カテゴリー: GMS (2ページ目 (3ページ中))

イオンモール出店ゼロ

6月6日の日経新聞1面に標記の記事が掲載された。26年ぶりで、要因は人手不足と資材高騰との内容になっている。当面は投資を改装に振り向け、既存施設の売上を底上げするとのことだ。

このブログでも再三指摘しているが、現状のイオンモールには多くの期待はできないし、完全にマンネリ化しており、面白い物件の出店はない。既存物件もどんどん魅力がなくなっている。特にコロナ以降収益志向が強いのか、新しいチャレンジがない。

最近の国内の新店について振り返ると、2023年豊川が最新の出店になる。フロアマップを見る限り、リーシングには苦労している。特に3階は携帯ショップやその他業種、催事出店も多く、3階への集客は少ないと聞く。2022年の土岐はネットを見ると「退店が相次ぐ」とある。ジアウトレット北九州もオープンから催事空床が目立ち、好調という情報は全くない。2021年の白山は地元のセレクトとツタヤがポイントとなっていて、従来のイオンモールラインアップはすべて導入されており、一番充実したSCだがやはり商圏規模を見ても3層は必要なく、3階は間違いなく苦しいフロアになっている。川口は完全にオーバーストアのところに出店したSCで既存のイオンモール(旧ダイヤモンドシティ キャラ)と車で10分くらいのところにある。既存モールとのの兼ね合いで最初からショップMDは厳しい状況だった。川口も他のモール同様3階は今後テナントリーシングをしにくいのではないか。

投資コストと収益のつり合いが取れにくくなってきていることは、近年のリーシングを見るとわかる。GMSのイオン(イオンリテール)の家賃がどのレベルかわからないが、あの衣料や住居品で専門店レベルの売上や利益は出ているとは思えず、GMSのイオンが決算上収益を出しているのであれば、モールの家賃はおそらく優遇されている。イオンモールとしてGMSの家賃アップを求めるべきで、できないのであれば、食品以外の面積を返上してもらうべきだ。近年のイオンモールで無駄な3階をなくすことで、建築コストは減らせるし、非食品のGMSにテナントを入れることで収益も安定する。

中国の市場も厳しくなってきているし、不動産事業のイオンモールとしては、店子であるGMSをどうするかが大きな課題になってくることは間違いない。

■今日のショット ※伊豆、富士山1周してきた。この写真は外国人に人気の神社。富士山は雲に隠れていたが、観光客は95%外国人。

イオンモールとららぽーと

近隣のSCで将来的にRSCとして残っていくのは、「ららぽーと富士見」「コクーン」と「イオンモール浦和美園」ではないかと思う。(レイクタウンは30km圏なので除外。)

映画ついでに買い物に行くのだが、やはりららぽーとが一番魅力はある。商業面積はららぽーと8万㎡、コクーン7.8万㎡、浦和美園6.2万㎡、売上は、ららぽーとが490億、コクーンが390億、浦和美園が300億くらいではないかと思う。おそらく「ららぽーと」と「コクーン」の一騎打ちかもしれないが、今後の成長余力は浦和美園が大きいような気がしている。

浦和美園は近年開発が進んでおり、レイクタウンのあおりを受けてはいるが、今後のプラス要素は大きい。浦和美園が起点の埼玉高速鉄道は地下鉄南北線とつながっており、都内の四谷まで乗り換えなしで45分であり、埼玉スタジアムの恩恵も大きい。大学病院の計画もある。 現状は浦和市街地方面からは新見沼大橋1.4kmで150円の有料道路が便利だが(ほとんど迂回している)、あと数年で無料になる。無料になれば浦和市街地方面からも集客は増える。

