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イトーヨーカドー、アダストリアからの調達終了

8月14日の日経新聞に「ヨーカ堂、今期秋冬商品を持ってアダストリアからの商品調達を打ち切る。」という記事があった。「ファウンドグッド」を続けないということになり、今後は経営資源を食品スーパー(SM)に集中するということのようだ。

「ファウンドグッド」に関してはこのブログでスタート期に3度(2024年2.3.4月)書いており、今年も6月に書いている。再度読み直したのだが、立ち上げ期から成功を危惧しており、最近も「数字は上向いてないように見える」という内容となっている。成功するには、お互いの資金を出し合って、会社を立ち上げるべきだったと思っていた。

新聞記事の内容から察すると、商品のリスク、内装負担、販売員はイトーヨーカドー(IY)にあったようだ。この条件は、IYからの強い協力要請の結果だと思う。「残った商品は26年以降も販売は続ける」と記事にあるように、商品リスクがIYにあることがわかる。

現状、IYのセブン&アイホールディングスでの立ち位置が厳しくなっており、IYの株式を売却する話も出てきている。その流れで、IYはスーパーマーケット(SM)事業に集中する方向に動いている。IYとしては、「ファウンドグッド」事業は、上記したようにほぼリスクを負担しており、短期的に黒字化のめどが立たない事業として結論付け、事業撤退を決定したということだと思う。数字が順調でなければIYとすれば続けるメリットはない。データ分析が得意な、現実的な会社であるIYらしい結論だ。

「ファウンドグッド」は何店舗か見に行ったが、同じIYでも立地が大きく異なる。古いIYもあるしGMSとしての店もある。さらには大型SC(アリオ)内にあるIYもある。アダストリアにとっては、経験したことのないGMSの客層だったはずだ。MDを進めてきたアダストリアのスタッフには、簡単には対応はできなかったと思う。おそらく大型モール内のGMSをイメージしてのMDだったと思うが、それでは対応できない店が多すぎた。プライスラインもユニクロよりも若干高めに設定されており、競合にも勝てていない。さらに販売スタッフの数も教育も足らなかった。ユニクロは1店舗当たりのスタッフは最低40~50名と聞くが、アリオ内の大型物件でも5~10名程度ではなかっただろうか。ユニクロやGUを競合と考えていたのであれば、商品面、販売体制面でも完全に見劣りしていた。何度か見たアリオ川口内でのショップは、オープン期より縮小されており、厳しい状況がうかがえた。

アダストリアにとっては数字としては大きなマイナスはないが、従来の販売チャネル以外での失敗は社内外には大きい痛手でとなったのではないか。どちらかというと顧客や市場をよく研究してファッション業界では手堅く、偏差値の高い企業のイメージがあったのだが、少し取り組みが甘かったイメージが残る。企業として多角化を上げており、マルチカテゴリー戦略を打ち出している企業としては少し気にかかるマイナスになった。

IYの今後の非食品の売場は、今取り組んでいる商品リスクが小さい量販店ブランドのコーナー化を増やし、さらには大きなマイナスが出ないような条件(固定賃料は低く設定し、売上歩率での契約など)で、テナント出店にもシフトしていくと思われる。「しまむら」との組み合わせも面白いし、好立地なら「無印良品」にすべて任せるというリーシングもある。無印の近年の出店は生活感のある場所への出店が増えているように思う。

40年以上小売業に携わってきて、「イトーヨーカドー」と「アダストリア」は私にとって優秀な会社のイメージしかない。量販店時代は取引先各社からイトーヨーカドーの優れた商品戦略、在庫戦略を聞き、その後アリオ立ち上げ時のコンサルに加わった時も企業体質のすごさを感じた。ビブレ在籍時や小売業経営者の時にはアダストリアには大変お世話になった。その2社が取り組んでも結果が出なかった。

間違いなく、客層のバラツキがあるGMSの非食品売場は成り立たない。この結論はここでも実証されている。

■今日のBGM

季節指数の変化とバーゲンパワーの低下

昔は、「ニッパチ」と言われた2月と8月は売れない月だった。共に、1月7月のバーゲンで春夏物や秋冬物を売り尽くしてセール商材がなくなり、売場前面も先取りと称して2月には春物をメインに8月には秋物の打ち出しを強化していたからだ。それがいつの間にか季節指数が変化し、2月の落ち込みは小さくなり、8月は6月や9~11月より売上分母が大きくなってきた。

要因はいくつかある。まず考えられるのは、郊外型大型モールが各地にできたことで、SCが買物目的と併せて、時間消費型に変わってきたことにある。夏は暑いので買い物を控えるという行動パターンから、快適な空間で時間を過ごせる場所として大型モールを利用し、そして買い物も楽しむという流れへの変化である。特に8月は学校の休日もあり、飛躍的に売上構成比は上がった。

