近年大型モール(RSC)は「大箱化」が進んでいると書いてきた。それにより逆に大型モールの坪当たり賃料も減ってきているのではないかとの推論もある。近年の専門店の出店は「大型化」に対応できる大企業が中心で、大企業以外での新規参入はほとんど見られない。

現状、中小の小売業を取り巻く環境は非常に厳しい。もともと小売業は個人の能力で立ち上げることには限りがある。店を作るのに金がかかるし、出店するにも敷金など必要になってくる。さらには売りたい商品を仕入れるには、スタート時点で高い仕入れ代金(原価)を必要とする。

まず、中小企業の仕入環境がどんどん悪化している。もともとブランドセレクトの店は価格の決定権が取引先にあり、なかなか儲ける商売はできない。着実に店のイメージを固めることによって、儲ける商売にステップを上げることができる。海外で作ったり、ロットを増やしたりして商品の原価を下げていく。周知のことではあるが、円安が進むほど値段の設定が難しくなり、コストの整合できても当然ニーズは集中しており、納期が遅れてくる。会社の規模によって、調達が難しくなってきており、利益を出す商売がしにくくなっている。

次に、出店環境だが、ここまで何度か書いてきているように、コロナ以降SCの収益がダウン傾向にあると思う。その現実の下、当然賃料を融通できるSCはほとんどない。流れが悪く環境が悪化したSCも多いが、そこに大きな改装投資はできない。中小の小売業を育てるリーシングをできる環境ではない。逆にある程度の賃料で空床を埋めることを目的にした改装(通信系などの導入)や、テナントの大型化が進んでおり、スタートアップ企業や出店を検討している中小小売業は参入しづらい。大型モール創成期のように「店を育てる」余裕は全く感じない。

人的環境も厳しい。最低賃金は大幅に上昇しており、全国の加重平均時給は1004円で、東京、神奈川はすでに1100円を超えている。先日の日経新聞の記事では厚労省は、最低賃金「50円上げ議論」を進めていくという。さらに2024年10月からは51名以上の中小企業にも短時間労働者の社会保険加入が義務付けられていくことになっており、当然会社負担も増えていく。立ち仕事であり、さらに土日労働で、不人気業種になりつつある小売業に人材が流れてくるとは考えづらい。おそらく高年齢化が進んでいくと思う。

打開策はあるのか?なかなか現状中小小売業は打つ手がないと思う。もし、今会社を続けていればどうするだろうか?本当に戦える立地で確実に儲かる条件以外には出店しない。商品政策に関しては徹底的な在庫削減と細かな商品動向をチェックできる体制を作る。さらに、内部統制を図るため、現状の規定を見直し、修正する。攻める体制への再整備というところか?

業界としては、デベロッパーが小売店を育てる気概を持つことだと思う。MD面で必要な企業には出店条件を緩和させるとか、好立地に出店させるとかするべきではないかと思う。さらに「売れている」店を、批評をせず素直に評価してほしい。

いずれにしても、中小小売業は我慢の時で、内部に目を向ける時だと思う。

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