近頃、新聞や報道で「課題は中小企業」的なことをやたら目にする。元小規模小売業経営者としてどうも納得できないし、不快になる。大手都銀が「中小企業を援助する」と言って営業支援、経営へのアドバイスを強化するという記事もあった。政府からも同様の発言がある。「給与が上がらないのは中小企業に問題がある」と他人事の発言をする大企業経営者も多く報道される。
日本の事業社数の99.7%が中小企業で、日本の労働者の70%は中小企業に就業している。中小企業で最も多い分類がサービス業(なんでもかんでも属している)で41%、小売業が18%でそれに続く。労働者数はサービス業35%、小売業14%の順のようである。
「経営への支援、助言」とは何だろうか?小売業への支援を具体的に聞きたい。会社を経営していた時、経営に対する助言はどこからも一切なかった。銀行も3行取引があったが銀行側からの援助支援はなかったと思う。当方からの要望の検討はしてくれたが・・・当然ビジネスなので支援ばかりはできないだろう。順調な時はどんどん融資を持ち掛けてきて、コロナ禍終盤体力が弱ってきたとき、当座貸越(一定枠内で融資を活用できる)をやめたいと言われたこともあった。国からの補助も企業が調べなければ利用できない状況ではないのだろうか?会社を譲渡してから「キャリアアップ助成金」の制度を初めて知った。有期社員を無期社員に30人以上は登用してきたし、その他コースでも当てはまるものもあった。この制度は2013年から始まっている。社保加入や離職票提出のため月に一度はハローワークに行っていたが、全く気が付かなかったし、話もなかった。
小売業への経営への助言は、おそらく官公庁や金融関係者はできないと思う。数字で解決する要素が少なく、ソフトの要素が高いからだ。もし助言をいただけるなら会計的な助言になるが、そこは税理士で十分カバーできる。取引先ルートや販売先ルートの紹介はおそらくできないと思う。ただ小売業経営者は、小売以外に関しての視野が狭い。他業種の成功例や、利用できる制度、さらに利用できる制度へのアプローチなどを教示してほしいとは思う。コロナ禍での雇用調整助成金の書類を揃えるのは大変な労力だった。当時は当然ハローワークも大変だったが、経営者も大変だった。書類提出ももっと簡潔にできるはずだ。
小売業の収益の源は「売り場」であり、管理、人事、経理の部署は利益を産まない。利益率も高くない業態なので後方部隊の人数も限られる。実際20店舗を超える会社の事務仕事は私を含めて3名で回していた。業務のアウトソーシングもしなかった。その現実の中、上目線でなく歩み寄ってきた公の部署はなかった。
小売業界は大きなターニングポイントにある。新しく頑張ってきている企業はほとんど見かけない。他人事のような掛け声だけでは前へ進めない。具体的な施策で向き合ってほしい。
「課題は中小企業」「中小企業を援助する」という言葉は、他人事のようで不快さを増す。
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