カテゴリー: その他 (1ページ目 (8ページ中))

ヤングターゲットの商業ビルは成り立たない

マイカル在籍時、最後はビブレで仕事をしていた。ビブレは、DCブランド全盛期の大型商業施設では、マルイ、パルコと並んでヤングターゲットのファッションビルとしての位置づけにあった。ビブレの営業を統括している時、店舗数は23あったと記憶する。その当時は試行錯誤を続けていて食品併設で百貨店志向の店もあった。その後イオンに吸収され、現存するのは横浜と明石の2店だけになっている。明石は食品併設型で「無印良品」と「ユニクロ」がある成功パターンのデベロッパーで横浜は広い意味でのヤングターゲットのビルではある。

マルイはモディ含めて現在は27店舗ある。食品併設のフルライン型店舗や、都心のネット型?店舗もあり、従来のファッションビル型店舗は有楽町くらいとなっている。北千住や他2.3店舗での百貨店型店舗があるが、基幹店だった新宿店も含めて催事面積が増えており、失礼ながら小売デベロッパーとしては、力を入れていないように見える。企業として、小売業よりエポスカードやムービングなど他事業へ力点が変化しているのではないだろうか。

先日、静岡パルコが来年1月閉店すると発表された。それを除くとパルコは14店舗となる。見たことがない店舗はひばりが丘くらいだが、パルコは全店舗ほぼきちんとテナントリーシングできている。浦和や調布のように食品ニーズ顧客へのリーシングもあるが、大都市では従来のファッション提案中心の商業ビルとなっている。おそらく昔からのファッションビルとしての流れを守っているのはパルコのみのように見える。

もうすでに、地方ではファッションビルは完全に成り立たなくなっている。東京都下と100万都市以外で成り立っているファッションビルは、静岡パルコ閉店で、あとは金沢フォーラスくらいになった。

ヤングターゲットを取り巻く商環境は、どんどん厳しくなっている、ターゲット年齢を15才~35才と捉えると、ターゲット人口は1990年に34058(千人)、2010年28430、2024年24631と減少しており、2024年は1990年比で72.3%となっている。さらにその年代の人口構成比も27.6%から19.9%と大きくダウンしている。そして15才~39才の都道府県の転入出では東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)、愛知、大阪、福岡を除き全国的に転出超過となっている。つまり俗にいうヤング層はどんどん人口が減ってきており、さらにその人口減に加えて東京、大阪、名古屋、福岡の大都市圏に移動している。それにより、その他の地域のヤングターゲット客層は大幅に減っているということになる。

さらに、大都市圏であってもファッションのみの提案では当然成り立たっていない。飲食はもとより、バラエティ雑貨やキャラクターグッズ関連、古着などターゲットを幅広くしている。好調な業績の心斎橋パルコではインターナショナルなブランドからポップカルチャー、「無印良品」や「ハンズ」、さらにはシネマや大阪らしい食堂街までうまくまとめて構成されている。ただ、御堂筋をはさんだ「心斎橋オーパ」は来春閉店と発表されており、好立地になった「なんばマルイ」は空床が目立ち催事店舗も多い。つまり大都市圏でも細かく手を加えないと完全に淘汰されていっている。

なぜだか、静岡パルコの撤退報道は、心に響いた。昔の商売が終わりを告げられたような気がした。うまく書けないが、地方都市ではファッションは根付かないのか?ファッションの商売も郊外モールで戦うしかないのか?・・・

もう、今の時代では個人でファッション関連の商売はできない環境になっている。

■今日のBGM

もう店を出す環境にはない・・・

「もう一度店をやるなら」とよく考える。先日も「洋服ダンスを片付けて」と言われて、着なくなった服を見て、ブランド古着の店を考えたが、ネットを見たらそういう店は山ほどあった。真剣に考えると、「店を出す」ハードルは非常に高い。

帝国データバンクが「雇用過不足」に関してのアンケート結果を公表した。正社員不足の企業は51.6%と半数を超えている。小売業では非正社員の不足割合が54.2%となっており、増加傾向に歯止めがかかっていない。人手不足倒産も過去最多となる見通しのようだ。小売業にとってみれば、人手不足は大きなアゲインストになる。特に衣料品や服飾品の店はコンビニのようにレジの無人化は難しいし、ロボットで接客もできない。

