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先を見据えた企業戦略

この頃、商売のキャパを考える。人口が減少していき、労働人口は減少し、どんどん高齢化は進んでいる。商売は想定需要のシェアをどれだけ確保していくかにかかっている。例えば食品スーパー(SM)なら商圏人口×食品支出である程度の想定の需要額はでる。衣料や雑貨も結局そのパイの取り合いになってくる。そして全体のキャパはどんどん減少していく。

駅にあったマツキヨが退店していた。近辺に新しくスギ薬局ができて、サンドラッグ、ウェルシア、セイムスと完全にオーバーストアになり、立地面では良かったが規模で劣ったマツキヨが駅前商圏から消えていった。ドラッグの商圏規模からはじき出された結果かもしれない。SMでは、ヤオコーが去年駅前にオープンした。企業として1km圏のシェアは25%が目標で、実績としては18%ということだ。近隣駅の1km圏の人口は54000人で2.5万世帯であり、食品支出額は2人家庭で1070千と発表されている。家族の人数を考慮し、外食を除いて計算して食品支出額1世帯800千と想定すると、商圏内の食品支出額は約200億円の規模になる。駅前にオープンしたヤオコーの初年度売上目標が26億円と発表されており、シェアは13%ということになる。数字から分析すればまだ成長余地はあるということかもしれない。

衣料品の消費支出についての総務省統計局の家計調査データがある。2021年のデータだが1世帯当たりの消費支出のうち「被服、履物」への支出は全体の4.4%しかなく、昭和50年代くらいまで続いていた10%前後から大きく低下している。購入単価も単価指数で見ると平成17年を100として婦人服は55、紳士服は87などすべての品目で消費者物価指数を下回っている。さらにデータを見ると可処分所得は10年前と変わらないのに「衣服、履物」への支出は2割位減っていることがわかる。他のデータを見ても衣料品購買額は2024年平均月額3336円でバブル期から約50%減という数字もある。

つまり、データは調べれば山ほどあり、ある程度データを分析すれば、その企業の方向性や成長性は読めてくるのではないかと思う。企業の拡大を目指すなら、現在のポジションを理解して、客層の幅を広げるかシェアを上げるかなどの対策を立てる必要がある。

2024年の国内人口が1.23億で2040年には1.1億になるという。そのうち65才以上の人口は29.3%から35%になり、15才~65才の人口は現状の7372万人から6300万人前後に落ち込み、約1100万人減少するとされている。労働人口は省力化を進めていけば何とかカバーできるかもしれないが、小売業は両面で明らかに厳しくなる。特に客層の幅を狭くしている業種は厳しくなる。例えばユニクロは客層の幅を広げており、65才以上へも訴求できている。そうなればいかにシェアを上げていくかが企業課題になる。すでにグローバル企業で、国内のマイナスをヘッジすることもできている。逆に客層の幅が狭いセレクトショップの戦略はどうあるべきか?単純に65才以上をターゲットから外すと、2040年にはターゲット人口は85%前後になる。そうなれば、戦略はボリューム層に食い込むか、資産を持つ高齢層を取り組むかしかない。現状の客層のシェア率を上げても分母のマイナスは補えない。企業の維持拡大を考えるなら、M&Aしかないのではないか。

高年齢化、人口減少で小売業はアゲインストが多い。特に必需品でないファッション企業は厳しい道が待っている。いち早く、将来的な事業の立ち位置を考え、どうやってシェア率を上げていくかを早急に検討する必要がある。

■今日のBGM

自民党総裁選挙・・・

新聞、テレビでは総裁選挙の露出がずいぶん増えてきた。過半数割れとは言え、そのまま総理大臣を選ぶ選挙になる。誰も、賛否で盛り上がる公約もなく、おそらく誰がやっても変わらないし、国内の動きにプラスの影響はなさそうな気がする。

