GMSの衣料服飾品売場の課題が浮き彫りになっている。イトーヨーカドーは廃止の方向だし、イオンは別会社化している。イトーヨーカドーの売場をアダストリアが商品を供給し、売場作りや演出方法についても提案していくとのことである。

何故、イトーヨーカドーの衣料服飾品売場は売れなかったのだろうか?MDや演出方法が間違っていたのだろうか?おそらくイオンのトップバリュがイトーヨーカドーの衣料服飾品をやっていても同じ結果だっただろうと思う。さらに悪い数字だったかもしれない。完全にSCの集客力の違いで、GMSという業態がもう終わったということに尽きる。

今回のアダストリアとの取り組みについて考える。専門店と百貨店、量販店(GMS)は売り方が全然違う。過去に伊勢丹のカリスマバイヤーがイトーヨーカドーの役員になり衣料服飾売場や商品の変更を企画実施したが成功しなかった。土俵が違うし仕事のやり方が全く違っていたからだ。あの事例は簡単に予測できた。ファッションを売ることと商品を売ることは違う。そこに買い物に来るお客様も違う。そこに大きな差があった。

ここからはあくまでも個人的な意見になるが、アダストリアには、イトーヨーカドーのスタッフの小売としての業務レベルが相当に高いと思って臨んでほしい。私事で書くが、あまり業態の差はないと思われそうだが、GMS(サティ)と専門店(ビブレ)を両方経験した。「ビブレ」はファッションビルに見えるが、自主MDの店を30近く運営していた。当時の流れの差もあるが「ビブレ」は「サティ」を認めてなかったように感じた。私自身は「サティ」のほうがファッション業界の流れやトレンドはつかみきれてないが、数値意識や商品知識や販売スキルは高いと感じていた。つまり「感覚」や「トレンド」はあまり意識してないが「売れる商品」や「売れる素材」は理解していたように感じた。実際業務のマニュアルやデータ分析は「サティ」のほうが先行していた。そのGMSを引っ張っていたのがイトーヨーカドーだったのだから、実務レベルは、相当高いだろうし、取引先からもそういう情報を聞いていた。さらにディストリビューターの権限が強くデータ分析力も高いと言われていた。

間違いなくトレンドのつかみ方や、時流に合った売るための内装、演出の仕方、さらに一番差が出るお客さまへの接し方はアダストリアのほうが確実に上回っている。さらにこのブログでも書いてきたが、アダストリアは素晴らしい経営者がいて素晴らしい会社だ。

このターゲットのお客様をつかむ事業を開発し、ユニクロに負けない事業を構築する目的で両社が新しい会社を作っていくことが望ましいことだと思う。現状の報道を見る限り、イトーヨーカドーをアダストリアが助けるイメージが強い。まだ完成形を見てないが、導入された店を見る限りだと、イトーヨーカドーの声が聞こえてないなとも感じた。新しい売り場を作っていこうとする気概を是非見せてほしい。今回はイトーヨーカドーの底力に期待したい。

今回、この内容を書くかどうか迷った。GMSの衣料服飾品の収益が悪い記事を見るたびに、GMS衣料品出身としては悔しい思いがあった。商品よりも環境が大きな問題で、そのMDや売り方はそんなに大きな問題はないように感じていた。百貨店の取引先主導のMDよりも専門店の感性型MDよりもGMSのほうが理詰めだった気がする。GMSから離れて、百貨店や専門店の人たちと交流したが、商品素材や縫製についての知識や、数値面、システム面で劣っているとは感じなかった。逆に商売の理論は上回っていると感じていた。決して卑下することはないと思う。

今後どうなっていくか、一番注目している。

■3月23日の日経朝刊 ※掲載料は?