商品調達に関しても再び円安傾向に戻り、海外生産商品のコストも上がっていく。メーカーも小売現場の状況が厳しくなってくれば、リスクを持って商品を作りづらい。小売り主導になっていくだろうが、小さな資本では難しい。

商品だけでなく、売場を作るコストも同様に上がってきている。工事業者も人件費や資材の高騰もあり、予算と工事費が合わず、受注を控えざるを得なくなっている。

さらに、出店する商業施設にも同様のコストアップの流れがある。集客を図るために家電などの大型カテゴリー店舗や、ユニクロや無印良品のような大型店舗を導入せざるを得なくなっている。その結果、商業施設で大型店舗のウェイトはどんどん大きくなっている。その賃料はそこまで高くできないため、他のテナント賃料にしわ寄せがくる。つまり中小型店の出店条件は、おのずと上昇してくる。

小売業としては、もっと根本的な問題の「何を」「どのターゲット」に売っていくかも見えてこない。数字が読めない。トレンド商品を狙うにはその土壌が必要で、今後さらに減少するであろう客層への商売は難しい。ニッチゾーンでは、長続きしそうにないしリスクが大きい。おそらく、狙いはロープライスメガネなどの「ノンエイジ、ボリュームプライス」で大手があまり手を出しにくいゾーンだが、20年位前には見つけられたが、今はもうないに等しい。

つまり、現状では、隙間も見えず、さらに資本力のない企業が新規参入するのは非常に難しくなっている。

となると、戦えるMDプランがある企業や小売業へ参画したい企業が考えるのは、不振企業へのM&Aになる。とりあえず、売場と内装と人はいる。さらにローコストで手に入る。近年、流れの悪い上場小売業にその流れが顕著になっている。さらに近年は、表面的には見えにくいが、投資ファンドが株主参入している企業も増加している。

ただ、現状ダウントレンドの事業を、そんな簡単に再構築できるとは思えない。そして、特にファッション事業はもうすでにオーバーストア化している状況にある。つまり、小売業に参入しても簡単には成功はできないし、大きなメリットは望めない。

やはり、いくら考えても、個人では何もできない。

■今日のBGM

高齢者こそ極端な2極化が進んでいる

日経新聞をずっと宅配してもらっている。チラシがほとんどなかったのが購読の1つの要因だった。近年、今まで折り込まれてなかったチラシが少しずつ増えてきて、近隣のSM(スーパーマーケット)のチラシは毎日のように折り込まれるようになった。ユニクロやドラッグストアのチラシも多い。近隣にはSMが4~5店舗あり週末には大量に折り込まれる。

SMのチラシの内容は、従来の特売的なものに加えて、ポイント戦略が増えてきている。イオンのポイント戦略と同様の5%オフ日やポイント〇倍が並ぶ。プリペイド機能に対象日に入金すればポイント分金額が加算される日もある。当然銀行の利子よりも大きいので、変な魅力がある。チラシの内容は、昔の商売していた時の卵や上白糖などの特売商品は少なくなっている。均一セールの打ち出しや、仕入れ時期によって値段が変わる生鮮商品の割引、アイテムごとの「値段から%オフ」の企画が多い。

以前、このブログでも何回か日経新聞の全紙(1面分)2連(2面分)の掲載広告を紹介した。数日前にブログ掲載時に添付したが、全紙広告は「アルパチーノ+デ・ニーロ=モンクレール」で2連は「本=ブルネロクチネリ」の広告だった。11月に入り1日に日経新聞本紙を包む形で2連の表裏(4面分)の新聞広告があった。「カルティエ」が1面と最終面とその裏面、計4面を占めており、それに包まれて日経新聞の記事がある。日経新聞は「日経マガジン」や「Ai」等のグレード感の高い商品を掲載する折込小冊子 もあり、その掲載ブランドの購買客層は非常に限られる。

新聞発行部数は、2000年に1世帯部数1.13と全世帯で購読していたが、2024年には1世帯当り0.45と半分以下になっている。さらに新聞購読者は40代までが20%前後で60代以上が50%以上になっている。特に日経新聞では2020年の60代以上比率が48.2%から2023年には63.4%と高齢化が急速に進んでいる。デジタル化が進む中、宅配新聞購読者の半数以上は高齢者ということになる。

