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企業の賃上げが最重点課題?

歳を重ねると、主だったことの比重が小さくなり、なぜか社会のことに目が向き始める。政治に対しても独り言が増える。今回は、「小売り」「ファッション」とは少し離れる内容で書くことをご容赦願いたい。

選挙が近づき、各党が政策を述べている。石破首相は「企業の賃上げが最重点課題」と言い続けている。賃上げへのコメントは多いが、政治が企業の賃上げをバックアップできるのか、具体的には全くわからない。組合組織の連合も全労連も高水準での「賃上げ」を要求している。

国税庁発表の赤字法人率は、2022年が最新で64.8%だったようだ。ちなみに小売業は31.6万社の企業のうち22.6万の企業が赤字で赤字法人率は71.4%となっている。赤字企業はほとんどが中小企業で、その中小企業は国内企業数で99.7%を占めており、国内従業員の70%が働いている。そして、国内企業数の1%に満たない大企業の利益剰余金は2021年末で484.3兆円という数字もある。

こういう数字を見ていると、大企業の内部留保分を人件費に振り替えて賃上げをさせることが、首相の言う「賃上げ」ということだと見て取れる。そして政治家は「経団連」や「経済同友会」の大企業のみが「企業」という認識しかない。国民の70%が働く中小企業は眼中にないとしか思えない。

3年前まで従業員100名くらいの小売業を経営していた。頑張って定期昇給もしてきたし、 増益が続いたときは、年3回賞与も出していた。そして、会社立ち上げからコロナ期までは規模の拡大を考えながら、毎年黒字決算を続けてきた。それでもコロナ期の3年は重い時期だった。築いてきたものが崩れ落ちた。小売業で、店を開けないのでは何もできない。その時の国からの補助金は、雇用調整助成金があった。ただ、集客できないので営業成績は上がらず、マイナス利益の歩留まり的な要素しかなかった。その助成金もマニュアルが複雑で書類も多く、作成するのが1日仕事だったように思う。

雇用調整助成金もハローワークへの提出だったが、コロナ期以前もハローワークには最低月1回は行っていた。従業員の入退社手続きで、雇用保険加入手続き、退社手続き、離職票の提出など、さらにアルバイトの募集掲示手続きにも行っていた。ただそんなに行っていたにもかかわらず、「キャリアアップ助成金」は全く知らなかった。有期社員から無期社員にすれば当時は1名57万円の助成金があったようだ。少なくても15名以上はそうしてきたように思う。当然調べなかったミスだが、あれだけハローワークに通っていたので、もう少しアプローチがもらえてもよかったのではないだろうか?やはり助成金を拡充しても、従業員が多く、情報量も多い大企業が一番活用するのかもしれない。

政治は計算ではないと思う。3割が働く大企業も7割が働く中小企業によって支えられている。3割の労働者の賃上げだけが国の景気を変えるわけではない。中小企業で働く7割の労働者とその家族のためにどう動くかが本質ではないかと思う。そして情報取集能力の弱い中小企業にもっと歩みより、改善していくことが、一番大事なポイントのような気がする。

ただ、現実は国内企業数1%の大企業とのきずなが深く、政治家として接触もしやすい。1%と話をして調整すれば、表面上は賃上げに努力している絵も描ける。こんな感じで解決していくのだろうが、社会格差はどんどん広がっていく。

■今日のBGM

小売業からの地方創生は難しい

先輩夫婦と恒例の旅行をしてきた。今年は四国がメインで、暑かったが雨にも打たれず好天気に恵まれた。

私自身、四国は何度か訪れている。徳島県は母方の故郷で子供時代から何度も行っている。愛媛県は道後温泉としまなみ海道の観光で訪れたことがあり、香川県はマイカル時代ビブレの店舗があったので巡回していた。高知県はPM会社在籍時、高知市内のビルの商業化リニュアル計画のコンサルで数回訪れている。

