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イトーヨーカドーとアダストリア

イトーヨーカドー(以下IY)の撤退についての感想を書いたばかりでいたら、「IYが撤退した衣料品平場をアダストリアが改革。6月までに64店舗に導入。」との記事が報道された。

IY専用のアパレルブランド「ファウンドグッド」(100坪~300坪)をアダストリアが商品提供し売場演出、販促、販売員教育もサポートするという。イズミとは「シュカ」というブランドをプロデュースしているが規模は今回のほうがかなり大きい。

こうなったいきさつを想定してみる。(あくまでも想定。)IYが衣料からの撤退を決め、テナント導入を進めるという政策は去年の春くらいからは動いていたと思う。そして、おそらくテナント導入はうまくいかなかったのではないか。ここでも何度か書いたが今のGMSのIYにRSCモールになれたテナントは興味を示さないし、デベロッパーが収益を優先する条件ではなかなかリーシングできない。そんな中で友好関係にあるイズミと協業を始めたアダストリアとの話し合いでのスタートの気がする。「スタディオクリップ」のFCもスタートさせ、話し合いを続けた結果、今回の協業に至ったのではないか。

果たしてうまくいくか?

マイカル在籍時、同じようなことをした記憶がある。取引先とブランドを立ち上げビブレ(ファッションビル)だけでなくサティ(GMS)までの導入を図り、GMSの売場の活性化を図ろうとした。取引先は「サンエーインターナショナル(現TSI)」、「ピンクハウス」「ワールド」「イトキン」だったと思う。「ZARA」とも取り組んだと記憶する。結果は失敗だった。お互いの会社の取り組み方にずれが出てきて整合が難しかったと思う。お互いの社風も違う。育ってきた風土も違う。組織体系をきちんとしなければうまくできない。さらにお互いのリスクの大きさも違ってくる。

今回の詳しい取り組み内容はわからないが、内装などハード投資や商品リスク、運営問題などの整理がきちんとできるかがポイントになる。成功させるには別会社を作るくらいの労力はいる。今回はファッション小売業で最も優れている「アダストリア」と流通業での優等生のIYとの協業なので、昔私たちが経験した失敗は少ないとは思う。IYで「スタディオクリップ」のFCが成功したことも要因の一つとあるが、そのブランドは認知度が高く、関係は「取引先対小売業」で一般的なものだ。今回の取り組みはIYの活性化がメインなのだろうが、事業としては西友がスタートさせた「無印良品」のようにIYだけでなく、どこにでも出店するブランドを作る意気込みでないと失敗する気がする。当然アダストリアとしても現状の低価格帯の専門店の好調さは織り込み済みで、販路拡大を探っていたはずだ。

将来的にはチェーン展開できるショップを目指すべく、資本を持ち合い、人の交流もし、同じ目標に向かっていくことが成功のポイントになると思う。いち早く運営会社を立ち上げるべきだと思う。

今後の動向に注目したい。

■今日のBGM

イトーヨーカドーのエンディング

イトーヨーカドー(以下IYと記述)の退店ラッシュとの記事がTV、新聞やネット上に多く出てきている。セブンアイの政策通りの動きではあるが、少し寂しい。数字を見てもGMSとしてのIYがどうだったのかが比較するものがなくできないので、今までの私自身の経験や感想のみで書かせてもらう。あくまでも感想ということを前もって書いておく。

IYのGMS事業の収益は低くなっているが、イオンのGMSと比較すると間違いなく利益率は高いと思う。少し数字を調べたがイオンは㈱イオンリテールの総利益率は発表していない。IYは2021年25.1%で、イオンリテールとして2018年は26.4%と公表はしている。ただしイオンはモール事業を㈱イオンモール以外でもやっており、SC名はイオンモールではあるが運営母体が㈱イオンリテールという物件も多い。越谷レイクタウンのmoriはイオンリテール物件だし、もともとイオン物件をモール化した物件はイオンリテール物件が多い。そういう意味でモールとしての賃借料収入で利益率は変化するので、IYとは比較できない。ただ間違いなく過去の経験上IYの利益率が高いと思う。食品の利益率は2%以上の差があるのではないかと思う。

