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小売業にスタッフが集まらない

群馬県のコストコではアルバイトの時給が1500円~(交通費別)ということである。調べてみると、社員、アルバイトとも時給1500円~とあった。

時給1500円で1日8時間、週5日働くと月4週で24万の給与になる。ほぼ社員としての扱いになると思うが、店に対する思いがないのなら破格の条件といえる。大卒初任給もそこまでない会社も多い。

一般の専門店で、商品が好きでそのお店で働きたいというスタッフが、果たして群馬県でこの給料を超えているのだろうか?給料が安くてもプライドで働いてくれるスタッフはどれだけいるのだろうか?

では一般の小売店で時給1500円で雇い入れて、利益が出せるのか?

ファッションの専門店では人件費率が15%以内、どんなに多くても20%以内だと思う。昔からある販売代行業(ブランドの洋服を販売するだけの仕事)の手数料は13~17%だった。さらに労働分配率(荒利益に占める人件費の割合)は40%前後が分岐ラインと言われている。

それを考えると、時給1500円でアルバイトを2名雇って一般的な30~40坪での店でスタッフ4名の人件費は最低1000千以上になるだろうし、店長等の社員をプラスして会社負担の経費(交通費、社保等)も加えると1400千から1500千の店の人件費になる。人件費率20%として月売上7000千、荒利率45%として労分率40%で計算すると8000千が損益分岐売り上げになる。

これは大きな数字で30坪80000千以上の年売り上げが分岐点になれば、何かを大きく改善しなければ構造的に無理な数字になってくる。

スタッフは集まらない、売り上げは大きく望めない、出店条件の緩和は厳しければ、もう出店もできなくなる。

果たしてどういう風に構造を変えていけばいいのだろうか?

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商業施設のPM(プロパティマネジメント)って何?

前回、「商業施設が金融資産になっていく」と書いたが、金融資産を守っていくためのマネジメントが必要で、それがプロパティマネジメント(PM)と呼ばれている。

何をするかというと、商業施設の運営管理全般である。メンテナンス関係は専門業者が入るとして、商業的な運営をどうしていくかがここでの問題になる。

イオンなど流通業もリートを組成して金融化しているが、こういう大企業にはメンテナンス会社も持っており、さらに当然小売流通のプロもたくさんいるので、運営管理能力は十分にある。ただ大手でも昔ほど運営に前向きさはなく、あまり担当者もSC内で見かけない。前向きに売り上げを上げていこうと協力してくれるSCは数えるほどしかなかった。

不動産、金融業が金融資産として持っている場合はどうなのかというと、短期的な収益アップを目指すためにルーチンの業務(販促、演出など売り上げアップへの施策)よりリーシング業務(空床を埋めること)を優先して、できるだけ早く賃料収入を上げることを優先させる。これはある意味当たり前のことで、そうしないと投資回収ができないからだ。

もともと商業施設のお客様は一般の来店客だ。商業施設のスタッフはお客様に満足していただくように運営し、その計画を立てていく。従来までの商業施設の持ち主は、流通系小売業の持ち主だったのが、これが金融系、不動産系に変わると一般のお客様との商売より、投資家との関係が優先される。施設運営業者はお客様が雇い主でなく、投資先が雇い主となる。お客様が喜ぶより、投資家が喜ぶことをする。

今話題の池袋西武の方向性についても、そこに乖離が出てくる。投資家は短期的に改善できればそれでいいが、百貨店としての改装はできないのか、街のイメージはどうなるのかとう問題が出てくる。金融資産としては早く収益を確定させ売却益を得たいし、百貨店はあるべき姿へ変えたい。街としてはグレード感を保ちたい。

商業施設の金融資産化を予測して、PM会社(上場子会社)を立ち上げた人から誘われてPM業に転職し6~7年役員として在籍していたが、本当にいい商業施設を作るためにオーナーと頑張ったのは1か所くらいだった(地方地元企業)。あとは商業とはかけ離れた、不動産業としての色が濃くなってきた 。

前回も書いたが、大手流通業の商業施設も含め、今後の商業施設が金融資産になるなら、いつか「ババ抜き」状態になり完璧に淘汰されていくと思う。

間違いなくPM業は流通小売業ではなく。不動産管理業になっていくと思うし、もうなりつつあると思う。

管理人より商売人のほうが好きだけどな・・・

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商業施設が金融資産になっていくとどうなるか?