さらに、温暖化が進み9月はまだ秋ではなく、夏が続いている状況にあるという季節感の変化がある。つまり7月で夏物をなくすより8月や9月まで夏商戦を引っ張るほうが商売上のメリットが出てきている。そして季節商品のサイクルの変化とそれに伴うセールのタイミングの変化も出てきている。

このブログでは何度も書いているが、購買客層の変化も大きい。完全に高年齢化が進んでおり、ファッションの流行を第一に考える層が完全に減ってきている。ファッションを引っ張ってきた客層は大きく減り65才以上の高齢者層が大幅に増えている。つまりトレンドを意識する層が減っているということだ。ちなみに30年前の65才以上構成比は14.6%だったのが今年には29.6%と倍増以上になっている。ファッションは、よりデイリーへ変化している。

バーゲン期に値段を下げて、「季節商品をなくす、商品を入れ替える」ことは商売として当たり前のことになる。夏商戦であれば、従来の8月は売れない月だったので7月に春夏商品を売り切って、8月から初秋物を見せて切り替えていくという商売が普通の流れだった。8月が集客できる月に変わったことで、その商売のサイクルが変わっていった。百貨店や専門店の一部では、まだ従来のバーゲンの流れはあるが、他の商業施設では、SC中心にメリハリのあるバーゲンではなくなり、だらだらとセールを続ける状況となっている。これは冬のバーゲンでも同じ傾向にある。

そのような環境下、季節感と客層の変化にどう対応するかで企業力がわかる。ユニクロは自社のルールで商品の値段を下げ、なくしていっている。当然SCでのバーゲンのタイミングにも合わせている。つまり自社の消化率等のデータに基づいて商品を売り切っている。そしてそのサイクルは比較的早い。店を見ているとプロパー期でも商品のプライスダウンをしており、セール期もなくしたい商品の順序がよくわかる。無印良品も自社でタイミングを計ってセールをしている。そして、おそらく、季節商品でも売れている商品は値段を下げていない。両社とも、細かいデータ管理と商品をなくす必要性は十分理解している。そして、昔ながらの「動かない商品は迅速になくしていく」という考えが見えるのも両社になる。

逆に、近年は利益を優先している会社が増えているように感じる。そのため、セールを長引かせることで売場の新鮮さが見えなくなってきている。さらに、季節商品の比率を下げ、比較的ライフサイクルの長い商品を品揃えしようとしている企業も増えている。その結果として、サイクルが長いため消化率が低下している事には目をむけていない。そして、利益率の確保を優先するあまり、在庫過多に陥る。そういう流れもあって、何社かの会社が機能不全に陥り、事業譲渡されている。

環境変化でバーゲンの取り組みが変わったことで、商売に対しての各社の姿勢が改めて浮き彫りになっている。

■今日のBGM

大型モール(RSC)の寿命 3

今年の1月に、この標題で2本ブログを書いている。その他のブログでも、大型モールに関しては悲観的な見方で書いている。ネットでAIに「ショッピングセンター(SC)の推移」と聞けば、「新規開業数は減少傾向であり、小型で生活密着型のSCが増加している」と答える。さらに、「テナント構成比は衣料品の割合が低下し、取り巻く環境は人口減少や建築費の高騰が要因で非常に厳しい」と答えている。

一番の要因は、テナントの新鮮さがなくなってきている事だと思う。これだけSCが増えると、どのSCも入店テナントが似てきて、テナントでの買い物をするためにわざわざSCに行くより、デイリー的な買い物で行く比率が完全に上回っているように思う。RSCのスタート期は大手アパレル(ワールド、オンワードなど)や旧DCブランド系(ファイブフォックス、サンエーなど)の百貨店以外へのチャネル開発もあり、テナントには新鮮さがあった。さらに路面店やファッションビルに出店していたヤングターゲットのテナントを積極的に誘致していった。つまりそれまでの「ダイエーと50の専門店」とか「イトーヨーカドーと70の専門店」といったチェーンストア目的のデイリー的なSCから専門店目的のSCへ大きく転換していった。ただそれから30年近くたち、テナントの新陳代謝は進んでいない。