国民全体のことではないが、小さな小売の会社を経営してきた経験から、国が中小企業に手を伸ばして欲しいことを少し書いてみる。

このブログでもよく書いているが、国内の企業数の99%は中小企業で、従業員数も70%を占める。売上高を見ると中小企業は全体の59.2%で、全体の経常利益に占める割合は22.7%というデータがある。このデータから見ると国としては「稼ぐ力」が強い大企業中心の政策にならざるをえない。中小企業は国から見て投資対効果は低い。経済同友会や経団連のニュースは多いが、中小企業庁の露出はほとんどない。当然重要度から見れば、大企業中心にならざるを得ない。ただ、小売業で言うとコンビニオーナーも会社化しているところも多く、大手コンビニも中小企業で成り立っている。ローソンの社長だった新浪氏は「時給1500円にできない企業は退出」と言っていたが・・・

まず、政策への訴求を強めてもらいたい。もう少し中小企業に行き渡るようにしてもらいたい。大企業には人がいる。いろんな制度や補助金については担当者がいて対応できる。さらに外部ブレーンを持っている会社も多い。中小企業はそれさえ知らないということが多くある。いろんな投資への補助制度や、賃上げ促進税制などの詳細をいち早く浸透させてほしい。メールでも郵便でもいい、必ず手に届くように対応してほしい。そういう制度があるということを知らなければ、対応さえ取れない。

さらに申請はできるだけ簡潔にできないだろうか?当然各企業の決算書は行き渡っていると思うので、決算書を見れば、会社の状況や姿勢はある程度読み取れるのではないだろうか。各企業の状況を把握して、歩み寄れないものだろうか?税務署と連動すれば会社の状況はすぐわかる。過去、助成金をもらうのに資料が多すぎて大変な労力だったことを思い出す。企業体質によって、提出資料の数を多少変動できないものだろうか?どうも補助金や補償金は「出したくない」が前提になっているように感じる。

最後に、大本命の小泉農林相の「5年後賃金100万増」についてだが、あくまでも国の補助があっての政策だと思う。前回出馬時も「給与が安い企業をやめて高い会社へ」という意見を主張したが、どうも現場感がなさすぎる。民間企業で働いたことのない人の政策だ。具体的な数字は公表できないが、以前経営していた会社に置き換えると、コロナ前で、月給社員に年間200千の給与アップをすることによって約40%の営業利益ダウンになった。そして毎年給与アップを続けることで、3年で赤字の危機がやってくる。赤字になれば補助金やいろんな制度は使えないことが多い。そして、よほどの改善がなければ収益は上がっていかない。仕入先があり、賃料を払って出店するビジネスでは、どうやって経費構造を変えればいいのだろうか?出店経費の削減はデベロッパーがあって難しいし、店舗人件費を減らすわけにはいかない。むしろ増える。出店しなければ店舗数が増えず、店舗が増えなければ、商品の原価も下げにくい。

ますます中小小売業の数は減っていく。それは国の思惑通りかもしれない。

■今日のBGM

専門店の「店」と「商品部」

店でずっと販売の仕事をしてきて、小売業に慣れてくると、商品を売るだけでなく、こういう商品を売ればいいのに、こういう商品を仕入れたい、という気持ちになってくる。それは当然のことで、「売りたい商品を売る」ことが理想の姿ではある。思い入れのある商品は商品をよく理解しているために売りやすい。やはり、個店で「仕入れる人=売る人」のケースはうまくいくケースが多い。ただ、本部でバイヤーとして「仕入れる人」は売場との連動がなかなかうまくいかない。

過去の経験から、本部バイヤーと店の売場責任者との温度差は大きかった。当然のように仕入れて売るので、売ることと仕入れることはリンクしてなければならない。つまりその役割を複数人で実行するならば、同じ気持ち、同じ考えでなければ成功しないし売れない。店はそれぞれ商環境が違う。具体的には、立地環境も違うし、売場面積も違う。さらに客層も違ってくる。それを理解していたとしても、絶対に商品の動きは違ってくる。

売場にいると当然商品の動き方を肌で感じる。売れている商品は商品量を確保するし、演出も強化する。バイヤーが本部にいると、そういう情報を集めるのが遅れる。バイヤーとしての本部での仕事もある。各店の単品状況の確認や、店別の動向確認、さらに受け持ち数値の確認もしなければならない。店は個店の数値確認になるが、本部はトータルでの数値対策が必要になる。細かくは商品の店舗間移動の指示や、利益を考えての不稼働商材のプライスダウン、さらには利益や在庫数値への取り組みもしなければならない。さらに本部にいると当然幹部職と話すことになり、指摘事項も多くなる。違う部署との連携ができるというプラス要素もある。商品を売るための販促や演出への取り組みも可能になる。ただ、私見ではあるが、商品部の本部機能は経営側が確認しやすいように本部に置いているとしか思えない。

