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タカキュー再建

イオングループのタカキューがイオンと提携を解消して、ファンド傘下で再建するという記事が日経にあった。2022年に債務超過になり今回は銀行が15億の債権放棄と第3者割当増資(ファンドとどこ?)で再生とのことだ。イオンは資本業務提携を解消したとある。

債務超過になり、店舗数を大幅に減らしている印象はあった。

過去10年の決算書を簡単に見てみる。売り上げピークは2018年の261.3億、2023年が119.8億なので45.8%まで落ち込んでいる。店舗数は2018年が311店に対して2023年は130店に減少。当期利益は2014年4.7億に対して2021年-31.4億と大きくダウンしている。数字推移を見ているとコロナが大きく影響していると思われ、2019年以降の利益は合算すると-63.4億になる。一番大きなきっかけはコロナだろうが、利益も2014年以降は1億前後で店舗規模の割には小さく、アゲインストの中コロナでやられたというところだろう。

近年の数字を見ると平均的な大きさは50~80坪くらいで、数字を店舗数で割ると平均的には売り上げは7000千/月、利益率は58%、在庫は回転率0.21回転/月、平均在庫3300万くらいの営業数値のようだ。この営業数値で利益率58%は相当高い。在庫評価次第ではもう少し利益率は低くなると思われる。

もともと新宿の「三峰」「タカキュー」の流れもあり、私は「アレクサンダージュリアン」のインパクトが強い。極端に量販イメージはなく、かといってその後出てくる大型スーツ量販店とも違い、ポジション的に中途半端になったと思う。一時はモードっぽい「セマンティック」がブームになったが近年はスーツのイメージが強くなってきたように感じる。アオキの「オリヒカ」と競合する感じになっているのではないか。売り場坪数もスーツ専門店よりも小さく、スーツ以外はインパクトなくカジュアル系もスーツ客に売っているイメージが強い。メンズの中途半端な位置づけのような気がする。以前触れたが「中途半端なブランド」は「どっちつかず」で「どっちつかず」はどの層も支持しない。客層の2分化の時期には最も厳しい業態だと感じる。

では今後はどうなるのだろうか?コア事業は不採算店をやめていったので大きなマイナス要素もないが、大きくプラスに転じることもない。出店場所はやはりイオン中心に続けられるのだろうか?イオンも退店されるほうが大変かもしれないが・・・

じゃどうするか?他人事なので何でも言えるが、ファッション事業を続けるならイオン系郊外RSCでやっていけるのは少しにおいが違うものだと思う。イオン系で何店かある、ちょっとにおいのある洋服の品揃え店ができないかと思う。関西のイオンモールに入っている「ジェオグラフィー」や「ワークス」のような品揃えで、さらにその店よりデニムウェイトを下げた店はどうだろうか?たまたまタカキューのHPを見ていると「on the day」というネットのカテゴリーがあった。昔店をやっていたみたいで、今はなさそうだけど、この流れの店を展開すればイオンモールなどは飛びついてくると思う。ただ利益率は取れないと思う。多店舗化は難しいかな・・・

前途は大変厳しいと思うけど、何かチャレンジしてほしいし、復活してほしい。

■今日のBGM

小売業の2極化

そこまで景気動向に精通してはいないが「円は戻ってまた高くなる。」ということはもうないのではないかと感じる。経済評論家でなくてもわかるような事態だと思う。

円安が続いている。国債を発行しすぎているので金利を上げると、国は金利負担が増す。さらに借入金の金利も上がり、一般市民にも影響が大きい。円安で輸出企業は儲けている。代表的な業種は「車」関連があげられる。ただ流れは電気自動車に変わってきている。今の状況では「車」業界も完全に弱くなる。さらに電気に変わることでガソリンでのサプライチェーンは大きな転機を迎える。それに代わる輸出産業が出てこなければますます流れは悪くなる。さらに日本は資源を持っている国ではない。資源を持っている国への依存度が高い。

物価の高騰に合わせて、「給料を上げていく」と国は大号令をかけるが、その原資はどこから来るのか?労働者の70%を占める中小企業従事者はどうやって給料が上がっていくのか?