つまり、日経新聞の高級ブランドの広告もSMのチラシも高齢者に向けたものになる。そして、この年代が一番2極化されている。日銀は、家計が保有する金融資産は60才以上が6割前後を保有していると9月に発表している。そして、70才以上で金融資産が3000万以上世帯は約20%で、逆に100万未満は25%にも上る。

話は変わるが、車が好きなので、ここ数カ月車の買い替えをずっと考えている。高齢者として、これが最後の乗り換えになるかもしれないし、今の車も次の車検で満9年になる。数台候補はあり、そのうちの1つを販売する所謂国産高級車の販売店に行った。以前行ったときは受付の女性との話(買わないと思ったらしい)で終わったのだが、今回は、担当者と興味を持っているモデルチェンジする車種について話すことができた。おそらく不人気車種(若い層にはうけない)にもかかわらず、今月末納車される試乗車の予約もいっぱいで、「乗り換え時期に納車は絶対無理です」という回答だった。あっさりした商談だったが、販売予定台数以上の購入希望者がいるということのようだ。客層は高齢者中心ということだった。

日本の人口は30年前と比べると98.1%と微減だが、60才以上は181.5%と大幅に増加している。人口構成比は19.3%から35.4%となっており、その人口は男性19457千人、女性24346千人、合計43803千人になっている。高齢者の比率がどんどん高くなっている中、その層の2極化も顕著になっている。

間違いなく高齢者層の今後の消費行動が、商売の在り方を大きく左右する。

■11月1日 日経4面分の新聞広告

先を見据えた企業戦略

この頃、商売のキャパを考える。人口が減少していき、労働人口は減少し、どんどん高齢化は進んでいる。商売は想定需要のシェアをどれだけ確保していくかにかかっている。例えば食品スーパー(SM)なら商圏人口×食品支出である程度の想定の需要額はでる。衣料や雑貨も結局そのパイの取り合いになってくる。そして全体のキャパはどんどん減少していく。

駅にあったマツキヨが退店していた。近辺に新しくスギ薬局ができて、サンドラッグ、ウェルシア、セイムスと完全にオーバーストアになり、立地面では良かったが規模で劣ったマツキヨが駅前商圏から消えていった。ドラッグの商圏規模からはじき出された結果かもしれない。SMでは、ヤオコーが去年駅前にオープンした。企業として1km圏のシェアは25%が目標で、実績としては18%ということだ。近隣駅の1km圏の人口は54000人で2.5万世帯であり、食品支出額は2人家庭で1070千と発表されている。家族の人数を考慮し、外食を除いて計算して食品支出額1世帯800千と想定すると、商圏内の食品支出額は約200億円の規模になる。駅前にオープンしたヤオコーの初年度売上目標が26億円と発表されており、シェアは13%ということになる。数字から分析すればまだ成長余地はあるということかもしれない。

衣料品の消費支出についての総務省統計局の家計調査データがある。2021年のデータだが1世帯当たりの消費支出のうち「被服、履物」への支出は全体の4.4%しかなく、昭和50年代くらいまで続いていた10%前後から大きく低下している。購入単価も単価指数で見ると平成17年を100として婦人服は55、紳士服は87などすべての品目で消費者物価指数を下回っている。さらにデータを見ると可処分所得は10年前と変わらないのに「衣服、履物」への支出は2割位減っていることがわかる。他のデータを見ても衣料品購買額は2024年平均月額3336円でバブル期から約50%減という数字もある。

つまり、データは調べれば山ほどあり、ある程度データを分析すれば、その企業の方向性や成長性は読めてくるのではないかと思う。企業の拡大を目指すなら、現在のポジションを理解して、客層の幅を広げるかシェアを上げるかなどの対策を立てる必要がある。

