールが資産を持つデベロッパーとして、旧㈱イオンリテールの物件の改良は進んでいくと思う。今まで㈱イオンリテールの物件ではモールの改装提案や、テナント誘致、入れ替えは厳しい状況だったと思う。それが㈱イオンモールに変わればそのテナントの影響力も考え、いろんな方向から検討され、前向きな改良が進んでいくかもしれない。

㈱イオンリテールのテナント収益が欠ければ、いよいよGMS事業の存続がイオングループの課題になってくる。イオングループのSM(スーパーマーケット)事業は好調であり、ヘルス事業も好調を続けている。GMS内で収益が改善できていない衣料品や装飾品、住居品などを続けるべきか、続けるなら持続可能なMDは何かの結論を出す時期に来ている。

赤字状況であるGMS存続のジャッジは急がれていると思う。

■今日のBGM

総合スーパーでイオンだけ生き残った?

先日、ビジネス誌オンラインの「プレジデントオンライン」に「総合スーパーでイオンだけ生き残ったワケ」という記事があった。銀行出身の流通アナリストが執筆していた。モータリゼーションの変化で大型モール(RSC)へ購買客が流れたことでイオンだけ残ったという内容だった。その流れは当然あり、大きな要素ではあるが、そのことは改めて書くほどのことではない。それより「総合スーパーでイオンだけ生き残った」ということを流通アナリストが書いていること自体に驚いた。当然イオンの総合スーパー(GMS)の状況はわかっているとは思うが、決算内容を見てもイオンとしてはGMSが一番の課題になっているはずだ。

2025年2月期の決算資料を見ると、GMS事業の売上は35594(億)あるが営業利益は163億しかない。全体の売上が101348億でGMS事業の売上構成比は35.1%あるが営業利益は6.8%しかない。ちなみに営業利益は金融611億、デベロッパー530億、ヘルス事業360億、SM(スーパーマーケット)329億の順で、小売以外の金融、デベロッパーで全体営業利益の約半分を稼いでいる。ただ、その2事業も当然小売業があってこその数字にはなる。

総合スーパー(GMS)事業は、地域会社も含んでの数字であり、SM事業との区分がつきにくいが、イオンリテール(本体のGMS事業)としては79億円の営業利益で前年を割り込んでいる。ちなみにイオンリテールの詳細は出ていないが、第3四半期決算では売上は13785億、営業損失162、7億と発表されている。

総合スーパー(GMS)事業は食品や衣料品、服飾品、住居関連品などで構成されており、それを総称している。所謂、昔のスーパーの「ジャスコ」業態と考えればわかりやすい。「総合スーパーでイオンだけ生き残った」とあるが、はたして、生き残っているのだろうか?

おそらく、食品やヘルス関連以外は間違いなく赤字だと思う。セグメントを変えて、食品をSM事業にヘルス関連をヘルス事業に分けたほうが効率も利益も改善するのではないかと思う。つまり衣料品や服飾品、住居関連品をなくして、そのスペースを専門店に変えれば全体の数字は改善するのではないかと普通に考える。

イオンモールにGMSとして入店しているので、収益面では厳しくてもグループ全体にはメリットがあるというのだろうか?お客様はGMSがあるから安心してイオンモールに行っているというのだろうか?当然立地は違うが、「ららぽーと」のほうが客数も多いし、SCの売上も大きい。テナント数も「ららぽーと」のほうが多い。「ららぽーと」の多くにはGMSのテナント入店はない。イオンリテールの衣料品のところに「ユニクロ」「GU」や「西松屋」などを入店させ、住居品のところに「ニトリ」や家電など、さらには大型化している「無印良品」を導入させれば、現状のニーズは解消されるし、既にそのテナントがあっても他テナントの導入でバリエーションも増えてくる。SCの資本費以上で賃貸させれば赤字にはならないし、少なくとも月坪100千の売上もない現状のGMS衣料品等の売上効率を簡単に上回る。さらに新しいテナントを入れることでSCの活性化にもつながる。現状のイオンモールには個性がなく、似たようなテナントのラインアップで、完全に「ららぽーと」に負けている。

