先日、所用があり、その近くにあった「佐野プレミアム・アウトレット」に立ち寄った。2年ぶりくらいだったが、来街者の主目的になるブランドが退店しており、非常に魅力がなくなっていたので驚いた。2年前には個人的に「トゥモローランド」のアウトレット目的で行ったが、その時点で退店しており、それでもメインブランドとしての「グッチ」や「ボッテガ」はあった。そして今回は、その2店舗ももうなくなっていた。ちなみに「グッチ」のアウトレット店舗は国内6店舗で「ボッテガ」は5店舗、「トゥモローランド」は7店舗のようだ。
SC協会に登録しているアウトレットモールは32物件あり、そのうち三井アウトレットパークが13物件、プレミアム・アウトレットが10物件となっている。20年ほど前に、アウトレットモールを誘致するコンサルに携わっていて、当時のチェルシージャパン(現三菱地所・サイモン)の担当者と話をしたことがある。アメリカでのアウトレット事業ノウハウを日本に持ち込んだ会社になる。その時日本で成功するアウトレットはそんなに多くないと分析していた。具体的な数は忘れたが10か所もなかったような気がする。
国内のアウトレットモールの売上だが、プレミアム・アウトレットでは2023年度で御殿場1240億(※2024年は1409億)、三田674億、りんくう502億、三井アウトレットでは木更津690億、長島610億、入間318億となっており、その他のアウトレットでは軽井沢が2024年590億と発表されている。ちなみに上記したブランドで「グッチ」は木更津、御殿場、軽井沢、長島、三田、沖縄、「ボッテガ」は木更津、御殿場、軽井沢、長島、三田にある。つまり売上上位店舗にしかない。現状のアウトレットは、施設のグレードを上げるべきプレミアムブランドがどれだけ入店しているかで人気は上下する。売上300億が、プレミアムブランド出店のボーダーのようになっているように思う。
店をやっていた時、福岡マリノア、りんくうの近くのイオンモール泉南や三田と隣接しているイオンモール神戸北に店があったのでアウトレットはよく見ていた。SC協会に登録されたアウトレットも半分くらいは見ている。
従来のアウトレットモールの商売はプレミアムブランドで集客し、セレクトショップや国内外の有名ブランドの商品を多く販売するという図式だった。御殿場プレミアム・アウトレットには、引き付けるプレミアムブランドが多数出店しており店舗の改廃も定期的に行っている。ただ近年はプレミアムブランドが出店を控えるようになっており、代わって大手セレクトの店舗が集客の要になってきているように見える。
アウトレットといえど、できるだけ値引額は小さく売りつくしたい。値段を下げると利益は落ちる。商売をやっていれば当たり前のことだ。つまり、アウトレットに回す商品が多ければ商売が失敗したということになる。ただ、「ユナイテッドアローズ」のアウトレット店舗は国内に30店舗もある。これがすべて売れ残ってマークダウンした商品ばかりなら、利益を食いつぶし、会社は成り立たない。そこで近年は集客も多いので、完全にアウトレット売場用のMDとして構築されている。つまり普通に利益の出る商売をやっているということになる。こういう事例は多くのテナントで見られ、将来のアウトレットモールの存続についての課題になりそうな気がする。セレクトショップの中でも「トゥモローランド」の店舗数が少ないのは、アウトレット用の商品を多く作ってないからだと思う。
現状のアウトレットモールの動向を見ると、都市部にある三井アウトレットパークは郊外モール(RSC)感覚での需要はあるし、アウトレット用に作った商品でもニーズはあるかもしれない。食品SMを併設しても活性化するようにも思う。逆に郊外にある「佐野プレミアム・アウトレット」のように、テナントリーシングが本来のアウトレットの理想形から崩れていけば、わざわざ行くこともなくなり、狭商圏化してしまい厳しくなっていくように感じる。
アウトレットモールの売上300億が1つのラインなら、本来の意味でのアウトレットモールは国内10店舗くらいが上限なのかもしれない。
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