2024年の国内人口が1.23億で2040年には1.1億になるという。そのうち65才以上の人口は29.3%から35%になり、15才~65才の人口は現状の7372万人から6300万人前後に落ち込み、約1100万人減少するとされている。労働人口は省力化を進めていけば何とかカバーできるかもしれないが、小売業は両面で明らかに厳しくなる。特に客層の幅を狭くしている業種は厳しくなる。例えばユニクロは客層の幅を広げており、65才以上へも訴求できている。そうなればいかにシェアを上げていくかが企業課題になる。すでにグローバル企業で、国内のマイナスをヘッジすることもできている。逆に客層の幅が狭いセレクトショップの戦略はどうあるべきか?単純に65才以上をターゲットから外すと、2040年にはターゲット人口は85%前後になる。そうなれば、戦略はボリューム層に食い込むか、資産を持つ高齢層を取り組むかしかない。現状の客層のシェア率を上げても分母のマイナスは補えない。企業の維持拡大を考えるなら、M&Aしかないのではないか。

高年齢化、人口減少で小売業はアゲインストが多い。特に必需品でないファッション企業は厳しい道が待っている。いち早く、将来的な事業の立ち位置を考え、どうやってシェア率を上げていくかを早急に検討する必要がある。

■今日のBGM

自民党総裁選挙・・・

新聞、テレビでは総裁選挙の露出がずいぶん増えてきた。過半数割れとは言え、そのまま総理大臣を選ぶ選挙になる。誰も、賛否で盛り上がる公約もなく、おそらく誰がやっても変わらないし、国内の動きにプラスの影響はなさそうな気がする。

国民全体のことではないが、小さな小売の会社を経営してきた経験から、国が中小企業に手を伸ばして欲しいことを少し書いてみる。

このブログでもよく書いているが、国内の企業数の99%は中小企業で、従業員数も70%を占める。売上高を見ると中小企業は全体の59.2%で、全体の経常利益に占める割合は22.7%というデータがある。このデータから見ると国としては「稼ぐ力」が強い大企業中心の政策にならざるをえない。中小企業は国から見て投資対効果は低い。経済同友会や経団連のニュースは多いが、中小企業庁の露出はほとんどない。当然重要度から見れば、大企業中心にならざるを得ない。ただ、小売業で言うとコンビニオーナーも会社化しているところも多く、大手コンビニも中小企業で成り立っている。ローソンの社長だった新浪氏は「時給1500円にできない企業は退出」と言っていたが・・・

まず、政策への訴求を強めてもらいたい。もう少し中小企業に行き渡るようにしてもらいたい。大企業には人がいる。いろんな制度や補助金については担当者がいて対応できる。さらに外部ブレーンを持っている会社も多い。中小企業はそれさえ知らないということが多くある。いろんな投資への補助制度や、賃上げ促進税制などの詳細をいち早く浸透させてほしい。メールでも郵便でもいい、必ず手に届くように対応してほしい。そういう制度があるということを知らなければ、対応さえ取れない。

さらに申請はできるだけ簡潔にできないだろうか?当然各企業の決算書は行き渡っていると思うので、決算書を見れば、会社の状況や姿勢はある程度読み取れるのではないだろうか。各企業の状況を把握して、歩み寄れないものだろうか?税務署と連動すれば会社の状況はすぐわかる。過去、助成金をもらうのに資料が多すぎて大変な労力だったことを思い出す。企業体質によって、提出資料の数を多少変動できないものだろうか?どうも補助金や補償金は「出したくない」が前提になっているように感じる。

最後に、大本命の小泉農林相の「5年後賃金100万増」についてだが、あくまでも国の補助があっての政策だと思う。前回出馬時も「給与が安い企業をやめて高い会社へ」という意見を主張したが、どうも現場感がなさすぎる。民間企業で働いたことのない人の政策だ。具体的な数字は公表できないが、以前経営していた会社に置き換えると、コロナ前で、月給社員に年間200千の給与アップをすることによって約40%の営業利益ダウンになった。そして毎年給与アップを続けることで、3年で赤字の危機がやってくる。赤字になれば補助金やいろんな制度は使えないことが多い。そして、よほどの改善がなければ収益は上がっていかない。仕入先があり、賃料を払って出店するビジネスでは、どうやって経費構造を変えればいいのだろうか?出店経費の削減はデベロッパーがあって難しいし、店舗人件費を減らすわけにはいかない。むしろ増える。出店しなければ店舗数が増えず、店舗が増えなければ、商品の原価も下げにくい。