そういう中で小売業はどうなっていくのだろう?限られた百貨店でインバウンドや高所得者の「貨幣より物」化で増収は起こっている。逆にしまむらや西松屋のように低価格を打ち出している専門店の伸びが大きい。SMもオーケーやロピアのように値段での打ち出しが強い店が好調だし、イオンも値下げを打ち出した商品が増えてきている。ファッション専門店も低価格帯のユニクロや、若干そのゾーンに引っ張られる流れのアダストリアが中心になっている。

上下に引っ張られて、真ん中が希薄になってきている。前回書いたきっかけになったサマンサタバサの記事の中にこう書かれていた。【「中途半端なブランド」を一体どの層が支持するのか。「どっちつかず」ということは「どの層も支持しない」ことでもある。】記事の内容はもうすでに周知されているようなことだったけど、このコメントは鋭いと思う。

中流を意識したSC特にRSCはさらに厳しくなると思うし、その収益のマイナス分をテナントに向けると、テナントは動かない。テナントは無理して出店できないので、出店する場所や機会が減ってくる。特にコロナの痛みが大きい中小企業はさらに厳しい。低価格志向のテナントが増えるし、好調テナントの大型化は進む。どんどん悪循環が続きそうだ。

厳しい時代になってきている。

■今日のBGM(年越しにyoutubeででも聞いてください。心が洗われます)

ブランドの持続力

ヤフーニュースで「サマンサタバサ」の記事が出ていた。状況は非常に悪いといろんなところで書かれているが、そもそもティーンズヤング対応のブランドは長持ちしない。何度も書いてきたが、お客様は年をとり、ファッションの流れも変わるからだ。

ファッション業界でブランドはどれくらい持続するのか?30~40年前のDCブランドで残っているブランドはほんとに少ない。ビギもニコルももう会社自体が別のものになっているし、あれだけ売れたコムサも今は見かけない。残っているのはクリエイター系でノンエイジ志向が強かったブランドくらいだと思う。ギャルソンやそこから続くデザイナーブランドや一度は倒産したがヨウジヤマモトやケンゾーなど。あとは年代層を広げたブランドが百貨店中心にシフトして続いている。

ティーンズ寄りのブランドの賞味期間はさらに短い。あっという間に落ち込んだストライプインターナショナルの各ブランドもそうだし(もうティーンズ系ではない?)サマンサタバサもその部類に入る。多感な時期で流れがすぐ変わる。それを前提に会社はどう動いていくことが必要だと思う。

もう一つ記事で指摘していた「中流層中心のMDの失敗」はまさにその通りだと思う。完全に2極化が進んでいると思うし、中流層ターゲットにすれば逆に2極化の流れでは「どの層も支持しない。」が正論だ。

ブランドビジネスは難しい。生き残っているブランドには何か「成功の鍵」(KFS)がある。クリエイター系だけでなく百貨店客層をターゲットにシフトしたブランドは続いている。さらに量販店でも販売員付きコーナーブランドは、周りのスタッフの少なさの中、接客面で優位に立ち数字を維持しているとも聞く。企業としては客層の幅を広げるべくブランド数やショップ名を増やして維持していっていくか、深く掘り下げていってコアの客層に向けていくしかない。

サマンサタバサはある意味予測されていた事態で、前オーナーはうまく手放したし、コナカのM&Aの失敗ということになる。なぜ買収したのだろう?最近ではマッシュグループもM&Aされたが、複数のブランドがあり、持っている他のブランドの客層の幅も広いが牽引してきた「ジェラードピケ」はおそらく失速すると思う。今後の動向は要チェックかもしれない。

ティーンズはすぐにヤングに、ヤングはすぐにヤングミセスに、ヤングミセスはすぐにミセスになる。ターゲットを固定していれば当然新しい客を取り組まなければならない。ティーンズヤングは感性が時代ごとに変化しさらに細分化していく。当たれば大きいが、その分消えるのも早い。