日経新聞によると商業リートは割安感があるとのことである。

商業施設が金融資産になり、その収益をもとに売買される状況になりつつある。小売業が持っている商業施設はなかなか売買対象にはならないが、独立系のSCなどはオーナーがどんどん変わってきている。さらに短期間で収益を上げて売り抜けてしまいたいというニーズが強くなっている。

もともとSCはNSCやCSC,RSCの区分はあるもののエリアに根付いて商売をするところだ。利便性やファンを広げるためにいろんな施策を講じる。当然長期的なビジョンに基づいて大型のリニュアルも実施する。これが金融資産になると非常にやりにくくなる。

商業に従事する人間と、金融に従事する人間は全く違う人種だと思う。

例えば人気のショップを導入するには、ある程度そのショップの意見を取り入れなければならないことが多い。賃料を想定より安くするとか、内装の負担を減らす(内装費の協力をする)など、ショップを入れるためにすべきことを考えて検討していく。

商業側は、そのショップで大きく稼げなくても、導入する影響力での集客のアップやストアロイヤリティのアップを想定していく。当然金融側は見えない収益は認めない。さらにそこまでの大きな投資は、リスクを考えるとしたくない。部分的な小さな投資で短期的に収益をアップさせ、少しでも高く売り抜けたい。

運営経費も当然のように見直される。コストカットが収益アップにつながるもっとも簡単な方法だからだ。

以前在籍したPM会社では、いろんな商談をしたが、先方は「不動産+金融」のイメージが強く全く話がかみ合わなかった。話がまとまっても、主導権は当然のことながら先方にあり、完全に「請負業者」になったような気がした。実際そうなのだが。

今後は厳しいSCが多く出てくる。「ババ抜き」感覚になりそうな気もする。できるだけ小売業者に寄り添って、地元の期待に応えられる商業施設に向かっていってほしい。

難しいかな・・・

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「仕入れ」が「キャッシュフロー(資金繰り)」に大きな影響を及ぼす。

         

商売は当然商品ありきだが、現実的には「金」が回るかどうかになる。どれだけキャッシュがあるかを考えないと店は続かない。銀行も履歴が浅いうちは金を貸してくれない。

店を立ち上げるのにキャッシュが必要で、まずイニシャルコスト(また何かの機会に書く)はかかるが、そのあとの金の流れを考えることが大事なことだ。会社をやっていた時、一番気にするのはキャッシュの残であり、支払金額の確認だった。単純に支払できないと会社存続ができない。

以下簡単に一例を書いてみる。

洋服の小売店を3月1日に某SCに開業したとする。30坪の売り場を売価在庫9000千で立ち上げたと想定する。商品支払いが末締め末払いだとすると3月31日に原価分の支払いが発生する。仮に原価率50%とすると。4500千の支払いが発生する。次に人件費だが2人の社員を雇用し夫婦がその他の労働力とすると人件費4人分最低1000千(想定)の支払いが給与として月度内に発生する。その他備品等の経費が300千くらいかかると月度内にその金額が必要となる。入金は一般的なSCなら月2回払いなので最初の15日で賃料経費含めて売り上げが入金される。月度前半で3000千売れたとしておそらく入金は1500千くらいになる。(クレジット払いは末締めの清算が多い。)

計算すると入金1500千-商品代4500千-給与1000千-諸経費300=-4300千となる。つまり最初の営業月の末日にはさらに資金が必要になる。

次月度の15日にはクレジット分含めて入金されるので順調な数字であれば数か月後には回っていくと思う。

ということでオープンのイニシャルコスト以外に資金を持っている必要があることがわかる。ここに内装費や、敷金(資産にはなるがキャッシュアウト)、オープン必要経費(現場協力金など)のコストがかかると店を立ち上げるには大変な金額が必要となる。