では、テナントのラインアップが変わらない要因は何だろうか?現状上記したようなどこにでも出店しているテナントは大型区画が多い。「ユニクロ」「GU」「無印良品」「ABCマート」などは、区画がどんどん大きくなっている。大型カテゴリーとしての家電、書籍やニトリなどの住まい関連、ムラサキスポーツなどのスポーツ関連、さらに近年は100均、300均の店舗も大型化している。ファッション系ではアダストリアやパルの各ショップも大型化しており、アダストリアでは基幹のグローバルワークも標準面積を150坪となっている。他のほとんどのブランドも100坪前後の標準面積となっている。従来からの大手アパレル系テナントは100坪前後だし、付加価値のあるセレクトショップも100坪前後と大型区画としての出店が多い。

大型区画は一般的には、歩率契約が多く、最低賃料があったとしても単価は安くなる。以前の会社で約30坪の店が契約満了の際、再契約なしということがあった。売上は順調に推移しており、標準的な契約で賃料も安いわけではなかった。続ける意思はあったが、隣の大型区画を拡大するとのことで退店した。過去のリーシング経験からおそらく広がっただけで、固定賃料の増加はほぼなく、売上アップ分の歩率賃料増加のみがデベロッパーの賃料増になる契約だろうと思う。デベロッパーはその拡大区画だけを見ると、賃料ダウンにしかならない。当然そこには企業同士の思惑はあるが、どこかでその賃料ダウン分を埋め合わせしなければならなくなる。

大型店舗を導入すると、SC全体のバラエティ感がなくなってくる。当然複数店舗の固定賃料や共益費など合算のほうが、大型区画1店舗の賃料収入よりは大きい。ただ大型区画が、そのSCイメージを上げ、集客策としてはプラスになることもある。しかし、これだけ大型区画が増えてくると、50坪以下の標準区画への賃料にしわ寄せがくる。その結果として、出店へのハードルが上がる。標準区画への出店交渉が厳しくなった結果、出店コストがかからないショップや催事要素の強いショップが増えている。そして大型店舗が増えることでSCの個性がなくなり、狭商圏化が進む。

さらに賃料のしわ寄せによって、次世代のテナントが入店しにくくなっている。実際に、ここ数年大手企業以外で、興味を持つようなテナントは非常に少ない。内装経費上昇など出店するハードルもどんどん上がっている。各地域で成功して、全国展開していったテナントは本当に少なくなった。そういうテナント開発をしていくのもデベロッパーの使命だと思うが・・・

国内のGMSは約50年で淘汰が始まった。国内大型モールもおおよそ30年を過ぎようとしている。ラインアップが同じようなRSCが増えてくると狭商圏化し、淘汰が始まる。

■今日のBGM

イオンは優れた会社だが・・・

前回、再生に向けた3社について書き、その中で、今回はタカキューの再生について書こうと思った。イオンは優れた企業だと感じていたので、そのイオンが手放そうとしている企業の再生は難しいと思ったからだ。イオンがいろんな角度から分析、対策した結果からの結論だし、業界自体もアゲインストの中での再生になると思う。タカキューの決算短信やHPを見ると「感性?」を打ち出しているようで、過去のイオンでの再生の方向性とは違うようなので、それはそれでいいのだが・・・

その内容を書きながら、優秀な企業であるイオンがなぜGMSをやめないのかをずっと考えていた。以前も同じようなことを書いたが、やはりやめない理由がわからない。

私事になるが、イオンがマイカルの経営再建に乗り出して約1年、イオングループで働いた。結局は辞める決断をしたが、その1年はその後小売業を続けるうえで非常に有意義だった。その期間にイオンの研修を受講した。退職したため中退したが、有意義でレベルの高い研修だった。退職時にそのテキストや資料は全部返却させられたので、あまり詳しくは書いてはいけないのかもしれない。研修期間は1年以上で毎月の集合研修とG別課題解決に向けての自主研修、さらにはネット講座もあった。その後その受講していた社員はイオン本体やグループ会社の経営職になっていったようだ。その時のノートは、その後自分で起業した時や経営課題を考える時に何度も見返した。そんな有意義な研修をいろんなポジションでやっている企業が成長しないわけがないと思う。

なぜGMSは続けているのか?2025年決算ではGMS事業として売上は全体売上の35.1%を占めているが、営業利益では6.8%しかない。グループでの営業利益は金融、デベロッパー、ヘルス&ウエルネスが上位3カテゴリーで、その構成比は合わせて54.7%と半分を占める。SM事業も営業利益はGMSの2倍であり構成比は13.8%になる。GMSの詳細は読み取りにくいが食品事業は伸長しており、衣料品は前年割れの状況のようだ。GMSではイオンより優等生だったイトーヨーカドーが衣料品から撤退しており、もうGMSとしての存続は厳しい状況になっている。イオンのGMSも食品頼りになっており、その食品もSM(スーパーマーケット)事業と併せれば改善がさらに進むのではないかと思う。そして、間違いなくGMSの解体を考えるべきだと思っている。