しかしながら、イオンモールとららぽーとにはテナントMDで大きな差が出ている。もともとイオンモール物件でなくイオンリテール物件であったことも大きな原因だが、近年そのリーシング力の差は大きい。特にファッションテナントに大きな差が出ている。ららぽーとはベイクルーズやユナイテッドアローズを積極的に取り入れ、アウトドア系も充実させ、大型カテゴリーも抜け目なく導入している。注目ショップも続々と導入しており、大谷選手で話題の「ヒューゴボス」も出店する。イオンモールは春に改装を実施したが、大きな注目テナントはなく、好調テナント、生活雑貨系の大型化による改装のイメージが強い。ブランドへの流れと生活感のあるテナントへの流れはどちらが正解かわからない。トレンドを取り組むか、生活感を強めるかだが、そこでSCの位置づけは大きく変わる。

そもそも商圏的にどう見るかだが、富士見は車20分圏65万人、30分圏160万人と公表されており、浦和美園は商圏人口82万人と記されている。富士見はファミリー層が40%強でシニア層も27%と多いようだ。両SCとも浦和市街地からの集客がポイントになりそうで、富士見は荒川で分断されており、浦和美園は上述した新見沼大橋がネックになっている。どちらにしても比較的若いファミリー層が多い商圏と言える。

両SCで大きな差があるのは、GMSの有無だが、浦和美園イオンを見る限り、GMSの「イオン」は食品以外のニーズは非常に弱いと言わざるを得ない。もともとファミリー層の衣料品、生活雑貨はGMSが担うところであって、そのゾーンのテナントを拡大させているのは食品以外のイオン(GMS)のニーズが弱いということになる。レイアウト的に難しいがGMSの2、3階をファミリー衣料、生活雑貨系テナントにして、既存テナントを移設させ、その空いたところに少しトレンド志向のあるテナントを配置したほうが、SCとしては充実するのではないかと思う。やはりもう少し興味を持つようなテナントの導入が必要だと考える。イオンとして効率が低いGMSをそろそろ決断すべきだと思う。

ららぽーとも必ずしも買いやすいとは言えず、「サーキットモール」独特のサブ導線化(どちらか一方しか通らない。)したエリアはやはり魅力がない。さらにイオンモールに比べて都市型のモールであり、出店場所が限られてくるのではないかと思う。実際、比較的郊外のららぽーと(柏の葉や磐田など)は厳しい数字のようだ。近年はSMに「ロピア」などを出店させており、今後はデイリーの客層の変化もでてくるのではないかと思う。

「都市型」のららぽーとと、「地方郊外型」のイオンモールとして今後もすみわけしていくのだろうか?そうなればららぽーとの出店は限られ、大都市近郊のイオンモールの改廃が進みそうだ。

■今日のBGM

GMSは再生できない

「イトーヨーカドーが総菜で経営再建」というテーマで先日「ワールドビジネスサテライト」に数分間流れた。概要の一部だろうが、コメの質を変えるなどして総菜を強化していくとのことだ。食品売り場は変化してきており、所謂「ダブルコンコース」が広がり「生鮮+総菜」で差別化を図る戦略はどこの会社でも推進している。それでGMSの経営が再建できるのだろうか?

まず食品強化ということだろうが、SMの競合各社のレベルは相当上がっている。近隣に「ヤオコー」や「マルエツ」があるが大型モールのGMS(イオン)と比較すると商品力は格段の差がある。生鮮3品や総菜は完璧にSMの勝ちで、午前中に行くとイオンの生鮮の品揃えの遅さが際立つ。グロサリーやデイリー商材は売り場面積が広い分品揃えの幅は広いが、そこまで嗜好品を求めなければSMのほうがはるかにいい。なぜ大型モールに行くかといえば、まず駐車場が広くまとめ買いがしやすい事。さらに食品以外に定期的に見るテナントがある事だと思う。

前回書いたが、一定規模の駐車場があり、定期的に見ることができるテナントがあれば、NSC(ネイバーフッドSC)でもGMS(コミュニティSC)でも構わないと思う。つまりGMSに必要なのは当然SMに勝つべく食品と、定期的に見たい日常的なテナントが網羅されているかにかかっている。