店をやっている時、四国で出店依頼を受けたことがあるのは徳島のゆめタウンオープンの時だった。遠隔地に出店する時は当然ドミナントを考えて出店する。売れる商品も似通ってくるし、そのほうがマネジメントもしやすい。それに加えて、できれば核になる店が欲しい。以前の会社でドミナントしていたのは、関東圏、関西圏、九州南部だけだった。中部圏も作ろうとしたが、核になる店ができなかったので作り切れなかった。そういう意味で中四国は、出店を考えられるのは人口の多い広島市などの県庁所在地くらいで、点だけになり地域全体がまとまらない。そうなると、どうしても中小小売業は出店をためらってしまう。さらに、地元で強い企業があり、なかなか参入できないという状況もある。

旅行期間中、全労連が「直ちに最低賃金一律1500円以上に」と発表していた。四国の最低賃金を調べてみると、徳島県980円、香川県970円、愛媛県956円、高知県952円となっている。中小規模でコツコツ商売をやっている企業は、大手小売業の参入で人不足になることは明らかだ。全労働人口の70%を抱える中小企業は、そんなに簡単にクリアできる最低賃金ではない。

そうなると、閉鎖的な商圏に新規参入するとすれば大手企業中心になり、それにより地元企業も厳しくなってくる。そしてさらに県庁所在地など都市部に企業は集中し、ますます郊外には人がいなくなる。その都市部でも、四国で言えば、徳島にはもう百貨店はなくなっている。他の百貨店も高松三越が売上224億となんとか百貨店の規模感はあるが、高知大丸84.3億、松山三越49.8億と百貨店としては非常に厳しい数字で、閉店前の厳しいゾーニングになっている。20年位前に高知大丸をリサーチしていて、神戸大丸のように本館周辺にサテライト店がいくつかあったことを思い出した。それが今や存続の危機になっている。人口も減少傾向にあり、今後の四国での小売業は、間違いなく縮小方向になってくる。

7月偽予言の風評の影響からか、観光地にも外人客が少なく、日本人観光客も多くはなかった。ただ、観光産業には宝の山のような気がした。観光スポットをさらに広げていければ観光地としての側面からは大きな期待は持てる。ただ、だれが資本投下するのだろうか。そして、外国人観光客の流れは今後も続くのだろうか。

四国四県を車で走ってみて、小売業だけでなく「地方創生」は限りなく難しいと感じた。

■今日のショット(徳島 かずら橋)

商業PM(プロパティマネジメント)のもどかしさ

前回、㈱イオンモールと㈱イオンリテールの関係を書いていて、過去の経験から、商業施設のPMのもどかしさを思い出した。

前回書いたイオンの例で言うと、㈱イオンリテールの所有するイオンモールの名前のSCを、㈱イオンモールが数多くPM(管理運営)しているということになる。わかりやすい事例で言うと、近隣に北戸田イオンモールがあるのだが、ここは恐らく㈱イオンリテールの所有物件で、PM(モールの管理運営)は㈱イオンリテールからフィーをもらって㈱イオンモールが行っている。尚、食品含めたイオンゾーンはGMSとしてイオンリテールがキーテナントとして運営している。賃貸面積は44000㎡あり、RSCの大きさはあるが、テナント揃えは狭商圏型で、現状は大きなCSC(コミュニティSC)の見え方でしかない。もう少し広域からも集客できるテナントを導入することによって、川口や浦和からの集客をとるべきSCだと思う。特にグランドフロアのテナントラインナップが弱い。

この場合PMである㈱イオンモールがテナントの入れ替えなどの改装提案をしても、投資対効果を検討して㈱イオンリテールがジャッジする。半年くらい前に、イオンの直営売場の2階は投資をかけて大きな改装をした。それも、㈱イオンリテールのジャッジでの改装になる。イオンの2階直営平場の改装と1階グランドフロアのテナント入れ替えはどちらが重要か?そしてどちらを優先するか?ここでSCを㈱イオンモールが所有していれば、グランドフロアの改装の内容次第では1階のテナントの入れ替えの改装をするジャッジがあるかもしれない。当然グループ企業なので話し合いはあると思うが、投資内容をジャッジするのは資産を保有する㈱イオンリテールで、㈱イオンモールには権限がない。