続ける理由は何か?大きな要因は収益の柱になっている金融事業の根底にGMSがあるということかもしれない。カード戦略を中心とした金融事業の根底にあるのはGMSの客数、客層にある。GMSのポイント戦略や販促面へのアプローチでカード顧客を広げていっている。ただこれはGMSからデベロッパー事業に置き換えることはできないのだろうか?当然テナント各社独自の戦略もあるが、ルミネカードやエムズカードなどの普及を考えれば可能だと思う。そしてまだまだ好調なSM業態を起点にしてもいい。

さらに、東日本大震災の時、セーフティゾーンになったように災害時の生活拠点化としての位置づけを想定しているということも考えられる。これは地域貢献の最たることではあるが、これも現状のSCの機能に委譲し、各テナントにその役割を明確に依頼すればいいと思う。その他、従業員の処遇など当然のように課題は数多くあるが、それはどこの企業でもよくあることだ。

きっと一番大きな原因は、創業者一族の、「礎だったGMSをなくせない」という強い意志のような気がする。そして、間違いなく、イオングループの次のステップは、祖業でもあるGMSをきれいに解体することから始まると思う。

■今日のBGM

難しい靴業界で成長続けるABCマート

ここ数回ずっと在庫のことを書いてきた。自分で商売するときは「在庫を持たない」商売をしようと思っていた。過去小売りの仕事をしてきて「ジーンズカジュアル」と「靴」は在庫を持って商売しているイメージしかなかった。両カテゴリーに言えることは、サイズが細かいということになる。細かなサイズに合わせて在庫を持てば当然在庫は増える。中心サイズがなくならないように多く持つと1品番当たりの在庫は増えていく。さらに定番的な商品が多く、値段を打ち出しにくい。

ビブレの店長時代、店長は自主直営売場の数値責任を持っていた。当然各売場には、仕入れ権限のある売場の責任者がいるが、MD計画、数値計画は店長が確認する。一番利益面でわかりにくかったのが靴業種だった。サイズが多岐にわたり在庫も多くなる状況はジーンズと同様だが、ジーンズの売場はトップス、アウターでの調整ができる。靴は皮革とケミカル、スポーツなどに分かれるが、調整できるアイテムは少ない。取引先との商売条件も多くあり(消化、委託など)買い取り商材は大きな値下げが発生することも多く、利益率が高い状況で安定することがなかった。難しい業種だった。

ジーンズのナショナルチェーンはどんどん厳しくなり、全国チェーン展開の専門店は近年のライトオン、マックハウスの事業譲渡もあり、ビジネスとしては成り立ちにくくなってきている。一方靴業界も同様でありアメリカ屋靴店やマルトミなどの倒産例もあり、特にカジュアル志向が強くなった現状では靴業界も淘汰されようとしているように見える。そういう状況下、靴業界のABCマート、チヨダ、ジーフットの大手3社の決算数字をチェックしてみた。

売上面ではABCマートの絶好調ぶりが群を抜く。2025年決算で3772億計上されておりコロナ期以前の数字から136.7%伸長している。チヨダはマックハウスを除外して調べてみた。売上数字は年々マイナス傾向で1000億企業だったのだが、2025年787億まで落ち込み、コロナ前からでは89.5%の売上となっている。ジーフットは2025年売上が600億でコロナ前からでは67.3%の状況となる。

利益率は2025年決算でABCマートは50.5%、チヨダは47.7%、ジーフットは44.1%。営業利益率はABCマート16.8%、チヨダ5.3%、ジーフット-1.3%となっている。チヨダはコロナ期以外黒字体質ではある。ちなみにジーフットは2023年に債務超過になっており、2025年親会社のイオンからの第3者割当で解消している。1店舗当たり売上はABCマート248(百万)、チヨダ87(百万)、ジーフット63(百万)と大きな差がある。

一番重視している回転率はABCマートが年2.04回転で数年はほぼ2回転前後。チヨダは年2.21回転と前期大幅改善しており、過去の1.8回転前後から良化している。ジーフットは年1.46回転で、過去の1.3回転前後からは改善しているがまだまだ低い。

完全にカジュアル化の波が大きく、スポーツブランドを打ち出すABCマートの出店戦略が成功しており、特に売場大型化がその要因にもなっている。近年主流になった大型モール(RSC)の全国拡大に併せて企業規模が拡大している。逆にチヨダは大型モールへの流れに乗れず、従来のGMSやSCでの商売を続けている。ジーフットは当然イオン系SC中心になるが、イオンGMS内(所謂ジャスコ)の靴売場も運営しているため、SC部分への出店が大きく出遅れた。さらに現状のGMS内の衣料服飾品の赤字体質が続けば、企業存続にも赤信号が灯る可能性もある。