イトーヨーカドーは「衣料品をやめテナントに変える」と当初発表していたが、現状はアダストリアと協業で「ファウンドグッド」を積極的に導入している。まずテナント導入についてはこのブログでも「できない理由」を上げた。おそらく賃料が合わなかったことと、売場の形状がテナントに向いてなかったことが原因だと思う。イトーヨーカドーという高収益体質の会社が賃料をどこまで譲歩できるかが課題で、賃料を下げなければテナントは積極的には出店しないと思った。賃料が譲歩できれば入るテナントはあったはずだ。さらにGMSはオープン年度によって、区画や仕様が変化してくる。古いGMSは天井高や導線が今のSCとは全く違う。天井の低い古いイトーヨーカドーに今のテナントはまずリーシングできない。アダストリアも自社ブランドなら出店しない店にも出店せざるを得ず、「ファウンドグッド」も売上にばらつきが出ると思う。その他のGMSの衣料品に関しても、イオンも坪売上10万もいかない衣料品を続けている。売場を新しくしても完全にお客様目線からずれている。

投資対効果で可能性は低いのかもしれないが、一度ユニクロや無印良品、ABCマートなど来店モチベーションが高いテナントと話し合って、建物の構造をどう変化すれば出店が可能かヒアリングすればよい。アリオに出店しているテナントと話し合えばいい。天井高や区画の形状を変えるのにいくら投資が必要か算出して、再度テナント誘致をするべきだと思う。

最後の手段は今のGMSの顧客をミドルレンジから、値段を意識する顧客に変更することだ。そのターゲットのテナントなら誘致できるはずだ。いつまでも減りつつある「中流」を中心顧客に据え続けているから再浮上はしない。なぜGMSが終わりそうなのかを冷静に考えればいい。

イトーヨーカドーの「食」の改善、イオンの「衣料」の改善、ともにお客様が見えていない。

■今日のBGM

ヤオコー マルエツ ダブルコンコース NSC GMS イトーヨーカドー イオン ファインドグッド

ファッション店舗は激減している

先月、知り合いの会社が株式譲渡された。ファッション小売店舗だが、一時は大型モール(RSC)中心に50店舗以上展開していた。譲渡時は10店舗を割っていたそうだ。大型モールは増えたがファッション関連の店舗は激減しているのではないか。個別にはMDや販売体制の問題もあるが、それ以前に店舗数が減っている。大型モールにファッションのニーズが少なくなっているのかもしれない。

大型モールの国内最初はどこか難しいが、現状のモール型は2000年のダイヤモンドシティキャラ(川口)がスタートのような気がする。その後、従来のGMSには入店しなかった「ワールド」「イトキン」「オンワード」など百貨店系メーカーや「サンエーインターナショナル」などヤングファッション系ブランドがディフュージョンブランドを大型区画で展開し、新しいモールのイメージを強めた。そこから20年経過しGMSを消滅させ、今は全国どこにでも点在している。つまり大型モールを引っ張ったのは都心から郊外へ広がったファッション店舗の力が大きい。

その当時立ち上げた「ワールド」のブランド「ショップTK」や「オペーク.クリップ」などは激減し「ハッシュアッシュ」はなくなった。イトキンの「avv」もほとんど見ないし、オンワードも「エニーファム(エニシィス)」もあまり見ない。サンエーインターナショナル(現TSIホールディングス)の「ナチュラルビューティベーシック」も大型モールへの出店スピードはダウンし、「&バイPD」はなくなった。いずれもメインフロアの大型区画にあり、大型モールの顔だった。

カジュアル系ではユニクロの国内店舗数は2019年817店が2023年に820店、同じくGUが421店から463店と大きな変動はない。アダストリアは国内2017年1220店から2023年1509店と増えている。大型ショップはほぼ横ばいだが、一世を風靡したストライプインターナショナルが2017年1400店から2023年には700店舗と半減している。ライトオンも2017年513店が2023年には373店に減少している。多くのカジュアル系の店舗は激減しており、それに代わって古着や値段志向の強いショップがやや増えてきている感はある。

逆に、1階のSMの近くには食物販のテナント、上層階には「100均、300均」や「携帯ショップ」など所謂「その他」業種の出店が増えている。さらに店舗の大型化が進んでおり、ユニクロや無印良品、ABCマートは増床出店が多い。どちらかというと必需品を大型化させているイメージは大きい。