ここで商業PMについて考える。仕事の内容は、商業施設の価値を向上させることを目的とした管理運営業務ということになる。ただSCの運営業務での最も大事なことは「お客様に満足してもらうこと」になる。そのために販促活動や演出をしたり、対テナントとの話し合いをしたりしていく。その他の業務もあるが、その業務は「お客様の満足」につながる。その見え方は俗にいう「BtoC」であり、企業が一般消費者へのサービスを提供する、例えば小売業のようなビジネスモデルに見える。ただ、フィーをもらっているのはお客様からではなく請負先になり、つまり企業間取引の「BtoB」になっている。

わかりやすい一例をあげる。SCを活性化するため、有名テナントを誘致して、そのSCのグレード感を上げ、広域から集客しようとする計画を提案する。そのテナントも出店に前向きだが、誘致するために店の一等地を提供する必要がでてくる。そのためには既存のテナントを移設しなければならない。さらに有名テナントの賃料は固定ではなく、低い歩合でのケースもある。その計画を実行するには、現状テナントの移設交渉、さらに移設費用の交渉等も必要になってくる。さらに売上歩率であれば、売上を読み違えると当然今までの賃料を下回るリスクもある。ただ、実行すると商業施設としてのプラス要素は大きい。

どちらのビジネスモデルでも、大きな検討事項であるが、「BtoC」のケースではその改装の影響力を理解してもらいやすく、社内決済までのスピード感もある。「BtoB」の場合は企業風土や業種も違う場合が多く、自由に提案もしにくく、検討にも時間がかかることが多いし、決済は厳しいことが多い。特に商業PMは請負先が不動産業や金融業が多く、商業の話に壁は高い。

今はもう変わったかもしれないが、商売感覚が異なる業種との企業間での交渉は非常に難しかった。いい経験にはなったが、商業PMはもどかしいことが多かった思い出がある。

■今日のショット(万博に行って来た)

地方都市の駅前はどんどん元気がなくなる

高崎で飲み会があったので、久しぶりに高崎の駅前を歩いてみた。約30年位前に高崎で約7年仕事をしていた。その当時の面影は全くない。ずいぶん元気がなくなった印象を受けた。当時はブランドの路面店が軒を並べ、若い客層でにぎわっていた。

当時、サティ、ビブレで店長をしていたので、記憶をたどると、地元のスズラン百貨店、高島屋が約200億強、ビブレが100億、ダイエーや駅ビルを含めると中心部の大型物件だけで600億以上の売上があった。現状は、スズラン百貨店が2022年の数字だと106億(高崎、前橋計)と発表されており、場所を移動して4層に大幅縮小された今の数字は50~60億くらいまで落ちているように見える。お客様はほとんどいなかった。高島屋は2024年度売上が167億と発表されており、固定客をつかんで堅調な数字のようだ。駅とオーパを経てデッキでつながれた効果は大きかったと思う。ビブレはオーパに変わり、食品併設になり食品は堅調そうだが60億くらいの売上のように見えた。ダイエーはなくなっており、駅ビルを含めると駅前西口の売上は半分以下になったのではないだろうか?東口が開発されてヤマダ電機が駅と直結している。それでも路面店のパワーを考えると、30年で駅前の商業としての魅力は半減してそうだ。ただその間に300億超売り上げのイオンモール高崎、太田、200億前後のスマーク伊勢崎というRSCができた。車社会の群馬なので、30代~50代の中心層はそこに大きく流出した結果とも考えられる。その図式で言えば、駅前はヤング層と高齢者層が中心層になり、売り上げ規模が激減している。