ますます中小小売業の数は減っていく。それは国の思惑通りかもしれない。

■今日のBGM

専門店の「店」と「商品部」

店でずっと販売の仕事をしてきて、小売業に慣れてくると、商品を売るだけでなく、こういう商品を売ればいいのに、こういう商品を仕入れたい、という気持ちになってくる。それは当然のことで、「売りたい商品を売る」ことが理想の姿ではある。思い入れのある商品は商品をよく理解しているために売りやすい。やはり、個店で「仕入れる人=売る人」のケースはうまくいくケースが多い。ただ、本部でバイヤーとして「仕入れる人」は売場との連動がなかなかうまくいかない。

過去の経験から、本部バイヤーと店の売場責任者との温度差は大きかった。当然のように仕入れて売るので、売ることと仕入れることはリンクしてなければならない。つまりその役割を複数人で実行するならば、同じ気持ち、同じ考えでなければ成功しないし売れない。店はそれぞれ商環境が違う。具体的には、立地環境も違うし、売場面積も違う。さらに客層も違ってくる。それを理解していたとしても、絶対に商品の動きは違ってくる。

売場にいると当然商品の動き方を肌で感じる。売れている商品は商品量を確保するし、演出も強化する。バイヤーが本部にいると、そういう情報を集めるのが遅れる。バイヤーとしての本部での仕事もある。各店の単品状況の確認や、店別の動向確認、さらに受け持ち数値の確認もしなければならない。店は個店の数値確認になるが、本部はトータルでの数値対策が必要になる。細かくは商品の店舗間移動の指示や、利益を考えての不稼働商材のプライスダウン、さらには利益や在庫数値への取り組みもしなければならない。さらに本部にいると当然幹部職と話すことになり、指摘事項も多くなる。違う部署との連携ができるというプラス要素もある。商品を売るための販促や演出への取り組みも可能になる。ただ、私見ではあるが、商品部の本部機能は経営側が確認しやすいように本部に置いているとしか思えない。

商品政策はあくまでも店とリンクする必要がある。それが当然、専門店の一番大事なことになる。そこで商品部バイヤーを店長が兼務することが最も望ましい。その下に店を仕切る若手をサブでつけておけばいい。これは以前も書いたと思う。バイヤーは現場感がなければならない。素直に商品の流れを実感する必要がある。売り方も提案できる。現場感があるほうが、仕入れや売場作りへの提案もしやすい。それができないなら、本部でのバイヤーは思い切って若手を登用する。そうすれば、他店店長が自由に意見を言えるようになる。そして若手バイヤーには徹底的に数値教育やストアメイキング手法などを教育する。特に「売上と仕入と在庫のバランス」は徹底教育する。さらにバイヤー期間は短くして、次の世代との交代を頻繁に行う。

「本部=えらい」の構造はないほうがいい。上記したどちらの提案も現場志向で、「小売は売場」の認識を強く持ち、後方要員(本部要員)を減らすことが一番の企業戦略になる。企業の仕組みが整ってくれば、本部や店の役割は明確になってくる。このブログでは何度も書いているが「イトーヨーカドー、セブンイレブンの組織図」は、当たり前のことだけどそれを一番気づかされる。

■今日のBGM

生活感ある商品を売る

週1.2回は、買物に行く。ほとんどが食品とデイリー的な雑貨の買物になる。食品の買物を見ていてもやはり値段が大きなポイントになっている。明らかに昔に比べて高い。そしてロスリーダーとしての食品売場ではなくなった。つまり昔は食品でお客様を呼んで、衣料品などで稼ぐという構図だった。もうGMSでは食品で利益を確保しなければ全体の利益構造が崩れるようになっている。それだけ食品の構成比が上がっている。

以前からずっと書いているが、お客様となる年代層の変化も大きくなっている。20年前の高齢者人口(65才以上)構成比20.1%から2025年は29.6%と大幅に増え、20年後には37%まで高まる見込みとなっている。つまり、嗜好品の購入頻度は下がり、食品中心の必需品中心の購買動向になっていく。