店が稼働し始めると、資金繰りを考える上で、最も真剣になる必要があるのは、やはり「仕入れ」ということになる。想定のキャッシュイン(売上-施設での経費)内で仕入れをしなければ資金繰りが厳しくなる。誰でもできる「仕入れ」だけど、キャッシュアウトの大きな部分を占める「仕入れ」をどれだけ真剣にやるかが、小売りの成功の鍵になる。

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今後、小売業をやろうとする人たちは出てくるのか?

伊勢丹新宿店や銀座三越、梅田阪急はコロナ前の数字を超えたという記事を読んだが、知り合いたちと話すと、全然売れてないとの答えばかりだ。世の中は「夏のバーゲン」中でもいい話は全く聞こえてこない。SCを見て回っても食品以外の活気は伝わらず、売れていそうな店は今まで書いてきた企業の店だけのような気がする。

新しく、面白みのある店が全く出てこず、逆に不振店を整理する企業が多く、全く面白くない売場になってきているように感じる。

「こんな店をやってみたい。」「絶対成功する店を作れる。」と思っている人たちはいるのだろうか?「スタートアップ企業応援」と掛け声は大きいが、だれでもできる小売業に飛びつかないのはなぜだろうか?

現状では資金力のある大手企業の中からしか生まれてはこないと思う。路面店を作ってコツコツと商売をするならまだしも(それでもリスクは大きいが)、SCや駅ビルに出店するにはハードルが高すぎる。

デベロッパー側も現状の売り上げダウンと、テナントの退店や賃料のとれない大型化テナント導入で収益は上がっておらず、逆に悪化傾向にある。そこに数字が読めない新しい店を入れる度量もないし、大企業の上司がそういう店を入れるのに承認印を押すとは思えない。

例えば30坪の店を出店するのに敷金(最低でも坪200千)、共通部の内装負担金(500千前後)、オープン販促費(坪5千以上)、内装管理費(坪5千前後)、現場協力金(坪30千~50千)などの経費がかかる。おそらく敷金以外で最低2000千は必要だし、預け金だけど撤去代替わりの敷金を加えると8000千くらいは必要になる。そこに内装費(安くても今だと350千くらい)、諸経費が必要で20000千くらいの金が必要になる。そこにオープン時の商品代が加わる。

頑張ろうにも頑張れない。大手しかやれないというのは金の問題が一番大きい。

そこで提案がある。

内装はきちんとしたうえで、半年間(できれば1年)の催事契約をして、その後契約条件をお互い詰めるというやり方だ。ここでポイントになるのが内装と商品で、今の催事は俗にいう「居抜き」出店が多く、商品も「委託」商品が多い。とりあえず埋める型の催事テナントが多い。真剣にやりたいとなると、商品、内装にはこだわりを持つ。そこをきっちり詰めると前向きの度合いがわかる。内装をやるからには簡単には引き下がれない。

オープンの経費(商品以外)が7000千くらいなら、出店もしやすくなる。国民金融公庫や政策投資銀行から借りやすくなってくる。

いずれにしても意気込みやMDだけでは出店できないので、出店のハードルを下げるよう見直すべきだと思う。

大手デベロッパーが新しい芽を探さないと、今後の商業施設はますます鈍化していく。「小売業のスタートアップ」に手を差し伸べてもらいたい。

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店のポリシーはゆるぎないものを持つべきだ

前回、「ポイント」を高崎SATY6階に誘致し入店してもらった、と書いた。

「ポイント」は今のアダストリアの前身で、元は水戸の福田屋洋服店だったと思う。北関東でジーンズの品揃え店舗を複数店運営していた。地元の高校生には絶大な人気があり、店長はいい兄貴分ですごく売れていた店だった。