ヤング層で言うと、当時のファッションビルと呼ばれた商業施設で地方都市に残っているのは少ない。パルコは地方都市すべて撤退しており政令都市だけ、ファッションビルとは呼べないがマルイも大都市圏のみになっている。最近では柏マルイが撤退との報道もあった。ファッショントレンドを追いかける層は大都市志向が強くなる。そういう意味で地方駅前はティーンズ層が中心になる。ただ、高校生の人口を見ると、2000年に全国で400万人強いたのに対して、2024年には290万人になっている。ということは特に地方の高校生は減ってきているということになる。もうすでに、地方都市ではそのターゲットでは商売にならないのかもしれない。

高齢者層は、高島屋の数字の落ち込みが小さいこともあり、駅前の利便性と安心感でそのまま利用を続けている。駅から離れたスズラン百貨店の売上も吸収して数字に歯止めをかけている。とはいえ、地方の百貨店はどんどん百貨店らしさがなくなり、廃業や閉鎖が相次いでいる。

地方都市の活性化の文献も調べてみたが、さすがにありきたりのことしか書いてない。商業で起爆剤になるようなことはもう考えつかない。群馬県のような車社会では、今後もRSC中心の商業になっていく。今後は、昔駅前に買い物に来てくれた層の満足度を充足させるべく、RSCのグレード感が問われるようになってくる。

高崎など交通の要所は、単純に駅近辺の人口を増やし、新幹線の通勤補助を民間と共同して行うなどしか思い浮かばない。つまり土地整理をして高層マンションを乱立させ、新幹線通勤を補助するようにすれば駅前居住者は増えていき、活性化するとは思う。古い街だからそんなことはできないと思うが・・・

■今日のBGM

 

ファッション事業の方向性

4月5日の日経新聞に「アダストリア売上高3割増へ」の記事が掲載された。主力のファッション事業に加えて、海外事業の強化、その他異業種への取り組みで事業の多角化を図り、M&Aを加速させマルチカンパニー化を進めるとのことだ。前身の会社「ポイント」から見てきた会社の考え方を振り返ると、少し違和感を覚えた。新しい方向性に変わったような気がした。

「その方向は正解なのかな?」と考えていて、ネットを見ていたら「ファッションスナップ」のサイトに「今を見つめるか 先を見通すか 二分化するアパレル企業の経営スタイル」という記事があった。要約すると、本業で蓄積したシステムや人材を新事業に活用し、事業の多角化を進める「アダストリア」とアパレルと服飾に集中して小売業を完成させようとする「パル」の取り組みについての内容だった。当然どちらが正解とは記されてない。

以前もこのブログで書いたことがあるが、いろんなブランドや会社を持つことは必要だが、やはり幹になる店やブランドを持つことが最も大事なことだと思っている。ワールドやオンワード、イトキンなど過去の大手アパレルには規模の大きなブランドはたくさんあったが、収益の大きな幹となるブランドがなかった。ユニクロや無印良品はその大きな幹を太くすることで企業力が大きくなったと思っている。そして今でもショップの精度を上げる努力をしている。アダストリアは当然他業務と並行して進めるだろうが、「グローバルワーク」を大きな幹にすることが必要ではないかと感じていた。アダストリアからもそのように発表はされている。そして、片やパルの「3コインズ」は完全に大きな柱になっている。

話は逸れるが、ファッションスナップの記事にパルの各ブランドは4週間毎の在庫の評価損を粗利益に反映させる」とあり、「店長はいかに在庫を抑えられたかが人事考課に加味される」とあった。その事実は全く知らなかった。ちなみに2024年のパルの年間在庫回転率は手計算だが5.9回転でアダストリアの4.3回転と比べると高い数値になっている。ずっと「小売業は在庫がポイント」といい続けていたのだが、もっと早くこの手法を細かく知るべきだったと後悔した。

今後のファッション業界は、総需要がどんどん減っていく中、競争激化が予測されている。先行するブランドやショップに追い付くのは、大変な労力が必要になってくる。かといって、得意種目外で戦うには、きらいな種目も勉強しなければならない。そして共通言語で話したほうが、意思も伝わりやすい。

どちらに行くにしても、すでにハードルは高くなっている。どちらに向かっていくのが正解か、ジャッジさえできない。今回のアダストリアの記事で一番強く思ったのは、私が思っていたアダストリアでなくなってしまったということだけかもしれない。

■今日のショット

街の流れは変わったほうがいいのか?