そういう中、中小小売業の倒産も増えてきている。2024年には企業倒産件数が、2013年以来の1万件を超えている。小売業の倒産も倒産件数では前年比117%となっており、特に資本金5000万未満の小規模倒産が増大している。需要の変化や、人手不足と人件費の上昇が大きな要因になっている。

衣料や服飾系の店は、いろいろな個性を打ち出して、その個性をMDテーマとして品揃えしてきた。さて、今後も従来の「店の個性」を打ち出した品揃えで戦えるのだろうか?お客様の生活スタイルも変わり、さらにターゲットの客数が大幅に減ってくる。おそらく10年前と同じような感覚で同じような品揃えをしていれば、客数の自然減もあり売上は10%近く落ち込んでいるのではないだろうか?富裕層対象以外のブランドビジネスをしている店は、当然もっと厳しくなってきていると思う。売れるブランドも顧客はだんだん減少していき、新しく出てきたブランドの影響を受ける。ターゲット年齢が若ければ若いほど、その人気は長続きしない。単純に人口構成比でそれはわかる。

今までのMDの基本は「差別化」だったのではないかと思う。いろいろな差別化がある。店の大きさや、演出の仕方。当然、商品のプライスラインやトレンド性もある。しかし、今後は「差別化」すればするほど、客数は減っていくのではないだろうか?今後は、表現が難しいが「生活感」が基本になるような気がする。

「生活感」はいろいろな角度で捉えられるが、「価格志向」もその要素だと思う。生活感には「買いやすい」「手が出しやすい」という意味も含まれている。ちょっとイメージが違うかもしれないが。高級車のレクサスにも「UX」や「NX」もあるし、ベンツにも「A」や「GLA」も出てきて、手が届きやすいイメージも作っている。ファッションで言うと、サイズが大きめなシルエットの服や、シンプルなアイテムの商品が増えてきている。そしてその組み合わせでまとめ買いをさせる。どちらかというと商品の個性よりも「着装提案」のイメージが強くなっている。単品の値段を下げ、買い上げ点数を増やそうとしている。「ユニクロ」を想定してみればわかりやすい。他には「フル感性」への提案が必要になってくる。当然若い客層の商品を見せてはいくが、サイズ感や着装感は年代を意識させない事が必要になってくる。「ユニクロ」もそうだが「無印良品」も非常にうまい。

過去の成功体験での客層はどんどん離れていき、さらにその客層は生活感を増している。お客様の変化に気づかなければ、数字が厳しくなるのは当たり前のことだ。不安定な経済環境もあり、広い意味での「生活感」が小売業のキーワードになってきていると思う。

■今日のBGM

季節指数の変化とバーゲンパワーの低下

昔は、「ニッパチ」と言われた2月と8月は売れない月だった。共に、1月7月のバーゲンで春夏物や秋冬物を売り尽くしてセール商材がなくなり、売場前面も先取りと称して2月には春物をメインに8月には秋物の打ち出しを強化していたからだ。それがいつの間にか季節指数が変化し、2月の落ち込みは小さくなり、8月は6月や9~11月より売上分母が大きくなってきた。

要因はいくつかある。まず考えられるのは、郊外型大型モールが各地にできたことで、SCが買物目的と併せて、時間消費型に変わってきたことにある。夏は暑いので買い物を控えるという行動パターンから、快適な空間で時間を過ごせる場所として大型モールを利用し、そして買い物も楽しむという流れへの変化である。特に8月は学校の休日もあり、飛躍的に売上構成比は上がった。

さらに、温暖化が進み9月はまだ秋ではなく、夏が続いている状況にあるという季節感の変化がある。つまり7月で夏物をなくすより8月や9月まで夏商戦を引っ張るほうが商売上のメリットが出てきている。そして季節商品のサイクルの変化とそれに伴うセールのタイミングの変化も出てきている。

このブログでは何度も書いているが、購買客層の変化も大きい。完全に高年齢化が進んでおり、ファッションの流行を第一に考える層が完全に減ってきている。ファッションを引っ張ってきた客層は大きく減り65才以上の高齢者層が大幅に増えている。つまりトレンドを意識する層が減っているということだ。ちなみに30年前の65才以上構成比は14.6%だったのが今年には29.6%と倍増以上になっている。ファッションは、よりデイリーへ変化している。