IYは関東の企業で、小売業というより「企業」「組織」というイメージが強い。従業員も関西系GMSの社員とは違う「きちんとした」イメージがある。アリオのコンサルで四谷の本社を何度も訪れたが、スタッフの机は全員入口に向いており、企業体質も「ちゃんとした企業」というイメージを受けた。「やったらええがな!」的なマイカルにいたので余計に痛感した

ただ、きちんとした企業だから数字で理論づけされて思い切ったことができなかったのではないかと思う。陳台を決めて効率を追求するコンビニ「セブンイレブン」はIYの風土から育っていった。余談だがイオンの「ミニストップ」はもっと個性を出せばいいのにと思う。さらにIYの効率経営を考えれば、イオンのように「たぬきの出る」場所に出店はしない。エリアマーケティングを徹底し、数字上効率が合わない郊外の大きな面積でのSCは開発しない。郊外RSC事業では開発型の思い切った戦略のイオンに完敗だった。イズミとの紳士協定(商社がらみ)で西日本への出店ができず、関西系GMSのお膝元には出店ができなかったことでナショナルチェーンになれなかったことも大きい。

GMSの精度ははるかにイオンより上だと思う。ただRSC主流の現在、買い物以外のエニシングエルスがない。従来通り効率追求のGMSに見える。さらにそもそもGMS自体がもうオワコンのような気がする。イオンも当然わかっている。IYの売り上げ構成比で衣料雑貨、住関連の商材は20%程度まで落ち込んでいる。イオンも食品以外は完全に縮小傾向だ。

IYも「食品+テナント」の構造へ変化していくと発表しているが、テナントリーシングに苦しむと思う。どこまでテナントに賃料を譲歩できるかが課題にはなる。企業体質として赤字になる事は、許されないので固定賃料か「固定+歩合」でのリーシングになる。出店する人気大型カテゴリーの賃料にはなかなか譲歩できないのではないか。

SM事業も今後は利益を出しにくくなっていくのではないだろうか?「ロピア」や「OK」など価格戦略に対抗するのは、企業風土、戦略を大幅に変更するしかない。

大学時代、有名なマーケティングの先生が流通業ではIYを一押しだった。まさかこんな時代が来るとは思わなかった。理詰めでの経営だったはずだが世の中の流れに乗れなかった。IYの歴史が「セブンイレブン」を作り上げたことは事実だ。小売業の流れも大幅に変わった。百貨店もほぼなくなっていくだろうし、今後RSCも淘汰が始まる。客層の2極化が進んでいく中、中流のGMSはいらなくなった。

IYの解体でGMSの歴史は終わる。つくづく実感する。

■今日のBGM

もうナショナルチェーンはできないのではないか?

小売業界、ファッション業界に新しい風は今後吹くのだろうか?ローカルチェーンはナショナルチェーンになれるのだろうか。ユニクロは山口県宇部市、アダストリアは茨城県水戸市、ハニーズは福島県いわき市からスタートしている。

地方で成功している店はある。その店が全国にはなかなか波及できない。ブランドを販売してそれを軸にMDを組んでいる店が多く、エリア間のバッティングがあり、エリアを超えると思ったようなMDができないことが要因になる。ジーンズ老舗専門店発祥のセレクト店にこの傾向は強い。DCブランドブームの時も、大都市以外はFC店が主流でエリアごとにFCのオーナーがいた。アダストリアはジーンズ専門店がスタートだったし、ユニクロはVANショップをやっていたと聞く。

ナショナルチェーンへの転換の最大の要因はブランドMDから自主MDに方向転換することだと言える。

次のステップはナショナルチェーンとしてのビジネスモデルを確立できるかだと思う。ローカルチェーンはブランドMDが多いため接客重視で、プロパー販売をすることが基本になる。必然的に顧客管理をして、顧客の顔を見据えた仕入れが必要になる。ナショナルチェーンは当然客層の幅を広げ、組織を作り、管理面、商品面とも本部機能を充実する必要がある。商品は当然自主MDでセントラルバイングのウエイトが上がるし、それに伴い管理機能も万全を期す必要が出てくる。そして何よりもそれを推進する資金調達が必要になってくる。

