「コストコ時給1500円」については前回書いたが、そのニュースの有識者含めての反応の大部分は「今後企業は淘汰されるべき・・・」「さらに企業の低コスト構造を目指せ・・・」「現状は最低賃金にあぐらをかいている・・・」等コストコ1500円ウエルカムムードがほとんどを占めているようだ。

この流れの中では、これから小売業を起業する人は全く出てこないなと思う。

ファッション業界で勝ち組といわれる2社の決算書を見てみる。

ユニクロ 売上総利益率52.4% 人件費率16~17%(公表なし。他文献から)家賃比率11.6%

アダストリア 売上総利益率54.7% 人件費率17.8% 家賃比率14.4%

2社ともSPA企業で、ほぼオリジナル商品の商品構成である。すべて商品を企画して商品を作っての利益率である。個店ではまずできない数字だ。商品をメーカーから買う「買い」の商売だと平均すると原価は55%前後になるのではないか。20店舗近くなって別注を作っても原価45%くらいにしかならない。そうなると頑張ってやっと利益率は43~45%くらいになる。人件費率はかつて経営していた会社で17~19%くらいだったと思う。家賃比率は大きな面積を抱えるほうが下がるので個店ならさらに比率は上がる。

上記数字からユニクロ、アダストリアの労働分配率は約32.5%となり健全な数字だが、20店舗くらいで経営していても労働分配率は40%を超えていく。さらに小さな店なら家賃比率も高い。決して最低賃金にあぐらをかいているわけでなく、経営環境が現状を作っている。

もう1つ付け加えるなら郊外RSCは郊外だから賃料は低くなく、「イオンモール」や「ららぽーと」の出店条件のハードルは高い。

差別化できる店(例えばおしゃれなセレクト)をやればいいという声もあるが、その商品を売る環境(立地)、売る人、仕入れ形態を考えると単店はあっても複数店舗は厳しい。

結論としては、人件費高騰の労働環境では、小売業ではスタートアップできる企業はないということだと思う。商品力があり、キャッシュを含めた企業力がないと、土俵にすら立てない。

ずっと言い続けているが、今後は大手の各ショップのみのテナントばかりになり、駅ビル含めたSCは陳腐化していき、衰退していくことになる。

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