ブランドは「誰に売るのか?」「その顧客の特性は?」「ブランドにとってメリットのある市場の定義は?(例えば機能性なのか、ファッション性なのか?デイリーなのかビジネスなのかなど)」「その市場規模は?」を十分に吟味することが必要で、さらに途中での顧客動向の変化を素早く見極めることが必要だ。

■今日のBGM

ワークマンのフランチャイズチェーン

「ワークマン」の売上の伸びが止まったという記事を見て、何気なくそうだろうなと思ったのだが、あまり詳細を知らずにいた。以前やっていた店と同じSCに入店していて、すごい集客があったので少し驚いて観察したことがあった。その時は「ブームだし、この商品をみんなが着る?」と懐疑的でさらにFCだと聞いて驚いた記憶がある。

DCブランド全盛時代、大都市は直営店、地方都市はFC店という構図があった。FC契約の構図はFC先が内装を作って、商品を仕入れそのブランドの服を売るというもので、ブランド側はその商圏内にはそのブランドを卸さないことが前提で、取引形態は委託販売(年2回セール値引きあり、残商品は返品)が多かったように思う。

「ワークマン」のFC条件を調べてみた。少しわかりにくく、きちんと確認が必要だとは思うが2タイプある。わかりやすいのはBタイプで従来の俗にいう販売代行と言われていた契約内容だ。昔、サンエーインターナショナル(現TSI)と代行契約をして10数店舗やっていたので内容は理解できる。月度売上3500千までは500千の収入。それを超えれば超えた分の3%分が上乗せされる契約内容で、月度売上月10000千であれば500+(10000-3500)×0.03=695千の収入になる。一般的な販売代行手数料率は13~15%(※その前後はある)で、この契約なら10000千売上で手数料率が約7%になり契約自体は全く魅力がない。おそらくこの契約を選ぶことは少ないのではないか?

Aタイプは細かい経費は別として、オープン時商品原価分2240万を負担するということ。その在庫はオーナーの資産になるということらしい。さらに利益は月間の荒利額の40%が収入のようだ。つまり月度売上が1000万で荒利率が36%だと利益額は(1000千×0.36)×0.4=1440千が月度収入になる。その他営業経費が300千くらい引かれる。つまり月間収入は1140千となる。報奨金制度もあり上乗せはあるらしいが、オープン時の商品原価分の負担は大きい。その返済は分割でもいいようで立ち上がりの資金は少なくても済むようだ。

想定面積が100坪ということだが、夫婦でやるとして、店をやっていた経験上要員数は最低5名(これでも厳しい)で、そのうちフル勤務(1日8時間×20日)3名(当然オーナー夫婦も込み)短期バイト(月80時間前後)2名は必要となる。夫婦以外に月度給与は交通費や社保を入れると400千は必要になる。そうすると、夫婦の収入は月740千になる。これをどう考えるかだが、おそらく夫婦そろっての休みは取れない。さらに給与計算や経費処理等の会社としての仕事もあり、ほぼ休みなしの状況は予測される。最近の採用難を考えると募集も難しい。販売員が確保できて何とかやっていけるとすれば上記した最低月売上1000万は必要だと思う。

さらに、品揃えは「ワークマン」側に任せるのだろうか?発注責任はどこにあるのだろうか?「ワークマン」側に優秀なSV(スーパーバイザー)が必要で、そうでなければ売場の維持管理ができない。原価在庫が22400千はあるので不稼働な在庫をどう処理していくかも指示がないとできない。

詳細は分からないところが多いが、「ワークマン」のFCになかなか魅力は感じない。オリジナル商品をどんどん作って荒利益を上げることでFCに収入が増えなければ続かないのではないだろうか?直営店もありそうなので、儲かりそうな店は直営で賄うのではないか?