イオン自体も当然そこは理解していると思う。今期デベロッパー事業のイオンモールと、サービスその他事業のイオンディライトを上場廃止にし、イオンの完全子会社にしている。一義的には、㈱イオンリテールが所有しているSCのイオンモールを㈱イオンモールに移管することかもしれない。しかし、深読みかもしれないが、イオンモール内のGMSの解体も視野にあるのかもしれない。そうなればGMSの売上は減り、会計上ではテナントの賃料だけの売上計上になり、売上は大きくマイナスする。しかし、収益は大きく改善する。

創業者一族の岡田会長の最後にやる仕事は「総合スーパー(GMS)の解体」ではないだろうか。それはなかなか創業家以外のサラリーマンではできない。

そういう状況下で、「総合スーパーでイオンだけ生き残った」と言えるだろうか?

■今日のBGM

定期借家契約 ➁・・・ 撤去工事

前回、退店時のことを書いていて、ちょっと引っかかっていることがあり、そのことを書いてみる。ただ、この問題の正解はわからない。

退店時には契約上、工事区分でいうB.C工事の撤去が出店側の負担区分となっている。現実としては、その工事の負担金額はデベロッパーとの調整によって違っており、同じデベロッパーでも、個別のSCによっても違うことが多い。つまり、後継テナントとの話し合いで残存を希望する什器があればそれは撤去せず残すことができ、その分撤去工事の経費が減らせる。その調整をしてくれるSCのスタッフや内装監理室の担当によって撤去金額は変わる。ただしこれは交渉事であり、あくまで契約上はスケルトン渡しになっている。

いろんなことがあったが、何件かをここに書いてみる。

・後継テナントが決まっていたにもかかわらず、そことの調整はなしで契約書通りほぼスケルトン渡しとなった  

→ 契約書草案で「デベロッパー指定の業者が撤去工事を実施」とあったのを苦労して「他の業者も併せて検討する・・」のような契約に緩和してもらった。ただし、そのためか後継テナントとの話し合いはなかった。オフィスビル中心の不動産系のSCで子会社が施設管理をしており、全く融通が利かなかった。ちなみに後継テナントは1年前にはほぼ出店は決まっていたと後日聞いた。ほぼ敷金は帰ってこず、退店13店舗中最も撤去工事費は高かった。現実的には間違いなく撤去工事の調整はできた。

・B工事撤去の見積もりが異常に高く、添付された詳細図面をみたら自社の区画でなく、売場面積が5倍くらいある他区画の図面での請求書が届いた

→ 日本で一番大きい企業。こちらから確認の電話をして、後日修正の請求書が届いたが、あるべきでない事。C工事の 撤去に関しては後継テナントと細かく調整してくれた。

・使える什器は使い、天井照明もそのままで、足らない什器や環境に手を入れて出店。契約時に引き継ぎ時の売場写真を細かくとり、その状況を現状として契約書の覚書を作り契約した。

 →当然のようにスケルトン渡しでの請求があった。個別面談をして契約書の再確認をしてもらいデベロッパーに納得してもらった。面談するまではかたくなに拒否された。

撤去時にもめることは非常に多い。何よりもお互いに前向きな仕事ではない。デベロッパー側とテナント側とのはざまで、工事に関してはいろんな問題が出てくる。特に退店は営業数値が厳しい状況だった店がほとんどで、退店時に発生する経費が大きくなるとそのまま損益に響く。大企業は別だが中小企業ではできるだけ経費を抑えたい。細かく打ち合わせをすることが間違いなく必要で、後ろ向きの仕事にはなる。後継テナントの声も交えてプラス要素に導ければデベロッパー側にもメリットが出る。そう考えて交渉してもらえればスムーズに進む。ただデベロッパー(オーナー企業)とは違うPM業者が管理していると、さらにワンクッションはいるのでそれも難しくなる。