商品原価を下げるためには、商品を作りこむ必要があり、利益率を上げるにはそのMD商品を売り込むことが必須になってくる。原価を下げるためには取引先との別注が必要で、その最低ロットは最低1型200~300は必要になってくる。さらに自社で作りこむにはそれ以上の数量で作りこまねばならない。ということはそれを売るべき場所、さらにはきちんと消化できる店が最低30店ちかくは必要になる。円安の影響で海外生産でも商品原価を下げにくい状況にもある。

さらに、SCも成熟期から衰退期の過渡期で、コロナ以降は特に賃料収入は維持していきたい方向にあり、将来を見越しての賃料優遇も考えにくい。スタッフの人件費も高騰が続いている。

株式上場を目指した岡山から出たストライプインターナショナルも赤字決算が続いているし、タカキューやライトオンなど上場企業でさえ厳しい数字になっている。ナショナルチェーンを目指すより、安定したローカルチェーンのほうが居心地いいかもしれない。

■今日のBGM

アウトレットは完全に飽和状態

千歳アウトレットモール「レラ」が終了する方針とのニュースがあった。昨年末には福岡の「マリノアシティ」も建て替えの検討に入ったとのニュースがあり、昨年6月には「八ヶ岳リゾートアウトレット」が閉鎖された。三菱地所の「プレミアムアウトレット」、三井不動産の「アウトレットパーク」に続いて大手イオンが「ジアウトレット」として参入した北広島、北九州も空床が目立ち、厳しい状況が伝えられている。

以前も書いたと思うが、PM会社にいた時、当時のチェルシージャパン(現三菱地所・サイモン株式会社)に開発の話をしたとき(千歳レラだったような気もする)「日本にはアウトレットが成功する場所はそれほど多くない。」と言われた。現在アウトレットは「プレミアムアウトレット」が10か所、「アウトレットパーク」が13か所「ジアウトレット」3か所と大手だけでも26か所もある。

そもそもアウトレットは各小売業、各ブランドの在庫過多商品を売り切る場所で、掘り出し物的商品や売り切ってしまいたい商品の値段を下げてなくしていく場所だった。

小売業は当然利益を追求する。商品をだぶつかせて、その商品の値段を下げれば利益率が下がっていく。利益を追求するには、売れる商品を売れる量作るのが基本になってくる。つまりアウトレットに回す売れない商品が多ければ、会社の利益は下がっていくし、当然プロパー店(一般店?)の売上も下がっているということになる。だが、売れ残り商品が多くないとアウトレットの商売は成り立たない。売り上げが悪いと言われている会社もある。ただアウトレットに商品を移して売ることによって、利益率が下がるリスクも出てくる。近年は利益率を優先する会社が増えてきている。

一般的には好調企業は、アウトレットに流れる商品は少なく、不振企業はアウトレットに移して値段を大きく下げるには、利益が下がるリスクを伴う。

その一方でアウトレットモールは増えてくる。そうなれば当然商品の魅力度が下がってくる。大手セレクトではアウトレット用のブランドを作って売り上げを上げ、さらに利益率の低下も防いでいる。ただ、もうすでにそれをお客様は見抜いている。さらにプレミアムブランドは出店しないか立地を選ぶ。つまり魅力的なショップが減ってきている。アウトレットモールの乱立は魅力をどんどん下げている。

今後は、間違いなく淘汰が始まる。もしくは門真のららぽーとで応急的に始めたRSCへのフロア単位での出店が出てくるのではないか。(門真は鶴見アウトレットの受け皿としてのリーシングがもたらした。)さらに最低限SMは併設しなければSCとして成り立たなくなるかもしれない。

