40年以上小売業界にいて、間違いなく断言できることは「過剰在庫を持たないこと」が健全な経営につながるということだ。唯一断言できる小売りの鉄則だ。最初に書くべきことだった。

不振店対策をするときも、まず在庫を減らすことから始める。在庫が多いと売れ筋が見えない。よく言われることだと、川を渡るとき水が少なければ、けがをする大きな石などがわかるが、水が多ければ危険なものが見えてこない。つまりリスクのある商品がわかりにくいということだ。さらに品種内でいろんなアイテムがあればどれが売れているかはっきりしないが、極端に言えば2点しかなければどちらが売れているか明確になる。つまり在庫が多いと売れ筋が見えにくくなってきている。売れ筋が見えてくればその流れを広げていける。

おそらく厳しい商品を返品したり、値段を下げて処分すると、利益率がダウンするので、なかなかできないのが現実でもある。上司がどれだけ数値計画を確認して、許容していけるかが課題でもある。ただ、在庫が減ることにより利益率の回復は早まる。これをどう会社がジャッジするかがその会社の裁量だと思う。

在庫が多いと、体重が重いのと一緒で動きが遅くなる。商品回転率も低くなるので、売り場の鮮度感もなくなる。売れなければキャッシュインが減るのでキャッシュアウトとなる仕入れがしにくい。全くの悪循環となる。

在庫を持って商売するジーンズカジュアルやスーツ中心の業態は当然厳しくなってきている。トレンドから外れると一気に落ち込む。ジーンズはメンズでは27~34インチまで揃えなければならないし、スーツに至ってはY体からB体まで揃えなければならないしサイズもさらに増える。厳しい流れの中、細かいサイズはなくなってきたが、それによるアゲインストもある。ライトオンなどのジーンズ専門店やスーツ専門店が厳しくなっているのはサイズによる在庫過多が要因の1つでもある。

DCブームの時、レディスサイズはほぼ9号のみだった。他のサイズに広げると在庫が増え、効率が下がってしまう。サイズの数だけ在庫が増えるからだ。

子供ブランドもDCブームの時、一気に広がったが、トドラーサイズは細かく、なおかつ着る時期が短いので、現在はトドラー中心のブランドは一気に減った。これも在庫リスクによるものが一因だと思われる。

総論を書いたが、いろんな事例も経験してきた。これからも在庫を抱えるリスクについてはどんどん述べていきたい。

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