高崎に出店してもらう際、社内でクレームが入った。SATYには直営のジーンズ売り場があり、「バッティングが多すぎる、食い合いになる。」との意見だった。こだわり客とコンサバ客で客層が違うと説明してもなかなか納得してもらえなかった。

ポイントの福田専務に状況を説明したら、「そういう状況ならポイントは国産のデニムはやりません。NBではリーバイス501のみ取り扱います。リーバイス501をわかるお客様相手に商売します。」と明確に答えられた。

社内で了承され、無事出店できたが6階で35坪くらいの店で年間2億近くは売っていたと思う。おりしもアルファMA-1やムートンのジャケットがバカ売れしていた時期でもあった。SATY直営からの細かな突っ込みは多かったが、まったく客層が違っており、それは誰でも理解できた。

「リーバイス501がわかる人間に対する店」という店の指針がわかる店だったし、お客様もそれはわかっていた。

店の守らなければならないポリシーは必ずある。なければならない。それをスタッフが全員理解することが成功するポイントであることは間違いない。それがぶれると絶対お客様には見抜くし、離れる。私自身も自分の会社でことあるごとに会社のMDポリシーを言っていたが、浸透するのは非常に難しかった。

余談ではあるが、その後福田屋洋服店は、売れていたジーンズカジュアルの店をすべてやめ、「ローリーズファーム」を立ち上げ、大きく方向転換し今に至っている。すごい英断だったし、すごいトップマネジメントだと思う。

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商売の在り方を考えさせられたこと

以前に書いたが30年以上も前、高崎SATYの6階を全面改装した。苦戦していた駅前立地の6階だった。DCブランド全盛期で主なブランドは百貨店2店舗と路面店で出尽くされており、高層フロアは特に厳しかった。丸井、ビブレ全盛の時代だった。なかなかいい手はなく、売れるショップを何とか導入することが基本構想だった。近隣のビルにあった人気のジーンズショップ「ポイント」とカジュアルブランド「45RPM」を何とか口説き落として出店をしてもらった。

それでも埋まらず、当時のポイントの専務が「インポートの流れがくるから自主でできない?」との提案を受けた。ちなみにそのポイントの常務は現在のアダストリアの福田会長である。

それからいろんな店を見て回って取引先も開発し、品揃え構想はできた。一番チェックしたのは渋谷のシード館で、内装もできるだけ真似た。

MDはレディスがGCOが引っ張ってきたばかりの「キャサリンハムネット」、和商Gだったアングローバルの「マーガレットハウエル」中心。メンズは三幸衣料のアメリカンジャケットがやっていた「ポールスミス」(全然メジャーじゃなかった。)、前述した「マーガレットハウエル」中心。カジュアルはインポートジーンズ(アルマーニジーンズ、ベルサーチ、ベントゥーリ、トラサルディ、クローズドなど)、「ストーンアイランド」「CPカンパニー」などのイタリア系。売り場面積は100坪くらいだったと思う。ブランド品揃えのMDだった。

投資も大きかったし、どこのものかわからないブランド品揃えショップをよくOKがもらえたなと思う。それも基本条件は買取の品揃えである。業界紙にも取り上げられたし、取引先も興味を持って受け入れてくれた。

結論から言うと、インポートショップの数値面は全くの失敗だった。ただ館全体のロイヤリティアップにはつながったし、同時オープンした「45RPM」や「ポイント」が好調で俗にいう「シャワー効果」もあり、それを契機に館全体の数値は大きく上がっていった。

サラリーマンとしてその窓口(バイヤー、リーシング)をずっとやっていけるわけでもなく、その品揃えショップは最終的には1階の裏側の入り口近くに移設し続けていたが、MDの担当窓口がいなくなりメンズは「ポールスミス」のオンリーショップに、レディスはなくなった。

おそらく6階の時は100坪で月度売上7000千くらい、利益は30%前後、在庫は40000千くらいだったと思う。今考えると全く商売ベースでなく、利益は低いし、在庫は多いしでよく続けてこれたと思う。