商品政策はあくまでも店とリンクする必要がある。それが当然、専門店の一番大事なことになる。そこで商品部バイヤーを店長が兼務することが最も望ましい。その下に店を仕切る若手をサブでつけておけばいい。これは以前も書いたと思う。バイヤーは現場感がなければならない。素直に商品の流れを実感する必要がある。売り方も提案できる。現場感があるほうが、仕入れや売場作りへの提案もしやすい。それができないなら、本部でのバイヤーは思い切って若手を登用する。そうすれば、他店店長が自由に意見を言えるようになる。そして若手バイヤーには徹底的に数値教育やストアメイキング手法などを教育する。特に「売上と仕入と在庫のバランス」は徹底教育する。さらにバイヤー期間は短くして、次の世代との交代を頻繁に行う。

「本部=えらい」の構造はないほうがいい。上記したどちらの提案も現場志向で、「小売は売場」の認識を強く持ち、後方要員(本部要員)を減らすことが一番の企業戦略になる。企業の仕組みが整ってくれば、本部や店の役割は明確になってくる。このブログでは何度も書いているが「イトーヨーカドー、セブンイレブンの組織図」は、当たり前のことだけどそれを一番気づかされる。

■今日のBGM

生活感ある商品を売る

週1.2回は、買物に行く。ほとんどが食品とデイリー的な雑貨の買物になる。食品の買物を見ていてもやはり値段が大きなポイントになっている。明らかに昔に比べて高い。そしてロスリーダーとしての食品売場ではなくなった。つまり昔は食品でお客様を呼んで、衣料品などで稼ぐという構図だった。もうGMSでは食品で利益を確保しなければ全体の利益構造が崩れるようになっている。それだけ食品の構成比が上がっている。

以前からずっと書いているが、お客様となる年代層の変化も大きくなっている。20年前の高齢者人口(65才以上)構成比20.1%から2025年は29.6%と大幅に増え、20年後には37%まで高まる見込みとなっている。つまり、嗜好品の購入頻度は下がり、食品中心の必需品中心の購買動向になっていく。

そういう中、中小小売業の倒産も増えてきている。2024年には企業倒産件数が、2013年以来の1万件を超えている。小売業の倒産も倒産件数では前年比117%となっており、特に資本金5000万未満の小規模倒産が増大している。需要の変化や、人手不足と人件費の上昇が大きな要因になっている。

衣料や服飾系の店は、いろいろな個性を打ち出して、その個性をMDテーマとして品揃えしてきた。さて、今後も従来の「店の個性」を打ち出した品揃えで戦えるのだろうか?お客様の生活スタイルも変わり、さらにターゲットの客数が大幅に減ってくる。おそらく10年前と同じような感覚で同じような品揃えをしていれば、客数の自然減もあり売上は10%近く落ち込んでいるのではないだろうか?富裕層対象以外のブランドビジネスをしている店は、当然もっと厳しくなってきていると思う。売れるブランドも顧客はだんだん減少していき、新しく出てきたブランドの影響を受ける。ターゲット年齢が若ければ若いほど、その人気は長続きしない。単純に人口構成比でそれはわかる。

今までのMDの基本は「差別化」だったのではないかと思う。いろいろな差別化がある。店の大きさや、演出の仕方。当然、商品のプライスラインやトレンド性もある。しかし、今後は「差別化」すればするほど、客数は減っていくのではないだろうか?今後は、表現が難しいが「生活感」が基本になるような気がする。