ファッションが商業施設のイメージになる事は間違いない。新しいブランドを探し提案できなかった百貨店は、顧客年令が上がり衰退した。GMSも同様にお客様の年齢が上がって、デイリーウェアの品揃えの年齢も上がり、30代から50代の顧客を大型モールにとられた。中心客層が上がっていけば大型モールも同じ流れになる。すでにお客様は商業施設の使い分けはできている。新しいファッションの流れや新しいショップを探して導入していかねば間違いなく衰退する。常に新鮮であり続けなければ商業施設は淘汰されていく。

■今日のBGM

モール戦略が崩れれば・・・

GMSは1970年くらいから活気づき約50年で終焉を迎えた。郊外モール(RSC)ももう20年以上は経過している。ここから変化を取り入れていかねば間違いなく衰退期に入る。資本構造も変わってきている。金融資産化されていくと淘汰のスピードは速くなる。現状を冷静に把握して、ここ数年で大きな経営判断が必要かもしれない。

商売の基幹としてGMSを続けていくのは大手ではイオンとイズミくらいになっている。両社に共通しているのは企業としてモール戦略を打ち出していたことだ。2核1モールのイオンとGMSを取り囲むようなモールのイズミと形は違えども、大型モールの吸引力で自主売場(GMS)を活性化してきた。裏を返せば集客のあるモールでの商売だからGMSは何とか成り立ってきた。

モールの収益はテナントの賃料で成り立つ。現状簡単にはテナントを集めることはできない。何とかテナントを埋めても、魅力ないテナントは長続きしない。魅力あるテナントの誘致には賃料のディスカウントや大型化などで当初の賃料プランは崩れていく。当然モールは減価償却などで経費の減少はあるが、退店による改装や修繕計画もあり、おそらく収益が安定しているところは数少ないと思われる。何カ月前かにイオンモール太田の改装についてコメントしたが、おそらく投資の回収計画は大変厳しいものになっていると思う。

考えられることは、おそらく今後はキーテナントであるGMSの家賃の見直しが始まるだろうということだ。テナントからは賃料ダウンの要請が多くなるだろうし、新規テナントも当然条件改定交渉は厳しくなる。イズミの「ゆめタウン」も賃料の見え方は低いが、あまりにも多いポイント負担金への抵抗は根強い。両モールとも、特に50坪以下の小型テナントの固定賃料の高さが原因で出店件数が減ってきており、テナント賃料は確実に減っている。そうならば、大きな面積を抱えるGMSの賃料を改善していかなければ、モールの収益は確保できなくなる。特にリートなどで資産を流動化していれば、まちがいなくキーテナントへのプレッシャーは強まる。それに対してGMSは呼応していけるのだろうか?

GMSの売場で課題となるのは衣料服飾品だが、イオン(GMS)の衣料服飾品の年間売上は年間2842億、利益率は37.1%(いろんな形態はあるが合計で)となっている。イズミは従来基準で、非食品で売上930億、利益率36.1%と公表されている。これを専門店と比べると、厳しい状況のライトオンでさえ売上469億、利益率48.1%でありユニクロの去年の利益率は52%となっている。おそらく坪売上も専門店よりは大きく下回っていると思われる。つまりイオンの衣料服飾品売場は一般企業に置き換えると、全く成り立たないことになる。GMSとして人件費等他の経費は当然抑えてはいるだろうが、モールへの賃料アップによって家賃比率が上がれば全く商売にならないのが現状の数字になる。

今後、モール事業で割り出される予算賃料でテナント誘致が進まないと、モール戦略の中で維持されてきたGMSの収益基盤も崩れてくる。イオンのGMSも完全に赤信号だ。

■今日のBGM

大型モール(RSC)の評価基準

近隣に大型モールがたくさんあり、買物のついでに店を見て回る。厳しい状況だと感じるモールも少なくない。

大型モール(RSC)の創成期からいろんなモールを見てきた。売場企画に加わったこともあるし、最後は出店者側として、出店交渉もしてきた。つまりモール側で企画や、運営もしたし、出店側で開発業務やテナントとして商売もしてきた。現状でも、モールを見るとそのモールの状況はわかる。資産流動化されていたり、資本関係が複雑で最終の損益までは見通せないが、おかれている現状は見える。今のモールでチェックすべきショップMDとしてのポイントを何点か上げてみたい。