今後の「ワークマン」の伸長がFCにかかっているのであれば、ブーム的なものはあるにしろ、大きく伸長していかないのではないだろうか。

■今日のショット(山中湖)

中流?

いつも読んでいる漫画雑誌の4コマ漫画(作:業田良家)で、「夫婦が買い物に行って値段POPの大きいジャンパー、シャツ、パンツを見て最後に旦那さんが「俺の着ているもの全部値段がわかる。」と言ってユニクロらしき店から出てくる。」というものがあった。そのあと最後の1コマで「この店で、買った服しか、持ってない。」と詠まれている。

「ブラックフライデー」+「感謝デー」ということもあり近くのイオンモールに買い物に行ったが、集客があったのはユニクロと食品売場くらいだった。いつもの「感謝デー」より少し多いぐらいの客数のようだった。ユニクロは販促に呼応してセールコーナーを大きくとっていた。

また別の話だが、先日実家に帰った折り、所謂値頃価格のホテルに3泊した。観光地のグレードの高いホテルはほぼ満室で、中途半端な値段なら安いほうがいいと思って予約したのだが、ほぼ高齢者のツアーや夫婦客で満室近かった。ちなみに観光地は東南アジアの訪日客でほぼ埋め尽くされていた。

自分がそう思っているだけかもしれないが、どうしても値段訴求に向かっているお客様が多くなっているように感じる。少し前まで洋服はセレクトショップのアウトレットで買っていると言っていたノンポリの友人もユニクロ派に転じた。

ファッション業界もユニクロや無印、アダストリアの値段が中心になりブランド志向が崩れていっている。「取引先から買って仕入れて売る」時代から「自社で作って売る」時代に変わっているのでそうなるのは必然だとも言える。中にワンクッションはいらないだけで値段は下がるに決まっている。そしてお客様はもうそこに気づいている。

方や先日の日経新聞には「モンクレール+sacai」の広告が大きく掲載されていたり、地方でもラグジュアリーブランドのホテルがどんどん建設されている。お金を出せばそこに心地よさがあることも分かっている。

中流がいなくなったというよりも、仕組みがわかってきたという感じのほうが強い。

ただ、ニュースでは「コロナ前に戻った」と言っているし、有識者もそういっているが、「失われたコロナの3年間」の代償は大きいことも忘れてはならない。

■今日のショット(忍野八海)

買いやすい売り場と値段とは?

イオンの売場などのGMSの売場を見ていて、「何故、売れてないのだろう?」と思っていた。しまむらを見たときに平日でも商品を持ったレジ待ちのお客様がいた。ユニーからドンキに変わって数字は大きく改善した。GMSの売場はきれいで商品も見やすい。何が違っているのだろうか?

売場が広くなりすぎた。今のRSCの核としての位置付けからゾーニングしての結果かもしれない。その結果、効率を考えず品種を増やした結果かもしれない。さらに効率を考えずに指摘された「欠落品種」を足していったからかもしれない。最低限の品種で最高の効率を考えての売場になってないということではないだろうか?

さらに今のGMSの衣料品、服飾品の売場はきちんとしたストアメイキングマニュアルがあり、売場も大きく、比較的通路も広く、カラーフォーメーションに基づいた売り場づくりがされている。逆に商品がばらつき、商品密度が薄くなっている。百貨店に近いVMDを展開しても単価はそこまで上がらず、効率も上がっていないのではないか?