「生活感」はいろいろな角度で捉えられるが、「価格志向」もその要素だと思う。生活感には「買いやすい」「手が出しやすい」という意味も含まれている。ちょっとイメージが違うかもしれないが。高級車のレクサスにも「UX」や「NX」もあるし、ベンツにも「A」や「GLA」も出てきて、手が届きやすいイメージも作っている。ファッションで言うと、サイズが大きめなシルエットの服や、シンプルなアイテムの商品が増えてきている。そしてその組み合わせでまとめ買いをさせる。どちらかというと商品の個性よりも「着装提案」のイメージが強くなっている。単品の値段を下げ、買い上げ点数を増やそうとしている。「ユニクロ」を想定してみればわかりやすい。他には「フル感性」への提案が必要になってくる。当然若い客層の商品を見せてはいくが、サイズ感や着装感は年代を意識させない事が必要になってくる。「ユニクロ」もそうだが「無印良品」も非常にうまい。

過去の成功体験での客層はどんどん離れていき、さらにその客層は生活感を増している。お客様の変化に気づかなければ、数字が厳しくなるのは当たり前のことだ。不安定な経済環境もあり、広い意味での「生活感」が小売業のキーワードになってきていると思う。

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季節指数の変化とバーゲンパワーの低下

昔は、「ニッパチ」と言われた2月と8月は売れない月だった。共に、1月7月のバーゲンで春夏物や秋冬物を売り尽くしてセール商材がなくなり、売場前面も先取りと称して2月には春物をメインに8月には秋物の打ち出しを強化していたからだ。それがいつの間にか季節指数が変化し、2月の落ち込みは小さくなり、8月は6月や9~11月より売上分母が大きくなってきた。

要因はいくつかある。まず考えられるのは、郊外型大型モールが各地にできたことで、SCが買物目的と併せて、時間消費型に変わってきたことにある。夏は暑いので買い物を控えるという行動パターンから、快適な空間で時間を過ごせる場所として大型モールを利用し、そして買い物も楽しむという流れへの変化である。特に8月は学校の休日もあり、飛躍的に売上構成比は上がった。

さらに、温暖化が進み9月はまだ秋ではなく、夏が続いている状況にあるという季節感の変化がある。つまり7月で夏物をなくすより8月や9月まで夏商戦を引っ張るほうが商売上のメリットが出てきている。そして季節商品のサイクルの変化とそれに伴うセールのタイミングの変化も出てきている。

このブログでは何度も書いているが、購買客層の変化も大きい。完全に高年齢化が進んでおり、ファッションの流行を第一に考える層が完全に減ってきている。ファッションを引っ張ってきた客層は大きく減り65才以上の高齢者層が大幅に増えている。つまりトレンドを意識する層が減っているということだ。ちなみに30年前の65才以上構成比は14.6%だったのが今年には29.6%と倍増以上になっている。ファッションは、よりデイリーへ変化している。

バーゲン期に値段を下げて、「季節商品をなくす、商品を入れ替える」ことは商売として当たり前のことになる。夏商戦であれば、従来の8月は売れない月だったので7月に春夏商品を売り切って、8月から初秋物を見せて切り替えていくという商売が普通の流れだった。8月が集客できる月に変わったことで、その商売のサイクルが変わっていった。百貨店や専門店の一部では、まだ従来のバーゲンの流れはあるが、他の商業施設では、SC中心にメリハリのあるバーゲンではなくなり、だらだらとセールを続ける状況となっている。これは冬のバーゲンでも同じ傾向にある。

そのような環境下、季節感と客層の変化にどう対応するかで企業力がわかる。ユニクロは自社のルールで商品の値段を下げ、なくしていっている。当然SCでのバーゲンのタイミングにも合わせている。つまり自社の消化率等のデータに基づいて商品を売り切っている。そしてそのサイクルは比較的早い。店を見ているとプロパー期でも商品のプライスダウンをしており、セール期もなくしたい商品の順序がよくわかる。無印良品も自社でタイミングを計ってセールをしている。そして、おそらく、季節商品でも売れている商品は値段を下げていない。両社とも、細かいデータ管理と商品をなくす必要性は十分理解している。そして、昔ながらの「動かない商品は迅速になくしていく」という考えが見えるのも両社になる。

逆に、近年は利益を優先している会社が増えているように感じる。そのため、セールを長引かせることで売場の新鮮さが見えなくなってきている。さらに、季節商品の比率を下げ、比較的ライフサイクルの長い商品を品揃えしようとしている企業も増えている。その結果として、サイクルが長いため消化率が低下している事には目をむけていない。そして、利益率の確保を優先するあまり、在庫過多に陥る。そういう流れもあって、何社かの会社が機能不全に陥り、事業譲渡されている。

環境変化でバーゲンの取り組みが変わったことで、商売に対しての各社の姿勢が改めて浮き彫りになっている。

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企業の賃上げが最重点課題?