バーゲン期に値段を下げて、「季節商品をなくす、商品を入れ替える」ことは商売として当たり前のことになる。夏商戦であれば、従来の8月は売れない月だったので7月に春夏商品を売り切って、8月から初秋物を見せて切り替えていくという商売が普通の流れだった。8月が集客できる月に変わったことで、その商売のサイクルが変わっていった。百貨店や専門店の一部では、まだ従来のバーゲンの流れはあるが、他の商業施設では、SC中心にメリハリのあるバーゲンではなくなり、だらだらとセールを続ける状況となっている。これは冬のバーゲンでも同じ傾向にある。

そのような環境下、季節感と客層の変化にどう対応するかで企業力がわかる。ユニクロは自社のルールで商品の値段を下げ、なくしていっている。当然SCでのバーゲンのタイミングにも合わせている。つまり自社の消化率等のデータに基づいて商品を売り切っている。そしてそのサイクルは比較的早い。店を見ているとプロパー期でも商品のプライスダウンをしており、セール期もなくしたい商品の順序がよくわかる。無印良品も自社でタイミングを計ってセールをしている。そして、おそらく、季節商品でも売れている商品は値段を下げていない。両社とも、細かいデータ管理と商品をなくす必要性は十分理解している。そして、昔ながらの「動かない商品は迅速になくしていく」という考えが見えるのも両社になる。

逆に、近年は利益を優先している会社が増えているように感じる。そのため、セールを長引かせることで売場の新鮮さが見えなくなってきている。さらに、季節商品の比率を下げ、比較的ライフサイクルの長い商品を品揃えしようとしている企業も増えている。その結果として、サイクルが長いため消化率が低下している事には目をむけていない。そして、利益率の確保を優先するあまり、在庫過多に陥る。そういう流れもあって、何社かの会社が機能不全に陥り、事業譲渡されている。

環境変化でバーゲンの取り組みが変わったことで、商売に対しての各社の姿勢が改めて浮き彫りになっている。

■今日のBGM

企業の賃上げが最重点課題?

歳を重ねると、主だったことの比重が小さくなり、なぜか社会のことに目が向き始める。政治に対しても独り言が増える。今回は、「小売り」「ファッション」とは少し離れる内容で書くことをご容赦願いたい。

選挙が近づき、各党が政策を述べている。石破首相は「企業の賃上げが最重点課題」と言い続けている。賃上げへのコメントは多いが、政治が企業の賃上げをバックアップできるのか、具体的には全くわからない。組合組織の連合も全労連も高水準での「賃上げ」を要求している。

国税庁発表の赤字法人率は、2022年が最新で64.8%だったようだ。ちなみに小売業は31.6万社の企業のうち22.6万の企業が赤字で赤字法人率は71.4%となっている。赤字企業はほとんどが中小企業で、その中小企業は国内企業数で99.7%を占めており、国内従業員の70%が働いている。そして、国内企業数の1%に満たない大企業の利益剰余金は2021年末で484.3兆円という数字もある。

こういう数字を見ていると、大企業の内部留保分を人件費に振り替えて賃上げをさせることが、首相の言う「賃上げ」ということだと見て取れる。そして政治家は「経団連」や「経済同友会」の大企業のみが「企業」という認識しかない。国民の70%が働く中小企業は眼中にないとしか思えない。

3年前まで従業員100名くらいの小売業を経営していた。頑張って定期昇給もしてきたし、 増益が続いたときは、年3回賞与も出していた。そして、会社立ち上げからコロナ期までは規模の拡大を考えながら、毎年黒字決算を続けてきた。それでもコロナ期の3年は重い時期だった。築いてきたものが崩れ落ちた。小売業で、店を開けないのでは何もできない。その時の国からの補助金は、雇用調整助成金があった。ただ、集客できないので営業成績は上がらず、マイナス利益の歩留まり的な要素しかなかった。その助成金もマニュアルが複雑で書類も多く、作成するのが1日仕事だったように思う。