昔と違って、細かい売場区分がなくなっているようで、スタッフの姿も見えず、会計も集合レジになっている。いつごろから部門レジはなくなったのだろうか?おそらく1人1人の守備範囲が広くなり、それだけ業務の幅が広がり、販売にかける時間は大幅に減っているような気がする。百貨店型を模索しながら販売員がいない。そのためか、派遣社員付きのブランドは好調と聞く。

衣料品をセルフでレジにすぐ持っていく値段はいくらぐらいだろうか?3000~4000円くらいになっているのではないだろうか。プライスラインはどれぐらいの幅で、どのプライスゾーンを打ち出しているのだろう。ユニクロに劣らない商品開発もしており、企業商品のレベルも高い。ただやはりボリューム感やプライス訴求で完全に負けている。単品を売りこなそうとしていない。着装感を打ち出してコーディネイトで売っていこうとしている。

いらない商品を省き、売りたい商品のボリュームを持たせ、値段を訴求する売り場にする。まず担当者が考えるミニマムの基本品揃えに戻るべきではないか?そこに必要なものが出てきて初めて品目(アイテム)を増やしていく。

ユニクロの単品量販訴求とボリューム感。買いやすい値段への追求。しまむらのローコストで「売れる商品を売れる値段」でのわかりやすい売り場。お客様に支持されている売場が正しいということを再認識する必要がある。

しまむらを見て以来考えさせられ続けている。

■今日のBGM

中小小売業はどうやって給料を上げていくのか?

政治ネタを書く気もないのだが、岸田首相が「賃金を上げていく」と言うたびに力が抜けていく。それに同調する財界にもあきれてしまう。国は企業にどういう力を貸してくれるのだろうか?

中小機構によると日本の全企業数の99.7%が中小企業であり、労働者の68.8%が中小企業で働いているとのことだそうだ。私自身も大企業で働き、最終的には会社を興し、中小企業の社長で引退した。

小売業しか細かくはわからないので、小売業の中小企業がどうやって賃金を上げていくのか考えてみたい。当然のことだが利益を従前よりも稼ぎ出すことが必要になってくる。

利益を上げるにはまず売上を上げることが最低限必要なことになる。コロナで傷ついた売上を簡単に回復できるのか?何度も書いてきたが、小売大手を含めても売上を堅実に伸ばしている企業は少ない。10月の上場企業の既存前年比をみても、無印は112.9と伸長もユニクロ91.5と数字に大きな変化は見られない。コロナ前よりも伸長している企業は少ない。

次に利益率を改善することが必要となる。仕入れ原価を安くすることが一番の方法だが、海外の工場でロットを増やして生産しても、円安の影響で値段を抑えれば利益率は改善できず、さらに値段も上げにくい。ましてや中小企業はロットを確保することも難しくなってくる。その環境でなかなか利益率も上げにくい。

次に経費を抑えられるかということだが、デベロッパーも厳しい中、家賃を下げることは難しい。人件費だが、最低賃金も上がってきている。小売業は工場等と違って、仕事の範囲が見えにくい。時間を増やせば生産量が必ずしも増えない。その他のランニングコストは十分絞っているだろうし、水道光熱費などは逆に上がっている。

さらにコロナで融資を受けている。当然返済も始まっている。新店や改装などの店への投資にも、よほど企業財務体質がよくなければ、金融機関は融資には応じにくくなる。応じてもらえても金利は今までよりは確実に上がる。

そういう環境下で、どうやって中小小売業は賃金を上げていけるのか?

先日、新聞で有期社員から正社員に待遇変更したら助成金が出ることを初めて知った。会社を経営していた時20人近くは待遇変更した。調べると1人57万円の助成金とある。月に1度はハローワークにいっていたが、この話は聞いたことがなかった。ほかにも多くの助成金制度があるようだ。もう少し周知させる必要があるのではないか?

国は何を手助けしてくれるのだろう?99.7%の中小企業はそれを探す力が弱い。助成金だけでは給料を上げるだけの原資には遠く及ばない。

上場企業だけを見て、政策を立案したり、財界と話ができれば経済は動くと思っていては約70%の労働者の幸せには結び付かない。政治が国民の給料を変えることはなかなか難しいと思う。

■今日のBGM

再び「在庫」と「利益」

しまむらの数字を見ていてつくづく感じたことがある。しまむらとライトオンの前年の決算数値から少し数字を引用する。

月度数値

・しまむら 1店舗 売上36.2(百万) 売上総利益12.5(百万)