歳を重ねると、主だったことの比重が小さくなり、なぜか社会のことに目が向き始める。政治に対しても独り言が増える。今回は、「小売り」「ファッション」とは少し離れる内容で書くことをご容赦願いたい。

選挙が近づき、各党が政策を述べている。石破首相は「企業の賃上げが最重点課題」と言い続けている。賃上げへのコメントは多いが、政治が企業の賃上げをバックアップできるのか、具体的には全くわからない。組合組織の連合も全労連も高水準での「賃上げ」を要求している。

国税庁発表の赤字法人率は、2022年が最新で64.8%だったようだ。ちなみに小売業は31.6万社の企業のうち22.6万の企業が赤字で赤字法人率は71.4%となっている。赤字企業はほとんどが中小企業で、その中小企業は国内企業数で99.7%を占めており、国内従業員の70%が働いている。そして、国内企業数の1%に満たない大企業の利益剰余金は2021年末で484.3兆円という数字もある。

こういう数字を見ていると、大企業の内部留保分を人件費に振り替えて賃上げをさせることが、首相の言う「賃上げ」ということだと見て取れる。そして政治家は「経団連」や「経済同友会」の大企業のみが「企業」という認識しかない。国民の70%が働く中小企業は眼中にないとしか思えない。

3年前まで従業員100名くらいの小売業を経営していた。頑張って定期昇給もしてきたし、 増益が続いたときは、年3回賞与も出していた。そして、会社立ち上げからコロナ期までは規模の拡大を考えながら、毎年黒字決算を続けてきた。それでもコロナ期の3年は重い時期だった。築いてきたものが崩れ落ちた。小売業で、店を開けないのでは何もできない。その時の国からの補助金は、雇用調整助成金があった。ただ、集客できないので営業成績は上がらず、マイナス利益の歩留まり的な要素しかなかった。その助成金もマニュアルが複雑で書類も多く、作成するのが1日仕事だったように思う。

雇用調整助成金もハローワークへの提出だったが、コロナ期以前もハローワークには最低月1回は行っていた。従業員の入退社手続きで、雇用保険加入手続き、退社手続き、離職票の提出など、さらにアルバイトの募集掲示手続きにも行っていた。ただそんなに行っていたにもかかわらず、「キャリアアップ助成金」は全く知らなかった。有期社員から無期社員にすれば当時は1名57万円の助成金があったようだ。少なくても15名以上はそうしてきたように思う。当然調べなかったミスだが、あれだけハローワークに通っていたので、もう少しアプローチがもらえてもよかったのではないだろうか?やはり助成金を拡充しても、従業員が多く、情報量も多い大企業が一番活用するのかもしれない。

政治は計算ではないと思う。3割が働く大企業も7割が働く中小企業によって支えられている。3割の労働者の賃上げだけが国の景気を変えるわけではない。中小企業で働く7割の労働者とその家族のためにどう動くかが本質ではないかと思う。そして情報取集能力の弱い中小企業にもっと歩みより、改善していくことが、一番大事なポイントのような気がする。

ただ、現実は国内企業数1%の大企業とのきずなが深く、政治家として接触もしやすい。1%と話をして調整すれば、表面上は賃上げに努力している絵も描ける。こんな感じで解決していくのだろうが、社会格差はどんどん広がっていく。

■今日のBGM

小売業からの地方創生は難しい

先輩夫婦と恒例の旅行をしてきた。今年は四国がメインで、暑かったが雨にも打たれず好天気に恵まれた。

私自身、四国は何度か訪れている。徳島県は母方の故郷で子供時代から何度も行っている。愛媛県は道後温泉としまなみ海道の観光で訪れたことがあり、香川県はマイカル時代ビブレの店舗があったので巡回していた。高知県はPM会社在籍時、高知市内のビルの商業化リニュアル計画のコンサルで数回訪れている。