ますますアウトレットモールのショップMDやアウトレット商品に魅力はなくなっていくと思う。

■今日のBGM

小売業の2極化

そこまで景気動向に精通してはいないが「円は戻ってまた高くなる。」ということはもうないのではないかと感じる。経済評論家でなくてもわかるような事態だと思う。

円安が続いている。国債を発行しすぎているので金利を上げると、国は金利負担が増す。さらに借入金の金利も上がり、一般市民にも影響が大きい。円安で輸出企業は儲けている。代表的な業種は「車」関連があげられる。ただ流れは電気自動車に変わってきている。今の状況では「車」業界も完全に弱くなる。さらに電気に変わることでガソリンでのサプライチェーンは大きな転機を迎える。それに代わる輸出産業が出てこなければますます流れは悪くなる。さらに日本は資源を持っている国ではない。資源を持っている国への依存度が高い。

物価の高騰に合わせて、「給料を上げていく」と国は大号令をかけるが、その原資はどこから来るのか?労働者の70%を占める中小企業従事者はどうやって給料が上がっていくのか?

そういう中で小売業はどうなっていくのだろう?限られた百貨店でインバウンドや高所得者の「貨幣より物」化で増収は起こっている。逆にしまむらや西松屋のように低価格を打ち出している専門店の伸びが大きい。SMもオーケーやロピアのように値段での打ち出しが強い店が好調だし、イオンも値下げを打ち出した商品が増えてきている。ファッション専門店も低価格帯のユニクロや、若干そのゾーンに引っ張られる流れのアダストリアが中心になっている。

上下に引っ張られて、真ん中が希薄になってきている。前回書いたきっかけになったサマンサタバサの記事の中にこう書かれていた。【「中途半端なブランド」を一体どの層が支持するのか。「どっちつかず」ということは「どの層も支持しない」ことでもある。】記事の内容はもうすでに周知されているようなことだったけど、このコメントは鋭いと思う。

中流を意識したSC特にRSCはさらに厳しくなると思うし、その収益のマイナス分をテナントに向けると、テナントは動かない。テナントは無理して出店できないので、出店する場所や機会が減ってくる。特にコロナの痛みが大きい中小企業はさらに厳しい。低価格志向のテナントが増えるし、好調テナントの大型化は進む。どんどん悪循環が続きそうだ。

厳しい時代になってきている。

■今日のBGM(年越しにyoutubeででも聞いてください。心が洗われます)

RSC(大型SC)への提言 ➁

絶対にRSCは食い合いになって淘汰されていく。GMSが出店にしのぎを削り、生存競争に残った最後のGMSだったイトーヨーカドーも解体されていく。以前に書いたのだが自分のまわり15km圏に8つのRSCがある。小さめのアリオなど含めればもっとある。将来的に最低2つは成り立たなくなる。その他もNSC(近隣型SC)としては残るが不要なテナント部分が稼働しないRSCは想定できる。

GMSが厳しくなって、イオンやイズミはRSCで生き残った。そこにららぽーとや独立系も参入してきており、その形態も現状はリートやファンドに組み入れられている物件も多い。ここからは淘汰が始まる。

厳しくなってくると会社はどう動くか?当然改装計画を立案し、審議し、改装を実施する。イオンモールなどでは「活性化計画」と言われている。改装計画を審議し当然のように投資をかけることによって増益になる計画を承認する。今までの経験から考えると、流れが悪くなってきた物件を改装等の計画でその流れを止めることができた物件は、増床以外でほぼ見たことがない。店名を変えたりしたがその成功は長くは持たない。特に厳しくなったモールに新しいテナントを現条件で入店させるのは至難の業だし、その条件で入るのは同質化したテナントやサービス系テナントだけになる。増床計画があったRSCの改装でも、成功した物件はそんなに多くない。テナント側も増床部分は厳しいとすでに理解している。つまり改装効果を追い求めるあまり、将来的にさらに厳しくなる予測が現実的である。(短期的にはリニュアルセールでにぎわっても結局はもとに戻る。)