利益率34.5%  平均在庫 58,42(百万) 月度回転率 0.62

・ライトオン 1店舗 売上10.02(百万)売上総利益 4.94(百万)

利益率49.3%  平均在庫57.3(百万)  月度回転率0.18 

※上記数字は単純に数字を店舗で割っただけで、ネット等売上やその在庫なども含まれる。

この数字をしまむらの回転率を0.5回転/月、ライトオンの回転率を0.3回転/月に変えてみる。その想定ではしまむらの在庫は72.4(百万)、ライトオンは33.4(百万)となる。しまむらは在庫を増やし、ライトオンは減らしてみる。

しまむらは単純に在庫増分を仕入れしたとする。その値入率を45%と想定する。売上は変化なしと想定。分母は在庫+仕入れで 58.42+13.98=72.4 分子は38.27+7.69=45.96  万引きなどの商品ロスを0として、利益率は36.5%に2%アップする。

ライトオンは仮定として20(百万)現状の原価率で返品し3.9(百万)は値段を下げると設定する。(おそらくこの原価率で返品は不可能で、ましてや返品できない。さらに不稼働在庫は不明だが、あくまでもシュミレーションとして計上。) 分母は57.3―20―3.9=33.4 分子は29.05―10.14=18.91  万引き等商品ロスは0として、利益率は43.4%と6%近くマイナスする。ただし値段を下げることで売上は上がるとは思う。

上記はあくまでも想定で、現実的な計算ではないが、在庫が多い企業は間違いなく不稼働在庫も多いと思う。商品の支払いは遅くても3か月後(ふつうは遅くて2か月後。もうほとんど手形支払いはないと思う。)としても3か月で商品が売れないと支払いはできない。仕入れの原価率次第だが3か月で商品が売れるとして年間4回転はしないとキャッシュは回らない。

しまむらの数字を見ればわかるように、在庫を増やせば利益率は上がる。利益率を優先して不稼働在庫の処理を遅らせることによって利益率の低下は抑えられる。だが、不稼働在庫の処理が遅れることで、売場の新鮮さが損なわれ、売上も上がってこない。そういう意味から商品回転率が低い企業は在庫過多の状況であり、利益率の信憑性は低いのではないかと思う。

「在庫」と「利益」は相関性が強く、特に「在庫」は第3者が調べにくい。あくまでも企業が決定する。企業として「利益」を追求することは当然だが、私自身は「利益率」より「回転率」を追求する会社を信用する。

■今日のBGM

チェーンストア理論➁

品種・・・商品部門より小さな概念で(商品)ラインより大きな範囲を指す。ライン…特定の価格ゾーンの商品品種をいう。 品目・・・アイテム。お客様が識別できる商品の最小分類。 単品・・・「SKU」生産者や流通業者にとって考えられる限りの商品の最小分類を指し、POSが扱うのは単品で、いくつかの単品をグループ化したものが品目。

「単品」「品目」「品種」の説明である。

「何が売れている?」漠然とした質問だが、品種なのか、品目なのか、単品なのかわからない。何を指すのかちゃんとした言葉が必要で、話が通じなくなる。さらに各社独自の言葉もあり何を言っているかわからないことがある。マイカルがイオン傘下に入ったとき、旧マイカルの従業員は、言葉の違いで悩んでストレスを感じたと多くの人が言っていた。

この言葉を統一しようとしたのがチェーンストア理論の渥美先生で、上記の説明は手元にある2002年度版の「チェーンストアのための必須単語1001」での説明を記入した。

前回しまむらについて書いたが、しまむらの業態はVS(variety store)と記したが、これも「必須単語」の業態の類型で、以下の通りの内容となっている。VS・・・価格レンジ「ロワーP」 商品特色「廉価短期消耗実用品 衣料4~6割」                                「必須単語」説明では以下の通り。・・・商品頻度の高い非食品を幅広くそろえた、便利総合品、売価の上限が低く抑えられている。実用衣料が主力で、売り場面積150~500坪でセルフサービスである。NSC,CSCの第2、第3の核店となる。1人売り場60坪以上でやりくりし、売場販売効率が低く、低商品回転率でも高収益なのが特徴。(抜粋)