店をやっている時、四国で出店依頼を受けたことがあるのは徳島のゆめタウンオープンの時だった。遠隔地に出店する時は当然ドミナントを考えて出店する。売れる商品も似通ってくるし、そのほうがマネジメントもしやすい。それに加えて、できれば核になる店が欲しい。以前の会社でドミナントしていたのは、関東圏、関西圏、九州南部だけだった。中部圏も作ろうとしたが、核になる店ができなかったので作り切れなかった。そういう意味で中四国は、出店を考えられるのは人口の多い広島市などの県庁所在地くらいで、点だけになり地域全体がまとまらない。そうなると、どうしても中小小売業は出店をためらってしまう。さらに、地元で強い企業があり、なかなか参入できないという状況もある。

旅行期間中、全労連が「直ちに最低賃金一律1500円以上に」と発表していた。四国の最低賃金を調べてみると、徳島県980円、香川県970円、愛媛県956円、高知県952円となっている。中小規模でコツコツ商売をやっている企業は、大手小売業の参入で人不足になることは明らかだ。全労働人口の70%を抱える中小企業は、そんなに簡単にクリアできる最低賃金ではない。

そうなると、閉鎖的な商圏に新規参入するとすれば大手企業中心になり、それにより地元企業も厳しくなってくる。そしてさらに県庁所在地など都市部に企業は集中し、ますます郊外には人がいなくなる。その都市部でも、四国で言えば、徳島にはもう百貨店はなくなっている。他の百貨店も高松三越が売上224億となんとか百貨店の規模感はあるが、高知大丸84.3億、松山三越49.8億と百貨店としては非常に厳しい数字で、閉店前の厳しいゾーニングになっている。20年位前に高知大丸をリサーチしていて、神戸大丸のように本館周辺にサテライト店がいくつかあったことを思い出した。それが今や存続の危機になっている。人口も減少傾向にあり、今後の四国での小売業は、間違いなく縮小方向になってくる。

7月偽予言の風評の影響からか、観光地にも外人客が少なく、日本人観光客も多くはなかった。ただ、観光産業には宝の山のような気がした。観光スポットをさらに広げていければ観光地としての側面からは大きな期待は持てる。ただ、だれが資本投下するのだろうか。そして、外国人観光客の流れは今後も続くのだろうか。

四国四県を車で走ってみて、小売業だけでなく「地方創生」は限りなく難しいと感じた。

■今日のショット(徳島 かずら橋)

商業PM(プロパティマネジメント)のもどかしさ

前回、㈱イオンモールと㈱イオンリテールの関係を書いていて、過去の経験から、商業施設のPMのもどかしさを思い出した。

前回書いたイオンの例で言うと、㈱イオンリテールの所有するイオンモールの名前のSCを、㈱イオンモールが数多くPM(管理運営)しているということになる。わかりやすい事例で言うと、近隣に北戸田イオンモールがあるのだが、ここは恐らく㈱イオンリテールの所有物件で、PM(モールの管理運営)は㈱イオンリテールからフィーをもらって㈱イオンモールが行っている。尚、食品含めたイオンゾーンはGMSとしてイオンリテールがキーテナントとして運営している。賃貸面積は44000㎡あり、RSCの大きさはあるが、テナント揃えは狭商圏型で、現状は大きなCSC(コミュニティSC)の見え方でしかない。もう少し広域からも集客できるテナントを導入することによって、川口や浦和からの集客をとるべきSCだと思う。特にグランドフロアのテナントラインナップが弱い。

この場合PMである㈱イオンモールがテナントの入れ替えなどの改装提案をしても、投資対効果を検討して㈱イオンリテールがジャッジする。半年くらい前に、イオンの直営売場の2階は投資をかけて大きな改装をした。それも、㈱イオンリテールのジャッジでの改装になる。イオンの2階直営平場の改装と1階グランドフロアのテナント入れ替えはどちらが重要か?そしてどちらを優先するか?ここでSCを㈱イオンモールが所有していれば、グランドフロアの改装の内容次第では1階のテナントの入れ替えの改装をするジャッジがあるかもしれない。当然グループ企業なので話し合いはあると思うが、投資内容をジャッジするのは資産を保有する㈱イオンリテールで、㈱イオンモールには権限がない。