在庫面に関して考えると、ABCマートは常にプライスダウンを打ち出し消化率を上げようとしている。売場内でも大きなセールコーナーを取っているし、いたるところで催事も見かける。アパレルを加えた売場が増えているのも在庫面の課題解消策かもしれない。それでもあと年0.5回転くらいのプラスは必要だと思う。チヨダも回転率の大幅上昇もあり、意識は高まっている。逆にジーフットは決算時に在庫課題はいつも上げているが、全く改善は見られない。

追随する企業のアゲインストの流れが大きく、対抗する企業がない状況下で、カジュアル志向が続けば「ABCマート」1強の流れは確定的になっている。

■今日のBGM

ららぽーととイオンモール ➁

前回、セレクト系のショップのRSC(大型モール)への出店傾向についてコメントした。そしてその出店先は「ららぽーとに限られているように見える」と書いた。RSCのアッパー層をターゲットにするセレクト系ショップのリーシングが、イオンモールとららぽーとの立ち位置の違いに現れてくると思うので、再度まとめてみる。

まず、ユナイテッドアローズの出店について調べてみる。主な出店ブランドは「UAグリーンレーベル」であるが、このブランドのターゲットはRSCや地方ターミナル客層を想定している。そのため、当然出店店舗が各地のRSCには多くなる。ららぽーとへの出店は11店舗(ラゾーナ含む)、イオンモールへの出店は3店(レイクタウンとモゾ、京都)となっている。その他の店舗もテラスモールやマークイズ横浜など大型物件中心になる。イオン系ではモゾや京都はもともとの開発運営母体からイオンモールが引き継いでおり、実際は規模感の大きいレイクタウンのみへの出店とみてもいいような気がする。「ビューティー&ユース」もららぽーと2店、イオンモールはなし、「シテン」もららぽーと9店、イオンモールは前述したモゾのみ。やはりユナイテッドアローズのRSC出店はららぽーと中心であり、他は各地の大型モールへの出店(テラスモールなど)という流れになっている。

ビームスの出店については、ビーミングでららぽーと9店、ビームスで1店。イオンモールは前述したモゾのみ。その他西宮ガーデンズ、コクーンなど。シップスについてはららぽーと2店、その他テラスモールや西宮ガーデンズ。ベイクルーズはレリュームを中心にららぽーとに20店舗弱。ららぽーと福岡にはベイクルーズストアがあり、エキスポシティにはスピック&スパンも出店している。イオンモールはレイクタウン1店のみで、その他テラスモールや西宮ガーデンズには出店している。

上記データを見ると、やはりセレクト系の出店は大手SCではららぽーと中心であり、その他テラスモールや、西宮ガーデンズのような大型化され立地にも恵まれた都市型物件への出店がほとんどとなっている。そして、イオンモールへの出店はほぼレイクタウンだけという結果となった。

セレクトショップへの客層は、都市型の客層が多い。都市部の路面店やターミナルの駅ビルで買い物するお客様が中心となっている。その流れで見ると、ららぽーとのほうが、比較的都市部に近い場所に立地し、イメージも大型モールではあるが駅ビルに近いかもしれない。

イオンモールは、もともと「狸が出るところに店を出せ」からスタートしており、地方郊外の大型モールの位置づけになっている。さらにキーテナントがGMSのイオンというSCでは、ターゲット客層が量販店寄りになりつつある。SC売場面積の四分の一くらいを占めるイオンで中心客層が絞られてしまっている。ららぽーとにはその見え方はなく、SCに「小売企業の色」が強くない。現状一番減少している業態であるGMSの客層がメインターゲットでは、SC内でもアッパーゾーンを取り込みたいセレクト企業には魅力は小さい。レイクタウンへの出店は、他のイオンモールと違いモールにバラエティ感があり、GMSとしてのイオンの匂いが薄いからだと思う。

ずっと書いてきているが、イオンモールから量販店イオン(ジャスコ?)の匂いが小さくならないと、何年後かには、イオンモールも今のGMSと同じような状況になってしまいかねない。

■今日のBGM

ポイント販促が異常に多い

これだけ暑くなると、歩いて買い物には行きたくない。バーゲンも始まっているSCもあるので車での買い物が増える。先日も駅前のSMへ行くには暑いのでどうするかと言っていたが、イオンがイオンペイでの買い物でポイント10%と告知されていたので、車でイオンへ買い物に行った。SMの安定感が駅周辺のSMより劣っているイオンへは、割引日や、ポイント戦略日にしか行かないようになってしまっている。