恒例の、大阪から博多の「実家の用事+飲み旅行」をしてきた。例によって外人観光客だらけで、強烈な円安の影響を感じる。過去、毎月1~2回は行っていたので、ホテルは定宿がある。大阪のホテルは1.5倍位に上がっていた。博多のホテルは毎回1万前後だったのだが、今回は2.5万円が最安値となっており、別のホテルに泊まった。もうそろそろ、日本人と外国人の値段を別にしたほうがいいようにも思う。

「飲み旅行」なので夜がメインになり、昼間は空く。大阪の次の日は私用があるので2日酔いでもすることがあるのだが、博多の次の日は時間がある。今回は友人と昔働いていた天神界隈から、博多駅までぶらぶら歩いた。(当然その後は飛行機の時間まで飲んだ・・・)

天神で働いていたのは約30年前で、今の天神の街はきれいになったし、さらにきれいにしようとしているし、ちょっときれいになりすぎた。昔は渡辺通りをはさんで片側に「ショッパーズ」「マツヤレディス」「コア」「ビブレ」「イムズ」、百貨店の「博多大丸」、そして対峙して「三越」「ソラリアプラザ」「岩田屋」があった。西通りまでには新天町などの商店街があり、「親不孝通り」といわれた若者のたまり場もあった。渡辺通りの地下の天神地下街は日本一通行客がいる地下街と言われた。天神は本当に商業の街だった。

再開発で街は変わりつつある。外国人観光客を含めて人が集まっているのは、博多駅から中州になっている。もともと観光客は、きれいな街は見慣れており、世界観にあるところに集まっている。中州界隈の夜の屋台や、川端通商店街のほうがおもしろいに決まっている。もう変わりつつある天神は魅力がダウンしている。東京では浅草や秋葉原に集まるし、大阪では通天閣や戎橋界隈に集まる。さらに駅は旅行には欠かせないところとなっている。

博多駅に2011年に百貨店の博多阪急ができた。当初は厳しいと見られていたが、2012年の売上373億に対して2023年は623億まで伸びている。2024年予測は661億だそうだ。天神の岩田屋は700億超のようだが、博多大丸は541億で阪急の後塵を拝している。岩田屋や大丸は当然外商比率が高い(20%強)が、阪急は外商比率が1桁とのことだ。現状アミュプラザなどの駅ビルやマルイを含めると約1600億の売上の規模で、天神地区に迫る勢いになっている。当日も明らかに天神地区より中州から博多駅のほうがパワーを感じた。「キャナルシティ」は、やり方次第では間違いなく大きく浮上する。

「天神ビッグバン」でオフィスを呼び込み活性化しようとしているが、商業の観点からすると間違いなく天神は厳しくなると思う。商業が2拠点で成立しているのは、東京以外では大阪ぐらいではないだろうか?大阪は梅田の北側や、なんばの南側にも大きな都市を複数持っていて、環境ができている。果たして博多はどうか?そこまでの力は、間違いなくないと思う 。大阪以外では名古屋も「名駅対栄」だが、もともと名駅は商業が弱く、そこが大きく浮上してきており、博多と似ているかもしれない。だがここも商圏は博多より大きい。

博多は住みやすく、「人」もいい街だ。景色が変わっていくのは時代の流れだけど、味があった「セレクトショップ」や「飲食店」がどんどん減っていきそうな気はする。

■今日のショット(コアとビブレ跡のビル)

FCでの小売業

セブンイレブンやローソンなどコンビニのことを書いていて、自分がそのFCのオーナー(フランチャイジー)になれるかどうか、そしてそのFCオーナーはどういう目的でFCをやっていくのかを考えてしまう。衣料関連ではワークマンもほとんどFCでの運営と聞く。