ここで商業PMについて考える。仕事の内容は、商業施設の価値を向上させることを目的とした管理運営業務ということになる。ただSCの運営業務での最も大事なことは「お客様に満足してもらうこと」になる。そのために販促活動や演出をしたり、対テナントとの話し合いをしたりしていく。その他の業務もあるが、その業務は「お客様の満足」につながる。その見え方は俗にいう「BtoC」であり、企業が一般消費者へのサービスを提供する、例えば小売業のようなビジネスモデルに見える。ただ、フィーをもらっているのはお客様からではなく請負先になり、つまり企業間取引の「BtoB」になっている。

わかりやすい一例をあげる。SCを活性化するため、有名テナントを誘致して、そのSCのグレード感を上げ、広域から集客しようとする計画を提案する。そのテナントも出店に前向きだが、誘致するために店の一等地を提供する必要がでてくる。そのためには既存のテナントを移設しなければならない。さらに有名テナントの賃料は固定ではなく、低い歩合でのケースもある。その計画を実行するには、現状テナントの移設交渉、さらに移設費用の交渉等も必要になってくる。さらに売上歩率であれば、売上を読み違えると当然今までの賃料を下回るリスクもある。ただ、実行すると商業施設としてのプラス要素は大きい。

どちらのビジネスモデルでも、大きな検討事項であるが、「BtoC」のケースではその改装の影響力を理解してもらいやすく、社内決済までのスピード感もある。「BtoB」の場合は企業風土や業種も違う場合が多く、自由に提案もしにくく、検討にも時間がかかることが多いし、決済は厳しいことが多い。特に商業PMは請負先が不動産業や金融業が多く、商業の話に壁は高い。

今はもう変わったかもしれないが、商売感覚が異なる業種との企業間での交渉は非常に難しかった。いい経験にはなったが、商業PMはもどかしいことが多かった思い出がある。

■今日のショット(万博に行って来た)

地方都市の駅前はどんどん元気がなくなる

高崎で飲み会があったので、久しぶりに高崎の駅前を歩いてみた。約30年位前に高崎で約7年仕事をしていた。その当時の面影は全くない。ずいぶん元気がなくなった印象を受けた。当時はブランドの路面店が軒を並べ、若い客層でにぎわっていた。

当時、サティ、ビブレで店長をしていたので、記憶をたどると、地元のスズラン百貨店、高島屋が約200億強、ビブレが100億、ダイエーや駅ビルを含めると中心部の大型物件だけで600億以上の売上があった。現状は、スズラン百貨店が2022年の数字だと106億(高崎、前橋計)と発表されており、場所を移動して4層に大幅縮小された今の数字は50~60億くらいまで落ちているように見える。お客様はほとんどいなかった。高島屋は2024年度売上が167億と発表されており、固定客をつかんで堅調な数字のようだ。駅とオーパを経てデッキでつながれた効果は大きかったと思う。ビブレはオーパに変わり、食品併設になり食品は堅調そうだが60億くらいの売上のように見えた。ダイエーはなくなっており、駅ビルを含めると駅前西口の売上は半分以下になったのではないだろうか?東口が開発されてヤマダ電機が駅と直結している。それでも路面店のパワーを考えると、30年で駅前の商業としての魅力は半減してそうだ。ただその間に300億超売り上げのイオンモール高崎、太田、200億前後のスマーク伊勢崎というRSCができた。車社会の群馬なので、30代~50代の中心層はそこに大きく流出した結果とも考えられる。その図式で言えば、駅前はヤング層と高齢者層が中心層になり、売り上げ規模が激減している。