まず当たり前のことだけれど、テナントがきちんと埋まっていること。空床区画はすぐわかる。催事区画で埋めている場合もある。催事区画も空床区画と同じ扱いに過ぎない。什器や商品ですぐわかるし、きれいな催事も内装の作り方や店名の電飾の有無で判断できる。(定借物件の内装規定で店サインに電飾を加えるように指定されることが多い。)近年は3層のモールで3階のテナントや、食品側と離れている場所に空床(催事)は多い。

さらに、空床を埋めるためのサービス業種をリーシングするケースが多い。顕著な例は「携帯電話ショップ」であり、「ガチャガチャ」や駄菓子屋、古着屋、各種教室などのサービス系のショップが増えてきていないかもポイントになる。

3番目としてきちんと集客できるテナントは揃っているかをチェックする。「ユニクロ」、「GU」、「無印良品」、「ABCマート」など。そういう大型集客ショップは、できればメインフロアではなく高層階にあるほうが望ましいと感じる。個人的にはアダストリアであれば最低2店舗(3店舗?)はあるべきだし、近頃モールから退店しているがユニクロの「プラステ」があるモールは個人的には信頼できた。

さらに、メインフロアは店の顔になるフロアなのでテナントのラインナップは当然チェックすべきポイントになる。感性やトレンドを意識できるテナントがあるのがベストだと思う。値段を打ち出すショップがメインフロアに見えるのはそのモールがあまりいい流れではないように感じる。ファッションだけでなく「旬」を感じるテナントや「わざわざ買いに行きたい」テナントがメインフロアには欲しい。

その他、ショップMD以外では「SM(スーパーマーケット)の集客力」や「集客カテゴリー(シネコンなど)があるか」「交通アクセス面」などの環境的なポイントはある。

上記の観点で近隣のモールで見ると「コクーン」が最もポイントが高いが、規模が大きいだけに今後のメンテナンスが課題になる。逆に「アリオ川口」は現状大変厳しい状況で、イトーヨーカドーの動き次第ではオーナー変更も考えられ、大きな変革がありそうに思う。

今後は、理想的なテナントリーシングが厳しい状況が間違いなく続く。

■今日のBGM

ファウンドグッド

“「場所によって客層が違う。」とアダストリア関係者は語った。”と新聞にあった。「ファウンドグッド」をイトーヨーカドーに展開しているアダストリアの感想のようだ。

まず店を始めるには、ビジネスモデルを作る必要がある。誰に売るのか?そのターゲットは商売をするには潤沢か?何を売るのか?など・・・

誰に売るのか?で悩んでしまった。というのが冒頭の言葉のように思う。

「ファウンドグッド」の立ち上げの状況を見てこようと思って近隣のイトーヨーカドー浦和店に行った。昔はドル箱店舗と言われていた浦和店もオープンから50年以上も経過し、完全に古い足元客のための店になっている。天井も低く1フロア400坪くらいの昔の駅前型GMSになる。1階の共用部以外をほぼすべてをつかって「ファウンドグッド」はある。浦和駅徒歩4分という立地で、伊勢丹No2の売上の浦和伊勢丹の北側にある。浦和駅にはアトレ浦和があり、開発された東口にはパルコ(食品はヤオコー)がある。イトーヨーカドー浦和店のメイン客層は昔からの顧客の足元の中高年になる。言い換えるとシニア層が多い。ここだけ見ていたら偏った見解になると思って、アリオ川口のイトーヨーカドーに向かった。アリオ川口のイトーヨーカドーはモールに来るお客様になっている。