現実的には現状の流れを食い止めて、顧客の流出を防ぐ改装を考えることを優先すべきではないかと考える。つまり、投資した分を必ず回収する改装より、「投資経費をかけて発生するだろうマイナスを止める」改装を実施するべきではないだろうか。消耗品費や修繕費のように儲けるためではなく、維持する必要経費と考えるべきだと思う。営業数値の減少を止めるべき投資と考えるべきだと思う。

経費だけ使って数字の上振れがなければ、当然減益になる。ただ将来の大きな減益を止めることはできる。何年か経たないとその結果は出ないかもしれないが、投資基準は別として、間違いなくそういう改装も必要になってくる。非常に難しい問題だけれど、何年か後に優位性を持つことも大きな戦略だと思う。

■今日のBGM

RSC(大型モール)への提言

NSC(小型モール)の役目は生活関連商品の買いやすさと利便性にあると思う。RSCはそこに「わざわざ買いにいく」商材やテナントが付け加えることで成り立っていると思っている。当然広商圏ロケーションや規模や行きやすさなどが加味されるが・・・

「わざわざ買いに行く」テナントはRSCができ始めたころは出店していたが、次第に姿を消していく。中には当初はそういうテナントだったが、その後客層に合わせていって成功していったテナントもあるし、消えていったテナントもあるし、さらに消えていきつつあるテナントもある。

現状のRSCは近隣に乱立し全く差別化ができなくなっている。わざわざ性のあるテナントがなくなり、どこに行っても同じショップMDになっている。さらに好調企業はショップの大型化を図り、それによってさらに各SCの同一化が進んでいる。当然そういう状況が続けば、SC間の競合力の差で淘汰が始まる。GMSが乱立した時と同じ状況になる。

「わざわざ買いに行く」つまり差別化できるテナントはなぜ出店しなくなったのか?そういうテナントと出店を続けるテナントは大きな違いがいくつもある。差別化できるテナントはコンセプト自体が、極端に言うと「お客様を選ぶ」「自分たちの考えを理解してくれるお客様だけでいい」「仕事のペースが違う」などなど・・・

RSCに出店しない理由を順不同で列挙すると

  1. 営業時間が長い。どんどん長くなる。定休日がない。
  2. SCのセールや販促イベントが多すぎる。
  3. SCでの会議や打ち合わせが多い。 
  4. 客層の幅が広く、目的客の比率が低い。
  5. 賃料や他の経費が高い etc

つまり、自分たちの空間、世界を作りにくいということ。そこを解決すれば出店の糸口はできる。

そこで提言である。

  • 本部や店のリーシング担当がどうしても入れたいテナントを探し10店舗くらいでまとめる。→この見極めが最も大事だが、リーシング担当は絶対に入れたい店舗は数店舗想定に必ずある。(それがなければ仕事をしていない。)
  • SCの1画に500坪から1000坪くらいの場所を確保する。→現状それぐらいの面積は十分まとめて開けることは可能だと思う。それは3階の奥でもいいしデッドスペースでいい。
  • その1画にリーシング担当の推薦する店舗を検討の上リーシングする。

その時の候補テナントへの想定条件を考えてみた。

  • 賃料はすべて込み(共益費、販促費など)で10%以内の1年契約(再契約あり)
  • 営業時間は9時間(例えば10時~19時)定休日は毎週1日(例えば火曜日)→その1画だけは上記時間のみの営業とする。
  • 内装は各テナントがイメージに合った内装で出店。→内装イメージを高くする。当然内装はSCがチェックし決定する。
  • テナントが出店する1画はSCでイメージを持った環境整備をする。
  • 全体販促参加は強要しない。

  