ヤング層で言うと、当時のファッションビルと呼ばれた商業施設で地方都市に残っているのは少ない。パルコは地方都市すべて撤退しており政令都市だけ、ファッションビルとは呼べないがマルイも大都市圏のみになっている。最近では柏マルイが撤退との報道もあった。ファッショントレンドを追いかける層は大都市志向が強くなる。そういう意味で地方駅前はティーンズ層が中心になる。ただ、高校生の人口を見ると、2000年に全国で400万人強いたのに対して、2024年には290万人になっている。ということは特に地方の高校生は減ってきているということになる。もうすでに、地方都市ではそのターゲットでは商売にならないのかもしれない。

高齢者層は、高島屋の数字の落ち込みが小さいこともあり、駅前の利便性と安心感でそのまま利用を続けている。駅から離れたスズラン百貨店の売上も吸収して数字に歯止めをかけている。とはいえ、地方の百貨店はどんどん百貨店らしさがなくなり、廃業や閉鎖が相次いでいる。

地方都市の活性化の文献も調べてみたが、さすがにありきたりのことしか書いてない。商業で起爆剤になるようなことはもう考えつかない。群馬県のような車社会では、今後もRSC中心の商業になっていく。今後は、昔駅前に買い物に来てくれた層の満足度を充足させるべく、RSCのグレード感が問われるようになってくる。

高崎など交通の要所は、単純に駅近辺の人口を増やし、新幹線の通勤補助を民間と共同して行うなどしか思い浮かばない。つまり土地整理をして高層マンションを乱立させ、新幹線通勤を補助するようにすれば駅前居住者は増えていき、活性化するとは思う。古い街だからそんなことはできないと思うが・・・

■今日のBGM

 

ファッション事業の方向性

4月5日の日経新聞に「アダストリア売上高3割増へ」の記事が掲載された。主力のファッション事業に加えて、海外事業の強化、その他異業種への取り組みで事業の多角化を図り、M&Aを加速させマルチカンパニー化を進めるとのことだ。前身の会社「ポイント」から見てきた会社の考え方を振り返ると、少し違和感を覚えた。新しい方向性に変わったような気がした。

「その方向は正解なのかな?」と考えていて、ネットを見ていたら「ファッションスナップ」のサイトに「今を見つめるか 先を見通すか 二分化するアパレル企業の経営スタイル」という記事があった。要約すると、本業で蓄積したシステムや人材を新事業に活用し、事業の多角化を進める「アダストリア」とアパレルと服飾に集中して小売業を完成させようとする「パル」の取り組みについての内容だった。当然どちらが正解とは記されてない。

以前もこのブログで書いたことがあるが、いろんなブランドや会社を持つことは必要だが、やはり幹になる店やブランドを持つことが最も大事なことだと思っている。ワールドやオンワード、イトキンなど過去の大手アパレルには規模の大きなブランドはたくさんあったが、収益の大きな幹となるブランドがなかった。ユニクロや無印良品はその大きな幹を太くすることで企業力が大きくなったと思っている。そして今でもショップの精度を上げる努力をしている。アダストリアは当然他業務と並行して進めるだろうが、「グローバルワーク」を大きな幹にすることが必要ではないかと感じていた。アダストリアからもそのように発表はされている。そして、片やパルの「3コインズ」は完全に大きな柱になっている。

話は逸れるが、ファッションスナップの記事にパルの各ブランドは4週間毎の在庫の評価損を粗利益に反映させる」とあり、「店長はいかに在庫を抑えられたかが人事考課に加味される」とあった。その事実は全く知らなかった。ちなみに2024年のパルの年間在庫回転率は手計算だが5.9回転でアダストリアの4.3回転と比べると高い数値になっている。ずっと「小売業は在庫がポイント」といい続けていたのだが、もっと早くこの手法を細かく知るべきだったと後悔した。

今後のファッション業界は、総需要がどんどん減っていく中、競争激化が予測されている。先行するブランドやショップに追い付くのは、大変な労力が必要になってくる。かといって、得意種目外で戦うには、きらいな種目も勉強しなければならない。そして共通言語で話したほうが、意思も伝わりやすい。

どちらに行くにしても、すでにハードルは高くなっている。どちらに向かっていくのが正解か、ジャッジさえできない。今回のアダストリアの記事で一番強く思ったのは、私が思っていたアダストリアでなくなってしまったということだけかもしれない。

■今日のショット

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