最後に、少し外れた感想を書く。大手デベロッパーほど中小企業へのケアは薄い。当然一概には言えず、担当者にもよるが、退店時の対応だけでなく営業面の問題も同様に感じた。出店が近隣エリアに固まったり、同じデベロッパーに集中したりすることは、会社の政策だけでなく、友好なリレイションシップがそうさせたことも大きな要因にはなった。

出退店に関しては、契約書を細かく読み込み、疑問点を理解するまで交渉する事、そして営業の担当者(本部、店)とは良好な関係を持っておくことが非常に大切なことだ。

■今日のBGM

定期借家契約とやっておくべきこと

振り返ってみると、以前の会社で12店舖退店している。今になって、そんなに退店していたのかと思う。結構な金と労力を使ったなと思う。

自社の出店の教訓として2つの結論を得た。SCでは3階以上に出店しないということ、最低売場面積を設定すべきということだ。新規で立ち上げるとどうしてもデベロッパーより立場が低くなり、「出店させてもらう」立場になる。そうなるとあまり強い主張はできなくなる。ちなみに退店した12店舗中7店舗がSCの3階以上で、最低設定売場面積より小さかった店は5店舗あった。それでも契約満了までに退店した店は1店舗しかない。

その中で不本意な退店が3店舗あった。すべて契約満了時の話し合いで、デベロッパー側から「定借満了」で再契約しない旨伝えられた。そのうち2店舗は継続の意思が強かったし、もう1店舗も条件交渉次第では残る意思はあった。現状のテナントの出店契約は5年か6年の定期借家契約であり、そうはいっても話し合いにより再度新しく契約を結ぶことが多い。ただ3店舗ともほぼ次のテナントは決まっていたようだ。そして、自店は平均以上の坪売上はあったと思うが、代替場所の提示はなかった。

その3店舗とも後継テナントは大手資本の会社であり、おそらく政治的なもので、条件も自店のほうが高かったと思う。そういうことは今までの慣例や、伝聞でいろいろ聞いてきた。当然、企業は1つのSCの収益より会社のメリットを優先する。例えばそこに出店することで他のSCへの出店を決めたり、複数店出店の1店となったり、双方の政治的メリットが優先される。3店舗のうち1店舗は隣接の大型店舗の拡大で、おそらく歩率要素が高い契約だろうから、固定賃料だった自店のほうが賃料は高かったと思う。それでもSCとしての賃料は減っただろうが、それにより他SCへの出店というメリットがあったようだ。もう1店舗も大量出店の一環で、間違いなくそのSCの賃料もダウンしたと思われるが、他のSCの空床の解決にはつながったと思う。3店舗とも自店の売上はSCの平均点以上だったが、代替区画の提案がなかったことから、そこまで必要なテナントとされていなかったのかもしれない。ここで思うことは、SCの動向を把握できなかったことにある。退店が増えたコロナ期が重なったことも大きい理由にもなる。

課題として挙げられるのは、完全にコミュニケーション不足ということだ。社長として毎月1度は臨店していたが、もう少しデベロッパーとの話し合いをするべきだった。同様のことがエリアの責任者にも言えると思う。

ただ一番大事だったことは、会社として必要な店なら、さらに良くしていこうという考えを持たねばならなかったということだ。定借終了1年前には、再度自店の流れを詳細にデータ化し、どうしていくべきか社内決定すべきだった。そしてそのタイミングで、商品政策も含めて再投資をかけての売場リニュアルも検討すべきだったと思う。退店すれば当然撤去費用がかかる。その分を改装費用にも充てられる。さらに、別区画への移設の提案をしてもよかった。今になって定期借家契約のプラスの意味も考えるべきだったと思う。

大事な店は、そのままにせず、さらにブラッシュアップをすることが必要なことだ。再契約期は、それを考える貴重な時期だととらえるべきだった。

■今日のBGM(追悼 エディ藩)

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