今月のイオンのポイント戦略日は10、13~15、26~28の7日間がイオンペイポイント10倍、20、29、30が5%オフ、その他15日がGG感謝デー(55才以上5%オフ)おおよそ10日が還元デーになっている。意味合いは微妙に違うが、ほぼ5%引きの日が非常に多い。

ポイント戦略はいつごろからこんなに増えたのだろうか?ビブレで店長をしていた最後の時期位にポイント10%のDM戦略を多用した思い出がある。バーゲン以外セールをしなかったブランドショップの売上が跳ね上がり、販促効果は大きかった。ただ会計処理上の変化があり、ポイント戦略は禁止になったように思う。さらに、ポイントによる不正も多かったのもその要因になった。

当初の会計処理はポイント使用時に経費計上していたが、その後ポイント付与時点に計上になったような気がした。少し調べてみると、現状は大会社以外に関してはポイント利用時に計上となっている。ただしイオンのような大会社はポイント付与した時点で仕訳が必要になっているようである。ポイント使用率を想定して契約負債とし、その分を減らした売上、売上負債と現金に仕訳けるようになっている。つまり売上計上は契約負債を引いた金額になっている。(これであっているのかはわからないが・・・)ポイント使用率を設定することで結果的には5%オフよりポイント10倍のほうが利益マイナス面に関しては影響が小さいということはわかる。

こういうポイント戦略が販促として効果が大きいのは食品売場だと思う。食品売り場を活性化することが多くの小売業の一番の課題になる。デイリー客が増えるし、商業施設の売上の核になる。そのために特売をしてチラシ販促をしたり、生鮮の専門店を入店させたりする。そういった販促手法から、ポイント戦略に変わってきている。

GMS食品業種の利益率は25~26%と言われている。昔、ビブレで店長をしていた時は生鮮のテナントを売場に組み込んでいたので21%くらいだったと記憶する。利益構造も変化していると思うが、「売場全品5%オフ」のような販促は絶対企画できなかった。現在のチラシの内容は昔ほど値段を訴求していないし、利益の出る総菜の拡大で利益率は改善しているかもしれない。今後は「5%オフ」や「ポイント10%」企画はどんどん増えていくと思う。各社の取り組み姿勢にもよるが、安易な販促なので、これがさらに5%オフから7%オフになっていくことも考えられる。ちなみに売上年間25億、回転率月3回転、利益率25%の食品売場で3日の5%オフと7日のポイント10倍(使用率30%設定)を実施したと想定すると、手計算では月度利益は-0.1%強位の計算結果になった。仕入努力や生鮮品の値引き率の減少で十分改善できる数字にも見える。

カード会員の囲い込みや、ネット客の拡大、スマホ決済への取り組みなど、企業としてのプラス要素は大きい。ただ、一方で商品のライフサイクルを考えた販促や時系列による売場の変化など、取り組むべき業務がないがしろにされてしまうかもしれない。小売業としてこれだけポイント戦略が多いと、その流れが当たり前になってしまうことが一番怖い。

■今日のDVD(モンキーズ)

中心客層をよく知ること

近頃の「米騒動」で、2000円の備蓄米のことがTVをにぎわせている。米はSMから減っていたのは事実で、値段が上がっていたのも事実ではある。では2000円の米は近隣の店舗で手に入るのかというと、どこにも売っていない。若干の米の価格は下がってきたという効果はあるが、今後の方向性は見えない。ただTVでは長蛇の列での販売風景を何度も映し出す。そんなに必死になって探しているようには思えないのだが・・・

偶数月の15日の年金支給日の買い物の映像も、必ずと言っていいほど取り上げられる。インタビューでは、多くの高齢者が年金生活者で月の年金は5~6万しかないと答えている。だが、厚生労働省が発表している高齢者(65才以上)世帯の平均所得は316万で可処分所得は274万円、そのうち年金収入は平均197.4万円となっている。年金は税込みで1世帯当たり月16.4万の計算になる。それを考えると、恣意的ともいえるテレビ報道ではある。

世間の風潮が、「生活が厳しい」流れに乗っているような気がする。はたして実情は、そういう流れなのだろうか?当然「厳しい」感覚はあると思うが、少しあおりすぎのような気もする。この流れは、絶対に年齢別人口構成比の変化が大きく影響しているように感じる。再度書くが、日本の人口は30年前と比べると98.1%と微減だが、60才以上は181.5%と大幅に増加している。人口構成比は19.3%から35.4%となっており、その人口は男性19457千人、女性24346千人、合計43803千人になっており、高齢者の比率は高くなっている。この年齢層の分析をすることが、基本品揃えに一番重要だと思う。そして、現状は必ずしも「高齢者=生活苦」ではないと思う。