しまむらについては業態の説明とおおむね一致する。20年以上も前の必須単語だが「SPA(speciality retailer of private label apparel)」の説明もあるし、主要経営効率計算公式もまとめてある。   

チェーンストア理論の在り方は理解できるし、各社ともそれを基本にしてフォーマットを作って戦ってきたと思う。私自身はチェーンストア理論とは考え方は違う店をやってきたが、言葉の統一は必要なものだと思っている。その中で「必須単語1001」は絶対必要なもので、標準語として続けてほしい。

各社、言葉が通じないのは小売業界としておかしい。標準語は絶対必要だと思う。

■再度画像アップ ※祝阪神優勝 岡田監督とは同じ年。学部は違うが同窓。六大学で江川を打てるのは岡田しかいなかった記憶がある。

㈱ニットプランナー 倒産 

「KP」ブランドの子供服を展開していた㈱ニットプランナーが倒産との記事を見た。ブランドはワールド傘下のナルミヤが続けるようだ。去年ナルミヤがワールドの傘下に入ったのも驚いたが、子供服業界も少子化もあり大変厳しそうだ。 

昔在籍した高崎SATY時代、1995年ごろキッズDCブランドを集積させてフロアを構築していた時代があった。「コムサデモードフィユ」「ミキハウス」「べべ」「ミニバツ」「ハッカキッズ」「ミニK」「メゾピアノ」「KP」などのブランド構成だったと思う。DC全盛期でお母さんが子供にブランドを着せるのが目的で脚光を浴びた。「コムサデモードフィユ」「ミキハウス」は年間1億くらいの売り上げだったように思う。その後ビブレ業態変更時、客層を絞るため子供業種はなくした。 

調べると中心ブランドだった「ミキハウス」は帝人グループになっており、「べべ」は投資ファンド傘下(もともとは神戸のジャバグループ。ジャバグループはその後伊藤忠から投資ファンドに。)「コムサフィユ」はファイブフォックスHPによると直営店は20数店舗。ナルミヤの「ミニK」はブランド中止?「メゾピアノ」は全国主要百貨店。「ハッカキッズ」も同様全国主要百貨店。「ミニバツ」は「バツグループ」がなくなったため、ブランドだけ残って量販店ブランドになっているようだ。 

子供服はベビー(~2歳)、トドラー(2~5歳)、スクールとサイズが細かく、商売としては非常に難しく、現在は子供はすぐ成長するのでファッション衣料ではなく、必需品になってしまった。昔は特にかわいい時期のトドラーサイズ中心にブランドニーズはあった。現状はそのブランドニーズがあるのは百貨店のみのようだ。 

2022年の子供服の全国売上高は8000億規模のようで、靴業界1.1兆円、カバン業界1.2兆円よりも小さい。きちんとしたデータがないので推定ではあるが(2010年が9000億前後)2000年ぐらいで1兆円前後の規模と思う。減少傾向であり、 店舗数や売り場面積を考えると売り上げ規模は非常に小さく感じる。特にスクールニーズがユニクロやしまむらに流れ、従来の子供服メーカーは大きなアゲインストになっていると思われる。それでも売り上げの規模にかかわらず、百貨店やGMSでは、つなぎたい客層ということもあり、売り場面積も大きく販促も多い。 

子供服は「かわいい」から実需中心に変わってしまっている。ブランドは百貨店顧客のみで成り立っている。特にスクール需要はユニクロなどのファッション実需に変わってきている。年々少子化は続き、需要自体が減少してくる。現在のファッション業界の2極化や経済環境を考えると、マスに受け入れられる子供服のブランドビジネスは難しい。 

従来の子供服専業メーカーは成り立たなくなってくるのは当然のことかもしれない。 

■今日のBGM

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