冒頭のコメントと同じ感想になる。GMSがダメになった理由でもある。イオンやイズミの衣料品平場が悪いながら持ちこたえているのは、モール戦略で客層を若返らせ標準化させているからだ。アダストリアの社員はおそらくGMS、特にモールにあるキーテナントとしてではないGMSを見たことがなかったのではないかと思う。裏を読めば、アダストリア側には大きなリスクがない契約になっているのだろう。

感想は、まだ真剣に取り組めていないに尽きる。「とりあえず、商品を埋めた」感が強い。単品量販ではあるが、あくまでもグローバルワークやローリーズファームのベーシック商品を値頃にした感が強い。内装や演出もお互いどこまでやっていくのかが見えてない。

やはり、お互いの方向性が固まっていないように思う。特に本部での意思は現場まで届くのには時間がかかる。以前、お互いが資本を出し合って「別会社を立ち上げるべき」と指摘したが、その必要がありそうだ。ちなみに広い売場に浦和店にはスタッフは見えず、川口店には1名しかいなかった。

思いつくまま書く。商品では衣料品以外でお客様を呼び込む必要を感じる。なぜ、インナー商品をやってないのだろうか?必需品で回転率が高い商品を取り組むことによって、来店頻度が増す。ユニクロも素材感を打ち出した「ヒートテック」で完全にフルライン客層になったように思う。無印のように生活雑貨を増やしてもいいようにも感じる。さらに店のカテゴリーが浦和店と川口店のように違っているので、店を分類して基本品揃え以外での対策が必要になる。例えばプライス志向の強い店に不稼働商材の処分コーナーを常時設けるとか、イトーヨーカドー得意のデータ分析で店の特性を活かしたレイアウトを作ったりするべきだ。

アダストリアは、こちらが指摘するまでもなく、感性だけで生き残らず、優秀な企業体質なので、今後はどんどん変革していくだろう。ただ、大多数が大型モールや駅ビル、ファッションビル育ちでもあるので、「しまむら」や「西松屋」の商売をどうとらえるかが成功の鍵のような気がする。「ファウンドグッド」の取り組みによってこのゾーンを開拓することが、企業として大きな成長につながると思う。

定期的に見てみたい。

■今日のBGM

イトーヨカドー アリオ

「ファウンドグッド」の売場を見ようと思って、イトーヨーカドー浦和店に行って見たが、完璧に食品ニーズの古いイトーヨーカドーで、少し客層が違う店を見なければと感じて、アリオ川口に行って来た。アリオを見て少しびっくりしたので、アリオについて書こうと思う。

以前書いたと思うがアリオが千葉の蘇我に1号店を出店するとき、コンサルをした経緯がある。その後立ち上げた会社で数店舗出店依頼があったが、出店場所やタイミングが合わず見送った。近年のアリオはRSC(郊外大型モール)というよりCSC(コミュニティショッピングセンター:中規模)の意味合いが強くなっている。

アリオ川口は近隣でも行ったことはなかった。好立地にもかかわらず、全く魅力がなく手を入れている感じが全くしなかった。

現状20あるアリオのSCを調べてみたら、見たことのあるSCが4SCしかなかった。フロアマップで確認すればおおよそのイメージは、ショップMDで理解できる。あくまで主観ではあるが、おそらく全国のRSCレベルでの及第点はアリオ亀有ぐらいだろうか?(亀有には行ったことがある。)CSCとしての及第点のSCが10ぐらいはある。

感じられるのはテナントの改廃により、どんどん出店店舗のレベルダウンが進んでしまっている点だ。全店のフロアマップを見るだけでもそれはわかる。おそらく魅力ある店舗のリーシングより損益を考え、賃料を優先してきた結果だと思う。人気のあるSCはその政策でも競い合ってさらに良くなっていくが、厳しいSCはその結果、携帯などの通信業や利幅の大きな業態の入店が多くなり、魅力あるテナントが減っていく。