このブログで、近頃よく取り上げているが「無印良品」や「ユニクロ」は絶好調を続けている。「無印良品」の国内売上高既存前年比は最近3カ月120.5、109.8、112.2と大幅伸長しているし、「ユニクロ」も111.5、98.7、113.1と伸長している。おそらく収入中間層へ組み込まれる60才以上の購買動向を分析しての結果だろうと思う。そのターゲットをくすぐる素材感や、値頃感の打ち出しが非常にうまい。

トレンドを意識するヤング層(10代~20代)の人口構成比は大幅に減少している。ただ商品のトレンドはこのターゲットから始まる。そして販売するのも楽しい。ただそのゾーンを追いかけると底は浅い。そこに気が付かねば、商売は失敗する。現状では、人口構成を見ている限り、商売を成功させるには、60才以上の高齢者の動きをつかむことが最も重要なこととなっているように思う。

今の50代も含めて60代、70代は昔の実年齢の世代とは全然違う。ファッションや趣味も多様化しており、ある意味「楽しい事」を享受してきた世代だ。このブログでも何度も繰り返しているが、ファッションでは「VAN、JUN」を経験し「DCブランド」も身に着けてきた。その認識を持ってその世代の感覚と対峙する必要がある。話は逸れるが、GMSの衣料服飾売場はそれがまだ理解できてないので、売れてない。「高齢者=シニア(老人)」の感覚で品揃えしている。

今の小売業は「50代~70代」を詳しく分析することが、間違いなく成功のポイントになる。

■今日のBGM

アリオ、イトーヨーカドーとファウンドグッド

飲み会に行く前に、川口そごう跡の「ららテラス川口」でも見ようと、川口駅に立ち寄った。そのついでに「アリオ川口」にも足を運んだ。久々に「アリオ川口」を見て、いろいろ考えさせられた。

まず、イトーヨーカドーの食品売場のレベルは、相変わらず高い。足元のマンション群に囲まれ、その客層への総菜中心のデイリー食品は充実している。値段もいつも買物しているイオンよりは安い。エリア特性があるのか生鮮3品の売場の大きさに変化があるが、相変わらず欠品は少なく、きちんと売場管理がなされている。売場が大きく、持て余している感じはあるが、足元商圏のシェア率は高そうだ。

撤退した衣料売り場だが、アダストリアとの協業の「ファウンドグッド」は、うまくいってないようだ。立ち上げの時に見たが、現状の売場はその時の売場より30%くらい縮小されている。やはり客層とのギャップが大きい。浦和イトーヨーカドーの「ファウンドグッド」をたまに見るが、イトーヨーカドー来店客とのギャップが大きすぎて、全く売れてないように感じていた。逆にモール内のイトーヨーカドーだと受け入れられているのかと思ったが、やはり客層のギャップはここでも大きかった。衣料売り場は「ファウンドグッド」を縮小し、量販店委託ブランドのコーナーを増やしている。所謂、メーカーコーナーで「クロコダイル」「ハッシュパピー」「ケント」「ギャロリア」「アンナルナ」「インスパイア」などのブランドがコーナー展開をしている。取引形態はいろいろあるが、最終商品リスクはヘッジできる取引だろうと思う。浦和店の衣料品売場も同じような展開であり、やはり従来のイトーヨーカドーのお客様中心であり、新しい客層は取り込めてなさそうだ。「ファウンドグッド」も、どのゾーンを狙っているか見えにくく、さらに「ユニクロ」「GU」よりは高い値段では量販店の顧客は取り込めない。アダストリアは今までの出店場所を選んでの出店とは違い、量販店の客層との相違に苦しんでいるようだ。人的課題もあり、どちらがリスクをかぶる契約かわからないが(おそらくイトーヨーカドー)、おそらく全店展開は難しいと思う。

「アリオ川口」だがやはり「イトーヨーカドーと〇〇の専門店」という域を出ていない。売場面積も3万㎡強と大きくもなく、イトーヨーカドー食品とシネマやジョーシンなどの強みしかなく、引き付けるテナントも多くはない。アリオはイトーヨーカドーグループの商業施設の開発運営会社(セブンアンドアイ・クリエイトリンク)のPMだと思うが、独立してのデベロッパー会社ではなくあくまでもグループの不動産管理会社にしか過ぎない。ということは、あくまでも発言力が強いのは「セブン&アイ」であり、独立性はほぼないという位置づけだと思う。そのためイトーヨーカドーの売上をどう上げていくかが主の目的になり、テナントのフォローや、パワーアップさせたテナントの導入がおろそかになってしまっている。イオンの本体のイオンリテールが運営する「イオンモール」が、モールとして完成度が低いのと同様の状況下にある。そのため大きな投資はかけられず、テナントの劣化が進み、モールとしての魅力はどんどんなくなってくる。独立性が強いイオンモールが運営する「イオンモール」との差は大きい。