大手でしかできないMDだった。シード館も長く続かなかったし、販促面の効果はあってもやるべきショップではなかったと思う。特に在庫回転率が低すぎて、利益も圧迫してしまったこともあり、前回書いた「在庫過多=悪」の流れだった。

館側から見れば館全体のイメージアップにはなったと思う。ただ当時はデベロッパーが直営でやっていたので継続できたが、もしテナントで出ていれば会社は倒産していたと確実に言える。

一方、前述したように人のつながりは後で大いに役立った。ポイントの福田専務以外でも、取引していたルックのブティック事業部(イルビゾンテ、プリュックなど、のちにドリスバンノテンやジョーケイスリーヘイフォードなど)の泉課長は有名セレクトショップ「デスペラード」の社長だし、担当だった多田氏はルックの社長になっている。いろんな影響を受けたし、いい時代でもあったのかもしれない。

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売り上げが厳しくなったら、まず在庫を減らす。

40年以上小売業界にいて、間違いなく断言できることは「過剰在庫を持たないこと」が健全な経営につながるということだ。唯一断言できる小売りの鉄則だ。最初に書くべきことだった。

不振店対策をするときも、まず在庫を減らすことから始める。在庫が多いと売れ筋が見えない。よく言われることだと、川を渡るとき水が少なければ、けがをする大きな石などがわかるが、水が多ければ危険なものが見えてこない。つまりリスクのある商品がわかりにくいということだ。さらに品種内でいろんなアイテムがあればどれが売れているかはっきりしないが、極端に言えば2点しかなければどちらが売れているか明確になる。つまり在庫が多いと売れ筋が見えにくくなってきている。売れ筋が見えてくればその流れを広げていける。

おそらく厳しい商品を返品したり、値段を下げて処分すると、利益率がダウンするので、なかなかできないのが現実でもある。上司がどれだけ数値計画を確認して、許容していけるかが課題でもある。ただ、在庫が減ることにより利益率の回復は早まる。これをどう会社がジャッジするかがその会社の裁量だと思う。

在庫が多いと、体重が重いのと一緒で動きが遅くなる。商品回転率も低くなるので、売り場の鮮度感もなくなる。売れなければキャッシュインが減るのでキャッシュアウトとなる仕入れがしにくい。全くの悪循環となる。

在庫を持って商売するジーンズカジュアルやスーツ中心の業態は当然厳しくなってきている。トレンドから外れると一気に落ち込む。ジーンズはメンズでは27~34インチまで揃えなければならないし、スーツに至ってはY体からB体まで揃えなければならないしサイズもさらに増える。厳しい流れの中、細かいサイズはなくなってきたが、それによるアゲインストもある。ライトオンなどのジーンズ専門店やスーツ専門店が厳しくなっているのはサイズによる在庫過多が要因の1つでもある。

DCブームの時、レディスサイズはほぼ9号のみだった。他のサイズに広げると在庫が増え、効率が下がってしまう。サイズの数だけ在庫が増えるからだ。

子供ブランドもDCブームの時、一気に広がったが、トドラーサイズは細かく、なおかつ着る時期が短いので、現在はトドラー中心のブランドは一気に減った。これも在庫リスクによるものが一因だと思われる。

総論を書いたが、いろんな事例も経験してきた。これからも在庫を抱えるリスクについてはどんどん述べていきたい。

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地方専門店は残っていけるのか。

昔の形で残っている専門店はまずないのではないか?