イオンもRSCはたくさんあるが、イオンモール物件とイオンリテール物件のRSCがある。イオンモール物件は㈱イオンモール(デベロッパー事業)が運営し量販店イオンがキーテナントの1つになっている。イオンリテール物件は㈱イオンリテール(量販店イオン)が運営しているSCということになる。テナントの立場でいうとイオンモール物件のほうがテナント寄りの思いが強く対応が心強い。逆にイオンリテール物件はあくまでもイオンを儲けさせるためのテナントという位置づけの印象が強い。さらにテナントの売上や特性より賃料を優先させているイメージがある。つまりモール物件のほうがモールイメージを優先させており、リテール物件のほうが収益重視に見えた。以前立ち上げた会社ではイオンリテール物件には数店舗入店したが結果的にはすべて退店した。

おそらくアリオは、あくまでも量販店イトーヨーカドーを底上げしようという手段のSCになっていったのではないだろうか。グループの収益を重視した結果、数字優先のテナント揃えになってSCの魅力がなくなっていったような気がする。おそらくテナントの改廃時、商環境より賃料を優先したリーシングの結果が積み重なって、リーシングの首を絞めてきた結果だろうと思う。

アリオ川口を見ても、さすがにイトーヨーカドーのSMは商品や値段の絞り込みが優れていて、足元のお客様は十分つかみきっている。だが、シネマとSMが主な集客要素では広域からのお客様は集められない。川口には大きなイオンモールが2つもあり、さらに「ほぼ東京」でもある。足元客だけではあれだけのSCは存続できない。

イトーヨーカドーグループのセブンイレブン一極集中が進む中で、イトーヨーカドーの衣料撤退に続いて、デベロッパーとしてのSCの存続問題も今後課題として出てくるのではないだろうか。

■今日の1枚(やっと満開の散歩コース)

イトーヨーカドーとアダストリア 2

GMSの衣料服飾品売場の課題が浮き彫りになっている。イトーヨーカドーは廃止の方向だし、イオンは別会社化している。イトーヨーカドーの売場をアダストリアが商品を供給し、売場作りや演出方法についても提案していくとのことである。

何故、イトーヨーカドーの衣料服飾品売場は売れなかったのだろうか?MDや演出方法が間違っていたのだろうか?おそらくイオンのトップバリュがイトーヨーカドーの衣料服飾品をやっていても同じ結果だっただろうと思う。さらに悪い数字だったかもしれない。完全にSCの集客力の違いで、GMSという業態がもう終わったということに尽きる。

今回のアダストリアとの取り組みについて考える。専門店と百貨店、量販店(GMS)は売り方が全然違う。過去に伊勢丹のカリスマバイヤーがイトーヨーカドーの役員になり衣料服飾売場や商品の変更を企画実施したが成功しなかった。土俵が違うし仕事のやり方が全く違っていたからだ。あの事例は簡単に予測できた。ファッションを売ることと商品を売ることは違う。そこに買い物に来るお客様も違う。そこに大きな差があった。

ここからはあくまでも個人的な意見になるが、アダストリアには、イトーヨーカドーのスタッフの小売としての業務レベルが相当に高いと思って臨んでほしい。私事で書くが、あまり業態の差はないと思われそうだが、GMS(サティ)と専門店(ビブレ)を両方経験した。「ビブレ」はファッションビルに見えるが、自主MDの店を30近く運営していた。当時の流れの差もあるが「ビブレ」は「サティ」を認めてなかったように感じた。私自身は「サティ」のほうがファッション業界の流れやトレンドはつかみきれてないが、数値意識や商品知識や販売スキルは高いと感じていた。つまり「感覚」や「トレンド」はあまり意識してないが「売れる商品」や「売れる素材」は理解していたように感じた。実際業務のマニュアルやデータ分析は「サティ」のほうが先行していた。そのGMSを引っ張っていたのがイトーヨーカドーだったのだから、実務レベルは、相当高いだろうし、取引先からもそういう情報を聞いていた。さらにディストリビューターの権限が強くデータ分析力も高いと言われていた。

間違いなくトレンドのつかみ方や、時流に合った売るための内装、演出の仕方、さらに一番差が出るお客さまへの接し方はアダストリアのほうが確実に上回っている。さらにこのブログでも書いてきたが、アダストリアは素晴らしい経営者がいて素晴らしい会社だ。