こんな絵空事を提言しても絶対受け付けてくれない。間違いなく却下される。でも考える必要はあると思う。

こうすることによってSCの差別化が図れるし、運営能力も間違いなく向上する。

こういうところにしか生き残り戦略の糸口はない。

■今日のBGM

12月の商売

12月の商売は昔と大きく変わった。11月末にブラックフライデーが始まって、ボーナスサンデーの流れが弱まり、ギフトニーズも減ってきた。さらに元旦営業が普通になり、年末の必需品の駆け込みもなくなった。ブランド時代はギフトとプレセール等でにぎわったが、年を開けてのバーゲンもなくなり20日過ぎからバーゲンが立ち上がる。

商売の妙があるのが12月の商売だった。12月最量販期、1月バーゲンでそのための商品を仕入れなければならない。取引先もここで在庫をなくさないとデッドストックになってしまう。商談で原価交渉をして「半値7掛け、半値6掛け」(原価35%,30%)での仕入れをしてバーゲンでダウンする利益の補填をする月だった。

そういう商売を今もしているのだろうか?秋冬売れなかった商品をなくすための利益計画を策定してプライスダウンする準備をしているのだろうか?12月バーゲンに向けて売れなかった商品の処理計画をしているのだろうか?

買い物に行って売り場を見ると、そういう気配はあまり感じず、例えば「全品10%オフ」とか「20%オフ」とか計画的に処理をしているようには見えない店が多い。細かい商品アイテムごとの処理計画はないのだろうか?例月と12月商戦はそんなに変わっていない。売り場を見る限り12月の特別さを感じない。

この頃、しまむらが気になっているので、しまむらのチラシを見る。「総力祭」という打ち出しで均一訴求となっている。300円、500円、700円、900円、1500円、2000円、3000円でのくくりでカットソーは1000円以下均一、コート1500円、掛布団2000円、ダウン3000円が目玉商品。問屋や名古屋、岐阜の取引先から安く仕入れて、自店の不稼働商材も併せてマークダウンしてプライスのくくりで売っているのだろうと思う。昔からの商売をやっている。お客様も12月を感じる。

しまむらの利益率は過去3年33.9%,34.1%,34.1%と大きく変化はない。当然企業としては利益率の改善は取り組んではいるだろうが、回転率を重視している経営なので大きな改善は難しいのかもしれない。ただ買取商材はきちんと販売期間内でなくすという姿勢は正しい商売だと思う。売っていた商品は違うが、商売の考え方はしまむらのほうが好きだ。

ブラックフライデーの時も大きくプライスダウンコーナーを取っていたのはユニクロだけだった。セールスチャンスに不稼働商材をマークダウンするのはごく普通だと思う。利益率重視はいいが、商品の鮮度はお客様にはすぐばれる。自発的に不稼働商品をプライスダウンし売り込んでなくしていくというより、セールに協賛しているだけのような取り組みの店が多すぎる。

12月の商売も例年盛り上がらないようになってきている。

■今日のBGM

やはりファッション系の出店は少ない

SCに出店する店は少なくなってくると予測してきた。コロナで傷んだ企業が、同じくコロナで傷んだ大企業がやっているSCには出店できない。利潤を追求する大企業は当然賃料を下げるわけがない。現状維持かそれ以上を言ってくる。その条件に対応できるのは利益率の高い新業態か、収益が安定している企業になる。収益が安定している企業はさらに大型化を模索し、省力化を図り、坪家賃も引き下げる。全体の坪数は変わりないので、賃料のしわ寄せは、当然他の出店テナントに来る。

実際に現場を見てないが、イオンモールのリニュアル店舗のHPをみる。(新しい順)※新改装店のみ。あくまでも公式発表でなくHPでの個人的な検索数。

■イオンモール京都 11/2オープン

新店15    飲食系7 通信(携帯等)2 その他(保険、体験型等)3       衣料1(ワークマン女子) 雑貨1(ゾフ) 催事1(イケア) 

■イオンモール幕張新都心 9/15~順次オープン

新店22     飲食6 その他(車、家、ゲーム等)9 生活雑貨2       衣料系3(古着2、オフプライス1)雑貨2(サックスバー、ABCマート)