昔、DCブランド全盛時は、大都市には直営店、地方都市はFC店という図式があった。FC条件は各社力関係でバラバラだった。ほとんど、売場はFC先(フランチャイジー)が作り、商品の取引条件を個別に設定していた。売場内装が高い時代で、ブランド力があるほど、坪単価は上がった。余談だが、各ブランドにつく内装業者は高い内装費でものすごく儲けていた。取引条件はメーカーとFC先の力関係で差が出て、標準化されてなかった。商品を委託条件でできるところもあり、高い掛け率での買い取り条件のところもあった。ファッション業界のFCは現在もあるが、大幅に減ってきている。

FCはオーナーの思い入れで成功するかどうか変わると思う。商品を売っていくので商品への愛着がなければ成り立たないのではないかと思う。コンビニやワークマンのFCのオーナーはその商品への愛着やこだわりはあるのだろうか?

ネットで見ると、商品の思い入れとは別に、1つのビジネス、職業として選択しているように見える。脱サラをする、夫婦で始めるというスタートが多いようだ。商品やその店へのあこがれよりもビジネスとしての見方が強い。条件を調べていても、なんとなく仕組みはわかるが、そこで果たしてどれだけ収入が得られるか見えにくい。

諸条件を見ていて、一番わかりにくいのは商品在庫の負担についてだ。FC先(フランチャイザー)に商品在庫分の借り入れをしたことにして金利分を払っていくような仕組みのようだが、コンビニは在庫日数が10~12日とあるのでそこまで大きなリスクにならないが、ワークマンは在庫資産2400万と記されているので、回転率を考えるとなかなか返済に時間はかかりそうだ。前年度の在庫日数は85日前後となっているので年間3回転前後のようだ。そしてその商品リスクは完全に取引先が取ってくれるのだろうか?

さらに懸念事項になるのが、人的課題だ。社会政策的な時給の高騰や社会保険料の負担増など、利益を圧迫する大きな問題がある。コンビニも24時間営業なら当然スタッフ数は多く必要になってくる。ワークマンも家族経営で回せるだけの面積ではない。コンビニは今後、レジの無人化や万引き防止策など対策は進んでいくだろうが、それでも最低要員は必要になる。スタッフのリクルートはどんどん厳しくなる。

先述したが、小売業のFCはオーナーが「収入を得るための仕事」だけでなく「小売」が好きなことや「取引先の商品」が好きでなければ続かない。うまく流れれば問題は浮上しないが、数字が想定より下回ると、「不満」「不安」が大きくなりそうだ。

もう完全になくてはならなくなったコンビニは、商品ラインナップや改善ポイントは見えてきていて、省人化などのシステムも進んでいくだろう。ただ多発するFC企業(フランチャイザー)対FCオーナーの課題も改善していかねば拡大方向に進んでいかない。各社の競合は烈火するが、コンビニ事業はインフラとして今後も必ず残っていく業態だと思う。逆に衣料品中心のFCは商品回転率も悪く、品揃えも標準化しにくいのではないか?ワークマンのような業態はFC店舗と併せて直営展開を考えていかねば成長は厳しいのではないだろうか?特に「実用」から「ファッション」に変化すると間違いなく無理だ。

くどいが、FCのオーナーは本当にその商売や商品が好きでなければ続かないと思う。

■今日のBGM

小売目線と政治

自民党総裁選とやらで、報道は大谷選手の話題以外は、ほぼそれ一色になっている。いろいろ見るけどどうもぴんと来ない。結果的には国のトップになる人間を選ぶのに、それでいいのかどうか。自民党の党首を選ぶ選挙に一般国民は口をはさむ余地はない。でもあまりにも国民の生活レベルの話とはかけ離れている。国益を守る事、外交政策など大きな視点は大事なことだとは思う。