このターゲットのお客様をつかむ事業を開発し、ユニクロに負けない事業を構築する目的で両社が新しい会社を作っていくことが望ましいことだと思う。現状の報道を見る限り、イトーヨーカドーをアダストリアが助けるイメージが強い。まだ完成形を見てないが、導入された店を見る限りだと、イトーヨーカドーの声が聞こえてないなとも感じた。新しい売り場を作っていこうとする気概を是非見せてほしい。今回はイトーヨーカドーの底力に期待したい。

今回、この内容を書くかどうか迷った。GMSの衣料服飾品の収益が悪い記事を見るたびに、GMS衣料品出身としては悔しい思いがあった。商品よりも環境が大きな問題で、そのMDや売り方はそんなに大きな問題はないように感じていた。百貨店の取引先主導のMDよりも専門店の感性型MDよりもGMSのほうが理詰めだった気がする。GMSから離れて、百貨店や専門店の人たちと交流したが、商品素材や縫製についての知識や、数値面、システム面で劣っているとは感じなかった。逆に商売の理論は上回っていると感じていた。決して卑下することはないと思う。

今後どうなっていくか、一番注目している。

■3月23日の日経朝刊 ※掲載料は?

2件の取引先との協業について

前回のブログを書いているときに思うことがあった。イトーヨーカドーとマックハウスは売場の改善を目的にしているのに対して、アダストリアとワールドは新客層への取り組みを大きな狙いにしているのではないかということだ。

現状のアダストリアの主戦場はRSC(大型モール)であり、ワールドは百貨店、ターミナルビルのように見える。所謂、モデレート層をうまく取り組んでいる。特にアダストリアはそのターゲットでは一番のシェアを取っていると思う。

このブログでも再三書いているが、現状の客層はインバウンドを含む高級ブランド、百貨店志向と、ボリュームプライスを打ち出している専門店の客層に2極化されているように見える。中間層ターゲットの専門店の流れは悪い。ボリュームプライスの専門店はユニクロ、しまむら、ニトリ、西松屋などがあげられ、好調な数字が続いている。

アダストリア、ワールドは2極化されたボリュームプライスニーズには、現状取り組めていない。今後の戦略としてどうしてもそのゾーンにも参入が必要になってくる。つまりボリュームプライスの商売を模索しようとしているのではないか?主戦場のRSCや駅ビルでは確実につかめない客層を把握していきたいのではないだろうか?

そういう意味では100店舗以上あるイトーヨーカドーの衣料服飾売場はチャレンジするのにベストの状況になる。ワールドは少し読みにくいが、マックハウスも、従来ダイエー中心に出店していてイオンモールなどRSCに乗り遅れた経緯がある売場が多い。

さらには今回の取り組みは、いずれも厳しくなった売場を開発する目的でスタートさせるので、どちらかというとイニシアチブをとれる。優位性を持てれば商品MDだけでなく売場の内装、レイアウト、演出までリーダーシップをとれる。

アダストリアにとってイトーヨーカドーは非常にいい相手だと思う。大型の売場をコントロールできるし、安定したSMを持っているSCで取り組める。さらに、おそらくシステムやデータ分析はイトーヨーカドーに1日の長がある。その部分も取り込める。いろいろ試行錯誤ができそうだ。阿倍野キューズモールのイトーヨーカドーで商品を少し見たが、「袋入りの商品はどういう目的があるのか」など気になる事はあるが、修正を重ねていくと思われる。フルラインの衣料と雑貨までの展開で、優等生企業同士の取り組みには期待できる。唯一問題があるとすれば、元気がなくなったように見えたイトーヨーカドー側のスタッフのモチベーションが上がるかだと思う。

ワールドの取り組みは、前回のブログで書いた通りで、ワールド側が「うまくいったら儲けもの」くらいの取り組みのような気がする。思い切って両社で金をかけてどこかで成功事例を作る必要がある。お互いの出方を見ながらのスタートなら、うまくいかないし、マックハウス側に傷が残るだけになる。

専門店各社のボリュームプライスへの取り組みが、過熱しそうな気がする。

■今日のBGM

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