まず思いつくのはトラッド系の専門店。「VAN」から始まって「Jプレス」「ニューヨーカー」「エイボンハウス」などと、ちょっとそこからヨーロピアン「JUN」に流れた専門店。トラッド系は「ポールスミス」や「マーガレットハウエル」の品ぞろえに変わり、DC全盛時にオンリーショップになり、専門店としてはもうほとんど見ることはない。

DCブランドは大都市中心にオンリーショップを直営で展開したが、地方ではトラッド系の専門店が「ビギ」「ニコル」中心にFCとして広がっていく。現在はブランド衰退と同時になくなっている。大手のFCであった企業ももうなくなったか規模が小さくなった。

次にジーンズ系。ジーンズの人気に相まって広がりを見せた。が、おそらく在庫の問題や掛け率の件もあり、インポートデニムブームをピークに減少していく。「三信衣料」から「アーバンリサーチ」を立ち上げ脱ジーンズを図ったアーバンリサーチ、「ポイント」から見事に転身したアダストリアが大手専門店に変化を遂げた。地方にはまだジーンズ専門店からジーンズのにおいがするセレクトに変わっていった店は多い。「Bshop」系のセレクトを加えて生き残っている専門店もある。ただエリアでのバッティングや在庫の重さで大きくはなっていけない。

1970年代後半くらいからじわじわ大きくなってきたセレクトショップも、今は完全に「自主MD+買い」に変化して大手専門店チェーンのようになってきている。(「トゥモローランド」だけ別路線に見えるが・・・)地方のセレクト系はファッションに興味を示す客数がダウンしてきたこともあり、大幅に減ってきた。昔は「ファッションは熊本から」と言われていたが、九州も、もうその面影はなくなった。

いろいろ思うところはあるが、規模を拡大せず、売っていきたい商品を、好きになってくれた顧客に売っていくしかないのかと思う。チェーン化を目指しても相当の分析努力がなければできない。ストライプインターナショナルの例を見ても流れだけでは成功はしない。

山口からのユニクロや水戸からのアダストリアのような企業はもうできないのだろうか?

余談ではあるが、私がいろいろお世話になった人が群馬県の桐生市でセレクトショップをやっている。工場をリノベする大きな投資をして「思い」がわかる店を作った。チェーン化しなくても「会社スタッフ」と「お客様」が満足してくれるならそれだけでいいのかもしれない。

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低価格衣料品店

イオンが低価格衣料品店を30年までに240店舗出店するとの報道があった。「ユニクロ型店舗」ということである。

イオンの友人に「トップバリュ」でショップを作らないのかと聞いたことがあり、その時はその意見はずっと構想に出ているが、トップが変わるたびに浮かんだり消えたりしているとのことだった。大きな組織にありがちで、トップが変わると決定が先延ばしになる典型のようだった。

イトーヨーカドーと同様に、イオンのファッションは間違いなく売れてない。イオンモールもイオンで必要なのは「食品」であり、衣料や生活雑貨は大型専門店にしてゾーニングしたほうがずっと買いやすいし、イオン側も効率が上がると思う。

「ユニクロ」型と「無印」型ができると思うが、絶対に優秀で力があり、なおかつ量販店を理解している外部ブレーンを入れなければならない。全体をコーディネイトできる人間が必要だ。

おそらくイオンの商品担当者は衣料では「婦人」「紳士」「子供」、住関連では「リビング」「ハウジング」などに分かれていて、さらにそこから品種ごとに細かく分かれている。それをすべてまとめてマネジメントしていくのは大変な力がいる。しがらみがある人間がマネジメントすると絶対品ぞろえに偏りがでる。

さらに以前イトーヨーカドーで伊勢丹のカリスマバイヤーに商品改革を託したが失敗したように、違うチャネルからのブレーンは危険だと思う。百貨店のバイヤーと量販店のバイヤーは全く仕事内容が違う。アイテム単位の商品の知識はおそらく量販店のバイヤーのほうがレベルは高い。ただファッション全体に対しての視野は狭い。

売り場づくりも、ローコストですると失敗する。ユニクロの売り場はローコストに見えて金はかかっている。売場内装を乃村工芸社や丹青社が担ってきたことでもわかる。ビジュアル面に気を使っている。ある程度マニュアルができればコストダウンができるが、そこまでイオンが我慢できるか?

店名も「トップバリュ」では厳しいと思われるし、イオン臭さを消す必要はある。

どんな店ができるのか楽しみではある。

今日のBGM

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