■イオンモール広島府中 9/22~順次オープン

新店14    飲食5 その他(ゲーム、ヘアー、ペット等)3 生活雑貨2       衣料系3(ハニーズ、スタイルミキサー、ワークマン女子)雑貨1(チェルシーニューヨーク)    

やはりファッション系の出店は少ない。当然リニュアルは多いが政策的な出店と思える「ワークマン女子」(ベイシアとイオンの確執はなくなった?)とバロックの新業態「スタイルミキサー」が目立つ程度。雑貨でも数字は厳しいと思われる「チェルシー」やイオンモールではあまり望まれてないだろう「ハニーズ」の出店は、きついリーシングを物語っているし、あとは大手の「ABCマート」と「サックスバー」の大型化出店。その他、飲食や携帯、保険、ペットなどの出店が多い。ファッション関連ではリニュアルの目玉になりそうな出店は見当たらない。コロナで入れ替わりの激しい飲食やメインフロア外の改装が中心になっている。

広島府中や幕張新都心はイオンモールの中では大型SCであり、リーシングも力を入れただろう物件だ。見てもなく失礼だが、大きな目玉のないリニュアルのような気がする。

今後も、今まで改装の目玉だったファッション店舗の導入は減っていき、好調店舗の大型化と「その他業種」の導入中心のリニュアルが中心になっていくことが予測される。それによってテナントの好不調の差が広がり、大型SCの魅力がどんどん薄れていくように思う。

■今日のBGM

顧客はどんどん年をとる

ずいぶん以前に書いたと思うが、顧客管理をやればやるほど固定客の年齢は上がっていくので客層は高くなっていく。昔から中高年対象の店なら新規顧客になるかもしれないが、ヤングターゲットだった店はどんどん顧客ターゲット年齢は上がっていく。

「レイカズン倒産」と聞いて、原因はそこにあると思った。平成系ブランドと言われて、どちらかというとショップブランドというより平成系品揃えショップの主力ブランドだったと思う。もうずいぶん前のことでほとんど忘れてしまったが、DCブランドの流れが悪くなってきて光が当たったブランドだったと記憶する。当時カジュアル品揃え店舗でカットソーが売れていた「ナイスクラップ」が大ヒットし、追随していったブランド群の1つだったように記憶する。同じ流れだった「マジェスティックレゴン」も別会社の経営になっている。

今その当時のカジュアル系ブランドで残っているのは、「45RPM」「「チャイルドウーマン」「ヒステリックグラマー」などがあるが、完全にブランドのターゲットや立ち位置を変えている。

特にカジュアル品揃え系の店は近年激減している。ユニクロに代表されるSPA型専門店が増え、さらに駅前ファッションビルから郊外モールへ買い物の主戦場が変化しており、各ショップや品揃店の立ち位置が見えなくなってしまった。さらに前述したが、従来の顧客は年齢を重ね、新しいターゲットの開発ができてない。郊外モールにシフトした「ストライプインターナショナル」や「ハートマーケット」、少し意味合いは違うが「アナップ」や「イング」もどんどん店舗を減らしている。

「レイカズン」はもともとの卸先は専門店だった。その専門店がもう成り立っていない。前述したターゲット年齢もあるが、やはり値段の壁も大きい。例えば、販路が専門店であれば専門店もメーカーもともに利益を50%出すとすれば、25%で作って50%で卸す構図になる。ユニクロなどSPA企業は25%で作って60%で売っても40%分値段が安くなるし、利益も大きい。引き付ける商品がなければお客様はもう専門店には足を運ばない。

今残って成り立っている専門店は、昔のジーンズ専門店くらいしか見当たらない。ジーンズにトレンドは少ないし、値段も崩れていない。ある程度の値段は通る。重厚な内装なら、なおいい。Bshop系の「ダントン」や「オーシバル」などを組み合わせれば根強いファンもついてくる。ただ以前から述べているように、在庫の問題があり多店舗化は難しい。

昔売れていたレディス品揃えブランドは、「客層の変化」と、「卸先の減少」、「値段の壁」で大きな戦略変更がなければ、どんどんなくなっていく。

■今日のBGM

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