人気の小泉ジュニアが「解雇規制緩和」の話題が出した。もともとは非正規雇用者を解雇する事に対する考え方で、非正規雇用者を解雇するときは正規雇用者も解雇が必要などの法整備の問題だった。それが正規雇用者の解雇要件を緩和するという方向に流れていて、おかしくなっているが、もともとそれが労働の活性化につながるのだろうかとも思う。おそらく大企業を想定しての発言のようだが、大企業を解雇された雇用者が果たして中小企業に流れるのだろうか?さらに流通業、小売業に流れてくるのだろうか?今、人的課題が大きいのは、建設業、運送業、飲食、小売業などと言われているがうまく循環できるのだろうか?結果は明白だと思う。比較的世間に近い話題だったからこそ盛り上がったのかもしれない。でもそんな話題のほうが考えやすい。

今、買い物に行くとほとんどの食品が値上げしている。そんな状況への経済政策の話もほとんど聞こえてこない。実質賃金をどう上げていくかも聞こえてこない。麻生副総裁がカップラーメンは400円くらいと答えて笑えなかったが、今はもうその値段に近づいてきている。現実として小売業界でも数多くの課題が出てきている。前述した賃上げの問題で、優位性の低い小売業には人が集まらなくなっているし、賃上げによって生じる利益圧迫がある。最低賃金を上げるだけでは賃上げは解決しない。当然既存スタッフの賃上げも必要になる。利益を上げるためにロットを増やして原価を下げたいが、それをするにはある程度の規模(資金力)が必要になる。中小企業は対抗できない。コストも資材高騰や人手不足や人件費高騰でどんどん上がっていく。さらに大手企業の寡占化が進み、新規参入へのハードルも上がっている。新しい風が吹かなければ、業界は硬直化する。

経済の最前線が小売流通業で、その流れで世の中の景気がわかると言われているが、経済政策は見えない。身近な政策が出てこない。今後も海外頼りは続き、現場を知らない役人や大会社の経営者で経済政策は決まっていくのだろう。何も変わらないのではないかと思う。

「木を見て森を見ず」かもしれないが、「森を見て木を見ず」も政治の本道なのだろうか?

■今日のBGM

店長は、まず売上予算を達成させる

巷で話題の兵庫県知事のニュースを見るたびに、公務員の仕事は結果が見えにくいのだなと感じる。小売業に限らず、民間の企業は「数字」が結果になる。公務員の仕事はなかなか数字化できない。やはり、「えらそう」「贈賄強要」「各種叱責」にはわかりやすい数字評価ではなく、ほとんどが「気持ち」でのやり取りになっている。

ここで「パワハラ」論争をするつもりではないが、小売業を考えると会社が求める「数値」への取り組み次第で上下関係の軋轢は変化するのではないかと思う。

小売業で店長に求められる数値責任は、まず「売上」。仕入れ権限があれば、次に「在庫」。あとは「売上」と「在庫」に関係するが、「利益」。それぞれ与えられた予算に対しての「予算比」、前年数字に対しての「前年比」。つまりすべて相関関係にはある「売上」「在庫」「利益」が数値責任になる。この与えられた予算数値と実績で評価は決まる。ただすべて数値は「売上」が起因となる。利益率は高くても売上総利益高は「売上×利益率」だ。「売上」が伸びれば、必然的に「在庫」は減る。つまり「売上」「在庫」「利益」は相関関係にある。それを考えれば、間違いなく店長の一番の職務は「売上」予算を達成させることだ。

「いい売場」とはどんな売場なのだろうか?答えはたくさんありそうだが、やはり「売れている売場」だと思う。お客様が買ってくれる売場だから、売れている。数ある店で立ち寄って買い物するということは引き付ける「何か」がなくてはならない。

売れていない店をどう立て直すか?私自身は常に値段に訴えた。売れない商品は値段を下げてなくす。いろんな見方はあるが、不稼働商品のセール(値段を下げる)をやることで、お客様の目は売場に向けられる。興味を持たれると、次のステップにつながる事が多い。再来店があったり、他の商品も手に取ってもらえるようになる。ただその時必要なことは、必ず内容を吟味して数値計画を立案し、売上予算は絶対クリアさせることだ。同時に気にすることは、セールで売上を取りながら、在庫はできるだけ減らしていく。さらにセール以外の売場を徹底的に整理する。売れてくるとスタッフも動きが軽くなる。セール以外でも売れ筋が見えてくる。