間違いなく、脱GMSとしてのイトーヨーカドーは方向性が見えていない。SMもあれほどの大型売り場は必要なのだろうか?そして、特に衣料品撤退後の売場が解決できてない。そんな状況下では、モール全体の改善はどんどん後回しになる。発言力もなさそうな子会社では、モールのテナントゾーンのケアもできない。今後も、広域からとるべき客数は恐らくどんどん減っていくと思う。イトーヨーカドーグループ(ヨークホールディングス?)は、完全に迷走していると感じた。

■今日のBGM

イオンリテール(小売業)とイオンモール(デベロッパー)

まだ、流通アナリストの「総合スーパーでイオンだけ生き残った」という文面が頭から離れない。以前ブログに書いた「㈱イオンモール上場廃止」について、再度㈱イオンリテール側からどう見るかを考えてみたい。

㈱イオンモールを上場廃止にしてイオンの子会社化したことは、おそらく、各会社の意思決定を早くすることが一番の要因だと思っている。大きなポイントとして、㈱イオンリテールが資産を持ち、賃料収入を得ているイオンモールを、資産含めてすべて㈱イオンモールに移管することがあげられる。つまり、㈱イオンリテールは所謂「ジャスコ(イオンのGMS)」中心の小売業だけの会社になる。それにより、会社の収益構造が変化するので、企業としての生き残りを明確にできる。

前回も書いたが㈱イオンリテールが資産を所有するイオンモールは数多くある。㈱イオンモールはもともと三菱商事とスタートさせたモール事業(㈱ダイヤモンドシティ)で2007年に㈱イオンモールとして始まった。㈱イオンリテールもモール事業があり、その後2013年に㈱イオンリテールの54モール、15SCの管理運営(PM:プロパティマネジメント)を㈱イオンモールが請け負っている。わかりにくいかもしれないが、㈱イオンモールの主な業務は今までは、資産も保有している㈱イオンモールの物件のPMと資産は㈱イオンリテールのモール(名称はイオンモール)のPMが主な業務だった。今後どういう流れで資産を移管するかは未定だが、これで両社の流れは大きく変わる。単純に、㈱イオンモールの主な業務は商業施設のプランニング含めた運営管理、㈱イオンリテールは小売業(GMS)専業となると考えられる。

私見ではあるが、おそらく㈱イオンリテールでのテナント収益は黒字で、不振のGMSとしての小売業を支えてきたのではないかと思う。詳細はつかめてないが、㈱イオンリテールの営業収益全体におけるテナント収益は約20%と推測されている。当然課題はGMS事業になっていることから、不振のGMS事業への投資を優先させ、安定収益があるモール(テナント)事業への投資を遅らせていたのではないかと思う。㈱イオンモールとしても同じグループ会社の物件とはいえ㈱イオンリテールの物件には強く提案ができず、思い切った施策が打てなかったように思う。PM事業への投資等によって㈱イオンリテールの数字に影響を与えることはリスクが大きいし、㈱イオンリテールもそれを望んでなかったのではないだろうか。そういう環境下でもあり、㈱イオンリテールの物件は、モールとして新鮮さを感じず、テナント各社にとってはあまり魅力を持てないSCだったように思える。

もともとPM業は、オーナーの意思で運営管理の手法は変わってくる。資産を持たないPM会社が、資産保有者に意見を通しづらく、思い通りに動けない状況になることは多い。おそらく今後は㈱イオンモールが資産を持つデベロッパーとして、旧㈱イオンリテールの物件の改良は進んでいくと思う。今まで㈱イオンリテールの物件ではモールの改装提案や、テナント誘致、入れ替えは厳しい状況だったと思う。それが㈱イオンモールに変わればそのテナントの影響力も考え、いろんな方向から検討され、前向きな改良が進んでいくかもしれない。

㈱イオンリテールのテナント収益が欠ければ、いよいよGMS事業の存続がイオングループの課題になってくる。イオングループのSM(スーパーマーケット)事業は好調であり、ヘルス事業も好調を続けている。GMS内で収益が改善できていない衣料品や装飾品、住居品などを続けるべきか、続けるなら持続可能なMDは何かの結論を出す時期に来ている。

赤字状況であるGMS存続のジャッジは急がれていると思う。

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