雇用調整助成金もハローワークへの提出だったが、コロナ期以前もハローワークには最低月1回は行っていた。従業員の入退社手続きで、雇用保険加入手続き、退社手続き、離職票の提出など、さらにアルバイトの募集掲示手続きにも行っていた。ただそんなに行っていたにもかかわらず、「キャリアアップ助成金」は全く知らなかった。有期社員から無期社員にすれば当時は1名57万円の助成金があったようだ。少なくても15名以上はそうしてきたように思う。当然調べなかったミスだが、あれだけハローワークに通っていたので、もう少しアプローチがもらえてもよかったのではないだろうか?やはり助成金を拡充しても、従業員が多く、情報量も多い大企業が一番活用するのかもしれない。

政治は計算ではないと思う。3割が働く大企業も7割が働く中小企業によって支えられている。3割の労働者の賃上げだけが国の景気を変えるわけではない。中小企業で働く7割の労働者とその家族のためにどう動くかが本質ではないかと思う。そして情報取集能力の弱い中小企業にもっと歩みより、改善していくことが、一番大事なポイントのような気がする。

ただ、現実は国内企業数1%の大企業とのきずなが深く、政治家として接触もしやすい。1%と話をして調整すれば、表面上は賃上げに努力している絵も描ける。こんな感じで解決していくのだろうが、社会格差はどんどん広がっていく。

■今日のBGM

小売業からの地方創生は難しい

先輩夫婦と恒例の旅行をしてきた。今年は四国がメインで、暑かったが雨にも打たれず好天気に恵まれた。

私自身、四国は何度か訪れている。徳島県は母方の故郷で子供時代から何度も行っている。愛媛県は道後温泉としまなみ海道の観光で訪れたことがあり、香川県はマイカル時代ビブレの店舗があったので巡回していた。高知県はPM会社在籍時、高知市内のビルの商業化リニュアル計画のコンサルで数回訪れている。

店をやっている時、四国で出店依頼を受けたことがあるのは徳島のゆめタウンオープンの時だった。遠隔地に出店する時は当然ドミナントを考えて出店する。売れる商品も似通ってくるし、そのほうがマネジメントもしやすい。それに加えて、できれば核になる店が欲しい。以前の会社でドミナントしていたのは、関東圏、関西圏、九州南部だけだった。中部圏も作ろうとしたが、核になる店ができなかったので作り切れなかった。そういう意味で中四国は、出店を考えられるのは人口の多い広島市などの県庁所在地くらいで、点だけになり地域全体がまとまらない。そうなると、どうしても中小小売業は出店をためらってしまう。さらに、地元で強い企業があり、なかなか参入できないという状況もある。

旅行期間中、全労連が「直ちに最低賃金一律1500円以上に」と発表していた。四国の最低賃金を調べてみると、徳島県980円、香川県970円、愛媛県956円、高知県952円となっている。中小規模でコツコツ商売をやっている企業は、大手小売業の参入で人不足になることは明らかだ。全労働人口の70%を抱える中小企業は、そんなに簡単にクリアできる最低賃金ではない。

そうなると、閉鎖的な商圏に新規参入するとすれば大手企業中心になり、それにより地元企業も厳しくなってくる。そしてさらに県庁所在地など都市部に企業は集中し、ますます郊外には人がいなくなる。その都市部でも、四国で言えば、徳島にはもう百貨店はなくなっている。他の百貨店も高松三越が売上224億となんとか百貨店の規模感はあるが、高知大丸84.3億、松山三越49.8億と百貨店としては非常に厳しい数字で、閉店前の厳しいゾーニングになっている。20年位前に高知大丸をリサーチしていて、神戸大丸のように本館周辺にサテライト店がいくつかあったことを思い出した。それが今や存続の危機になっている。人口も減少傾向にあり、今後の四国での小売業は、間違いなく縮小方向になってくる。

7月偽予言の風評の影響からか、観光地にも外人客が少なく、日本人観光客も多くはなかった。ただ、観光産業には宝の山のような気がした。観光スポットをさらに広げていければ観光地としての側面からは大きな期待は持てる。ただ、だれが資本投下するのだろうか。そして、外国人観光客の流れは今後も続くのだろうか。

四国四県を車で走ってみて、小売業だけでなく「地方創生」は限りなく難しいと感じた。

■今日のショット(徳島 かずら橋)

«過去の 投稿