数値計画で利益率を考えてみる。平月売上3000千、利益率45%、在庫10000千の店で、不稼働商品1000千を半額で販売したとする。完売して売上は3500千と想定する。その月度末在庫を10000千で設定すれば、仕入れ額は4000千、原価50%で仕入すれば利益率は44.4%と-0.6%しかダウンしない。つまり、内容を吟味して数値計画を整合できれば大きな傷は負わない。

在庫を減らしてさえいれば、売上数値が安定してくれば仕入れが活性化するので利益は戻ってくる。売上が改善してくれば、売場スタッフとの交流も円滑になる。売場に笑顔が出てくる。実際、売り上げが好調な店は、売場の雰囲気は明るい。さらに上司からも、性格的に合わなくても、強く言われなくなる。

小売業では、売上数値さえ安定させれば、パワハラも軽減される。

・・・何度も経験してきた。

■今日のBGM

今の商業環境で、商売を始められるか?

昔、叔母と叔父が西宮で、それぞれ豆腐屋をやっていた。忙しくて年末には毎年両親も手伝いに行っていた。大豆から豆腐を作ってそれを売る。焼き豆腐はバーナー?で火を入れる。所謂製造直売で儲かっていたように記憶する。自転車で売りにも行っていた。土日も大変だと思ったが、商売は金になるものだと思っていた。

自宅で商売をする。つまり家賃はかからない。原価も安いので儲かる。うまいので売れる。さらに家族経営なので人件費もかからない。(厳密にはかかっているが・・・)商売の成り立ちだと思う。

今豆腐屋をやっていると、どうなっているか?SCで商売しなければ人は集まって来ないので、入店すると家賃は高い。そうなると家族経営は難しくなり、人を雇う。SMなどとの競合が厳しく値段競争に負けてしまう。この流れで個人経営はどんどん減っていく。さらにずっと味を求めてやっていても、商店街がなくなってきたのと同じタイミングで寂れていく。

現実はどうか?SCの数も過剰になり、乱立し、より集客力のあるSCに入店するには、敷居がどんどん上がってくる。入店するのに敷金や内装管理費やその他多くの経費が掛かる。当然チープな内装では入れない。出店経費は非常に高くなる。SCも集客を上げるために、「売れる店舗」をリーシングする。当然「売れる店舗」の条件は優遇される。そうなれば他の店舗に当然しわ寄せがあり、どんどん出店のハードルが上がる。つまり利益も上げていけるMDが必要になる。

衣料服飾品においても、現状のお客様の流れはボリュームプライス志向が強まっている。ハイエンドは少なく、その購買場所も限られてきている。価格志向に走れば当然商品を企画して大量に作っていかねばならない。国内ではコストが合わず、諸経費が抑えられる海外で生産する。そんな中でも円安が続き、コストも上昇する。売れる商品を作るには大量の購買データも必要になる。つまり大企業シフトはますます強まる。近頃は商品を作って卸していた企業が、自ら出店するケースが増えている。つまり「買い」での商売は厳しくなっている。

単店で戦えるとすれば、そのエリアでは「そこでしかない物」を売るしかない。ただ「そこにしかない物」は仕入なら原価は高い。利益対策も考えなければならない。卸企業の戦略としても1つの店舗(会社)に集中して卸すことはしない。ローカルチェーンでブランド戦略をしている店がこのセグメントに入る。実際そういう店は大型モールにはいくつか入っている。

今の商環境で、個人もしくは小資本で、商売を立ち上げても絶対成功しない。もし成功するビジネスモデルがあるのなら、「人」「物」「金」の回しやすい企業と共同で立ち上げていくしかないように思う。小売業はもう「とりあえずスタートする」スタートアップ事業ではなくなったと思う。

今日のBGM

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